ゼロの使い魔保管庫
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245 名前:遠く六千年の彼女 1/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
あの日以来、何百万と繰り返した夜明け前。
瑠璃色の空にふと目が覚め、デルフリンガーは昔の夢を見てい...
ブリミルとその使い魔たちと過ごした、あの日々……。
「なぁブリミルよぅ、あいつ、あの剣士の嬢ちゃんな。ありゃ...
長い旅をともにしたブリミルに対し、呟く。
山の中で倒れていた彼と出会って数年。
故郷を探す旅に出ることになったので、自分が護衛として旅の...
といってもブリミル自身は『異世界』から来たと言い張っては...
その異世界とやらにはエルフも妖魔の類もいないらしい。俺に...
体力にも技にもそれなりに自信があったし、何より世界を見て...
別れを憂う家族はとっくにいなくなっていたし、村に名残を惜...
幼馴染の、後にガンダールヴと呼ばれることになるあの娘が追...
まぁでも、彼女は自分を追いかけてきたわけじゃあなかった。
「しかしだな、私は帰るべき場所を探しさすらう身、どうしろ...
「好きにするがいいさ」俺は答える。
246 名前:遠く六千年の彼女 2/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
村を出たときはまだ細くて頼りない少女だったあいつは、少な...
もう立派な女になっていた。俺たちが旅立ってからは剣の修行...
女ってのは二年やそこらでも十分変わるものなんだねえ。しか...
「そうは言ってもな……」
「俺には難しいこたぁわかんね。だがな、お前さんが異世界と...
あいつを連れて行ったっていいし、子を残してったっていい...
「だがな……」
「あいつだってバカじゃない。頭ン中ではちゃんと考えてるさ。
いや、たとえ今は考えてなくても、そのときが来たら考えら...
「ふぅむ……」
そう言うとブリミルはまた考え込んでしまった。ったく、どう...
まあでも実際、こいつが最初に村に来たときは驚いた。
珍しい真っ黒な髪で、やせっぽちで筋肉もろくに付いてねぇ、
おまけに目が悪いときてりゃ、まぁよくも今まで生きてこれた...
よくわからん知識があって、不作続きだった村の畑を一年で様...
そのあと、なんやかんやでエルフやら幻獣やらの魔法とは少し...
あの不思議な力が使えるようになって、忘れていた記憶も取り...
人間にも魔法みたいなんが使えるってことには正直驚いたが、
ブリミルは普通じゃねーし、まぁそういうこともあるのかも、...
247 名前:遠く六千年の彼女 3/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
そんなこんなで旅は続く。
お供もいつの間にか増えていた。俺と、あいつと、他に二人の...
竜の眷属に育てられた嬢ちゃんと、青い髪した学者気取りの嬢...
あいつは剣が使えたからまだよかったが、魔法を使いすぎると...
女二人を抱えていては旅もつらいというもの。食料の調達にも...
幻獣や妖魔、凶暴な動物たちにエルフ。危険はいっぱいだった。
ある時、いかつい神殿みたいな遺跡に着いた。
ブリミルは何かを直観していたようだったが、俺にはよくわか...
しばらくこの遺跡を探索しようと言い出したときも、まあ酔狂...
どうも調べてみると、そこはエルフの使っていた遺跡のようだ。
いくつものレリーフがあった。
「なあ、これ、どう思う?」とブリミル。
「あん? 文字か? 俺には読めんぞ?」
「そうか、文字に見えるか……」
ブリミルは何か考えている風だった。そう、文字に関してこい...
俺なんかは字が読めなくても話ができりゃそれでいいじゃねえ...
ブリミルはそれは違うといった。んで、あの難しい話だ。情報...
「あでも、こりゃエルフの文字じゃねえな。連中の文字はもっ...
「そうだな……ふむ……」
この時、ブリミルはこの世界の根幹にかかわる真実とやらを発...
で、まあ平たく言えばその遺跡は何やら魔法の仕掛けが施して...
