ゼロの使い魔保管庫
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開始行:
トリステイン王宮の最奥にある女王の寝室では、その部屋の...
窓際で2つの月を見上げ、祈りを捧げるかの様に手を胸の前...
(……サイト…さま)
その時、雲が不意に月を隠した。
(あぁ…サイトさま…わたくし…わたくし…)
ラ・ヴァリエールから帰ってきて以来、毎夜こんな調子である。
彼女がこうなってしまったのに、原因は2つ有った。
1つは、数日前から見続けている夢。
もう1つは、ラ・ヴァリエールからの帰りに起きたのだった。
#br
「あ、あの…女王陛下…」
顔面を蒼白にしながらシエスタが口を開いた。
ルイズの実家からの帰り道、本来ならありえない事なのだが...
「どうなさいました?」
「き、きき、昨日はとんだご無礼を、お、おお、お許し下さい」
昨日の無礼、それは酒を飲んだシエスタがアンリエッタを無...
「大丈夫、気にしていませんわ。それに…」
そこで視線をサイトに移す。
「昨日の主役はサイト殿です。わたくしは単なる傍観者として...
そういって微笑を浮かべシエスタを振り返る。
しかし、その言葉を聞いて、3人はそれぞれ違うことを考え...
(彼を知るですってー!姫さまってば『わたくしの騎士じゃな...
も、もしかしてこの犬ってば嫌がる姫さまに無理やり…)
(サイトさんってば、もう女王陛下と…)
(な、何を言い出すんだ、この姫さまは…)
サイトが隣を見ると、案の定ご主人様はどす黒いオーラを纏...
(あちゃー、やっぱ勘違いしてるよ)
「あの、姫さま?その言い回しはどうかと…」
サイトの訴えに、しかしアンリエッタは『わたくし何か間違...
「ひ、姫さま、その…彼を知るって、どういう…」
「あら、何を言ってるのルイズ。あの時あなたも居たじゃない...
「……へ?」
「わたくしが偽りのウェールズ様と行こうとしたとき、サイト...
その時、数滴の雨粒が窓を叩いた。
馬車はおりしも街に差し掛かろうとしていた。
「あら、雨」
シエスタがいち早く気付くと同時に、その勢いは激しさを増...
突然の雨に、街を行く人々も騒ぎながら近くの軒下へと駆け...
「わたしたちも一旦近くの宿で雨をしのぎませんか、姫さま」
御者を気遣ってかルイズが提案するが、反応は返って来ない...
「姫さま、どうなさったのですか?」
その様子を見ていたサイトはハッと思い出し、座ったまま勢...
いきなりの展開に呆然としていたルイズだったが、我に返ると
「あ、あああんた、いいいいきなり姫さまになんて事してんの...
とサイトの耳をひっぱり叫ぶ。
「サイトさん、いきなりどうしちゃったんですか?」
シエスタも状況をつかめておらず、おろおろしながら2人を...
しかし、サイトは周りの反応などまるで気にした様子も無く...
「大丈夫、大丈夫ですから。俺は、俺とルイズはここに居てま...
「あんた、何言ってんの?いいから姫さまを離しなさいよ」
耳を引っ張る力を更に強めよううとしたルイズだったが、振...
(な…なによ…)
訳がわからず、泣いてしまいそうになる。そんなルイズを今...
「……サイト…さん」
呟き瞼を閉じるアンリエッタ。その唇がそっと近づいてくる。
「……」
「……」
ルイズとシエスタは突然の展開に、言葉を忘れたかの様にた...
あと数センチで唇が触れ合おうかという時、サイトはアンリ...
「……ぁん…」
名残惜しそうに漏れるため息と共に、拗ねたような、甘えた...
「……姫さま?」
眼前の困った様な表情と、自分に突き刺さる2つの鋭い視線...
(わたくしったら、いったい何を……)
「あ…こ、これは…その…ち、ちがうんです…」
かなり動揺しているらしく、言葉遣いが幼き頃に戻っていた。
「と、とりあえずどこかで休みませんか?雨は止みましたけど...
重くなった雰囲気に耐え切れずに発したシエスタの言葉に全...
#br
俺とシエスタ、ルイズと姫さまとで分かれて部屋に入る。
「ふぅ……」
ベッドに仰向けに倒れこみ、ぼんやりと天上を見ながら先ほど...
(やっぱ思い出しちゃったんだろうなぁ)
先ほどのアンリエッタは、いつぞやの安宿で見せたのと同じ...
言われた時には少し寂しい思いに駆られたものだったが、やは...
