ゼロの使い魔保管庫
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きっとこんな未来〜三人の魔法使い編〜 せんたいさん
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*注意事項*
このオハナシは作者が勝手に妄想したゼロ魔の未来SSです。
オリキャラオリ設定バリバリなので読む際には覚悟が必要です
それでは、覚悟完了された方だけどーぞ
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賞金稼ぎ。
賞金首と呼ばれる懸賞金のかかったものを、生き死にを問わず...
その賞金稼ぎたちの間で、最近噂になっている腕利きの賞金稼...
彼女は。
そう、『彼女』。その賞金稼ぎは、年端も行かない少女だとい...
短く刈り込んだ青い髪が特徴で、『風』系統の魔法を得意とし...
その武勇伝は、枚挙に暇がない。
曰く。
複数の賞金稼ぎが組んだ『黒の旅団』でも不可能だった、峠の...
曰く。
とある台地で数年間、水害を生み出し続けていた魔獣を、独力...
曰く。
トリステイン国王、『慈愛の女神』アンリエッタの暗殺計画を...
などなど。
ガリアの賞金稼ぎで、『青い髪の少女』を知らない者は、モグ...
あのハルケギニア始まって以来の賞金首といわれる『黒髪の男...
だが。
その本名を知る者は、賞金稼ぎの中には一人もいなかった。
何故なら彼女は、けして自分の名前を名乗らなかったから。
しかし、彼女はかつてガリアの裏世界で名を馳せた一人の騎士...
『雪風』と。
「ねえねえ、行き先アソコであってんの?」
「そうねえ。たぶんねー」
「たぶんて…。どう見ても切り立った崖だよね?なんもないよね...
そこは空の上。
本来は聞こえるはずのない明るい声が、風を切りながらそこで...
一つは高く響く、声変わり前の少年のような男の子の声。
一つは鈴を転がすような、綺麗な少女の声。
雲を切り裂き風に乗り、一匹の白い竜が悠々と空を飛んでいた。
その背に跨るのは、青い髪を短く刈り込んだ少女。
まだ成長する前の体を覆うのは羽織った黒い革のポケットの沢...
少女は竜に語りかけ、そして竜も言葉を返す。
ハルケギニアの竜の中でも喋れるほど知能が発達しているもの...
それは韻竜と呼ばれ、その殆どが息絶えたと言われる。
しかし。
風の韻竜であるその竜は、数少ないその韻竜の生き残りである。
その名前を、シャーイーネィリィと言った。ただこれは彼の一...
今は、その背に跨らせている少女に、使い魔として使役されて...
なんでも、召喚した者を堕落させる悪魔の名前らしいが、彼女...
シャーイーネィリィ自身は響きがカッコイイので元の名前より...
「ヴァル、ここで止めて?」
背中に跨る少女は、そう言ってヴァルファーレの首の付け根を...
そして、羽ばたいて浮かんだ揺れる韻竜の背の上で、まるでそ...
それこそが、彼女を卓越した風使いたらしめている理由。
自分の立つ場所の状態を瞬時に理解し、己の望む状態に己が体...
そう、彼女が、彼女こそが。
ガリアでも腕利きの、風使いにして賞金稼ぎ。『雪風』その人...
『雪風』は懐から細い杖を取り出すと、詠唱を始める。
呪文によって流れを変えた魔力が彼女の目の前に収束していく。
それは、空気中の水分を、『雪風』の身長よりも大きい、白く...
『アイシクル・ランス』の魔法であった。
巨大な氷の槍は、『雪風』の杖に合わせ、ゆらゆらと揺れる。
「んー…あのへんかなあ…」
『雪風』は何もない崖にどうやら何かを見つけたらしい。
そう呟くと、杖を軽く振り下ろす。
すると、氷の槍は崖に向かって一直線に空中を突き進む。
そして。
岩で出来た崖にぶつかって、四散…しなかった。
まるで、そこには『崖が存在していないかのように』、氷の槍...
そして響く轟音。
まるで、鉄の門扉を巨大な槌が叩くような音。
それは、『雪風』の追い求めていたもの。
ずっと、捜していた、捜し物。
「当たり…かな?」
「だね。この幻は間違いないね。『虚無』だね」
そう、彼女の捜し物、それは。
『虚無の担い手』『破滅の女王』『トリステインの大絶壁』ル...
彼女がトリステインから強奪したあるものを、手に入れるため。
そして『雪風』は、己が使い魔に命令を下す。
「…じゃあ行こうかヴァル。留守のうちにかっさらうよ」
「あいあーい。了解したねご主人。きゅいきゅい」
白い韻竜は羽ばたき、幻の崖めがけて急降下していった。
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ガリア王国。
王の権威によって治められるこの国の王家は、ハルケギニアの...
それは、現在の王家の成り立ちを考えれば当然と言えた。
現王は、前王ジョゼフ一世を斃し、その王座を奪い取った人物...
しかも、政治の腐敗や王家の圧制を機にした社会的正義のある...
それまで冷戦状態にあったとはいえ、表面上は平和を保ってい...
さらに現王は、前王の全ての家臣を政治より遠ざけてしまった。
いかに革命を成したとはいえ、今まで利権にありついていた者...
当然、現王を疎ましく思う貴族達は、裏で現王を暗殺しようと...
それゆえ、現王家は毎日のように暗殺者の襲来に晒されていた。
はずだった。
そう。ガリア現王家は、暗殺者にとって『鬼門』と呼べる存在...
それは、現王…女王シャルロット一世の、強大な魔力によるもの...
彼女は、公式に存在する唯一人の『エルフを越える者』である。
彼女の魔力は、人間の限界とされるスクウエアを越え、複数の...
さらに、彼女は魔力の容量だけでなく、その応用技術もずば抜...
彼女の扱う『エア・ハンマー』は、一般的なスペルにも関わら...
しかも、彼女の寝所は、彼女の使い魔である風韻竜の操る先住...
だから、彼女…ガリア女王、シャルロット一世を狙う暗殺者は、...
そう。
ガリア女王を狙う暗殺者は、どこにもいない。
そこは、ガリア王家の保養地の一つ。切り立った岩山に囲まれ...
「…今回はえらく直接的なのが来たわね」
そう言う青い髪の少女の目の前に、巨大な騎士が立っていた。
その騎士の身長は二階建ての家屋を越えるほど。その手に握り...
当然、騎士は人間ではない。
騎士の格好をした、巨大な魔法人形である。
「あらあらまあまあ。毒殺できないと悟ったら今度は過去の遺...
アンドリュー卿も随分手が込んでますわね」
青い髪の少女の隣には、もう一人、同じ色の髪の少女がいた。
二人は、全く同じ髪の色をしていた。
しかし、その身にまとう雰囲気は全く別。
最初に騎士に向かって言葉を吐いた少女は、真っ直ぐな、長い...
もう一人の少女の髪は、長さこそ変わらなかったが、ゆるくウ...
そして、その身に纏う服。
真っ直ぐ伸びた髪をかきあげ、不敵に騎士をねめつける少女の...
あくまで笑顔を絶やさない、ウェーブの髪の少女は、薄いブル...
目の前の巨大な騎士に全く動じない二人に、その脇に控える一...
