ゼロの使い魔保管庫
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ガリアの玉座の間。
そこに出入りする人間はそう多くない。
現ガリア王ジョゼフにその王の位が移ってからは、その数もめ...
王の狂気が知れ渡ると、進言に訪れる家臣も、取り入ろうとす...
しかし、そんな玉座の間だとて、警護の者にとっては守らねば...
今日も、早朝のチェックをするべく、警護の壮年の騎士が玉座...
王権によってその職に縛られている彼らには、現王に対する忠...
そして、広い玉座の間の奥、一段高く設えられた玉座に、その...
玉座に、人影が掛けていた。
その人影は、ジョゼフ王ではない。
細く華奢で、そしてなにより小さい。
その身体に不釣合いな、大きな杖を持った少女を見た瞬間、騎...
彼はその姿を知っていた。
彼が望むガリアの正統。いや、ガリアが望む、本当の王家の末...
「シャルロットさま…!」
飲み込んだ声の代わりに搾り出されたのは彼女の名前。
シャルロット・エレーヌ・オルレアン。
現王ジョゼフの姪にして、正統なる王の座を追われたとされる...
名を呼ばれた少女は、ゆっくりと立ち上がる。
そして、壮年の騎士は、己が職務を思い出す。
彼の仕事…。そう、現王家にあだなす、全ての敵に立ち向かうこ...
例えそれが、己が敬愛する相手であってもだ。
愚直に過ぎるその性格が、彼を今の地位に縛り付けていたので...
彼は剣を抜き、目の前の少女に切っ先を向ける。
「…その玉座は貴女の座っていい場所ではありませんぞ、シャル...
本心はそうではない。できるなら、彼女にそこへ座っていて欲...
そうは思うが、彼の騎士の矜持がそれを言わせなかった。
そして、剣に対面する少女は、彼を見据えて言い放つ。
「ガリア王ジョゼフ一世は死んだ。私が殺した」
そして。
冷たい眼差しとともに、懐から白く輝く王冠を取り出す。
それは、ガリア王の頭にのみ光り輝くべきもの。神より賜りし...
騎士の見守る前で、タバサ───シャルロットはその王冠を何の遠...
騎士の剣は動かない。現王を殺したと言い切る目の前の狼藉者...
凍りついた騎士めがけ、シャルロットは最後の一言を下す。
「我が名はシャルロット・エレーヌ・オルレアン。
このガリア王国の、正統な王である」
声と同時に、騎士の手にあった剣の切っ先が、真横を向く。
剣の腹に両手を沿え、捧げ持ち、騎士は傅く。
彼の矜持が───王家に仕える騎士の矜持が───彼をそうさせてい...
「おかえりなさいませ。我が王」
そしてこの日。
ガリアの王の名は挿げ替えられ、新たなる王がガリアに誕生し...
その前日に話は遡る。
ガリア王宮グラン・トロワに併設された離宮、プチ・トロワ。
そこは離宮とは名ばかりの、魔道具の実験場であった。
時にはおぞましい生物実験も行われるそこの管理を一手に担っ...
虚無の使い魔ミョズニトニルン───シェフィールドである。
彼女は今日も今日とて、主の欲する他の虚無の力を手に入れる...
今開発しているのは、自己増殖と修復を繰り返す、ほぼ不死の...
しかし修復と増殖を同時にこなすには、何かが足りなかった。
ちなみにこの前に開発していたのは拷問用の触手。見た目は小...
「…少し、休みましょうか」
掛け眼鏡を外し、図面から顔を上げて、シェフィールドは天井...
そして、いつもの自問自答を繰り返す。
…こんなことを続けていて、いいのだろうか。
主の言うままに、魔法具を作り、時にはその魔法具を使い、暗...
しかしそれとて主にとっては戯れに過ぎない。
そして何よりも。
主の願いをどれだけ叶えても、主の気持ちが自分に向くことは...
分かってはいるが、それを思うとシェフィールドの胸はちくん...
「…だって、女の子だもん」
「…そうそう。
…っていつの間に!?」
不意に間近から聞こえた聞き覚えのある声に、シェフィールド...
