ゼロの使い魔保管庫
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14 名前:220 サイト×シエスタ 1/5[sage] 投稿日:2006/10/15...
貴族の相手は大変だ。身の回りの世話や部屋の掃除、帰郷の手...
夕食の準備なんてまるで戦争…
始祖は不平等だ!
そう叫びたい…
まあそれでも働くけどな…
異世界から、何が悲しくてこんなトコに来たのか、平賀才人は...
ある日の夕方の事だ。いつもの様に交差点を曲がれば、自分の...
目の前に別世界への扉が開いているのにも気付かず、その中に...
どうしてそんなモノがあったのかはわからない。が、次に視線...
自分の世界とは違う世界の建物が建っていた。昔、教科書で見...
異世界だと気づくのにそれ程の時間は掛からなかった。
その後は途方に暮れた。言葉は通じるが字は読めず、食事を摂...
路上で恵んでもらおうかとも思ったが元は現代っ子。その勇気...
それから二日位だろうか。空腹で衰弱し、朦朧とする意識の中...
消えゆく意識の中、近くに駆け寄って来た人物が、柔らかな腕...
16 名前:220 2/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/1...
正に命の恩人。その相手とは…
「サイトさん!」
「はいぃっ!」
「忙しいんですから、早くお皿を並べて下さい!」
「ご、ごめんなさい!」
この子。名前をシエスタと言う。
次に目を覚ましたのは翌日の朝だった。ベッドに寝かせられた...
その彼女を起こし、ひとしきり自分の状況を説明すると、あっ...
身の回りの世話や、貴族の世話人としての仕事まで都合してく...
そんな生活に慣れて来た最近、だらけてしまうのも仕方ないと...
「私も自分のお仕事があるんですから、サイトさんも頑張って下...
少しでもサボっている様に捉えると彼女は檄を飛ばす。
「は〜い…」
「貴族の方にそんな返事をすると起こられますよ!」
「はい!」
と、まあ命の恩人として、先輩として彼女には感謝している所...
此処はトリステイン魔法学院。どうやら貴族専門の学校、要す...
無礼があると大変らしいので、シエスタにはよく注意やお小言...
テーブルに皿を並べ終え、また厨房に引き返す。
17 名前:220 3/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/15...
「おう!サイト!又怒られてやがったな!」
フライパンを振りながら、気さくに話し掛けてきたのはマルト...
どうやらメイドや給仕の親分格らしいのだが、その豪快な性格...
「あんまりシエスタを怒らせるなよ!夜の相手もして貰えなくな...
「そ、そんなんじゃないって!」
「「がっはっは!」」
地声が大きいせいで厨房の全てに会話が聞こえてしまい、皆の...
「呼びました?」
タイミング悪くひょこりとシエスタが顔を出す。
「おう、シエスタ!お前とサイトの仲が気になってな!」
「「な、なんて事を言うんだ!(ですか!)」」
「なんだ、やっぱり仲がいいじゃねぇか」
焦ったように二人の声がハモったのを見て、皆は更に笑い出し...
サイトとシエスタは赤面し、次の皿を取り、逃げ出すように厨...
「こ、困ったな…そんなんじゃないのに…」
「え…ええ…」
お互いの顔を見合わせた。
赤い。
「…」
「…」
「は、早く並べちゃいましょう!」
「そ、そうだな!」
駆け出して食堂へ向かう。
既に何人かの生徒はテーブルに着き、談話を始めていた。
18 名前:220 4/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/1...
「あっ!」
焦っていたせいか、サイトは絨毯の歪みにつまづいて、転んで...
皿の上の液体が宙を舞い、一人の貴族の服にかかる。
「きゃっ!」
「あっ!スミマセン!」
「何してるのよ!」
その貴族は虫の居所が悪いらしく、勢いよく席を立ってサイト...
サイトよりかなり背は低いが、プライドの高そうな顔つきと鬼...
「あ、あの…」
「アンタ見ない顔ね!新入り?今まで何をして来たの!」
「そ…その…」
「どーすんのよコレ!」
その迫力で呼吸も出来なくなりそうになった、その時、
「どうも申し訳御座いません!」
サイトの前にメイド服の女性が、割って入って来た。
シエスタだ。
「アンタがコレの教育係?」
「はい…」
「どーすんのこの服?」
「…弁償させて頂きます…」
深々とシエスタは頭を下げたまま、誠実に伝えていく。
「その服もちゃんとお洗濯してお返し致しますので、どうか今日...
チラリとサイトに目をやった。サイトは意を汲んで、その傍ら...
「すいません!もう二度と致しません!」
とシエスタに負けない程深く頭を下げた。
「ふん…」
一応怒りを収め、その貴族は席に着き直した。
19 名前:220 5/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/1...
サイトはその貴族の、桃色のブロンドが流れる後ろ姿にもう一...
「ごめん…」
「いいんですよ。次からは気をつけて下さい」
シエスタは大きな失敗をした時の方が、優しい言葉を掛けてく...
こういう時、もっと彼女を好きになるのをサイトは感じた。ま...
やっと貴族の夕食が終わり、その後に皿洗いを終えると、今度...
今日は二人が配膳当番では無いので、しばし二人きりで支度を...
見れば、シエスタは手に薬瓶の中のクリームを塗っている。
「ソレなに?」
「ええ、手荒れが酷くならないように、手入れをしてるんです」
一種のハンドクリームだな。と、サイトは思い、興味深げにそ...
「せっかくですから、サイトさんにも塗ってあげますよ」
「え、俺はいいよ?」
「ほら、遠慮なさらずに…」
シエスタはサイトの手を取り、そのクリームを手のひらにつけ...
