ゼロの使い魔保管庫
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青春時代D〜 ツンデレ王子
#br
空が赤く染まり二つの月がおぼろげに姿を表した頃、街の喧...
て馬車へと歩いていた。
そこへ、一台の馬車がとてつもない勢い良く駆けて来る。
停まる気配は無い。
「危ねえ!」
もう少しで轢かれそうになったアンリエッタを抱き寄せて庇...
崩して倒れてしまう。そのまま傍らの草むらへ転がり込み、木...
ってしまった。
やはり心配で隠れて見守っていたのだろう、アニエスとマザ...
駆け寄って様子を見る。大きな怪我は無い様だが、打ち所が悪...
を失ってる様である。
下になっていたサイトの身体からアンリエッタの身体を引き...
はパンパンと往復で彼の頬を叩いた。
「大丈夫かサイト、しっかりしろ」
「陛下、お怪我は御座いませんか」
マザリーニもアンリエッタの身体を揺さぶり声を掛ける。
「ちょっとアニエス、痛いです」
「ってぇ…危ねぇな、あの馬車!ちゃんと見ろっての」
それほど時間を置かず、2人は目を覚ました。
先ずはサイトが気付き、頬を叩いたアニエスに不満を漏らす。
次いでアンリエッタが、後頭部を押さえながら立ち上がった。
「サイト?」
「陛下?」
枢機卿と銃士隊隊長は、きょとんとして2人を見詰める。
その視線に違和感を感じたのか、お互いに顔を見合わせ――
「サイト殿!」
「ひ、姫さま!」
お互いの顔を指差して仰天の声を上げるのだった。
王宮へと帰る馬車の中、サイトは呆然としていた。
(何でこんな事に…)
先程の暴走馬車を避けたまでは良かった。
ところがその際、頭をぶつけた拍子に互いの頭もゴッツンコ...
どうやらそれが原因となりサイトとアンリエッタの精神が入れ...
らしい。
「シュヴァリエ、この事は内密にな」
マザリーニは真剣な顔でサイトの目を見て言い含めようとす...
くいかない。それもそのはず、何と言っても見た目はアンリエ...
マザリーニとアニエスは初め狐につままれたようになってい...
タの口から発せられる言葉はサイトのものであり、サイトの口...
のものであった為に納得せざるを得なかったのだ。
しかし、これは彼等の事を良く知る枢機卿と銃士隊隊長だか...
よって王宮内でもこの事に対しては機密扱いとなり、サイトが...
許されなかった。
「あの、マザリーニさん。俺は一体どうすれば…」
「暫くは王宮に居てもらう」
「それは良いんですけど、俺ルイズに黙って出てきてるし、そ...
仕事とかは…」
「勿論ミス・ヴァリエールにも話してはならぬ。例え彼女が陛...
は言え、余計な混乱を招きかねんからな。執務については後...
「はあ…」
力無く頷き溜息を漏らすサイト。
(ルイズ、心配してるだろうな)
馬車の中でその様な会話がなされている時、アンリエッタは...
来た馬に乗り彼等の後を走っていた。例え変装しているとは言...
身馬に乗せれるはずも無い。
また世間体というものが有るのだ。例え中身が違うとは言え。
マザリーニは仕方無しに、そうアンリエッタに伝えた。
ところが、これは彼女にとってみては願ってもないチャンス...
自分の立場を理解しているとは言え、彼女とてサイトと同い...
もすれば、学校に通い友人に囲まれる生活に夢を見るのも当然...
幼少の頃より多くのことを叩き込まれ、単独で馬に乗る事く...
だが、学校となればそうは言ってはいられない。出来ること...
入れ替わって学院生活を送ってみたいと思いはする物の、やは...
であろう事は容易に想像が付いたからだ。
(サイト殿、ご迷惑をお掛けします)
馬車へと顔を向け沈痛な面持ちで視線を投げるも、どうして...
まうのを押さえ切れていない。
彼女にはもう一つ、嬉しい理由が有った。
それは、サイトと生活を共に出来る事。
シュヴァリエの爵位を与え、近衛隊服隊長の立場を与えたも...