彼女の背後から突然声をかけてきたのは。
小さな身体に不釣合いな大きな杖を持った、トリステイン魔法...
元北花壇騎士七号、雪風のタバサ。
慌てて戦闘体制を取るシェフィールド。まさか油断していたと...
その原因に、シェフィールドはすぐに気づく。
杖を持ち、目の前に立つ少女からは、一切殺気が感じられない...
一体何を企んでいる…?
しかし自分の能力はあくまで魔法具を使いこなすこと。
人の心が読めるわけではない。
あくまで警戒を解かないシェフィールドに、タバサは手を差し...
「あなたに、いいものをあげる」
その手には、鈍色に光る一対の指輪があった。
…魔法具?一体なにを…?
それがもし呪いのかかったものだったとしたら。
それがもし魔法による爆発物だったとしたら。
その可能性を考えたが、それならば手に取ることをシェフィー...
しかし、タバサの考えていることが分からないこともまた事実。
シェフィールドはしばらく逡巡していたが。
「…何を企んでいるのか知らないけど、私はミョズニトニルン。...
呪いの魔法具程度でどうにかなるとでも?」
タバサの手にあるそれを、指で摘み、手にする。
もし魔法具だったとしたら、彼女に御せないはずがない。
「…呪いの品なんかじゃない。それはあなたへの贈り物」
タバサは言って、優しい笑みをシェフィールドへ向ける。
その視線から感じられるのは───憐憫。
その視線の意味を汲み取れたのは、シェフィールドの額のルー...
「こ、これ、まさか───!」
「そう、そのまさか。それをあなたにあげる。
でも、交換条件がある。聞いて欲しい」
魔法具の詳細を知ったシェフィールドに、タバサの提案を跳ね...
「…ジョゼフ様の命とか言うなら聞けないわよ。
…そ、それ以外だったら大抵大丈夫だけど」
手の中の指輪をいじくりながら、興奮した面持ちでシェフィー...
それほど、彼女にとってその指輪は魅力的なものであった。
そう、これがあれば。
この魔法の指輪があれば、きっと。
「…あんな、女の子の気持ちもわからない唐変木な中年の命なん...
「…唐変木って…。まあ確かにそうだけど。
…じゃあ、何が望みなの?」
「…私とあなたが、幸せになる方法。たったひとつの、冴えたや...
そして、タバサはとつとつと語り始めた。
二人が、『幸せになる方法』を───。
ガリア王ジョゼフが、『急用ができた』とグラン・トロワを後...
ジョゼフがグラン・トロワを後にしたのは、シェフィールドか...
『頼まれたものができあがった』と。
しかし、ジョゼフの今立っている実験用の倉庫の中には、彼の...
何もない倉庫の床に、ミョズニトニルンが傅いている。
「…どこに、そのゴーレムがあるというのだね?」
その声は少し不機嫌に聞こえたが、今のシェフィールドにはそ...
そして主の言葉に即座に応える。
「申し訳ありませんジョゼフ様。
…そのようなものはどこにもありません」
悪びれもせず応えた声には、自信のようなものすら宿っていた。
ジョゼフの頬がぴくん、と跳ねる。
不機嫌を露にするジョゼフのこの表情、前に見たときは陳情に...
「…言っていることの意味が掴みかねるのだが。ミューズよ」
呼び出されたというのに、その用件自体がなかったという。
ならば何故自分はこんなところにいるのか。まるで意味がない...
ジョゼフが怒りを感じるのも無理からぬことであった。
そして、ジョゼフが己が使い魔に近寄ろうとした瞬間。
ごす。
巨大な杖が、ジョゼフの後頭部を思い切りぶったたき、昏倒さ...
「…お目覚めですか?ジョゼフさま」
ジョゼフが目を覚ますと、頑丈な木の椅子に縛り付けられてい...
全裸で。
目の前には、肌が透けるほど薄い紫のベビードールに身を包ん...