「お、お前ら!これが何かわかってんのか!」
髭面の、どう見ても少女たちより齢を重ねているその男が慌て...
言われた少女達はもう一度騎士を眺める。
そして言った。
「ヨルムンガントでしょ?」
「ジョゼフ王の遺した、負の遺産の一つですわ。ゴーレムに魔...
二人の口調は、まるで図鑑にのっていた花の説明をするかのよ...
男はその態度に、言葉に、さらに饒舌になる。
「それだけじゃねえ!コイツの中身は全部鋼でできてる!ナリ...
言われて二人はもう一度よく『ヨルムンガント』を観察する。
確かに、記述にあるヨルムンガントよりもその体躯は小さく、...
しかし、それでも二人は慌てた様子を見せない。
「だから?」
「仰っている意味がよくわかりません」
二人の青い髪の少女は、そろって首をかしげた。
どうして、この男はいつまでも能書きを垂れているのだろう。...
二人の態度に、男がキレる。
「ああそうかい!なら地獄で後悔しなぁ!」
男はそう言ってスペルを唱えて杖を振り、ヨルムンガントもど...
ヨルムンガントもどきは鉄扉をこすり合わせるような鳴き声を...
それを見た少女達は。
「…あーあ、めんどくさ。さっさとやるにはアレ使わないと…。
髪もドレスも痛むからイヤなんだけどなあ…」
真っ直ぐな髪の少女は、そうぼやく。
ウェーブの髪の少女は、ぼやいた少女に一言だけ言って、そそ...
「それじゃあ、あとはお任せしますわ、姉様」
真っ直ぐな髪の少女は、下がる少女に文句を言おうとするが、...
すさまじい轟音を立て、ヨルムンガントもどきの拳が大地に大...
しかし、少女はそこにはいない。
こっそり唱えていた『フライ』の魔法で、大きく横に移動して...
「それで逃げたつもりかぁ!」
男の杖が少女を指す。
ヨルムンガントもどきは大地をえぐりながら拳を引き抜き、少...
少女は自分を見つめる目のない眼窩を睨み返すと。
左手で、自分の右手の手首を掴んだ。
そして、軽く捻ると。
ぱきん!
乾いた音を立て、少女の右手は肘から先が外れる。それは、魔...
何のつもりだ?
男は一瞬警戒して、ヨルムンガントもどきの動きを止める。
しかし、すぐに思い直す。
そうだ、きっとあの腕には自衛用の銃が仕込んであるか、爆薬...
そしてヤツは、それでヨルムンガントを迎撃しようとしている。
男の顔が酷薄に歪む。
だからなんだ。それがどうした。
人間の扱える火器で、ヨルムンガントがどうにかなるものかよ─...
男は勝利を確信する。
そして、その心に余裕が生まれた。
「何のつもりだ?それを俺にくれるから見逃せってか?
残念ながらムリだなあ、フローラ第一王女サマぁ!」
その余裕が生んだ台詞が。一瞬の躊躇が。
彼女。フローラ・ヒラガ・オルレアン──ガリア王国第一王女に...
すでに完成した呪文を、フローラは解き放つ。
それは、『フライ』で飛び退った瞬間から、男が台詞を放つ前...
前半は、魔力の圧縮。後半は、制御・維持のための魔力回路構...
成った呪文が、音すらたててフローラの存在しない右手の部分...
それは、男の位置から見て、ただの『ライト』の呪文に見えた。
光る青白い光球。それは男の既知からすれば、『ライト』の呪...
だが。
次の瞬間、フローラを中心に起きた風が、それがただの光球で...
その光球がフローラの右拳の位置で安定した瞬間、空気が『弾...
まるでそこを中心にして『風』系統の魔法を使ったかのように...
しかし、その風は。
「うわちぃっ?」
その風に撫でられた瞬間、男は飛び上がる。
そう、その風は『熱かった』。
まるで、そう、まるで、火球の呪文をすぐ近くで炸裂させられ...
しかし温度を感じないヨルムンガントもどきは、そんな風など...
な、なんにせよただのこけおどしだ!これで終わる──。
男は勝利を確信していた。
だが。
ばぢばぢばぢばぢばぢぃぃぃぃぃぃっ!
とんでもなく耳障りな、まるで特大の『雷光』の呪文が炸裂し...
それは、フローラとヨルムンガントもどきのいる場所から響い...
男はわが目を疑った。
ヨルムンガントが、溶けた───?
フローラに殴りかかったはずのヨルムンガントもどきの右腕が...
まるで、溶岩のように。
そして、その奥には。
下腕のない右腕の先に光球を掲げ、雄雄しく立つ、ガリア第一...
彼女はその光球を一振りする。
すると、まるで鞭のようにその光球が伸び、飴細工のようにヨ...
なんだ、アレは?
男の目は驚愕に見開き、未知の力に畏怖が沸き起こる。
フローラはそんな男の視線を真正面から受け止め、言った。
「『焔の腕』。フローラ様謹製の魔法よ。この『焔の腕』で灼...
生まれながらにして炎の魔力を持っていたフローラは、ある日...
そしてその結果…右の拳の位置で安定した超々高温の熱球は、彼...
それ以来、フローラの右下腕は義手である。
そして、この『焔の腕』を使う時には、義手を外さなくてはな...
「さて…それじゃあアンタも、灼いてあげようか」
フローラは白い右手で男を指す。
まるで人差し指のように、その『焔の腕』から、ぬるりと超高...
「く、くそぉっ!」
男は慌てて振り返り、逃げ出そうとする。
その目の前に。
ざぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
突如、男の三方を囲うように、青い壁が現れた。
「逃がしませんわよ。あなたにはアンドリュー卿の手下だって...
満面の笑顔を絶やさぬまま、残りの一方を塞ぐように立ってい...
「フィオナ王女かっ…!」
男のもう一人のターゲット。
フローラ第一王女の双子の妹、フィオナ・ヒラガ・オルレアン...
「チェックメイト、ですわね。三方を水の壁に囲まれ、後ろに...
獲物を追い詰めた狩人の鼻歌のように明るい声で、フィオナは...
しかし、男は諦めない。
こんな、ところで終わってたまるか…!
男はフィオナの台詞を反芻する。
そうだコイツ、今『水の壁』だと…!
男は、目の前の濃紺の水の壁を睨む。
ぱっと見たところ、色以外で普通の水の壁となんらかわりはな...
上空は斜めに合わさった三方の壁で見えないが、高さはそれほ...
どうやらこの第二王女は、長女と違って凡庸なメイジのようだ。
ならば。
男は呪文を唱える。
『フライ』で突っ切って逃げてやる…!
男の呪文が何かを察したのか、フィオナは慌てる。
「あ、お待ちになって!」
「待つか間抜け!」
そう叫んで男は、風を纏った結界ごと水の壁に突っ込んだ。
そして。
あっという間に水の壁に呑まれて、その中でバラバラになって...
ただの水の壁に見えたそれの内部は、超高圧の水が超高速で循...
それは触れたものを一瞬で取り込み、破壊してしまう。
フィオナはその壁を、『深淵の扉』と呼んでいた。
彼女もまた、生まれながらにして水の魔力を持つ、生まれつい...