その仕掛けとやらは、また後になってから動いたわけだ。
248 名前:遠く六千年の彼女 4/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
「おい、起きてくれ。はやく」
「んぁ? どうした? 朝っぱらからそんなに慌てて」
「いいから来てくれ」
「ふあぁ〜。いま行く」
その日も交代制で入り口の番をしていた。夜の間の担当は俺で...
役目は終わり。面倒なのでそのままうとうとしていたが、それ...
遺跡の一番奥、三人の娘が寝所にしているそこで、俺は異様な...
娘たちが宙に浮き、それぞれ左手、右手、そして額に不思議な...
「おいブリミル、何があったんだ?」
「分からない。様子を見にきたらこうなっていた。だがあれを...
そう言ってブリミルはさらに奥を指差した。
「あそこは壁だったはずだ。扉があるようにも見えたが開ける...
模様だろうということにしておいたよな。だが開いた。行っ...
「おいおい、これを放っておくわけにゃいかねぇだろ」
「大丈夫、だと思う。近づくことすらできん」
それは事実だった。大体腕一本分くらいの距離から先にまった...
どうもブリミルはすでにいろいろと調べていたらしい。
あんな提案をするくらいだから、要するに何もわからなかった...
「なら、行ってみるか」
249 名前:遠く六千年の彼女 5/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
中に入るとしばらく長い通路が続いていた。よくもまあこんな...
通路の途中で、一本の剣を見つけた。長剣と大剣の中間ぐらい...
柄の長さと持った感じからは片手で持つもののように思われる...
「お、こりゃ軽い。エルフか何かの魔法がかかってるんじゃな...
「そのようだな。ふむ、こいつは魔法が吸収できるようだ。ほ...
そう言うとブリミルはなんだか簡単な魔法を使った。いまこの...
魔法が剣に触れると刀身が光りだし、しばらくして消えた。確...
「へぇ、こいつぁいいや。しかし、なんでこんなとこに?」
「分からない。この場所を護る守護者みたいなものじゃないか...
「かもな。しかし、にしちゃ使い手がいねぇな」
「ま、奥まで行ってみれば分かるだろうさ」
「持ってってもいいかねぇ?」
たぶん、とブリミルは答えた。
その時ふと何を思ったか丸い氷の玉を魔法で作り出し、床にお...
しばらく転がって、止まる。
「傾いてはいないようだな」
それで何が分かるんかねえ、とは思ったが口に出さないでおい...
ようやく通路の先が見えてきたころだ。後ろに妙な気配を感じ...
250 名前:遠く六千年の彼女 6/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
俺は手に入れたばかりの剣を左手に、右手に愛用の槍を構えた。
ブリミルも交渉はできないと悟ったのか、魔法の準備を始めて...
「我が名はブリミル。危害を加えようというのなら、それなり...
ここを去るか、もしくは、知っていることを話しなさい」
彼はエルフ語でそう言った、らしい。俺たちとエルフとは使う...
俺たち人間の言葉が通じる奴がいれば、そういう時は戦闘にな...
どこぞの古文書で身につけた昔のエルフ語だったが、はてさて...
連中の間に動揺が広がる。やはり何かを知ってはいるようだ。
「……ん?」
ブリミルが不審そうな顔をする。よく見てみるとエルフどもは...
「どういうことだ……?」
その時、現状に耐えられなくなったのか、一人のエルフが魔法...
火球が俺に向かって飛んでくる。
「ちぃっ」
俺はさっきブリミルが示したように左手の剣でその火にを受け...
幸運なことに、しっかりと魔法は吸収され、何も起こらない。
「おおっ」俺自身驚いたが、エルフの方からもどよめきが聞こ...
しかし残念なことに、それがきっかけとなって、戦いは始まっ...
相手は十数人、こちらは二人。この剣とブリミルの魔法がある...
俺はブリミルの盾になりながら攻撃を防ぎ、その間に魔法を詠...
いつものやり方だった。
俺たちの戦法は何とか通用するらしく半分くらいをしとめたが...