「…何のつもりだ?」
不機嫌を露にし、ジョゼフはシェフィールドをねめつける。
そんなジョゼフに、シェフィールドは淡々と応えた。
「まだお分かりになりませんか?ここまでしておいて」
肌も露な男と女。この状況で考えられることは一つ。
「…まさか、お前まで発情した宮廷女のような事を言い出すので...
神の頭脳、ミョズニトニルンよ」
ジョゼフは一応そう言っては見るものの。
「下半身総立ちにしておいてそんな事言っても説得力ありませ...
「…ぐ」
実際シェフィールドはプロポーションもよく、それなりの美女...
健全な中年男性であるジョゼフの雄が、肌も露な美女に反応し...
「まあそんなあなただからこうしようって思ったんですけども。
言っておきますけど、私、虚無の使い魔である以前に、女で...
どこかの冴えないキチガイ親父に使役されるにはそれなりの...
縛られたまま強がるジョゼフを見て、シェフィールドの中でヘ...
頬を朱色に染め上げ、獲物の前で舌なめずりする肉食獣のよう...
「し、知らぬ!いいからこの縄を解けミューズよ!」
あくまで抵抗を続けるジョゼフ。
縛られれば少し素直になると思ったが、結局、シェフィールド...
…でもそれも望むところ。
シェフィールドは、右手の甲をジョゼフの顔の前にかざしてみ...
その中指には、青い宝石をあしらった指輪が。
「…この指輪は、『以心伝心の指輪』といいます」
「…?」
いきなり指輪の説明を始めたシェフィールドに、ジョゼフの顔...
当然である。ジョゼフはそんな指輪のことなど知らないし、知...
シェフィールドは構わず続ける。
「この指輪は二本で一対になっていて、魔法が発動すると嵌め...
そしてこの片割れは、あなたの指に」
「…何!?」
シェフィールドの言うとおり、彼女のしているそれと全く同じ...
そして、シェフィールドの額のルーンが輝き、指輪に光がとも...
「…私の気持ち、受け取ってください」
その言葉と同時に。
ジョゼフの心の中に、感情の奔流が流れ込んでくる。
それは、『好き』の塊だった。
王だから、美丈夫だから、天才だから、そういった事では一切...
『ジョゼフ様だから好き』その想いが、溢れんばかりに伝わっ...
言葉や文字だけでは決して伝えきれない、焦げ付きそうな感情。
それがダイレクトにジョゼフの中に流れ込んできていた。
そして、今こうしていることに対する不安と贖罪、そして何よ...
それらが全て奔流となって、ジョゼフの中に流れ込んでくる。
ジョゼフの心に、熱い何かが点る。
それは弟への渇望を溶かし、目の前の女性に対する情念へと転...
いや、彼とて男である。己に付き従う美女を前に、思慕の情を...
「い、いやちょっとまてミューズ!落ち着け!」
正直言ってかなりまずい状況だった。
普段なら冷静な顔をして受け流せばいいのであるが、魔法の指...
シェフィールドってこんなエロ可愛かったっけ、などと訳の分...
「…や、やだもう何考えてるんですかジョゼフさま…」
その感情が伝わったらしく、身体を捻って真っ赤になって照れ...
その仕草もなんていうか。
…萌え。
「…ばか」
今度は上目遣いで見上げてくる。
いかん待て落ち着け自分!目の前のコレはトチ狂った使い魔で...
いやだから太ももにおっぱい押し付けるんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ
ジョゼフの中で何かが壊れた音がした。
「…わかった、お前の気持ちはよーく分かった」
目が据わっていた。
その据わった目で、ジョゼフはシェフィールドを見つめる。
文字通り、二人の間に言葉はいらなかった。
要するにもう完全に二人の頭の中はエロいことで一杯だったの...
まずシェフィールドがしたことは、目の前でそそり立つジョゼ...
先走りの溢れる先端に軽く開いた唇を押し付け、何度も何度も...
そして軽く口を開くと、かぷかぷと充血した亀頭を甘噛みし、...
ジョゼフの喉から漏れる喘ぎ。そして伝わってくる快感。シェ...
先端が唾液と先走りでどろどろになると、今度は竿に唇を押し...
