ゼロの使い魔保管庫
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アンリエッタ×ルイズ(仮称)
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窓を通したルイズ・フランソワーズの瞳に映るのは憎らしい...
これが美しく見えるのは今が夜明けだからか、ルイズの耳に...
静寂の美景、それは見た者の心を癒すには充分すぎるほどだ...
故郷のトリスタニア、任務で来たアルビオン、血で争う戦争...
しばしの間、ルイズはすべてのことを忘れていた。
となりで自分の肩を引き寄せてくれる人のぬくもりを感じな...
―――いいんじゃねえか人間だし by才人―――
ルイズはそっと目を閉じて過去を思い出した。
夏季休暇に姫様から頼まれた情報集めの任務が終わった後の...
「お疲れ様、ルイズ・フランソワーズ。それに優しい使い魔さん」
アンリエッタは友達にしか見せない極上の笑みを見せた。
「姫様のお役に立てて光栄にございます」
ルイズは王座の前にひざまずき深く一礼をした、もちろんお...
「そんな他人行儀にならないで。私こそあなたにいつも任務を...
「もったいないお言葉にございます、姫様」
この二人がたまに会うと同じ会話が絶対起こるなぁ、と才人...
貴族同士の社交辞令とでも言うのか、とはいえアンは一国の...
『親友』と二人の関係は定義されるだろうが態度は主人と使い...
「やれやれ」
誰にも聞こえないように才人はつぶやいた。
「忠誠には報いるところが無くてはいけません、今日の夜に個...
「そんな、そのような気遣いは無用にございます」
ルイズは申し出に対して再び一礼した。
「断んのかよ」
才人は残念そうにルイズの横に顔を覗かせてくる。
「ふん!」
「ぐほっ」
無情にも才人の顔面に鉄拳が命中、そのまま床に崩れ落ちる。
「あんたは黙ってなさい」
ルイズはオーク鬼のような世にも恐ろしい形相で首根っこを...
「あなた方は仲がよろしいのですね」
変わらない笑顔でアンリエッタが仲裁に入ってくる。
「そ、そんなことありません。誰がこんな犬と!」
「犬?」
「あっいえ、なんでもありません」
ルイズは憮然とした態度で離れていく、少しくらい同意して...
「本当に、仲がいいですわね・・・・・・」
「それでは今夜待っていますわ」
部屋から出て行くルイズと才人を見送りながらアンリエッタ...
そして王座に長く大きな息を吐きながらどっかりと座り込む。
「夜の晩餐会、一人だけで来てくれればいいのですが・・・・・・」
しかしメイジと使い魔は一心同体とも言われている、こちら...
ましてや自分はこの国の皇女である、まったく心労ばかり溜...
すべてを捨てて逃げようともした、誰かに操られているヴェ...
でもダメだった。生まれ持った楔から抜け出そうなんて所詮...
水の精霊に他の誰かを愛することを誓ってからずっと悩んで...
私にはあなたしかいないとも考えていた、あなたがいなけれ...
今は思い出すたびに失った深い悲しみと操り主への強大な怒...
コンコン、ドアを叩く音が聞こえてアンリエッタはわれに返...
「入りなさい」
ドレスの乱れをチェックして勤めて冷静を装ってから入室を...
「お疲れのようですな、休息は大事ですぞ」
マザリーニ枢機卿が年寄りらしくゆっくりと入ってくる。
「なるべくそうしたいところですが周りは待ってくれませんわ」
「まったく持ってその通りですな」
近頃は戦争開戦間近である。国が滅びるか否かを決める大事...
「午後の予定ですが・・・・・・」
早く終わらせて晩餐会の準備をしないと、大事な話もあるこ...
「何か言いましたかな?」
「い、いえ、何でもありませんわ」
どうやら声に出てしまっていたらしい、それだけまた会える...
「どうぞ話を続けてください」
ルイズと才人は情報集めのために働いていた魅惑の妖精亭へ...
ところが夜アンリエッタに誘われたのでつい先ほどもう一泊...
「あらぁ〜、せっかく今夜は私たちで簡単なパーティーをしよ...
スカロンが体をくねらせながら話始める。
相変わらずの気持ち悪さに胃が競りあがってくる、どうして...
「せっかくご用意していただいたのに、申し訳ありません」
いちおうこちらは従業員なのでルイズは敬意を払って答える。
「でも皇女様にお呼ばれなんてとても名誉なことね、こっちの...
「まったく、店まで休みにしようと計画していたのになぁ」
奥の厨房からジェシカが珍しく残念そうにしながら出てくる。
「なんたってあなた達はこの店にとっては英雄なんだからね」
もしかして店で忘却武人に振舞ってた役人をルイズが追い返...
「別にそこまで感謝されるような事でもないだろ」
「そんなことないわよ〜ん」
「うわっ!」
スカロンの顔が瞬時に才人の目の前に現れたので思わず後ろ...
「あらぁ、どうしたの?」
「いえっ何でもありませんよ、はははっ」
本人の前で理由など当然言えるはずがない、この思いも今日...
無礼な態度を取ったせいか横からルイズの不機嫌オーラがひ...
「でもせっかく用意してもらってるのにもったいないよな」
「気にする必要なんてないわよ、こっちが勝手に計画立ててた...
せっかくの好意を邪険に扱うのは失礼というものだが、アン...
やっぱり店のパーティーは諦めるしかないか、才人は自分を...
「でも誘いを断るのも貴族としては良くないわね」
ルイズは手をあごにつけて「う〜ん」と唸っている。
確かにそうかもしれないけどしょうがねぇだろ、まったく貴...
スカロン店長もジェシカも気にしないでと言ってくれてるん...
「よし、決めたわ」
ルイズが手をポンっと叩いた。
「仕方ないから私一人で姫様の晩餐会に行くわ」
なんですと?
「さい、お兄様はこっちのパーティーに出なさい」
「えええぇぇぇぇ!」
そんな提案考えてもいなかった、確かに俺は使い魔だし平民...
だからって二手に分かれるなんてありですか? ルイズさん。
というかもうばれてるんだから兄弟のふりしなくてもいいよ...
「あらら、本当にいいの?」
「いいです、お兄様にはきちんとしたマナーを徹底教育してお...
おいおい貴族じゃあるまいし。
「それは助かるわ、店の女の子達も喜ぶしね」
俺って実は人気あったりするのか、やっぱりセクハラしよう...
「何にやけてんのよ、やっぱり教育が必要なようね」
やばい! それだけは勘弁してください、決して店の子には...
「あっはっは、そんなんじゃないわよ。仕事が休みになるから...
それならそうと最初から言ってくれよ、もう少しで地獄を見...
まぁアンリエッタに会えないのは残念だけど、堅苦しいのよ...
「まったくすぐ調子に乗るんだから。これでいいわね、お兄様」
「はい妹さま」
別に構わないけどさ、俺に拒否権なんてあるはずもないよな。
「さて私は晩餐会に出るために宮廷に行くけど」
そう言いながらルイズは顔を近づけてくる。
「あんたは私の使い魔なんだから、他の子に尻尾振ったらだめ...
念を押される、すでに何十回も聞いた言葉なので耳にたこが...
「わかってるって、大丈夫だよ」
「本当かしら」
疑いのまなざしが痛いよルイズさん、俺ってそんなに信用が...
「大丈夫だって」
「姫様にしたように他の子にキ、キスしたら許さないからね」
なるほどそれか、なんで置いて行かれるのか理由がわかった。
あのときのことを思い出すのと震えがきてしまう。二度とし...
いざというときのためにデルフを用意しておきます、さすが...
「まぁいいわ」
ルイズはようやく離れてそのままドアへと向かっていく。ふ...
「いってらっしゃーい」
能天気に才人は見送っている。
ルイズはその様子を見てさらに心配になった。
素直になれば済む問題なのだが、どうにもそうなれないルイ...
「やっぱり連れて行ったほうがいいかしら、でも姫様とは前科...
ルイズは息を吐き出すように弱々しくつぶやいた。
今回は公式に呼ばれているわけではなく個人的な用事という...
すでに陽は沈み、宮廷の周りということもあり騒ぐ者は当然...
なのでアンリエッタとの思い出話に花を咲かそうといろいろ...
それもそのはず、ルイズは学院で魔法成功率0パーセント、...
伝説の虚無の系統を唱えられる現在もアンリエッタ以外の他...
一部例外はいるものの自分の力を話せて信頼してくれる数少...
姫とそれに使える貴族という壁があっても友達という仲が崩...
「止まれ、この宮廷に何用だ」
入ろうとすると門を見張る衛兵に止められる。
「失礼、私はこういう者です」
ルイズはアンリエッタに早く会いたかったのでさっさと許可...
「こ、これはご無礼をお許しください!」
「お仕事頑張ってくださいね」
「はい!」
らしくもなくルイズは下っ端兵士をあしらった、魅惑の妖精...
それにますます気を良くしたのか意気揚々と門を通り抜けて...
出入り口となる大きな扉を、仕事を忘れ眠りそうになってい...
「このことは是非誰にも言わないようにお願いいたします」
ルイズは懇願されたので一回首を縦に振った。ちなみに報告...
弱みは握っておけば後々役に立つ、これも魅惑の妖精亭で身...
