ゼロの使い魔保管庫
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[[30-288]]
#br
授業中の図書室。
本来ならば、人気のないはずのその部屋の中にサイトは居た。
「そろそろかな?」
独り言のように呟かれた言葉に、傍らのタバサが頷いた。
時計の在る生活に慣れきっているサイトと違い、この世界の...
本の読める様になったサイトにとって、図書室は時間をつぶ...
――コンコン
ドアが小さな音を立てる。
「どうぞ」
サイトの言葉と同時に、教師の目を避けた人影がすばやく部...
廊下を走ったらしく軽く息を弾ませた少女は、モンモランシ...
「……分かったの?」
「もちろん」
にこにことサイトが応じると、無言でテーブルに金貨が乗せ...
サイトが枚数を数え終えると、タバサに視線を送る。
「校舎裏、放課後……今日も約束済み」
目の前でプレッシャーが膨れ上がる。
(慣れないなぁ)
サイトは視線を彷徨わせた。
「ねぇ、サイト言うまでもないけど」
「分かってるよ、モンモンはギーシュの浮気のことを調べてく...
俺たちは調べてない、誰かに聞かれても言わない……その代わ...
浮気を知った直後のモンモランシーと会話するのは、サイト...
搾り出すような言葉に、モンモランシーは軽く頷いた。
「あんた達がこんな事してるなんて、誰にも言わないわよ」
相手の弱みを握っていると言う安心感が、モンモランシーの...
「でも、どうやって調べてるのよ?」
「……企業秘密だな」
傍らで、タバサがこくこくと首を振っていた。
怪しむように二人を見つめていたモンモランシーだったが、...
「今度こそ、別れてやるっ」
勢いよく振り向くと、二人を残して立ち去った。
「……ギーシュも良くやるよなぁ……こわくねーのかよ」
サイトは自分のことを棚に上げた。
モンモランシーが立ち去ったドアを、心配そうに見つめてい...
「別れたりはしねーだろ、なんだかんだ言って仲良いし」
無言のままサイトの方を見たタバサが、軽く息を吸うと一息...
「でもでも、これでギーシュさまが困ると、ヴェルダンデに怒...
……タバサではなかった少女は、そわそわと読むフリをしてい...
姿を借りている本人が見たら、眉を顰めるか、杖の一撃が飛...
「大丈夫だって、モンモンがギーシュの事調べさせるのは、別...
「そんなの、握られてる側のサイトの言うことなんて信用でき...
サイトの手から本を奪い返すと、その本でばしばしとサイト...
傍目には、小さい女の子がじゃれているだけに見えるが、手...
「ちょっ、あーもう、落ち着け」
本を取り上げても埒が明かないと感じたサイトは、シルフィ...
その小さな身体を無理やり押さえつけた。
「大丈夫だって、これで何度目だと思ってるんだよ」
サイトに拘束されながらも、もぞもぞと抵抗を続けていたシ...
「エッチなの、きゅい」
「ちょっ」
「お姉さまの身体を無理やり押さえつけて、サイトはエッチな...
絡み合ったまま耳元で囁かれる言葉に、真っ赤になったサイ...
「な、なっ、なにをっ」
「いーってやろー、いってやろーなの、お姉さまにいってやろ...
「ま、まて……」
「ついでに、ルイズにもいうのー」
……サイトの脳裏には、『ロリコン』の十字架を背負った自分...
それ以前に、物理的な意味での生命の危機が……
「ま、待ってくれっ」
「じゃー、ご褒美に色をつけるのー、きゅい」
事の起こりは使い魔同士の気安さから、シルフィが他の使い...
「サイトも使い魔だから、皆に言いたいことが在るなら、シル...
そんな親切心からの申し出だったが、サイトはそれを利用し...
「使い魔って事は、主人の側にずっと居るんだよな……」
「きゅい?」
今更ながら、サイトはお金が無い。
年金も、次回の支給は遥かに彼方。
騎士隊副隊長に昇格し部下も出来た。
学院に連れ帰った、テファに良い所を見せたいし、
ルイズやタバサ、シエスタにだって、何かを買ってあげたい...
