ゼロの使い魔保管庫
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マザリーニがガリアに到着する数日前
此方はゲルマニアの皇宮
建築様式から内装迄ごった煮になっていて、いまいち統一感が...
会議室にて交渉のテーブルに着いてるのは、ゲルマニア皇帝ア...
最も、銃は内股にしまい、儀礼用のレイピアを下げただけで、...
アルブレヒト三世は二人の姿を見た時点で、鼻の下が正確に5ミ...
大抵の男性なら、アルブレヒトの気持ちを支持するだろう
トリステイン女王は、美貌すら外交の道具として使う気まんま...
「では、同盟同士の詰めを行いましょう、此方をご覧下さい」
アニエスが書類を両使節に渡して行く中、すかさずアニエスに...
トリステイン側のペースで始まった模様だ
「ほう、侵攻計画ですか」
アルブレヒト三世が、書類の束を見て内容を確認していく
「はい、私共が矢面に立ちましょう、ゲルマニア側は側面支援...
「成程、封鎖作戦を敢行してから上陸か。負けがたい作戦です...
「はい。アルビオンは強大です。やはり一戦するならば、勝た...
「どうすれば勝ちですかな?」
「レコンキスタ総指令クロムウェルの捕縛、あるいは殺害です...
「成程。出兵理由としては、充分ですな」
アルブレヒトは重々しく頷く
領土を他国軍が何度も侵攻するならば、反撃しなければ国とし...
アンリエッタの言い分は正に正当だ
アルブレヒト三世は同盟の求めに応じる必要が出来た事を、率...
「トリステインが矢面に立つと言っても、我が国も軍事同盟の...
「有り難うございます。では此方をご覧下さい」
渡したもう一つの書類をゲルマニア側に示し、ゲルマニア側が...
新旧エキュー固定に伴う為替条約の希望だ
「これはこれは、思い切りましたなぁ」
アルブレヒトは思わず苦笑を浮かべ、アンリエッタの手腕に内...
何故なら、国内資金の調達を理由に、同盟国に為替固定を要求...
「いやいや、こんな要求された事は初めてですが、いや、此は...
トリステインとアルビオンは金が産出しない
産出地域はゲルマニアとガリア
ロマリアも産出していたが、既存の金鉱脈は既に堀り尽してし...
「同盟国として、承認して頂けますね?」
アンリエッタが色気を伴い、にこりと微笑む
「……まぁ、良いでしょう。他国とのレート固定が条件ですな、...
「良いでしょう。では一度会議を中断で」
アンリエッタがそう言うと、全員立ち上がり各々の控え室に帰...
* * *
控え室では、ゲルマニア側並びにトリステイン側が、情報の交...
「クソッ、あの小娘め。まさか為替をいじりに来るとは思わん...
控え室でバンと机を叩き、憤慨するアルブレヒト三世
「中々やるようですな。今回の女王は」
経済軍事に精通しており、トリステインとの最前線に位置する...
やはり最前線からの情報は、欲しいのである
「ですが、余り問題は有りますまい」
「何と?」
「あれは国内向けの政策ですからな。我々には、余り関係無い...
「ほぅ、貴卿ならどうする?」
「そうですな。現在我が娘が、トリステインに留学してるのは...
「初耳だ」
「トリステイン国内で、現在面白い事が始まっておると聞いて...
「う、うむ………」
耳を貸したアルブレヒト三世は段々と喜色を表面に出して行く
「クックックッ、アッハッハッハ!!貴卿を呼んで良かったぞ。...
「御意」
* * *
「ふぅ、やはりあの男は苦手です」
ドサリと椅子に腰掛け、溜め息をつくアンリエッタ
アニエスも座り、難しい顔をしている
「陛下。私をなんだと思っておるのですか?私は剣ですよ?使...
「何を言っておるのです?剣そのものが美しいのなら、使える...
思わずアニエスは口をつぐみ、ミシェルは無表情で立っている
後は事務方のスタッフ達だ
「で、どうですか?感触は?」
アンリエッタに聞かれた為、スタッフが答える
「感触としては5分ですね。向こうも為替固定条約は寝耳に水...
「長引きそうですか?」
「まぁ、2〜3日は覚悟しましょう」
「良いでしょう。マザリーニがガリアに到着する迄、まだ時間...
アニエスはぴくりとする
「…良くお気づきで」
「たまたま、角度的に見えただけです」
「そうなのですか、では………あ〜参ったな」
アニエスは読んだ後、渋面を浮かべている
「何が書いてあったのです?」
「今夜のダンスの申し込み……要はナンパです。ったく、これだ...
トリステイン女王の来訪という事で、舞踏会が設定されてるのだ
特に珍しい事ではない
「あらあら、ロマリアなら10倍になりますわね」
そう言って、アンリエッタはクスクス笑う
アニエスにしては、迷惑極まりない
「私としては、良くぞ引っかかってくれたと言うべきですね」
「はっ?」
アニエスが、思わず間抜けな声を出す
「トリステインの外交の本番は舞踏会です。我が国に咲き誇る...
