ゼロの使い魔保管庫
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開始行:
ルイズは起きて朝食をご馳走になると、モンモランシ伯が手配...
「川下りも良いなぁ。うん、風が気持ち良い」
午前中の陽射しと川から来る風のお陰で、一枚絵の様な美少女...
実際に、船頭は見惚れてしまっている
「はぁ、流石モンモランシ伯のお知り合いの貴族様。えらい別...
「何を当たり前の事を言ってるの?この私、ルイズ=ド=ラ=...
胸を張ってえっへんと反らすルイズ
もう、絶好調である
以前なら、平民にわざわざ反応しなかったのだが、魅惑の妖精...
でも、言ってる内容はあれである
やはり、ルイズはルイズなんだろう
「では、本日はグラモンに輿入れの相談ですかい?」
ニヤニヤしながら聞く船頭
「違うわ、恐れ多くも、女王陛下直々の御下命よ?貴方も、女...
ズビシ!
っと、指差して眼をキランと光らせる
やっぱり、とってもあれである
船頭は気付いたのだろう
「そいつは光栄ですな、へぇ」
如才なさは、全ての商売の基本である
すぐに口を聞くのを止めてしまった
「ブルルルルル」
駅で乗り替えた馬がタイミング良く鳴く
やはり、この馬も解ってるらしい
そのつぶらな瞳を船頭に向けて、同じ様にふぅと溜め息を付いた
* * *
ルイズがグラモン伯の製鉄所の桟橋から降りた時、製鉄所の大...
「何これ?おっきぃ」
川からグラモン邸に行くには、製鉄所を突っ切るのが一番の近...
トリスタニアより広い道路に、赤色の粉が樹木から何からまぶ...
「…何これ?」
「あぁ、製鉄所は初めてかい?貴族様」
「うん」
「そりゃ全部、鉄鉱石と鉄が錆びた粉末さ」
河岸の歩哨に言われて納得する
「へぇ、製鉄って、すんごい大変なんだなぁ」
「まぁね。グラモンはラ=ロシェールを越える、トリステイン...
「驚いた。ラ=ロシェールだけじゃ無いんだ」
「彼処は空の玄関口だ。海の玄関口の方が、品物は大量なのよ」
「ありがと、勉強になったわ。グラモン伯邸は、この道真っ直...
「あぁ、途中造船工廠やドックが見えるけど、真っ直ぐ行けば...
「ありがと」
「今はお客さん大量に来てっから、気を付けてな!!」
「解ったぁ!!」
ルイズは逸る心のまま、馬の手綱をピシリと入れる
製鉄所は本当に大きく、水路が網の目の様に形成されていて、...
「成る程、鉄は重いから、舟使った方が楽なのか」
一人うんうん頷くルイズ
全員が魔法使える訳じゃないのを、改めて痛感する
そのままぽくぽく歩いて(製鉄所内は、速度出すのは厳禁)行く...
「うわぁ、此方もおっきい」
造船工廠には、安定翼の無い建造中の海船が何隻も建造されて...
排水式ドックには、ルイズが驚くモノが何隻もドック入りして...
「戦列艦?あんなに傷付いてる」
ルイズの所迄、槌の響きがカンカン響いて来る
そのまま歩いて行くと、張られた天幕が幾つも見えて来て、其...
「トリステイン軍……被害負ったんだ」
更に進むと、グリフォンが肉を食べつつ、痛む所を毛繕いしな...
数が少ない事にルイズが気付いた
「あれ?数が少ない?哨戒かな?」
偶々天幕から出てきた衛士隊の隊員が、以前乗せて貰ったグリ...
「あの、トロワさんでしたっけ?」
「あ、君はあの時の……トロワはコードネームで三番隊中隊長っ...
「あのエドワードさん、何かグリフォン達も痛々しい感じで」
「あぁ、負けたからね。戦列艦七隻の内、二隻喪失、艦隊司令...
ボロ負けである
ルイズは思わずしゅんとする
「あ、あの」
「気にしないで良い。俺達は此が仕事だし、堂々と戦って負け...
そう言って、肩を竦めるエドワード
「…サイトが居れば」
「ははは、奴は今、起死回生の代物作ってんだろ?其迄は俺達...