エルフどもは何を思ったのか慌てて出て行き、代わりに大物っ...
どういうつもりかは知らないが、まず下っ端を使おうっていう...
「……△*◇@&#J%¥……」
俺には理解できないエルフ語でそいつは呟くと、右手に光るナ...
「……?+#@д@√=!!」
奴が何かを叫んだことに警戒することもできないまま、そのナ...
どうも魔法を使ってこちらに放ったようだ。突然のことで驚い...
俺は奴に向かってなんとか槍を投げつけた。
俺が最後に見たのは血を吐くそいつの満足そうな顔だったさ。...
251 名前:遠く六千年の彼女 7/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
「とりあえず、君の意識だけをここに現出させている。もっと...
仮に戻したとしてもしばらくしたら今度はそっちが使えなく...
そうなるといずれ依り代を失って、君の意識も消えるだろう。
君を刺した奴はあのまま死んだよ。結局、その後には何も来...
「そうか。で、俺はどうすればいい?」
「どう、って自分で決めればいいじゃないか。このまま消えて...
「それ以外に何かあるのか?」
ブリミルは黙って例の剣を差し出した。柄を俺に見せる。
「なんか変テコな模様だな。これが何か?」
「人間ひとり分の意思なら半永久的に宿らせられる容量がある...
なんつーか、こいつにあるまじき単刀直入さだな、おい。
「……決まってんじゃねーじゃか。たのむぜ、相棒」
目が覚めた時、俺は剣になっていた。
まあそれでもまだよく馴染んでないらしく、俺の意識は刀身か...
だいたい満足のいく出来だろう。腕や足がなくても不便を感じ...
しばらくすると、元は俺の身体だったあれを埋葬して四人が戻...
あいつは俺と俺の槍を抱えてグスングスンと鼻をすすっている。
いい加減に泣くのやめろよ……ったく。俺たちの出発の日だって...
252 名前:遠く六千年の彼女 8/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
「我々がここに来ることはどうやら予言されていたことらしい...
嫌な表現になるが……運命のようなものかもしれないね」
「俺が死ぬのも、こうして剣になるのも、か?」
「それは分からない。あの奥も調べたけど、結局はまだわから...
ただ、今朝の彼女たちの様子や、あの光っていた模様、いや...
あの模様は身体に刻まれたルーンで、それぞれブリミルを助け...
難しい話をしながらそんなようなことを訥々と説明してくれた。
「そうそう、君には彼女の左手にあるあのルーンを経由して、...
与えることができる。まぁ動きが鈍いときにでも、少し手助...
「至れり尽くせり、ってことか」
あの剣にそんなことができるんだったら、俺の意識が乗ってる...
けどなんで空っぽのまんま、ほっぽってあったんだろうかねぇ…...
「しかし、本当にこれで良かったのか?」
「いいさ。俺が死んだ時、あいつは泣いてくれた。あいつの力...
それに、お前さんの旅を最後まで見届けたいんだ。
はてさて、あの三人の嬢ちゃんたちとどうやって付き合って...
ブリミルはニコリともしねぇ。冗談ぐらい分かるだろうによ。
253 名前:遠く六千年の彼女 9/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
―神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。
左に握った大剣と、右に?んだ長槍で、導きし我を守りきる。
俺はデルフリンガー。名前は、もうない。
あのとき俺は命を落とした。
そして始祖ブリミルの手によって、この剣に新たな住処を得た。
先住魔法の仕組みの上に、虚無の魔法で乗っけてあるってこと...
だから、虚無の魔法だけはカンベンなわけ。俺の存在自体が揺...
そこで寝てるぺたんこの嬢ちゃんはある意味、天敵なわけよ。
あれから、ブリミルには一人弟子ができ、三人の娘たちには子...
その子供たちは人々をまとめる王家の人間となり、現在の三国...
弟子になった奴は『始祖の教え』とかいうのを体系化した。
子供たちと『ブリミルの洗礼』を受けた連中は魔法が使えるよ...
