ゼロの使い魔保管庫
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王様GAMEと三角形 〜NextDay〜 ぎふと氏
#br
――水精霊騎士隊全滅ス。
ギーシュがその場を離れていたのは、ほんの小一時間ほど。
軽い用事を済ませて、平和な気分で戻ってきた彼を出迎えた...
(いったい何が……)
眼前に広がる光景のその惨憺たるありさまに、ギーシュは息...
つい先ほどまで、元気いっぱいに声を張り上げながら、日課...
「しっかりしろ!」
手近な一人を抱え起こし、ギーシュは勢いこんで尋ねた。
「誰にやられたんだ! オーガか! 盗賊か! それとも敵国...
「ち、ちがいます、隊長……」
少年は弱々しく否定した。
「内乱です……」
それだけを言い終えると、少年は息をひきとるように、がく...
入れ替わるように、別の場所で人影の立ち上がる気配がする。
ハっとギーシュは顔を上げた。
「よ。隊長さん、待ってたぜ」
視界の向こうで、ゆらり陽炎のように立ち上がったのは漆黒...
「サ、サイト……」
ギーシュは地面に尻をついた。気でもふれたかと思えるほど...
乾いた唇をなめ、ギーシュは声を発した。
「何をしている。サイト、君……、正気なのか?」
すると黒髪の少年、すなわち平賀才人は、杖代わりにしてい...
「ごめんごめん。驚かせるつもりじゃなかったんだけど。今日...
「なるほど。しかしさすがにこれはやり過ぎじゃないか? ……...
「まあ、ちょっと頑張りすぎたかもしれないけどな。……俺だっ...
快活で生意気な、いつもの才人の声に、ギーシュはほっと安...
それにしても……、と驚く。
ガンダールヴの力を発揮せずに、ここにいる全員を打ち負か...
なにしろ、ぶち切れた才人は怖い。かなり怖い。
滅多に見せることはないが、いざとなれば命など二の次と思...
けれども、たかが訓練でここまでする理由が、ギーシュには...
どういうわけだろう?
ふと、さっきの彼の台詞が蘇った。
――今日はヤボ用があってさ。
なるほどその用事とやらは相当に大事な物なのだろう。
いったいそれが何なのか、ギーシュは興味をそそられた。そ...
「そのヤボ用と言うのはなんだね? この後に何かいいことで...
ところが才人は、へへっ、と笑うだけだ。問いには答えずに、
「……ほら、お前がラス1だぜ。かかってこいよ」
すいと木刀を構える。俄然やる気だ。
ギーシュはぼやいた。
「といってもなあ。接近戦では、とうてい君にかなうはずがな...
「いいから魔法使えよ。そんかわり俺が勝ったら訓練は終わり...
「言うじゃないか。よし受けて立とう。いつでもかかって来い...
「んじゃスリーカウント後で、……3、……2、……1、……Go!」
才人の掛け声とともに、ギーシュはすらりと薔薇の杖をかか...
距離は5メイル。
ガンダールヴではない彼相手になら、初撃さえかわせば呪文...
相打ちでもいい。
とにかく土の魔法が発動しさえすれば、勝ったも同然だ。
積年の恨みいま晴らさずや。いざワルキューレを召喚しよう...
「あ、裸のモンモン!」
ギーシュの気が見事にそれた。
次の瞬間、自慢の薔薇の杖は手を離れ、ゆるやかな弧を描い...
打ち据えられた右手がじんじんと痛む。それを別の手でさす...
「酷いじゃないか。不意打ちとはあまりにも卑怯だ。とても貴...
「いやあ、こうでもしなきゃ、魔法相手に勝機はないし。けど...
悪びれもせずに言う才人に、ギーシュはため息をつくしかな...
「仕方がない。僕も貴族のはしくれ、潔く負けを認めようじゃ...
せめて一矢報わんとつけ加える。
「それに、ご婦人を待たせるのは、貴族の風上にも置けないか...
にやり意味深な笑みを浮かべると、才人は照れたように頬を...
そして丁寧に一礼すると、愛用の大剣をつかんで風のように...
杖を拾い、だらしなくのびきった隊員たちを横目に、やれや...
そして深い息を吐いた。まったくあいつはこの僕を……、ギー...
顎に手をやりながら、才人を打ち負かす良い方策がないもの...
+ + +
窓に肘をついて、ルイズは外を眺めていた。
見下ろすアウストリの広場では、ベンチに座ったり、そぞろ...