* * *
トリステインの使節団が舞踏会に招かれ、思い思いのドレスに...
護衛で連れて来ている銃士隊の、特に粒の良い隊員を選抜して...
何気に隊長と副隊長が、選抜であっさり選出されている
選抜したのは衛士隊と国軍の兵士で、練兵場が美女達の競演の...
喜々として仕切ったのは、勿論ジェラール率いるヒポグリフ隊...
ミスコンと呼ばないのは、ミセスも含まれて選抜されてるからだ
選抜会場を閲覧したアンリエッタは、余りの熱気に呆れたもの...
「なんなんですか?この盛り上がり?」
「いやぁ、陛下。やっぱり普段制服ばっかだから素の彼女達を...
「‥はぁ」
ジェラールの物言いに、アンリエッタも曖昧に返す
「…はい、次は鋼の隊長ことアニエス……おおお!?」
例のセーラー服姿で登場したアニエス
「なんと、水兵服で登場………しかしこれは………なんてけしからん!...
歓声が一気に跳ね上がり、アニエスは戸惑いの表情を浮かべる
「…やっぱりやり過ぎたか……」
「ばばぁ、結婚してくれ〜〜〜!!」
その声を聞いた瞬間、ジェラールが意を汲んで石を渡し、アニ...
「ストライ〜ク。いやぁ、アニエス殿。随分思い切りましたな...
司会進行役のジェラールが興味津々で聞くと
「男だ。残念ながら私は売約済みだ。他の連中を選んでくれ」
その言葉に、会場中ががっくりしたのである
そして、2位との間にダブルスコアを叩き出してしまった
つまり、現在の舞踏会に居るのは、誰が見ても振り返る美女達...
本来は平民が舞踏会に出席するのは叶わない筈なのだが、ゲル...
さて、此処からが、銃士隊の調査能力の完全発揮である
寄って来た男達からダンスを申し込まれると、受けてそのまま...
そして、一人一人からダンスの合間に少しずつ、情報を聞き出...
最も、この手の調査がとっても苦手な二人、アニエスとミシェ...
相手から勝手に喋り出すのを待つだけである
それ以前に、アニエスは男に手を取られると鳥肌が立ち、ミシ...
それを見たアンリエッタは、密かに溜め息をつく
「随分と、荒々しい花が混じっておりますな」
「あら、ツェルプストー伯」
アンリエッタに、ダンスを申し込む勇者は出ていない
完全に、別格扱いである
そんな中、ツェルプストー伯がグラス片手に寄って来たのだ
褐色の肌に分厚い胸板、赤い髪に赤い髭
そして、頬に刀傷
貴族と言えども、常に戦場で立ってた証である
当然、主な相手はヴァリエールである
「いやぁ、こうしてゲルマニアとトリステインが、同じテーブ...
「そうですわね。特に貴方にはそう感じるでしょう?私もツェ...
「はっはっは、あれは運が良かっただけですな。まかり間違え...
謙遜ではなく、気負いも無い
ただ事実を事実として話している
「それにあの時は更なる手練と遭遇しましてな。奴に見逃され...
そう言って、頬の傷を指で撫ぜる
「こうして戦の生き証人と話すのは、とても勉強になりますわ...
すると、顔をしかめるツェルプストー伯
「奴とは、戦場でついぞ、決着が着きませなんだ。出来れば、...
「ゲルマニアの武人は、歳をとっても血気盛んですのね」
アンリエッタがクスクス笑いながら返すと、ツェルプストー伯...
「奴のブレイド捌きは素晴らしかった。あれを越える騎士は見...
「まぁ、ヴァリエール公も凄いお方でしたのね」
好敵手を褒める言葉に偽りはない
例え宿敵だろうとも、いや、宿敵だから良い所が分かるのだろう
「基本的にツェルプストーの発展はヴァリエールのお陰ですか...
世間話をしながら、相手の腹を探る狐と狸の化かし合い
そんな中、一旦音楽が切れ、ダンスをしていた男女がテーブル...
そしてタイトなドレスに身を包んだアニエスが中央に進み出、...
そしてふわりと柔らかく身体を沈めると、ポロンと音が響き、...
其を傍らで見ていたツェルプストー伯とアンリエッタ
「ほう、正に物語通りの余興ですな。トリステインも、凝った...
「あら、ツェルプストー伯、原作をお読みになった事が?」
「えぇ、一時期ハマったものですよ。ですので、先の事もわか...
ボーイを呼び、指示を伝えるとボーイが下がり、別の男の元に...
「あら、でしたら、この先はゲルマニア次第と言うのも解りま...
「でしょうな」
二人共、音楽に合わせて舞うアニエスを見ている
そこで音楽がバイオリンソロに切り替わる瞬間、アニエスは素...
パシッ
受け取った男は、赤毛の長身の青年である
そのまま青年が進み出ると、アニエスとレイピアを合わせて、...
カシィィィン
アニエスの舞に合わせてレイピアでの剣劇
本来の舞姫は、原典は男女で踊るものである
そして忠実に再現された舞に込められた意味を、ツェルプスト...