が、お金が無い。
「じゃあ……さ、皆にこういう事を聞いてもらいたいんだけど……」
――情報は、お金に成った。
情報屋として有名に成りすぎると、情報の入手経路を不振が...
顧客には一人一人口止めし、本来手に入らない筈の情報を切...
そして……
「これ、お礼な、ありがとうシルフィード」
「きゅっぃいぃぃ!」
単なる食材が、高価な情報に化ける錬金術。
最初の一回は、初期投資と思い切りシルフィードの好物を提...
「あ、ヴェルダンデの分はどばどばミミズの詰め合わせが良い...
「明日買いにいっとくよ」
何もかもが順調だったが……
「シルフィは、たいぐーの改善をよーきゅーするのっ、きゅい」
「お、落ち着いてくれ、シルフィード」
なんだかいきなりピンチだった。
「お肉最初の一回だけじゃ、物足りないの」
「な、何が望みなんだ……」
「もう一回馬がいいのっ」
「う、うま?」
「うっうっ馬旨ーなのっ」
シルフィは謎の踊りを踊っている。
「も、もう……い、一頭?」
「……嫌なら……」
サイトは崩れ落ちた。
「あとー、お姉さまの姿は窮屈なの、いつもの格好がいいの」
「いや……目立つから、それ、図書室で会う以上、タバサの格好...
むーと、頬を膨らませたシルフィードが、怒った様に続けた。
「サイトも、ないぺたなお胸より、ぽよぽよが側に有った方が...
ルイズかタバサの耳に入れば、その場で抹殺されそうな事を...
授業中とはいえ他人に聞かれれば自分まで抹殺されそうなそ...
「お、落ち着いてくれ、シルフィード……俺はっ……俺はっ」
「きゅい?」
身を裂かれるような苦悶の後、サイトは一つの言葉を口にし...
「無いほーが好きなんだぁぁぁぁぁ」
――サイトの中で、取り返しのつかない何かが砕けた。
が、
「じゃー、仕様が無いの、お姉さまで我慢するの……あ、ルイズ...
「タバサがいーんです、はい」
ぐったりと脱力したサイトは、何も考えられないままそう伝...
引き換えにした何か大きなものの代わりに、涙した。
「じゃー、お馬さんは明日買っといてねー」
――その追い討ちは、サイトの財布を直撃し、
「あ、赤字だぁぁぁぁぁ」
悪銭身に付かずを体現したサイトは、次の日泣きながら近所...
タバサは首を傾げていた。
(おかしい……)
サイトを始め、数人がシルフィードの人間化を知った以上、...
「太った?」
「きゅい? な、何のことか分からないの。そ、それにっ、お...
怪しかった。
「この、ぽっこり下腹はどういうこと?」
「きゅ、きゅい……さ、さっぱりなの、おちびさんは自分があち...
ガス
杖の一撃は、思いの外重い音がした。
どうやら無意識に力を入れすげたようだ。
「素直に喋る」
「な、内緒なの、サイトとお約束したのっ」
余分な一言だった。『サイトとお約束』を聞いた、タバサの...
「だ、駄目なの駄目なの、内緒なの、そんな目をしても……」
「……サイトに聞いてくる」
シルフィードとサイトだけの秘密。
その存在がタバサの心を乱し、必要以上に荒々しい動作でシ...
「い、痛っ」
「邪魔」
「ま、まって、お姉さま」
深い怒りを湛えたタバサの様子に、シルフィードは慌ててタ...
つい先日、馬一頭丸まるたかった所なのに、この上タバサに...
シルフィードはそう思い、タバサを止めるために声を張り上...
「サ、サイトはサイトは悪くないの、お姉さまっ」
足を止めたタバサに、畳み掛けるようにシルフィードは続け...
「サイトは、サイトはただシルフィの肉欲を満たしてくれただ...
……シルフィードさん、それ意味ちがう……
――突っ込むものは誰一人無く。
「に、肉?」
「そーなの、シルフィの肉欲なの」
タバサが足を止めた事に勢いづいて、シルフィードはタバサ...
「お姉さまと違って、シルフィの身体は大人なの。
色々と辛いの、我慢できない時が在るの」
「え、えと……その」
「身体が鳴いて眠れない夜だって在るのぉぉぉっ」
――主にお腹が、きゅいきゅいと。
「そんな時、サイトはシルフィの中を満たしてくれるの、幸せ...
