ゼロの使い魔保管庫
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平賀さん家へいらっしゃい〜初めの夜〜 [[205]]氏
#br
謎の男に自慢のゴーレムを撃破された後、ミョズニトニルン...
(一体何者なんだい、あの男は!?)
何故だか知らないが、背後からあの男が追いかけてくるよう...
ようやっと足を止めたときには、明りも眩い町の中に入って...
(つ、疲れた……)
膝に両手を置いて、ぜいぜいと息をする。
元々、ほぼ何もかもマジックアイテム頼りでロクに運動もし...
いや、どれだけ体力のある人間でも、これだけ逃げ回ってい...
(ちょっと、休もうかね)
近くに噴水を見つけ、その前に設置されたベンチに腰を下ろ...
(……ん?)
休んでいる内に、ふと気がついた。道を行く人々が、何やら...
中にはあからさまに嘲笑を浮かべている者もいる。
(……なんだ?)
自分の格好を見下ろしてみたが、特におかしなところはない...
だがすぐに、周りを歩いていく連中が、見たこともない格好...
どうやら、見慣れない格好の女を珍しがっていただけのよう...
(なるほど。どうやら、ハルケギニアとはかなり文化が違う場...
疲労が取れて少し冷静さが戻ってきたらしい。
ミョズニトニルンは、座ったまま自分の置かれた状況を分析...
(まずいね。ヨルムンガントの試験中だったから、ロクなマジ...
幸い、周りから聞こえてくる声や、妙な旋律に乗った歌声な...
となると、まずはなんとかしてこの地での活動基盤を築かな...
(わたしもガリアの後ろ盾を失っているが、それはあの連中と...
さっきの妙な男にさえ気をつければ、何人かは始末できるだ...
こんな不可解な状況においても、ジョゼフへの忠誠心は全く...
そんな自分の精神的な強さに満足しつつ、ミョズニトニルン...
(さて、まずはどうするか。とりあえずは武器……いや、その前...
言葉は通じるようだから、なんとかして協力者を作って……)
そのとき、ミョズニトニルンはローブの中に何か硬い感触が...
何かと思って取り出してみると、それはメイドの姿を象った...
(なんだい、こりゃ?)
首を傾げたミョズニトニルンだったが、すぐに思い出す。
(ああ、そう言えば、試験前に部下が『これなんかのマジック...
忙しかったから後でゆっくり見ようと思って、ローブの中に...
何か役に立つアイテムならいいが、と少し期待して、『神の...
が、それで分かったこの人形の用途は、正直言って期待外れ...
(メイドアルヴィー、ね。使い手の身の回りの世話を焼いてく...
落胆し、肩を落とす。せめて攻撃に使えるものだったら、多...
とは言えこんな状況であるから、何でも利用するに越したこ...
そう思い直し、ミョズニトニルンは手の中の人形を路上に置...
人形から眩い光が放たれた、と思ったときには、もう既にそ...
やたらと明るい色使いの、奇抜なデザインのメイド服に身を...
髪の色は緑色で、両耳に何か白い板のような物体をつけてい...
その少女はミョズニトニルンを見てにっこり笑うと、深々と...
「はじめましてご主人様、私、マル」
「能書きはいいんだよ!」
バチーン! と、ミョズニトニルンは少女の頭を遠慮なく手...
少女はたちまち悲鳴を上げて、涙目になりながら両手で頭を...
「な、なにをなさるんですかー」
「うるさいんだよ! こっちはお前の名前になんざ全く興味が...
ミョズニトニルンは、少女のメイド服をじろじろと眺める。
所々にリボンやらフリルやらをあしらった、無駄に凝ったデ...
少なくとも、ハルケギニアではこんなデザインのメイド服は...
「おい、この服は一体なんの冗談なんだい?」
「え、なにか変ですかー」
少女は不思議そうに自分の格好を見下ろす。どうやら、それ...
(なんか、頭の緩そうな子だね)
若干、というかかなり不安になってきたので、一応確認して...
「おい、マル」
「へ? いえ、わたしはマル」
「名前なんざどうでもいいんだよ。わたしがマルって決めたん...
で、マル。あんた、自分の役目がなんなのかは分かってるん...
「はい、もちろんですー」
マルは自分の薄い胸を誇らしげに叩いた。
「私はメイド・アルヴィーですので、ご主人様の身の回りのお...
「ふむ。具体的には?」
「掃除洗濯お料理、それから」
と、何故か顔を赤らめて、メイド服のスカートの裾を摘まん...