「…あーあ…。壁の中は危険だから、ムチャはいけませんって言...
壁の中でどんどん細切れになっていく男に、フィオナは両手を...
それは、母から伝え聞いた父親の故郷の、死者への作法だった。
「あらら…。死んじゃったかあ…」
その後ろから、フローラがやってくる。
そしてフィオナに倣い、水の壁の中で細切れになってしまった...
フィオナは黙祷を終えると、呪文を唱えて『深淵の扉』を土の...
彼女なりの、男の土葬のつもりだった。
男の血肉は土に融け、この台地の植物の栄養分となるだろう。
二人は、略式の葬儀を終えると、本来の目的を果たすため、歩...
この二人は。
ガリアの第一王女と第二王女は。
常に、こうした暗殺の危機に晒されている。
女王を狙えないと悟った暗殺者は、二人の王女を狙っているの...
しかし。
女王は気付いていた。この二人は、女王すら越える魔法の才に...
その才を伸ばすため…あえて、女王は二人の姫を放任で育ててい...
女王の思惑通り、逆境に揉まれた二人の王女は、今やガリアで...
そして。
この二人がこの保養地にいるのは、保養のためではなかった。
二人は、ある人物を探し出すために、母親の命でここへとやっ...
生まれた時に身体が弱く、二人とは別に育てられた、三人目の...
彼女は、乳母の庇護の下、すくすくと育てられ、最近まで王宮...
ある日、彼女は書置きだけを残し、旅立ってしまう。
その書置きにはこう書かれていた。『父さんを捜しにいきます...
それから二年近く、三人目の王女とは音信が途絶えている。
そして、その三人目の王女が、この近くの村で目撃されたらし...
三人目の王女の名は、マリーウェザー・ヒラガ・オルレアン。
外見的特徴は、二人と同じ青い髪。それを、動きやすい短髪に...
二人は行方不明になった第三王女を王宮へ連れ戻すため、ここ...
この、切り立った岩山に囲まれた、保養地へ。
『雪風』の降り立った場所は、切り立った岩山を切り開いて作...
その鉄扉の、彼女の『アイシクル・ランス』が命中した部分が...
ここが彼女の目的地。
『虚無の担い手』の潜む、屋敷であった。
「さーて、どうしよっかなあ」
使い魔の背から降りた『雪風』は、鉄扉を前に思案する。
「さくっといっちゃえばいいと思うよ。『杏よりウニが安し』...
「…それを言うなら『案ずるより産むが易し』でしょうよ」
そうやって使い魔と間抜けな掛け合いをしていると。
不意に、耳障りな音を立てて鉄扉が開いた。
そこから現れたのは、動きやすそうな黒いのベストに白いブラ...
その手には、古ぼけた大剣を携えている。
笑顔を湛えたその視線はしかし、油断なく『雪風』を捉える。...
「ずいぶん乱暴なノックじゃない?弟が怯えてたわ」
茶褐色の髪の少女は、そう言うと大剣の剣先を地面に引きずら...
まるで『雪風』を値踏みするように、一定の間合いからは寄っ...
それは、彼女の持つ大剣の間合いではない。その間合いでは飛...
しかし茶褐色の髪の少女は、百も承知と言わんばかりに、一定...
『雪風』は少女の態度にいくつかの仮説を立てる。そして、最...
この少女には、飛び道具に抗する手段がある。それも、ほぼ完...
若いながらに賞金稼ぎとして培ってきた状況分析能力を、『雪...
「…一個聞いていい?」
「何?変な事聞かないでよ」
「名前。教えて」
もし自分の予想通りの名前が返ってきたら。
自分では、この少女に勝てない。
いや、このハルケギニアで、彼女の血統に勝てるメイジはいな...
彼女の血統にだけ許された魔法は、あらゆる魔力を打ち消して...
その魔法を彼女が身につけているという確証はない。だが、そ...
そして、茶褐色の髪の少女は応える。
「マナ。マナ・ヒラガ・ヴァリエールよ」
その応えは、『雪風』の予想した最悪の答えだった。
彼女こそは『虚無』の血統。あらゆるメイジの頂点に立つ、究...
「…そっか。じゃあ降参するわ」
「え?ちょっと早すぎないご主人っ?」
あまりにも早いギブアップに、一番驚いたのは『雪風』の使い...
しかし『雪風』は軽く肩をすくめると、手にした杖と、懐に忍...
その態度に驚いたのは、『雪風』の使い魔だけではなかった。
対峙していたマナも、驚いた顔で歩みを止める。
「…随分、諦めがいいのね?拍子抜けしちゃった」
言って背負っていた鞘を手にして、手にした大剣をそこに収め...
その際に、掲げられていた大剣がぼやいた。
「…なんでえなんでえ。キバって出てきたのに俺っち出番なしか...
『雪風』はその剣の名前と特性も熟知していた。
マナの掲げていた大剣の名はデルフリンガー。吸魔の力を持つ...
虚無の魔法だけでなく、この剣まで使われたとあっては、メイ...
『雪風』は軽く自虐的に笑うと、マナに言った。
「吸魔の剣もった『虚無』に喧嘩売るほど間抜けじゃないつも...
それに、喧嘩しにきたわけじゃないし。さっきの魔法も、『...
『雪風』の言葉に、ふーんそうなんだ、ととりあえず納得する...
そして、当然の疑問を彼女にぶつける。
「で、あなた名前は?」
『雪風』は応えた。
人前では全く名乗らない、その名前を。
「マリーウェザー。
マリーウェザー・ヒラガ・オルレアン。マリーでいいわよ。
で。
たぶん、あなたの腹違いの姉妹だと思うよ」
それを聞いたマナの目が、点になった。
二人の王女は、切り立った岩山の前にいた。
二人は、ある情報を元に、第三王女がこの近辺にいるとアタリ...
この岩山には。
ぱっと見はわからないが、『虚無』の幻術によって巧みに隠さ...
現存する魔王とも言われる『虚無』に喧嘩を売る馬鹿はほとん...
何故、第三王女はそんな場所に向かったのか。
理由はカンタンである。
そこに、彼女らの父親がいるからである。
彼女達ガリアの三王女は、父親の顔を知らない。
ただ、母から彼女らの父親は素晴らしい人で、母を助け、世界...
それが今回の第三皇女失踪の引き金となったのは火を見るより...
そして、この二人も。
失踪した第三皇女を捜しにいくというのは建前で、結局はこの...
二人は緊張した面持ちで、岩山を見上げる。
「さ、さて。いよいよね」
「…どうしましょう。緊張してきました」
二人は、まだ見ぬ瞼の父に憧れを抱いていた。
物心付いた頃から美化された物語をさんざん聞かされていれば...
そして、二人は、『フライ』の詠唱に入る。
一息にこの山を越えようというのだ。
しかしその瞬間、二人の立つ場所を黒い影が覆う。何か大きな...
二人は揃って空を見上げる。
そこに浮かんでいたのは、二人がいつか見た、純白の空中戦艦。
ガリア両用艦隊旗艦、『シャルル・オルレアン』。
彼女らの母親以外動かすことの適わない、ガリアの空の最強戦...