まあ、どっちにしても杖なしじゃ何にもできねえんだけどな。
四大系統はブリミルの残した力を使って先住魔法と同じもんに...
力を杖に預けておいて、必要なときに魔法の媒介として使うも...
次第に杖を持ったメイジが増えていくのを俺は見てきた。
そう、いまいるメイジはすべて、少しはブリミルの血を引く子...
ま、王家ほどその血が濃いって言うけど、実際どうなんだか。
ブリミル本人? あぁ、あいつは……どうしたんだったっけなぁ…...
254 名前:遠く六千年の彼女 10/10[sage] 投稿日:2006/11/1...
「……ちょっとボロ剣、アンタ何ぼそぼそ独りごと言ってんのよ...
おっ? 嬢ちゃんが目を覚ましたらしい。どうやらうるさくし...
んじゃ、俺の話はもうおしまいってことで。あんたもそろそろ...
「……で、誰と話してたの?」
「さあ、誰だかね」
「ていうか誰かいたらオカシイでしょ。わたしとサイトとメイ...
「まあ、お前さんは知らなくてもいいさ。ただ、なんてのかね...
俺やお前さんたちの生活っつうか、冒険を遠くから見てるや...
「そうなの? 覗き見なんて趣味悪いわね」
「ちょっと違うな。いうなれば、そう、神サマと精霊を足した...
「ふぅん……」
「ま、気にしなさんな。世界ってのはそういう風にできてるモ...
ほら、まだ早ぇえんだ。もいっぺん寝たってバチはあたらね...
「そう、わかったわ」そう言ってルイズはまた横になった。
さて、もうお別れだな。あんたに話せてよかったと思うぜ?
また暇なときにでも、こっちのことを思い出してくれよな。
ああ、さよならは言わねぇぜ? あんたの時間と俺らの時間は...
こっちで一日経っても、あんたにとっちゃ十分程度のことだっ...
それじゃ、また。
あの日から六千年。お前さんの旅は、まだ……終わっちゃいねぇ...
終了行:
245 名前:遠く六千年の彼女 1/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
あの日以来、何百万と繰り返した夜明け前。
瑠璃色の空にふと目が覚め、デルフリンガーは昔の夢を見てい...
ブリミルとその使い魔たちと過ごした、あの日々……。
「なぁブリミルよぅ、あいつ、あの剣士の嬢ちゃんな。ありゃ...
長い旅をともにしたブリミルに対し、呟く。
山の中で倒れていた彼と出会って数年。
故郷を探す旅に出ることになったので、自分が護衛として旅の...
といってもブリミル自身は『異世界』から来たと言い張っては...
その異世界とやらにはエルフも妖魔の類もいないらしい。俺に...
体力にも技にもそれなりに自信があったし、何より世界を見て...
別れを憂う家族はとっくにいなくなっていたし、村に名残を惜...
幼馴染の、後にガンダールヴと呼ばれることになるあの娘が追...
まぁでも、彼女は自分を追いかけてきたわけじゃあなかった。
「しかしだな、私は帰るべき場所を探しさすらう身、どうしろ...
「好きにするがいいさ」俺は答える。
246 名前:遠く六千年の彼女 2/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
村を出たときはまだ細くて頼りない少女だったあいつは、少な...
もう立派な女になっていた。俺たちが旅立ってからは剣の修行...
女ってのは二年やそこらでも十分変わるものなんだねえ。しか...
「そうは言ってもな……」
「俺には難しいこたぁわかんね。だがな、お前さんが異世界と...
あいつを連れて行ったっていいし、子を残してったっていい...
「だがな……」
「あいつだってバカじゃない。頭ン中ではちゃんと考えてるさ。
いや、たとえ今は考えてなくても、そのときが来たら考えら...
「ふぅむ……」
そう言うとブリミルはまた考え込んでしまった。ったく、どう...
まあでも実際、こいつが最初に村に来たときは驚いた。
珍しい真っ黒な髪で、やせっぽちで筋肉もろくに付いてねぇ、
おまけに目が悪いときてりゃ、まぁよくも今まで生きてこれた...
