ゼロの使い魔保管庫
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523 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
怒涛のような午前中の競技が終わり、昼の時間に入ろうとした...
嵐はやってきた。
結局勝負は三人が三人ともターゲットを同じくしたため、結果...
そのせいもあって、誰が才人とお昼を食べるかで骨肉の争いを...
風の魔法でもって、会場に高々とアナウンスが響き渡った。
『ミス・ヴァリエールとヒラガサイト氏は、ただちに大会運営...
ようやく才人の右腕を取り戻したルイズが、振って沸いたアナ...
「と、いうわけだから。サイトは貰っていくわね?」
そう言ってルイズが無理矢理右腕をぐいっ、っと引っ張ると、...
「しょうがないですねー…。
でも、お弁当用意して待ってますからね♪サイトさん♪
終わったら迎えに行きますねー」
しかしあくまで才人との昼ごはんを譲る気はないらしく、弁当...
才人もなんとなく笑い返す。ひきつった笑顔のルイズのカカト...
「…で、あんたもいい加減離したらどうなのよ」
言って、ルイズは才人の胸元に張り付いたタバサを見る。
タバサは才人の首に手を回して、抱きついていた。
タバサは一瞬ムっとした顔をしたが、手を離すと、今度は胸に...
そして一言、
「…待ってるから」
そう言って、才人から離れた。
才人は泣きそうな顔のタバサの頭を軽く撫ぜてやった。
ルイズは満面の笑顔で、先刻タバサがしていたように、才人の...
そしておもむろに首をロックし、膝をその鳩尾に叩き込む。才...
最近のルイズの蹴り技は、殺人級に冴え渡っている。才人とい...
「行くわよっ、犬っ!」
ルイズは才人の襟首をがっちり掴むと、遠慮なく引きずってい...
その先に、何が待っているかも知らず。
524 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
運営本部は、大型の野外テントの中にあった。
その中には、運動会の提唱者であるオールド・オスマンと、何...
そしてもう一人。
奥に控えるその人物は、マントのフードを目深にかぶり、顔を...
ただ、その口元とマントの上から見て取れる曲線から、女性で...
その正体はようとして
「…何やってんですか姫様」
才人を引きずって天幕に入ったルイズが、呆れたような顔で言...
この2人が揃っていて、一人が顔を隠しているとなればその正...
三人は慌てて円陣を組み、『な、なんでバレるんですかっ』『...
そして少しすると、話がまとまったのか、三人は改めてルイズ...
…その頃には、真冬の風のような冷たい空気が辺りを覆っていた。
最初に口を開いたのはオールド・オスマンであった。
「えー、おほん。
キミを呼びつけたのは他でもない」
しかしルイズは半眼のまま、遠慮なくフードを目深にかぶった...
…またサイト狙いで来たわね、このわたあめ姫は…。
すでにルイズの中でアンリエッタは敬愛するべき女王ではなく...
ライバルである以上、手加減も遠慮もいらないわけで。
「…回りくどい事はなしにしませんか、姫様」
すでにルイズは戦闘状態だ。
暗闇でギーシュが見たら卒倒しそうな視線で、アンリエッタを...
「無礼だぞ!ミス・ヴァリエール!」
アニエスがすごむが、ブルマに体操服では様にならない。
剣も持ってないし。
ぶっちゃけた話、この格好でサイトを誘惑しちゃおっかなー、...
その肝心の才人が、ルイズにギタギタにされて目を回していて...
525 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
そのアニエスの言葉に反応したのは、ルイズではなくアンリエ...
「いいのですアニエス。
…これは、私と、ルイズの問題です」
言って、フードを跳ね上げる。
そこから現れたのは…見紛う事なき、アンリエッタ女王。
現トリステイン国王にして、ルイズの幼馴染。
そして才人を巡る、最大最強のライバルであった。
その瞳に炎を宿し、負けじとルイズを睨みつける。
あくまで、そのにこやかな笑みは崩さぬまま。
「…よく、私と分かりましたねルイズ・フランソワーズ」
ルイズも、マリコルヌくらいなら平伏して屈服のポーズをとり...
完璧な笑顔で。
「…毎度毎度、登場シーンがお約束すぎるんですよ姫様は」
「あら、これでも気を使っているのよ?そういう細やかな部分は...
「そんな些細な事にまで気を使わなければならないなんて。女...
「それほどでもないわ。王家からのおこぼれを乞食のように貪...
「…その通りですわね姫様。おほほほほほほほほほほほ」
「…いやだわルイズったら。おほほほほほほほほほほほ」
視線が火花を散らし、天幕内を殺気の嵐が吹きすさぶ。
二人とも直立不動で笑顔を見せているが、形を成した龍と虎の...
「こ、これが貴族の闘い…っっ!」
あまりの殺気に、アニエスは唾を飲み込み、あとずさる。
「…ええのう若いもんはー」
好々爺の笑みで、オールド・オスマンは知らん振りを決め込ん...
「うわっ、なんだなんだぁっ!?」
凄まじい殺気に才人が目を覚ますと、そこでは鬼が二匹、睨み...
才人の声に、一瞬で鬼が消え、究極の笑顔のアンリエッタと、...
「あ、お気づきになりましたか、サイトさん♪」
「おはよう、サイト♪」
笑顔の二人に、才人は何故か大量の脂汗をかきながら、
「お、おはよう」
と返すのが精一杯だった。
…ちぃ。
…よし一本先取っ!
二人の心の中だけで、先制ジャブの応酬が繰り広げられていた。
526 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
そうだ、こんな些事には関わっていられない。
アンリエッタは口を開いた。
大事な事を、憎き親友に伝えるために。
「…アナタを呼び出した用件、話してもいいかしらルイズ・フラ...
口火を切ったアンリエッタに、心の準備を整え、先制ジャブを...
…どっからでもかかってらっしゃい。
「…どうぞ」
アンリエッタは軽く息を吸って、言い放った。
「今から、私とアナタで勝負をします。
運動会の一競技として。
…サイトさんを賭けて!」
そして、身体を覆っていたマントを勢いよく放り出す。
翻って飛んだマントの下からは、紅いブルマと体操服に包まれ...