柔らかい手だな…
サイトはその手の感触に心奪われていく。
「俺も塗ってやるよ」
「ええ!?」
「ほら…お返し…」
サイトは手の中に余っているクリームを塗り返した。
その内、指を絡めてしまう様になり、沈黙してしまう。
「…」
「…」
夢中で手を絡めあって、何かしてしまいそうなその時、
「おーい!飯だー!」
と仲間の声がした。
慌てて指を離し、平静を装う。
俺…何してんだろ…
私ったら…いったい…
実は二人はまだ、何なかった。
281 名前:220 1/4 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/...
~>>19
夕食を終えて二人は部屋に戻った。魔法学院はその広い敷地に...
当然、学院生用の部屋と比べれば粗末な部屋ではあるが、きち...
悪くても鏡台やベッド、日の射す窓や適当な机は用意されてい...
ついこの前までは。
「ただいま〜」
「お帰りなさい…って私が言うのも変ですね?」
「いや、いいよ。なんか落ち着くし」
二人揃って部屋の扉を開けた。つまり今、シエスタの部屋には...
勿論、サイト。
拾われて(?)以来、ずっと同じ部屋で暮らしている。当初はサ...
「私が面倒を見るんです!」
と言う、彼女にしては珍しく強い主張により、結果二人は同室...
因みにサイトの看病が行われたのもこの部屋である。
「今日も疲れたぁ〜」
サイトはベッドに腰掛け、そのまま上体を倒した。クスリ、と...
「どうもお疲れ様でした」
棚から実家より取り寄せた茶葉などを取り出し、シエスタはお...
282 名前:220 2/4 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/...
部屋には小さな釜程度は備えつけてあり、その上にシエスタは...
サイトはベッドに横になったまま天井を見つめ、なんとなしに...
「あ、サイトさん?」
「ん?」
「ちょっと向こう向いてて下さいね?」
「ん…ああ」
サイトは寝返りを打ち、シエスタから視線を逸らす。
警戒心が無いっていうか…俺も男なんだけどなぁ…
心の中でそうぼやきながら、衣擦れの音をサイトは背中で聞い...
シエスタはサイトが部屋に居るにも関わらず、平然と服を着替...
一応視線を逸らす様に言っているのだが、信頼しきっているの...
視線を向けても気づかない時もある。時折誘っているのかとも...
ガマンだ…ガマン…
私…いつでもいいんですよ…
シエスタはいつも、そんな事を思いながら服を着替えていた。
283 名前:220 3/4 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/...
メイド服と胸の下着を下ろし寝間着を着る。
頭からすっぽり被る寝間着は母のおさがりのせいか少し大きめ...
「いいですよー」
サイトは体を起こす。
やっぱり可愛いな…
少し大きめの寝間着は、まだあどけない彼女を愛くるしく見せ...
この服では胸は強調されないが、いつも以上に母性が出ている...
シエスタはカチャカチャと陶器の当たる音をさせて、机に二人...
「用意ができたから、座って下さい」
「ああ」
こうして一日の反省をした後、就寝である。
少々サイトは不眠気味だった。それもその筈、この部屋には壁...
二人の性格を考えれば当然、片方だけが床で寝る事など出来な...
ならば…
無防備すぎる…
腕の中に潜り込んで来た存在を、出来るだけ優しく抱き締めて...
一つのベッドに二人が寝ているのだ。
ベッドが足りなかったと言うのは方便だろう。
事実、シエスタの寝顔はサイトが見る限りいつも幸せそうであ...
284 名前:220 4/4 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/...
「サイトさん…」
寝言でいつも、シエスタはその名を呼ぶ。
その度に体をすり寄せて、甘える様にサイトの腕の中で丸くな...
やっぱり…俺が好きなのかな…
これだけ接近されていると、サイトはなかなか寝付けなかった。
握り締めたくなる白い手。
半開きの美しい唇。
年の割には発育の良い胸。
何故かする甘い香り。
聞こえてくる寝息は、サイトの理性を危うくしてしまう。
男である以上、下半身の暴走は止められない。定期的に「処理」...
まだ唇さえ奪っておらず、女性経験の無いサイトだからこそ、...
本能と理性が闘い、その疲れでやっとサイトは眠りに落ちる事...
完全にサイトが眠りに落ちた後、その隣で寝ていた筈のシエス...
横で寝ている彼を切なく見つめて、小さく呟く。
「ごめんなさい…」
暗闇に小さな水音がした。
「いつでもいいのに…」
少し残念そうに言って、寝間着の裾を口にくわえる。
声を出さない様にする為だ。
そのまま寝ているサイトに馬乗りになった。持ち上げられた裾...
332 名前:220 1/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/2...
~>>284
シエスタの、「思い」を募らせていく時間が流れていった。
サイトは肌寒さを感じて、重い瞼を少しだけ開ける。
気づいているのかいないのか、シエスタは隣で上体を起こし、...
その体をもう少し抱いていたい思いをこらえ、扉に向かう彼女...
あ、朝風呂か…
昼夜を共にしているとサイトにも行動は読めてくる。
シエスタは大抵この時間、誰もが寝静まった時間を狙い、サウ...
シャンプーなんか無いはずなのに…何であんないい匂いするんだ...
寝ぼけた頭でサイトは、シエスタの心地よさを思い出していた。
女の子らしいし…可愛いし…いい匂いするし…
シエスタは一度風呂に向かうと、数十分は帰って来ない。
この時、漸くサイトは「処理」に移る事が出来た。
「シエスタ…」
その時、周りに散ってしまう欲望に、サイトは気づいていない。
シエスタが戻って来る頃には、もう起床時間となっている。
起床自体は自由なのだが、仕事に加えて自分達の食事や洗濯、...