よくわからん知識があって、不作続きだった村の畑を一年で様...
そのあと、なんやかんやでエルフやら幻獣やらの魔法とは少し...
あの不思議な力が使えるようになって、忘れていた記憶も取り...
人間にも魔法みたいなんが使えるってことには正直驚いたが、
ブリミルは普通じゃねーし、まぁそういうこともあるのかも、...
247 名前:遠く六千年の彼女 3/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
そんなこんなで旅は続く。
お供もいつの間にか増えていた。俺と、あいつと、他に二人の...
竜の眷属に育てられた嬢ちゃんと、青い髪した学者気取りの嬢...
あいつは剣が使えたからまだよかったが、魔法を使いすぎると...
女二人を抱えていては旅もつらいというもの。食料の調達にも...
幻獣や妖魔、凶暴な動物たちにエルフ。危険はいっぱいだった。
ある時、いかつい神殿みたいな遺跡に着いた。
ブリミルは何かを直観していたようだったが、俺にはよくわか...
しばらくこの遺跡を探索しようと言い出したときも、まあ酔狂...
どうも調べてみると、そこはエルフの使っていた遺跡のようだ。
いくつものレリーフがあった。
「なあ、これ、どう思う?」とブリミル。
「あん? 文字か? 俺には読めんぞ?」
「そうか、文字に見えるか……」
ブリミルは何か考えている風だった。そう、文字に関してこい...
俺なんかは字が読めなくても話ができりゃそれでいいじゃねえ...
ブリミルはそれは違うといった。んで、あの難しい話だ。情報...
「あでも、こりゃエルフの文字じゃねえな。連中の文字はもっ...
「そうだな……ふむ……」
この時、ブリミルはこの世界の根幹にかかわる真実とやらを発...
で、まあ平たく言えばその遺跡は何やら魔法の仕掛けが施して...
その仕掛けとやらは、また後になってから動いたわけだ。
248 名前:遠く六千年の彼女 4/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
「おい、起きてくれ。はやく」
「んぁ? どうした? 朝っぱらからそんなに慌てて」
「いいから来てくれ」
「ふあぁ〜。いま行く」
その日も交代制で入り口の番をしていた。夜の間の担当は俺で...
役目は終わり。面倒なのでそのままうとうとしていたが、それ...
遺跡の一番奥、三人の娘が寝所にしているそこで、俺は異様な...
娘たちが宙に浮き、それぞれ左手、右手、そして額に不思議な...
「おいブリミル、何があったんだ?」
「分からない。様子を見にきたらこうなっていた。だがあれを...
そう言ってブリミルはさらに奥を指差した。
「あそこは壁だったはずだ。扉があるようにも見えたが開ける...
模様だろうということにしておいたよな。だが開いた。行っ...
「おいおい、これを放っておくわけにゃいかねぇだろ」
「大丈夫、だと思う。近づくことすらできん」
それは事実だった。大体腕一本分くらいの距離から先にまった...
どうもブリミルはすでにいろいろと調べていたらしい。
あんな提案をするくらいだから、要するに何もわからなかった...
「なら、行ってみるか」
249 名前:遠く六千年の彼女 5/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
中に入るとしばらく長い通路が続いていた。よくもまあこんな...
通路の途中で、一本の剣を見つけた。長剣と大剣の中間ぐらい...
柄の長さと持った感じからは片手で持つもののように思われる...
「お、こりゃ軽い。エルフか何かの魔法がかかってるんじゃな...
「そのようだな。ふむ、こいつは魔法が吸収できるようだ。ほ...
そう言うとブリミルはなんだか簡単な魔法を使った。いまこの...
魔法が剣に触れると刀身が光りだし、しばらくして消えた。確...
「へぇ、こいつぁいいや。しかし、なんでこんなとこに?」
「分からない。この場所を護る守護者みたいなものじゃないか...