「夜のお世話、とかー」
「……」
「あ、そんな怖い顔しちゃいやですー」
「うるさいんだよ!」
バシーン! と、ミョズニトニルンは再びマルの頭をブッ叩...
「はわわ、いたいですー」
だのと涙声で言いながらその場に蹲るアルヴィーを見ている...
(落ち着け、わたし。なに、こんな奴でも一応アルヴィーだ、...
自分にそう言い聞かせ、「元に戻した方がいいんじゃないか...
「よし、じゃあ初仕事だ」
「はい、なんですか、ご主人様!」
マルがびしりと背を伸ばし、目を輝かせて叫ぶ。どうやらや...
「ええと、なにか、食い物を持ってこい」
「はい、分かりましたー!」
何ら疑問を口にすることなく、マルは全速力で夜の街に消え...
あの奇抜なメイド服の背中が雑踏に紛れるのを、ミョズニト...
(やれやれ、妙なことになっちまったねえ)
頬杖を突きながら、ぼんやりと夜の街を眺める。
改めて見てみると、夜だというのにずいぶん明るい町だ。
店、と思しき四角い建物が所狭しと立ち並び、そのほぼ全て...
マジック・アイテムによるものなのかどうかは知らないが、...
通りを歩いている人間もかなり多く、みすぼらしい格好をし...
(なんにせよ、かなり文明が進んだところ、らしいねえ)
そのことは、彼女にとっては好都合だった。
(これだけ裕福なら、金が余ってる人間もかなりいるだろう。
あることないことでっち上げて、適当に儲け話の匂い漂わせ...
体制を整えるのはそう難しいことじゃないかもしれないね。...
少し安堵して、ミョズニトニルンは息を吐く。
(これだけ豊かそうなところなら、さっきのバカも難なく食料...
「ご主人様ー!」
先ほど放ったメイド・アルヴィー……マルが、何か包みのよう...
「お待たせしました、食料ですー」
差し出したものを受け取る。見慣れない素材で作られた袋だ...
表面にピエロのような不気味な男が描かれたその袋の中を覗...
「おい、マル」
ミョズニトニルンは自分の頬が引きつるのを感じながら、目...
「お前、これ、どっから持ってきた?」
「あそこですー」
マルが嬉しそうに指差した先には、四角い鉄の箱のようなも...
通りかかった男が、手に持っていた何かを無造作にその箱の...
そしてもう一度、袋の中身に目を戻す。
中には紙に包まれた二つの塊が入っていた。二つとも、パン...
問題は、その食べ物が二つとも食べかけだということであっ...
「誰が乞食の真似事をしろと言ったんだい!」
パコーン、と再び殴りつけると、マルは頭を押さえながら必...
「だって、食べ物たくさん売ってるお店に行ったら、『お金が...
「盗んでくりゃいいだろうが」
「はわわ、そんなこと言っちゃダメですー」
マルが両手をブンブンと振り回す。
「盗みはいけないことですから、どんなに心が貧しくてもやっ...
悪い人になっちゃったらブリミル様の御許へ行けないですー」
「あのねえ」
ミョズニトニルンは額を抑えた。どうも、この少女と話して...
(ま、こんな奴の相手なんざ、まともにする必要もないか)
さっさと元のアルヴィーに戻そうか、と記憶を探ってみて、...
先ほどミョズニトニルンの能力を利用して読み取った使用法...
「おい、マル」
「はい、なんですかー」
ニコニコとバカっぽい微笑を浮かべているその顔に、嫌な予...
「あんたを元の人形に戻す方法、自分で知ってるか?」
「知らないですー」
マルはあっさりと答えた。
「私の仕事は、ご主人様の身の回りのお世話をすることですか...
ミョズニトニルンは低い呻き声を漏らした。
(じゃあ何か。これから先、四六時中この役立たずを連れて歩...
考えるだけで気が滅入ってくる状況である。
にも関わらず目の前の少女がニコニコ笑っているので、余計...
いっそぶっ壊してしまおうか、とも思ったが、寸でのところ...
(こんなのでも、何かの役に立つかもしれない。現に、食べか...
ミョズニトニルンは袋から食べかけの食料を取り出しながら...
「よくやった。お前もとりあえず隣に座りな」
「分かりましたー」
マルは嬉しそうにミョズニトニルンの隣に腰掛け、ニコニコ...
「ところで、これ腐っていやしないだろうね」
「大丈夫です、私、そういうのはちゃんと見分ける機能が備わ...
「なんでそういうところだけは充実してるんだい、ったく」
ムカついたのでマルの頭を軽く小突いたあと、ミョズニトニ...
