ゼロの使い魔保管庫
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マリコルヌの冒険(その3) 痴女109号氏
注)若干、NTRぎみです。
#br
(死にたくねえ……、死にたくねえよ)
トリステイン魔法学院学院長室。
マリコルヌ・ド・グランドプレは、そのドアを前にして、真...
何度逃げ出そうかと思ったか分からない。
だが、逃げたところで逃げきれる相手ではない。
オールド・オスマン……トリステインはおろか、ハルケギニア...
そして、オスマンの背後には、無限の寿命と高度な文明を誇...
(って言うか……それ以前の話なんだよなぁぁぁぁ)
恥も外聞も投げ捨てて行方をくらますには、あまりにも時期...
――女王陛下暗殺計画。
この風聞が都を騒がせ、そしてオスマンに召喚されるまで、...
(取り潰しくらいじゃ済まないだろ、普通……)
言うまでも無い。
正当な理由も無く、王都警備の任務を放り出しすなど、敵前...
グランドプレ家は確実に廃絶され、彼はオスマンという“個人...
――つまり、八方塞がり。
(何でぼくがこんな目に……!!)
オスマンからの召喚状を受理してから、数百回目になる疑問...
(何で……ぼくが……!!)
答えは出ない。
始祖も、神も、家族も、友人も、誰も、――答えられない問い。
無理やり答えをひねろうとすれば、出て来る回答はある。
――運が悪かった。
――覗きなんぞやっていた、おまえが悪い。
それ以外に出せる答えはない。
膝がマラリアにかかったように、震えている。
朝からもう六回も小用を済ませたはずなのに、いまだに恐怖...
だが、それでも、
――ぎりっ!!
マリコルヌの奥歯が鳴る。
(じたばたしても始まらない)
そう思うだけの分別は、彼に残されていた。
こんこん。
震えが止まらない手が、分厚い学院長室のドアを叩く。
「入りたまえ」
眼前がぐにゃりと歪む。
聞き覚えのある老人の声。
齢三百を数えるドルイドとは思えぬほどに飄々とした響き。
震えは止まらない。
だが、身体の動きはもっと止まらない。
脂汗で濡れそぼった掌はドアノブを回し、弾けるように笑い...
ふかふかの絨毯が敷かれた死刑台――学院長室へと。
「よく来たの、ミスタ・グランドプレ」
老人は笑った。
孫に贈り物をしたいんじゃ。――そう言いだしても可笑しくは...
その笑顔にこそ、マリコルヌは背骨を引っこ抜かれるような...
『悪魔は滅多に怒らない。怒った顔では人を騙せないからだ』
かつて年少の頃、母に読んでもらった一冊の絵本。そこに書...
「なるほど、それがおぬしの使い魔か」
オスマンの目が、マリコルヌが下げていた鳥かごに注がれる。
「“風”のドットじゃと聞いたが、なかなかいい使い魔を召喚し...
その瞬間、老人の目に鋭い光が宿った。
「じゃが……覗きはいかんの」
「〜〜〜〜〜〜〜ッッッ」
マリコルヌはへたり込んだ。
彼があげた悲鳴は、声の形すら取れない。極度の緊張が声帯...
(ころされる、ころされる、ころされる、ころされる、ころさ...
そんなマリコルヌに、オスマンはにっこり笑いかけた。
「ふっはっはっはっ、野暮な事を言うたの! 何を隠そう、こ...
「……」
「どうじゃ、今度ええポイントを教えてもらえんか? ワシの...
もう、意味が分からない。
恐怖と緊張で、半分以上機能していない脳漿を懸命に鞭打ち...
(なんだ!? さっきから何を言ってるんだ、このジジイは!...
事ここに至って、脅すでもなく、諭すでもなく、そして殺す...
この情況と彼の言葉とを結びつけ、老人の真意を測らんとす...
「……ん?」
オスマンの瞳から、熱が消えた。
「ふむ、ちと緊張をほぐそうとしたんじゃがの」
老人の目に、三百歳相応の理性と知性が戻っていた。
「どうやら、とっとと本題に入った方がよさそうじゃな」
『本題』
その言葉が、身も蓋も無い混乱と恐怖に魂を竦ませていたマ...
「ほほう、――健気じゃな、ミスタ・グランドプレ」
「ッッッ!?」
そう言われて、初めてマリコルヌは自分が、とっさに杖を構...
「いやいや、さもあらんさもあらん。――人として、男として、...
目を細めて頷くオスマンの様子は、まるで窮鼠の抵抗を喜ぶ...
――こっ、このジジイッ!!