踊りの意味は、ゲルマニアとトリステインの融和
だから相手は、ゲルマニア人でなければならなかったのである
そして男が舞ながら離れ、またアニエス一人になり、フィナー...
そして歓声と拍手の音が鳴り響いた
「「ブラボーッ!!」」パチパチパチパチ
歓声と拍手のなりやまぬ中、相方を努めた相手に握手を求める...
赤毛の青年は、気さくに交わす
「助かった。実は誰も応じないかと、ヒヤヒヤもんだった」
「いえ、私も貴女の様な方と踊れて嬉しかった。出来れば名前...
「姓を名乗らぬのか?私はアニエス=シュヴァリエ=ド=ミラ...
「まだ修業中の身でね、名乗りを挙げられる程では無いんだ。...
そう言って、肩に手を掛けようとしたのだが、アニエスがする...
「残念だが任務もあるし、間に合っている」
「こんな素晴らしい女性を荒使いするとは、トリステイン女王...
不発に終わったカールは、そのまま肩をすくめて大げさに溜め...
「悪くは無いぞ、カール。出会う順番が悪かったな」
「おや、先約が居るのか?」
「まぁな」
「そいつは燃える」
そう言われたアニエスは、そのままレイピアをボーイに渡すと...
「良くぞ、舞ってくれました」
「いえ、あのカールという男のお陰です」
「素晴らしい舞でしたな、ミス」
ツェルプストー伯が称賛の声を贈ると、アニエスがツェルプス...
「アニエス、此方がツェルプストー伯爵です」
「貴卿が……娘さんには、お世話になりました」
「ほう、キュルケに会ったのですか」
思わず眉を上げて応じるツェルプストー伯
「はい、任務で助けられる事、しばしばでした。トリステイン...
「中々に上手ですな。あの色恋にしか興味ない娘がどの様に役...
振り返るとアンリエッタが頷いている
「では…」
そう言うと、アニエスとツェルプストー伯が離れて行く
アンリエッタは自分が撒いた花々が、上手く咲く事を期待して...
* * *
翌日
朝方に帰って来た隊員とそうじゃない隊員
それにスタッフ達とアンリエッタが集合し、朝食を取りながら...
「私の所はハズレ。何も無し」
「同じく〜」
「隊長は?」
「何か一方的に話してた気がする。ツェルプストー伯に、上手...
「隊長そう言うの、本当に下手くそねぇ」
皆で、かんらかんら笑いながら、アニエスのお粗末さを笑って...
「はいは〜い。交渉の時のスタッフと接触出来たよ〜。飲む方...
「良し!!」
スタッフ達が思わずガッツポーズをする
ガチャ
「ただいま〜。あ〜眠い」
一人の銃士隊員がドレスを纏ったまま、眠い目を擦りながら入...
「アメリーお帰り。収穫は?」
「財務卿と朝までコースだよ。あんの髭親父、寝かしてくれな...
「具体的には?」
アニエスが聞くと、アメリーがニコッとしながら答える
「やだ隊長、そんなに褥の中味聞きたいの?」
その言葉に、スタッフ達がドヨッとする
「情報の方だ、たわけ」
「んもう、ばっちり。焦らして焦らして焦らせまくったら、ペ...
「具体的には?」
「ツェルプストー伯とアルブレヒト三世しか、知らないみたい」
するとアニエスに視線が集中し、アニエスが渋い顔をする
「スマン、どうやらやられたらしい」
「ええぇ〜〜〜?私、やられ損?」
アメリーが、恨めしげにアニエスを見る
「本当に悪い」
「やっぱり、海千山千の歴戦貴族は手強いですわね」
ここでアンリエッタが発言し、皆の注目が集まる
「アメリー。貴女だけ、大変な任務をこなして頂きました。礼...
「あぁ、構わないですわ、陛下。何だかんだで、私も楽しんだ...
「さて陛下、どうします?」
スタッフから聞かれ、アンリエッタは結論を出す
「勿論、毒事喰らいます。我らには、それしか道が有りませぬ」
「「「「ウィ!!」」」」
ガタタ
全員が食事を中断して立ち上がり、一斉にアンリエッタに対し...
* * *
以降の会議は引き延ばしと利率の調整である
「では仮に締結するとして、レートはどの位ですかな?」
「では0.9で如何でしょう?」
アルブレヒト三世が聞くとアンリエッタがニコリと返す
同席しているツェルプストー伯や財務卿は思わず息を飲み、そ...
「クックックッ、中々どうして」
だが、面食らったアルブレヒト三世はそれ所ではない
「ふ、ふざけないで頂きたい」
「あら、飲んで頂けるなら、私共としては万々歳なのですが」
トリステインのメインの輸入物資は硫黄,鉄鉱石,石炭,更に...
国内産出分では賄えない量を、ガリア並びにゲルマニアから輸...
当然価値が上がった方が、輸入には有利であるが、輸出には不...
輸出品は主にワイン、小麦,羊,牛,豚等だ
農産物がメインであり、高緯度であるゲルマニアの食料生産を...