イトはルイズの使い魔。任務が終わると学院の彼女の下へと帰...
任務が無いときには自分の下へ来る事も無い。
とんだアクシデントではあるが、お陰で暫くはサイトと一緒...
は悪いが、ここはこの降って湧いた幸運に感謝しよう。心の中...
に祈りを捧げながら、アンリエッタはそんな風に考えていた。
そんな2人の心のうちを知ってか知らずか、二つの月は輝き...
だった。
#br
水精霊騎士団のたまり場となっている零戦の格納庫。
そこに桃色の髪をした少女が現れた。
「ルイズ、どうしたんだい?」
やってくるなり隊員たちに声もかけず、格納庫のあちこちを...
彼女の纏うオーラに多少怯えつつも、不審な動きを見せるルイ...
長であるギーシュが声を掛ける。
「サイトはどこ?」
「一緒じゃなかったのか?」
彼と酒を交わしていたレイナールが、何を言ってるんだと言...
尋ね返す。
ところがルイズは、そんな彼の言葉に応えもせずにジロリと...
同じ質問を繰り返した。
「し、知らないよ」
「嘘じゃ無いでしょね」
「本当だって!朝から見てないんだ」
そこに別の誰かが口を挟んだ。
「ああ、サイトなら今朝早く馬に乗って出て行くのを見たよ」
声のした方へ顔を向け、どこに行ったの?と低い声で尋ねる。
「さあ…」
「どこに行ったのよ!教えなさいよ!」
まるでゴーレムが歩いているのかと思わせるようなドスドス...
てて彼の前まで歩いて行くと、噛み付かんばかりに食って掛か...
「知らないよ、そこまでは」
彼が嘘を吐いている様には見えない。
これ以上ここでは情報を得られないと判断したのか、来ると...
怒らせながら出て行った。
次いでルイズがやってきたのは、厨房。
サイト付きのメイドとなってからも頻繁に厨房の手伝いをし...
訪ねて来たのである。
夕食が終わった後で、コックやメイドたちは片付けの真っ最...
「おい、シエスタ。後は俺たちで大丈夫だ、我らが剣のとこに...
漸く目処が立ったのか、マルトーに許しを貰って寮へ戻ろう...
を捕まえる。
「あら、ミス・ヴァリエール。こんなところで如何したんです...
「シエスタ、あんたサイトがどこ行ったか知らない?」
ルイズの声音にただならぬ物を感じ取った彼女は、恐る恐る...
「いえ…サイトさんがどうかされたんですか?」
「居ないのよ」
「えっ?」
「騎士隊の連中は朝出かけるのを見たって言うのよ。
あんた、本当に知らないの?」
シエスタの胸ぐらを掴んで揺さぶりながら声を荒げるルイズ。
首から上をかくんかくんさせつつも、シエスタははっきりと...
「だから知りませんって!わたしだって朝から会ってないんで...
そこで、はっと思い出した。今朝いつもより早くシエスタに...
その時彼女は何やら焦ってはいなかっただろうか。眠くてお...
応しなかったが、確かサイトがどうとか…
「そう言えばあんた、朝に何か言ってたわね」
「何をですか?」
「言ってたじゃないのよ、サイトがどうしたとか」
「ですから、サイトさんが居ないって…」
なんでもっと早く言わないのよ!と、ルイズはまたもや彼女...
くちゃな事を言い出した。
「言いましたよ。そしたらミス・ヴァリエールが仰ったんじゃ...
『トイレにでも行ってるんでしょ、放っときなさい』って」
いつも通りに起き出したシエスタは、本来ならまだ寝息を立...
が居ないとルイズを起こしたのだ。ところが、その時間という...
よりもかなり早い時間だった為、ルイズは彼女の話を半分寝て...
いたのである。
また、この日は厨房が何やら忙しいとの事で、朝からシエス...
借り出される事になっていた。サイトが居ないが為に寝過ごし...
業に遅れそうになり、慌てて部屋を飛び出して行ったのだ。
結果、サイトの不在を知ったのは授業が終わってからとなっ...
「…疑って悪かったわ」
漸くシエスタを解放すると、彼女に背を向けて歩き出すルイ...