「はいっ!」
ぽくぽく歩いて行くと、どうやら野戦病院の様だ
聖具の象を帽子に刻んだ衛生兵と、水のメイジ達が慌ただしく...
「蘇生!行くわよ!1・2・3・!戻って来なさい!イル・ウ...
衛生兵が跨がって心臓マッサージすると同時に、水メイジの治...
「鼓動戻りました!」
「良し、偉いぞ!まだまだヴァルハラなんかに行かないで、働...
威勢の良い発破を掛けて、更に治癒を詠唱する
「あれ?見たことある?」
「そこの貴女!ちょっと手伝いなさい!」
「は、はい!!」
思わず馬から降りて、駈けよるルイズ
「アンタもメイジなら治癒使えるでしょ?全部魔力吐き出して...
「うっ……」
困った、ルイズはゼロである
「ごめんなさい、私、その、ゼロなんです」
「何ですってぇ!?この役立た……て、あら貴女、もしかしてエレ...
思わずまじまじと覗き込んで、彼女は問いかける
「姉さまをご存知なのですか?」
「あぁ、やっぱり。今エレオノールも此所に居るわ。包帯位は...
「え、ですが」
「しかしもかかしもですがも無い!!挫けた男を癒すのは、美女...
「は、はい!!」
余りに威勢の良い啖呵に、思わず直立不動で返事してしまうル...
衛生兵が笑いながら包帯を渡して、命に関わる怪我でない負傷...
「いや、ミセスグラモンは本当におっかなくて格好良いお方で...
「…納得」
そして場所に着くと、大量の負傷兵が思い思いの姿で、座った...
その光景にルイズは思わず息を飲む
「こういう所は初めてですかな?ミス」
こくりと頷くルイズ
「無理はしなくて構いません。青い顔された方が迷惑ですので...
非情な宣告だが、負傷兵に希望を持たせるには、女性の笑顔が...
青い顔されたら、意気消沈されて、本当に治療効果が悪くなる...
現代医学に於いても、看護婦に惚れると治療効果が上がるのは...
勿論、ハルケギニアでは経験則だ
そして、ルイズの耳に馴染みの声音の詠唱が届いて来た
「ほらほら、この私が治療するんだから、さっさと治りなさい...
掛けられた負傷兵から、憎まれ口が返ってきた
「んだよ。女帝様の魔法、効き悪いなぁ」
「るっさいわね。あんたなんか、実験台に決まってんでしょ?...
どっと負傷兵達が湧き、そして負傷兵から、からかいの声が出た
「やべぇぞ、次の奴は命が危ねぇ」
「俺、遠慮する」
「俺も辞退するわ」
「それじゃ、アンタに決定」
辞退を申し出た相手を指差し、死の宣告
「いやぁ、止めてぇぇぇぇ!!お婿に行けなくなっちゃう!!」
「ブワッハハハハ。止めろ、笑わすな。腹の傷口開く」
周りが全員笑っている
「姉さま」
「イル・ウォータル・デル……あら来たの?ルイズ」
振り向いたエレオノールが、薄く笑っている
『え?嘘?姉さまが、平民に笑顔を見せてる?』
「え、何々この美少女?女帝様の妹?」
「そうよ〜。手を出したらアンタ達全員、金貨として一生を過...
目付きが鋭くなり、逆に歓声が上がる
「女帝様、金貨にしてくれ!!」
「黙りなさい!!この豚共!!」
「うひょー!!」
なんか、異様な盛り上がりを見せている
「衛生兵さん」
「…何でしょう?」
「トリステイン軍って……馬鹿?」
「……空軍は特に」
「…そうなんだ」
知りたい様な、知りたく無かった様な
自分達の事を守る軍が、まさか変態ばかりだなんて、ルイズは...
其でも覚悟を決めて、えいやと飛び込み、血の滲んだ包帯を取...
* * *
ルイズ達が包帯を交換しては洗い、また交換していると、治療...
医師と水メイジ達の混成部隊である
竜籠の紋章は各家入り交じっており、正にトリステイン全土か...
先頭を歩くのは、トリステイン一の水使いたるヴァレリーだ
「エレオノール!良くやった!」
「後は任せた!トリステイン一の水使い!!」
ぱぁん!!
片手を掲げたヴァレリーに、エレオノールが手を思い切り叩い...