「ルイズ・フランソワーズ様でございますか?」
メイド服姿の女性に呼び止められた。
「そうです」
「皇女様より話をうかがっております、こちらへどうぞ」
給仕がいつも通される謁見室とはちがう方向へと進んでいく。
「どこに行かれるのですか?」
ルイズは方向を間違えている可能性もあるので念のためにた...
「皇女様の寝室にございます」
部屋に通されるなんてものすごい名誉でありこんなに嬉しい...
曲がり角の多い複雑な道だったがほどなくして一番奥と思わ...
コンコン、と給仕がドアを軽くノックする。
「皇女様、ルイズ・フランソワーズ様をお連れしました」
「ご苦労様、入りなさい」
部屋の中からアンリエッタの声が聞こえてくる。
給仕がドアを開けながら「ごゆっくり」と言う、それに対し...
部屋の中に入るとドアが閉められる、そして気配が遠く離れ...
「あぁルイズ、今日は来てくれてありがとう」
「姫様のお誘いを断るはずがありませんわ」
二人は気配が消えたのを確認すると抱擁しあった。
「ありがとうルイズ、ところでサ、使い魔は来ていないのです...
「つ、使い魔は仕事がありますので」
予想だにしない質問に驚くルイズ、やっぱりサイトに何かさ...
キス以上のことを無理やり・・・・・・そうだとすれば絶対許せな...
アンリエッタに聞くなんて失礼気回りないので、とりあえず...
「そうですか、それでは二人で楽しみましょう」
ルイズはアンリエッタの心の内がよくわからないので不安に...
アンリエッタの寝室はやはり身分相応の部屋であった。
ルイズも貴族なので家に帰れば豪邸に住んでいて、部屋に入...
しかしアンリエッタの部屋はそれに加えて、部屋に誰でも知...
小物一つ一つにも宝石が無数ちりばめられている。才人が来...
二人は部屋の中心にある円形のテーブルを囲んでそれぞれ座...
「姫様、このお飲み物は何ですか?」
「それは東方より取り寄せたおさけというものですわ」
「おさけ?」
ルイズは聞きなれない名称につい繰り返してしまう。
「そうです、何でも東方のワインと商人の間では呼ばれている...
アンリエッタがグラスにお酒を注ぎ始める。
「いけません姫様、そのようなことは私が」
「ルイズ、私たちは友達でしょう。友達に身分なんて関係あり...
いつもそう言ってくれるのはありがたいことなのだが、つい...
せっかくの晩餐会の雰囲気が自分の軽率な発言で変にならな...
「では乾杯しましょう」
差し出されたグラスをルイズは手に取った。そしてお互いに...
「「乾杯」」
ルイズはお酒を一口飲んでみる、なんかワインとちがって上...
見ればアンリエッタも飲むのが始めてだったみたいで、口に...
寝かせる期間が足りないわね、という感想をルイズは持った。
アルコールはあまり得意ではないのだが残すのも失礼なので...
出だしはなんとなくギクシャクしていた二人だったが、話し...
ルイズが店であった出来事から始まり、アンリエッタの仕事...
もちろんルイズは才人のことはなるべく伏せていたが。
いくら酔いが助けていても何時間も経てばさすがに女性同士...
お酒のビンも何本かあったが、そのうち味になれて飲む速度...
飲む量はアンリエッタの方が圧倒的に多かったのでハラハラ...
黙っている時間も増えてきてそろそろお開きかしら、などと...
「ねぇルイズ」
アンリエッタはさきほどまでのにこやかな表情とは違って真...
「はい、なんでしょうか」
また悩みを抱えていて依頼したい任務があるのかもしれない...
姫様を、友達として全力でお仕えしたいと心の底から思って...
「好きな人はいるのかしら」
「へっ」
才人が思い浮かんできたのだが、それはないと頭を横にブン...
それにしても突然こんな質問するなんてやっぱり姫様は才人...
「い、いません」
否定はしてみたものの声は裏返っていて誰でも嘘と見抜けて...
「やっぱりあなたは使い魔、いやっサイトのことを・・・・・・」
「姫様! あのような使い魔を名前で呼ぶなどと」
なんでこんなにあせっているのかルイズにはよくわからなか...
「きっとサイトも、ルイズのことを・・・・・・」
アンリエッタの顔がみるみる悲しいものへと変化していく。
「そんなことは絶対にありえません、サイトはどんな女の子の...
「彼は確かに普段は気が抜けたような顔をしていますが紳士で...
町の宿屋でサイトと一泊した時、ヴェールズを失った寂しさ...
「紳士だなんて、あの犬が!」
乳メイドやキュルケにジェシカ、胸がでかい子にはかならず...
「サイトの気持ちは聞くことはかないません。だから今いるル...
ルイズはアンリエッタが今度何を言い出すのかとても不安に...
多分才人のことだとは予測がつくが、もし告白でもされたら...
一国の皇女と平民が結婚するなんて普通ならありえないこと...
いくらゲルマニアとの縁談が無くなったから、才人にやさし...
「な、なんでしょうか」
なんとしても阻止しないといけない、アンリエッタ様と私の...
だって私は才人のことが・・・・・・何を考えているのかしら、と...
「ルイズはサイトのことをどう考えているのかしら」
「私が、サイトのことをですか」
予測したとおりの質問だったが答えることができない。ルイ...
確かに才人を見られると恥ずかしくなってしまう、鼓動がど...
最初はなんとも思っていなかったのに、着替えるところを見...
惚れ薬の呪いを解いてもらったときだって甘い言葉でもかけ...
アルビオンから風竜に乗って帰るときは寝ている私にキキキ...
それでも、才人はご主人様のことをいつもほっといて他の子...
他の子の大きな乳に目がいく、メイドと風呂に入った、魅了...
ろくでもないやつだわ。でも私の心にはいつも才人がいる、...
「どうなのですか、ルイズ」
「わ、わた、しは」
ルイズは混乱しかけていて態度が煮え切らない。
「やっぱり、サイトのことを」
「そ、そんなことは・・・・・・」
そうです、と言いたい気持ちはもちろんあるのだが相変わら...
才人の浮気とも取れる行動も助けてつい否定的になってしま...
「で、では、姫様はササ、サイトをどう思っておいでですか?」
「私ですか?」
アンリエッタは深呼吸を深く一回した。
「私はサイトのことはなんとも思っておりません」
意外なほどにアンリエッタの口調ははっきりしていた。
「確かに一時期な気の迷いもありました。しかしそれは間違い...
気の迷い、間違いですって。ルイズの内でみるみる怒りが育...
「私が本当に好きなのは・・・・・・」
誰が本当に好きだって言うのよ。
「ルイズ・フランソワーズ、あなたです」
「へっ?」
ひ、姫様、今、ルイズ・フランソワーズって、それは何かの...
「も、もう一度お願いしてもよろしいですか? よく聞こえな...
台本を棒読みしているかのように聞き返した。
アンリエッタは何も言わずに立ち上がった、そしてテーブル...
「ひひひ、姫様」
ルイズの視界が目をつむったアンリエッタだけになる。
窓には二人が口付けを交わしている姿が映し出されていた。
「んっ・・・・・・」
想いを遂げた相手のやわらかなぬくもりが唇を通して伝わっ...
さきほどの怒りはどこへやら、ルイズは倒れそうになるくら...
アンリエッタは唇を離して今度は抱きついてくる。
二人分の体重でイスがぐらついたので反射的にルイズはアン...
その結果、抱き合っているような格好になっていた。アンリ...
「ルイズ、覚えていますか?」
「何を、でしょうか?」
ルイズはアンリエッタを拒むことができないでいた。
なぜかわかる気がしたのだ、内に秘めている寂しさ、複雑な...
孤独に悩んでいるよりもそれを分かち合ってほしい、今は関...
ヴェールズ皇太子の死、その悲しさから錯乱しているのでは...
「幼少のころ、雪が振る宮廷の庭園で誓ったことを」
ルイズはしばらく記憶の隅を探る、そしてハッとした。
「まさか!」
「雪まみれになりながら結婚式を執り行って、永遠に結ばれる...
ルイズは両手で慌ててアンリエッタを引き離して顔を見合わ...
「そ、それは遊びでございます!」
「ルイズ、私はあの時本気でした」
幼少のころとはいえ本気で愛されていた? 衝撃の事実がル...
「でも、姫様にはヴェールズ皇太子が・・・・・・」
「確かにヴェールズ様に心を奪われてしまいました、それは認...
アンリエッタの表情は悲しいものへとなっていく。
「失った悲しみをサイトに埋めて貰おうとしたりもしました。...
思いがけない強い口調にルイズは固まってしまった。
「ルイズ、愛しているのです。ずっと想いを抑えてきたのです...
アンリエッタの瞳から涙がポロポロと流れ始める。
それにつられてなのか、告白されたせいなのか、自分でもわ...
二人は肩を震わせて泣き続けた、それが収まるまで再び強く...
指先で涙を拭い、アンリエッタはルイズから離れていった。
「・・・・・・泣いたら気分が少し晴れました」
しゃべっているアンリエッタはまるで部下に命じるかのごと...
「さきほどは申し訳ありませんでした」
そのようなことをおっしゃらないでください。
「今日のことは、忘れてください」
どうしてなんですか。
「もうこうして会うことも無いでしょう」
私は決して・・・・・・。
「今使いの者を呼んで外まで案内させます」
嫌なんて気持ちはまったく。
「さようなら、ルイズ・・・・・・フランソワーズ」
なかったのに。
「姫様!」
気が付けば誰かを呼ぼうとしているアンリエッタを止めてい...