だから、この事でお姉さまがサイトをいじめるのは駄目なの...
「ひぅ? あ、あの……え……と……」
余りにも余りな使い魔の告白に、タバサは混乱していた。
混乱はしていても、足元に密着するシルフィードの身体が――...
身体は<大人>だと言うことを証明していた。
「ちょっと前から、ちょくちょくサイトがくれてたの、黙って...
完全に沈黙したタバサが、更なる説明を求めている。
そう考えたシルフィードは、ぽつぽつと思い出すままに話を...
「あの、あのね、お姉さま、シルフィずっとよっきゅーふまん...
だから、サイトから言われた時、嬉しくって、ついつい答え...
その一言に、ぴくりと反応したタバサが搾り出すように呟い...
「サイトが……言い出したの?」
「で、でもシルフィも嫌じゃなかったからっ、だからっ」
膨れたお腹に手を当てながら、タバサは確かめた。
「コレが……その結果?」
暴飲暴食の果てに膨れたお腹を見ながら、シルフィードも答...
「そうなの」
――なにか、どこかで食い違っていた。
勘違いであって欲しいと、自分の誤解ならそれで良いと、タ...
「サイトに、もらったの…… ど、どんな気分だった?」
興味が有って聞いているつもりは無いのに、どうしても声が...
「あの……ね、暖かくて甘噛みすると、びくびく暴れて……」
!
「咥えたまま、舌で弄ってると必死になってるのが分るの……そ...
「そ、それでっ!」
「もう、限界って思った時に、強く吸い上げたら、お口の中に...
何かを思い出して、うっとりとした様子のシルフィードを、...
「びくんって成って、動かなくなったんだけど、シルフィまだ...
「た、足りなかったの?」
「うん、だからね、サイトにもう一度お願いしたの、最初は駄...
何度も何度もお願いして、もう一度もらったの」
「な、何度もおねだり……」
シルフィードの幸せな記憶を反芻しながら、よだれでも垂ら...
「それで、この間、たーーーっぷり貰ったの」
「た、たっぷり……」
「その時サイトに、『これからは、何でも言うことを聞くんだ...
「な……なんで……も……」
それからのシルフィードの言葉は、一切タバサの耳に入るこ...
「と、言うことなの……あれ? お姉さま? どしたの? きゅ...
「な、なんでも無い」
途中でタバサが腰砕けになった為、二人の立ち居地は逆転し...
シルフィードの足に縋って、立とうとしながらタバサは何気...
「サイトは……その……胸が好きだった?」
シルフィードに見えないところで、そっと胸元に手をやる。
つい先日まで気にもしていなかった事が、助けてもらったあ...
今では小さなコンプレックス。
(きっと、大きいのが好きなんだ)
使い魔に先を越された自虐的な思考のままに、タバサは聞い...
「? よく分らないけど、サイトは『無い方がすき』らしーの...
「! う、うそっ、だ、だって……」
灯った小さな希望に、タバサの胸は弾む。
考えてみれば、小さな胸が好きでもおかしくは無いのだ、サ...
あ……そう……か、ルイズの姿で……
変幻自在の風韻竜だ。
となればもちろん好きな人の姿を取らせたに違いなかった。
「……ルイズに……変身した?」
「? してないの、それに……」
――サイトと一緒のときは、ずっとお姉さまの姿だったの――
刻が止まった。
「……ぇ?」
「聞こえなかった? サイトと一緒の時は、ずっとお姉さまの...
「な……なん……で?」
んー、首を傾げたシルフィードは、ぽんと手を打つとサイト...
「『タバサが良いんだ』って」
「う、うそ……」
「えっと、なんだっけ? あーそうそう」
何かを思い出そうとするシルフィードを、タバサは息を呑ん...
そして、シルフィードの一言は……
「お姉さまの方が、んと、『具合が良い』らしーの」
……ぐ?
タバサの視線が、自分の身体をなぞりスカートの下を見つめ...
