ゼロの使い魔保管庫
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前 [[28-59]]不幸せな友人たち 再び、ティファニア
#br
不幸せな友人たち 彼女の選択(エピローグ)
ティファニアはルイズの葬儀には参列しなかった。自分には...
やはりルイズは自らの死を予期しており、葬儀の準備は既に...
それだけのはずだったのだが、元男爵が死んだと知るや否や、...
ジュリアンは止む無く日程を一日ずらして新たに準備を整え...
(人、多いな)
ベンチに座って黒い人だかりを見つめながら、ティファニア...
(ルイズさんは、ずっとこの領地にいて、外界の人と会う機会...
「もし、そこの方」
不意に声をかけられて、ティファニアはびくりとしながら振...
「わたしに何かご用ですか」
動揺を抑えながら問うと、老婆はティファニアの姿をしげし...
「旅の途中か何かですか? こんな街道から離れた町に立ち寄...
ティファニアは自分の格好を見下ろした。あの日着ていた緑...
「ええ、まあ、そんなところです」
頷くと、老婆は「そうですかそうですか」と嬉しそうに頷い...
「この町も、わたしが生まれたころは本当に貧しいところでね...
老婆は懐かしむように大通りを見回している。ティファニア...
「あの方のご指導があって、村は町になり、わたしたちは豊か...
「そうなんですか……男爵様、という方は、とても慕われておい...
「ええ、ええ、そうですとも」
老婆の皺だらけの瞳から涙が一粒零れ落ちる。
「よろしければ、あなたも男爵様の冥福をお祈りください。本...
手を組んで祈る老婆の前から、ティファニアはそっと立ち去...
やがて剣の城の城門が開かれた。黒い人の列は少しずつその...
ルイズの亡骸は、森の奥深くにある才人の墓に、彼と一緒に...
棺を担いだ葬列が、ジュリアンの案内で深い森の中を抜け、...
葬列が通るときに出来る限り草木を刈り取って道を作ったら...
(そうよね。ルイズさんが死んでしまって、この小屋やサイト...
そういう道のそばに、こんな牢獄が存在していいはずはない...
翌朝目覚めたティファニアは、帽子を目深に被り、小屋の中...
(何か、持っていくものはあるだろうか)
少し考えて、何もないと首を振る。友人たちから託された品...
(ギーシュさん。わたしは、ルイズさんに真実を教えることを...
三つの品をテーブルの上に置き、ティファニアはそれに向か...
「さようなら、皆さん。皆さんの尊い想いと共に、わたしの幸...
言い置いて、ティファニアは小屋を出た。外は小雨がぱらつ...
町に下りるために昨日作られたばかりの道を歩いていると、...
「やあ、やはりおいでになりましたね、ティファニアさん」
ジュリアンだった。白髭を生やした腰の曲がった老人が、目...
「おはようございます、ジュリアンさん。昨日は何のお手伝い...
「いえ、それは大丈夫です。たくさんの人たちが手伝いを申し...
ジュリアンはじっとティファニアの顔を見上げた。
「ですがそれも、ティファニアさんが作り上げた嘘が生み出し...
「ありがとう、ジュリアンさん。でも、どれだけ多くの人に幸...
一方的に決め付けて、ティファニアはジュリアンの脇を通り...
「ではせめて、城の方へおいで下さい」
「城……剣の城へ? 何故ですか?」
「墓前で直接お別れを申し上げられないのでしたら、せめて奥...
ティファニアは否定できなかった。ルイズの部屋に入ること...
「分かりました。では、最後に城に立ち寄らせていただきます」
結局、ティファニアは彼の言葉に従うこととなった。
ルイズの寝室は、あの日ティファニアが出て行ったときその...
「なにぶん、予想以上に忙しくなってしまいまして。片付ける...
ジュリアンはそう言っていた。本当に、あのときのままだ。...
その長櫃を複雑な思いと共に見つめていると、背後のジュリ...
「奥様は、あなたからの便りを本当に楽しみにしておられまし...
振り向くと、ジュリアンはどこか必死な表情でティファニア...
「それは、手紙を書いていたあなた自身が、奥様とサイト殿の...
深く愛し、生前の二人を優しい気持ちで見つめていたからこそ...
ジュリアンは祈るように手を組み合わせた。
「ですから、自分のことを罪人などと仰らないでください。六...
激しく責めながらもこの辛い務めを最後まで成し得たのだし、...
縋るように言い募るジュリアンに、ティファニアは微笑み返...
「ありがとう、ジュリアンさん。でも、あなたの言葉を受け入...
「そんな……奥様だって、真実を知ったら、きっとあなたのこと...
「いいえ、ルイズさんだって、絶対にわたしのことは許さなか...
ティファニアの脳裏に、若いルイズの血走った瞳が浮かび上...
「いいんです、ジュリアンさん。あなたのお気遣いはとても嬉...
ティファニアはふと、そこで言葉を止めた。部屋の中の風景...
(なんだろう?)
じっと目を凝らす。部屋の中は、ジュリアンの言葉どおり、...