「ルイズ、あんたも良くやった。ヴァレリー来たから、もう大...
「はい、姉さま」
そう言って、エレオノールは又奥に入って行く
「あの、姉さまは?」
「あぁ、レティシアの馬鹿たれ、引っ張って来るだけよ。あい...
そう言って、エレオノールが奥に入って行く
そしてルイズが治療団を良く見ると、学院の制服を纏った上級...
「ゼロのルイズ!あんたの事見直したわ!後は、私達水使いに...
「お願いします、先輩に同級生達!」
そして、ルイズの後ろから、ポンと両肩を叩かれた
振り返ったルイズが見たのは、今朝挨拶を交わした彼女だ
「モンモランシー」
「全く、こんな事になってるなら、私も一緒に来るんだった。...
「うん」
モンモランシーも治療に加わる為に天幕に入って行き、ルイズ...
アンリエッタの言葉が、染み込んで来る
『私達トリステインは弱い国です。総力を結集せねば勝てませ...
「姫様が、敗北知って、皆を動かしたんだ」
ルイズは意思も新たにうしと気合いを入れると、口論の声とズ...
「こら、レティシア。さっさと邸宅に行くわよ。あんた働き過...
「るっさ〜い!離せエレオノール!!私はジョルジュに頼まれた...
「……すご」
思わずルイズが声のする方に歩いて行くと、レティシアを羽交...
「は〜な〜せ〜〜〜〜!!」
「だぁもう、誰かこのワーカホリック眠らせて!!」
「嫌よ。何でそんな事に、魔力使わないといけないのよ?」
ヴァレリーの言葉に周りの水使い達が全員頷き、治癒の詠唱を...
「あぁ、もう。ルイズ、丁度良いわ。アンタも手伝って」
「は、はい姉さま。あのミセスグラモン。貴女はもう充分に」
「そんな事なぁい!私はまだまだ唱えられる!此所で全開でや...
ヴァリエール姉妹が、その言葉にきょとんとする
「……あんたまさか、ご褒美欲しくてやってるの?」
「るっさいわね。私がジョルジュにベタ惚れなのよ。別に良い...
そんなやり取りしてると、ヴァレリーから声が掛かった
「レティシア、私だけじゃキツイわ。同調詠唱やるわよ。じゃ...
「離せ、エレオノール」
思わずエレオノールが離してしまい、レティシアが配置に付き...
「乗数は?」
「四乗に決まってるでしょうが」
「了解」
「姉さま、同調詠唱って?」
そんなやり取りを聞き、エレオノールはルイズに語り出した
「元々は、パラディンの聖歌斉唱がベースになってる詠唱方法...
「はい」
集中し始めた二人にトントントンと足でのリズムが鳴り響き、...
「「イル・ウォータル・デル」」
瀕死の患者にに光が集まり、顔色が良くなって呼吸が復活する
「ふぅ、安定終了」
ヴァレリーが汗を拭って宣言すると
ドサリ
レティシアが、精神力を切らしてぶっ倒れた
「それ、さっさと旦那のベッドに放り込みなさい」
「さっき迄、あんなに元気だったのに」
通常は精神力が減ると、明らかに体調がおかしくなる
なのに、元気だったのに一発で倒れてしまった
ルイズの驚きは当然だ
「欠点は、威力は有っても同調に精神力を思い切り磨り減らす...
「あれ?じゃあまさか、わざと?」
「エレオノールの妹さん、勘違いしない事ね。私達は、必要だ...
他の水使い達が頷き、ヴァレリーは別の天幕に向かって行った
「ちびルイズ、アカデミーの主席研究員を馬鹿にしないで頂戴」
ごつん
久し振りの鉄拳制裁
ルイズは涙目になりながら、エレオノールに謝った
「ごめんなさい、姉さま」
「さてと、じゃあ、罰ゲームはレティシアおぶって運びなさい」
「え゛?」
「どうせ、馬かなんか持って来てんでしょ?」
お見通しらしい
ルイズは素直に頷いた
* * *
ルイズ達が馬に気絶したレティシアを乗せて、グラモン邸に向...
「で、どうしたのルイズ?向こうの仕事終わったの?」
「はい、姉さま。きちんと陛下の御下命で参りました。サイト...