…放り出されたマントに絡みつかれ、『おお、ひめさまのにほい...
少しの間呆気にとられていたルイズだったが、やがて、凛とし...
「…なるほど、そう言うことですか…」
ルイズは、『サイトは私のものだからそんな勝負意味ないわよ...
…この機会に、白黒はっきりさせたろうじゃないの…!
「ラ・ヴァリエールの名において。
受けて立ちますわ、姫様…!」
…かかった。これで、王室が運動会を後押しした甲斐もあるとい...
アンリエッタは心の中で勝利を確信した。
…ルイズは勘違いしている。
…私がルイズより運動音痴だと。
甘い。甘いわねルイズ・フランソワーズ。
王族が王族である所以。それは、国民の誰よりも、優れた『血...
私は運動に於いても、頂点に立つ女…!!
一週間のアニエスとの特訓は、伊達じゃなくってよ…!!
そして、二人は再び睨み合う。
「うふふふふふふふふふふふ」
「おほほほほほほほほほほほ」
二人の視線が、再び火花を散らす。
運動会を揺るがす、究極のエキシビションマッチの開幕は、も...
「こえーよ、二人とも…」
賞品が呟いた。
622 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
昼を少し回ったころ。
学院の中庭に設えられた円形の競技場を、たくさんのブルマが...
トリステイン王国近衛騎士団、銃士隊である。
「ふむ。
女生徒の未成熟なぶるまぁ姿も良いが、完成した女性のぶる...
と変態な発言をかましたオスマンがアニエスに踏み潰されてい...
なんだなんだ、と、昼食を終えた生徒たちが競技場を取り囲む。
その円の中心には、二人の体操服姿の女性が。
「あれ?あそこにいるのラ・ヴァリエールじゃない」
コルベールの肘を胸の谷間でサンドイッチにしながら、キュル...
当のコルベールはいといえば、必死に猫背になって何かを隠し...
薄い布地ごしにヒットする柔らかいおにくと、ポッチの感覚に...
キュルケの指摘のとおり、競技場の中央で対峙する相手を睨み...
「じゃあ、あの人は?」
対峙している、紅いハチマキの女性を見る。
どことなく高貴な雰囲気。整った顔立ち。体操服に身を包んで...
「え、アンリエッタ女王!?」
驚くキュルケ。
それとほぼ同時に、気づいた生徒たちがざわめき始める。
そのざわめきを沈めるように、風の魔法で拡声された女生徒の...
『えー、ただいまより、本運動会のエキシビジョンマッチを開...
それでは、出場選手のご紹介をさせていただきます』
その言葉と同時に、一陣の風が競技場を駆け抜け、二人の髪を...
『白組代表、魔法もゼロなら胸もゼロ!歩く暴言、ミス・ヴァリ...
その放送と同時に、会場がどっと笑いに包まれる。
あによこの解説、私にケンカ売ってんの、などとルイズが競技...
そして、何事もなかったかのように放送はもう一人の紹介に入...
『赤組代表、美貌も魔法も超一流!我らが国王、アンリエッタ女...
その放送と同時に、会場に、やっぱり女王様だよ、すげーマジ...
「アンリエッタ女王万歳!」「トリステイン万歳!」
「姫殿下すてきー!」「女王さまあああああああ!」「ぶるまア...
一部アレな声援も混じっていたが、アンリエッタはその声援に...
…ふ。これが『人徳』というものよルイズ・フランソワーズ?
…ま、まだ勝負は始まってないもん…!
視線だけで会話を交わし、二人は競技場中央で相対する。
624 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
『なお、勝負は3セット2本先取。
特別審査員として、シュヴァリエ・サイト様が審査を担当し...
その放送に合わせ、競技場脇の、『審査員席』と書かれた天幕...
なんでサイトがあんなところに、と生徒から疑問の声が上がっ...
実は審査員どころか賞品扱いなのだが、それは本部すらも知ら...
『公平を期するため、競技は運営本部によって選ばれた競技を...
それではサイト様、第一競技を選んでください』
放送と共に、才人の前に上面に丸い穴の開いた小さな箱が持っ...
どうやら、この中に競技を書いた紙か何かが入っているらしい。
才人は穴に手を突っ込み、小さく畳まれた一枚の紙を取り出し...
係りの生徒にそれを手渡すと、その生徒は小走りに運営本部に...
『えー。第一の競技は『料理』!』
…それって競技なのかよ!、と才人は心の中で突っ込んでいた。
勝てる、勝てるわ!
私は勝利を確信した。
最近私は、シエスタについて、料理の練習をしている。
姫様程度には負けない自信はあった。
…やっぱり、料理くらいできないと、その、ほら。
…お嫁さんになったとき困るじゃない?
まままままままあ、まだ気が早い気もするけど!でも準備は早い...
コックにまかせればいいかもだけど、やっぱほら、旦那様には...
んでもって、『それじゃあデザートにルイズを頂こうかな』な...
やだもう!何考えてんのかしら私ってば!
「…あのー?ミス・ヴァリエール?」
厨房のお兄さんの声に現実に戻された。
あ、危ない危ない。危うくアッチの世界に行くところだった…。
私はエプロンを身に纏い、急ごしらえの釜戸と台の前にいる。...
これらは全て、厨房の人たちが準備してくれたものだった。
「で?何を作ればいいわけ?」
料理のお題は、サイトが考える事になっていた。
…シチューとかだといいんだけど。
正直揚げ物はまだ怖くて苦手なのよねえ…。
「『ニクジャガ』、だそうです」
…聞いたことのない名前ね?
またサイトの世界の料理なのかしら…。
「シュヴァリエ・サイトの田舎の料理だそうですよ?」
やっぱり。まーた、厄介なもの出してくるわねえ…。
でも、私はここのところの料理修行で一つ調理のコツを掴んで...