つまり。
ここに、母が、シャルロット一世が来ている、ということだ。
「…母様…来るんなら一緒に連れてきてくれてもいいのに…」
そう愚痴るフローラだったが。
女王には、彼女らを同道させたくない理由があった。
彼女らは間もなく、その理由を知ることになる。
一方その頃、岩山の中腹に建てられた屋敷の中。
その門扉を叩いた青い髪の少女は、客人扱いで、応接間に通さ...
しかし流石に杖は取り上げられ、使い魔は屋敷の外で鎖に繋が...
だが、マリーウェザーはそんな事は微塵も気にせず、ソファー...
「そっかあ。『虚無』も大変なのね」
「『虚無』が、っていうか、ママの躾けがねー。
あのひとミョーにプライドだけは高くってさ。ほんと、パパ...
今は、出された紅茶を前に『虚無の担い手とはこうあれ』と口...
最初は異母姉妹という事に驚いていたマナだったが、そういえ...
ママとデルフリンガー曰く、パパは『ハルケギニア始まって以...
ある程度事情を飲み込んだマナは、弟のショウに、マリーウェ...
今その節操ナシは、裏庭で薪割りをしているはずだった。
そして、二人の話題がお互いの母親から、父の話に移ろうとし...
廊下から、人の足音が聞こえた。
それも、普通に歩く足音ではない。酷く慌てた様子の駆け足だ。
それはすぐに応接間の前で停まると、扉が乱暴に開かれた。
「マナっ!すぐ出る準備をしなさい!ここは間もなく戦場にな...
慌てた顔で部屋の扉を乱暴に開け放った冴えない黒髪の中年の...
平賀才人。
二人の父親にして、伝説の使い魔『ガンダールヴ』。
『最強の種馬』『究極の節操ナシ』『フラグ回収率100%男』な...
そして現れた才人は、酷く慌てていた。
普段何事にも動じない父が、ここまで慌てるのは、母の逆鱗に...
…なら大したことじゃないのかも。
「…ん?誰だその子」
慌てていた才人だったが、さすがに自分の娘の前に似たような...
視線を受けたマリーウェザーはソファーから立ち、略式の礼を...
「初めまして、お父様。
マリーウェザー・ヒラガ・オルレアンです」
その名前を聞いた才人の脳裏に、かつて愛し合った、青い髪の...
それは目の前の少女とダブり、彼女がタバサと自分の間に出来...
そして才人は思いつく。
彼女なら、この状況を何とかできるかもしれないと。
「…!?ってことは!ちょっとマリーウェザー、一緒に来てくれ...
挨拶もそこそこに、才人はマリーウェザーの手を取り、駆け出...
「え?え?え?」
状況が理解できず、マリーウェザーは才人に引きずられるよう...
「…いってらっしゃーい…」
応接間に残されたのは、飲みかけの紅茶と、マナだけだった。
中庭では、信じられない光景が繰り広げられていた。
「ちょっとアンタ!わざわざ軍艦で乗りつけるなんていい度胸...
「…私は、自分の夫を取り戻しに来ただけ。邪魔しないで」
「だーーれーーがーー!誰の夫だってえのよー!」
ぼかぁん!どっこぉん!
言葉と同時に漏れる魔力が、あっちこっちで爆発を起こす。
すでに原型を留めていない中庭では、二人の魔女が戦っていた。
一人は伝説の『虚無の担い手』ルイズ・フランソワーズ・ヒラ...
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「な、なんとか二人を収めらんないかなっ!?」
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しかし。
マリーウェザーは首を振る。
「ムリだよー。魔道外装まで持ち出してるってことは母様本気...
父様が出てかないとダメだってー」
肩をすくめてそう言うマリーウェザー。
そこへ。
「あ、いた!ちょっとマリーあなたどこ行ってたの!」
「あらあらまあまあ。こんなところにいたんですのね」
二人の、青い髪の少女がやってきた。
フローラ王女とフィオナ王女。
二人は、『シャルル・オルレアン』を追って、ここへやってき...
すると、甲板から、魔道外装を纏った母が、出撃するのが見え...
そして、女王の急襲した屋敷に侵入すると、この有様である。
物陰で様子を見ていると、そこへ、どこかで見た顔が冴えない...
そして、マリーウェザーは当然のごとく、二人に父を紹介する。
「あ、久しぶりフローラ姉、フィオ姉。
ちょーどよかった。紹介するね。
この人、うちらの父様。サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ...
二人の目が点になる。
次いで、フローラが無言で才人を指差す。『これが?』という...
マリーウェザーもまた無言で、首を縦に振る。
二人の中で、『強くて優しくてカッコイイ、絶世の美中年にし...
…わかる。分かるよそのキモチ。でも現実ってこんなもんなのよ...
凍りつく姉達を見て、マリーウェザーはそう思った。
そして凍りつく二人に、才人は懇願した。
「そ、そうか!君らもシャルロットの娘か!
なんとか上手いことシャルロット止めらんない?」
あまりにも情けないその態度に、二人は呆れた。
そして。
「初めましてお父様。女王シャルロットが一子、フローラ・ヒ...
「同じく、フィオナ・ヒラガ・オルレアンですわ、お父様」
正式な礼をそろって綺麗に決めて。
どう返したもんかともごもごしている才人の両脇に立つと。
「ど、どうしたのかな?二人とも?」
何か嫌な予感がした。
しかし、才人は逃げられない。何故だか体が動かない。
彼の本能は悟ったのだ。
…きっと、これがたぶん、最も早く場を収める方法なんだと。
二人は才人の両腕をがっしりと抱え込むと。
「とりあえず、自分のヤったことの責任は」
「きっちりとってきましょうね?お父様?」
すたすたと才人の両脇を固めたまま、二人は魔法の飛び交う中...
才人は抵抗しない。いや、抵抗できない。しちゃいけない気が...
その後に、マリーウェザーも続く。
二人は魔法合戦を繰り広げる二人の魔女の中間地点に目を付け...
そして、才人の両脇を抱えたまま、マリーウェザーに目配せす...
いつの間にか杖を手にしていたマリーウェザーは、唱えていた...
それは才人を遠慮なくふっとばし、二人の魔女の放つ魔法の中...
どっこぉん!
魔法の直撃を喰らい、才人はボロ雑巾のように宙を舞う。
「ちょ、あなたっ?」
「さ、サイトっ?」
二人の魔女は慌てて魔法合戦を止め、魔法を受け止めてボロボ...
なにはともあれ、屋敷が吹き飛ぶ前に、魔女たちの戦いは幕引...
結局この後、治療と称してシャルロットが才人をガリアに連れ...
そしてガリア王都で、才人を巡っての女の戦いが始まってしま...
それに呆れた子供たちは、各地に散っているという平賀の血統...
その旅がまさか、ハルケギニア統一国家を生み出す第一歩にな...
今のところ、可能性の一つでしかない。〜fin
終了行:
きっとこんな未来〜三人の魔法使い編〜 せんたいさん
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*注意事項*
このオハナシは作者が勝手に妄想したゼロ魔の未来SSです。
オリキャラオリ設定バリバリなので読む際には覚悟が必要です
それでは、覚悟完了された方だけどーぞ
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賞金稼ぎ。
賞金首と呼ばれる懸賞金のかかったものを、生き死にを問わず...