「あららら、タイミング悪かったわね」
「まさか、居ないんですか?」
「えぇ、タバサって娘居たでしょ?」
「タバサに、何か有ったんですか?」
「えぇ、孤立無援のピンチだからって、義妹さんが平民に助け...
「……」
全く、タイミング悪い時は本当に悪い
「姉さまは?」
「きちんと此方で対策練る部分は練ってたのよ。でも負傷兵が...
『やっぱり、姉さまには敵わないなぁ。本当の、貴族の誇りを...
そんなエレオノールを見ると、丁度二人を風が撫で、エレオノ...
「姉さま。更に綺麗になってる……」
「そう?お世辞言っても、何も出ないわよ?」
さっきもそうだったが、鋭さは相変わらずなのに、柔らかさが...
以前の寄れば刺す感じだったエレオノールには、無かった仕草だ
「お世辞じゃないもん。本当に綺麗だなって」
「ふふっ、ありがと」
「ほら、また笑った」
「…何よ?私が笑うと変だと言うの?」
「はっきり言って変です。以前はそんな風に、笑いませんでし...
「…あんたは、相変わらず余計な事ばっかり言って。そんな事言...
歩きながら器用にルイズの頬っぺたを両方つまみ上げ、ルイズ...
「いふぁい、いふぁい、いふぁいれす」
* * *
日が暮れてから二人はグラモン邸に着き、エントランスに迄馬...
「奥様!?」
「精神力切れよ。男はジョルジュ以外寄るな。メイド、運びな...
「それには及ばない」
後ろから声がかかり、ジョルジュが埃だらけで居た
「毎日訓練ご苦労様」「レティシアは?」
「あんたに可愛がって貰いたくて、不眠不休で働いてたわ」
「流石は俺の嫁。たっぷり可愛がってやらないと」
そう言うや、レビテーションを掛けて浮かせ、自分自身の腕で...
「起きな、我が姫。君の王子がお呼びだよ」
抱き止めながらぺしぺしと頬を叩いて覚醒を促し、レティシア...
「……ジョルジュ?」
「良く働いてたんだってな。ご褒美は何が欲しい?」
「二人目が欲しい」
「良し解った。作るぞ」
「うん」
レティシアがジョルジュの首に手を回し、すっかり二人の世界...
パタンと扉が閉められると、ルイズがほうって溜め息を付く
「……羨ましい」
「あれで、浮気癖が酷くなければねぇ」
エレオノールが苦笑しながら答える
「姉さま、そんなに酷いの?」
「グラモンの旦那なんだから、当たり前でしょうが。平民なん...
その事実はルイズに軽くさくっと刺さる
『才人で序の口……あたしだけを見てってのは、贅沢な望みなん...
* * *
そして、ルイズの部屋は、エレオノールと同じに指定された
姉妹積もり話も有るだろうとの配慮である
そして部屋に入るなり、クンクン匂いを嗅いで、また犬の痕跡...
「サイトの匂いがする」
「…ちびルイズ。あんたが犬なんじゃない?」
「うっ」
ついどもってしまうルイズ
「さて、私もあんたの姉だし、悩んでる様子位解るのよ。たま...
そう言って、自身は椅子に座り、ルイズはベッドに座る
そして、ベッドの品物にもクンクンクンクン
「あのね。シーツとか毎日換えてあるわよ」
「サイトの匂いがする」
「だから、交換してるって」
「シーツの下から匂うもの」
「……あのね」
「サイト、この部屋で寝たんでしょ?」
隠すとムキになる
エレオノールは頷いた
「えぇ、そうよ」
そして、ルイズはきゅっと下唇を噛んでから、言ったのだ
「姉さま。男の人って何人位妾取るの?」
ルイズの問いは真剣だ
実はエレオノールも苦手な分野だが、真面目に答える
「そうね……人によるとしか言えないけど、5人は貴族なら当た...
「そんなに?」
「えぇ。今回は、最大20万人動員されるらしいわ。今やってる...
「そうなんだ」
「そう、そして貴族は大体2万人位、その殆どが男性よ」
「うん」
「実はこれ、トリステインの10代半ばから40代迄の、戦える貴...
「ほぼ…全員?」
「そう、戦える貴族の総人口って事は、結婚適齢期の総人口っ...
「うん」
「で、貴族の場合男女同じ数位なのは、実はあんたの年代迄な...