嫌を態度にありありと表して去って行こうとする彼女を追いか...
隣に並んだ。
まったくご主人さまを放ってほっつき歩くなんて何考えてん...
ってば。と、ぶつぶつと小さく、それでいてドスの利いた声で...
彼女の横で苦笑を漏らすと同時に、戻ってきたら十中八九お...
る事となるであろう主の無事を祈るシエスタ。
それぞれ違う思いを抱きながら、2人は肩を並べて寮へと戻...
翌日、食堂に現れたルイズは目の下に隈を作っていた。
昨晩あれからサイトの帰りを待っていたのだが、1時間経っ...
ても帰ってくる気配が無い。帰ってきたら直ぐにお仕置きを出...
言って先にシエスタを休ませ、自分は起きて待っていた。とこ...
トは帰ってこず、そのまま朝まで起きていたのだ。
帰って来ない彼を心配してか、ルイズは朝食の時間になって...
うとはしなかったのだが、シエスタが彼女を気遣い無理やりに...
ある。
心ここに在らず、そんな感じで席に着いたルイズに追い討ち...
意外な言葉が襲い掛かった。
「ルイズ!あなたサイトに棄てられたんですって?」
モンモランシーを始めとする数人の生徒が彼女を取り囲み、...
来るではないか。
「なっ…!」
何を言い出すのよ、そう言い掛けたが上手く言葉にならない。
そんなルイズを放って、周囲は口々に騒ぎ出す。その中には...
者も居れば、サイトの肩を持つ者、果てには自分の兄妹や親戚...
言い出す者まで出てくる始末。
「あああ、あんたたち何を言ってるのよ!わ、わたしが棄てら...
そんな事あるわけ無いじゃない!わたし“が”棄てるならとも...
であいつ“に”棄てられなくちゃなんないわけ?だ、だいたい...
使い魔であって、棄てるとかそんなんじゃないんだから!」
一気にまくし立てるルイズ。
始めは蒼かった彼女の顔色も、赤くになっている。
「じゃあ、彼の姿が昨日から見えないのはどうしてなの?」
「う…」
取り巻きの誰かに聞かれ言葉に窮してしまう。
「きゅ…休暇、そう、休暇ををあげたのよ。あ、あいつは別にメ...
だし、この学院に四六時中居る必要も無いわけじゃない?そ...
にはあんなのでも休みをあげないとかわいそうだから。だ、...
に居るんじゃないかしら?昨日は時間を忘れて遊びすぎて、...
ちゃって、きっと宿屋にでも泊まったのよ」
「サイト、やっぱり昨日は帰って来なかったんだ」
我ながら上手い言い訳だわ、と思っていると、そこに赤い髪...
らしながらキュルケが声を挟んできた。相変わらず、これ見よ...
ボタンを開けて谷間を晒している。
「な、何よあんた、やっぱりってどう言う事よ!」
「別に。ただ昨日、サイトを見かけただけの話よ」
「み、見かけたってどこで?」
ガタンと椅子を倒して立ち上がると、ルイズは掴みかからん...
ケに迫る。
「どこでって…あなた自分で言ったじゃない、街に居るんじゃな...
「そ、そうだけど…そ、それはともかく、あんたは街で見かけた...
「ええ、そうよ」
肯定の言葉を得られ、ほっとするルイズ。
同時に先ほど彼女が言った言葉が気に掛かってしまう。
「キュルケ、やっぱりってどう言う事?」
一瞬の逡巡の後、話し出した。
昨日の帰りに見かけた、デートしていたらしいと言う事を。
「デ、デデ、デートですって〜〜〜〜」
「ええ、可愛い娘だったわよ。ほら、前にモンモランシーが教...
い騒ぎになった服、あったじゃない?彼女、それを着てたわ...
言わなくても良い事まで言ってしまう。
前に、モンモランシーが、着て来て、騒ぎになった、服、と...
せる様に一言一言を区切って喋るルイズ。
彼女の背後に何やら黒いオーラを感じて、キュルケはビクッ...
「くけ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
聞いた者を凍りつかせるような奇声を発しながら飛び出して...
ンモランシーが制止の声を掛けようとした時には、既に彼女の...