(何かがあの日と違う……何が違うの?)
違和感の出所は、ベッドの隣に置いてあるテーブルだった。...
(最期にルイズさんと話したときは、あんな染みはなかった)
記憶の中のテーブルは、多少傷はあったものの、よく磨かれ...
インク瓶は倒れて、零れ出した中身はすっかり乾いてしまって...
(インク瓶が倒れたのね)
近づいてしゃがんでみると、やはりテーブルの側面を黒いイ...
だが、インク瓶は何故倒れたのか。ティファニアはジュリア...
「あの。ルイズさんが亡くなられたあと、お部屋の掃除をされ...
ジュリアンは怪訝そうに目を細め、首を振った。
「いえ。なにぶん葬儀の準備で忙しかったもので……ただ、奥様...
その瞬間、ティファニアの頭で鮮明な像が閃いた。
苦しげに顔を歪めながら、ベッドの上でなんとか上半身を起...
(何を書いたの? いえ、何に書いたの?)
考えるまでもなく、答えは明白だった。ティファニアは部屋...
(これだ)
ティファニアはその手紙を手に取った。ルイズに宛てた、一...
(愛しいあなた……サイトのこと、よね。そう言えば、ルイズさ...
――愛しい人のために、最後の一仕事をしなければならないの。
ティファニアは息を飲んだ。この中には、ルイズが死の直前...
自分に、それを読む資格があるだろうか。
(ううん、読まなくちゃいけないんだわ、わたしは)
この中には、きっと才人への愛情に満ち溢れたメッセージが...
それを見て、もう一度ルイズの愛情の深さと尊さを思い出し...
ティファニアはそう考え、選択した。
封筒のふたを開けて中の紙を取り出す。裏面に何か書いてあ...
ティファニアは震える手で紙を広げる。予想に反して、記さ...
「……え?」
そこに書いてある言葉の意味を、すぐには理解できなかった。
何度も何度も読み返し、ようやくその意味を理解してから、...
ぎゅっと目を細めても涙が溢れそうになって、歯を食いしばる...
「違う、違うの……!」
足から力が抜けて、床に膝を突く。堪えきれずに溢れた涙が...
「わたし……わたしは……!」
突然泣き出したティファニアに驚いて、ジュリアンが駆け寄...
折りよく晴れた空から窓越しに日差しが降り注いで、部屋の...
彼女が手に持つ手紙の裏面に、短い一文が書き記されている。
最期の力を振り絞って書いたのだろう。その文字は乱れに乱...
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―優しい嘘を ありがとう―
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不幸せな友人たち
END.
終了行:
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不幸せな友人たち 彼女の選択(エピローグ)
ティファニアはルイズの葬儀には参列しなかった。自分には...
やはりルイズは自らの死を予期しており、葬儀の準備は既に...
それだけのはずだったのだが、元男爵が死んだと知るや否や、...
ジュリアンは止む無く日程を一日ずらして新たに準備を整え...
(人、多いな)
ベンチに座って黒い人だかりを見つめながら、ティファニア...
(ルイズさんは、ずっとこの領地にいて、外界の人と会う機会...
「もし、そこの方」
不意に声をかけられて、ティファニアはびくりとしながら振...
「わたしに何かご用ですか」
動揺を抑えながら問うと、老婆はティファニアの姿をしげし...
「旅の途中か何かですか? こんな街道から離れた町に立ち寄...
ティファニアは自分の格好を見下ろした。あの日着ていた緑...
「ええ、まあ、そんなところです」
頷くと、老婆は「そうですかそうですか」と嬉しそうに頷い...
「この町も、わたしが生まれたころは本当に貧しいところでね...
老婆は懐かしむように大通りを見回している。ティファニア...
「あの方のご指導があって、村は町になり、わたしたちは豊か...
「そうなんですか……男爵様、という方は、とても慕われておい...
「ええ、ええ、そうですとも」
老婆の皺だらけの瞳から涙が一粒零れ落ちる。
「よろしければ、あなたも男爵様の冥福をお祈りください。本...
手を組んで祈る老婆の前から、ティファニアはそっと立ち去...
やがて剣の城の城門が開かれた。黒い人の列は少しずつその...
ルイズの亡骸は、森の奥深くにある才人の墓に、彼と一緒に...
棺を担いだ葬列が、ジュリアンの案内で深い森の中を抜け、...
葬列が通るときに出来る限り草木を刈り取って道を作ったら...
(そうよね。ルイズさんが死んでしまって、この小屋やサイト...
そういう道のそばに、こんな牢獄が存在していいはずはない...
翌朝目覚めたティファニアは、帽子を目深に被り、小屋の中...
(何か、持っていくものはあるだろうか)
少し考えて、何もないと首を振る。友人たちから託された品...
(ギーシュさん。わたしは、ルイズさんに真実を教えることを...
三つの品をテーブルの上に置き、ティファニアはそれに向か...
「さようなら、皆さん。皆さんの尊い想いと共に、わたしの幸...