「何をするのですかルイズ・フランソワーズ。これは命令です...
「姫様は卑怯でございます! ご自分のお気持ちを一方的に話...
アンリエッタの動きが静まっていく。
「私は、姫様のことを」
想いを必死にぶつけてくれた。
強く自分を見せているけど本当はとても弱くて。
私にとっても昔からとても大切な人だった。
「あ、ああ愛しています」
「本当? 本当に」
ルイズはお返しと言わんばかりに先に抱きしめる。
「はい、今まで寂しい想いをさせて申し訳ありませんでした」
「あぁルイズ、もっとあなたを感じさせて」
それに答えるように手の力を強めた。
子供のように小さく見えるアンリエッタが愛しくて仕方がな...
「ルイズ、お願いがあるのだけど」
「なんでしょうか」
「私のこと、姫様ではなくて名前で呼んでくほしいのです」
確かに恋人になっても他人行儀ではおかしいのでルイズは照...
「それでは・・・・・・アンリエッタ様」
「様なんてつけないでちょうだい」
「すみません。ア、アンリエッタさ・・・・・・申し訳ありません」
恥じらいもあって顔を真っ赤にさせてうつむいてしまう。
自分が情けないことこの上なかった。
「ルイズ、強要しているわけではないのです。ですから、私の...
「そんなことは・・・・・・」
見ればアンリエッタは両手で顔を覆い隠していまにも泣きそ...
「アンリエッタ!」
気付けば本名を叫んでいた。そしてアンリエッタの元へと飛...
しかしアンリエッタが両手を開けば子悪魔のようにくすくす...
「アンリエッタ」
「ごめんなさいね。ルイズがとてもかわいらしくて」
不思議と嫌な感じがしなくて私もつられて笑ってしまった。
どうしてだろうか、その自問自答に対しての解答は容易にで...
私はいつも一人のような気がしていた。
皆にバカにされて、親にはいつも怒られて、才人も私の気持...
アンリエッタも同じだった。この広い監獄の中で誰にも助け...
でも、もうそんなことはなくなる。私にはアンリエッタが、...
「ねぇ、ルイズ」
アンリエッタが会話を再会させる。
「こんなときに言うのは不謹慎かもしれませんけど、戦争が終...
「雪ですか」
「そう、二人の思い出だから」
アンリエッタが窓へと歩み始める。そして呪文の詠唱を始め...
水と風の2乗、空中に発生させた氷の塊を風の刃で細かくカッ...
「わぁ!」
ルイズは思わず歓喜の声を上げて窓へと駆け寄った。
それもそのはず、季節は夏だというのに窓の外には白銀の世...
魔法の織り成す美しい世界、アンリエッタの贈り物に見とれ...
程なくして暑さにより雪は溶けてしまったがルイズにはそれ...
「アンリエッタ・・・・・・ありがとうございます」
「ルイズ・・・・・・」
アンリエッタに肩を引き寄せられる。
庭師によって綺麗に整備された変哲もない景色を、まだ雪が...
「パーティーの始まりよ、妖精さん達」
スカロンの大きな声が店内にこだました。
「はい、ミ・マドモワゼル!」
並んでいる従業員の女の子たちが一斉に返事をする。
「そして今日の主役はサイト君で〜す」
「きゃ〜!」
無数のクラッカーが打ち鳴らされるなか、厨房から才人が姿...
ちなみに従業員の叫び声は盛り上げるためにわざとやってい...
「始める前に皆さんにいくつか言うことがあります」
「はい、ミ・マドモワゼル!」
スカロンがいつもの仕事の癖で諸注意を始めてしまう。
その時間の退屈しのぎとしてジェシカは才人にしゃべりかけ...
「一人で寂しくないの? お兄様」
「・・・・・・いいんだこれで。俺はアンの気持ちを知ってるんだか...
アンと宿で、アルビオンへの内通者の話をした後だった。
「もしあなたなら、ずっと想いを寄せている人に告白をされま...
「俺のことでしたら、さっきも言いましたが俺は王子にはなれ...
「あなたもとても素敵なお方ですわ、ですが違うお方なのです」
「差し支えなければ、教えていただけますか」
「・・・・・・あなたにとっても、私にとってもとても身近な人です...
「身近な人、ですか」
「そうです。サイト、これからもルイズのことを守ってあげて...
「もちろんです」
「ありがとうございます。お互いに大切な人なのですから」
「まかしてください・・・・・・もしかしてアン、好きな人って」
嘘をついていなかった、言葉として聞かなくてもアンの顔が...
そして今日の今現在ルイズとアンは二人きり、告白したって...
同性愛、確かにありえないことなのかもしれない。
でも俺の世界には少数とはいえ普通に存在していて犯罪とい...
恥ずかしいことじゃない、もしルイズとアンが付き合いだし...
俺はルイズのことが好きだ。でもアンを支えてあげる人がい...
ヴェールズ皇太子が死んでしまった今それができるのは、心...
だからもしルイズがアンを選んでも、ワルドの時みたいにル...
俺は、俺は喜んで二人の幸せを・・・・・・祝福してやるつもりだ。
「アンって誰よ、もしかして浮気でもしてるの?」
さすがの鋭い町娘も皇女様は想像つかないようだった。それ...
「それでは妖精さんたち、パーティーを始めまーす」
俺は盛り上がるその場を無言で立ち上がった。
「ちょっとどこ行くのよ」
「便所」
ある結末が頭に浮かんで、ジェシカにこれ以上追及されると...
「べんじょって・・・・・・何?」
始めて見る相手の生まれたままの姿、初めて見せる自分の生...
二人はベッドでアンリエッタを上にして裸のままで向き合っ...
恥ずかしくて互いに視線を合わせようとせず、沈黙に身を任...
「ア、アンリエッタ」
ルイズは声をかけてみたものの、どうすればいいのかわから...
「あ、あのだ、抱いてくださいまし」
「はい」
ルイズはガチガチな動きでアンリエッタの背に手を回してふ...
「暖かい、です。ルイズの温もりが感じられて」
アンリエッタは唇を重ねた。それも優しく何度もである。
「んっ、むっ・・・・・・」
続けていくうちにルイズの力が抜けていき自然と口が開き始...
「んむっ、んん」
初めはアンリエッタにされてばかりだったが、ルイズも時折...
顔を離すと二人は糸で繋がっていた。しかしその糸はすぐに...
アンリエッタは口元からそっと下を這わせてそれを舐めとっ...
「やっ・・・・・・はぁ」
「ふふふっ」
すべて綺麗にし終わった後、アンリエッタは胸を撫でようと...
「いやっ」
ルイズはとっさに声を出して両手で胸を隠す。
「どうしたんですか」
「だって、私の胸・・・・・・」
「胸が、どうかしましたか」
ルイズがとてもかわいく見えてアンリエッタはついつい悪態...
「う〜、アンリエッタのいじわる」
ルイズは眉を吊り上げて睨みつける、ただ顔が真っ赤なので...
「ごめんなさい、でも気にすることなんてありませんわ。とっ...
「そうでしょうか」
アンリエッタは「そうよ」と言わんばかりに微笑んだ。
「そ、それじゃあ」
ルイズはまだ何か反論したいようだったが、ゆっくりと胸の...
再び小さくてかわいい乳房があらわにされる。
アンリエッタは胸に指ではなく顔を近づけていく、そして口...
「それはやめっ」
片方の先端を軽く噛むと、もう片方は指でやさしくつまみ上...
「んあぁぁ」
時折口は舐めて、手で撫でまわす。経験が無いので動きはち...
「あっ、はぁ・・・・・・ふぁ」
気が付けばルイズは抱きしめる力が強くなっていた。それを...
アンリエッタの口はふと胸から離れていき、下のほうへと撫...
もう少しで秘部にたどり着きそうだったのだがルイズがしっ...
「アンリエッタは、やっぱり、卑怯ですわ」
すでに息も途切れ途切れなルイズが声を出す。
「私ばっかり、責められて、ふ、不公平ですわ」
ルイズの意外な言葉にアンリエッタは笑ってしまった。
「くすくす」
「な、どうして笑ったりするんですか」
だんだんと音量が低くなりながらも反論する。ルイズの表情...
「やっぱりあなたってどこか変わっているわね」
「う〜」
再びうなり始めるルイズをよそにアンリエッタは体を反転さ...
「アンリエッタ!」
ルイズは驚いてしまった、目と鼻の先にアンリエッタの下半...
「こうすれば一緒に気持ちよくなれますわ」
そうは言ってもやっぱり恥ずかしいのか両足は締り気味だっ...
「ひあっ!」
予想していなかった責めにアンリエッタは一瞬のけぞったが...
アンリエッタの体が下がってきたことにより、ルイズの顔が...
ルイズは窮屈なのでは手を抜き、そして躊躇することもなく...
「あんっ、ル、ルイズゥ」
すでに秘部は蜜によって濡れており、溢れている甘い匂いが...
しばらく快感に浸っていたが、アンリエッタも舌をルイズの...
責めに夢中になっていたために足のほうまで力が入りきって...
「ふあっ」
お互いが大事なところを責め合い、二人の声と蜜の音だけが...
「あっ、うっ、あ・・・・・・はぁ」
「あふぅ、んんっ、んあっ、ああ」
味わい尽くすように舌を動かし、相手を求めていく。
その動きはだんだん速くなり、それに合わせて裂け目から聞...