余った右手で先端をこね回し、左手は陰嚢を揉み解す。
唇に当たるジョゼフの硬さが限界になると、今度は口をあけ、...
頭を前後に揺らし、口内をすぼめて刺激を与える。
やがて、その刺激にジョゼフが限界を迎える。
シェフィールドの口内で、雄が弾けた。
生臭い匂いとともに、シェフィールドにも感じる射精の快感。
喉と膣を同時に震わせ、びくん、びくんと身体が震える。
シェフィールドは、快楽に負けじと口の中に流れ出す精液を愛...
やがて射精の勢いが弱まると、今度は先端に唇を密着させてじ...
薄れていく理性、混じる感覚。心の奥から溢れてくる、体中を...
そして蜜のあふれ出す股間に感じる、たまらない渇望。
それは、魔法の指輪によってジョゼフにも伝わっていた。
シェフィールドは顔を上げる。口許から精液交じりの涎を零し...
ジョゼフは牝を見下ろす。絶頂の余韻に粗く息をつきながら、...
言葉すら交わさず、シェフィールドは椅子の上で縛られたまま...
やがて、そのそそり立つ雄の上に、涎を垂らしながらはくはく...
一瞬の間もなかった。
雄の肉槍が一瞬で牝の肉門を貫き、一番奥の本丸への門を押し...
体中を駆け抜ける快楽に、シェフィールドは我を忘れてジョゼ...
それは今わの際の獣の鳴き声のようであったが、確かにその中...
互いの声と心が融けあい、言葉が意味を成さなくなっていく。
意識の外で勝手に身体が動き、牝は腰を上下に振りたて、雄は...
互いの身体をむさぼり食らう行為が、しばらく続くと。
二人の泣き声が止み、そして、全身が震える。
「ジョゼフさま、ジョゼフさまぁっ…!わ、わたしもうっ…!」
「シェフィールド、で、出る…っ!」
最後にお互いの名前を呼び合い。
一番奥で噛みあった牝と雄は、同時に果てたのだった。
タバサがシェフィールドに『以心伝心の指輪』を与える代わり...
それは。
『一地方貴族となって、ジョゼフとともにそこで死ぬまで幸福...
であった。
地位も領地も、王となったタバサ───シャルロットが準備する、...
それを、シェフィールドは。
何の躊躇もなく快諾したのである。
もちろん、その領地に篭ってからは一切ガリア王家との関係は...
そして、この『以心伝心の指輪』の最大の特徴───それは、伝え...
この性質のおかげで、シェフィールドとタバサの密約がジョゼ...
しかしまた、『以心伝心の指輪』を着けて性交をした二人は、...
「…わかった。そこまで言うのなら、王冠はお前に託そう」
真夜中のグラン・トロワ城門。
そう言ってジョゼフは、目の前に立つ姪に王冠を手渡す。
シェフィールドの気持ちを完全に理解してしまった今、彼にと...
これもタバサの計算のうちである。
…だって、全力で愛されて、幸せにならない人間なんていないも...
タバサは才人との学院での性活を思い出し、そう思っていた。
昔なら目の前にジョゼフがいて、こんな事を口走ったのなら問...
しかし、今は彼の気持ちもよくわかる。
そして、もう一人の気持ちも。
「何してるんですかぁー?早く行きましょうジョゼフさまぁ〜」
いつもの魔女のような格好とは違い、紫の豪奢なドレスに身を...
「わかったシェフィ、今行く」
いつの間にやら愛称まで付けたらしい。ジョゼフはタバサに軽...
タバサはそんな二人の門出を、言葉少なに見守ったのだった。
「ねえジョゼフさま、領地につくまでの間、今までのぶんいっ...
「何を言うか。領地についてからも死ぬまで可愛がってやるか...
「やだもう、このス・キ・モ・ノ♪」
…はいはいワロスワロス。
半分以上呆れながら、タバサは二人に背を向け、王宮へと戻る。
そう、これから始まるのだ。
女王となって、サイトに正式に娶ってもらって、毎晩世継ぎを...
満天の星空の下、そんな夢想に焦がれるシャルロットの唇から...