(ついつい守ってあげたくなるんだよなぁ)
そんな風に考え込んでいたとき、バタンと勢い良く扉が開き...
(ぅわ、怒ってるよ)
どす黒いオーラを放ち、つかつかと部屋の中へやってくるな...
「犬、座りなさい!」
彼女の剣幕に、言われた通り床に座る。
「説明してもらいましょうか?」
(説明って言われてもなぁ)
「さっきの姫さまのあんたを見る目、尋常じゃなかったわ。あ...
声は優しいんだけど、目が怒ってる所為で異常に怖かった。
仕方ない。あの時の話をすると、この嫉妬深いご主人様はま...
更にひどい仕打ちを受けそうだ。
「前にお前、アニエスさんとキスしたときあっただろ?」
「そ、そそ、それが何の関係があるって言うのよ!あああんた...
顔を真っ赤にして手を振り上げるルイズ。
「待てって、話は最後まで聞けよ。あの時も雨、降ってただろ...
「…は?雨が怖い?…ふん、嘘吐くならもっとましな嘘吐きなさ...
「嘘じゃねーって。さっき馬車の中でも行ってたじゃねーか。...
そこまで言って、ルイズはハッとした。思い出したようだ。
「で、その時の所為で雨が怖くなったらしいんだ」
「……そう」
当時の事を思い出したのか、しゅんとなるルイズ。
「…わかったわ。で?そんなお労しい姫さまをいきなり、だだだ...
「……」
「…どうしたのよ、何とか言いなさいよ」
(言っていいんだろうか…)
あの時は姫さまから肩を抱いてくれって言ってきた。でも、...
同じ事を言ってたと思う。
(でもなあ、さすがにソレは姫さまの名誉の為に言わない方が...
「いやほら…あの中で男って俺だけだったし…」
「……」
「ああいう時に抱きしめるってのが男の役目だと思うし…」
「……」
「……」
「……」
「……」
沈黙が流れた。どうしたんだろうと思い見上げる。と、そこ...
様の姿があった。
「へー…『男の役目』ねぇ…そうやってあんたはあっちへふらふ...
(やばい!)
その手が振り下ろされると思った瞬間、『やめて!』と声が...
見ると、入口に姫さまが立っていた。
「やめてルイズ、お願いだから。サイト殿はわたくしを落ち着...
鞭を持つルイズの手を両手で包み込み、姫さまは優しく語り...
「…じゃあ、なんで姫さまは…その…サイトに…キ、キスしようと...
声を震わせるルイズ。その頬には一筋の雫が流れていた。
「そ、それは…その…」
困ったようにこちらを見る。目が合うとすぐに視線を逸らし...
(だー、そんな表情してたらますます疑われますって!)
「いや、その…あれだ。俺を王子さまと間違えたんだよ」
「え?そんな事は…」
(たー!もう、この姫さまは…)
俺は『ここは任せて』と視線に籠めて姫さまを見る。
「ほら、姫さまはあの時混乱してたからさ」
「…あんた、ウェールズ様に全然似てないじゃない。王子さまっ...
「ぅわ、ひっでー…じゃなくて。だからな、混乱しててだな、気...
だぶって見えたんだと思う」
「……」
「……」
「……もしかして、それを狙ってたんじゃないでしょうね」
「んなわけあるか!」
(姫さま、ごめん)
何がごめんなのか分からなかったが、とりあえず俺は心の中...
「……わかったわよ」
「……へ?」
「信じてあげるって言ってんの!」
ルイズはそっと手を下ろすと、落ち着きを取り戻した声で
「あの…姫さま、申し訳ありません。お見苦しいところをお見せ...
「いいのよ、ルイズ。それより、ほら…」
「……?」
「サイト殿と仲直りしないと…」
姫さまはそういって、そっとルイズの背中を押す。
「…ごめんね、サイト」
「いや、別に…」
「…でも、あんただって悪いんだからね!」
(……?)
「いつもいつも他の女の子ばっかり…」
「……ごめん」
「ねぇ…ギュッってして」
頬を赤らめ、上目遣いに見上げてくるご主人様。
「後で何でも言うこと聞いてくれるって言ったじゃない。ねえ…」
「ああ」
手をまわし、力を籠めてルイズを抱きしめる。
「…サイトぉ」
腕の中のご主人様は、うっとりとした表情で目を瞑っている。
それまで事のなりゆきを見守っていたシエスタが、『よかっ...
声を掛ける。
「うん…」
俺はシエスタに『ありがとう』と感謝を述べ、姫さまに視線...
彼女も『よかったですね』と言ってくれた。
だが、その目には悲しげな光が宿っていたのを、このとき俺...