見えなくなっていた。
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青春時代D〜 ツンデレ王子
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空が赤く染まり二つの月がおぼろげに姿を表した頃、街の喧...
て馬車へと歩いていた。
そこへ、一台の馬車がとてつもない勢い良く駆けて来る。
停まる気配は無い。
「危ねえ!」
もう少しで轢かれそうになったアンリエッタを抱き寄せて庇...
崩して倒れてしまう。そのまま傍らの草むらへ転がり込み、木...
ってしまった。
やはり心配で隠れて見守っていたのだろう、アニエスとマザ...
駆け寄って様子を見る。大きな怪我は無い様だが、打ち所が悪...
を失ってる様である。
下になっていたサイトの身体からアンリエッタの身体を引き...
はパンパンと往復で彼の頬を叩いた。
「大丈夫かサイト、しっかりしろ」
「陛下、お怪我は御座いませんか」
マザリーニもアンリエッタの身体を揺さぶり声を掛ける。
「ちょっとアニエス、痛いです」
「ってぇ…危ねぇな、あの馬車!ちゃんと見ろっての」
それほど時間を置かず、2人は目を覚ました。
先ずはサイトが気付き、頬を叩いたアニエスに不満を漏らす。
次いでアンリエッタが、後頭部を押さえながら立ち上がった。
「サイト?」
「陛下?」
枢機卿と銃士隊隊長は、きょとんとして2人を見詰める。
その視線に違和感を感じたのか、お互いに顔を見合わせ――
「サイト殿!」
「ひ、姫さま!」
お互いの顔を指差して仰天の声を上げるのだった。
王宮へと帰る馬車の中、サイトは呆然としていた。
(何でこんな事に…)
先程の暴走馬車を避けたまでは良かった。
ところがその際、頭をぶつけた拍子に互いの頭もゴッツンコ...
どうやらそれが原因となりサイトとアンリエッタの精神が入れ...
らしい。
「シュヴァリエ、この事は内密にな」
マザリーニは真剣な顔でサイトの目を見て言い含めようとす...
くいかない。それもそのはず、何と言っても見た目はアンリエ...
マザリーニとアニエスは初め狐につままれたようになってい...
タの口から発せられる言葉はサイトのものであり、サイトの口...
のものであった為に納得せざるを得なかったのだ。
しかし、これは彼等の事を良く知る枢機卿と銃士隊隊長だか...
よって王宮内でもこの事に対しては機密扱いとなり、サイトが...
許されなかった。
「あの、マザリーニさん。俺は一体どうすれば…」
「暫くは王宮に居てもらう」
「それは良いんですけど、俺ルイズに黙って出てきてるし、そ...
仕事とかは…」
「勿論ミス・ヴァリエールにも話してはならぬ。例え彼女が陛...
は言え、余計な混乱を招きかねんからな。執務については後...
「はあ…」
力無く頷き溜息を漏らすサイト。
(ルイズ、心配してるだろうな)
馬車の中でその様な会話がなされている時、アンリエッタは...
来た馬に乗り彼等の後を走っていた。例え変装しているとは言...
身馬に乗せれるはずも無い。
また世間体というものが有るのだ。例え中身が違うとは言え。
マザリーニは仕方無しに、そうアンリエッタに伝えた。
ところが、これは彼女にとってみては願ってもないチャンス...
自分の立場を理解しているとは言え、彼女とてサイトと同い...
もすれば、学校に通い友人に囲まれる生活に夢を見るのも当然...
幼少の頃より多くのことを叩き込まれ、単独で馬に乗る事く...
だが、学校となればそうは言ってはいられない。出来ること...
入れ替わって学院生活を送ってみたいと思いはする物の、やは...
であろう事は容易に想像が付いたからだ。
(サイト殿、ご迷惑をお掛けします)
馬車へと顔を向け沈痛な面持ちで視線を投げるも、どうして...
まうのを押さえ切れていない。
彼女にはもう一つ、嬉しい理由が有った。
それは、サイトと生活を共に出来る事。
シュヴァリエの爵位を与え、近衛隊服隊長の立場を与えたも...