途端に、柔らかいパンと濃い味付けをされた肉の旨みが口の...
(へえ。食べかけで捨てられるぐらいだから、相当まずいもん...
逆に言えば、一般市民が美味なものを食べかけで捨てられる...
(こりゃ、案外見通しは明るいかもしれないねえ)
ミョズニトニルンが食料をほお張りながらにやりと笑うと、...
「おいしいですか、よかったですー」
「なんも言ってないだろうが」
だがおいしいと思っていたのは事実だったので、半ば照れ隠...
「さて、と」
食べ終わって、ゴミを適当に投げ捨てる。すかさずマルが拾...
(律儀な奴)
呆れつつ、これからどうするかを考える。
(とりあえずはアジトの確保か。そのためにもまずは手駒を……)
考えている途中で、ミョズニトニルンはあることに気がつい...
「お待たせしました、ご主人様……?」
小走りに駆け戻ってきたマルが、主人の顔を見て怪訝そうに...
「どうしたんですかご主人様、いいことでもあったんですかー」
どうやら、知らない内に笑っていたらしい。いや、これが笑...
(ったく、あたしも間抜けだねえ。いくら予想外の事態が続い...
苦笑しつつ、ローブの中から一つの指輪を取り出す。マルが...
「ご主人様、それはなんですか」
「これかい? これはね、アンドバリの指輪と言って……
まあ、簡単に言うと、他人を思うままに操ることが出来るマ...
「はわわ、すごいですー」
マルがあまりにも単純に尊敬の念を露わにするので、ミョズ...
「そうだろそうだろ。なにせ、これがあればこの町の住人をみ...
「慈善活動に参加させられます!」
「……その発想はある意味斬新だね」
ちょっと感心しながら、ミョズニトニルンは自信満々に立ち...
マジック・アイテムを全て失ったと思っていたが、一番重要...
(フフン、見てなよ小僧ども、すぐにさっきの借りを返させて...
にっと笑いながら、マルに言う。
「さあマル、そうと決まったら早速探すよ!」
「はい! ……探すって、何をですか?」
「ああ、この指輪を使うには、水源を探さなくちゃならなくて...
「水源、ですかー?」
「そうさ。具体的には……」
ミョズニトニルンは夜の街を見回して、首を傾げた。
「……井戸はどこだ?」
終了行:
平賀さん家へいらっしゃい〜初めの夜〜 [[205]]氏
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謎の男に自慢のゴーレムを撃破された後、ミョズニトニルン...
(一体何者なんだい、あの男は!?)
何故だか知らないが、背後からあの男が追いかけてくるよう...
ようやっと足を止めたときには、明りも眩い町の中に入って...
(つ、疲れた……)
膝に両手を置いて、ぜいぜいと息をする。
元々、ほぼ何もかもマジックアイテム頼りでロクに運動もし...
いや、どれだけ体力のある人間でも、これだけ逃げ回ってい...
(ちょっと、休もうかね)
近くに噴水を見つけ、その前に設置されたベンチに腰を下ろ...
(……ん?)
休んでいる内に、ふと気がついた。道を行く人々が、何やら...
中にはあからさまに嘲笑を浮かべている者もいる。
(……なんだ?)
自分の格好を見下ろしてみたが、特におかしなところはない...
だがすぐに、周りを歩いていく連中が、見たこともない格好...
どうやら、見慣れない格好の女を珍しがっていただけのよう...
(なるほど。どうやら、ハルケギニアとはかなり文化が違う場...
疲労が取れて少し冷静さが戻ってきたらしい。
ミョズニトニルンは、座ったまま自分の置かれた状況を分析...
(まずいね。ヨルムンガントの試験中だったから、ロクなマジ...
幸い、周りから聞こえてくる声や、妙な旋律に乗った歌声な...
となると、まずはなんとかしてこの地での活動基盤を築かな...
(わたしもガリアの後ろ盾を失っているが、それはあの連中と...
さっきの妙な男にさえ気をつければ、何人かは始末できるだ...
こんな不可解な状況においても、ジョゼフへの忠誠心は全く...
そんな自分の精神的な強さに満足しつつ、ミョズニトニルン...
(さて、まずはどうするか。とりあえずは武器……いや、その前...
言葉は通じるようだから、なんとかして協力者を作って……)
そのとき、ミョズニトニルンはローブの中に何か硬い感触が...
何かと思って取り出してみると、それはメイドの姿を象った...
(なんだい、こりゃ?)
首を傾げたミョズニトニルンだったが、すぐに思い出す。
(ああ、そう言えば、試験前に部下が『これなんかのマジック...