料理っていうのは名前から中身が想像できるモノ。
ニクジャガ…ニクジャガ…。
響きから考えてたぶん焼きもの。
うん、ピンときた。
これは魚料理ね!
早速私は調理にかかることにした。
625 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
俺は目の前に並んだ二品の料理を見て。
…勢いで『肉じゃが』って言ってしまったのを後悔した。
こっちにゃ肉じゃがないのかなあ…。
ルイズの出してきたものは、アンコウのような触手を二本生や...
…匂いがやけにスパイシーなのが気になる…。
姫様の出してきたソレは、棒に何かを練ったものを盛って、焼...
…コゲてるわけでもないのにひたすら黒いのは何故だろう…。
『さあ、二人の料理が出揃いました!審査の結果やいかに!』
…喰うのか、これを…?
俺がそうやって審査員席で躊躇していると、競技場で不安げに...
…一応、俺のために作ってくれたんだよなあ…。
ええい、どうとでもなれ、だ!
俺はまず、味の想像のつきそうなルイズの料理に手を着けた。
魚を一切れフォークで刺し、口に放り込む。
「ぶーーーーーーーーーーー!」
思わず吹いた。
辛い辛い辛い辛い辛い辛いからい!!
案の定ルイズの作った『肉じゃが』はとんでもなく辛かった。
俺は横に準備してあったコップの水を一気に飲み干した。
一口でこれか!キツすぎるぞコレ!
…ルイズがなんかガン飛ばしてるけど。
ゴメンルイズ。コレは喰えない。
んじゃあ、今度は姫様の…。
これも、なんだかなあ…。
匂い…は、肉っぽい匂い。
ただ、色がなあ…。
ええい、どうとでもなれ、だ!
俺はその棒をつかみ、なぞの料理を口に含んだ。
「げほ!げほげほ!」
…思いっきり咽た。
苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い!
ナンダコレ。焼いた正露丸の味がするぞ。
…いったいどうやったらこんな料理ができるんだろう…。
「して、結果はどうですかなサイト殿?」
隣に掛けたオールド・オスマンが面白そうにそう聞いてくる。
…いや、これは…。
『審査の結果、第一競技は『ひきわけ』となりましたー』
102 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
引き分けとなった第一試合に引き続き、第二試合が行われる事...
競技場中央に設えられたキッチンコロシアムもどきは撤去され...
そして、次なる競技は…。
『えー、次の競技は『格闘技』!『格闘技』となりましたー』
のきなみざわつく観客たち。
当然といえば当然である。
仮にも一国の女王が、直接殴りあいをしようというのだ。
心配になるのも当然と言えよう。
「アン様とくんずほぐれつ…!」「羨ましいぞヴァリエール!」
「代わってくれぇぇぇぇぇぇ!」「むしろ踏んで下さい!」「い...
…一度この学院は教育というものを見直したほうがいいだろう。
しかし、その心配は杞憂に終わる。
『えー、運営本部より、陛下が直接闘うのはアレだということ...
その代行に指名されたのは。
アンリエッタ側に、アニエス。
そしてルイズ側が、才人であった。
…なんで審査員の俺が…。
競技場中央に作られた急ごしらえの四角いリングのコーナーで...
その対面側のコーナーには、体操服のアニエス。
正直、才人は闘う気がしなかった。
剣での勝負ならともかく、拳での殴りあいなど、したくない。
相手が女の子ならなおのこと、である。
しかし、リングサイドから、容赦のない声が飛ぶ。
「サイト!負けたら許さないんだからね!」
…このご主人様はー…。
しかし、逆らったら後が怖いので、とりあえず才人はリング中...
同じように、アンリエッタから檄を受けたアニエスが、中央に...
その間に、審判役のギトーが立つ。
「えー、双方、武器の使用は禁止。
地面に10カウント組み伏せられるか、場外に落ちたら負け。...
ルールの確認後、アニエスが手を差し出してくる。
「正々堂々やろうじゃないか、サイト」
握り返す事を躊躇している才人に、アニエスは続ける。
「何を心配している?素手でもお前程度に後れは取らんぞ。
遠慮はいらん。私も本気でやるからな」
確かに、アニエスなら本気で闘っても問題はないだろう。
才人は腹を決めて、アニエスの手を握り返した。
「本気で行きますよ、俺も」
そして、試合開始を告げるギトーの声が、競技場に響いた。
103 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
先手を打ったのは才人だった。
地面を蹴り、鋭い左を真っ直ぐに打ち込む。
アニエスはそれを余裕の動きで避け、そのままその腕を取った。
そして巻き込むように体を回転させ、才人を地面に転がす。
「うわたっ!?」
背中を打ち付けて初めて、才人は自分が投げられた事に気づい...
いかに戦闘経験があるとはいえ、格闘戦に関しては才人は素人...
そのまま、アニエスは才人に馬乗りになる。
そして何を思ったのか、傍目にはキスしそうな距離にまで顔を...
「さて、負けを認めるならこの辺りでカンベンしてやるぞサイ...
しかし才人とて男である。しかも愛しいご主人様の期待までそ...
負けるわけにはいかないのである。
才人は懸命に上半身を起こそうとしながら、反論した。
「この程度でっ、負けるわけには…!!」
しかし才人の抵抗は無駄だったのである。
アニエスは何の遠慮もなく、その胸に才人の頭を埋めた。
「わぷっ!?」
「じゃあ訂正しよう。
負けを認めないなら、公衆の面前で立たせちゃうぞ♪」
「すいません参りました」
これをもって、才人の負けが決定したのである。
「バカ犬ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
ルイズの怒号が競技場に鳴り響いた。
『えー、第二競技の結果は、アンリエッタ女王の勝ち、となり...
ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。
あと一歩。
あと一歩でサイト様は私のもの。
競技場の反対側では、慌てふためいているルイズが見えた。
悪いけどルイズ・フランソワーズ。今度ばかりは手を抜くわけ...
私の『相応の覚悟』、見せて差し上げます。
そして、そしてそしてそして!