「お姉さまが、『一番良い』って」
「ひぅ……ぇ……と……あ、あれ? うそ……あの……」
(ぐ、具合ってその……あの……た、試したの? って言うか……)
ゆらりと立ち上がったタバサが、杖を構えた。
「あれ? お姉さま?」
「……わたしの姿で?」
「きゅい? そーなの、お姉さまの姿で」
「サイトと?」
「う? サイトとしたの」
「 死 ん じ ゃ え 馬 鹿 あ ぁ ぁ 」
その日、風韻竜は自分で飛ぶより遥かに速く大空を舞った。
いつもはざわざわと会話の絶えない朝の食堂が、妙な緊張感...
「……はぁ……」
寝不足らしいタバサが、幾度目かの溜息を吐いた。
――な、何が有ったんだ?
――な、なんだ? 妙に色っぽいぞ? って俺は、ロリコンじ...
――いっつも、無表情なタバサのあの顔……昨日彼女に一体何が……
その日のタバサの様子は、いつもと余りにも違いすぎて……
「ちょっ、タバサ? どうしたの? 大丈夫?」
優しい親友が慌てて駆け寄ってくるほどで、
「具合でも悪いの?」
「ぐ、具合は……ぃぃらしいの……」
「? 自分の身体の事でしょう?
「し、知らない、べ、別に確かめたり、試したりしてないっ!」
余りにも不審だった。
キュルケが更に質問する前に、タバサが慌てて立ち上がる。
「あれ? タバサ……おはよー」
「お、おっ……おは……おはっ……おは……」
慌てふためくタバサという珍しいものを、食堂中の生徒が見...
――原因はこいつか。
生徒一同の視線が、サイトに集中した。
「っ!」
ぱたぱたと、軽い足音を立てて、居た堪れなくなったタバサ...
何が起こったのかさっぱり理解していないサイトに、キュル...
「ちょっと、サイト……顔貸してくれるかしら?」
「キュ、キュルケ? な、なんで?」
「……その後は、わたしも話を聞きたいわね……」
「ル、ルイズ? お、俺にも何のことだかさっぱ……」
「「「「「とぼけんなぁぁぁぁぁ」」」」」
――学院の生徒の心が一つになった瞬間だった。
その日から、サイトの姿を見たものは…………
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授業中の図書室。
本来ならば、人気のないはずのその部屋の中にサイトは居た。
「そろそろかな?」
独り言のように呟かれた言葉に、傍らのタバサが頷いた。
時計の在る生活に慣れきっているサイトと違い、この世界の...
本の読める様になったサイトにとって、図書室は時間をつぶ...
――コンコン
ドアが小さな音を立てる。
「どうぞ」
サイトの言葉と同時に、教師の目を避けた人影がすばやく部...
廊下を走ったらしく軽く息を弾ませた少女は、モンモランシ...
「……分かったの?」
「もちろん」
にこにことサイトが応じると、無言でテーブルに金貨が乗せ...
サイトが枚数を数え終えると、タバサに視線を送る。
「校舎裏、放課後……今日も約束済み」
目の前でプレッシャーが膨れ上がる。
(慣れないなぁ)
サイトは視線を彷徨わせた。
「ねぇ、サイト言うまでもないけど」
「分かってるよ、モンモンはギーシュの浮気のことを調べてく...
俺たちは調べてない、誰かに聞かれても言わない……その代わ...
浮気を知った直後のモンモランシーと会話するのは、サイト...
搾り出すような言葉に、モンモランシーは軽く頷いた。
「あんた達がこんな事してるなんて、誰にも言わないわよ」
相手の弱みを握っていると言う安心感が、モンモランシーの...
「でも、どうやって調べてるのよ?」
「……企業秘密だな」
傍らで、タバサがこくこくと首を振っていた。
怪しむように二人を見つめていたモンモランシーだったが、...
「今度こそ、別れてやるっ」
勢いよく振り向くと、二人を残して立ち去った。
「……ギーシュも良くやるよなぁ……こわくねーのかよ」
サイトは自分のことを棚に上げた。
モンモランシーが立ち去ったドアを、心配そうに見つめてい...
「別れたりはしねーだろ、なんだかんだ言って仲良いし」
無言のままサイトの方を見たタバサが、軽く息を吸うと一息...
「でもでも、これでギーシュさまが困ると、ヴェルダンデに怒...