彼の心に、初めて怒りが沸いた。
発端は確かに、マリコルヌの犯罪的覗き行為である。
そして、見た。見てしまった。
見てはならない眺めを。人物を。場面を。
だが、だが、……何故それだけの理由で、このおれが、――この...
(殺されなきゃならないんだっっ!!)
マリコルヌは立ち上がった。
杖を構える。
もう震えは止まった。
彼は“風”のドットだ。魔法学院でも、お世辞にも優等生とは...
(勝てるわけが無い)
とは考えなかった。
考える余裕が無かった。
ただ、我が身に理不尽な死を与えんとする老人への、骨を焦...
彼は小心な男だった。
痛いのも、怖いのも、そして死ぬのも嫌いだった。
だが、それでも彼は貴族であった。誇りの価値は命に勝ると...
生まれながらにそうだったわけではない。
アルビオン戦役や『聖戦』を含む二度の従軍経験。アーハン...
「たいしたものじゃ……いまのおぬしの魔力は、ラインの上位に...
だが、あくまでオスマンの笑みは消える事は無い。
「――ッッ!!?」
マリコルヌの目が驚愕に見開かれた。
オスマンが杖を、――放り投げたのだ。少なくとも、その場か...
「……っ、なん、でっっ!!?」
力が入りすぎた筋肉と情況を理解できない脳髄が、再び重心...
「話を聞きなさい。ミスタ・グランドプレ」
そう言うオスマンの瞳に、殺気はない。
「はなし、ですか……?」
マリコルヌも、自分の言葉に、ようやく敬語を交える余裕が...
「そうじゃ、話じゃ」
この期に及んで何の話があるというのか? それはマリコル...
だが、老人の目には、先程まで浮かんでいた、人を嬲るよう...
「おぬしが、その使い魔を使って何を見たのか。覗いたのか。―...
「……?」
マリコルヌには、まだ話が見えない。
そんな彼に、諭すようにしてオスマンは言葉を続ける。
「どうやらおぬしは、ワシに殺されると思い込んでおるようじ...
「でっ、でも、――じゃあ一体……っっ!?」
「――じゃから、口封じには、一般的に二種類あるじゃろうと言...
「ばい、しゅう……?」
「かつて古(いにしえ)の賢人は言うた。――水を望む者には水を...
オスマンの口元に、好々爺然とした笑みが走る。
マリコルヌは、その言葉をいぶかしむ暇すらなかった。オス...
溜め息をつくと、老人は二回、ぽんぽんと手を打つ。その途...
――そこにいたのは、全裸で佇む一人の少女。
「だから言うておるのじゃミスタ・グランドプレ。おぬしの望...
少女が一人、そこにいた。
ギーシュ・ド・グラモンの恋人、モンモランシー。
身に付けるものは薄衣一枚纏うことなく、そして、一切の感...
マリコルヌは、呆然とオスマンを振り返る。
――おぬしが望むものは愛じゃろ?
確かに老人はそう言った。
だったら、……なぜモンモランシーなのだ?
彼女が愛する者は、少なくともこの自分ではない。
自分以外の男に愛を捧げる女を眼前に置かれて、このおれに...
「“寝取り”は最高じゃぞ、ミスタ・グランドプレ」
マリコルヌは愕然とした。
そして、理解した。
これは、取引なのだ。
買収といえば聞こえはいいが、要は、――自分たちの秘密をた...
お前が繰り返していた、深夜の覗きだけではまだ足らぬ。身...
「がっ、がくいんちょうっっ!!」
マリコルヌが我に返ったときには、オスマンはもう、廊下へ...
無論その手には、いつの間にか拾った杖が握られていた。
「そこのミス・モンモランシには、秘薬と併用して、ちょっと...
「思い、出さない!?」
「つまりは、あとくされがないということじゃ」
オスマンは、そう言いながら声を潜め、
「ただ、暗示はすでにかけておいたからの。その娘を抱きたく...
「なっ!?」
「――まあ、抱き飽きたらワシに言え。ちゃんと処女膜は再生さ...
マリコルヌは、絶句していた。
そんな彼に、皺らけのウインクを向けると、老人は学院長室...
残されたのは男と女――そう呼ぶには、若すぎる少年と少女。
「もっ、モンモランシー……」
とにかく羽織っていたマントを脱ぎ、見るも寒々しいモンモ...
だが、少女は、そのマントを拒むように肩を挙げると、その...
ガラス玉のようだった目には、いきいきと命の輝きが宿り、...