…ガリアがダメになる日も近いかもしれない。〜fin
終了行:
ガリアの玉座の間。
そこに出入りする人間はそう多くない。
現ガリア王ジョゼフにその王の位が移ってからは、その数もめ...
王の狂気が知れ渡ると、進言に訪れる家臣も、取り入ろうとす...
しかし、そんな玉座の間だとて、警護の者にとっては守らねば...
今日も、早朝のチェックをするべく、警護の壮年の騎士が玉座...
王権によってその職に縛られている彼らには、現王に対する忠...
そして、広い玉座の間の奥、一段高く設えられた玉座に、その...
玉座に、人影が掛けていた。
その人影は、ジョゼフ王ではない。
細く華奢で、そしてなにより小さい。
その身体に不釣合いな、大きな杖を持った少女を見た瞬間、騎...
彼はその姿を知っていた。
彼が望むガリアの正統。いや、ガリアが望む、本当の王家の末...
「シャルロットさま…!」
飲み込んだ声の代わりに搾り出されたのは彼女の名前。
シャルロット・エレーヌ・オルレアン。
現王ジョゼフの姪にして、正統なる王の座を追われたとされる...
名を呼ばれた少女は、ゆっくりと立ち上がる。
そして、壮年の騎士は、己が職務を思い出す。
彼の仕事…。そう、現王家にあだなす、全ての敵に立ち向かうこ...
例えそれが、己が敬愛する相手であってもだ。
愚直に過ぎるその性格が、彼を今の地位に縛り付けていたので...
彼は剣を抜き、目の前の少女に切っ先を向ける。
「…その玉座は貴女の座っていい場所ではありませんぞ、シャル...
本心はそうではない。できるなら、彼女にそこへ座っていて欲...
そうは思うが、彼の騎士の矜持がそれを言わせなかった。
そして、剣に対面する少女は、彼を見据えて言い放つ。
「ガリア王ジョゼフ一世は死んだ。私が殺した」
そして。
冷たい眼差しとともに、懐から白く輝く王冠を取り出す。
それは、ガリア王の頭にのみ光り輝くべきもの。神より賜りし...
騎士の見守る前で、タバサ───シャルロットはその王冠を何の遠...
騎士の剣は動かない。現王を殺したと言い切る目の前の狼藉者...
凍りついた騎士めがけ、シャルロットは最後の一言を下す。
「我が名はシャルロット・エレーヌ・オルレアン。
このガリア王国の、正統な王である」
声と同時に、騎士の手にあった剣の切っ先が、真横を向く。
剣の腹に両手を沿え、捧げ持ち、騎士は傅く。
彼の矜持が───王家に仕える騎士の矜持が───彼をそうさせてい...
「おかえりなさいませ。我が王」
そしてこの日。
ガリアの王の名は挿げ替えられ、新たなる王がガリアに誕生し...
その前日に話は遡る。
ガリア王宮グラン・トロワに併設された離宮、プチ・トロワ。
そこは離宮とは名ばかりの、魔道具の実験場であった。
時にはおぞましい生物実験も行われるそこの管理を一手に担っ...
虚無の使い魔ミョズニトニルン───シェフィールドである。
彼女は今日も今日とて、主の欲する他の虚無の力を手に入れる...
今開発しているのは、自己増殖と修復を繰り返す、ほぼ不死の...
しかし修復と増殖を同時にこなすには、何かが足りなかった。
ちなみにこの前に開発していたのは拷問用の触手。見た目は小...
「…少し、休みましょうか」
掛け眼鏡を外し、図面から顔を上げて、シェフィールドは天井...
そして、いつもの自問自答を繰り返す。
…こんなことを続けていて、いいのだろうか。
主の言うままに、魔法具を作り、時にはその魔法具を使い、暗...
しかしそれとて主にとっては戯れに過ぎない。
そして何よりも。
主の願いをどれだけ叶えても、主の気持ちが自分に向くことは...
分かってはいるが、それを思うとシェフィールドの胸はちくん...
「…だって、女の子だもん」
「…そうそう。
…っていつの間に!?」
不意に間近から聞こえた聞き覚えのある声に、シェフィールド...