……タバサではなかった少女は、そわそわと読むフリをしてい...
姿を借りている本人が見たら、眉を顰めるか、杖の一撃が飛...
「大丈夫だって、モンモンがギーシュの事調べさせるのは、別...
「そんなの、握られてる側のサイトの言うことなんて信用でき...
サイトの手から本を奪い返すと、その本でばしばしとサイト...
傍目には、小さい女の子がじゃれているだけに見えるが、手...
「ちょっ、あーもう、落ち着け」
本を取り上げても埒が明かないと感じたサイトは、シルフィ...
その小さな身体を無理やり押さえつけた。
「大丈夫だって、これで何度目だと思ってるんだよ」
サイトに拘束されながらも、もぞもぞと抵抗を続けていたシ...
「エッチなの、きゅい」
「ちょっ」
「お姉さまの身体を無理やり押さえつけて、サイトはエッチな...
絡み合ったまま耳元で囁かれる言葉に、真っ赤になったサイ...
「な、なっ、なにをっ」
「いーってやろー、いってやろーなの、お姉さまにいってやろ...
「ま、まて……」
「ついでに、ルイズにもいうのー」
……サイトの脳裏には、『ロリコン』の十字架を背負った自分...
それ以前に、物理的な意味での生命の危機が……
「ま、待ってくれっ」
「じゃー、ご褒美に色をつけるのー、きゅい」
事の起こりは使い魔同士の気安さから、シルフィが他の使い...
「サイトも使い魔だから、皆に言いたいことが在るなら、シル...
そんな親切心からの申し出だったが、サイトはそれを利用し...
「使い魔って事は、主人の側にずっと居るんだよな……」
「きゅい?」
今更ながら、サイトはお金が無い。
年金も、次回の支給は遥かに彼方。
騎士隊副隊長に昇格し部下も出来た。
学院に連れ帰った、テファに良い所を見せたいし、
ルイズやタバサ、シエスタにだって、何かを買ってあげたい...
が、お金が無い。
「じゃあ……さ、皆にこういう事を聞いてもらいたいんだけど……」
――情報は、お金に成った。
情報屋として有名に成りすぎると、情報の入手経路を不振が...
顧客には一人一人口止めし、本来手に入らない筈の情報を切...
そして……
「これ、お礼な、ありがとうシルフィード」
「きゅっぃいぃぃ!」
単なる食材が、高価な情報に化ける錬金術。
最初の一回は、初期投資と思い切りシルフィードの好物を提...
「あ、ヴェルダンデの分はどばどばミミズの詰め合わせが良い...
「明日買いにいっとくよ」
何もかもが順調だったが……
「シルフィは、たいぐーの改善をよーきゅーするのっ、きゅい」
「お、落ち着いてくれ、シルフィード」
なんだかいきなりピンチだった。
「お肉最初の一回だけじゃ、物足りないの」
「な、何が望みなんだ……」
「もう一回馬がいいのっ」
「う、うま?」
「うっうっ馬旨ーなのっ」
シルフィは謎の踊りを踊っている。
「も、もう……い、一頭?」
「……嫌なら……」
サイトは崩れ落ちた。
「あとー、お姉さまの姿は窮屈なの、いつもの格好がいいの」
「いや……目立つから、それ、図書室で会う以上、タバサの格好...
むーと、頬を膨らませたシルフィードが、怒った様に続けた。
「サイトも、ないぺたなお胸より、ぽよぽよが側に有った方が...
ルイズかタバサの耳に入れば、その場で抹殺されそうな事を...
授業中とはいえ他人に聞かれれば自分まで抹殺されそうなそ...
「お、落ち着いてくれ、シルフィード……俺はっ……俺はっ」
「きゅい?」
身を裂かれるような苦悶の後、サイトは一つの言葉を口にし...
「無いほーが好きなんだぁぁぁぁぁ」
――サイトの中で、取り返しのつかない何かが砕けた。
が、
「じゃー、仕様が無いの、お姉さまで我慢するの……あ、ルイズ...
「タバサがいーんです、はい」
ぐったりと脱力したサイトは、何も考えられないままそう伝...