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RIGHT:ツンデレ王子
終了行:
トリステイン王宮の最奥にある女王の寝室では、その部屋の...
窓際で2つの月を見上げ、祈りを捧げるかの様に手を胸の前...
(……サイト…さま)
その時、雲が不意に月を隠した。
(あぁ…サイトさま…わたくし…わたくし…)
ラ・ヴァリエールから帰ってきて以来、毎夜こんな調子である。
彼女がこうなってしまったのに、原因は2つ有った。
1つは、数日前から見続けている夢。
もう1つは、ラ・ヴァリエールからの帰りに起きたのだった。
#br
「あ、あの…女王陛下…」
顔面を蒼白にしながらシエスタが口を開いた。
ルイズの実家からの帰り道、本来ならありえない事なのだが...
「どうなさいました?」
「き、きき、昨日はとんだご無礼を、お、おお、お許し下さい」
昨日の無礼、それは酒を飲んだシエスタがアンリエッタを無...
「大丈夫、気にしていませんわ。それに…」
そこで視線をサイトに移す。
「昨日の主役はサイト殿です。わたくしは単なる傍観者として...
そういって微笑を浮かべシエスタを振り返る。
しかし、その言葉を聞いて、3人はそれぞれ違うことを考え...
(彼を知るですってー!姫さまってば『わたくしの騎士じゃな...
も、もしかしてこの犬ってば嫌がる姫さまに無理やり…)
(サイトさんってば、もう女王陛下と…)
(な、何を言い出すんだ、この姫さまは…)
サイトが隣を見ると、案の定ご主人様はどす黒いオーラを纏...
(あちゃー、やっぱ勘違いしてるよ)
「あの、姫さま?その言い回しはどうかと…」
サイトの訴えに、しかしアンリエッタは『わたくし何か間違...
「ひ、姫さま、その…彼を知るって、どういう…」
「あら、何を言ってるのルイズ。あの時あなたも居たじゃない...
「……へ?」
「わたくしが偽りのウェールズ様と行こうとしたとき、サイト...
その時、数滴の雨粒が窓を叩いた。
馬車はおりしも街に差し掛かろうとしていた。
「あら、雨」
シエスタがいち早く気付くと同時に、その勢いは激しさを増...
突然の雨に、街を行く人々も騒ぎながら近くの軒下へと駆け...
「わたしたちも一旦近くの宿で雨をしのぎませんか、姫さま」
御者を気遣ってかルイズが提案するが、反応は返って来ない...
「姫さま、どうなさったのですか?」
その様子を見ていたサイトはハッと思い出し、座ったまま勢...
いきなりの展開に呆然としていたルイズだったが、我に返ると
「あ、あああんた、いいいいきなり姫さまになんて事してんの...
とサイトの耳をひっぱり叫ぶ。
「サイトさん、いきなりどうしちゃったんですか?」
シエスタも状況をつかめておらず、おろおろしながら2人を...
しかし、サイトは周りの反応などまるで気にした様子も無く...
「大丈夫、大丈夫ですから。俺は、俺とルイズはここに居てま...
「あんた、何言ってんの?いいから姫さまを離しなさいよ」
耳を引っ張る力を更に強めよううとしたルイズだったが、振...
(な…なによ…)
訳がわからず、泣いてしまいそうになる。そんなルイズを今...
「……サイト…さん」
呟き瞼を閉じるアンリエッタ。その唇がそっと近づいてくる。
「……」
「……」
ルイズとシエスタは突然の展開に、言葉を忘れたかの様にた...
あと数センチで唇が触れ合おうかという時、サイトはアンリ...
「……ぁん…」
名残惜しそうに漏れるため息と共に、拗ねたような、甘えた...
「……姫さま?」
眼前の困った様な表情と、自分に突き刺さる2つの鋭い視線...
(わたくしったら、いったい何を……)
「あ…こ、これは…その…ち、ちがうんです…」
かなり動揺しているらしく、言葉遣いが幼き頃に戻っていた。
「と、とりあえずどこかで休みませんか?雨は止みましたけど...
重くなった雰囲気に耐え切れずに発したシエスタの言葉に全...
#br
俺とシエスタ、ルイズと姫さまとで分かれて部屋に入る。
「ふぅ……」
ベッドに仰向けに倒れこみ、ぼんやりと天上を見ながら先ほど...
(やっぱ思い出しちゃったんだろうなぁ)
先ほどのアンリエッタは、いつぞやの安宿で見せたのと同じ...
言われた時には少し寂しい思いに駆られたものだったが、やは...