忙しかったから後でゆっくり見ようと思って、ローブの中に...
何か役に立つアイテムならいいが、と少し期待して、『神の...
が、それで分かったこの人形の用途は、正直言って期待外れ...
(メイドアルヴィー、ね。使い手の身の回りの世話を焼いてく...
落胆し、肩を落とす。せめて攻撃に使えるものだったら、多...
とは言えこんな状況であるから、何でも利用するに越したこ...
そう思い直し、ミョズニトニルンは手の中の人形を路上に置...
人形から眩い光が放たれた、と思ったときには、もう既にそ...
やたらと明るい色使いの、奇抜なデザインのメイド服に身を...
髪の色は緑色で、両耳に何か白い板のような物体をつけてい...
その少女はミョズニトニルンを見てにっこり笑うと、深々と...
「はじめましてご主人様、私、マル」
「能書きはいいんだよ!」
バチーン! と、ミョズニトニルンは少女の頭を遠慮なく手...
少女はたちまち悲鳴を上げて、涙目になりながら両手で頭を...
「な、なにをなさるんですかー」
「うるさいんだよ! こっちはお前の名前になんざ全く興味が...
ミョズニトニルンは、少女のメイド服をじろじろと眺める。
所々にリボンやらフリルやらをあしらった、無駄に凝ったデ...
少なくとも、ハルケギニアではこんなデザインのメイド服は...
「おい、この服は一体なんの冗談なんだい?」
「え、なにか変ですかー」
少女は不思議そうに自分の格好を見下ろす。どうやら、それ...
(なんか、頭の緩そうな子だね)
若干、というかかなり不安になってきたので、一応確認して...
「おい、マル」
「へ? いえ、わたしはマル」
「名前なんざどうでもいいんだよ。わたしがマルって決めたん...
で、マル。あんた、自分の役目がなんなのかは分かってるん...
「はい、もちろんですー」
マルは自分の薄い胸を誇らしげに叩いた。
「私はメイド・アルヴィーですので、ご主人様の身の回りのお...
「ふむ。具体的には?」
「掃除洗濯お料理、それから」
と、何故か顔を赤らめて、メイド服のスカートの裾を摘まん...
「夜のお世話、とかー」
「……」
「あ、そんな怖い顔しちゃいやですー」
「うるさいんだよ!」
バシーン! と、ミョズニトニルンは再びマルの頭をブッ叩...
「はわわ、いたいですー」
だのと涙声で言いながらその場に蹲るアルヴィーを見ている...
(落ち着け、わたし。なに、こんな奴でも一応アルヴィーだ、...
自分にそう言い聞かせ、「元に戻した方がいいんじゃないか...
「よし、じゃあ初仕事だ」
「はい、なんですか、ご主人様!」
マルがびしりと背を伸ばし、目を輝かせて叫ぶ。どうやらや...
「ええと、なにか、食い物を持ってこい」
「はい、分かりましたー!」
何ら疑問を口にすることなく、マルは全速力で夜の街に消え...
あの奇抜なメイド服の背中が雑踏に紛れるのを、ミョズニト...
(やれやれ、妙なことになっちまったねえ)
頬杖を突きながら、ぼんやりと夜の街を眺める。
改めて見てみると、夜だというのにずいぶん明るい町だ。
店、と思しき四角い建物が所狭しと立ち並び、そのほぼ全て...
マジック・アイテムによるものなのかどうかは知らないが、...
通りを歩いている人間もかなり多く、みすぼらしい格好をし...
(なんにせよ、かなり文明が進んだところ、らしいねえ)
そのことは、彼女にとっては好都合だった。
(これだけ裕福なら、金が余ってる人間もかなりいるだろう。
あることないことでっち上げて、適当に儲け話の匂い漂わせ...
体制を整えるのはそう難しいことじゃないかもしれないね。...
少し安堵して、ミョズニトニルンは息を吐く。
(これだけ豊かそうなところなら、さっきのバカも難なく食料...
「ご主人様ー!」
先ほど放ったメイド・アルヴィー……マルが、何か包みのよう...
「お待たせしました、食料ですー」
差し出したものを受け取る。見慣れない素材で作られた袋だ...
表面にピエロのような不気味な男が描かれたその袋の中を覗...
「おい、マル」
ミョズニトニルンは自分の頬が引きつるのを感じながら、目...
「お前、これ、どっから持ってきた?」
「あそこですー」
マルが嬉しそうに指差した先には、四角い鉄の箱のようなも...
通りかかった男が、手に持っていた何かを無造作にその箱の...