晴れてサイト様は、私の婿となって、トリステイン国王に!
そうね、トリスタニアに帰ったらまずは式かしら。
各国の王に招待状を出して、貴族にも召集をかけて。
その日はトリステインの祝日にしてもいいかも♪
そうねー、新婚旅行はアルビオンなんかステキじゃないかしら...
なんて私が未来設計を考えていると。
次の競技を告げる声が、会場に響き渡った。
104 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
『えー、次の競技は『仮装』です!』
『仮装』?それで、どうやって勝敗を決めるのかしら…?
『えー、競技内容を説明いたしますとー、お互いに仮装を披露...
…どういう競技なんですか…。
私が呆れていると、視界の隅にガッツポーズを取るオールド・...
…犯人はコイツか…。
この人に学院を任せておいて、本当に大丈夫なのかしら…?
隣を見ると、ルイズも呆れていた。
でも、私と目が合うと…。
何!?今の勝ち誇った笑みは!?
『私はサイトの全てを知り尽くしているわ!』みたいな!!
…ま、負けるもんですか!
私だって、私だって!
本でいろいろ勉強したんですから!
さて、才人の興奮をどうやって計測するのかと言えば。
コルベールが自信満々に説明する。
「えー、計測にはこの『愉快なヘビ君EX』を使います」
それは、貞操帯の股間に、いつかの実験で見せた「愉快なヘビ...
「いやあの先生いくらなんでもダイレクト過ぎでは」
「これは男性に装着する事で興奮を数値にして計測するもので...
才人の反論は完全無欠に無視である。
でもって、疑問を差し挟む余地もなく才人は椅子に縛り付けら...
「えーそれでは、一例を」
「ちょっとまてここで公開処刑かあああああああああああ!!」
才人の反論はまたしても無視される。
コルベールが指を鳴らすと、才人の目の前に体操服のキュルケ...
そしておもむろに才人の頭を抱え込んだ。
『ちょっと待てなんだその役得!』『しねサイト!』『逝ってヨ...
『月のない夜は背中に気をつけろよ!』『べ、別にうらやましく...
男子生徒の非難の声が上がる。
と、同時にルイズのいる『控え室』からすさまじい殺気が。
…気にしないことにしよう。
「おお、興奮レベル75!ばっちり興奮しておりますな!」
実験結果に満足し、コルベールはキュルケを下がらせる。
『ダーリンのためだからしょうがないけど…』なんてぶつぶつ言...
当の才人はといえば、羞恥のあまり白い灰と化していた。
…ていうか後がコワイっす…。
そんなこんなで『計測装置』の方の準備が一通り整うと。
『えー、それでは、お二方の準備が整ったようですので、競技...
なお、計測時と違い、競技ではおさわりは厳禁とします』
105 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
その放送が終わると同時に、競技場脇の部屋を間借りして作っ...
二人は中央に待つ才人の前まで歩いてくると、お互いに視線を...
アンリエッタがパー。ルイズがチョキである。
『先攻、アンリエッタ女王!後攻、ミス・ヴァリエール!』
先攻後攻が決まったところで、ルイズは才人の前から下がる。
そして、アンリエッタがマントに手を掛け、放り投げる。
その下から現れたのは…。
「きょ、今日はあなたがご主人様にゃんっ♪」
物凄く短い丈のメイド服に身を包み、虎縞のねこみみのカチュ...
ご丁寧に尻尾までついて、さらに手をネコのように丸めている。
やっぱり恥ずかしいのか、顔を耳まで真っ赤にしている。
いったいどんな本を読んだのだろう。
「えー、興奮度は…35でございます…」
ど、どうしてっ!?本には殿方はこういうのが好きだとっ!?
驚愕に歪むアンリエッタの顔。
そして。
『なぜだ、なぜこのアン様に萌えないのだサイト!』『この不能...
一部変な声も聞かれるが、男子生徒の怒号が辺りを覆う。
しかし才人の数値は増えない。
…ゴメン姫様、属性付加しすぎて逆効果です…。
才人は以外にマニアックであった。
106 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
『えーでは、後攻のミス・ヴァリエール、どうぞ!』
しかし放送は無情にもルイズの番を告げる。
アンリエッタはしぶしぶ下がり、そして才人の前にマントにフ...
ルイズはそっとフードに手を掛け、まず顔を晒す。
その顔はいつもと同じ。髪にも手は加えられていない。ただ、...
てことは、この下、なんだよな…。
ルイズは、少し赤くなりながら、才人に向かって、小声で言っ...
「さ、サイトにだけ、見せてあげる…」
そして、才人の前に建ち、マントの前だけをはだけて見せた。
『興奮度100…120…バカな、まだ上昇している…!』
マントの下のルイズは、びしょ濡れの体操服だった。
遠目には見えないが、透けたルイズの肌が、才人にははっきり...
…どこでこんなテクニック覚えてくるんですかルイズさん。
才人は心の中だけで突っ込んだ。
『こらサイト、見えないぞそこどけ!』『お前だけおいしい思い...
男子生徒の怒号の中、放送が告げた。
『えー、競技の結果、1対1、1引き分けで、両者引き分け、とな...
以上をもちまして、エキシビションマッチを終了いたしまー...
そこは、学院の裏門だった。
表から影武者を帰らせ、アンリエッタは裏門で、ルイズと別れ...
「今度の勝負では結果はでませんでしたが…いい勝負でした」
「そうですね。姫様の健闘は、賞賛に値しますわ」
「…今度は、負けませんよ」
「いつでも、受けて立ちます」
そして、二人は手を差し出す。
それぞれの掌に光る、二本の画鋲。
二人は引きつった笑顔で、お互いの手を握り返した。
そして、力の限り握り締める。
「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
「おほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ」
それを見ていた才人が、思いっきり引きの入った顔で言った。
「こえーよ、二人とも…」
そして、これを皮切りに、後世に『トリステイン史上最悪の痴...