現在トリステインが欲しいのは産業分野である為、為替高騰は...
だが、ゲルマニアには堪らない交渉だ
只でさえ、新レートベースで考えると2/3の値段で買い叩かれ、...
更に為替条約の交渉で0.9倍したら、1.67倍の値上げと、4割引...
ガリアから輸入するのもありだが、運賃の関係でトリステイン...
空路は無論、海路でもだ
陸路では隣接部からの貿易は野盗に邪魔される為、小国である...
ハルケギニアの輸送手段は、基本的に命がけである
雇った護衛が野盗である事もしばしばだ
奪われた荷物は野盗を経由して卸される為、かさが減り値段が...
くれてやるよりか格段に良いが、やってる事は横暴そのものだ
最も、外交とは5が必要とすると、10を要求して6〜7得られ...
だが、金本位をひっくり返す目論見で行われる交渉は初めてで...
「……一旦、協議させて貰う」
アルブレヒト三世がかろうじて、そう言い
「では同盟国として、素晴らしい返事を期待してますわ」
アンリエッタが返す
交渉は更に続きそうだ
* * *
一旦別れた両国は、協議を行っている
「クルデンホルフ使節団から報告。1.25で締結」
「あら、ヴァリエール公ともあろうお方が、随分手加減なされ...
アンリエッタの言い分に、スタッフが意見をする
「妥当と思いますが」
「‥理由を」
「はい、短期利益より、長期利益を優先したんだと判断します」
「つまり、交際費用ですか?」
「はい、それにクルデンホルフの資産は膨大です。我が国の国...
「‥成程、了解です。支出方法は?」
「産業育成と人材育成に支出が一番かと。一時金等で金を出す...
アンリエッタが少し考えて、言う
「では、私がやってるゼロ機関への支出は?」
「私は詳しくは存じませんが、仮に新しい産業が産まれると言...
「解りました。では、マザリーニは?」
「まだガリアに着いてないようです」
「成程、更に掻き回しましょう」
女王の貫禄を身に付けつつあるアンリエッタ
そのまま協議を続ける
* * *
「ふぅ、結婚しなくて正解だったわい」
ドサッ
乱暴に腰を下ろし、アルブレヒト三世が苦笑する
「女王として、中々やりますな」
「あれでは、尻に敷かれるわい」
ツェルプストー伯の発言に、アルブレヒト三世は汗を拭いなが...
「で、昨日の舞踏会では何か得られたかね?伯爵」
「そうですな、何やら新しい事をしているらしいですな。ツェ...
「…ゲルマニアとしてでは無いのだな」
アルブレヒトの皮肉も、ツェルプストー伯は涼しげだ
所詮、利害関係のみで繋がってるのがゲルマニアであり、常に...
隙を見せれば、分離独立すらあり得る
「少しは国にも融通しましょう」
「…ふん、まぁ良い。財務卿」
「はっ」
「どうだ?」
「素晴らしい一夜を」
「………やられたな、流石一筋縄ではいかぬ」
ツェルプストー伯の言い分に、アルブレヒトは財務卿を見る
「相手はトリステイン人か?」
「肯定です。陛下」
「ふん、女の使い方が上手いな。財務卿、貴卿に詳しく話さず...
「肯定です、陛下。お陰で憂いなく楽しめました」
「で、トリステインの狙いは解るか?」
「はっ、大体1.0〜1.15の間かと」
「…ふむ、最大限引き上げるぞ。では、第2ラウンドと行こうか」
アルブレヒトの号令に、ゲルマニア側が立ち上がった
* * *
更に翌日迄会議は白熱し、転機が訪れる
マザリーニのガリア到着と、ガリア王の条約承諾発言である
トリステイン側から情報がもたらされ、ゲルマニア側が一気に...
「ガリアでさえ承諾して下さるのですから、ゲルマニアも同盟...
アンリエッタがトドメを放つと、ゲルマニアが協議の為中座を...
「くっ、これ以上の引き延ばしは無理か」
アルブレヒトが言うと、ツェルプストー伯が心底感心して言う
「本来は三国集めてやる所を、時間の都合とは言え、2国間交...
「マザリーニか?奴ならやるだろうよ。鳥の骨と嫌われてるが...
その発言に、財務卿とツェルプストー伯が苦笑する
コンコン
「入れ」
ツェルプストー伯が促すと、ドレスを着たアニエスが入って来る
「失礼致します、ゲルマニア政府の皆様。陛下より申し遅れた...
「申してみよ」
アルブレヒトが応じると、アニエスは簡潔に報告する
「クルデンホルフも飲んだと」
「……了解した。下がってくれ」
パタン
アニエスが去っていくと、アルブレヒトは盛大に溜め息をつく
「…詰みだな。財務卿」
「はっ」
「同盟の名の元に飲む。但し1.1だ、これだけは譲れん。じゃな...
「ヤー」
急いで取り纏めて財務卿が退出すると、ツェルプストー伯とア...