結局、早めに起床せざるを得ない。
333 名前:220 2/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/2...
シエスタはサイトが寝ている事を確認し、新たなメイド服に着...
「サイトさーん?起きてくださーい」
「ん…」
「もう朝ですよー?」
「ん…もう?」
「はい。今日はシーツのお洗濯もしなきゃなりませんから、早く...
「はい…はい…」
つらそうに体を起こし、片手で頭の後ろを掻きながら、サイト...
「朝は寒い季節ですから、辛いでしょうけど、お洗濯はしますか...
まだ温もりのあるシーツを素早く畳み込んで、床に置く。
これで二度寝は出来ず、否が応でもサイトは目を覚まさなけれ...
「掃除とお洗濯、どうします?」
「ん?どっちでも…」
サイトは伸びをして、軽く窓に目をやった。朝とは言え、日は...
あんまり洗濯はしたくないな…でも…
シエスタに目を戻す。
シエスタもしたくないだろうし…
そんな気遣いを覚えて、サイトは返事をした。
「俺が洗濯するよ」
「いいんですか?お外はまだ寒いですよ?」
「うん…俺がやるから、シエスタは掃除を頼むよ」
「わかりました」
シエスタは頷いて、部屋の隅から洗濯カゴを取り出した。
334 名前:220 3/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/2...
サイトはそれを抱え、次いでにシーツを放り込んで、扉を開け...
暗闇の廊下はひんやりと冷たかったが、パーカーのおかげで、...
「寒っ…」
サイトは洗濯カゴを抱き込むようにして持ち、足早に廊下を駆...
シエスタはサイトが帰って来た時、冷えている事を予想して、...
暑くなり過ぎないよう、暖炉の火を火箸で調整して薪も最小限...
それから少しの間窓を開け、換気をした。冷たい空気と、まだ...
外には震えながら洗濯場に向かうサイトが見えた。
「寒そう…」
壁に立てかけてある箒を持ち、床を掃いていく。日差しによっ...
その間も気になって時折、窓から洗濯場にいるサイトの姿を覗...
大丈夫かしら…
床を掃き終えた後、小さな金属の籠(バケツ)を取り出し、汲ん...
雑巾をその中に浸すと、冷たさでみるみるうちに手は赤くなる...
「え?これって…」
何枚目かの窓を磨いた時、シエスタが「ソレ」に気づいた。
335 名前:220 4/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/2...
「さみぃ…」
サイトは井戸水のポンプの前で、両手を自分の体に回し、かが...
日差しはまだ明るいだけで、太陽光線はまだ温かみを与えてく...
透き通った空気は、冷たすぎて鼻が痛いほどだ。
備え付けてあるタライに水を溜め、洗濯板と洗剤を取り出し、...
「手が痛ぇ…」
寒さを耐え、木で出来た凹凸に布をこすりつけ、洗った物を片...
次いでにパーカーを洗おうかとも思ったが、
「その服(パーカー)のお洗濯は私がします」
とシエスタが言っていたのを思い出し、やめておく。
勿論、カゴの中にシエスタの下着は入っていない。そういう物...
干場に一通りの洗い物を干す頃、ようやく太陽ははっきりとし...
空っぽになった洗濯カゴを抱え、サイトは部屋に戻った。
「お帰りなさい」
「ただいま…寒かったぁー」
「ふふ、お疲れ様です」
部屋の中はほどほどに温められ、サイトは自分が解凍されてい...
シエスタは何やらお湯を沸かしている。
サイトは椅子に座り、伸びをした。
336 名前:220 5/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/2...
「はい。どーぞ」
サイトの前に、湯気の立つコップが置かれた。
中を覗けば、白く濁った液体が入っている。鼻にかかるのは発...
「…コレなに?」
「ヤマジャケって言います?」
「ヤマジャケ?」
「はい。本当なら風邪を引いたときに飲むお薬みたいなんですけ...
サイトはそのコップをじっと眺め、片手で持って啜ってみた。
「…ふぅ…」
体が溶けるような暖かさと、柔らかな口当たり。
「お米から出来てるそうですよ。サイトさんはお米が嫌いですか...
「いや、俺がいた世界じゃよく食べてた」
「そうなんですか?」
これは…甘酒だ…
サイトは故郷の味を、不意に口の中に入れてしまった。
なんで…シエスタが?
「おじいちゃんが飲ませてくれた?」
「ええ」
「今、おじいちゃんはどうしてる?」
「随分前に…」
「あ…ゴメン」
ふるさとへの思いが沸いてきた。
シエスタは不思議そうにサイトの顔をのぞき込んでいる。
サイトはその視線に気づいた。
あまり帰りたい風に見せちゃいけないかな…
察されない様に、明るい表情で礼を言う。
「ありがとう。温まった」
「よかった…嫌いな味だったらどうしようかと…」
サイトはかぶりを振って、気分を変え、一日をやり遂げる気持...
頬を軽く叩き、シエスタに目をやる。
「じゃあ…今日も頑張るかな…」
「そうですね!」
シエスタの挨拶は気持ちがいい。こうして一日が始まっていく。
586 名前:220 サイト×シエスタ 1/5[sage] 投稿日:2006/11/...
サイト×シエスタの続きです。シエスタ分の不足を感じて。
…慣れない事はしない様にしましょう…
「もう!サイトさんったら!」
狭い部屋の中は慌ただしく動く二人と、シエスタの剣幕のせい...
「えぇと!俺の下着、俺の下着…」
「そっちの引き出しにしまってあります!」
部屋の隅のタンスにサイトは飛びついて、片っ端から衣服を出...