中には数組のカップルもいた。学園の東側に位置するこの広...
(なによいちゃいちゃしちゃって)
ルイズは眉を潜めながら、いまいましげに呟いた。
学生ならもっとすることがあるだろうに、そして自分はとっ...
柔らかな風が吹き込んで、ルイズの髪をさらり撫でて通り過...
顔にかかったそれをうるさげに払い、イライラと爪を噛んで...
そうだ。散歩がてらヴェストリの広場まで行ってみようか。
毎日のこの時間、ヴェストリの広場の片隅では、水精霊騎士...
夕食まではまだかなり時間もあることだし、他にすることも...
悪くない思いつきだった。けれど万が一にでも誰かに見つか...
どうしようかとイジイジ迷っていると……。
視界を何か黒いものが通り過ぎた。
その何かは黒猫のような素早さで広場を横切ると、あっとい...
弾かれたように立ち上がり、窓から身を乗り出す。探す。
けれどどこに消えたのやら、すでに黒い影は影も形もない。
気のせいかと思った。一瞬だったので自信はない。
でも確かに、ルイズの目にはその姿のように映った。見間違...
そわそわとルイズは部屋を歩き回った。そして自分のしてい...
(こ、こらルイズ。落ち着きなさいってば)
胸を押さえて椅子に座りなおし、すーはーと深呼吸する。
(い、いやだわ。別にどうだっていいじゃない。そ、そうよ、...
うるさく湧き出した思考を吹き飛ばすように、力任せに頭を...
そうやって、そのまま外を眺めているフリをした。
一方で、耳をそばだてて、部屋の扉が音を立てるのを、今か...
けれども……。待てど暮らせど、期待する音は聞こえてこない。
いい加減待ちくたびれて、やっぱり見間違いだったのかしら...
それは究極に面白くない想像だった。
(まさかだけど、他の子の部屋に行ったんじゃないでしょうね...
一度思いついたら、急にそれが真実のように思えてきた。
候補になりそうな顔が次々と浮かび、同時にむくむくと怒り...
(あ、あ、あンの節操なしのスケベ犬〜〜〜!!!)
拳を固めて、ぶち抜く勢いでベッドを殴りつける。
ひどい。ひどいわ。昨日の今日で、いったいどういうわけな...
そう。そうなの。そうなんだ。いい根性してるじゃないのよ...
どうせならありったけの女子部屋を調べつくしてやろう。
そう意気込んで、拳を震わせ、おまけに全身をもぶるぶると...
「よ、よお」
見慣れた姿が手を上げた。それは……。
間違いようもなく自分の使い魔の姿だった。あっけに取られ...
「あ、はは、ただいまー、なんつって……」
「ばっかじゃないの。こんな所で何してるのよ」
手を腰においたポーズで、呆れ声で出迎えた。
よくよく見ればその姿は、今しがた嵐の中を駆け抜けてきた...
まったくわけがわからない。なぜここに突っ立っていたのだ...
自分が癇癪を起こしていたからだろうか、とルイズは思いつ...
しかしそれでは本末転倒だ。才人がちっとも入ってこないせ...
結局、ルイズは悩むのを諦めた。
どうせたいした理由ではないのだろう。少なくとも才人らし...
なにしろこの使い魔ときたら、てんで意気地なしなのだ。最...
そんなだからすぐ他の女の子につけこまれるんだわ、と思い...
「いつまで突っ立ってるのよ。ほら、さっさと入りなさいよね」
怒ったように声をかけると、へーい、と才人は乱暴な足取り...
+ + +
「どうしたのよ。今日はずいぶん早いじゃない」
水薬で傷の手当てをしてやりながら、ルイズは尋ねた。
「いやあ、ちょっとばかしハードにしたらさ。あっというまに...
得意げな才人の口ぶりに、男の子ってどうしてこうも子供み...
「あんたね。わかってるの? 騎士隊の訓練なのよ。遊びや喧...
ぴしゃりと容赦なく腕の傷をやられて、才人の口からうめき...
「なんだよ。それぐらいけちけちすんなよ……。それにほら、訓...
それを聞いたルイズは顔を赤らめた。
そ、そうなんだ。姫さまをお守りするためじゃなくて、ご主...
なんて考えたら、嬉しくなって顔がにやけた。才人も照れた...
ところが当の才人はけろっとしたものだ。自分の腕を眺めな...