「ふあ!」
アンリエッタの舌が何かの突起に触れたとき、ルイズは体を...
弱点と感じ取ったその場所を集中して舐め続ける。
「ああっ、いあ、すごいの!」
雷にでも打たれたかのような快感に、ルイズはただ声を荒げ...
「あっ、いやあ、なにか、おか、おかしくなっあああぁぁぁ!...
容赦ない責めにルイズは一直線に上り詰めてしまった。しば...
アンリエッタの顔には蜜がこびりついている、それを指です...
それは甘みと苦みが混じるビターな味だった。
アンリエッタは今までの人生で一番幸せな時間を過ごしてい...
幼少時代のような遊びではなく、ヴェールズ皇太子のように...
何も欠けていなかった。望んだことがすべて現実へと浸透し...
「ふふっ」
アンリエッタは思わず笑みをこぼしてしまった。
「何がおかしいのですか」
振り向いてみるとルイズはもじもじと体を動かしている。
アンリエッタよりも先に、それも一人だけで達してしまった...
それに加えて早すぎるから笑われたのではないかと考えると...
問いの返事をするためにアンリエッタは体を反転させてルイ...
「何でもありませんわルイズ、ただ・・・・・」
「ただ、なんでしょうか」
「とても暖かいのです」
ずっと空いていた心の隙間がルイズによって埋まっていく。...
それはアンリエッタにとって幼少のころから待ち望んでいた...
王族という鎖に縛られることの無い自由であり、進化への愛...
「暖かい・・・・・・あっ」
アンリエッタはルイズの顔に付いた自分の蜜に舌を這わせて...
「さぁルイズ、夜はまだ長いのですから」
夜も更けてきた頃、アンリエッタはベルを鳴らして使いの者...
「愛していますわ、ルイズ」
「私もでございます、アンリエッタ」
ルイズは帰るためにドアを開けた、名残惜しそうにいつまで...
「ルイズ・フランソワーズ様、こちらへ」
廊下から迎えの声が聞こえてくる。
「戦争が終わったら、また会いにきます」
そう言い残しルイズはドアを閉めた。『戦争』その言葉が耳...
戦争なんて・・・・・・しないほうがいいのはわかっている。ルイ...
これもヴェールズを失った現実から逃避したかっただけなの...
「そんなことはありませんわ・・・・・・ルイズへの愛は、本物なの...
何が本当で何が嘘なのか、今は自らのしている行為を信じる...
ルイズは暗闇に明かりが差し始めた頃、魅惑の妖精亭へと帰...
もうパーティーは終わったようですっかり静まっていてスカ...
出席できなかったのを改めて謝ったあと、階段を昇っていき...
才人はすでにベッドでのんきに寝ていた。
顔を覗き込んでみると、まったくではなかったのだが不思議...
昨日まであんなにドキドキしたのにどうしてかしら。アンリ...
今だからはっきりしたけど、私は才人のことが好きだったの...
「これで・・・・・・間違ってないわよね」
自分の本心に問いただすかのごとく胸に手を当てた。確かに...
「ねぇルイズ、二人だけの結婚式をあげたいの」
「はい、では私は花を摘んでまいります」
「私はワインの代わりを探してきます」
二人の約束だった雪の振る景色をアルビオンの宿で一人寂し...
ルイズの横にいる幻が薄くなっていく、偽りのぬくもりが消...
「えーと、なんて言うのでしたかしら」
「私も忘れてしまいました。では途中まで飛ばしましょう」
「まずは誓いの杯を」
「アンリエッタ・・・・・・また会えるの?」
誰もが不安を抱えている、それを紛らわすために無理をして...
悲しみはいつか晴れる日がやってくるのでしょうか。
重圧に耐えればいつか報われる日はやってくるのでしょうか。
離れた分だけ私の中で想いが濃くなっていく、あなたが恋し...
「私はルイズを愛することを誓います」
「私はアンリエッタを愛することを誓います」
「では誓いのキスを」
朝だというのに気が付けば兵士のバカ騒ぎが聞こえてくる、...
「う〜ん」
・・・・・・才人がもうすぐ起きるようね。ご主人様より遅く起き...
アンリエッタは執務室にある始祖ブリミルの像に祈りを捧げ...
全身黒のドレスに身を包み、戦死者への追悼をしているかの...
それはもちろんのことであったが半分ほどは違っていて、二...
「私の愛するルイズとその使い魔であるサイトをお守りくださ...
あの一夜から結構な日にちが経って、冷静な頭で自分の気持...
自分のしてしまったこと、それは間違いではなかった。
もし間違いだったとしても後悔は決してしない。
どれか正しい道かなんてだれにもわかるはずもない。
だから真っ直ぐ進もう、ヴェールズ様の遺言を守るために。
そして何よりも・・・・・・私を受け入れてくれたルイズの為に。
遠く離れてしばらくたっているが、近頃はそう前向きに考え...
二人しかいない教会、二人だけの結婚式、綺麗なドレス。そ...
ルイズは詠唱していた『エクスプロージョン』の魔法を発動...
少し離れた場所にある7万もの敵陣で巨大な爆発が巻き起きる。
戦争に来る前のささやかな晩餐会。
「愛しています、ルイズ」「いつか雪を見に行きましょう」
涙が流れてくる、どうして・・・・・・こんなときに。
春先での久しぶりに再開したとき。
「あの頃は毎日が楽しかったわ」「昔の気持ちを思い出したわ」
魔法、唱えなくちゃ、いけないのに。
無邪気に遊んでいた小さいころ。
「これは二人だけの約束ですわ」「いつか結婚しましょう、ル...
目の前にせまる7万の敵勢、殿という役目、恐怖が心を支配...
もしそうすれば国が滅びる、ヴェールズ皇太子のようにアン...
もう、悔しいけど、バカ犬の言うとおり名誉なんて・・・・・・全...
「魔法を唱えなさい、私」
複雑な心のうちを無理やり無という境地で塗りつぶそうとす...
「ルイズーーー!」
いきなりの怒鳴り声に後ろを振り返ると竜のアーズロに乗っ...
「ばかやろう! 殿を引き受けるなんて、そんなに名誉が大事...
「そんなことわかってるわよ! それでも私が引いたら、国が...
アンリエッタだって、という言葉はなんとか飲み込んだ。
自分は普通ならありえない同性愛者ということは才人にまだ...
才人とジュリオが竜から飛び降りてくる。
「だからって、死んだらそれで終わりなんだぞ!」
死んだら終わり、その台詞はあなたとギーシュの口げんかの...
あなたは私のことなんか考えずに自分の本能で生きてるくせ...
「アンリエッタのことはどうする!」
「えっ・・・・・・」
どうして知っているの? サイトは店に残っていたはずなの...
「お前の帰りを待ってるんだぞ」
「あんたねぇ、姫様のことを名前で呼ぶなんて」
「そんなもんは関係ないだろ!」
ルイズの言葉は才人によってかき消される。
「また一人で寂しい思いをさせる気か?」
寂しい・・・・・・そうよね。ヴェールズ皇太子を失った本当の悲...
宮廷という名の広くて白い迷宮で日々迫りくる皇女という壁...
私だけが理解している。大切な友達だから、恋人だから。
ルイズはうつむいてしまった。
「それでも・・・・・・私が逃げたら」
そんなことはできない。例えここで逃げてアンリエッタの元...
国外逃亡なんてできるはずはない。貴族としても皇女として...
「やっぱり私」
これでいいのよ、私は伝説の虚無の担い手と呼ばれても所詮...
「・・・・・・勝手にしろ。俺もやりたいようにやるからな」
ドッ、鈍い音とともにルイズの視界が暗くなっていく。
才人がデルフリンガーの柄をルイズのお腹にぶつけていた。
「姫様にお願いされてたんだ。ルイズを守るようにってな」
「サイト・・・・・・」
気絶して崩れ落ちるルイズを才人が抱えこんだ、ジュリオに...
「ジュリオ、後は頼む」
「まかせてくれ、責任もって船まで送り届けるよ」
ジュリオは壊れ物を扱うかのようにルイズをお姫様だっこし...
「行くよ、アズーロ」
竜は鳴き声を発しながら翼を起用に羽ばたかせた、二人と一...
「さよならルイズ。アンリエッタと幸せ・・・・・・幸せに、暮らし...
才人の瞳からはいつか我慢したはずの涙が止まることなく溢...
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後日談。
「いいんじゃねえか、人間だし」
「なんだそりゃあ。まぁ俺にはよくわからなねぇが相棒が言う...
誰にでも間違いはあるなんて昔の人はいいこと言ったもんだ。
その間違いをまさしく今俺がしようとしているんだから。
でもよ・・・・・・こういうのも悪くないかな。
才人はテファニアとアニエスに別れを告げた。
「行こうぜデルフ、東のロバ・カ・・・・・・なんだっけ?」
「ルイズ、本当にいいのですか?」
「はい、才人の死をいつまでも悲しんでいられません」
ルイズは大きく一回深呼吸した後詠唱を開始する。
才人・・・・・・あなたのおかげで私は生きている。何回感謝して...
私はあなたの死を無駄にしない、もちろんアンリエッタも。
「われの運命に従いし使い魔を召喚せよ!」
目の前に白いゲートが現れる。
通るのは果たして彼なのか、それとも新たに資格を持つ者な...