彼女の背後から突然声をかけてきたのは。
小さな身体に不釣合いな大きな杖を持った、トリステイン魔法...
元北花壇騎士七号、雪風のタバサ。
慌てて戦闘体制を取るシェフィールド。まさか油断していたと...
その原因に、シェフィールドはすぐに気づく。
杖を持ち、目の前に立つ少女からは、一切殺気が感じられない...
一体何を企んでいる…?
しかし自分の能力はあくまで魔法具を使いこなすこと。
人の心が読めるわけではない。
あくまで警戒を解かないシェフィールドに、タバサは手を差し...
「あなたに、いいものをあげる」
その手には、鈍色に光る一対の指輪があった。
…魔法具?一体なにを…?
それがもし呪いのかかったものだったとしたら。
それがもし魔法による爆発物だったとしたら。
その可能性を考えたが、それならば手に取ることをシェフィー...
しかし、タバサの考えていることが分からないこともまた事実。
シェフィールドはしばらく逡巡していたが。
「…何を企んでいるのか知らないけど、私はミョズニトニルン。...
呪いの魔法具程度でどうにかなるとでも?」
タバサの手にあるそれを、指で摘み、手にする。
もし魔法具だったとしたら、彼女に御せないはずがない。
「…呪いの品なんかじゃない。それはあなたへの贈り物」
タバサは言って、優しい笑みをシェフィールドへ向ける。
その視線から感じられるのは───憐憫。
その視線の意味を汲み取れたのは、シェフィールドの額のルー...
「こ、これ、まさか───!」
「そう、そのまさか。それをあなたにあげる。
でも、交換条件がある。聞いて欲しい」
魔法具の詳細を知ったシェフィールドに、タバサの提案を跳ね...
「…ジョゼフ様の命とか言うなら聞けないわよ。
…そ、それ以外だったら大抵大丈夫だけど」
手の中の指輪をいじくりながら、興奮した面持ちでシェフィー...
それほど、彼女にとってその指輪は魅力的なものであった。
そう、これがあれば。
この魔法の指輪があれば、きっと。
「…あんな、女の子の気持ちもわからない唐変木な中年の命なん...
「…唐変木って…。まあ確かにそうだけど。
…じゃあ、何が望みなの?」
「…私とあなたが、幸せになる方法。たったひとつの、冴えたや...
そして、タバサはとつとつと語り始めた。
二人が、『幸せになる方法』を───。
ガリア王ジョゼフが、『急用ができた』とグラン・トロワを後...
ジョゼフがグラン・トロワを後にしたのは、シェフィールドか...
『頼まれたものができあがった』と。
しかし、ジョゼフの今立っている実験用の倉庫の中には、彼の...
何もない倉庫の床に、ミョズニトニルンが傅いている。
「…どこに、そのゴーレムがあるというのだね?」
その声は少し不機嫌に聞こえたが、今のシェフィールドにはそ...
そして主の言葉に即座に応える。
「申し訳ありませんジョゼフ様。
…そのようなものはどこにもありません」
悪びれもせず応えた声には、自信のようなものすら宿っていた。
ジョゼフの頬がぴくん、と跳ねる。
不機嫌を露にするジョゼフのこの表情、前に見たときは陳情に...
「…言っていることの意味が掴みかねるのだが。ミューズよ」
呼び出されたというのに、その用件自体がなかったという。
ならば何故自分はこんなところにいるのか。まるで意味がない...
ジョゼフが怒りを感じるのも無理からぬことであった。
そして、ジョゼフが己が使い魔に近寄ろうとした瞬間。
ごす。
巨大な杖が、ジョゼフの後頭部を思い切りぶったたき、昏倒さ...
「…お目覚めですか?ジョゼフさま」
ジョゼフが目を覚ますと、頑丈な木の椅子に縛り付けられてい...
全裸で。
目の前には、肌が透けるほど薄い紫のベビードールに身を包ん...