(ついつい守ってあげたくなるんだよなぁ)
そんな風に考え込んでいたとき、バタンと勢い良く扉が開き...
(ぅわ、怒ってるよ)
どす黒いオーラを放ち、つかつかと部屋の中へやってくるな...
「犬、座りなさい!」
彼女の剣幕に、言われた通り床に座る。
「説明してもらいましょうか?」
(説明って言われてもなぁ)
「さっきの姫さまのあんたを見る目、尋常じゃなかったわ。あ...
声は優しいんだけど、目が怒ってる所為で異常に怖かった。
仕方ない。あの時の話をすると、この嫉妬深いご主人様はま...
更にひどい仕打ちを受けそうだ。
「前にお前、アニエスさんとキスしたときあっただろ?」
「そ、そそ、それが何の関係があるって言うのよ!あああんた...
顔を真っ赤にして手を振り上げるルイズ。
「待てって、話は最後まで聞けよ。あの時も雨、降ってただろ...
「…は?雨が怖い?…ふん、嘘吐くならもっとましな嘘吐きなさ...
「嘘じゃねーって。さっき馬車の中でも行ってたじゃねーか。...
そこまで言って、ルイズはハッとした。思い出したようだ。
「で、その時の所為で雨が怖くなったらしいんだ」
「……そう」
当時の事を思い出したのか、しゅんとなるルイズ。
「…わかったわ。で?そんなお労しい姫さまをいきなり、だだだ...
「……」
「…どうしたのよ、何とか言いなさいよ」
(言っていいんだろうか…)
あの時は姫さまから肩を抱いてくれって言ってきた。でも、...
同じ事を言ってたと思う。
(でもなあ、さすがにソレは姫さまの名誉の為に言わない方が...
「いやほら…あの中で男って俺だけだったし…」
「……」
「ああいう時に抱きしめるってのが男の役目だと思うし…」
「……」
「……」
「……」
「……」
沈黙が流れた。どうしたんだろうと思い見上げる。と、そこ...
様の姿があった。
「へー…『男の役目』ねぇ…そうやってあんたはあっちへふらふ...
(やばい!)
その手が振り下ろされると思った瞬間、『やめて!』と声が...
見ると、入口に姫さまが立っていた。
「やめてルイズ、お願いだから。サイト殿はわたくしを落ち着...
鞭を持つルイズの手を両手で包み込み、姫さまは優しく語り...
「…じゃあ、なんで姫さまは…その…サイトに…キ、キスしようと...
声を震わせるルイズ。その頬には一筋の雫が流れていた。
「そ、それは…その…」
困ったようにこちらを見る。目が合うとすぐに視線を逸らし...
(だー、そんな表情してたらますます疑われますって!)
「いや、その…あれだ。俺を王子さまと間違えたんだよ」
「え?そんな事は…」
(たー!もう、この姫さまは…)
俺は『ここは任せて』と視線に籠めて姫さまを見る。
「ほら、姫さまはあの時混乱してたからさ」
「…あんた、ウェールズ様に全然似てないじゃない。王子さまっ...
「ぅわ、ひっでー…じゃなくて。だからな、混乱しててだな、気...
だぶって見えたんだと思う」
「……」
「……」
「……もしかして、それを狙ってたんじゃないでしょうね」
「んなわけあるか!」
(姫さま、ごめん)
何がごめんなのか分からなかったが、とりあえず俺は心の中...
「……わかったわよ」
「……へ?」
「信じてあげるって言ってんの!」
ルイズはそっと手を下ろすと、落ち着きを取り戻した声で
「あの…姫さま、申し訳ありません。お見苦しいところをお見せ...
「いいのよ、ルイズ。それより、ほら…」
「……?」
「サイト殿と仲直りしないと…」
姫さまはそういって、そっとルイズの背中を押す。
「…ごめんね、サイト」
「いや、別に…」
「…でも、あんただって悪いんだからね!」
(……?)
「いつもいつも他の女の子ばっかり…」
「……ごめん」
「ねぇ…ギュッってして」
頬を赤らめ、上目遣いに見上げてくるご主人様。
「後で何でも言うこと聞いてくれるって言ったじゃない。ねえ…」
「ああ」
手をまわし、力を籠めてルイズを抱きしめる。
「…サイトぉ」
腕の中のご主人様は、うっとりとした表情で目を瞑っている。
それまで事のなりゆきを見守っていたシエスタが、『よかっ...
声を掛ける。
「うん…」
俺はシエスタに『ありがとう』と感謝を述べ、姫さまに視線...
彼女も『よかったですね』と言ってくれた。
だが、その目には悲しげな光が宿っていたのを、このとき俺...
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