それはまた別の話。〜fin
終了行:
523 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
怒涛のような午前中の競技が終わり、昼の時間に入ろうとした...
嵐はやってきた。
結局勝負は三人が三人ともターゲットを同じくしたため、結果...
そのせいもあって、誰が才人とお昼を食べるかで骨肉の争いを...
風の魔法でもって、会場に高々とアナウンスが響き渡った。
『ミス・ヴァリエールとヒラガサイト氏は、ただちに大会運営...
ようやく才人の右腕を取り戻したルイズが、振って沸いたアナ...
「と、いうわけだから。サイトは貰っていくわね?」
そう言ってルイズが無理矢理右腕をぐいっ、っと引っ張ると、...
「しょうがないですねー…。
でも、お弁当用意して待ってますからね♪サイトさん♪
終わったら迎えに行きますねー」
しかしあくまで才人との昼ごはんを譲る気はないらしく、弁当...
才人もなんとなく笑い返す。ひきつった笑顔のルイズのカカト...
「…で、あんたもいい加減離したらどうなのよ」
言って、ルイズは才人の胸元に張り付いたタバサを見る。
タバサは才人の首に手を回して、抱きついていた。
タバサは一瞬ムっとした顔をしたが、手を離すと、今度は胸に...
そして一言、
「…待ってるから」
そう言って、才人から離れた。
才人は泣きそうな顔のタバサの頭を軽く撫ぜてやった。
ルイズは満面の笑顔で、先刻タバサがしていたように、才人の...
そしておもむろに首をロックし、膝をその鳩尾に叩き込む。才...
最近のルイズの蹴り技は、殺人級に冴え渡っている。才人とい...
「行くわよっ、犬っ!」
ルイズは才人の襟首をがっちり掴むと、遠慮なく引きずってい...
その先に、何が待っているかも知らず。
524 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
運営本部は、大型の野外テントの中にあった。
その中には、運動会の提唱者であるオールド・オスマンと、何...
そしてもう一人。
奥に控えるその人物は、マントのフードを目深にかぶり、顔を...
ただ、その口元とマントの上から見て取れる曲線から、女性で...
その正体はようとして
「…何やってんですか姫様」
才人を引きずって天幕に入ったルイズが、呆れたような顔で言...
この2人が揃っていて、一人が顔を隠しているとなればその正...
三人は慌てて円陣を組み、『な、なんでバレるんですかっ』『...
そして少しすると、話がまとまったのか、三人は改めてルイズ...
…その頃には、真冬の風のような冷たい空気が辺りを覆っていた。
最初に口を開いたのはオールド・オスマンであった。
「えー、おほん。
キミを呼びつけたのは他でもない」
しかしルイズは半眼のまま、遠慮なくフードを目深にかぶった...
…またサイト狙いで来たわね、このわたあめ姫は…。
すでにルイズの中でアンリエッタは敬愛するべき女王ではなく...
ライバルである以上、手加減も遠慮もいらないわけで。
「…回りくどい事はなしにしませんか、姫様」
すでにルイズは戦闘状態だ。
暗闇でギーシュが見たら卒倒しそうな視線で、アンリエッタを...
「無礼だぞ!ミス・ヴァリエール!」
アニエスがすごむが、ブルマに体操服では様にならない。
剣も持ってないし。
ぶっちゃけた話、この格好でサイトを誘惑しちゃおっかなー、...
その肝心の才人が、ルイズにギタギタにされて目を回していて...
525 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
そのアニエスの言葉に反応したのは、ルイズではなくアンリエ...
「いいのですアニエス。
…これは、私と、ルイズの問題です」
言って、フードを跳ね上げる。
そこから現れたのは…見紛う事なき、アンリエッタ女王。
現トリステイン国王にして、ルイズの幼馴染。
そして才人を巡る、最大最強のライバルであった。
その瞳に炎を宿し、負けじとルイズを睨みつける。
あくまで、そのにこやかな笑みは崩さぬまま。
「…よく、私と分かりましたねルイズ・フランソワーズ」
ルイズも、マリコルヌくらいなら平伏して屈服のポーズをとり...
完璧な笑顔で。
「…毎度毎度、登場シーンがお約束すぎるんですよ姫様は」
「あら、これでも気を使っているのよ?そういう細やかな部分は...
「そんな些細な事にまで気を使わなければならないなんて。女...
「それほどでもないわ。王家からのおこぼれを乞食のように貪...
「…その通りですわね姫様。おほほほほほほほほほほほ」
「…いやだわルイズったら。おほほほほほほほほほほほ」
視線が火花を散らし、天幕内を殺気の嵐が吹きすさぶ。
二人とも直立不動で笑顔を見せているが、形を成した龍と虎の...
「こ、これが貴族の闘い…っっ!」
あまりの殺気に、アニエスは唾を飲み込み、あとずさる。
「…ええのう若いもんはー」
好々爺の笑みで、オールド・オスマンは知らん振りを決め込ん...
「うわっ、なんだなんだぁっ!?」
凄まじい殺気に才人が目を覚ますと、そこでは鬼が二匹、睨み...
才人の声に、一瞬で鬼が消え、究極の笑顔のアンリエッタと、...
「あ、お気づきになりましたか、サイトさん♪」
「おはよう、サイト♪」
笑顔の二人に、才人は何故か大量の脂汗をかきながら、
「お、おはよう」
と返すのが精一杯だった。
…ちぃ。
…よし一本先取っ!
二人の心の中だけで、先制ジャブの応酬が繰り広げられていた。
526 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
そうだ、こんな些事には関わっていられない。
アンリエッタは口を開いた。
大事な事を、憎き親友に伝えるために。
「…アナタを呼び出した用件、話してもいいかしらルイズ・フラ...
口火を切ったアンリエッタに、心の準備を整え、先制ジャブを...
…どっからでもかかってらっしゃい。
「…どうぞ」
アンリエッタは軽く息を吸って、言い放った。
「今から、私とアナタで勝負をします。
運動会の一競技として。
…サイトさんを賭けて!」
そして、身体を覆っていたマントを勢いよく放り出す。
翻って飛んだマントの下からは、紅いブルマと体操服に包まれ...