「使い魔のくせに生意気! ほら終わったわよ!」
ぱちん! 腹立ちまぎれにもう一度背中を叩いてやった。
「おーさんきゅ」
言いながら、才人は立ち上がると、確かめるように腕をぐる...
そうね。確かにちょっとは努力を認めてあげてもいい。ご主...
それでもって、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、ご褒美...
そんなふうに思って、
「ねえ、ずいぶんと急いでたようだけど。これから何かあるの...
薬箱を片付けながら、何気なく尋ねた。
「え、別に。なんでだよ」
「窓から見てたわよ。あんた、すごい勢いで走ってたじゃない」
にんまり笑う。途端、才人はしまったという顔つきになった。
「あ、あれはそのえっと。そうだあれだよ、デルフの手入れ。...
「この前したばっかりじゃないの」
「そ、そうだっけ?」
「そうよ。4日前だったかしら」
「よく覚えてんなあ……。とにかくデルフの奴がうるさくてさ。...
まったく往生際が悪いったらない。
少し脅かして、後押ししてやらないとダメみたいだ。
ルイズはつんとすまし顔をこしらえると、
「なら私は外を散歩でもしてこようかしら。邪魔しちゃ悪いも...
ぽかんとアホ面を見せる使い魔をしり目に、開きっぱなしの...
「お留守番よろしくね」
と部屋を出て行く素振りをみせる。
そしてふと思いついたように立ち止まり、「あ、そうそう」...
くるり。
両手を後ろに組んで、爪先立ちで器用に一回転。
等幅に折られた紺のプリーツが舞い上がって、綺麗な円を描...
すらり伸びた足の黒いニーソックスの上に、一瞬だけ白い肌...
さらにもっと上までちらり見えて……。
すぐに隠れた。
「いいの? 止めなくて。ひっぱたくなら今のうちよ?」
軽く小首をかしげながら、思わせぶりにそう言うと、すぐさ...
次に才人が口にする言葉を、ルイズははっきりと確信した。
もちろん言わせた後でどうするかは……、それは自分の気分次...
「あ、あのさ。昨日の約束ってまだ有効?」
満足げにその言葉の余韻を受けとめて。さてどうしようかと...
とりあえず。今のご機嫌がどうかといえば、それなりに上等...
それならば……。
焦らずゆっくりと、蠱惑的な笑みを漂わせて、ルイズは口を...
〜FIN〜
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終了行:
王様GAMEと三角形 〜NextDay〜 ぎふと氏
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――水精霊騎士隊全滅ス。
ギーシュがその場を離れていたのは、ほんの小一時間ほど。
軽い用事を済ませて、平和な気分で戻ってきた彼を出迎えた...
(いったい何が……)
眼前に広がる光景のその惨憺たるありさまに、ギーシュは息...
つい先ほどまで、元気いっぱいに声を張り上げながら、日課...
「しっかりしろ!」
手近な一人を抱え起こし、ギーシュは勢いこんで尋ねた。
「誰にやられたんだ! オーガか! 盗賊か! それとも敵国...
「ち、ちがいます、隊長……」
少年は弱々しく否定した。
「内乱です……」
それだけを言い終えると、少年は息をひきとるように、がく...
入れ替わるように、別の場所で人影の立ち上がる気配がする。
ハっとギーシュは顔を上げた。
「よ。隊長さん、待ってたぜ」
視界の向こうで、ゆらり陽炎のように立ち上がったのは漆黒...
「サ、サイト……」
ギーシュは地面に尻をついた。気でもふれたかと思えるほど...
乾いた唇をなめ、ギーシュは声を発した。
「何をしている。サイト、君……、正気なのか?」
すると黒髪の少年、すなわち平賀才人は、杖代わりにしてい...
「ごめんごめん。驚かせるつもりじゃなかったんだけど。今日...
「なるほど。しかしさすがにこれはやり過ぎじゃないか? ……...
「まあ、ちょっと頑張りすぎたかもしれないけどな。……俺だっ...
快活で生意気な、いつもの才人の声に、ギーシュはほっと安...
それにしても……、と驚く。
ガンダールヴの力を発揮せずに、ここにいる全員を打ち負か...
なにしろ、ぶち切れた才人は怖い。かなり怖い。
滅多に見せることはないが、いざとなれば命など二の次と思...
けれども、たかが訓練でここまでする理由が、ギーシュには...
どういうわけだろう?
ふと、さっきの彼の台詞が蘇った。
――今日はヤボ用があってさ。
なるほどその用事とやらは相当に大事な物なのだろう。
いったいそれが何なのか、ギーシュは興味をそそられた。そ...