「後は頼むぞ、伯爵」
「御意」
* * *
終了行:
マザリーニがガリアに到着する数日前
此方はゲルマニアの皇宮
建築様式から内装迄ごった煮になっていて、いまいち統一感が...
会議室にて交渉のテーブルに着いてるのは、ゲルマニア皇帝ア...
最も、銃は内股にしまい、儀礼用のレイピアを下げただけで、...
アルブレヒト三世は二人の姿を見た時点で、鼻の下が正確に5ミ...
大抵の男性なら、アルブレヒトの気持ちを支持するだろう
トリステイン女王は、美貌すら外交の道具として使う気まんま...
「では、同盟同士の詰めを行いましょう、此方をご覧下さい」
アニエスが書類を両使節に渡して行く中、すかさずアニエスに...
トリステイン側のペースで始まった模様だ
「ほう、侵攻計画ですか」
アルブレヒト三世が、書類の束を見て内容を確認していく
「はい、私共が矢面に立ちましょう、ゲルマニア側は側面支援...
「成程、封鎖作戦を敢行してから上陸か。負けがたい作戦です...
「はい。アルビオンは強大です。やはり一戦するならば、勝た...
「どうすれば勝ちですかな?」
「レコンキスタ総指令クロムウェルの捕縛、あるいは殺害です...
「成程。出兵理由としては、充分ですな」
アルブレヒトは重々しく頷く
領土を他国軍が何度も侵攻するならば、反撃しなければ国とし...
アンリエッタの言い分は正に正当だ
アルブレヒト三世は同盟の求めに応じる必要が出来た事を、率...
「トリステインが矢面に立つと言っても、我が国も軍事同盟の...
「有り難うございます。では此方をご覧下さい」
渡したもう一つの書類をゲルマニア側に示し、ゲルマニア側が...
新旧エキュー固定に伴う為替条約の希望だ
「これはこれは、思い切りましたなぁ」
アルブレヒトは思わず苦笑を浮かべ、アンリエッタの手腕に内...
何故なら、国内資金の調達を理由に、同盟国に為替固定を要求...
「いやいや、こんな要求された事は初めてですが、いや、此は...
トリステインとアルビオンは金が産出しない
産出地域はゲルマニアとガリア
ロマリアも産出していたが、既存の金鉱脈は既に堀り尽してし...
「同盟国として、承認して頂けますね?」
アンリエッタが色気を伴い、にこりと微笑む
「……まぁ、良いでしょう。他国とのレート固定が条件ですな、...
「良いでしょう。では一度会議を中断で」
アンリエッタがそう言うと、全員立ち上がり各々の控え室に帰...
* * *
控え室では、ゲルマニア側並びにトリステイン側が、情報の交...
「クソッ、あの小娘め。まさか為替をいじりに来るとは思わん...
控え室でバンと机を叩き、憤慨するアルブレヒト三世
「中々やるようですな。今回の女王は」
経済軍事に精通しており、トリステインとの最前線に位置する...
やはり最前線からの情報は、欲しいのである
「ですが、余り問題は有りますまい」
「何と?」
「あれは国内向けの政策ですからな。我々には、余り関係無い...
「ほぅ、貴卿ならどうする?」
「そうですな。現在我が娘が、トリステインに留学してるのは...
「初耳だ」
「トリステイン国内で、現在面白い事が始まっておると聞いて...
「う、うむ………」
耳を貸したアルブレヒト三世は段々と喜色を表面に出して行く
「クックックッ、アッハッハッハ!!貴卿を呼んで良かったぞ。...
「御意」
* * *
「ふぅ、やはりあの男は苦手です」
ドサリと椅子に腰掛け、溜め息をつくアンリエッタ
アニエスも座り、難しい顔をしている
「陛下。私をなんだと思っておるのですか?私は剣ですよ?使...
「何を言っておるのです?剣そのものが美しいのなら、使える...
思わずアニエスは口をつぐみ、ミシェルは無表情で立っている
後は事務方のスタッフ達だ
「で、どうですか?感触は?」
アンリエッタに聞かれた為、スタッフが答える
「感触としては5分ですね。向こうも為替固定条約は寝耳に水...
「長引きそうですか?」
「まぁ、2〜3日は覚悟しましょう」
「良いでしょう。マザリーニがガリアに到着する迄、まだ時間...
アニエスはぴくりとする
「…良くお気づきで」
「たまたま、角度的に見えただけです」
「そうなのですか、では………あ〜参ったな」
アニエスは読んだ後、渋面を浮かべている
「何が書いてあったのです?」
「今夜のダンスの申し込み……要はナンパです。ったく、これだ...
トリステイン女王の来訪という事で、舞踏会が設定されてるのだ
特に珍しい事ではない
「あらあら、ロマリアなら10倍になりますわね」
そう言って、アンリエッタはクスクス笑う
アニエスにしては、迷惑極まりない
「私としては、良くぞ引っかかってくれたと言うべきですね」
「はっ?」
アニエスが、思わず間抜けな声を出す
「トリステインの外交の本番は舞踏会です。我が国に咲き誇る...