時間は早朝とは言えない程日の登った朝だ。
「よし、後は…」
「後はなんですか?」
「無い!多分!」
「じゃあ早くまとめて…ってきゃああ!」
サイトの取り出した衣服の中には純白と薄い蒼色の、絹地の物...
シエスタは急いで取り上げ、それを自らの鞄の中に押し込んだ。
「これは私のしょうぶ…」
「しょうぶ?」
「い、いいですから早く行きますよ!時間に遅れたく無いんです...
よそ行きの帽子を片手でかぶり直し、白いブラウスの上に茶の...
「あ、ああ」
サイトの方も大きな荷物を片手で持って、急いで靴を履きなお...
ドアを開けシエスタが駆け出すと、サイトが態勢を整えないま...
587 名前:220 サイト×シエスタ 2/5[sage] 投稿日:2006/11/...
「ふぅ…」
「ふぅ…」
「間に合いそうです…」
「そっか…」
帰郷用に、特別に手配された馬車に乗ってサイトとシエスタは...
足元には荷物をおいた。窓からは昼が近付いた事がわかる日差...
整地されてない故の馬車の揺れと蹄の音は、心地よいほどだっ...
その眠気に誘われながら、自分が今何故シエスタの帰省に付き...
「今度のお休み、長いんですね」
「ああ」
日程表を見ているのは、シエスタとマルトー親父だった。並ん...
「そうなんですか?」
「ああ、珍しい話じゃねえんだ。季節毎に少し長い休みが貰える...
「なんで?」
「とりあえず俺たちの仕事が結構大変だって、お上がわかってる...
慣れれば貴族に仕えるなんて割の良いモンだ。休みは貰える、...
余計な話も挟みつつ、さり気なくマルトー親父はサイトに注意...
「貴族」には絶対逆らうな。と。
588 名前:220 サイト×シエスタ 3/5[sage] 投稿日:2006/11/...
さっとサイトに説明をすると今度は、シエスタの方へマルトー...
「どうだ?そこそこ日にちがあるみてえだが?」
「ふぇ?」
いきなり話を振られ、シエスタが間の抜けた返事をした。
「そろそろ帰省の時期じゃないか?」
「あ、そうでした」
「「旦那」も紹介しなきゃならねぇだろう?」
「だ、旦那ぁ!」
やたら大げさな反応をしてしまったのはサイトだった。マルト...
「おっと、誰もお前とは言ってないぞ?サイト」
「サイトさん!誤解されちゃいますよ!」
「あ…ゴメン…」
今度はいきなりシュンとしてしまった。
どちらかと言えばシエスタの「誤解されちゃいますよ!」が効い...
ああ、やっぱり誤解だったんだ…
と。
尋常ではない落ち込み方をしたサイトを見てシエスタは、自分...
「あ、違いますサイトさん…その、サイトさんじゃなくてマルト...
「俺が悪者か」
「だから…サイトさんが嫌いって訳じゃなくて…むしろサイトさん...
「…お前ら」
言葉が耳に入らず、落ち込むサイトと慰めるシエスタ。
そんな二人を見てマルトーは二人用の馬車の手配を心に決めた...
589 名前:220 サイト×シエスタ 4/5[sage] 投稿日:2006/11...
今考えるとマルトーさんのせいだなあ…
ぼんやり、幌を眺めながらサイトは回想していた。
横ではシエスタが何かゴソゴソしている事が解るものの、そち...
「サイトさん?」
「ん…」
「ほら、朝ご飯まだでしたよね?」
横からシエスタが顔を覗かせて来た。
「うん…」
何故か力が入らない。
「ダメですよ?ちゃんと朝ご飯は食べないと」
「う…ん…」
かろうじて返事をしたものの、夢の狭間まで来ていたせいか、...
「もう…あ・さ・ご・は・ん!」
「ふぇ?」
「はやい内に食べてくれないと怒りますからね!それとも食べさ...
勝手に首が落ちた。それを「うん」と取ったのかシエスタが、驚...
「え?」
「…」
「サイトさんったら…仕方ないですね…」
「…」
「じゃあ…朝ご飯です」
その瞬間、一瞬サイトの記憶が消えた。ただし残った、唇の柔...
「今日は…おいしかったですか?」
「うん…」
意識などないはずなのだが、勝手に返事をして、体が動く。
590 名前:220 サイト×シエスタ 5/5[sage] 投稿日:2006/11...
「やだ…もう…」
気がつくとサイトの右手が、シエスタのふくよかな胸を掴んで...
柔らかで、夢にまでみた筈の膨らみ。
「これはゆうごはんですよ?」
手をはねのけるような事はしなかった。幾ら揉んでいても、シ...
「あん…」
「…いい?」
「…いいですけど…ゆうごはんもちゃんと…」
「食べる」
「じゃあ…」
そのまま、シエスタがサイトを引き込む様に、二人は横になっ...
「…サイトさん?」
「…ん?」
「サイトさん?サイトさん?」
馬車の動きは規則正しい。蹄の音がはっきり耳に入った。
「サイトさん?」
「…夢か」
「え?」
キョトンとした顔で、シエスタが袖を引っ張るのを止める。サ...
まだまだそれらしい村は見えていない。
「寝てたんですか?」
「うん…多分…」
ハッとしてサイトは、伸びを止めた。自分の体の異変に気づい...
まずい…
「男」が反応していた。
サイトはその後、体の燃えと格闘するハメになった。
シエスタの唇と、自らの唇が濡れている事に気付かずに。
続く
多分こっちが本当の自分ですorz
終了行:
14 名前:220 サイト×シエスタ 1/5[sage] 投稿日:2006/10/15...