「さあ、学院長のお許しは出たわ……始めましょう」
「モンモランシー、しっかりしてくれ!? 一体、どうしたっ...
マリコルヌは、全身を使って懸命にモンモランシーを振りほ...
「きゃっ!」
「あ……ごっ、ごめん……」
絨毯に尻餅をついた彼女に、あわててマリコルヌは駆け寄る...
だが、そんな彼を、モンモランシーは上目遣いに、幼い悪戯...
「もう、どうしたのよ? いつもはあんなに下心剥き出しの目...
「……っっ!?」
「もしかして、こわいの?」
マリコルヌは凍りついた。
そう、確かに彼は恐怖していた。
この情況に。眼前の彼女に。そして何より、自分自身に。
モンモランシーは微笑んだ。
「ふふふ……いいわ、分かった。そんなにわたしが怖いのなら、...
「モ、モンモランシー……」
それは、マリコルヌが初めて見る、モンモランシーの蠱惑的...
「――もう、泣いても許してあげないわよ……!!」
もぞり。
「――ひゃうっ!!」
マリコルヌの股間を、蛇のようなものがのたうつ。
痺れるような刺激が背骨を貫く。
「んふふふ……、まだまだこれからなんだからね」
とろん、と酒に酔ったような眼をしたモンモランシーは、膝...
「ちょっ!! 何やってんだよモンモランシーっ!?」
だが、彼女は、その叫びにはこたえない。
慣れていないのだろう。マリコルヌのベルトは一向に外れる...
「ああもう!! いいからズボンを下ろしてお尻を出しなさい...
「はっ、はいっ!!」
反射行為だった。
その瞬間に、マリコルヌは自らのベルトを外し、ブリーフご...
「あ……?」
なっ、なんで……っっっ!?
それは、肉体に刻み込まれたマゾヒストの因子のなせる業で...
生まれて初めて“支配者”を得た、彼の肥満体は、理性の声す...
「んふふふ、よく出来ましたっ」
お褒めの言葉の次に来た刺激は、――神経が灼けるほどの衝撃...
びっし〜〜ん!! びっし〜〜ん!! びっし〜〜んっ!!
「ひっ、ぎゃぁぁ〜〜〜〜〜っっっ!!」
突然のスパンキングに思わず体勢を崩したマリコルヌは、カ...
「ははっ! それいい! やっぱり苛められたかったら、ブタ...
いかにも嬉しそうに言う、その台詞にマリコルヌの牡器官は...
ただひたすらに、彼の尻を叩きつづける。
「どう、気持ちいい? ブタみたいに扱われて、気持ちいいの...
「はっ、はいっ、きもち、いい……」
がりっ!!
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!」
叩かれて真っ赤になったマリコルヌの尻に、モンモランシー...
「だぁれが、人間の言葉を喋っていいって言ったの? ブタは...
「ぶっ、ぶうぶう」
「聞こえないっっ!!」
再び爪が立てられた。
「ぶううっっ!! ぶうううっっ!! ぶうううううっっ!!」
「きゃははははははっ、すごいすごぉい!! やっぱあんたっ...
才能があったどころではない。
まさかモンモランシーが、これほどのサディスティンの才能...
(まさか、じゃない)
これは確信犯だ。
さっき老人は言ったではないか。
望むものを望むがままに与える事こそが、最も容易く従者を...
マゾヒストとしての自分に、オスマンは仕えるべき“女王”を...
「あああっ、モンモランシーさまぁっ!!」
あられもない声を上げて、屈辱の快感を甘受したマリコルヌ...
「んむっ!!」
不意をついたようにモンモランシーが、四つん這いになった...
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」
彼女の舌は、たっぷり二分は少年の口内で踊り狂ったであろ...
支配者は、哀れな下僕の口内に、大量の唾液を送り込み、そ...
彼はもう、四つん這いの姿勢すら維持できない。
極度に搾取された体力は、男に、踏み潰されたカエルのよう...
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ...
呼吸困難に悲鳴をあげる眼前の男を解放した少女は、紫色に...
「わたしの痰はおいしかった?」
と微笑み、そのまま石のように硬くなったペニスに、初めて...
「はうっっっ!!」
「んふふふ、手コキっていうのよね、これ?」
上下に扱かれる砲身は、いまにも暴発を起こしてしまいそう...
「だっ、だめっ!! でるっ!!」
「だぁめ」
モンモランシーはそのまま、マリコルヌの腰をまたぐように...
「出すのは、わたしの、な・か、でしょ?」
と言いながら、じわじわと自分の下半身を、降下させてくる。
――たぎりにたぎった、服従者のペニスへと。
「ふふふ……どう、興奮したでしょ? これだけ熱くなったら、...