* * *
トリステインの使節団が舞踏会に招かれ、思い思いのドレスに...
護衛で連れて来ている銃士隊の、特に粒の良い隊員を選抜して...
何気に隊長と副隊長が、選抜であっさり選出されている
選抜したのは衛士隊と国軍の兵士で、練兵場が美女達の競演の...
喜々として仕切ったのは、勿論ジェラール率いるヒポグリフ隊...
ミスコンと呼ばないのは、ミセスも含まれて選抜されてるからだ
選抜会場を閲覧したアンリエッタは、余りの熱気に呆れたもの...
「なんなんですか?この盛り上がり?」
「いやぁ、陛下。やっぱり普段制服ばっかだから素の彼女達を...
「‥はぁ」
ジェラールの物言いに、アンリエッタも曖昧に返す
「…はい、次は鋼の隊長ことアニエス……おおお!?」
例のセーラー服姿で登場したアニエス
「なんと、水兵服で登場………しかしこれは………なんてけしからん!...
歓声が一気に跳ね上がり、アニエスは戸惑いの表情を浮かべる
「…やっぱりやり過ぎたか……」
「ばばぁ、結婚してくれ〜〜〜!!」
その声を聞いた瞬間、ジェラールが意を汲んで石を渡し、アニ...
「ストライ〜ク。いやぁ、アニエス殿。随分思い切りましたな...
司会進行役のジェラールが興味津々で聞くと
「男だ。残念ながら私は売約済みだ。他の連中を選んでくれ」
その言葉に、会場中ががっくりしたのである
そして、2位との間にダブルスコアを叩き出してしまった
つまり、現在の舞踏会に居るのは、誰が見ても振り返る美女達...
本来は平民が舞踏会に出席するのは叶わない筈なのだが、ゲル...
さて、此処からが、銃士隊の調査能力の完全発揮である
寄って来た男達からダンスを申し込まれると、受けてそのまま...
そして、一人一人からダンスの合間に少しずつ、情報を聞き出...
最も、この手の調査がとっても苦手な二人、アニエスとミシェ...
相手から勝手に喋り出すのを待つだけである
それ以前に、アニエスは男に手を取られると鳥肌が立ち、ミシ...
それを見たアンリエッタは、密かに溜め息をつく
「随分と、荒々しい花が混じっておりますな」
「あら、ツェルプストー伯」
アンリエッタに、ダンスを申し込む勇者は出ていない
完全に、別格扱いである
そんな中、ツェルプストー伯がグラス片手に寄って来たのだ
褐色の肌に分厚い胸板、赤い髪に赤い髭
そして、頬に刀傷
貴族と言えども、常に戦場で立ってた証である
当然、主な相手はヴァリエールである
「いやぁ、こうしてゲルマニアとトリステインが、同じテーブ...
「そうですわね。特に貴方にはそう感じるでしょう?私もツェ...
「はっはっは、あれは運が良かっただけですな。まかり間違え...
謙遜ではなく、気負いも無い
ただ事実を事実として話している
「それにあの時は更なる手練と遭遇しましてな。奴に見逃され...
そう言って、頬の傷を指で撫ぜる
「こうして戦の生き証人と話すのは、とても勉強になりますわ...
すると、顔をしかめるツェルプストー伯
「奴とは、戦場でついぞ、決着が着きませなんだ。出来れば、...
「ゲルマニアの武人は、歳をとっても血気盛んですのね」
アンリエッタがクスクス笑いながら返すと、ツェルプストー伯...
「奴のブレイド捌きは素晴らしかった。あれを越える騎士は見...
「まぁ、ヴァリエール公も凄いお方でしたのね」
好敵手を褒める言葉に偽りはない
例え宿敵だろうとも、いや、宿敵だから良い所が分かるのだろう
「基本的にツェルプストーの発展はヴァリエールのお陰ですか...
世間話をしながら、相手の腹を探る狐と狸の化かし合い
そんな中、一旦音楽が切れ、ダンスをしていた男女がテーブル...
そしてタイトなドレスに身を包んだアニエスが中央に進み出、...
そしてふわりと柔らかく身体を沈めると、ポロンと音が響き、...
其を傍らで見ていたツェルプストー伯とアンリエッタ
「ほう、正に物語通りの余興ですな。トリステインも、凝った...
「あら、ツェルプストー伯、原作をお読みになった事が?」
「えぇ、一時期ハマったものですよ。ですので、先の事もわか...
ボーイを呼び、指示を伝えるとボーイが下がり、別の男の元に...
「あら、でしたら、この先はゲルマニア次第と言うのも解りま...
「でしょうな」
二人共、音楽に合わせて舞うアニエスを見ている
そこで音楽がバイオリンソロに切り替わる瞬間、アニエスは素...
パシッ
受け取った男は、赤毛の長身の青年である
そのまま青年が進み出ると、アニエスとレイピアを合わせて、...
カシィィィン
アニエスの舞に合わせてレイピアでの剣劇
本来の舞姫は、原典は男女で踊るものである
そして忠実に再現された舞に込められた意味を、ツェルプスト...