貴族の相手は大変だ。身の回りの世話や部屋の掃除、帰郷の手...
夕食の準備なんてまるで戦争…
始祖は不平等だ!
そう叫びたい…
まあそれでも働くけどな…
異世界から、何が悲しくてこんなトコに来たのか、平賀才人は...
ある日の夕方の事だ。いつもの様に交差点を曲がれば、自分の...
目の前に別世界への扉が開いているのにも気付かず、その中に...
どうしてそんなモノがあったのかはわからない。が、次に視線...
自分の世界とは違う世界の建物が建っていた。昔、教科書で見...
異世界だと気づくのにそれ程の時間は掛からなかった。
その後は途方に暮れた。言葉は通じるが字は読めず、食事を摂...
路上で恵んでもらおうかとも思ったが元は現代っ子。その勇気...
それから二日位だろうか。空腹で衰弱し、朦朧とする意識の中...
消えゆく意識の中、近くに駆け寄って来た人物が、柔らかな腕...
16 名前:220 2/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/1...
正に命の恩人。その相手とは…
「サイトさん!」
「はいぃっ!」
「忙しいんですから、早くお皿を並べて下さい!」
「ご、ごめんなさい!」
この子。名前をシエスタと言う。
次に目を覚ましたのは翌日の朝だった。ベッドに寝かせられた...
その彼女を起こし、ひとしきり自分の状況を説明すると、あっ...
身の回りの世話や、貴族の世話人としての仕事まで都合してく...
そんな生活に慣れて来た最近、だらけてしまうのも仕方ないと...
「私も自分のお仕事があるんですから、サイトさんも頑張って下...
少しでもサボっている様に捉えると彼女は檄を飛ばす。
「は〜い…」
「貴族の方にそんな返事をすると起こられますよ!」
「はい!」
と、まあ命の恩人として、先輩として彼女には感謝している所...
此処はトリステイン魔法学院。どうやら貴族専門の学校、要す...
無礼があると大変らしいので、シエスタにはよく注意やお小言...
テーブルに皿を並べ終え、また厨房に引き返す。
17 名前:220 3/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/15...
「おう!サイト!又怒られてやがったな!」
フライパンを振りながら、気さくに話し掛けてきたのはマルト...
どうやらメイドや給仕の親分格らしいのだが、その豪快な性格...
「あんまりシエスタを怒らせるなよ!夜の相手もして貰えなくな...
「そ、そんなんじゃないって!」
「「がっはっは!」」
地声が大きいせいで厨房の全てに会話が聞こえてしまい、皆の...
「呼びました?」
タイミング悪くひょこりとシエスタが顔を出す。
「おう、シエスタ!お前とサイトの仲が気になってな!」
「「な、なんて事を言うんだ!(ですか!)」」
「なんだ、やっぱり仲がいいじゃねぇか」
焦ったように二人の声がハモったのを見て、皆は更に笑い出し...
サイトとシエスタは赤面し、次の皿を取り、逃げ出すように厨...
「こ、困ったな…そんなんじゃないのに…」
「え…ええ…」
お互いの顔を見合わせた。
赤い。
「…」
「…」
「は、早く並べちゃいましょう!」
「そ、そうだな!」
駆け出して食堂へ向かう。
既に何人かの生徒はテーブルに着き、談話を始めていた。
18 名前:220 4/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/1...
「あっ!」
焦っていたせいか、サイトは絨毯の歪みにつまづいて、転んで...
皿の上の液体が宙を舞い、一人の貴族の服にかかる。
「きゃっ!」
「あっ!スミマセン!」
「何してるのよ!」
その貴族は虫の居所が悪いらしく、勢いよく席を立ってサイト...
サイトよりかなり背は低いが、プライドの高そうな顔つきと鬼...
「あ、あの…」
「アンタ見ない顔ね!新入り?今まで何をして来たの!」
「そ…その…」
「どーすんのよコレ!」
その迫力で呼吸も出来なくなりそうになった、その時、
「どうも申し訳御座いません!」
サイトの前にメイド服の女性が、割って入って来た。
シエスタだ。
「アンタがコレの教育係?」
「はい…」
「どーすんのこの服?」
「…弁償させて頂きます…」
深々とシエスタは頭を下げたまま、誠実に伝えていく。
「その服もちゃんとお洗濯してお返し致しますので、どうか今日...
チラリとサイトに目をやった。サイトは意を汲んで、その傍ら...
「すいません!もう二度と致しません!」
とシエスタに負けない程深く頭を下げた。
「ふん…」
一応怒りを収め、その貴族は席に着き直した。
19 名前:220 5/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/1...
サイトはその貴族の、桃色のブロンドが流れる後ろ姿にもう一...
「ごめん…」
「いいんですよ。次からは気をつけて下さい」
シエスタは大きな失敗をした時の方が、優しい言葉を掛けてく...
こういう時、もっと彼女を好きになるのをサイトは感じた。ま...
やっと貴族の夕食が終わり、その後に皿洗いを終えると、今度...
今日は二人が配膳当番では無いので、しばし二人きりで支度を...
見れば、シエスタは手に薬瓶の中のクリームを塗っている。
「ソレなに?」
「ええ、手荒れが酷くならないように、手入れをしてるんです」
一種のハンドクリームだな。と、サイトは思い、興味深げにそ...
「せっかくですから、サイトさんにも塗ってあげますよ」
「え、俺はいいよ?」
「ほら、遠慮なさらずに…」
シエスタはサイトの手を取り、そのクリームを手のひらにつけ...