その賞金稼ぎたちの間で、最近噂になっている腕利きの賞金稼...
彼女は。
そう、『彼女』。その賞金稼ぎは、年端も行かない少女だとい...
短く刈り込んだ青い髪が特徴で、『風』系統の魔法を得意とし...
その武勇伝は、枚挙に暇がない。
曰く。
複数の賞金稼ぎが組んだ『黒の旅団』でも不可能だった、峠の...
曰く。
とある台地で数年間、水害を生み出し続けていた魔獣を、独力...
曰く。
トリステイン国王、『慈愛の女神』アンリエッタの暗殺計画を...
などなど。
ガリアの賞金稼ぎで、『青い髪の少女』を知らない者は、モグ...
あのハルケギニア始まって以来の賞金首といわれる『黒髪の男...
だが。
その本名を知る者は、賞金稼ぎの中には一人もいなかった。
何故なら彼女は、けして自分の名前を名乗らなかったから。
しかし、彼女はかつてガリアの裏世界で名を馳せた一人の騎士...
『雪風』と。
「ねえねえ、行き先アソコであってんの?」
「そうねえ。たぶんねー」
「たぶんて…。どう見ても切り立った崖だよね?なんもないよね...
そこは空の上。
本来は聞こえるはずのない明るい声が、風を切りながらそこで...
一つは高く響く、声変わり前の少年のような男の子の声。
一つは鈴を転がすような、綺麗な少女の声。
雲を切り裂き風に乗り、一匹の白い竜が悠々と空を飛んでいた。
その背に跨るのは、青い髪を短く刈り込んだ少女。
まだ成長する前の体を覆うのは羽織った黒い革のポケットの沢...
少女は竜に語りかけ、そして竜も言葉を返す。
ハルケギニアの竜の中でも喋れるほど知能が発達しているもの...
それは韻竜と呼ばれ、その殆どが息絶えたと言われる。
しかし。
風の韻竜であるその竜は、数少ないその韻竜の生き残りである。
その名前を、シャーイーネィリィと言った。ただこれは彼の一...
今は、その背に跨らせている少女に、使い魔として使役されて...
なんでも、召喚した者を堕落させる悪魔の名前らしいが、彼女...
シャーイーネィリィ自身は響きがカッコイイので元の名前より...
「ヴァル、ここで止めて?」
背中に跨る少女は、そう言ってヴァルファーレの首の付け根を...
そして、羽ばたいて浮かんだ揺れる韻竜の背の上で、まるでそ...
それこそが、彼女を卓越した風使いたらしめている理由。
自分の立つ場所の状態を瞬時に理解し、己の望む状態に己が体...
そう、彼女が、彼女こそが。
ガリアでも腕利きの、風使いにして賞金稼ぎ。『雪風』その人...
『雪風』は懐から細い杖を取り出すと、詠唱を始める。
呪文によって流れを変えた魔力が彼女の目の前に収束していく。
それは、空気中の水分を、『雪風』の身長よりも大きい、白く...
『アイシクル・ランス』の魔法であった。
巨大な氷の槍は、『雪風』の杖に合わせ、ゆらゆらと揺れる。
「んー…あのへんかなあ…」
『雪風』は何もない崖にどうやら何かを見つけたらしい。
そう呟くと、杖を軽く振り下ろす。
すると、氷の槍は崖に向かって一直線に空中を突き進む。
そして。
岩で出来た崖にぶつかって、四散…しなかった。
まるで、そこには『崖が存在していないかのように』、氷の槍...
そして響く轟音。
まるで、鉄の門扉を巨大な槌が叩くような音。
それは、『雪風』の追い求めていたもの。
ずっと、捜していた、捜し物。
「当たり…かな?」
「だね。この幻は間違いないね。『虚無』だね」
そう、彼女の捜し物、それは。
『虚無の担い手』『破滅の女王』『トリステインの大絶壁』ル...
彼女がトリステインから強奪したあるものを、手に入れるため。
そして『雪風』は、己が使い魔に命令を下す。
「…じゃあ行こうかヴァル。留守のうちにかっさらうよ」
「あいあーい。了解したねご主人。きゅいきゅい」
白い韻竜は羽ばたき、幻の崖めがけて急降下していった。
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ガリア王国。
王の権威によって治められるこの国の王家は、ハルケギニアの...
それは、現在の王家の成り立ちを考えれば当然と言えた。
現王は、前王ジョゼフ一世を斃し、その王座を奪い取った人物...
しかも、政治の腐敗や王家の圧制を機にした社会的正義のある...
それまで冷戦状態にあったとはいえ、表面上は平和を保ってい...
さらに現王は、前王の全ての家臣を政治より遠ざけてしまった。
いかに革命を成したとはいえ、今まで利権にありついていた者...
当然、現王を疎ましく思う貴族達は、裏で現王を暗殺しようと...
それゆえ、現王家は毎日のように暗殺者の襲来に晒されていた。
はずだった。
そう。ガリア現王家は、暗殺者にとって『鬼門』と呼べる存在...
それは、現王…女王シャルロット一世の、強大な魔力によるもの...
彼女は、公式に存在する唯一人の『エルフを越える者』である。
彼女の魔力は、人間の限界とされるスクウエアを越え、複数の...
さらに、彼女は魔力の容量だけでなく、その応用技術もずば抜...
彼女の扱う『エア・ハンマー』は、一般的なスペルにも関わら...
しかも、彼女の寝所は、彼女の使い魔である風韻竜の操る先住...
だから、彼女…ガリア女王、シャルロット一世を狙う暗殺者は、...
そう。
ガリア女王を狙う暗殺者は、どこにもいない。
そこは、ガリア王家の保養地の一つ。切り立った岩山に囲まれ...
「…今回はえらく直接的なのが来たわね」
そう言う青い髪の少女の目の前に、巨大な騎士が立っていた。
その騎士の身長は二階建ての家屋を越えるほど。その手に握り...
当然、騎士は人間ではない。
騎士の格好をした、巨大な魔法人形である。
「あらあらまあまあ。毒殺できないと悟ったら今度は過去の遺...
アンドリュー卿も随分手が込んでますわね」
青い髪の少女の隣には、もう一人、同じ色の髪の少女がいた。
二人は、全く同じ髪の色をしていた。
しかし、その身にまとう雰囲気は全く別。
最初に騎士に向かって言葉を吐いた少女は、真っ直ぐな、長い...
もう一人の少女の髪は、長さこそ変わらなかったが、ゆるくウ...
そして、その身に纏う服。
真っ直ぐ伸びた髪をかきあげ、不敵に騎士をねめつける少女の...
あくまで笑顔を絶やさない、ウェーブの髪の少女は、薄いブル...
目の前の巨大な騎士に全く動じない二人に、その脇に控える一...
「お、お前ら!これが何かわかってんのか!」
髭面の、どう見ても少女たちより齢を重ねているその男が慌て...
言われた少女達はもう一度騎士を眺める。
そして言った。
「ヨルムンガントでしょ?」
「ジョゼフ王の遺した、負の遺産の一つですわ。ゴーレムに魔...