その一言は、そこにいた卑屈な従者を『マリコルヌ・ド・グ...
「だっ、だめだっ!!
あわてて、少女の身体を拒もうとするマリコルヌだったが、―...
つぶっ、じゅっ、じゅぶぶぶっ……。
女性としては、まだまだ未成熟に過ぎるスレンダーなボディ...
みちっ、みちみちっ、めりめりめりめりっ!!
(きっ、きついっ!!)
マリコルヌは声すら出せず、うめき声をあげる。
モンモランシーも、彼女なりに興奮はしていたのであろう。...
「ぎいいいぃぃっっっ!!」
「モンモランシーっっ!!?」
反射的に顔を上げたマリコルヌの目に、激痛の余り白目をむ...
男には絶対に理解できない、内臓組織を破壊される激痛をリ...
だが、彼女が泣き叫んだのは、その一瞬だけだった。
「……きゅるけは……そんなにいたくないって……いってたのに……う...
「モンモランシー……」
自分の身を気遣うように見上げる少年を、慈しむように見下...
「うごいて……いいよ?」
「なっ!?」
いいわけがない。彼女の肉体がいま、どれほど凄まじい痛覚...
「いいの、わたしは……大丈夫。いま、あなたが心配してくれた…...
「でっ、でも……」
「……そっか、そういえば」
少女は、そこで何かを思い出したような目をすると、
「リードするのはわたし、だったよね?」
そう言うと、モンモランシーは、自らの腰を動かし始めた。...
思わずマリコルヌは瞠目した。
「ぐっ……!!」
間違いない。
モンモランシーは、この情交に於いて、エクスタシーなど1...
だが、彼女は激痛をこらえて、微笑する。
「平気よ、耐えられる。あなたに抱かれていると思えば、痛く...
「そんな……」
「いいのよ、もう我慢しなくて。出したくなったら、いつでも...
(あああ……)
全身を包む多幸感で、マリコルヌは脊髄がとろけてしまった...
これがセックスなのか。
金を払えば、いつでも娼婦を抱く事は出来る。そして、それ...
そういう意味では、彼女の肉体は、お世辞にも男を悦ばせる...
――でも、全然違う。
彼女はいま、心からおれの事を思ってくれている。おれが与...
女を抱く、とはこういうことなのか? いや、こういうこと...
その時だった。
「あなたの子供を産みたいの、――ギーシュ」
マリコルヌの脳髄は停止した。
「ああ、ギーシュ、大好き……愛してるわ、心から愛してる……本...
モンモランシーの瞳から、大粒の涙がこぼれる。
「ふふっ、……おかしいわね……さんざん、あなたにキツくあたっ...
快楽による随喜の涙ではない。
これはただ、愛する男との想いをついに果たした、恋する少...
しかし、彼女が想いを捧げる当の男は、……おれではない。
このマリコルヌ・ド・グランドプレではないのだ。
「ああああっ!! ギーシュッ!! ギーシュゥゥゥッッ!!」
これはセックスではない。
想いの有無さえもはや問題ではない。何しろ彼女は、おれを...
これは自慰――そう、自慰だ。
互いの体を使った自慰にすぎない。
「“寝取り”は最高じゃぞ」
「おぬしが望むものは“愛”じゃろ?」
何が寝取りだ!!
何が愛だ!!
おれが誰を寝取ったと言うんだっ!!
誰がおれを愛したというんだっ!!
いまのモンモランシーにとって、マリコルヌという人間は、...
これ以上の屈辱があるか!!
これ以上の孤独があるか!!
これ以上の業苦があるか!!
「あああ、ギーシュ!! ギーシュ!! あなたの子供を産ま...
やめろ!! やめてくれ!!
なんでだ!? なんで、こんな、非道い目に遭いながら、こ...
――お れ は こ う ふ ん し て い る ん だッッ...
「あああああああああああああああああああああああああああ...
どくんっ、どくんっ、どくんっ、どくんっ! どくんっ! ...
「本当に、あのような事で、あの少年が口をつぐむとお思いで...
ビダーシャルが、オスマンの背中に問う。
が、老人はそんなエルフに刺すような視線を以って、返答を...
「……」
「ワシがあの小僧に、どれだけ残酷なことをしたのか、貴様ら...
「わかりませんな、あなたのおっしゃる事は。……まあ、ともか...