引き換えにした何か大きなものの代わりに、涙した。
「じゃー、お馬さんは明日買っといてねー」
――その追い討ちは、サイトの財布を直撃し、
「あ、赤字だぁぁぁぁぁ」
悪銭身に付かずを体現したサイトは、次の日泣きながら近所...
タバサは首を傾げていた。
(おかしい……)
サイトを始め、数人がシルフィードの人間化を知った以上、...
「太った?」
「きゅい? な、何のことか分からないの。そ、それにっ、お...
怪しかった。
「この、ぽっこり下腹はどういうこと?」
「きゅ、きゅい……さ、さっぱりなの、おちびさんは自分があち...
ガス
杖の一撃は、思いの外重い音がした。
どうやら無意識に力を入れすげたようだ。
「素直に喋る」
「な、内緒なの、サイトとお約束したのっ」
余分な一言だった。『サイトとお約束』を聞いた、タバサの...
「だ、駄目なの駄目なの、内緒なの、そんな目をしても……」
「……サイトに聞いてくる」
シルフィードとサイトだけの秘密。
その存在がタバサの心を乱し、必要以上に荒々しい動作でシ...
「い、痛っ」
「邪魔」
「ま、まって、お姉さま」
深い怒りを湛えたタバサの様子に、シルフィードは慌ててタ...
つい先日、馬一頭丸まるたかった所なのに、この上タバサに...
シルフィードはそう思い、タバサを止めるために声を張り上...
「サ、サイトはサイトは悪くないの、お姉さまっ」
足を止めたタバサに、畳み掛けるようにシルフィードは続け...
「サイトは、サイトはただシルフィの肉欲を満たしてくれただ...
……シルフィードさん、それ意味ちがう……
――突っ込むものは誰一人無く。
「に、肉?」
「そーなの、シルフィの肉欲なの」
タバサが足を止めた事に勢いづいて、シルフィードはタバサ...
「お姉さまと違って、シルフィの身体は大人なの。
色々と辛いの、我慢できない時が在るの」
「え、えと……その」
「身体が鳴いて眠れない夜だって在るのぉぉぉっ」
――主にお腹が、きゅいきゅいと。
「そんな時、サイトはシルフィの中を満たしてくれるの、幸せ...
だから、この事でお姉さまがサイトをいじめるのは駄目なの...
「ひぅ? あ、あの……え……と……」
余りにも余りな使い魔の告白に、タバサは混乱していた。
混乱はしていても、足元に密着するシルフィードの身体が――...
身体は<大人>だと言うことを証明していた。
「ちょっと前から、ちょくちょくサイトがくれてたの、黙って...
完全に沈黙したタバサが、更なる説明を求めている。
そう考えたシルフィードは、ぽつぽつと思い出すままに話を...
「あの、あのね、お姉さま、シルフィずっとよっきゅーふまん...
だから、サイトから言われた時、嬉しくって、ついつい答え...
その一言に、ぴくりと反応したタバサが搾り出すように呟い...
「サイトが……言い出したの?」
「で、でもシルフィも嫌じゃなかったからっ、だからっ」
膨れたお腹に手を当てながら、タバサは確かめた。
「コレが……その結果?」
暴飲暴食の果てに膨れたお腹を見ながら、シルフィードも答...
「そうなの」
――なにか、どこかで食い違っていた。
勘違いであって欲しいと、自分の誤解ならそれで良いと、タ...
「サイトに、もらったの…… ど、どんな気分だった?」
興味が有って聞いているつもりは無いのに、どうしても声が...
「あの……ね、暖かくて甘噛みすると、びくびく暴れて……」
!
「咥えたまま、舌で弄ってると必死になってるのが分るの……そ...
「そ、それでっ!」
「もう、限界って思った時に、強く吸い上げたら、お口の中に...
何かを思い出して、うっとりとした様子のシルフィードを、...
「びくんって成って、動かなくなったんだけど、シルフィまだ...
「た、足りなかったの?」
「うん、だからね、サイトにもう一度お願いしたの、最初は駄...
何度も何度もお願いして、もう一度もらったの」
「な、何度もおねだり……」
シルフィードの幸せな記憶を反芻しながら、よだれでも垂ら...