そしてもう一度、袋の中身に目を戻す。
中には紙に包まれた二つの塊が入っていた。二つとも、パン...
問題は、その食べ物が二つとも食べかけだということであっ...
「誰が乞食の真似事をしろと言ったんだい!」
パコーン、と再び殴りつけると、マルは頭を押さえながら必...
「だって、食べ物たくさん売ってるお店に行ったら、『お金が...
「盗んでくりゃいいだろうが」
「はわわ、そんなこと言っちゃダメですー」
マルが両手をブンブンと振り回す。
「盗みはいけないことですから、どんなに心が貧しくてもやっ...
悪い人になっちゃったらブリミル様の御許へ行けないですー」
「あのねえ」
ミョズニトニルンは額を抑えた。どうも、この少女と話して...
(ま、こんな奴の相手なんざ、まともにする必要もないか)
さっさと元のアルヴィーに戻そうか、と記憶を探ってみて、...
先ほどミョズニトニルンの能力を利用して読み取った使用法...
「おい、マル」
「はい、なんですかー」
ニコニコとバカっぽい微笑を浮かべているその顔に、嫌な予...
「あんたを元の人形に戻す方法、自分で知ってるか?」
「知らないですー」
マルはあっさりと答えた。
「私の仕事は、ご主人様の身の回りのお世話をすることですか...
ミョズニトニルンは低い呻き声を漏らした。
(じゃあ何か。これから先、四六時中この役立たずを連れて歩...
考えるだけで気が滅入ってくる状況である。
にも関わらず目の前の少女がニコニコ笑っているので、余計...
いっそぶっ壊してしまおうか、とも思ったが、寸でのところ...
(こんなのでも、何かの役に立つかもしれない。現に、食べか...
ミョズニトニルンは袋から食べかけの食料を取り出しながら...
「よくやった。お前もとりあえず隣に座りな」
「分かりましたー」
マルは嬉しそうにミョズニトニルンの隣に腰掛け、ニコニコ...
「ところで、これ腐っていやしないだろうね」
「大丈夫です、私、そういうのはちゃんと見分ける機能が備わ...
「なんでそういうところだけは充実してるんだい、ったく」
ムカついたのでマルの頭を軽く小突いたあと、ミョズニトニ...
途端に、柔らかいパンと濃い味付けをされた肉の旨みが口の...
(へえ。食べかけで捨てられるぐらいだから、相当まずいもん...
逆に言えば、一般市民が美味なものを食べかけで捨てられる...
(こりゃ、案外見通しは明るいかもしれないねえ)
ミョズニトニルンが食料をほお張りながらにやりと笑うと、...
「おいしいですか、よかったですー」
「なんも言ってないだろうが」
だがおいしいと思っていたのは事実だったので、半ば照れ隠...
「さて、と」
食べ終わって、ゴミを適当に投げ捨てる。すかさずマルが拾...
(律儀な奴)
呆れつつ、これからどうするかを考える。
(とりあえずはアジトの確保か。そのためにもまずは手駒を……)
考えている途中で、ミョズニトニルンはあることに気がつい...
「お待たせしました、ご主人様……?」
小走りに駆け戻ってきたマルが、主人の顔を見て怪訝そうに...
「どうしたんですかご主人様、いいことでもあったんですかー」
どうやら、知らない内に笑っていたらしい。いや、これが笑...
(ったく、あたしも間抜けだねえ。いくら予想外の事態が続い...
苦笑しつつ、ローブの中から一つの指輪を取り出す。マルが...
「ご主人様、それはなんですか」
「これかい? これはね、アンドバリの指輪と言って……
まあ、簡単に言うと、他人を思うままに操ることが出来るマ...
「はわわ、すごいですー」
マルがあまりにも単純に尊敬の念を露わにするので、ミョズ...
「そうだろそうだろ。なにせ、これがあればこの町の住人をみ...
「慈善活動に参加させられます!」
「……その発想はある意味斬新だね」
ちょっと感心しながら、ミョズニトニルンは自信満々に立ち...
マジック・アイテムを全て失ったと思っていたが、一番重要...
(フフン、見てなよ小僧ども、すぐにさっきの借りを返させて...
にっと笑いながら、マルに言う。
「さあマル、そうと決まったら早速探すよ!」
「はい! ……探すって、何をですか?」
「ああ、この指輪を使うには、水源を探さなくちゃならなくて...
「水源、ですかー?」
「そうさ。具体的には……」
ミョズニトニルンは夜の街を見回して、首を傾げた。
「……井戸はどこだ?」
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