踊りの意味は、ゲルマニアとトリステインの融和
だから相手は、ゲルマニア人でなければならなかったのである
そして男が舞ながら離れ、またアニエス一人になり、フィナー...
そして歓声と拍手の音が鳴り響いた
「「ブラボーッ!!」」パチパチパチパチ
歓声と拍手のなりやまぬ中、相方を努めた相手に握手を求める...
赤毛の青年は、気さくに交わす
「助かった。実は誰も応じないかと、ヒヤヒヤもんだった」
「いえ、私も貴女の様な方と踊れて嬉しかった。出来れば名前...
「姓を名乗らぬのか?私はアニエス=シュヴァリエ=ド=ミラ...
「まだ修業中の身でね、名乗りを挙げられる程では無いんだ。...
そう言って、肩に手を掛けようとしたのだが、アニエスがする...
「残念だが任務もあるし、間に合っている」
「こんな素晴らしい女性を荒使いするとは、トリステイン女王...
不発に終わったカールは、そのまま肩をすくめて大げさに溜め...
「悪くは無いぞ、カール。出会う順番が悪かったな」
「おや、先約が居るのか?」
「まぁな」
「そいつは燃える」
そう言われたアニエスは、そのままレイピアをボーイに渡すと...
「良くぞ、舞ってくれました」
「いえ、あのカールという男のお陰です」
「素晴らしい舞でしたな、ミス」
ツェルプストー伯が称賛の声を贈ると、アニエスがツェルプス...
「アニエス、此方がツェルプストー伯爵です」
「貴卿が……娘さんには、お世話になりました」
「ほう、キュルケに会ったのですか」
思わず眉を上げて応じるツェルプストー伯
「はい、任務で助けられる事、しばしばでした。トリステイン...
「中々に上手ですな。あの色恋にしか興味ない娘がどの様に役...
振り返るとアンリエッタが頷いている
「では…」
そう言うと、アニエスとツェルプストー伯が離れて行く
アンリエッタは自分が撒いた花々が、上手く咲く事を期待して...
* * *
翌日
朝方に帰って来た隊員とそうじゃない隊員
それにスタッフ達とアンリエッタが集合し、朝食を取りながら...
「私の所はハズレ。何も無し」
「同じく〜」
「隊長は?」
「何か一方的に話してた気がする。ツェルプストー伯に、上手...
「隊長そう言うの、本当に下手くそねぇ」
皆で、かんらかんら笑いながら、アニエスのお粗末さを笑って...
「はいは〜い。交渉の時のスタッフと接触出来たよ〜。飲む方...
「良し!!」
スタッフ達が思わずガッツポーズをする
ガチャ
「ただいま〜。あ〜眠い」
一人の銃士隊員がドレスを纏ったまま、眠い目を擦りながら入...
「アメリーお帰り。収穫は?」
「財務卿と朝までコースだよ。あんの髭親父、寝かしてくれな...
「具体的には?」
アニエスが聞くと、アメリーがニコッとしながら答える
「やだ隊長、そんなに褥の中味聞きたいの?」
その言葉に、スタッフ達がドヨッとする
「情報の方だ、たわけ」
「んもう、ばっちり。焦らして焦らして焦らせまくったら、ペ...
「具体的には?」
「ツェルプストー伯とアルブレヒト三世しか、知らないみたい」
するとアニエスに視線が集中し、アニエスが渋い顔をする
「スマン、どうやらやられたらしい」
「ええぇ〜〜〜?私、やられ損?」
アメリーが、恨めしげにアニエスを見る
「本当に悪い」
「やっぱり、海千山千の歴戦貴族は手強いですわね」
ここでアンリエッタが発言し、皆の注目が集まる
「アメリー。貴女だけ、大変な任務をこなして頂きました。礼...
「あぁ、構わないですわ、陛下。何だかんだで、私も楽しんだ...
「さて陛下、どうします?」
スタッフから聞かれ、アンリエッタは結論を出す
「勿論、毒事喰らいます。我らには、それしか道が有りませぬ」
「「「「ウィ!!」」」」
ガタタ
全員が食事を中断して立ち上がり、一斉にアンリエッタに対し...
* * *
以降の会議は引き延ばしと利率の調整である
「では仮に締結するとして、レートはどの位ですかな?」
「では0.9で如何でしょう?」
アルブレヒト三世が聞くとアンリエッタがニコリと返す
同席しているツェルプストー伯や財務卿は思わず息を飲み、そ...
「クックックッ、中々どうして」
だが、面食らったアルブレヒト三世はそれ所ではない
「ふ、ふざけないで頂きたい」
「あら、飲んで頂けるなら、私共としては万々歳なのですが」
トリステインのメインの輸入物資は硫黄,鉄鉱石,石炭,更に...
国内産出分では賄えない量を、ガリア並びにゲルマニアから輸...
当然価値が上がった方が、輸入には有利であるが、輸出には不...
輸出品は主にワイン、小麦,羊,牛,豚等だ
農産物がメインであり、高緯度であるゲルマニアの食料生産を...