「そのヤボ用と言うのはなんだね? この後に何かいいことで...
ところが才人は、へへっ、と笑うだけだ。問いには答えずに、
「……ほら、お前がラス1だぜ。かかってこいよ」
すいと木刀を構える。俄然やる気だ。
ギーシュはぼやいた。
「といってもなあ。接近戦では、とうてい君にかなうはずがな...
「いいから魔法使えよ。そんかわり俺が勝ったら訓練は終わり...
「言うじゃないか。よし受けて立とう。いつでもかかって来い...
「んじゃスリーカウント後で、……3、……2、……1、……Go!」
才人の掛け声とともに、ギーシュはすらりと薔薇の杖をかか...
距離は5メイル。
ガンダールヴではない彼相手になら、初撃さえかわせば呪文...
相打ちでもいい。
とにかく土の魔法が発動しさえすれば、勝ったも同然だ。
積年の恨みいま晴らさずや。いざワルキューレを召喚しよう...
「あ、裸のモンモン!」
ギーシュの気が見事にそれた。
次の瞬間、自慢の薔薇の杖は手を離れ、ゆるやかな弧を描い...
打ち据えられた右手がじんじんと痛む。それを別の手でさす...
「酷いじゃないか。不意打ちとはあまりにも卑怯だ。とても貴...
「いやあ、こうでもしなきゃ、魔法相手に勝機はないし。けど...
悪びれもせずに言う才人に、ギーシュはため息をつくしかな...
「仕方がない。僕も貴族のはしくれ、潔く負けを認めようじゃ...
せめて一矢報わんとつけ加える。
「それに、ご婦人を待たせるのは、貴族の風上にも置けないか...
にやり意味深な笑みを浮かべると、才人は照れたように頬を...
そして丁寧に一礼すると、愛用の大剣をつかんで風のように...
杖を拾い、だらしなくのびきった隊員たちを横目に、やれや...
そして深い息を吐いた。まったくあいつはこの僕を……、ギー...
顎に手をやりながら、才人を打ち負かす良い方策がないもの...
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窓に肘をついて、ルイズは外を眺めていた。
見下ろすアウストリの広場では、ベンチに座ったり、そぞろ...
中には数組のカップルもいた。学園の東側に位置するこの広...
(なによいちゃいちゃしちゃって)
ルイズは眉を潜めながら、いまいましげに呟いた。
学生ならもっとすることがあるだろうに、そして自分はとっ...
柔らかな風が吹き込んで、ルイズの髪をさらり撫でて通り過...
顔にかかったそれをうるさげに払い、イライラと爪を噛んで...
そうだ。散歩がてらヴェストリの広場まで行ってみようか。
毎日のこの時間、ヴェストリの広場の片隅では、水精霊騎士...
夕食まではまだかなり時間もあることだし、他にすることも...
悪くない思いつきだった。けれど万が一にでも誰かに見つか...
どうしようかとイジイジ迷っていると……。
視界を何か黒いものが通り過ぎた。
その何かは黒猫のような素早さで広場を横切ると、あっとい...
弾かれたように立ち上がり、窓から身を乗り出す。探す。
けれどどこに消えたのやら、すでに黒い影は影も形もない。
気のせいかと思った。一瞬だったので自信はない。
でも確かに、ルイズの目にはその姿のように映った。見間違...
そわそわとルイズは部屋を歩き回った。そして自分のしてい...
(こ、こらルイズ。落ち着きなさいってば)
胸を押さえて椅子に座りなおし、すーはーと深呼吸する。
(い、いやだわ。別にどうだっていいじゃない。そ、そうよ、...
うるさく湧き出した思考を吹き飛ばすように、力任せに頭を...
そうやって、そのまま外を眺めているフリをした。
一方で、耳をそばだてて、部屋の扉が音を立てるのを、今か...
けれども……。待てど暮らせど、期待する音は聞こえてこない。
いい加減待ちくたびれて、やっぱり見間違いだったのかしら...
それは究極に面白くない想像だった。
(まさかだけど、他の子の部屋に行ったんじゃないでしょうね...
一度思いついたら、急にそれが真実のように思えてきた。
候補になりそうな顔が次々と浮かび、同時にむくむくと怒り...
(あ、あ、あンの節操なしのスケベ犬〜〜〜!!!)
拳を固めて、ぶち抜く勢いでベッドを殴りつける。
ひどい。ひどいわ。昨日の今日で、いったいどういうわけな...