柔らかい手だな…
サイトはその手の感触に心奪われていく。
「俺も塗ってやるよ」
「ええ!?」
「ほら…お返し…」
サイトは手の中に余っているクリームを塗り返した。
その内、指を絡めてしまう様になり、沈黙してしまう。
「…」
「…」
夢中で手を絡めあって、何かしてしまいそうなその時、
「おーい!飯だー!」
と仲間の声がした。
慌てて指を離し、平静を装う。
俺…何してんだろ…
私ったら…いったい…
実は二人はまだ、何なかった。
281 名前:220 1/4 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/...
~>>19
夕食を終えて二人は部屋に戻った。魔法学院はその広い敷地に...
当然、学院生用の部屋と比べれば粗末な部屋ではあるが、きち...
悪くても鏡台やベッド、日の射す窓や適当な机は用意されてい...
ついこの前までは。
「ただいま〜」
「お帰りなさい…って私が言うのも変ですね?」
「いや、いいよ。なんか落ち着くし」
二人揃って部屋の扉を開けた。つまり今、シエスタの部屋には...
勿論、サイト。
拾われて(?)以来、ずっと同じ部屋で暮らしている。当初はサ...
「私が面倒を見るんです!」
と言う、彼女にしては珍しく強い主張により、結果二人は同室...
因みにサイトの看病が行われたのもこの部屋である。
「今日も疲れたぁ〜」
サイトはベッドに腰掛け、そのまま上体を倒した。クスリ、と...
「どうもお疲れ様でした」
棚から実家より取り寄せた茶葉などを取り出し、シエスタはお...
282 名前:220 2/4 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/...
部屋には小さな釜程度は備えつけてあり、その上にシエスタは...
サイトはベッドに横になったまま天井を見つめ、なんとなしに...
「あ、サイトさん?」
「ん?」
「ちょっと向こう向いてて下さいね?」
「ん…ああ」
サイトは寝返りを打ち、シエスタから視線を逸らす。
警戒心が無いっていうか…俺も男なんだけどなぁ…
心の中でそうぼやきながら、衣擦れの音をサイトは背中で聞い...
シエスタはサイトが部屋に居るにも関わらず、平然と服を着替...
一応視線を逸らす様に言っているのだが、信頼しきっているの...
視線を向けても気づかない時もある。時折誘っているのかとも...
ガマンだ…ガマン…
私…いつでもいいんですよ…
シエスタはいつも、そんな事を思いながら服を着替えていた。
283 名前:220 3/4 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/...
メイド服と胸の下着を下ろし寝間着を着る。
頭からすっぽり被る寝間着は母のおさがりのせいか少し大きめ...
「いいですよー」
サイトは体を起こす。
やっぱり可愛いな…
少し大きめの寝間着は、まだあどけない彼女を愛くるしく見せ...
この服では胸は強調されないが、いつも以上に母性が出ている...
シエスタはカチャカチャと陶器の当たる音をさせて、机に二人...
「用意ができたから、座って下さい」
「ああ」
こうして一日の反省をした後、就寝である。
少々サイトは不眠気味だった。それもその筈、この部屋には壁...
二人の性格を考えれば当然、片方だけが床で寝る事など出来な...
ならば…
無防備すぎる…
腕の中に潜り込んで来た存在を、出来るだけ優しく抱き締めて...
一つのベッドに二人が寝ているのだ。
ベッドが足りなかったと言うのは方便だろう。
事実、シエスタの寝顔はサイトが見る限りいつも幸せそうであ...
284 名前:220 4/4 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/...
「サイトさん…」
寝言でいつも、シエスタはその名を呼ぶ。
その度に体をすり寄せて、甘える様にサイトの腕の中で丸くな...
やっぱり…俺が好きなのかな…
これだけ接近されていると、サイトはなかなか寝付けなかった。
握り締めたくなる白い手。
半開きの美しい唇。
年の割には発育の良い胸。
何故かする甘い香り。
聞こえてくる寝息は、サイトの理性を危うくしてしまう。
男である以上、下半身の暴走は止められない。定期的に「処理」...
まだ唇さえ奪っておらず、女性経験の無いサイトだからこそ、...
本能と理性が闘い、その疲れでやっとサイトは眠りに落ちる事...
完全にサイトが眠りに落ちた後、その隣で寝ていた筈のシエス...
横で寝ている彼を切なく見つめて、小さく呟く。
「ごめんなさい…」
暗闇に小さな水音がした。
「いつでもいいのに…」
少し残念そうに言って、寝間着の裾を口にくわえる。
声を出さない様にする為だ。
そのまま寝ているサイトに馬乗りになった。持ち上げられた裾...
332 名前:220 1/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/2...
~>>284
シエスタの、「思い」を募らせていく時間が流れていった。
サイトは肌寒さを感じて、重い瞼を少しだけ開ける。
気づいているのかいないのか、シエスタは隣で上体を起こし、...
その体をもう少し抱いていたい思いをこらえ、扉に向かう彼女...
あ、朝風呂か…
昼夜を共にしているとサイトにも行動は読めてくる。
シエスタは大抵この時間、誰もが寝静まった時間を狙い、サウ...
シャンプーなんか無いはずなのに…何であんないい匂いするんだ...
寝ぼけた頭でサイトは、シエスタの心地よさを思い出していた。
女の子らしいし…可愛いし…いい匂いするし…
シエスタは一度風呂に向かうと、数十分は帰って来ない。
この時、漸くサイトは「処理」に移る事が出来た。
「シエスタ…」
その時、周りに散ってしまう欲望に、サイトは気づいていない。
シエスタが戻って来る頃には、もう起床時間となっている。
起床自体は自由なのだが、仕事に加えて自分達の食事や洗濯、...