イトはルイズの使い魔。任務が終わると学院の彼女の下へと帰...
任務が無いときには自分の下へ来る事も無い。
とんだアクシデントではあるが、お陰で暫くはサイトと一緒...
は悪いが、ここはこの降って湧いた幸運に感謝しよう。心の中...
に祈りを捧げながら、アンリエッタはそんな風に考えていた。
そんな2人の心のうちを知ってか知らずか、二つの月は輝き...
だった。
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水精霊騎士団のたまり場となっている零戦の格納庫。
そこに桃色の髪をした少女が現れた。
「ルイズ、どうしたんだい?」
やってくるなり隊員たちに声もかけず、格納庫のあちこちを...
彼女の纏うオーラに多少怯えつつも、不審な動きを見せるルイ...
長であるギーシュが声を掛ける。
「サイトはどこ?」
「一緒じゃなかったのか?」
彼と酒を交わしていたレイナールが、何を言ってるんだと言...
尋ね返す。
ところがルイズは、そんな彼の言葉に応えもせずにジロリと...
同じ質問を繰り返した。
「し、知らないよ」
「嘘じゃ無いでしょね」
「本当だって!朝から見てないんだ」
そこに別の誰かが口を挟んだ。
「ああ、サイトなら今朝早く馬に乗って出て行くのを見たよ」
声のした方へ顔を向け、どこに行ったの?と低い声で尋ねる。
「さあ…」
「どこに行ったのよ!教えなさいよ!」
まるでゴーレムが歩いているのかと思わせるようなドスドス...
てて彼の前まで歩いて行くと、噛み付かんばかりに食って掛か...
「知らないよ、そこまでは」
彼が嘘を吐いている様には見えない。
これ以上ここでは情報を得られないと判断したのか、来ると...
怒らせながら出て行った。
次いでルイズがやってきたのは、厨房。
サイト付きのメイドとなってからも頻繁に厨房の手伝いをし...
訪ねて来たのである。
夕食が終わった後で、コックやメイドたちは片付けの真っ最...
「おい、シエスタ。後は俺たちで大丈夫だ、我らが剣のとこに...
漸く目処が立ったのか、マルトーに許しを貰って寮へ戻ろう...
を捕まえる。
「あら、ミス・ヴァリエール。こんなところで如何したんです...
「シエスタ、あんたサイトがどこ行ったか知らない?」
ルイズの声音にただならぬ物を感じ取った彼女は、恐る恐る...
「いえ…サイトさんがどうかされたんですか?」
「居ないのよ」
「えっ?」
「騎士隊の連中は朝出かけるのを見たって言うのよ。
あんた、本当に知らないの?」
シエスタの胸ぐらを掴んで揺さぶりながら声を荒げるルイズ。
首から上をかくんかくんさせつつも、シエスタははっきりと...
「だから知りませんって!わたしだって朝から会ってないんで...
そこで、はっと思い出した。今朝いつもより早くシエスタに...
その時彼女は何やら焦ってはいなかっただろうか。眠くてお...
応しなかったが、確かサイトがどうとか…
「そう言えばあんた、朝に何か言ってたわね」
「何をですか?」
「言ってたじゃないのよ、サイトがどうしたとか」
「ですから、サイトさんが居ないって…」
なんでもっと早く言わないのよ!と、ルイズはまたもや彼女...
くちゃな事を言い出した。
「言いましたよ。そしたらミス・ヴァリエールが仰ったんじゃ...
『トイレにでも行ってるんでしょ、放っときなさい』って」
いつも通りに起き出したシエスタは、本来ならまだ寝息を立...
が居ないとルイズを起こしたのだ。ところが、その時間という...
よりもかなり早い時間だった為、ルイズは彼女の話を半分寝て...
いたのである。
また、この日は厨房が何やら忙しいとの事で、朝からシエス...
借り出される事になっていた。サイトが居ないが為に寝過ごし...
業に遅れそうになり、慌てて部屋を飛び出して行ったのだ。
結果、サイトの不在を知ったのは授業が終わってからとなっ...
「…疑って悪かったわ」
漸くシエスタを解放すると、彼女に背を向けて歩き出すルイ...