「そのときは……」
オスマンは、苦渋に満ちた目を床に向け、
「ワシの首をネフテスに持って帰るがよい」
そう呟いた。
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マリコルヌの冒険(その3) 痴女109号氏
注)若干、NTRぎみです。
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(死にたくねえ……、死にたくねえよ)
トリステイン魔法学院学院長室。
マリコルヌ・ド・グランドプレは、そのドアを前にして、真...
何度逃げ出そうかと思ったか分からない。
だが、逃げたところで逃げきれる相手ではない。
オールド・オスマン……トリステインはおろか、ハルケギニア...
そして、オスマンの背後には、無限の寿命と高度な文明を誇...
(って言うか……それ以前の話なんだよなぁぁぁぁ)
恥も外聞も投げ捨てて行方をくらますには、あまりにも時期...
――女王陛下暗殺計画。
この風聞が都を騒がせ、そしてオスマンに召喚されるまで、...
(取り潰しくらいじゃ済まないだろ、普通……)
言うまでも無い。
正当な理由も無く、王都警備の任務を放り出しすなど、敵前...
グランドプレ家は確実に廃絶され、彼はオスマンという“個人...
――つまり、八方塞がり。
(何でぼくがこんな目に……!!)
オスマンからの召喚状を受理してから、数百回目になる疑問...
(何で……ぼくが……!!)
答えは出ない。
始祖も、神も、家族も、友人も、誰も、――答えられない問い。
無理やり答えをひねろうとすれば、出て来る回答はある。
――運が悪かった。
――覗きなんぞやっていた、おまえが悪い。
それ以外に出せる答えはない。
膝がマラリアにかかったように、震えている。
朝からもう六回も小用を済ませたはずなのに、いまだに恐怖...
だが、それでも、
――ぎりっ!!
マリコルヌの奥歯が鳴る。
(じたばたしても始まらない)
そう思うだけの分別は、彼に残されていた。
こんこん。
震えが止まらない手が、分厚い学院長室のドアを叩く。
「入りたまえ」
眼前がぐにゃりと歪む。
聞き覚えのある老人の声。
齢三百を数えるドルイドとは思えぬほどに飄々とした響き。
震えは止まらない。
だが、身体の動きはもっと止まらない。
脂汗で濡れそぼった掌はドアノブを回し、弾けるように笑い...
ふかふかの絨毯が敷かれた死刑台――学院長室へと。
「よく来たの、ミスタ・グランドプレ」
老人は笑った。
孫に贈り物をしたいんじゃ。――そう言いだしても可笑しくは...
その笑顔にこそ、マリコルヌは背骨を引っこ抜かれるような...
『悪魔は滅多に怒らない。怒った顔では人を騙せないからだ』
かつて年少の頃、母に読んでもらった一冊の絵本。そこに書...
「なるほど、それがおぬしの使い魔か」
オスマンの目が、マリコルヌが下げていた鳥かごに注がれる。
「“風”のドットじゃと聞いたが、なかなかいい使い魔を召喚し...
その瞬間、老人の目に鋭い光が宿った。
「じゃが……覗きはいかんの」
「〜〜〜〜〜〜〜ッッッ」
マリコルヌはへたり込んだ。
彼があげた悲鳴は、声の形すら取れない。極度の緊張が声帯...
(ころされる、ころされる、ころされる、ころされる、ころさ...
そんなマリコルヌに、オスマンはにっこり笑いかけた。
「ふっはっはっはっ、野暮な事を言うたの! 何を隠そう、こ...
「……」
「どうじゃ、今度ええポイントを教えてもらえんか? ワシの...
もう、意味が分からない。
恐怖と緊張で、半分以上機能していない脳漿を懸命に鞭打ち...
(なんだ!? さっきから何を言ってるんだ、このジジイは!...
事ここに至って、脅すでもなく、諭すでもなく、そして殺す...
この情況と彼の言葉とを結びつけ、老人の真意を測らんとす...
「……ん?」
オスマンの瞳から、熱が消えた。
「ふむ、ちと緊張をほぐそうとしたんじゃがの」
老人の目に、三百歳相応の理性と知性が戻っていた。
「どうやら、とっとと本題に入った方がよさそうじゃな」
『本題』
その言葉が、身も蓋も無い混乱と恐怖に魂を竦ませていたマ...
「ほほう、――健気じゃな、ミスタ・グランドプレ」
「ッッッ!?」
そう言われて、初めてマリコルヌは自分が、とっさに杖を構...
「いやいや、さもあらんさもあらん。――人として、男として、...
目を細めて頷くオスマンの様子は、まるで窮鼠の抵抗を喜ぶ...
――こっ、このジジイッ!!