現在トリステインが欲しいのは産業分野である為、為替高騰は...
だが、ゲルマニアには堪らない交渉だ
只でさえ、新レートベースで考えると2/3の値段で買い叩かれ、...
更に為替条約の交渉で0.9倍したら、1.67倍の値上げと、4割引...
ガリアから輸入するのもありだが、運賃の関係でトリステイン...
空路は無論、海路でもだ
陸路では隣接部からの貿易は野盗に邪魔される為、小国である...
ハルケギニアの輸送手段は、基本的に命がけである
雇った護衛が野盗である事もしばしばだ
奪われた荷物は野盗を経由して卸される為、かさが減り値段が...
くれてやるよりか格段に良いが、やってる事は横暴そのものだ
最も、外交とは5が必要とすると、10を要求して6〜7得られ...
だが、金本位をひっくり返す目論見で行われる交渉は初めてで...
「……一旦、協議させて貰う」
アルブレヒト三世がかろうじて、そう言い
「では同盟国として、素晴らしい返事を期待してますわ」
アンリエッタが返す
交渉は更に続きそうだ
* * *
一旦別れた両国は、協議を行っている
「クルデンホルフ使節団から報告。1.25で締結」
「あら、ヴァリエール公ともあろうお方が、随分手加減なされ...
アンリエッタの言い分に、スタッフが意見をする
「妥当と思いますが」
「‥理由を」
「はい、短期利益より、長期利益を優先したんだと判断します」
「つまり、交際費用ですか?」
「はい、それにクルデンホルフの資産は膨大です。我が国の国...
「‥成程、了解です。支出方法は?」
「産業育成と人材育成に支出が一番かと。一時金等で金を出す...
アンリエッタが少し考えて、言う
「では、私がやってるゼロ機関への支出は?」
「私は詳しくは存じませんが、仮に新しい産業が産まれると言...
「解りました。では、マザリーニは?」
「まだガリアに着いてないようです」
「成程、更に掻き回しましょう」
女王の貫禄を身に付けつつあるアンリエッタ
そのまま協議を続ける
* * *
「ふぅ、結婚しなくて正解だったわい」
ドサッ
乱暴に腰を下ろし、アルブレヒト三世が苦笑する
「女王として、中々やりますな」
「あれでは、尻に敷かれるわい」
ツェルプストー伯の発言に、アルブレヒト三世は汗を拭いなが...
「で、昨日の舞踏会では何か得られたかね?伯爵」
「そうですな、何やら新しい事をしているらしいですな。ツェ...
「…ゲルマニアとしてでは無いのだな」
アルブレヒトの皮肉も、ツェルプストー伯は涼しげだ
所詮、利害関係のみで繋がってるのがゲルマニアであり、常に...
隙を見せれば、分離独立すらあり得る
「少しは国にも融通しましょう」
「…ふん、まぁ良い。財務卿」
「はっ」
「どうだ?」
「素晴らしい一夜を」
「………やられたな、流石一筋縄ではいかぬ」
ツェルプストー伯の言い分に、アルブレヒトは財務卿を見る
「相手はトリステイン人か?」
「肯定です。陛下」
「ふん、女の使い方が上手いな。財務卿、貴卿に詳しく話さず...
「肯定です、陛下。お陰で憂いなく楽しめました」
「で、トリステインの狙いは解るか?」
「はっ、大体1.0〜1.15の間かと」
「…ふむ、最大限引き上げるぞ。では、第2ラウンドと行こうか」
アルブレヒトの号令に、ゲルマニア側が立ち上がった
* * *
更に翌日迄会議は白熱し、転機が訪れる
マザリーニのガリア到着と、ガリア王の条約承諾発言である
トリステイン側から情報がもたらされ、ゲルマニア側が一気に...
「ガリアでさえ承諾して下さるのですから、ゲルマニアも同盟...
アンリエッタがトドメを放つと、ゲルマニアが協議の為中座を...
「くっ、これ以上の引き延ばしは無理か」
アルブレヒトが言うと、ツェルプストー伯が心底感心して言う
「本来は三国集めてやる所を、時間の都合とは言え、2国間交...
「マザリーニか?奴ならやるだろうよ。鳥の骨と嫌われてるが...
その発言に、財務卿とツェルプストー伯が苦笑する
コンコン
「入れ」
ツェルプストー伯が促すと、ドレスを着たアニエスが入って来る
「失礼致します、ゲルマニア政府の皆様。陛下より申し遅れた...
「申してみよ」
アルブレヒトが応じると、アニエスは簡潔に報告する
「クルデンホルフも飲んだと」
「……了解した。下がってくれ」
パタン
アニエスが去っていくと、アルブレヒトは盛大に溜め息をつく
「…詰みだな。財務卿」
「はっ」
「同盟の名の元に飲む。但し1.1だ、これだけは譲れん。じゃな...
「ヤー」
急いで取り纏めて財務卿が退出すると、ツェルプストー伯とア...
「後は頼むぞ、伯爵」
「御意」
* * *
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