終了行:
アンリエッタ×ルイズ(仮称)
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窓を通したルイズ・フランソワーズの瞳に映るのは憎らしい...
これが美しく見えるのは今が夜明けだからか、ルイズの耳に...
静寂の美景、それは見た者の心を癒すには充分すぎるほどだ...
故郷のトリスタニア、任務で来たアルビオン、血で争う戦争...
しばしの間、ルイズはすべてのことを忘れていた。
となりで自分の肩を引き寄せてくれる人のぬくもりを感じな...
―――いいんじゃねえか人間だし by才人―――
ルイズはそっと目を閉じて過去を思い出した。
夏季休暇に姫様から頼まれた情報集めの任務が終わった後の...
「お疲れ様、ルイズ・フランソワーズ。それに優しい使い魔さん」
アンリエッタは友達にしか見せない極上の笑みを見せた。
「姫様のお役に立てて光栄にございます」
ルイズは王座の前にひざまずき深く一礼をした、もちろんお...
「そんな他人行儀にならないで。私こそあなたにいつも任務を...
「もったいないお言葉にございます、姫様」
この二人がたまに会うと同じ会話が絶対起こるなぁ、と才人...
貴族同士の社交辞令とでも言うのか、とはいえアンは一国の...
『親友』と二人の関係は定義されるだろうが態度は主人と使い...
「やれやれ」
誰にも聞こえないように才人はつぶやいた。
「忠誠には報いるところが無くてはいけません、今日の夜に個...
「そんな、そのような気遣いは無用にございます」
ルイズは申し出に対して再び一礼した。
「断んのかよ」
才人は残念そうにルイズの横に顔を覗かせてくる。
「ふん!」
「ぐほっ」
無情にも才人の顔面に鉄拳が命中、そのまま床に崩れ落ちる。
「あんたは黙ってなさい」
ルイズはオーク鬼のような世にも恐ろしい形相で首根っこを...
「あなた方は仲がよろしいのですね」
変わらない笑顔でアンリエッタが仲裁に入ってくる。
「そ、そんなことありません。誰がこんな犬と!」
「犬?」
「あっいえ、なんでもありません」
ルイズは憮然とした態度で離れていく、少しくらい同意して...
「本当に、仲がいいですわね・・・・・・」
「それでは今夜待っていますわ」
部屋から出て行くルイズと才人を見送りながらアンリエッタ...
そして王座に長く大きな息を吐きながらどっかりと座り込む。
「夜の晩餐会、一人だけで来てくれればいいのですが・・・・・・」
しかしメイジと使い魔は一心同体とも言われている、こちら...
ましてや自分はこの国の皇女である、まったく心労ばかり溜...
すべてを捨てて逃げようともした、誰かに操られているヴェ...
でもダメだった。生まれ持った楔から抜け出そうなんて所詮...
水の精霊に他の誰かを愛することを誓ってからずっと悩んで...
私にはあなたしかいないとも考えていた、あなたがいなけれ...
今は思い出すたびに失った深い悲しみと操り主への強大な怒...
コンコン、ドアを叩く音が聞こえてアンリエッタはわれに返...
「入りなさい」
ドレスの乱れをチェックして勤めて冷静を装ってから入室を...
「お疲れのようですな、休息は大事ですぞ」
マザリーニ枢機卿が年寄りらしくゆっくりと入ってくる。
「なるべくそうしたいところですが周りは待ってくれませんわ」
「まったく持ってその通りですな」
近頃は戦争開戦間近である。国が滅びるか否かを決める大事...
「午後の予定ですが・・・・・・」
早く終わらせて晩餐会の準備をしないと、大事な話もあるこ...
「何か言いましたかな?」
「い、いえ、何でもありませんわ」
どうやら声に出てしまっていたらしい、それだけまた会える...
「どうぞ話を続けてください」
ルイズと才人は情報集めのために働いていた魅惑の妖精亭へ...
ところが夜アンリエッタに誘われたのでつい先ほどもう一泊...
「あらぁ〜、せっかく今夜は私たちで簡単なパーティーをしよ...
スカロンが体をくねらせながら話始める。
相変わらずの気持ち悪さに胃が競りあがってくる、どうして...
「せっかくご用意していただいたのに、申し訳ありません」
いちおうこちらは従業員なのでルイズは敬意を払って答える。
「でも皇女様にお呼ばれなんてとても名誉なことね、こっちの...
「まったく、店まで休みにしようと計画していたのになぁ」
奥の厨房からジェシカが珍しく残念そうにしながら出てくる。
「なんたってあなた達はこの店にとっては英雄なんだからね」
もしかして店で忘却武人に振舞ってた役人をルイズが追い返...
「別にそこまで感謝されるような事でもないだろ」
「そんなことないわよ〜ん」
「うわっ!」
スカロンの顔が瞬時に才人の目の前に現れたので思わず後ろ...
「あらぁ、どうしたの?」
「いえっ何でもありませんよ、はははっ」
本人の前で理由など当然言えるはずがない、この思いも今日...
無礼な態度を取ったせいか横からルイズの不機嫌オーラがひ...
「でもせっかく用意してもらってるのにもったいないよな」
「気にする必要なんてないわよ、こっちが勝手に計画立ててた...
せっかくの好意を邪険に扱うのは失礼というものだが、アン...
やっぱり店のパーティーは諦めるしかないか、才人は自分を...
「でも誘いを断るのも貴族としては良くないわね」
ルイズは手をあごにつけて「う〜ん」と唸っている。
確かにそうかもしれないけどしょうがねぇだろ、まったく貴...
スカロン店長もジェシカも気にしないでと言ってくれてるん...
「よし、決めたわ」
ルイズが手をポンっと叩いた。
「仕方ないから私一人で姫様の晩餐会に行くわ」
なんですと?
「さい、お兄様はこっちのパーティーに出なさい」
「えええぇぇぇぇ!」
そんな提案考えてもいなかった、確かに俺は使い魔だし平民...
だからって二手に分かれるなんてありですか? ルイズさん。
というかもうばれてるんだから兄弟のふりしなくてもいいよ...
「あらら、本当にいいの?」
「いいです、お兄様にはきちんとしたマナーを徹底教育してお...
おいおい貴族じゃあるまいし。
「それは助かるわ、店の女の子達も喜ぶしね」
俺って実は人気あったりするのか、やっぱりセクハラしよう...
「何にやけてんのよ、やっぱり教育が必要なようね」
やばい! それだけは勘弁してください、決して店の子には...
「あっはっは、そんなんじゃないわよ。仕事が休みになるから...
それならそうと最初から言ってくれよ、もう少しで地獄を見...
まぁアンリエッタに会えないのは残念だけど、堅苦しいのよ...
「まったくすぐ調子に乗るんだから。これでいいわね、お兄様」
「はい妹さま」
別に構わないけどさ、俺に拒否権なんてあるはずもないよな。
「さて私は晩餐会に出るために宮廷に行くけど」
そう言いながらルイズは顔を近づけてくる。
「あんたは私の使い魔なんだから、他の子に尻尾振ったらだめ...
念を押される、すでに何十回も聞いた言葉なので耳にたこが...
「わかってるって、大丈夫だよ」
「本当かしら」
疑いのまなざしが痛いよルイズさん、俺ってそんなに信用が...
「大丈夫だって」
「姫様にしたように他の子にキ、キスしたら許さないからね」
なるほどそれか、なんで置いて行かれるのか理由がわかった。
あのときのことを思い出すのと震えがきてしまう。二度とし...
いざというときのためにデルフを用意しておきます、さすが...
「まぁいいわ」
ルイズはようやく離れてそのままドアへと向かっていく。ふ...
「いってらっしゃーい」
能天気に才人は見送っている。
ルイズはその様子を見てさらに心配になった。
素直になれば済む問題なのだが、どうにもそうなれないルイ...
「やっぱり連れて行ったほうがいいかしら、でも姫様とは前科...
ルイズは息を吐き出すように弱々しくつぶやいた。
今回は公式に呼ばれているわけではなく個人的な用事という...
すでに陽は沈み、宮廷の周りということもあり騒ぐ者は当然...
なのでアンリエッタとの思い出話に花を咲かそうといろいろ...
それもそのはず、ルイズは学院で魔法成功率0パーセント、...
伝説の虚無の系統を唱えられる現在もアンリエッタ以外の他...
一部例外はいるものの自分の力を話せて信頼してくれる数少...
姫とそれに使える貴族という壁があっても友達という仲が崩...
「止まれ、この宮廷に何用だ」
入ろうとすると門を見張る衛兵に止められる。
「失礼、私はこういう者です」
ルイズはアンリエッタに早く会いたかったのでさっさと許可...
「こ、これはご無礼をお許しください!」
「お仕事頑張ってくださいね」
「はい!」
らしくもなくルイズは下っ端兵士をあしらった、魅惑の妖精...
それにますます気を良くしたのか意気揚々と門を通り抜けて...
出入り口となる大きな扉を、仕事を忘れ眠りそうになってい...
「このことは是非誰にも言わないようにお願いいたします」
ルイズは懇願されたので一回首を縦に振った。ちなみに報告...
弱みは握っておけば後々役に立つ、これも魅惑の妖精亭で身...