結局、早めに起床せざるを得ない。
333 名前:220 2/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/2...
シエスタはサイトが寝ている事を確認し、新たなメイド服に着...
「サイトさーん?起きてくださーい」
「ん…」
「もう朝ですよー?」
「ん…もう?」
「はい。今日はシーツのお洗濯もしなきゃなりませんから、早く...
「はい…はい…」
つらそうに体を起こし、片手で頭の後ろを掻きながら、サイト...
「朝は寒い季節ですから、辛いでしょうけど、お洗濯はしますか...
まだ温もりのあるシーツを素早く畳み込んで、床に置く。
これで二度寝は出来ず、否が応でもサイトは目を覚まさなけれ...
「掃除とお洗濯、どうします?」
「ん?どっちでも…」
サイトは伸びをして、軽く窓に目をやった。朝とは言え、日は...
あんまり洗濯はしたくないな…でも…
シエスタに目を戻す。
シエスタもしたくないだろうし…
そんな気遣いを覚えて、サイトは返事をした。
「俺が洗濯するよ」
「いいんですか?お外はまだ寒いですよ?」
「うん…俺がやるから、シエスタは掃除を頼むよ」
「わかりました」
シエスタは頷いて、部屋の隅から洗濯カゴを取り出した。
334 名前:220 3/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/2...
サイトはそれを抱え、次いでにシーツを放り込んで、扉を開け...
暗闇の廊下はひんやりと冷たかったが、パーカーのおかげで、...
「寒っ…」
サイトは洗濯カゴを抱き込むようにして持ち、足早に廊下を駆...
シエスタはサイトが帰って来た時、冷えている事を予想して、...
暑くなり過ぎないよう、暖炉の火を火箸で調整して薪も最小限...
それから少しの間窓を開け、換気をした。冷たい空気と、まだ...
外には震えながら洗濯場に向かうサイトが見えた。
「寒そう…」
壁に立てかけてある箒を持ち、床を掃いていく。日差しによっ...
その間も気になって時折、窓から洗濯場にいるサイトの姿を覗...
大丈夫かしら…
床を掃き終えた後、小さな金属の籠(バケツ)を取り出し、汲ん...
雑巾をその中に浸すと、冷たさでみるみるうちに手は赤くなる...
「え?これって…」
何枚目かの窓を磨いた時、シエスタが「ソレ」に気づいた。
335 名前:220 4/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/2...
「さみぃ…」
サイトは井戸水のポンプの前で、両手を自分の体に回し、かが...
日差しはまだ明るいだけで、太陽光線はまだ温かみを与えてく...
透き通った空気は、冷たすぎて鼻が痛いほどだ。
備え付けてあるタライに水を溜め、洗濯板と洗剤を取り出し、...
「手が痛ぇ…」
寒さを耐え、木で出来た凹凸に布をこすりつけ、洗った物を片...
次いでにパーカーを洗おうかとも思ったが、
「その服(パーカー)のお洗濯は私がします」
とシエスタが言っていたのを思い出し、やめておく。
勿論、カゴの中にシエスタの下着は入っていない。そういう物...
干場に一通りの洗い物を干す頃、ようやく太陽ははっきりとし...
空っぽになった洗濯カゴを抱え、サイトは部屋に戻った。
「お帰りなさい」
「ただいま…寒かったぁー」
「ふふ、お疲れ様です」
部屋の中はほどほどに温められ、サイトは自分が解凍されてい...
シエスタは何やらお湯を沸かしている。
サイトは椅子に座り、伸びをした。
336 名前:220 5/5 サイト×シエスタ[sage] 投稿日:2006/10/2...
「はい。どーぞ」
サイトの前に、湯気の立つコップが置かれた。
中を覗けば、白く濁った液体が入っている。鼻にかかるのは発...
「…コレなに?」
「ヤマジャケって言います?」
「ヤマジャケ?」
「はい。本当なら風邪を引いたときに飲むお薬みたいなんですけ...
サイトはそのコップをじっと眺め、片手で持って啜ってみた。
「…ふぅ…」
体が溶けるような暖かさと、柔らかな口当たり。
「お米から出来てるそうですよ。サイトさんはお米が嫌いですか...
「いや、俺がいた世界じゃよく食べてた」
「そうなんですか?」
これは…甘酒だ…
サイトは故郷の味を、不意に口の中に入れてしまった。
なんで…シエスタが?
「おじいちゃんが飲ませてくれた?」
「ええ」
「今、おじいちゃんはどうしてる?」
「随分前に…」
「あ…ゴメン」
ふるさとへの思いが沸いてきた。
シエスタは不思議そうにサイトの顔をのぞき込んでいる。
サイトはその視線に気づいた。
あまり帰りたい風に見せちゃいけないかな…
察されない様に、明るい表情で礼を言う。
「ありがとう。温まった」
「よかった…嫌いな味だったらどうしようかと…」
サイトはかぶりを振って、気分を変え、一日をやり遂げる気持...
頬を軽く叩き、シエスタに目をやる。
「じゃあ…今日も頑張るかな…」
「そうですね!」
シエスタの挨拶は気持ちがいい。こうして一日が始まっていく。
586 名前:220 サイト×シエスタ 1/5[sage] 投稿日:2006/11/...
サイト×シエスタの続きです。シエスタ分の不足を感じて。
…慣れない事はしない様にしましょう…
「もう!サイトさんったら!」
狭い部屋の中は慌ただしく動く二人と、シエスタの剣幕のせい...