嫌を態度にありありと表して去って行こうとする彼女を追いか...
隣に並んだ。
まったくご主人さまを放ってほっつき歩くなんて何考えてん...
ってば。と、ぶつぶつと小さく、それでいてドスの利いた声で...
彼女の横で苦笑を漏らすと同時に、戻ってきたら十中八九お...
る事となるであろう主の無事を祈るシエスタ。
それぞれ違う思いを抱きながら、2人は肩を並べて寮へと戻...
翌日、食堂に現れたルイズは目の下に隈を作っていた。
昨晩あれからサイトの帰りを待っていたのだが、1時間経っ...
ても帰ってくる気配が無い。帰ってきたら直ぐにお仕置きを出...
言って先にシエスタを休ませ、自分は起きて待っていた。とこ...
トは帰ってこず、そのまま朝まで起きていたのだ。
帰って来ない彼を心配してか、ルイズは朝食の時間になって...
うとはしなかったのだが、シエスタが彼女を気遣い無理やりに...
ある。
心ここに在らず、そんな感じで席に着いたルイズに追い討ち...
意外な言葉が襲い掛かった。
「ルイズ!あなたサイトに棄てられたんですって?」
モンモランシーを始めとする数人の生徒が彼女を取り囲み、...
来るではないか。
「なっ…!」
何を言い出すのよ、そう言い掛けたが上手く言葉にならない。
そんなルイズを放って、周囲は口々に騒ぎ出す。その中には...
者も居れば、サイトの肩を持つ者、果てには自分の兄妹や親戚...
言い出す者まで出てくる始末。
「あああ、あんたたち何を言ってるのよ!わ、わたしが棄てら...
そんな事あるわけ無いじゃない!わたし“が”棄てるならとも...
であいつ“に”棄てられなくちゃなんないわけ?だ、だいたい...
使い魔であって、棄てるとかそんなんじゃないんだから!」
一気にまくし立てるルイズ。
始めは蒼かった彼女の顔色も、赤くになっている。
「じゃあ、彼の姿が昨日から見えないのはどうしてなの?」
「う…」
取り巻きの誰かに聞かれ言葉に窮してしまう。
「きゅ…休暇、そう、休暇ををあげたのよ。あ、あいつは別にメ...
だし、この学院に四六時中居る必要も無いわけじゃない?そ...
にはあんなのでも休みをあげないとかわいそうだから。だ、...
に居るんじゃないかしら?昨日は時間を忘れて遊びすぎて、...
ちゃって、きっと宿屋にでも泊まったのよ」
「サイト、やっぱり昨日は帰って来なかったんだ」
我ながら上手い言い訳だわ、と思っていると、そこに赤い髪...
らしながらキュルケが声を挟んできた。相変わらず、これ見よ...
ボタンを開けて谷間を晒している。
「な、何よあんた、やっぱりってどう言う事よ!」
「別に。ただ昨日、サイトを見かけただけの話よ」
「み、見かけたってどこで?」
ガタンと椅子を倒して立ち上がると、ルイズは掴みかからん...
ケに迫る。
「どこでって…あなた自分で言ったじゃない、街に居るんじゃな...
「そ、そうだけど…そ、それはともかく、あんたは街で見かけた...
「ええ、そうよ」
肯定の言葉を得られ、ほっとするルイズ。
同時に先ほど彼女が言った言葉が気に掛かってしまう。
「キュルケ、やっぱりってどう言う事?」
一瞬の逡巡の後、話し出した。
昨日の帰りに見かけた、デートしていたらしいと言う事を。
「デ、デデ、デートですって〜〜〜〜」
「ええ、可愛い娘だったわよ。ほら、前にモンモランシーが教...
い騒ぎになった服、あったじゃない?彼女、それを着てたわ...
言わなくても良い事まで言ってしまう。
前に、モンモランシーが、着て来て、騒ぎになった、服、と...
せる様に一言一言を区切って喋るルイズ。
彼女の背後に何やら黒いオーラを感じて、キュルケはビクッ...
「くけ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
聞いた者を凍りつかせるような奇声を発しながら飛び出して...
ンモランシーが制止の声を掛けようとした時には、既に彼女の...
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