彼の心に、初めて怒りが沸いた。
発端は確かに、マリコルヌの犯罪的覗き行為である。
そして、見た。見てしまった。
見てはならない眺めを。人物を。場面を。
だが、だが、……何故それだけの理由で、このおれが、――この...
(殺されなきゃならないんだっっ!!)
マリコルヌは立ち上がった。
杖を構える。
もう震えは止まった。
彼は“風”のドットだ。魔法学院でも、お世辞にも優等生とは...
(勝てるわけが無い)
とは考えなかった。
考える余裕が無かった。
ただ、我が身に理不尽な死を与えんとする老人への、骨を焦...
彼は小心な男だった。
痛いのも、怖いのも、そして死ぬのも嫌いだった。
だが、それでも彼は貴族であった。誇りの価値は命に勝ると...
生まれながらにそうだったわけではない。
アルビオン戦役や『聖戦』を含む二度の従軍経験。アーハン...
「たいしたものじゃ……いまのおぬしの魔力は、ラインの上位に...
だが、あくまでオスマンの笑みは消える事は無い。
「――ッッ!!?」
マリコルヌの目が驚愕に見開かれた。
オスマンが杖を、――放り投げたのだ。少なくとも、その場か...
「……っ、なん、でっっ!!?」
力が入りすぎた筋肉と情況を理解できない脳髄が、再び重心...
「話を聞きなさい。ミスタ・グランドプレ」
そう言うオスマンの瞳に、殺気はない。
「はなし、ですか……?」
マリコルヌも、自分の言葉に、ようやく敬語を交える余裕が...
「そうじゃ、話じゃ」
この期に及んで何の話があるというのか? それはマリコル...
だが、老人の目には、先程まで浮かんでいた、人を嬲るよう...
「おぬしが、その使い魔を使って何を見たのか。覗いたのか。―...
「……?」
マリコルヌには、まだ話が見えない。
そんな彼に、諭すようにしてオスマンは言葉を続ける。
「どうやらおぬしは、ワシに殺されると思い込んでおるようじ...
「でっ、でも、――じゃあ一体……っっ!?」
「――じゃから、口封じには、一般的に二種類あるじゃろうと言...
「ばい、しゅう……?」
「かつて古(いにしえ)の賢人は言うた。――水を望む者には水を...
オスマンの口元に、好々爺然とした笑みが走る。
マリコルヌは、その言葉をいぶかしむ暇すらなかった。オス...
溜め息をつくと、老人は二回、ぽんぽんと手を打つ。その途...
――そこにいたのは、全裸で佇む一人の少女。
「だから言うておるのじゃミスタ・グランドプレ。おぬしの望...
少女が一人、そこにいた。
ギーシュ・ド・グラモンの恋人、モンモランシー。
身に付けるものは薄衣一枚纏うことなく、そして、一切の感...
マリコルヌは、呆然とオスマンを振り返る。
――おぬしが望むものは愛じゃろ?
確かに老人はそう言った。
だったら、……なぜモンモランシーなのだ?
彼女が愛する者は、少なくともこの自分ではない。
自分以外の男に愛を捧げる女を眼前に置かれて、このおれに...
「“寝取り”は最高じゃぞ、ミスタ・グランドプレ」
マリコルヌは愕然とした。
そして、理解した。
これは、取引なのだ。
買収といえば聞こえはいいが、要は、――自分たちの秘密をた...
お前が繰り返していた、深夜の覗きだけではまだ足らぬ。身...
「がっ、がくいんちょうっっ!!」
マリコルヌが我に返ったときには、オスマンはもう、廊下へ...
無論その手には、いつの間にか拾った杖が握られていた。
「そこのミス・モンモランシには、秘薬と併用して、ちょっと...
「思い、出さない!?」
「つまりは、あとくされがないということじゃ」
オスマンは、そう言いながら声を潜め、
「ただ、暗示はすでにかけておいたからの。その娘を抱きたく...
「なっ!?」
「――まあ、抱き飽きたらワシに言え。ちゃんと処女膜は再生さ...
マリコルヌは、絶句していた。
そんな彼に、皺らけのウインクを向けると、老人は学院長室...
残されたのは男と女――そう呼ぶには、若すぎる少年と少女。
「もっ、モンモランシー……」
とにかく羽織っていたマントを脱ぎ、見るも寒々しいモンモ...
だが、少女は、そのマントを拒むように肩を挙げると、その...
ガラス玉のようだった目には、いきいきと命の輝きが宿り、...
「さあ、学院長のお許しは出たわ……始めましょう」
「モンモランシー、しっかりしてくれ!? 一体、どうしたっ...