二人の口調は、まるで図鑑にのっていた花の説明をするかのよ...
男はその態度に、言葉に、さらに饒舌になる。
「それだけじゃねえ!コイツの中身は全部鋼でできてる!ナリ...
言われて二人はもう一度よく『ヨルムンガント』を観察する。
確かに、記述にあるヨルムンガントよりもその体躯は小さく、...
しかし、それでも二人は慌てた様子を見せない。
「だから?」
「仰っている意味がよくわかりません」
二人の青い髪の少女は、そろって首をかしげた。
どうして、この男はいつまでも能書きを垂れているのだろう。...
二人の態度に、男がキレる。
「ああそうかい!なら地獄で後悔しなぁ!」
男はそう言ってスペルを唱えて杖を振り、ヨルムンガントもど...
ヨルムンガントもどきは鉄扉をこすり合わせるような鳴き声を...
それを見た少女達は。
「…あーあ、めんどくさ。さっさとやるにはアレ使わないと…。
髪もドレスも痛むからイヤなんだけどなあ…」
真っ直ぐな髪の少女は、そうぼやく。
ウェーブの髪の少女は、ぼやいた少女に一言だけ言って、そそ...
「それじゃあ、あとはお任せしますわ、姉様」
真っ直ぐな髪の少女は、下がる少女に文句を言おうとするが、...
すさまじい轟音を立て、ヨルムンガントもどきの拳が大地に大...
しかし、少女はそこにはいない。
こっそり唱えていた『フライ』の魔法で、大きく横に移動して...
「それで逃げたつもりかぁ!」
男の杖が少女を指す。
ヨルムンガントもどきは大地をえぐりながら拳を引き抜き、少...
少女は自分を見つめる目のない眼窩を睨み返すと。
左手で、自分の右手の手首を掴んだ。
そして、軽く捻ると。
ぱきん!
乾いた音を立て、少女の右手は肘から先が外れる。それは、魔...
何のつもりだ?
男は一瞬警戒して、ヨルムンガントもどきの動きを止める。
しかし、すぐに思い直す。
そうだ、きっとあの腕には自衛用の銃が仕込んであるか、爆薬...
そしてヤツは、それでヨルムンガントを迎撃しようとしている。
男の顔が酷薄に歪む。
だからなんだ。それがどうした。
人間の扱える火器で、ヨルムンガントがどうにかなるものかよ─...
男は勝利を確信する。
そして、その心に余裕が生まれた。
「何のつもりだ?それを俺にくれるから見逃せってか?
残念ながらムリだなあ、フローラ第一王女サマぁ!」
その余裕が生んだ台詞が。一瞬の躊躇が。
彼女。フローラ・ヒラガ・オルレアン──ガリア王国第一王女に...
すでに完成した呪文を、フローラは解き放つ。
それは、『フライ』で飛び退った瞬間から、男が台詞を放つ前...
前半は、魔力の圧縮。後半は、制御・維持のための魔力回路構...
成った呪文が、音すらたててフローラの存在しない右手の部分...
それは、男の位置から見て、ただの『ライト』の呪文に見えた。
光る青白い光球。それは男の既知からすれば、『ライト』の呪...
だが。
次の瞬間、フローラを中心に起きた風が、それがただの光球で...
その光球がフローラの右拳の位置で安定した瞬間、空気が『弾...
まるでそこを中心にして『風』系統の魔法を使ったかのように...
しかし、その風は。
「うわちぃっ?」
その風に撫でられた瞬間、男は飛び上がる。
そう、その風は『熱かった』。
まるで、そう、まるで、火球の呪文をすぐ近くで炸裂させられ...
しかし温度を感じないヨルムンガントもどきは、そんな風など...
な、なんにせよただのこけおどしだ!これで終わる──。
男は勝利を確信していた。
だが。
ばぢばぢばぢばぢばぢぃぃぃぃぃぃっ!
とんでもなく耳障りな、まるで特大の『雷光』の呪文が炸裂し...
それは、フローラとヨルムンガントもどきのいる場所から響い...
男はわが目を疑った。
ヨルムンガントが、溶けた───?
フローラに殴りかかったはずのヨルムンガントもどきの右腕が...
まるで、溶岩のように。
そして、その奥には。
下腕のない右腕の先に光球を掲げ、雄雄しく立つ、ガリア第一...
彼女はその光球を一振りする。
すると、まるで鞭のようにその光球が伸び、飴細工のようにヨ...
なんだ、アレは?
男の目は驚愕に見開き、未知の力に畏怖が沸き起こる。
フローラはそんな男の視線を真正面から受け止め、言った。
「『焔の腕』。フローラ様謹製の魔法よ。この『焔の腕』で灼...
生まれながらにして炎の魔力を持っていたフローラは、ある日...
そしてその結果…右の拳の位置で安定した超々高温の熱球は、彼...
それ以来、フローラの右下腕は義手である。
そして、この『焔の腕』を使う時には、義手を外さなくてはな...
「さて…それじゃあアンタも、灼いてあげようか」
フローラは白い右手で男を指す。
まるで人差し指のように、その『焔の腕』から、ぬるりと超高...
「く、くそぉっ!」
男は慌てて振り返り、逃げ出そうとする。
その目の前に。
ざぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
突如、男の三方を囲うように、青い壁が現れた。
「逃がしませんわよ。あなたにはアンドリュー卿の手下だって...
満面の笑顔を絶やさぬまま、残りの一方を塞ぐように立ってい...
「フィオナ王女かっ…!」
男のもう一人のターゲット。
フローラ第一王女の双子の妹、フィオナ・ヒラガ・オルレアン...
「チェックメイト、ですわね。三方を水の壁に囲まれ、後ろに...
獲物を追い詰めた狩人の鼻歌のように明るい声で、フィオナは...
しかし、男は諦めない。
こんな、ところで終わってたまるか…!
男はフィオナの台詞を反芻する。
そうだコイツ、今『水の壁』だと…!
男は、目の前の濃紺の水の壁を睨む。
ぱっと見たところ、色以外で普通の水の壁となんらかわりはな...
上空は斜めに合わさった三方の壁で見えないが、高さはそれほ...
どうやらこの第二王女は、長女と違って凡庸なメイジのようだ。
ならば。
男は呪文を唱える。
『フライ』で突っ切って逃げてやる…!
男の呪文が何かを察したのか、フィオナは慌てる。
「あ、お待ちになって!」
「待つか間抜け!」
そう叫んで男は、風を纏った結界ごと水の壁に突っ込んだ。
そして。
あっという間に水の壁に呑まれて、その中でバラバラになって...
ただの水の壁に見えたそれの内部は、超高圧の水が超高速で循...
それは触れたものを一瞬で取り込み、破壊してしまう。
フィオナはその壁を、『深淵の扉』と呼んでいた。
彼女もまた、生まれながらにして水の魔力を持つ、生まれつい...
「…あーあ…。壁の中は危険だから、ムチャはいけませんって言...
壁の中でどんどん細切れになっていく男に、フィオナは両手を...