「…何のつもりだ?」
不機嫌を露にし、ジョゼフはシェフィールドをねめつける。
そんなジョゼフに、シェフィールドは淡々と応えた。
「まだお分かりになりませんか?ここまでしておいて」
肌も露な男と女。この状況で考えられることは一つ。
「…まさか、お前まで発情した宮廷女のような事を言い出すので...
神の頭脳、ミョズニトニルンよ」
ジョゼフは一応そう言っては見るものの。
「下半身総立ちにしておいてそんな事言っても説得力ありませ...
「…ぐ」
実際シェフィールドはプロポーションもよく、それなりの美女...
健全な中年男性であるジョゼフの雄が、肌も露な美女に反応し...
「まあそんなあなただからこうしようって思ったんですけども。
言っておきますけど、私、虚無の使い魔である以前に、女で...
どこかの冴えないキチガイ親父に使役されるにはそれなりの...
縛られたまま強がるジョゼフを見て、シェフィールドの中でヘ...
頬を朱色に染め上げ、獲物の前で舌なめずりする肉食獣のよう...
「し、知らぬ!いいからこの縄を解けミューズよ!」
あくまで抵抗を続けるジョゼフ。
縛られれば少し素直になると思ったが、結局、シェフィールド...
…でもそれも望むところ。
シェフィールドは、右手の甲をジョゼフの顔の前にかざしてみ...
その中指には、青い宝石をあしらった指輪が。
「…この指輪は、『以心伝心の指輪』といいます」
「…?」
いきなり指輪の説明を始めたシェフィールドに、ジョゼフの顔...
当然である。ジョゼフはそんな指輪のことなど知らないし、知...
シェフィールドは構わず続ける。
「この指輪は二本で一対になっていて、魔法が発動すると嵌め...
そしてこの片割れは、あなたの指に」
「…何!?」
シェフィールドの言うとおり、彼女のしているそれと全く同じ...
そして、シェフィールドの額のルーンが輝き、指輪に光がとも...
「…私の気持ち、受け取ってください」
その言葉と同時に。
ジョゼフの心の中に、感情の奔流が流れ込んでくる。
それは、『好き』の塊だった。
王だから、美丈夫だから、天才だから、そういった事では一切...
『ジョゼフ様だから好き』その想いが、溢れんばかりに伝わっ...
言葉や文字だけでは決して伝えきれない、焦げ付きそうな感情。
それがダイレクトにジョゼフの中に流れ込んできていた。
そして、今こうしていることに対する不安と贖罪、そして何よ...
それらが全て奔流となって、ジョゼフの中に流れ込んでくる。
ジョゼフの心に、熱い何かが点る。
それは弟への渇望を溶かし、目の前の女性に対する情念へと転...
いや、彼とて男である。己に付き従う美女を前に、思慕の情を...
「い、いやちょっとまてミューズ!落ち着け!」
正直言ってかなりまずい状況だった。
普段なら冷静な顔をして受け流せばいいのであるが、魔法の指...
シェフィールドってこんなエロ可愛かったっけ、などと訳の分...
「…や、やだもう何考えてるんですかジョゼフさま…」
その感情が伝わったらしく、身体を捻って真っ赤になって照れ...
その仕草もなんていうか。
…萌え。
「…ばか」
今度は上目遣いで見上げてくる。
いかん待て落ち着け自分!目の前のコレはトチ狂った使い魔で...
いやだから太ももにおっぱい押し付けるんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ
ジョゼフの中で何かが壊れた音がした。
「…わかった、お前の気持ちはよーく分かった」
目が据わっていた。
その据わった目で、ジョゼフはシェフィールドを見つめる。
文字通り、二人の間に言葉はいらなかった。
要するにもう完全に二人の頭の中はエロいことで一杯だったの...
まずシェフィールドがしたことは、目の前でそそり立つジョゼ...
先走りの溢れる先端に軽く開いた唇を押し付け、何度も何度も...
そして軽く口を開くと、かぷかぷと充血した亀頭を甘噛みし、...
ジョゼフの喉から漏れる喘ぎ。そして伝わってくる快感。シェ...
先端が唾液と先走りでどろどろになると、今度は竿に唇を押し...
余った右手で先端をこね回し、左手は陰嚢を揉み解す。
唇に当たるジョゼフの硬さが限界になると、今度は口をあけ、...