言い置いて、ティファニアは小屋を出た。外は小雨がぱらつ...
町に下りるために昨日作られたばかりの道を歩いていると、...
「やあ、やはりおいでになりましたね、ティファニアさん」
ジュリアンだった。白髭を生やした腰の曲がった老人が、目...
「おはようございます、ジュリアンさん。昨日は何のお手伝い...
「いえ、それは大丈夫です。たくさんの人たちが手伝いを申し...
ジュリアンはじっとティファニアの顔を見上げた。
「ですがそれも、ティファニアさんが作り上げた嘘が生み出し...
「ありがとう、ジュリアンさん。でも、どれだけ多くの人に幸...
一方的に決め付けて、ティファニアはジュリアンの脇を通り...
「ではせめて、城の方へおいで下さい」
「城……剣の城へ? 何故ですか?」
「墓前で直接お別れを申し上げられないのでしたら、せめて奥...
ティファニアは否定できなかった。ルイズの部屋に入ること...
「分かりました。では、最後に城に立ち寄らせていただきます」
結局、ティファニアは彼の言葉に従うこととなった。
ルイズの寝室は、あの日ティファニアが出て行ったときその...
「なにぶん、予想以上に忙しくなってしまいまして。片付ける...
ジュリアンはそう言っていた。本当に、あのときのままだ。...
その長櫃を複雑な思いと共に見つめていると、背後のジュリ...
「奥様は、あなたからの便りを本当に楽しみにしておられまし...
振り向くと、ジュリアンはどこか必死な表情でティファニア...
「それは、手紙を書いていたあなた自身が、奥様とサイト殿の...
深く愛し、生前の二人を優しい気持ちで見つめていたからこそ...
ジュリアンは祈るように手を組み合わせた。
「ですから、自分のことを罪人などと仰らないでください。六...
激しく責めながらもこの辛い務めを最後まで成し得たのだし、...
縋るように言い募るジュリアンに、ティファニアは微笑み返...
「ありがとう、ジュリアンさん。でも、あなたの言葉を受け入...
「そんな……奥様だって、真実を知ったら、きっとあなたのこと...
「いいえ、ルイズさんだって、絶対にわたしのことは許さなか...
ティファニアの脳裏に、若いルイズの血走った瞳が浮かび上...
「いいんです、ジュリアンさん。あなたのお気遣いはとても嬉...
ティファニアはふと、そこで言葉を止めた。部屋の中の風景...
(なんだろう?)
じっと目を凝らす。部屋の中は、ジュリアンの言葉どおり、...
(何かがあの日と違う……何が違うの?)
違和感の出所は、ベッドの隣に置いてあるテーブルだった。...
(最期にルイズさんと話したときは、あんな染みはなかった)
記憶の中のテーブルは、多少傷はあったものの、よく磨かれ...
インク瓶は倒れて、零れ出した中身はすっかり乾いてしまって...
(インク瓶が倒れたのね)
近づいてしゃがんでみると、やはりテーブルの側面を黒いイ...
だが、インク瓶は何故倒れたのか。ティファニアはジュリア...
「あの。ルイズさんが亡くなられたあと、お部屋の掃除をされ...
ジュリアンは怪訝そうに目を細め、首を振った。
「いえ。なにぶん葬儀の準備で忙しかったもので……ただ、奥様...
その瞬間、ティファニアの頭で鮮明な像が閃いた。
苦しげに顔を歪めながら、ベッドの上でなんとか上半身を起...
(何を書いたの? いえ、何に書いたの?)
考えるまでもなく、答えは明白だった。ティファニアは部屋...
(これだ)
ティファニアはその手紙を手に取った。ルイズに宛てた、一...
(愛しいあなた……サイトのこと、よね。そう言えば、ルイズさ...
――愛しい人のために、最後の一仕事をしなければならないの。
ティファニアは息を飲んだ。この中には、ルイズが死の直前...
自分に、それを読む資格があるだろうか。
(ううん、読まなくちゃいけないんだわ、わたしは)
この中には、きっと才人への愛情に満ち溢れたメッセージが...
それを見て、もう一度ルイズの愛情の深さと尊さを思い出し...
ティファニアはそう考え、選択した。
封筒のふたを開けて中の紙を取り出す。裏面に何か書いてあ...
ティファニアは震える手で紙を広げる。予想に反して、記さ...
「……え?」
そこに書いてある言葉の意味を、すぐには理解できなかった。
何度も何度も読み返し、ようやくその意味を理解してから、...
ぎゅっと目を細めても涙が溢れそうになって、歯を食いしばる...
「違う、違うの……!」
足から力が抜けて、床に膝を突く。堪えきれずに溢れた涙が...
「わたし……わたしは……!」
突然泣き出したティファニアに驚いて、ジュリアンが駆け寄...
折りよく晴れた空から窓越しに日差しが降り注いで、部屋の...
彼女が手に持つ手紙の裏面に、短い一文が書き記されている。
最期の力を振り絞って書いたのだろう。その文字は乱れに乱...
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