マリコルヌは、全身を使って懸命にモンモランシーを振りほ...
「きゃっ!」
「あ……ごっ、ごめん……」
絨毯に尻餅をついた彼女に、あわててマリコルヌは駆け寄る...
だが、そんな彼を、モンモランシーは上目遣いに、幼い悪戯...
「もう、どうしたのよ? いつもはあんなに下心剥き出しの目...
「……っっ!?」
「もしかして、こわいの?」
マリコルヌは凍りついた。
そう、確かに彼は恐怖していた。
この情況に。眼前の彼女に。そして何より、自分自身に。
モンモランシーは微笑んだ。
「ふふふ……いいわ、分かった。そんなにわたしが怖いのなら、...
「モ、モンモランシー……」
それは、マリコルヌが初めて見る、モンモランシーの蠱惑的...
「――もう、泣いても許してあげないわよ……!!」
もぞり。
「――ひゃうっ!!」
マリコルヌの股間を、蛇のようなものがのたうつ。
痺れるような刺激が背骨を貫く。
「んふふふ……、まだまだこれからなんだからね」
とろん、と酒に酔ったような眼をしたモンモランシーは、膝...
「ちょっ!! 何やってんだよモンモランシーっ!?」
だが、彼女は、その叫びにはこたえない。
慣れていないのだろう。マリコルヌのベルトは一向に外れる...
「ああもう!! いいからズボンを下ろしてお尻を出しなさい...
「はっ、はいっ!!」
反射行為だった。
その瞬間に、マリコルヌは自らのベルトを外し、ブリーフご...
「あ……?」
なっ、なんで……っっっ!?
それは、肉体に刻み込まれたマゾヒストの因子のなせる業で...
生まれて初めて“支配者”を得た、彼の肥満体は、理性の声す...
「んふふふ、よく出来ましたっ」
お褒めの言葉の次に来た刺激は、――神経が灼けるほどの衝撃...
びっし〜〜ん!! びっし〜〜ん!! びっし〜〜んっ!!
「ひっ、ぎゃぁぁ〜〜〜〜〜っっっ!!」
突然のスパンキングに思わず体勢を崩したマリコルヌは、カ...
「ははっ! それいい! やっぱり苛められたかったら、ブタ...
いかにも嬉しそうに言う、その台詞にマリコルヌの牡器官は...
ただひたすらに、彼の尻を叩きつづける。
「どう、気持ちいい? ブタみたいに扱われて、気持ちいいの...
「はっ、はいっ、きもち、いい……」
がりっ!!
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!」
叩かれて真っ赤になったマリコルヌの尻に、モンモランシー...
「だぁれが、人間の言葉を喋っていいって言ったの? ブタは...
「ぶっ、ぶうぶう」
「聞こえないっっ!!」
再び爪が立てられた。
「ぶううっっ!! ぶうううっっ!! ぶうううううっっ!!」
「きゃははははははっ、すごいすごぉい!! やっぱあんたっ...
才能があったどころではない。
まさかモンモランシーが、これほどのサディスティンの才能...
(まさか、じゃない)
これは確信犯だ。
さっき老人は言ったではないか。
望むものを望むがままに与える事こそが、最も容易く従者を...
マゾヒストとしての自分に、オスマンは仕えるべき“女王”を...
「あああっ、モンモランシーさまぁっ!!」
あられもない声を上げて、屈辱の快感を甘受したマリコルヌ...
「んむっ!!」
不意をついたようにモンモランシーが、四つん這いになった...
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」
彼女の舌は、たっぷり二分は少年の口内で踊り狂ったであろ...
支配者は、哀れな下僕の口内に、大量の唾液を送り込み、そ...
彼はもう、四つん這いの姿勢すら維持できない。
極度に搾取された体力は、男に、踏み潰されたカエルのよう...
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ...
呼吸困難に悲鳴をあげる眼前の男を解放した少女は、紫色に...
「わたしの痰はおいしかった?」
と微笑み、そのまま石のように硬くなったペニスに、初めて...
「はうっっっ!!」
「んふふふ、手コキっていうのよね、これ?」
上下に扱かれる砲身は、いまにも暴発を起こしてしまいそう...
「だっ、だめっ!! でるっ!!」
「だぁめ」
モンモランシーはそのまま、マリコルヌの腰をまたぐように...
「出すのは、わたしの、な・か、でしょ?」
と言いながら、じわじわと自分の下半身を、降下させてくる。
――たぎりにたぎった、服従者のペニスへと。
「ふふふ……どう、興奮したでしょ? これだけ熱くなったら、...