頭を前後に揺らし、口内をすぼめて刺激を与える。
やがて、その刺激にジョゼフが限界を迎える。
シェフィールドの口内で、雄が弾けた。
生臭い匂いとともに、シェフィールドにも感じる射精の快感。
喉と膣を同時に震わせ、びくん、びくんと身体が震える。
シェフィールドは、快楽に負けじと口の中に流れ出す精液を愛...
やがて射精の勢いが弱まると、今度は先端に唇を密着させてじ...
薄れていく理性、混じる感覚。心の奥から溢れてくる、体中を...
そして蜜のあふれ出す股間に感じる、たまらない渇望。
それは、魔法の指輪によってジョゼフにも伝わっていた。
シェフィールドは顔を上げる。口許から精液交じりの涎を零し...
ジョゼフは牝を見下ろす。絶頂の余韻に粗く息をつきながら、...
言葉すら交わさず、シェフィールドは椅子の上で縛られたまま...
やがて、そのそそり立つ雄の上に、涎を垂らしながらはくはく...
一瞬の間もなかった。
雄の肉槍が一瞬で牝の肉門を貫き、一番奥の本丸への門を押し...
体中を駆け抜ける快楽に、シェフィールドは我を忘れてジョゼ...
それは今わの際の獣の鳴き声のようであったが、確かにその中...
互いの声と心が融けあい、言葉が意味を成さなくなっていく。
意識の外で勝手に身体が動き、牝は腰を上下に振りたて、雄は...
互いの身体をむさぼり食らう行為が、しばらく続くと。
二人の泣き声が止み、そして、全身が震える。
「ジョゼフさま、ジョゼフさまぁっ…!わ、わたしもうっ…!」
「シェフィールド、で、出る…っ!」
最後にお互いの名前を呼び合い。
一番奥で噛みあった牝と雄は、同時に果てたのだった。
タバサがシェフィールドに『以心伝心の指輪』を与える代わり...
それは。
『一地方貴族となって、ジョゼフとともにそこで死ぬまで幸福...
であった。
地位も領地も、王となったタバサ───シャルロットが準備する、...
それを、シェフィールドは。
何の躊躇もなく快諾したのである。
もちろん、その領地に篭ってからは一切ガリア王家との関係は...
そして、この『以心伝心の指輪』の最大の特徴───それは、伝え...
この性質のおかげで、シェフィールドとタバサの密約がジョゼ...
しかしまた、『以心伝心の指輪』を着けて性交をした二人は、...
「…わかった。そこまで言うのなら、王冠はお前に託そう」
真夜中のグラン・トロワ城門。
そう言ってジョゼフは、目の前に立つ姪に王冠を手渡す。
シェフィールドの気持ちを完全に理解してしまった今、彼にと...
これもタバサの計算のうちである。
…だって、全力で愛されて、幸せにならない人間なんていないも...
タバサは才人との学院での性活を思い出し、そう思っていた。
昔なら目の前にジョゼフがいて、こんな事を口走ったのなら問...
しかし、今は彼の気持ちもよくわかる。
そして、もう一人の気持ちも。
「何してるんですかぁー?早く行きましょうジョゼフさまぁ〜」
いつもの魔女のような格好とは違い、紫の豪奢なドレスに身を...
「わかったシェフィ、今行く」
いつの間にやら愛称まで付けたらしい。ジョゼフはタバサに軽...
タバサはそんな二人の門出を、言葉少なに見守ったのだった。
「ねえジョゼフさま、領地につくまでの間、今までのぶんいっ...
「何を言うか。領地についてからも死ぬまで可愛がってやるか...
「やだもう、このス・キ・モ・ノ♪」
…はいはいワロスワロス。
半分以上呆れながら、タバサは二人に背を向け、王宮へと戻る。
そう、これから始まるのだ。
女王となって、サイトに正式に娶ってもらって、毎晩世継ぎを...
満天の星空の下、そんな夢想に焦がれるシャルロットの唇から...
…ガリアがダメになる日も近いかもしれない。〜fin
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