それは、母から伝え聞いた父親の故郷の、死者への作法だった。
「あらら…。死んじゃったかあ…」
その後ろから、フローラがやってくる。
そしてフィオナに倣い、水の壁の中で細切れになってしまった...
フィオナは黙祷を終えると、呪文を唱えて『深淵の扉』を土の...
彼女なりの、男の土葬のつもりだった。
男の血肉は土に融け、この台地の植物の栄養分となるだろう。
二人は、略式の葬儀を終えると、本来の目的を果たすため、歩...
この二人は。
ガリアの第一王女と第二王女は。
常に、こうした暗殺の危機に晒されている。
女王を狙えないと悟った暗殺者は、二人の王女を狙っているの...
しかし。
女王は気付いていた。この二人は、女王すら越える魔法の才に...
その才を伸ばすため…あえて、女王は二人の姫を放任で育ててい...
女王の思惑通り、逆境に揉まれた二人の王女は、今やガリアで...
そして。
この二人がこの保養地にいるのは、保養のためではなかった。
二人は、ある人物を探し出すために、母親の命でここへとやっ...
生まれた時に身体が弱く、二人とは別に育てられた、三人目の...
彼女は、乳母の庇護の下、すくすくと育てられ、最近まで王宮...
ある日、彼女は書置きだけを残し、旅立ってしまう。
その書置きにはこう書かれていた。『父さんを捜しにいきます...
それから二年近く、三人目の王女とは音信が途絶えている。
そして、その三人目の王女が、この近くの村で目撃されたらし...
三人目の王女の名は、マリーウェザー・ヒラガ・オルレアン。
外見的特徴は、二人と同じ青い髪。それを、動きやすい短髪に...
二人は行方不明になった第三王女を王宮へ連れ戻すため、ここ...
この、切り立った岩山に囲まれた、保養地へ。
『雪風』の降り立った場所は、切り立った岩山を切り開いて作...
その鉄扉の、彼女の『アイシクル・ランス』が命中した部分が...
ここが彼女の目的地。
『虚無の担い手』の潜む、屋敷であった。
「さーて、どうしよっかなあ」
使い魔の背から降りた『雪風』は、鉄扉を前に思案する。
「さくっといっちゃえばいいと思うよ。『杏よりウニが安し』...
「…それを言うなら『案ずるより産むが易し』でしょうよ」
そうやって使い魔と間抜けな掛け合いをしていると。
不意に、耳障りな音を立てて鉄扉が開いた。
そこから現れたのは、動きやすそうな黒いのベストに白いブラ...
その手には、古ぼけた大剣を携えている。
笑顔を湛えたその視線はしかし、油断なく『雪風』を捉える。...
「ずいぶん乱暴なノックじゃない?弟が怯えてたわ」
茶褐色の髪の少女は、そう言うと大剣の剣先を地面に引きずら...
まるで『雪風』を値踏みするように、一定の間合いからは寄っ...
それは、彼女の持つ大剣の間合いではない。その間合いでは飛...
しかし茶褐色の髪の少女は、百も承知と言わんばかりに、一定...
『雪風』は少女の態度にいくつかの仮説を立てる。そして、最...
この少女には、飛び道具に抗する手段がある。それも、ほぼ完...
若いながらに賞金稼ぎとして培ってきた状況分析能力を、『雪...
「…一個聞いていい?」
「何?変な事聞かないでよ」
「名前。教えて」
もし自分の予想通りの名前が返ってきたら。
自分では、この少女に勝てない。
いや、このハルケギニアで、彼女の血統に勝てるメイジはいな...
彼女の血統にだけ許された魔法は、あらゆる魔力を打ち消して...
その魔法を彼女が身につけているという確証はない。だが、そ...
そして、茶褐色の髪の少女は応える。
「マナ。マナ・ヒラガ・ヴァリエールよ」
その応えは、『雪風』の予想した最悪の答えだった。
彼女こそは『虚無』の血統。あらゆるメイジの頂点に立つ、究...
「…そっか。じゃあ降参するわ」
「え?ちょっと早すぎないご主人っ?」
あまりにも早いギブアップに、一番驚いたのは『雪風』の使い...
しかし『雪風』は軽く肩をすくめると、手にした杖と、懐に忍...
その態度に驚いたのは、『雪風』の使い魔だけではなかった。
対峙していたマナも、驚いた顔で歩みを止める。
「…随分、諦めがいいのね?拍子抜けしちゃった」
言って背負っていた鞘を手にして、手にした大剣をそこに収め...
その際に、掲げられていた大剣がぼやいた。
「…なんでえなんでえ。キバって出てきたのに俺っち出番なしか...
『雪風』はその剣の名前と特性も熟知していた。
マナの掲げていた大剣の名はデルフリンガー。吸魔の力を持つ...
虚無の魔法だけでなく、この剣まで使われたとあっては、メイ...
『雪風』は軽く自虐的に笑うと、マナに言った。
「吸魔の剣もった『虚無』に喧嘩売るほど間抜けじゃないつも...
それに、喧嘩しにきたわけじゃないし。さっきの魔法も、『...
『雪風』の言葉に、ふーんそうなんだ、ととりあえず納得する...
そして、当然の疑問を彼女にぶつける。
「で、あなた名前は?」
『雪風』は応えた。
人前では全く名乗らない、その名前を。
「マリーウェザー。
マリーウェザー・ヒラガ・オルレアン。マリーでいいわよ。
で。
たぶん、あなたの腹違いの姉妹だと思うよ」
それを聞いたマナの目が、点になった。
二人の王女は、切り立った岩山の前にいた。
二人は、ある情報を元に、第三王女がこの近辺にいるとアタリ...
この岩山には。
ぱっと見はわからないが、『虚無』の幻術によって巧みに隠さ...
現存する魔王とも言われる『虚無』に喧嘩を売る馬鹿はほとん...
何故、第三王女はそんな場所に向かったのか。
理由はカンタンである。
そこに、彼女らの父親がいるからである。
彼女達ガリアの三王女は、父親の顔を知らない。
ただ、母から彼女らの父親は素晴らしい人で、母を助け、世界...
それが今回の第三皇女失踪の引き金となったのは火を見るより...
そして、この二人も。
失踪した第三皇女を捜しにいくというのは建前で、結局はこの...
二人は緊張した面持ちで、岩山を見上げる。
「さ、さて。いよいよね」
「…どうしましょう。緊張してきました」
二人は、まだ見ぬ瞼の父に憧れを抱いていた。
物心付いた頃から美化された物語をさんざん聞かされていれば...
そして、二人は、『フライ』の詠唱に入る。
一息にこの山を越えようというのだ。
しかしその瞬間、二人の立つ場所を黒い影が覆う。何か大きな...
二人は揃って空を見上げる。
そこに浮かんでいたのは、二人がいつか見た、純白の空中戦艦。
ガリア両用艦隊旗艦、『シャルル・オルレアン』。
彼女らの母親以外動かすことの適わない、ガリアの空の最強戦...
つまり。
ここに、母が、シャルロット一世が来ている、ということだ。
「…母様…来るんなら一緒に連れてきてくれてもいいのに…」
そう愚痴るフローラだったが。
女王には、彼女らを同道させたくない理由があった。
彼女らは間もなく、その理由を知ることになる。
一方その頃、岩山の中腹に建てられた屋敷の中。
その門扉を叩いた青い髪の少女は、客人扱いで、応接間に通さ...