…放り出されたマントに絡みつかれ、『おお、ひめさまのにほい...
少しの間呆気にとられていたルイズだったが、やがて、凛とし...
「…なるほど、そう言うことですか…」
ルイズは、『サイトは私のものだからそんな勝負意味ないわよ...
…この機会に、白黒はっきりさせたろうじゃないの…!
「ラ・ヴァリエールの名において。
受けて立ちますわ、姫様…!」
…かかった。これで、王室が運動会を後押しした甲斐もあるとい...
アンリエッタは心の中で勝利を確信した。
…ルイズは勘違いしている。
…私がルイズより運動音痴だと。
甘い。甘いわねルイズ・フランソワーズ。
王族が王族である所以。それは、国民の誰よりも、優れた『血...
私は運動に於いても、頂点に立つ女…!!
一週間のアニエスとの特訓は、伊達じゃなくってよ…!!
そして、二人は再び睨み合う。
「うふふふふふふふふふふふ」
「おほほほほほほほほほほほ」
二人の視線が、再び火花を散らす。
運動会を揺るがす、究極のエキシビションマッチの開幕は、も...
「こえーよ、二人とも…」
賞品が呟いた。
622 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
昼を少し回ったころ。
学院の中庭に設えられた円形の競技場を、たくさんのブルマが...
トリステイン王国近衛騎士団、銃士隊である。
「ふむ。
女生徒の未成熟なぶるまぁ姿も良いが、完成した女性のぶる...
と変態な発言をかましたオスマンがアニエスに踏み潰されてい...
なんだなんだ、と、昼食を終えた生徒たちが競技場を取り囲む。
その円の中心には、二人の体操服姿の女性が。
「あれ?あそこにいるのラ・ヴァリエールじゃない」
コルベールの肘を胸の谷間でサンドイッチにしながら、キュル...
当のコルベールはいといえば、必死に猫背になって何かを隠し...
薄い布地ごしにヒットする柔らかいおにくと、ポッチの感覚に...
キュルケの指摘のとおり、競技場の中央で対峙する相手を睨み...
「じゃあ、あの人は?」
対峙している、紅いハチマキの女性を見る。
どことなく高貴な雰囲気。整った顔立ち。体操服に身を包んで...
「え、アンリエッタ女王!?」
驚くキュルケ。
それとほぼ同時に、気づいた生徒たちがざわめき始める。
そのざわめきを沈めるように、風の魔法で拡声された女生徒の...
『えー、ただいまより、本運動会のエキシビジョンマッチを開...
それでは、出場選手のご紹介をさせていただきます』
その言葉と同時に、一陣の風が競技場を駆け抜け、二人の髪を...
『白組代表、魔法もゼロなら胸もゼロ!歩く暴言、ミス・ヴァリ...
その放送と同時に、会場がどっと笑いに包まれる。
あによこの解説、私にケンカ売ってんの、などとルイズが競技...
そして、何事もなかったかのように放送はもう一人の紹介に入...
『赤組代表、美貌も魔法も超一流!我らが国王、アンリエッタ女...
その放送と同時に、会場に、やっぱり女王様だよ、すげーマジ...
「アンリエッタ女王万歳!」「トリステイン万歳!」
「姫殿下すてきー!」「女王さまあああああああ!」「ぶるまア...
一部アレな声援も混じっていたが、アンリエッタはその声援に...
…ふ。これが『人徳』というものよルイズ・フランソワーズ?
…ま、まだ勝負は始まってないもん…!
視線だけで会話を交わし、二人は競技場中央で相対する。
624 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
『なお、勝負は3セット2本先取。
特別審査員として、シュヴァリエ・サイト様が審査を担当し...
その放送に合わせ、競技場脇の、『審査員席』と書かれた天幕...
なんでサイトがあんなところに、と生徒から疑問の声が上がっ...
実は審査員どころか賞品扱いなのだが、それは本部すらも知ら...
『公平を期するため、競技は運営本部によって選ばれた競技を...
それではサイト様、第一競技を選んでください』
放送と共に、才人の前に上面に丸い穴の開いた小さな箱が持っ...
どうやら、この中に競技を書いた紙か何かが入っているらしい。
才人は穴に手を突っ込み、小さく畳まれた一枚の紙を取り出し...
係りの生徒にそれを手渡すと、その生徒は小走りに運営本部に...
『えー。第一の競技は『料理』!』
…それって競技なのかよ!、と才人は心の中で突っ込んでいた。
勝てる、勝てるわ!
私は勝利を確信した。
最近私は、シエスタについて、料理の練習をしている。
姫様程度には負けない自信はあった。
…やっぱり、料理くらいできないと、その、ほら。
…お嫁さんになったとき困るじゃない?
まままままままあ、まだ気が早い気もするけど!でも準備は早い...
コックにまかせればいいかもだけど、やっぱほら、旦那様には...
んでもって、『それじゃあデザートにルイズを頂こうかな』な...
やだもう!何考えてんのかしら私ってば!
「…あのー?ミス・ヴァリエール?」
厨房のお兄さんの声に現実に戻された。
あ、危ない危ない。危うくアッチの世界に行くところだった…。
私はエプロンを身に纏い、急ごしらえの釜戸と台の前にいる。...
これらは全て、厨房の人たちが準備してくれたものだった。
「で?何を作ればいいわけ?」
料理のお題は、サイトが考える事になっていた。
…シチューとかだといいんだけど。
正直揚げ物はまだ怖くて苦手なのよねえ…。
「『ニクジャガ』、だそうです」
…聞いたことのない名前ね?
またサイトの世界の料理なのかしら…。
「シュヴァリエ・サイトの田舎の料理だそうですよ?」
やっぱり。まーた、厄介なもの出してくるわねえ…。
でも、私はここのところの料理修行で一つ調理のコツを掴んで...