そう。そうなの。そうなんだ。いい根性してるじゃないのよ...
どうせならありったけの女子部屋を調べつくしてやろう。
そう意気込んで、拳を震わせ、おまけに全身をもぶるぶると...
「よ、よお」
見慣れた姿が手を上げた。それは……。
間違いようもなく自分の使い魔の姿だった。あっけに取られ...
「あ、はは、ただいまー、なんつって……」
「ばっかじゃないの。こんな所で何してるのよ」
手を腰においたポーズで、呆れ声で出迎えた。
よくよく見ればその姿は、今しがた嵐の中を駆け抜けてきた...
まったくわけがわからない。なぜここに突っ立っていたのだ...
自分が癇癪を起こしていたからだろうか、とルイズは思いつ...
しかしそれでは本末転倒だ。才人がちっとも入ってこないせ...
結局、ルイズは悩むのを諦めた。
どうせたいした理由ではないのだろう。少なくとも才人らし...
なにしろこの使い魔ときたら、てんで意気地なしなのだ。最...
そんなだからすぐ他の女の子につけこまれるんだわ、と思い...
「いつまで突っ立ってるのよ。ほら、さっさと入りなさいよね」
怒ったように声をかけると、へーい、と才人は乱暴な足取り...
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「どうしたのよ。今日はずいぶん早いじゃない」
水薬で傷の手当てをしてやりながら、ルイズは尋ねた。
「いやあ、ちょっとばかしハードにしたらさ。あっというまに...
得意げな才人の口ぶりに、男の子ってどうしてこうも子供み...
「あんたね。わかってるの? 騎士隊の訓練なのよ。遊びや喧...
ぴしゃりと容赦なく腕の傷をやられて、才人の口からうめき...
「なんだよ。それぐらいけちけちすんなよ……。それにほら、訓...
それを聞いたルイズは顔を赤らめた。
そ、そうなんだ。姫さまをお守りするためじゃなくて、ご主...
なんて考えたら、嬉しくなって顔がにやけた。才人も照れた...
ところが当の才人はけろっとしたものだ。自分の腕を眺めな...
「使い魔のくせに生意気! ほら終わったわよ!」
ぱちん! 腹立ちまぎれにもう一度背中を叩いてやった。
「おーさんきゅ」
言いながら、才人は立ち上がると、確かめるように腕をぐる...
そうね。確かにちょっとは努力を認めてあげてもいい。ご主...
それでもって、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、ご褒美...
そんなふうに思って、
「ねえ、ずいぶんと急いでたようだけど。これから何かあるの...
薬箱を片付けながら、何気なく尋ねた。
「え、別に。なんでだよ」
「窓から見てたわよ。あんた、すごい勢いで走ってたじゃない」
にんまり笑う。途端、才人はしまったという顔つきになった。
「あ、あれはそのえっと。そうだあれだよ、デルフの手入れ。...
「この前したばっかりじゃないの」
「そ、そうだっけ?」
「そうよ。4日前だったかしら」
「よく覚えてんなあ……。とにかくデルフの奴がうるさくてさ。...
まったく往生際が悪いったらない。
少し脅かして、後押ししてやらないとダメみたいだ。
ルイズはつんとすまし顔をこしらえると、
「なら私は外を散歩でもしてこようかしら。邪魔しちゃ悪いも...
ぽかんとアホ面を見せる使い魔をしり目に、開きっぱなしの...
「お留守番よろしくね」
と部屋を出て行く素振りをみせる。
そしてふと思いついたように立ち止まり、「あ、そうそう」...
くるり。
両手を後ろに組んで、爪先立ちで器用に一回転。
等幅に折られた紺のプリーツが舞い上がって、綺麗な円を描...
すらり伸びた足の黒いニーソックスの上に、一瞬だけ白い肌...
さらにもっと上までちらり見えて……。
すぐに隠れた。
「いいの? 止めなくて。ひっぱたくなら今のうちよ?」
軽く小首をかしげながら、思わせぶりにそう言うと、すぐさ...
次に才人が口にする言葉を、ルイズははっきりと確信した。
もちろん言わせた後でどうするかは……、それは自分の気分次...
「あ、あのさ。昨日の約束ってまだ有効?」
満足げにその言葉の余韻を受けとめて。さてどうしようかと...
とりあえず。今のご機嫌がどうかといえば、それなりに上等...
それならば……。
焦らずゆっくりと、蠱惑的な笑みを漂わせて、ルイズは口を...
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