しかし流石に杖は取り上げられ、使い魔は屋敷の外で鎖に繋が...
だが、マリーウェザーはそんな事は微塵も気にせず、ソファー...
「そっかあ。『虚無』も大変なのね」
「『虚無』が、っていうか、ママの躾けがねー。
あのひとミョーにプライドだけは高くってさ。ほんと、パパ...
今は、出された紅茶を前に『虚無の担い手とはこうあれ』と口...
最初は異母姉妹という事に驚いていたマナだったが、そういえ...
ママとデルフリンガー曰く、パパは『ハルケギニア始まって以...
ある程度事情を飲み込んだマナは、弟のショウに、マリーウェ...
今その節操ナシは、裏庭で薪割りをしているはずだった。
そして、二人の話題がお互いの母親から、父の話に移ろうとし...
廊下から、人の足音が聞こえた。
それも、普通に歩く足音ではない。酷く慌てた様子の駆け足だ。
それはすぐに応接間の前で停まると、扉が乱暴に開かれた。
「マナっ!すぐ出る準備をしなさい!ここは間もなく戦場にな...
慌てた顔で部屋の扉を乱暴に開け放った冴えない黒髪の中年の...
平賀才人。
二人の父親にして、伝説の使い魔『ガンダールヴ』。
『最強の種馬』『究極の節操ナシ』『フラグ回収率100%男』な...
そして現れた才人は、酷く慌てていた。
普段何事にも動じない父が、ここまで慌てるのは、母の逆鱗に...
…なら大したことじゃないのかも。
「…ん?誰だその子」
慌てていた才人だったが、さすがに自分の娘の前に似たような...
視線を受けたマリーウェザーはソファーから立ち、略式の礼を...
「初めまして、お父様。
マリーウェザー・ヒラガ・オルレアンです」
その名前を聞いた才人の脳裏に、かつて愛し合った、青い髪の...
それは目の前の少女とダブり、彼女がタバサと自分の間に出来...
そして才人は思いつく。
彼女なら、この状況を何とかできるかもしれないと。
「…!?ってことは!ちょっとマリーウェザー、一緒に来てくれ...
挨拶もそこそこに、才人はマリーウェザーの手を取り、駆け出...
「え?え?え?」
状況が理解できず、マリーウェザーは才人に引きずられるよう...
「…いってらっしゃーい…」
応接間に残されたのは、飲みかけの紅茶と、マナだけだった。
中庭では、信じられない光景が繰り広げられていた。
「ちょっとアンタ!わざわざ軍艦で乗りつけるなんていい度胸...
「…私は、自分の夫を取り戻しに来ただけ。邪魔しないで」
「だーーれーーがーー!誰の夫だってえのよー!」
ぼかぁん!どっこぉん!
言葉と同時に漏れる魔力が、あっちこっちで爆発を起こす。
すでに原型を留めていない中庭では、二人の魔女が戦っていた。
一人は伝説の『虚無の担い手』ルイズ・フランソワーズ・ヒラ...
才人の妻にして主人、二人の子供をもうけていまだなお胸のな...
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夫を取り戻さんとする強い意志の宿る瞳は眼鏡の下。青く長く...
三つ子を産んでなおボディーラインの崩れなかった、メリハリ...
それは、ヨルムンガントの技術を応用して作られた、魔法の鎧...
一切の魔法を弾き、装着者の魔力を増幅する力を持つ。一般兵...
その状態の女王をもってして、虚無の担い手は対等にやりあっ...
「な、なんとか二人を収めらんないかなっ!?」
ぽんぽん飛び交う魔力を避けながら、才人は中庭への入り口で...
しかし。
マリーウェザーは首を振る。
「ムリだよー。魔道外装まで持ち出してるってことは母様本気...
父様が出てかないとダメだってー」
肩をすくめてそう言うマリーウェザー。
そこへ。
「あ、いた!ちょっとマリーあなたどこ行ってたの!」
「あらあらまあまあ。こんなところにいたんですのね」
二人の、青い髪の少女がやってきた。
フローラ王女とフィオナ王女。
二人は、『シャルル・オルレアン』を追って、ここへやってき...
すると、甲板から、魔道外装を纏った母が、出撃するのが見え...
そして、女王の急襲した屋敷に侵入すると、この有様である。
物陰で様子を見ていると、そこへ、どこかで見た顔が冴えない...
そして、マリーウェザーは当然のごとく、二人に父を紹介する。
「あ、久しぶりフローラ姉、フィオ姉。
ちょーどよかった。紹介するね。
この人、うちらの父様。サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ...
二人の目が点になる。
次いで、フローラが無言で才人を指差す。『これが?』という...
マリーウェザーもまた無言で、首を縦に振る。
二人の中で、『強くて優しくてカッコイイ、絶世の美中年にし...
…わかる。分かるよそのキモチ。でも現実ってこんなもんなのよ...
凍りつく姉達を見て、マリーウェザーはそう思った。
そして凍りつく二人に、才人は懇願した。
「そ、そうか!君らもシャルロットの娘か!
なんとか上手いことシャルロット止めらんない?」
あまりにも情けないその態度に、二人は呆れた。
そして。
「初めましてお父様。女王シャルロットが一子、フローラ・ヒ...
「同じく、フィオナ・ヒラガ・オルレアンですわ、お父様」
正式な礼をそろって綺麗に決めて。
どう返したもんかともごもごしている才人の両脇に立つと。
「ど、どうしたのかな?二人とも?」
何か嫌な予感がした。
しかし、才人は逃げられない。何故だか体が動かない。
彼の本能は悟ったのだ。
…きっと、これがたぶん、最も早く場を収める方法なんだと。
二人は才人の両腕をがっしりと抱え込むと。
「とりあえず、自分のヤったことの責任は」
「きっちりとってきましょうね?お父様?」
すたすたと才人の両脇を固めたまま、二人は魔法の飛び交う中...
才人は抵抗しない。いや、抵抗できない。しちゃいけない気が...
その後に、マリーウェザーも続く。
二人は魔法合戦を繰り広げる二人の魔女の中間地点に目を付け...
そして、才人の両脇を抱えたまま、マリーウェザーに目配せす...
いつの間にか杖を手にしていたマリーウェザーは、唱えていた...
それは才人を遠慮なくふっとばし、二人の魔女の放つ魔法の中...
どっこぉん!
魔法の直撃を喰らい、才人はボロ雑巾のように宙を舞う。
「ちょ、あなたっ?」
「さ、サイトっ?」
二人の魔女は慌てて魔法合戦を止め、魔法を受け止めてボロボ...
なにはともあれ、屋敷が吹き飛ぶ前に、魔女たちの戦いは幕引...
結局この後、治療と称してシャルロットが才人をガリアに連れ...
そしてガリア王都で、才人を巡っての女の戦いが始まってしま...
それに呆れた子供たちは、各地に散っているという平賀の血統...
その旅がまさか、ハルケギニア統一国家を生み出す第一歩にな...
今のところ、可能性の一つでしかない。〜fin
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