料理っていうのは名前から中身が想像できるモノ。
ニクジャガ…ニクジャガ…。
響きから考えてたぶん焼きもの。
うん、ピンときた。
これは魚料理ね!
早速私は調理にかかることにした。
625 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
俺は目の前に並んだ二品の料理を見て。
…勢いで『肉じゃが』って言ってしまったのを後悔した。
こっちにゃ肉じゃがないのかなあ…。
ルイズの出してきたものは、アンコウのような触手を二本生や...
…匂いがやけにスパイシーなのが気になる…。
姫様の出してきたソレは、棒に何かを練ったものを盛って、焼...
…コゲてるわけでもないのにひたすら黒いのは何故だろう…。
『さあ、二人の料理が出揃いました!審査の結果やいかに!』
…喰うのか、これを…?
俺がそうやって審査員席で躊躇していると、競技場で不安げに...
…一応、俺のために作ってくれたんだよなあ…。
ええい、どうとでもなれ、だ!
俺はまず、味の想像のつきそうなルイズの料理に手を着けた。
魚を一切れフォークで刺し、口に放り込む。
「ぶーーーーーーーーーーー!」
思わず吹いた。
辛い辛い辛い辛い辛い辛いからい!!
案の定ルイズの作った『肉じゃが』はとんでもなく辛かった。
俺は横に準備してあったコップの水を一気に飲み干した。
一口でこれか!キツすぎるぞコレ!
…ルイズがなんかガン飛ばしてるけど。
ゴメンルイズ。コレは喰えない。
んじゃあ、今度は姫様の…。
これも、なんだかなあ…。
匂い…は、肉っぽい匂い。
ただ、色がなあ…。
ええい、どうとでもなれ、だ!
俺はその棒をつかみ、なぞの料理を口に含んだ。
「げほ!げほげほ!」
…思いっきり咽た。
苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い!
ナンダコレ。焼いた正露丸の味がするぞ。
…いったいどうやったらこんな料理ができるんだろう…。
「して、結果はどうですかなサイト殿?」
隣に掛けたオールド・オスマンが面白そうにそう聞いてくる。
…いや、これは…。
『審査の結果、第一競技は『ひきわけ』となりましたー』
102 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
引き分けとなった第一試合に引き続き、第二試合が行われる事...
競技場中央に設えられたキッチンコロシアムもどきは撤去され...
そして、次なる競技は…。
『えー、次の競技は『格闘技』!『格闘技』となりましたー』
のきなみざわつく観客たち。
当然といえば当然である。
仮にも一国の女王が、直接殴りあいをしようというのだ。
心配になるのも当然と言えよう。
「アン様とくんずほぐれつ…!」「羨ましいぞヴァリエール!」
「代わってくれぇぇぇぇぇぇ!」「むしろ踏んで下さい!」「い...
…一度この学院は教育というものを見直したほうがいいだろう。
しかし、その心配は杞憂に終わる。
『えー、運営本部より、陛下が直接闘うのはアレだということ...
その代行に指名されたのは。
アンリエッタ側に、アニエス。
そしてルイズ側が、才人であった。
…なんで審査員の俺が…。
競技場中央に作られた急ごしらえの四角いリングのコーナーで...
その対面側のコーナーには、体操服のアニエス。
正直、才人は闘う気がしなかった。
剣での勝負ならともかく、拳での殴りあいなど、したくない。
相手が女の子ならなおのこと、である。
しかし、リングサイドから、容赦のない声が飛ぶ。
「サイト!負けたら許さないんだからね!」
…このご主人様はー…。
しかし、逆らったら後が怖いので、とりあえず才人はリング中...
同じように、アンリエッタから檄を受けたアニエスが、中央に...
その間に、審判役のギトーが立つ。
「えー、双方、武器の使用は禁止。
地面に10カウント組み伏せられるか、場外に落ちたら負け。...
ルールの確認後、アニエスが手を差し出してくる。
「正々堂々やろうじゃないか、サイト」
握り返す事を躊躇している才人に、アニエスは続ける。
「何を心配している?素手でもお前程度に後れは取らんぞ。
遠慮はいらん。私も本気でやるからな」
確かに、アニエスなら本気で闘っても問題はないだろう。
才人は腹を決めて、アニエスの手を握り返した。
「本気で行きますよ、俺も」
そして、試合開始を告げるギトーの声が、競技場に響いた。
103 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
先手を打ったのは才人だった。
地面を蹴り、鋭い左を真っ直ぐに打ち込む。
アニエスはそれを余裕の動きで避け、そのままその腕を取った。
そして巻き込むように体を回転させ、才人を地面に転がす。
「うわたっ!?」
背中を打ち付けて初めて、才人は自分が投げられた事に気づい...
いかに戦闘経験があるとはいえ、格闘戦に関しては才人は素人...
そのまま、アニエスは才人に馬乗りになる。
そして何を思ったのか、傍目にはキスしそうな距離にまで顔を...
「さて、負けを認めるならこの辺りでカンベンしてやるぞサイ...
しかし才人とて男である。しかも愛しいご主人様の期待までそ...
負けるわけにはいかないのである。
才人は懸命に上半身を起こそうとしながら、反論した。
「この程度でっ、負けるわけには…!!」
しかし才人の抵抗は無駄だったのである。
アニエスは何の遠慮もなく、その胸に才人の頭を埋めた。
「わぷっ!?」
「じゃあ訂正しよう。
負けを認めないなら、公衆の面前で立たせちゃうぞ♪」
「すいません参りました」
これをもって、才人の負けが決定したのである。
「バカ犬ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...
ルイズの怒号が競技場に鳴り響いた。
『えー、第二競技の結果は、アンリエッタ女王の勝ち、となり...
ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。
あと一歩。
あと一歩でサイト様は私のもの。
競技場の反対側では、慌てふためいているルイズが見えた。
悪いけどルイズ・フランソワーズ。今度ばかりは手を抜くわけ...
私の『相応の覚悟』、見せて差し上げます。
そして、そしてそしてそして!
晴れてサイト様は、私の婿となって、トリステイン国王に!