「ルイズ・フランソワーズ様でございますか?」
メイド服姿の女性に呼び止められた。
「そうです」
「皇女様より話をうかがっております、こちらへどうぞ」
給仕がいつも通される謁見室とはちがう方向へと進んでいく。
「どこに行かれるのですか?」
ルイズは方向を間違えている可能性もあるので念のためにた...
「皇女様の寝室にございます」
部屋に通されるなんてものすごい名誉でありこんなに嬉しい...
曲がり角の多い複雑な道だったがほどなくして一番奥と思わ...
コンコン、と給仕がドアを軽くノックする。
「皇女様、ルイズ・フランソワーズ様をお連れしました」
「ご苦労様、入りなさい」
部屋の中からアンリエッタの声が聞こえてくる。
給仕がドアを開けながら「ごゆっくり」と言う、それに対し...
部屋の中に入るとドアが閉められる、そして気配が遠く離れ...
「あぁルイズ、今日は来てくれてありがとう」
「姫様のお誘いを断るはずがありませんわ」
二人は気配が消えたのを確認すると抱擁しあった。
「ありがとうルイズ、ところでサ、使い魔は来ていないのです...
「つ、使い魔は仕事がありますので」
予想だにしない質問に驚くルイズ、やっぱりサイトに何かさ...
キス以上のことを無理やり・・・・・・そうだとすれば絶対許せな...
アンリエッタに聞くなんて失礼気回りないので、とりあえず...
「そうですか、それでは二人で楽しみましょう」
ルイズはアンリエッタの心の内がよくわからないので不安に...
アンリエッタの寝室はやはり身分相応の部屋であった。
ルイズも貴族なので家に帰れば豪邸に住んでいて、部屋に入...
しかしアンリエッタの部屋はそれに加えて、部屋に誰でも知...
小物一つ一つにも宝石が無数ちりばめられている。才人が来...
二人は部屋の中心にある円形のテーブルを囲んでそれぞれ座...
「姫様、このお飲み物は何ですか?」
「それは東方より取り寄せたおさけというものですわ」
「おさけ?」
ルイズは聞きなれない名称につい繰り返してしまう。
「そうです、何でも東方のワインと商人の間では呼ばれている...
アンリエッタがグラスにお酒を注ぎ始める。
「いけません姫様、そのようなことは私が」
「ルイズ、私たちは友達でしょう。友達に身分なんて関係あり...
いつもそう言ってくれるのはありがたいことなのだが、つい...
せっかくの晩餐会の雰囲気が自分の軽率な発言で変にならな...
「では乾杯しましょう」
差し出されたグラスをルイズは手に取った。そしてお互いに...
「「乾杯」」
ルイズはお酒を一口飲んでみる、なんかワインとちがって上...
見ればアンリエッタも飲むのが始めてだったみたいで、口に...
寝かせる期間が足りないわね、という感想をルイズは持った。
アルコールはあまり得意ではないのだが残すのも失礼なので...
出だしはなんとなくギクシャクしていた二人だったが、話し...
ルイズが店であった出来事から始まり、アンリエッタの仕事...
もちろんルイズは才人のことはなるべく伏せていたが。
いくら酔いが助けていても何時間も経てばさすがに女性同士...
お酒のビンも何本かあったが、そのうち味になれて飲む速度...
飲む量はアンリエッタの方が圧倒的に多かったのでハラハラ...
黙っている時間も増えてきてそろそろお開きかしら、などと...
「ねぇルイズ」
アンリエッタはさきほどまでのにこやかな表情とは違って真...
「はい、なんでしょうか」
また悩みを抱えていて依頼したい任務があるのかもしれない...
姫様を、友達として全力でお仕えしたいと心の底から思って...
「好きな人はいるのかしら」
「へっ」
才人が思い浮かんできたのだが、それはないと頭を横にブン...
それにしても突然こんな質問するなんてやっぱり姫様は才人...
「い、いません」
否定はしてみたものの声は裏返っていて誰でも嘘と見抜けて...
「やっぱりあなたは使い魔、いやっサイトのことを・・・・・・」
「姫様! あのような使い魔を名前で呼ぶなどと」
なんでこんなにあせっているのかルイズにはよくわからなか...
「きっとサイトも、ルイズのことを・・・・・・」
アンリエッタの顔がみるみる悲しいものへと変化していく。
「そんなことは絶対にありえません、サイトはどんな女の子の...
「彼は確かに普段は気が抜けたような顔をしていますが紳士で...
町の宿屋でサイトと一泊した時、ヴェールズを失った寂しさ...
「紳士だなんて、あの犬が!」
乳メイドやキュルケにジェシカ、胸がでかい子にはかならず...
「サイトの気持ちは聞くことはかないません。だから今いるル...
ルイズはアンリエッタが今度何を言い出すのかとても不安に...
多分才人のことだとは予測がつくが、もし告白でもされたら...
一国の皇女と平民が結婚するなんて普通ならありえないこと...
いくらゲルマニアとの縁談が無くなったから、才人にやさし...
「な、なんでしょうか」
なんとしても阻止しないといけない、アンリエッタ様と私の...
だって私は才人のことが・・・・・・何を考えているのかしら、と...
「ルイズはサイトのことをどう考えているのかしら」
「私が、サイトのことをですか」
予測したとおりの質問だったが答えることができない。ルイ...
確かに才人を見られると恥ずかしくなってしまう、鼓動がど...
最初はなんとも思っていなかったのに、着替えるところを見...
惚れ薬の呪いを解いてもらったときだって甘い言葉でもかけ...
アルビオンから風竜に乗って帰るときは寝ている私にキキキ...
それでも、才人はご主人様のことをいつもほっといて他の子...
他の子の大きな乳に目がいく、メイドと風呂に入った、魅了...
ろくでもないやつだわ。でも私の心にはいつも才人がいる、...
「どうなのですか、ルイズ」
「わ、わた、しは」
ルイズは混乱しかけていて態度が煮え切らない。
「やっぱり、サイトのことを」
「そ、そんなことは・・・・・・」
そうです、と言いたい気持ちはもちろんあるのだが相変わら...
才人の浮気とも取れる行動も助けてつい否定的になってしま...
「で、では、姫様はササ、サイトをどう思っておいでですか?」
「私ですか?」
アンリエッタは深呼吸を深く一回した。
「私はサイトのことはなんとも思っておりません」
意外なほどにアンリエッタの口調ははっきりしていた。
「確かに一時期な気の迷いもありました。しかしそれは間違い...
気の迷い、間違いですって。ルイズの内でみるみる怒りが育...
「私が本当に好きなのは・・・・・・」
誰が本当に好きだって言うのよ。
「ルイズ・フランソワーズ、あなたです」
「へっ?」
ひ、姫様、今、ルイズ・フランソワーズって、それは何かの...
「も、もう一度お願いしてもよろしいですか? よく聞こえな...
台本を棒読みしているかのように聞き返した。
アンリエッタは何も言わずに立ち上がった、そしてテーブル...
「ひひひ、姫様」
ルイズの視界が目をつむったアンリエッタだけになる。
窓には二人が口付けを交わしている姿が映し出されていた。
「んっ・・・・・・」
想いを遂げた相手のやわらかなぬくもりが唇を通して伝わっ...
さきほどの怒りはどこへやら、ルイズは倒れそうになるくら...
アンリエッタは唇を離して今度は抱きついてくる。
二人分の体重でイスがぐらついたので反射的にルイズはアン...
その結果、抱き合っているような格好になっていた。アンリ...
「ルイズ、覚えていますか?」
「何を、でしょうか?」
ルイズはアンリエッタを拒むことができないでいた。
なぜかわかる気がしたのだ、内に秘めている寂しさ、複雑な...
孤独に悩んでいるよりもそれを分かち合ってほしい、今は関...
ヴェールズ皇太子の死、その悲しさから錯乱しているのでは...
「幼少のころ、雪が振る宮廷の庭園で誓ったことを」
ルイズはしばらく記憶の隅を探る、そしてハッとした。
「まさか!」
「雪まみれになりながら結婚式を執り行って、永遠に結ばれる...
ルイズは両手で慌ててアンリエッタを引き離して顔を見合わ...
「そ、それは遊びでございます!」
「ルイズ、私はあの時本気でした」
幼少のころとはいえ本気で愛されていた? 衝撃の事実がル...
「でも、姫様にはヴェールズ皇太子が・・・・・・」
「確かにヴェールズ様に心を奪われてしまいました、それは認...
アンリエッタの表情は悲しいものへとなっていく。
「失った悲しみをサイトに埋めて貰おうとしたりもしました。...
思いがけない強い口調にルイズは固まってしまった。
「ルイズ、愛しているのです。ずっと想いを抑えてきたのです...
アンリエッタの瞳から涙がポロポロと流れ始める。
それにつられてなのか、告白されたせいなのか、自分でもわ...
二人は肩を震わせて泣き続けた、それが収まるまで再び強く...
指先で涙を拭い、アンリエッタはルイズから離れていった。
「・・・・・・泣いたら気分が少し晴れました」
しゃべっているアンリエッタはまるで部下に命じるかのごと...
「さきほどは申し訳ありませんでした」
そのようなことをおっしゃらないでください。
「今日のことは、忘れてください」
どうしてなんですか。
「もうこうして会うことも無いでしょう」
私は決して・・・・・・。
「今使いの者を呼んで外まで案内させます」
嫌なんて気持ちはまったく。
「さようなら、ルイズ・・・・・・フランソワーズ」
なかったのに。
「姫様!」
気が付けば誰かを呼ぼうとしているアンリエッタを止めてい...