「かもな。しかし、にしちゃ使い手がいねぇな」
「ま、奥まで行ってみれば分かるだろうさ」
「持ってってもいいかねぇ?」
たぶん、とブリミルは答えた。
その時ふと何を思ったか丸い氷の玉を魔法で作り出し、床にお...
しばらく転がって、止まる。
「傾いてはいないようだな」
それで何が分かるんかねえ、とは思ったが口に出さないでおい...
ようやく通路の先が見えてきたころだ。後ろに妙な気配を感じ...
250 名前:遠く六千年の彼女 6/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
俺は手に入れたばかりの剣を左手に、右手に愛用の槍を構えた。
ブリミルも交渉はできないと悟ったのか、魔法の準備を始めて...
「我が名はブリミル。危害を加えようというのなら、それなり...
ここを去るか、もしくは、知っていることを話しなさい」
彼はエルフ語でそう言った、らしい。俺たちとエルフとは使う...
俺たち人間の言葉が通じる奴がいれば、そういう時は戦闘にな...
どこぞの古文書で身につけた昔のエルフ語だったが、はてさて...
連中の間に動揺が広がる。やはり何かを知ってはいるようだ。
「……ん?」
ブリミルが不審そうな顔をする。よく見てみるとエルフどもは...
「どういうことだ……?」
その時、現状に耐えられなくなったのか、一人のエルフが魔法...
火球が俺に向かって飛んでくる。
「ちぃっ」
俺はさっきブリミルが示したように左手の剣でその火にを受け...
幸運なことに、しっかりと魔法は吸収され、何も起こらない。
「おおっ」俺自身驚いたが、エルフの方からもどよめきが聞こ...
しかし残念なことに、それがきっかけとなって、戦いは始まっ...
相手は十数人、こちらは二人。この剣とブリミルの魔法がある...
俺はブリミルの盾になりながら攻撃を防ぎ、その間に魔法を詠...
いつものやり方だった。
俺たちの戦法は何とか通用するらしく半分くらいをしとめたが...
エルフどもは何を思ったのか慌てて出て行き、代わりに大物っ...
どういうつもりかは知らないが、まず下っ端を使おうっていう...
「……△*◇@&#J%¥……」
俺には理解できないエルフ語でそいつは呟くと、右手に光るナ...
「……?+#@д@√=!!」
奴が何かを叫んだことに警戒することもできないまま、そのナ...
どうも魔法を使ってこちらに放ったようだ。突然のことで驚い...
俺は奴に向かってなんとか槍を投げつけた。
俺が最後に見たのは血を吐くそいつの満足そうな顔だったさ。...
251 名前:遠く六千年の彼女 7/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
「とりあえず、君の意識だけをここに現出させている。もっと...
仮に戻したとしてもしばらくしたら今度はそっちが使えなく...
そうなるといずれ依り代を失って、君の意識も消えるだろう。
君を刺した奴はあのまま死んだよ。結局、その後には何も来...
「そうか。で、俺はどうすればいい?」
「どう、って自分で決めればいいじゃないか。このまま消えて...
「それ以外に何かあるのか?」
ブリミルは黙って例の剣を差し出した。柄を俺に見せる。
「なんか変テコな模様だな。これが何か?」
「人間ひとり分の意思なら半永久的に宿らせられる容量がある...
なんつーか、こいつにあるまじき単刀直入さだな、おい。
「……決まってんじゃねーじゃか。たのむぜ、相棒」
目が覚めた時、俺は剣になっていた。
まあそれでもまだよく馴染んでないらしく、俺の意識は刀身か...
だいたい満足のいく出来だろう。腕や足がなくても不便を感じ...
しばらくすると、元は俺の身体だったあれを埋葬して四人が戻...
あいつは俺と俺の槍を抱えてグスングスンと鼻をすすっている。
いい加減に泣くのやめろよ……ったく。俺たちの出発の日だって...
252 名前:遠く六千年の彼女 8/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
「我々がここに来ることはどうやら予言されていたことらしい...