「それで、この間、たーーーっぷり貰ったの」
「た、たっぷり……」
「その時サイトに、『これからは、何でも言うことを聞くんだ...
「な……なんで……も……」
それからのシルフィードの言葉は、一切タバサの耳に入るこ...
「と、言うことなの……あれ? お姉さま? どしたの? きゅ...
「な、なんでも無い」
途中でタバサが腰砕けになった為、二人の立ち居地は逆転し...
シルフィードの足に縋って、立とうとしながらタバサは何気...
「サイトは……その……胸が好きだった?」
シルフィードに見えないところで、そっと胸元に手をやる。
つい先日まで気にもしていなかった事が、助けてもらったあ...
今では小さなコンプレックス。
(きっと、大きいのが好きなんだ)
使い魔に先を越された自虐的な思考のままに、タバサは聞い...
「? よく分らないけど、サイトは『無い方がすき』らしーの...
「! う、うそっ、だ、だって……」
灯った小さな希望に、タバサの胸は弾む。
考えてみれば、小さな胸が好きでもおかしくは無いのだ、サ...
あ……そう……か、ルイズの姿で……
変幻自在の風韻竜だ。
となればもちろん好きな人の姿を取らせたに違いなかった。
「……ルイズに……変身した?」
「? してないの、それに……」
――サイトと一緒のときは、ずっとお姉さまの姿だったの――
刻が止まった。
「……ぇ?」
「聞こえなかった? サイトと一緒の時は、ずっとお姉さまの...
「な……なん……で?」
んー、首を傾げたシルフィードは、ぽんと手を打つとサイト...
「『タバサが良いんだ』って」
「う、うそ……」
「えっと、なんだっけ? あーそうそう」
何かを思い出そうとするシルフィードを、タバサは息を呑ん...
そして、シルフィードの一言は……
「お姉さまの方が、んと、『具合が良い』らしーの」
……ぐ?
タバサの視線が、自分の身体をなぞりスカートの下を見つめ...
「お姉さまが、『一番良い』って」
「ひぅ……ぇ……と……あ、あれ? うそ……あの……」
(ぐ、具合ってその……あの……た、試したの? って言うか……)
ゆらりと立ち上がったタバサが、杖を構えた。
「あれ? お姉さま?」
「……わたしの姿で?」
「きゅい? そーなの、お姉さまの姿で」
「サイトと?」
「う? サイトとしたの」
「 死 ん じ ゃ え 馬 鹿 あ ぁ ぁ 」
その日、風韻竜は自分で飛ぶより遥かに速く大空を舞った。
いつもはざわざわと会話の絶えない朝の食堂が、妙な緊張感...
「……はぁ……」
寝不足らしいタバサが、幾度目かの溜息を吐いた。
――な、何が有ったんだ?
――な、なんだ? 妙に色っぽいぞ? って俺は、ロリコンじ...
――いっつも、無表情なタバサのあの顔……昨日彼女に一体何が……
その日のタバサの様子は、いつもと余りにも違いすぎて……
「ちょっ、タバサ? どうしたの? 大丈夫?」
優しい親友が慌てて駆け寄ってくるほどで、
「具合でも悪いの?」
「ぐ、具合は……ぃぃらしいの……」
「? 自分の身体の事でしょう?
「し、知らない、べ、別に確かめたり、試したりしてないっ!」
余りにも不審だった。
キュルケが更に質問する前に、タバサが慌てて立ち上がる。
「あれ? タバサ……おはよー」
「お、おっ……おは……おはっ……おは……」
慌てふためくタバサという珍しいものを、食堂中の生徒が見...
――原因はこいつか。
生徒一同の視線が、サイトに集中した。
「っ!」
ぱたぱたと、軽い足音を立てて、居た堪れなくなったタバサ...
何が起こったのかさっぱり理解していないサイトに、キュル...
「ちょっと、サイト……顔貸してくれるかしら?」
「キュ、キュルケ? な、なんで?」
「……その後は、わたしも話を聞きたいわね……」
「ル、ルイズ? お、俺にも何のことだかさっぱ……」
「「「「「とぼけんなぁぁぁぁぁ」」」」」
――学院の生徒の心が一つになった瞬間だった。
その日から、サイトの姿を見たものは…………
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