「何をするのですかルイズ・フランソワーズ。これは命令です...
「姫様は卑怯でございます! ご自分のお気持ちを一方的に話...
アンリエッタの動きが静まっていく。
「私は、姫様のことを」
想いを必死にぶつけてくれた。
強く自分を見せているけど本当はとても弱くて。
私にとっても昔からとても大切な人だった。
「あ、ああ愛しています」
「本当? 本当に」
ルイズはお返しと言わんばかりに先に抱きしめる。
「はい、今まで寂しい想いをさせて申し訳ありませんでした」
「あぁルイズ、もっとあなたを感じさせて」
それに答えるように手の力を強めた。
子供のように小さく見えるアンリエッタが愛しくて仕方がな...
「ルイズ、お願いがあるのだけど」
「なんでしょうか」
「私のこと、姫様ではなくて名前で呼んでくほしいのです」
確かに恋人になっても他人行儀ではおかしいのでルイズは照...
「それでは・・・・・・アンリエッタ様」
「様なんてつけないでちょうだい」
「すみません。ア、アンリエッタさ・・・・・・申し訳ありません」
恥じらいもあって顔を真っ赤にさせてうつむいてしまう。
自分が情けないことこの上なかった。
「ルイズ、強要しているわけではないのです。ですから、私の...
「そんなことは・・・・・・」
見ればアンリエッタは両手で顔を覆い隠していまにも泣きそ...
「アンリエッタ!」
気付けば本名を叫んでいた。そしてアンリエッタの元へと飛...
しかしアンリエッタが両手を開けば子悪魔のようにくすくす...
「アンリエッタ」
「ごめんなさいね。ルイズがとてもかわいらしくて」
不思議と嫌な感じがしなくて私もつられて笑ってしまった。
どうしてだろうか、その自問自答に対しての解答は容易にで...
私はいつも一人のような気がしていた。
皆にバカにされて、親にはいつも怒られて、才人も私の気持...
アンリエッタも同じだった。この広い監獄の中で誰にも助け...
でも、もうそんなことはなくなる。私にはアンリエッタが、...
「ねぇ、ルイズ」
アンリエッタが会話を再会させる。
「こんなときに言うのは不謹慎かもしれませんけど、戦争が終...
「雪ですか」
「そう、二人の思い出だから」
アンリエッタが窓へと歩み始める。そして呪文の詠唱を始め...
水と風の2乗、空中に発生させた氷の塊を風の刃で細かくカッ...
「わぁ!」
ルイズは思わず歓喜の声を上げて窓へと駆け寄った。
それもそのはず、季節は夏だというのに窓の外には白銀の世...
魔法の織り成す美しい世界、アンリエッタの贈り物に見とれ...
程なくして暑さにより雪は溶けてしまったがルイズにはそれ...
「アンリエッタ・・・・・・ありがとうございます」
「ルイズ・・・・・・」
アンリエッタに肩を引き寄せられる。
庭師によって綺麗に整備された変哲もない景色を、まだ雪が...
「パーティーの始まりよ、妖精さん達」
スカロンの大きな声が店内にこだました。
「はい、ミ・マドモワゼル!」
並んでいる従業員の女の子たちが一斉に返事をする。
「そして今日の主役はサイト君で〜す」
「きゃ〜!」
無数のクラッカーが打ち鳴らされるなか、厨房から才人が姿...
ちなみに従業員の叫び声は盛り上げるためにわざとやってい...
「始める前に皆さんにいくつか言うことがあります」
「はい、ミ・マドモワゼル!」
スカロンがいつもの仕事の癖で諸注意を始めてしまう。
その時間の退屈しのぎとしてジェシカは才人にしゃべりかけ...
「一人で寂しくないの? お兄様」
「・・・・・・いいんだこれで。俺はアンの気持ちを知ってるんだか...
アンと宿で、アルビオンへの内通者の話をした後だった。
「もしあなたなら、ずっと想いを寄せている人に告白をされま...
「俺のことでしたら、さっきも言いましたが俺は王子にはなれ...
「あなたもとても素敵なお方ですわ、ですが違うお方なのです」
「差し支えなければ、教えていただけますか」
「・・・・・・あなたにとっても、私にとってもとても身近な人です...
「身近な人、ですか」
「そうです。サイト、これからもルイズのことを守ってあげて...
「もちろんです」
「ありがとうございます。お互いに大切な人なのですから」
「まかしてください・・・・・・もしかしてアン、好きな人って」
嘘をついていなかった、言葉として聞かなくてもアンの顔が...
そして今日の今現在ルイズとアンは二人きり、告白したって...
同性愛、確かにありえないことなのかもしれない。
でも俺の世界には少数とはいえ普通に存在していて犯罪とい...
恥ずかしいことじゃない、もしルイズとアンが付き合いだし...
俺はルイズのことが好きだ。でもアンを支えてあげる人がい...
ヴェールズ皇太子が死んでしまった今それができるのは、心...
だからもしルイズがアンを選んでも、ワルドの時みたいにル...
俺は、俺は喜んで二人の幸せを・・・・・・祝福してやるつもりだ。
「アンって誰よ、もしかして浮気でもしてるの?」
さすがの鋭い町娘も皇女様は想像つかないようだった。それ...
「それでは妖精さんたち、パーティーを始めまーす」
俺は盛り上がるその場を無言で立ち上がった。
「ちょっとどこ行くのよ」
「便所」
ある結末が頭に浮かんで、ジェシカにこれ以上追及されると...
「べんじょって・・・・・・何?」
始めて見る相手の生まれたままの姿、初めて見せる自分の生...
二人はベッドでアンリエッタを上にして裸のままで向き合っ...
恥ずかしくて互いに視線を合わせようとせず、沈黙に身を任...
「ア、アンリエッタ」
ルイズは声をかけてみたものの、どうすればいいのかわから...
「あ、あのだ、抱いてくださいまし」
「はい」
ルイズはガチガチな動きでアンリエッタの背に手を回してふ...
「暖かい、です。ルイズの温もりが感じられて」
アンリエッタは唇を重ねた。それも優しく何度もである。
「んっ、むっ・・・・・・」
続けていくうちにルイズの力が抜けていき自然と口が開き始...
「んむっ、んん」
初めはアンリエッタにされてばかりだったが、ルイズも時折...
顔を離すと二人は糸で繋がっていた。しかしその糸はすぐに...
アンリエッタは口元からそっと下を這わせてそれを舐めとっ...
「やっ・・・・・・はぁ」
「ふふふっ」
すべて綺麗にし終わった後、アンリエッタは胸を撫でようと...
「いやっ」
ルイズはとっさに声を出して両手で胸を隠す。
「どうしたんですか」
「だって、私の胸・・・・・・」
「胸が、どうかしましたか」
ルイズがとてもかわいく見えてアンリエッタはついつい悪態...
「う〜、アンリエッタのいじわる」
ルイズは眉を吊り上げて睨みつける、ただ顔が真っ赤なので...
「ごめんなさい、でも気にすることなんてありませんわ。とっ...
「そうでしょうか」
アンリエッタは「そうよ」と言わんばかりに微笑んだ。
「そ、それじゃあ」
ルイズはまだ何か反論したいようだったが、ゆっくりと胸の...
再び小さくてかわいい乳房があらわにされる。
アンリエッタは胸に指ではなく顔を近づけていく、そして口...
「それはやめっ」
片方の先端を軽く噛むと、もう片方は指でやさしくつまみ上...
「んあぁぁ」
時折口は舐めて、手で撫でまわす。経験が無いので動きはち...
「あっ、はぁ・・・・・・ふぁ」
気が付けばルイズは抱きしめる力が強くなっていた。それを...
アンリエッタの口はふと胸から離れていき、下のほうへと撫...
もう少しで秘部にたどり着きそうだったのだがルイズがしっ...
「アンリエッタは、やっぱり、卑怯ですわ」
すでに息も途切れ途切れなルイズが声を出す。
「私ばっかり、責められて、ふ、不公平ですわ」
ルイズの意外な言葉にアンリエッタは笑ってしまった。
「くすくす」
「な、どうして笑ったりするんですか」
だんだんと音量が低くなりながらも反論する。ルイズの表情...
「やっぱりあなたってどこか変わっているわね」
「う〜」
再びうなり始めるルイズをよそにアンリエッタは体を反転さ...
「アンリエッタ!」
ルイズは驚いてしまった、目と鼻の先にアンリエッタの下半...
「こうすれば一緒に気持ちよくなれますわ」
そうは言ってもやっぱり恥ずかしいのか両足は締り気味だっ...
「ひあっ!」
予想していなかった責めにアンリエッタは一瞬のけぞったが...
アンリエッタの体が下がってきたことにより、ルイズの顔が...
ルイズは窮屈なのでは手を抜き、そして躊躇することもなく...
「あんっ、ル、ルイズゥ」
すでに秘部は蜜によって濡れており、溢れている甘い匂いが...
しばらく快感に浸っていたが、アンリエッタも舌をルイズの...
責めに夢中になっていたために足のほうまで力が入りきって...
「ふあっ」
お互いが大事なところを責め合い、二人の声と蜜の音だけが...
「あっ、うっ、あ・・・・・・はぁ」
「あふぅ、んんっ、んあっ、ああ」
味わい尽くすように舌を動かし、相手を求めていく。
その動きはだんだん速くなり、それに合わせて裂け目から聞...