嫌な表現になるが……運命のようなものかもしれないね」
「俺が死ぬのも、こうして剣になるのも、か?」
「それは分からない。あの奥も調べたけど、結局はまだわから...
ただ、今朝の彼女たちの様子や、あの光っていた模様、いや...
あの模様は身体に刻まれたルーンで、それぞれブリミルを助け...
難しい話をしながらそんなようなことを訥々と説明してくれた。
「そうそう、君には彼女の左手にあるあのルーンを経由して、...
与えることができる。まぁ動きが鈍いときにでも、少し手助...
「至れり尽くせり、ってことか」
あの剣にそんなことができるんだったら、俺の意識が乗ってる...
けどなんで空っぽのまんま、ほっぽってあったんだろうかねぇ…...
「しかし、本当にこれで良かったのか?」
「いいさ。俺が死んだ時、あいつは泣いてくれた。あいつの力...
それに、お前さんの旅を最後まで見届けたいんだ。
はてさて、あの三人の嬢ちゃんたちとどうやって付き合って...
ブリミルはニコリともしねぇ。冗談ぐらい分かるだろうによ。
253 名前:遠く六千年の彼女 9/10[sage] 投稿日:2006/11/12...
―神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。
左に握った大剣と、右に?んだ長槍で、導きし我を守りきる。
俺はデルフリンガー。名前は、もうない。
あのとき俺は命を落とした。
そして始祖ブリミルの手によって、この剣に新たな住処を得た。
先住魔法の仕組みの上に、虚無の魔法で乗っけてあるってこと...
だから、虚無の魔法だけはカンベンなわけ。俺の存在自体が揺...
そこで寝てるぺたんこの嬢ちゃんはある意味、天敵なわけよ。
あれから、ブリミルには一人弟子ができ、三人の娘たちには子...
その子供たちは人々をまとめる王家の人間となり、現在の三国...
弟子になった奴は『始祖の教え』とかいうのを体系化した。
子供たちと『ブリミルの洗礼』を受けた連中は魔法が使えるよ...
まあ、どっちにしても杖なしじゃ何にもできねえんだけどな。
四大系統はブリミルの残した力を使って先住魔法と同じもんに...
力を杖に預けておいて、必要なときに魔法の媒介として使うも...
次第に杖を持ったメイジが増えていくのを俺は見てきた。
そう、いまいるメイジはすべて、少しはブリミルの血を引く子...
ま、王家ほどその血が濃いって言うけど、実際どうなんだか。
ブリミル本人? あぁ、あいつは……どうしたんだったっけなぁ…...
254 名前:遠く六千年の彼女 10/10[sage] 投稿日:2006/11/1...
「……ちょっとボロ剣、アンタ何ぼそぼそ独りごと言ってんのよ...
おっ? 嬢ちゃんが目を覚ましたらしい。どうやらうるさくし...
んじゃ、俺の話はもうおしまいってことで。あんたもそろそろ...
「……で、誰と話してたの?」
「さあ、誰だかね」
「ていうか誰かいたらオカシイでしょ。わたしとサイトとメイ...
「まあ、お前さんは知らなくてもいいさ。ただ、なんてのかね...
俺やお前さんたちの生活っつうか、冒険を遠くから見てるや...
「そうなの? 覗き見なんて趣味悪いわね」
「ちょっと違うな。いうなれば、そう、神サマと精霊を足した...
「ふぅん……」
「ま、気にしなさんな。世界ってのはそういう風にできてるモ...
ほら、まだ早ぇえんだ。もいっぺん寝たってバチはあたらね...
「そう、わかったわ」そう言ってルイズはまた横になった。
さて、もうお別れだな。あんたに話せてよかったと思うぜ?
また暇なときにでも、こっちのことを思い出してくれよな。
ああ、さよならは言わねぇぜ? あんたの時間と俺らの時間は...
こっちで一日経っても、あんたにとっちゃ十分程度のことだっ...
それじゃ、また。
あの日から六千年。お前さんの旅は、まだ……終わっちゃいねぇ...
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