「えぇと!俺の下着、俺の下着…」
「そっちの引き出しにしまってあります!」
部屋の隅のタンスにサイトは飛びついて、片っ端から衣服を出...
時間は早朝とは言えない程日の登った朝だ。
「よし、後は…」
「後はなんですか?」
「無い!多分!」
「じゃあ早くまとめて…ってきゃああ!」
サイトの取り出した衣服の中には純白と薄い蒼色の、絹地の物...
シエスタは急いで取り上げ、それを自らの鞄の中に押し込んだ。
「これは私のしょうぶ…」
「しょうぶ?」
「い、いいですから早く行きますよ!時間に遅れたく無いんです...
よそ行きの帽子を片手でかぶり直し、白いブラウスの上に茶の...
「あ、ああ」
サイトの方も大きな荷物を片手で持って、急いで靴を履きなお...
ドアを開けシエスタが駆け出すと、サイトが態勢を整えないま...
587 名前:220 サイト×シエスタ 2/5[sage] 投稿日:2006/11/...
「ふぅ…」
「ふぅ…」
「間に合いそうです…」
「そっか…」
帰郷用に、特別に手配された馬車に乗ってサイトとシエスタは...
足元には荷物をおいた。窓からは昼が近付いた事がわかる日差...
整地されてない故の馬車の揺れと蹄の音は、心地よいほどだっ...
その眠気に誘われながら、自分が今何故シエスタの帰省に付き...
「今度のお休み、長いんですね」
「ああ」
日程表を見ているのは、シエスタとマルトー親父だった。並ん...
「そうなんですか?」
「ああ、珍しい話じゃねえんだ。季節毎に少し長い休みが貰える...
「なんで?」
「とりあえず俺たちの仕事が結構大変だって、お上がわかってる...
慣れれば貴族に仕えるなんて割の良いモンだ。休みは貰える、...
余計な話も挟みつつ、さり気なくマルトー親父はサイトに注意...
「貴族」には絶対逆らうな。と。
588 名前:220 サイト×シエスタ 3/5[sage] 投稿日:2006/11/...
さっとサイトに説明をすると今度は、シエスタの方へマルトー...
「どうだ?そこそこ日にちがあるみてえだが?」
「ふぇ?」
いきなり話を振られ、シエスタが間の抜けた返事をした。
「そろそろ帰省の時期じゃないか?」
「あ、そうでした」
「「旦那」も紹介しなきゃならねぇだろう?」
「だ、旦那ぁ!」
やたら大げさな反応をしてしまったのはサイトだった。マルト...
「おっと、誰もお前とは言ってないぞ?サイト」
「サイトさん!誤解されちゃいますよ!」
「あ…ゴメン…」
今度はいきなりシュンとしてしまった。
どちらかと言えばシエスタの「誤解されちゃいますよ!」が効い...
ああ、やっぱり誤解だったんだ…
と。
尋常ではない落ち込み方をしたサイトを見てシエスタは、自分...
「あ、違いますサイトさん…その、サイトさんじゃなくてマルト...
「俺が悪者か」
「だから…サイトさんが嫌いって訳じゃなくて…むしろサイトさん...
「…お前ら」
言葉が耳に入らず、落ち込むサイトと慰めるシエスタ。
そんな二人を見てマルトーは二人用の馬車の手配を心に決めた...
589 名前:220 サイト×シエスタ 4/5[sage] 投稿日:2006/11...
今考えるとマルトーさんのせいだなあ…
ぼんやり、幌を眺めながらサイトは回想していた。
横ではシエスタが何かゴソゴソしている事が解るものの、そち...
「サイトさん?」
「ん…」
「ほら、朝ご飯まだでしたよね?」
横からシエスタが顔を覗かせて来た。
「うん…」
何故か力が入らない。
「ダメですよ?ちゃんと朝ご飯は食べないと」
「う…ん…」
かろうじて返事をしたものの、夢の狭間まで来ていたせいか、...
「もう…あ・さ・ご・は・ん!」
「ふぇ?」
「はやい内に食べてくれないと怒りますからね!それとも食べさ...
勝手に首が落ちた。それを「うん」と取ったのかシエスタが、驚...
「え?」
「…」
「サイトさんったら…仕方ないですね…」
「…」
「じゃあ…朝ご飯です」
その瞬間、一瞬サイトの記憶が消えた。ただし残った、唇の柔...
「今日は…おいしかったですか?」
「うん…」
意識などないはずなのだが、勝手に返事をして、体が動く。
590 名前:220 サイト×シエスタ 5/5[sage] 投稿日:2006/11...
「やだ…もう…」
気がつくとサイトの右手が、シエスタのふくよかな胸を掴んで...
柔らかで、夢にまでみた筈の膨らみ。
「これはゆうごはんですよ?」
手をはねのけるような事はしなかった。幾ら揉んでいても、シ...
「あん…」
「…いい?」
「…いいですけど…ゆうごはんもちゃんと…」
「食べる」
「じゃあ…」
そのまま、シエスタがサイトを引き込む様に、二人は横になっ...
「…サイトさん?」
「…ん?」
「サイトさん?サイトさん?」
馬車の動きは規則正しい。蹄の音がはっきり耳に入った。
「サイトさん?」
「…夢か」
「え?」
キョトンとした顔で、シエスタが袖を引っ張るのを止める。サ...
まだまだそれらしい村は見えていない。
「寝てたんですか?」
「うん…多分…」
ハッとしてサイトは、伸びを止めた。自分の体の異変に気づい...
まずい…
「男」が反応していた。
サイトはその後、体の燃えと格闘するハメになった。
シエスタの唇と、自らの唇が濡れている事に気付かずに。
続く
多分こっちが本当の自分ですorz
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