その一言は、そこにいた卑屈な従者を『マリコルヌ・ド・グ...
「だっ、だめだっ!!
あわてて、少女の身体を拒もうとするマリコルヌだったが、―...
つぶっ、じゅっ、じゅぶぶぶっ……。
女性としては、まだまだ未成熟に過ぎるスレンダーなボディ...
みちっ、みちみちっ、めりめりめりめりっ!!
(きっ、きついっ!!)
マリコルヌは声すら出せず、うめき声をあげる。
モンモランシーも、彼女なりに興奮はしていたのであろう。...
「ぎいいいぃぃっっっ!!」
「モンモランシーっっ!!?」
反射的に顔を上げたマリコルヌの目に、激痛の余り白目をむ...
男には絶対に理解できない、内臓組織を破壊される激痛をリ...
だが、彼女が泣き叫んだのは、その一瞬だけだった。
「……きゅるけは……そんなにいたくないって……いってたのに……う...
「モンモランシー……」
自分の身を気遣うように見上げる少年を、慈しむように見下...
「うごいて……いいよ?」
「なっ!?」
いいわけがない。彼女の肉体がいま、どれほど凄まじい痛覚...
「いいの、わたしは……大丈夫。いま、あなたが心配してくれた…...
「でっ、でも……」
「……そっか、そういえば」
少女は、そこで何かを思い出したような目をすると、
「リードするのはわたし、だったよね?」
そう言うと、モンモランシーは、自らの腰を動かし始めた。...
思わずマリコルヌは瞠目した。
「ぐっ……!!」
間違いない。
モンモランシーは、この情交に於いて、エクスタシーなど1...
だが、彼女は激痛をこらえて、微笑する。
「平気よ、耐えられる。あなたに抱かれていると思えば、痛く...
「そんな……」
「いいのよ、もう我慢しなくて。出したくなったら、いつでも...
(あああ……)
全身を包む多幸感で、マリコルヌは脊髄がとろけてしまった...
これがセックスなのか。
金を払えば、いつでも娼婦を抱く事は出来る。そして、それ...
そういう意味では、彼女の肉体は、お世辞にも男を悦ばせる...
――でも、全然違う。
彼女はいま、心からおれの事を思ってくれている。おれが与...
女を抱く、とはこういうことなのか? いや、こういうこと...
その時だった。
「あなたの子供を産みたいの、――ギーシュ」
マリコルヌの脳髄は停止した。
「ああ、ギーシュ、大好き……愛してるわ、心から愛してる……本...
モンモランシーの瞳から、大粒の涙がこぼれる。
「ふふっ、……おかしいわね……さんざん、あなたにキツくあたっ...
快楽による随喜の涙ではない。
これはただ、愛する男との想いをついに果たした、恋する少...
しかし、彼女が想いを捧げる当の男は、……おれではない。
このマリコルヌ・ド・グランドプレではないのだ。
「ああああっ!! ギーシュッ!! ギーシュゥゥゥッッ!!」
これはセックスではない。
想いの有無さえもはや問題ではない。何しろ彼女は、おれを...
これは自慰――そう、自慰だ。
互いの体を使った自慰にすぎない。
「“寝取り”は最高じゃぞ」
「おぬしが望むものは“愛”じゃろ?」
何が寝取りだ!!
何が愛だ!!
おれが誰を寝取ったと言うんだっ!!
誰がおれを愛したというんだっ!!
いまのモンモランシーにとって、マリコルヌという人間は、...
これ以上の屈辱があるか!!
これ以上の孤独があるか!!
これ以上の業苦があるか!!
「あああ、ギーシュ!! ギーシュ!! あなたの子供を産ま...
やめろ!! やめてくれ!!
なんでだ!? なんで、こんな、非道い目に遭いながら、こ...
――お れ は こ う ふ ん し て い る ん だッッ...
「あああああああああああああああああああああああああああ...
どくんっ、どくんっ、どくんっ、どくんっ! どくんっ! ...
「本当に、あのような事で、あの少年が口をつぐむとお思いで...
ビダーシャルが、オスマンの背中に問う。
が、老人はそんなエルフに刺すような視線を以って、返答を...
「……」
「ワシがあの小僧に、どれだけ残酷なことをしたのか、貴様ら...
「わかりませんな、あなたのおっしゃる事は。……まあ、ともか...
「そのときは……」
オスマンは、苦渋に満ちた目を床に向け、
「ワシの首をネフテスに持って帰るがよい」
そう呟いた。
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