「ふあ!」
アンリエッタの舌が何かの突起に触れたとき、ルイズは体を...
弱点と感じ取ったその場所を集中して舐め続ける。
「ああっ、いあ、すごいの!」
雷にでも打たれたかのような快感に、ルイズはただ声を荒げ...
「あっ、いやあ、なにか、おか、おかしくなっあああぁぁぁ!...
容赦ない責めにルイズは一直線に上り詰めてしまった。しば...
アンリエッタの顔には蜜がこびりついている、それを指です...
それは甘みと苦みが混じるビターな味だった。
アンリエッタは今までの人生で一番幸せな時間を過ごしてい...
幼少時代のような遊びではなく、ヴェールズ皇太子のように...
何も欠けていなかった。望んだことがすべて現実へと浸透し...
「ふふっ」
アンリエッタは思わず笑みをこぼしてしまった。
「何がおかしいのですか」
振り向いてみるとルイズはもじもじと体を動かしている。
アンリエッタよりも先に、それも一人だけで達してしまった...
それに加えて早すぎるから笑われたのではないかと考えると...
問いの返事をするためにアンリエッタは体を反転させてルイ...
「何でもありませんわルイズ、ただ・・・・・」
「ただ、なんでしょうか」
「とても暖かいのです」
ずっと空いていた心の隙間がルイズによって埋まっていく。...
それはアンリエッタにとって幼少のころから待ち望んでいた...
王族という鎖に縛られることの無い自由であり、進化への愛...
「暖かい・・・・・・あっ」
アンリエッタはルイズの顔に付いた自分の蜜に舌を這わせて...
「さぁルイズ、夜はまだ長いのですから」
夜も更けてきた頃、アンリエッタはベルを鳴らして使いの者...
「愛していますわ、ルイズ」
「私もでございます、アンリエッタ」
ルイズは帰るためにドアを開けた、名残惜しそうにいつまで...
「ルイズ・フランソワーズ様、こちらへ」
廊下から迎えの声が聞こえてくる。
「戦争が終わったら、また会いにきます」
そう言い残しルイズはドアを閉めた。『戦争』その言葉が耳...
戦争なんて・・・・・・しないほうがいいのはわかっている。ルイ...
これもヴェールズを失った現実から逃避したかっただけなの...
「そんなことはありませんわ・・・・・・ルイズへの愛は、本物なの...
何が本当で何が嘘なのか、今は自らのしている行為を信じる...
ルイズは暗闇に明かりが差し始めた頃、魅惑の妖精亭へと帰...
もうパーティーは終わったようですっかり静まっていてスカ...
出席できなかったのを改めて謝ったあと、階段を昇っていき...
才人はすでにベッドでのんきに寝ていた。
顔を覗き込んでみると、まったくではなかったのだが不思議...
昨日まであんなにドキドキしたのにどうしてかしら。アンリ...
今だからはっきりしたけど、私は才人のことが好きだったの...
「これで・・・・・・間違ってないわよね」
自分の本心に問いただすかのごとく胸に手を当てた。確かに...
「ねぇルイズ、二人だけの結婚式をあげたいの」
「はい、では私は花を摘んでまいります」
「私はワインの代わりを探してきます」
二人の約束だった雪の振る景色をアルビオンの宿で一人寂し...
ルイズの横にいる幻が薄くなっていく、偽りのぬくもりが消...
「えーと、なんて言うのでしたかしら」
「私も忘れてしまいました。では途中まで飛ばしましょう」
「まずは誓いの杯を」
「アンリエッタ・・・・・・また会えるの?」
誰もが不安を抱えている、それを紛らわすために無理をして...
悲しみはいつか晴れる日がやってくるのでしょうか。
重圧に耐えればいつか報われる日はやってくるのでしょうか。
離れた分だけ私の中で想いが濃くなっていく、あなたが恋し...
「私はルイズを愛することを誓います」
「私はアンリエッタを愛することを誓います」
「では誓いのキスを」
朝だというのに気が付けば兵士のバカ騒ぎが聞こえてくる、...
「う〜ん」
・・・・・・才人がもうすぐ起きるようね。ご主人様より遅く起き...
アンリエッタは執務室にある始祖ブリミルの像に祈りを捧げ...
全身黒のドレスに身を包み、戦死者への追悼をしているかの...
それはもちろんのことであったが半分ほどは違っていて、二...
「私の愛するルイズとその使い魔であるサイトをお守りくださ...
あの一夜から結構な日にちが経って、冷静な頭で自分の気持...
自分のしてしまったこと、それは間違いではなかった。
もし間違いだったとしても後悔は決してしない。
どれか正しい道かなんてだれにもわかるはずもない。
だから真っ直ぐ進もう、ヴェールズ様の遺言を守るために。
そして何よりも・・・・・・私を受け入れてくれたルイズの為に。
遠く離れてしばらくたっているが、近頃はそう前向きに考え...
二人しかいない教会、二人だけの結婚式、綺麗なドレス。そ...
ルイズは詠唱していた『エクスプロージョン』の魔法を発動...
少し離れた場所にある7万もの敵陣で巨大な爆発が巻き起きる。
戦争に来る前のささやかな晩餐会。
「愛しています、ルイズ」「いつか雪を見に行きましょう」
涙が流れてくる、どうして・・・・・・こんなときに。
春先での久しぶりに再開したとき。
「あの頃は毎日が楽しかったわ」「昔の気持ちを思い出したわ」
魔法、唱えなくちゃ、いけないのに。
無邪気に遊んでいた小さいころ。
「これは二人だけの約束ですわ」「いつか結婚しましょう、ル...
目の前にせまる7万の敵勢、殿という役目、恐怖が心を支配...
もしそうすれば国が滅びる、ヴェールズ皇太子のようにアン...
もう、悔しいけど、バカ犬の言うとおり名誉なんて・・・・・・全...
「魔法を唱えなさい、私」
複雑な心のうちを無理やり無という境地で塗りつぶそうとす...
「ルイズーーー!」
いきなりの怒鳴り声に後ろを振り返ると竜のアーズロに乗っ...
「ばかやろう! 殿を引き受けるなんて、そんなに名誉が大事...
「そんなことわかってるわよ! それでも私が引いたら、国が...
アンリエッタだって、という言葉はなんとか飲み込んだ。
自分は普通ならありえない同性愛者ということは才人にまだ...
才人とジュリオが竜から飛び降りてくる。
「だからって、死んだらそれで終わりなんだぞ!」
死んだら終わり、その台詞はあなたとギーシュの口げんかの...
あなたは私のことなんか考えずに自分の本能で生きてるくせ...
「アンリエッタのことはどうする!」
「えっ・・・・・・」
どうして知っているの? サイトは店に残っていたはずなの...
「お前の帰りを待ってるんだぞ」
「あんたねぇ、姫様のことを名前で呼ぶなんて」
「そんなもんは関係ないだろ!」
ルイズの言葉は才人によってかき消される。
「また一人で寂しい思いをさせる気か?」
寂しい・・・・・・そうよね。ヴェールズ皇太子を失った本当の悲...
宮廷という名の広くて白い迷宮で日々迫りくる皇女という壁...
私だけが理解している。大切な友達だから、恋人だから。
ルイズはうつむいてしまった。
「それでも・・・・・・私が逃げたら」
そんなことはできない。例えここで逃げてアンリエッタの元...
国外逃亡なんてできるはずはない。貴族としても皇女として...
「やっぱり私」
これでいいのよ、私は伝説の虚無の担い手と呼ばれても所詮...
「・・・・・・勝手にしろ。俺もやりたいようにやるからな」
ドッ、鈍い音とともにルイズの視界が暗くなっていく。
才人がデルフリンガーの柄をルイズのお腹にぶつけていた。
「姫様にお願いされてたんだ。ルイズを守るようにってな」
「サイト・・・・・・」
気絶して崩れ落ちるルイズを才人が抱えこんだ、ジュリオに...
「ジュリオ、後は頼む」
「まかせてくれ、責任もって船まで送り届けるよ」
ジュリオは壊れ物を扱うかのようにルイズをお姫様だっこし...
「行くよ、アズーロ」
竜は鳴き声を発しながら翼を起用に羽ばたかせた、二人と一...
「さよならルイズ。アンリエッタと幸せ・・・・・・幸せに、暮らし...
才人の瞳からはいつか我慢したはずの涙が止まることなく溢...
#br
後日談。
「いいんじゃねえか、人間だし」
「なんだそりゃあ。まぁ俺にはよくわからなねぇが相棒が言う...
誰にでも間違いはあるなんて昔の人はいいこと言ったもんだ。
その間違いをまさしく今俺がしようとしているんだから。
でもよ・・・・・・こういうのも悪くないかな。
才人はテファニアとアニエスに別れを告げた。
「行こうぜデルフ、東のロバ・カ・・・・・・なんだっけ?」
「ルイズ、本当にいいのですか?」
「はい、才人の死をいつまでも悲しんでいられません」
ルイズは大きく一回深呼吸した後詠唱を開始する。
才人・・・・・・あなたのおかげで私は生きている。何回感謝して...
私はあなたの死を無駄にしない、もちろんアンリエッタも。
「われの運命に従いし使い魔を召喚せよ!」
目の前に白いゲートが現れる。
通るのは果たして彼なのか、それとも新たに資格を持つ者な...
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