そうね、トリスタニアに帰ったらまずは式かしら。
各国の王に招待状を出して、貴族にも召集をかけて。
その日はトリステインの祝日にしてもいいかも♪
そうねー、新婚旅行はアルビオンなんかステキじゃないかしら...
なんて私が未来設計を考えていると。
次の競技を告げる声が、会場に響き渡った。
104 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
『えー、次の競技は『仮装』です!』
『仮装』?それで、どうやって勝敗を決めるのかしら…?
『えー、競技内容を説明いたしますとー、お互いに仮装を披露...
…どういう競技なんですか…。
私が呆れていると、視界の隅にガッツポーズを取るオールド・...
…犯人はコイツか…。
この人に学院を任せておいて、本当に大丈夫なのかしら…?
隣を見ると、ルイズも呆れていた。
でも、私と目が合うと…。
何!?今の勝ち誇った笑みは!?
『私はサイトの全てを知り尽くしているわ!』みたいな!!
…ま、負けるもんですか!
私だって、私だって!
本でいろいろ勉強したんですから!
さて、才人の興奮をどうやって計測するのかと言えば。
コルベールが自信満々に説明する。
「えー、計測にはこの『愉快なヘビ君EX』を使います」
それは、貞操帯の股間に、いつかの実験で見せた「愉快なヘビ...
「いやあの先生いくらなんでもダイレクト過ぎでは」
「これは男性に装着する事で興奮を数値にして計測するもので...
才人の反論は完全無欠に無視である。
でもって、疑問を差し挟む余地もなく才人は椅子に縛り付けら...
「えーそれでは、一例を」
「ちょっとまてここで公開処刑かあああああああああああ!!」
才人の反論はまたしても無視される。
コルベールが指を鳴らすと、才人の目の前に体操服のキュルケ...
そしておもむろに才人の頭を抱え込んだ。
『ちょっと待てなんだその役得!』『しねサイト!』『逝ってヨ...
『月のない夜は背中に気をつけろよ!』『べ、別にうらやましく...
男子生徒の非難の声が上がる。
と、同時にルイズのいる『控え室』からすさまじい殺気が。
…気にしないことにしよう。
「おお、興奮レベル75!ばっちり興奮しておりますな!」
実験結果に満足し、コルベールはキュルケを下がらせる。
『ダーリンのためだからしょうがないけど…』なんてぶつぶつ言...
当の才人はといえば、羞恥のあまり白い灰と化していた。
…ていうか後がコワイっす…。
そんなこんなで『計測装置』の方の準備が一通り整うと。
『えー、それでは、お二方の準備が整ったようですので、競技...
なお、計測時と違い、競技ではおさわりは厳禁とします』
105 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
その放送が終わると同時に、競技場脇の部屋を間借りして作っ...
二人は中央に待つ才人の前まで歩いてくると、お互いに視線を...
アンリエッタがパー。ルイズがチョキである。
『先攻、アンリエッタ女王!後攻、ミス・ヴァリエール!』
先攻後攻が決まったところで、ルイズは才人の前から下がる。
そして、アンリエッタがマントに手を掛け、放り投げる。
その下から現れたのは…。
「きょ、今日はあなたがご主人様にゃんっ♪」
物凄く短い丈のメイド服に身を包み、虎縞のねこみみのカチュ...
ご丁寧に尻尾までついて、さらに手をネコのように丸めている。
やっぱり恥ずかしいのか、顔を耳まで真っ赤にしている。
いったいどんな本を読んだのだろう。
「えー、興奮度は…35でございます…」
ど、どうしてっ!?本には殿方はこういうのが好きだとっ!?
驚愕に歪むアンリエッタの顔。
そして。
『なぜだ、なぜこのアン様に萌えないのだサイト!』『この不能...
一部変な声も聞かれるが、男子生徒の怒号が辺りを覆う。
しかし才人の数値は増えない。
…ゴメン姫様、属性付加しすぎて逆効果です…。
才人は以外にマニアックであった。
106 名前:運動会@エキシビションマッチ! ◆mQKcT9WQPM [sage...
『えーでは、後攻のミス・ヴァリエール、どうぞ!』
しかし放送は無情にもルイズの番を告げる。
アンリエッタはしぶしぶ下がり、そして才人の前にマントにフ...
ルイズはそっとフードに手を掛け、まず顔を晒す。
その顔はいつもと同じ。髪にも手は加えられていない。ただ、...
てことは、この下、なんだよな…。
ルイズは、少し赤くなりながら、才人に向かって、小声で言っ...
「さ、サイトにだけ、見せてあげる…」
そして、才人の前に建ち、マントの前だけをはだけて見せた。
『興奮度100…120…バカな、まだ上昇している…!』
マントの下のルイズは、びしょ濡れの体操服だった。
遠目には見えないが、透けたルイズの肌が、才人にははっきり...
…どこでこんなテクニック覚えてくるんですかルイズさん。
才人は心の中だけで突っ込んだ。
『こらサイト、見えないぞそこどけ!』『お前だけおいしい思い...
男子生徒の怒号の中、放送が告げた。
『えー、競技の結果、1対1、1引き分けで、両者引き分け、とな...
以上をもちまして、エキシビションマッチを終了いたしまー...
そこは、学院の裏門だった。
表から影武者を帰らせ、アンリエッタは裏門で、ルイズと別れ...
「今度の勝負では結果はでませんでしたが…いい勝負でした」
「そうですね。姫様の健闘は、賞賛に値しますわ」
「…今度は、負けませんよ」
「いつでも、受けて立ちます」
そして、二人は手を差し出す。
それぞれの掌に光る、二本の画鋲。
二人は引きつった笑顔で、お互いの手を握り返した。
そして、力の限り握り締める。
「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
「おほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ」
それを見ていた才人が、思いっきり引きの入った顔で言った。
「こえーよ、二人とも…」
そして、これを皮切りに、後世に『トリステイン史上最悪の痴...
それはまた別の話。〜fin
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