ルイズはゾッとする
生きて命脈を保つ事自体が難しいのだ
「今回で、どれ位死ぬと思う?」
「解らないです、姉さま」
「快勝しても、5000人。苦戦すれば5万は死ぬわね」
「そんなに」
「で、貴族ってのは士官でしょ?」
「うん」
「士官って、戦場では真っ先に狙われるの。何でか解る?一番...
「それって、簡単に死ぬって事?」
「そう、貴族の総人口が人口の5%なら、戦場で10%。そして...
「うん」
「実はそういう部隊は強力な反面、損耗も激しい。私の魔法学...
どんどんしゅんとなっていく、ルイズ
「解る?今回の戦争で、戦列艦や上陸前線部隊に配置された貴...
そう、今でも恋の争いをしてるが、更に其が激烈になる
「そしたら…」
「そう、結婚する為に、男を求めて争奪戦が開始される。ブリ...
「…うん」
「私達の父様が、なんで批判されまくってるか知ってる?公爵...
「……」
「解った?強い男が尊敬されて、強さを求めて決闘し、ばたば...
「…」
「結局、貴女は戦争で学友亡くすみたいだから。私と変わらな...
「サイトも……死ぬの?」
「…あいつはどうかな?周りを死なせない為に働いて、自分自身...
ちくん
ルイズは涙が込み上げて来る
「ヤダよ。サイトに死んで欲しくないよ」
「そうね。ルイズは何が望み?」
「…サイトがあたしだけを見て欲しい」
「そして、私みたいに結婚出来ない女を、無意識に量産するん...
「そ、そんな事思って」
「思って無くてもそうなってしまうの。貴女が思ってるのはハ...
徹底的に現実を突き付けられ、ルイズは落ち込む
「…私、何で貴族に産まれちゃったのかな?」
ルイズの落ち込みに、ベッドに移動して座り、ルイズを自身の...
「父様と母様に望まれたからに決まってるじゃない。さっきの...
「うん。すっごく綺麗で羨ましかった」
あの時の情景を思い出し、目を輝かせるルイズ
「私もよ。一度言ってみたいわ」
「姉さまの言いたい人って誰?」
すると、ぴたりと止まって、黙りこくるエレオノール
「…姉さま?」
「……隠すのも止めるわ。ちびルイズ、あんたの使い魔寝取った...
ルイズは正面から言われ、流石に衝撃を受ける
「でででも姉さま」
「さぁ、覚悟を決めなさい、ルイズ。姉と決闘して、姉を仕留...
エレオノールの眼は真剣だ、答え次第では本当に杖を取るだろう
ルイズには、その真剣さに呑まれ、ガクガクだ
「ああああたし、姉さまとけけけ決闘なんて」
すると、くすりと笑ってエレオノールがルイズを抱き締めた
「きゃっ!!」
「いやぁね。冗談よ冗談。私がルイズと決闘なんかする訳無い...
「姉さま?」
エレオノールの身体が震えている
「ごめんね、ルイズ。私、本気なの。馬鹿な姉でごめんね。貴...
ルイズの頭に手を添えて、強く、ひたすら強く、そして震える
「…姉さま」
「何が貴族よ?何が平民よ?あの馬鹿全部ひっくり返して!!こ...
「…姉さま」
そして、エレオノールはルイズを離し、語りかけた
「ルイズはどうするの?あいつとの利害が分かたれたら、終わ...
父が、絶対に認めない事を理解してるのだろう
公爵位は、それ程重い
「姉さま……向けるの?」
「えぇ、向けるわ。もう、あいつ以外駄目。私の安らぎは、あ...
ルイズは、その感覚に共感を覚える
何故なら、自分もそうだからだ
「姉さまは、父さまを説得しないんですか?」
「杖以外で、どうやって説得すんのよ?」
「…その通りです」
そしてルイズは、思った事を口にした
「ヴァリエールって、馬鹿揃いなのね」
「そうよ〜。先祖代々馬鹿揃い。皆平民に恋してんのよ?知っ...
「嘘っ!?」
「本当よ、本当。御先祖様の日記に平民の恋人宛の苦悩の日々...
「え?本当に?聞く聞く!!」
父の余りに情けない話を聞き、ルイズは厳しくも優しいの父の...
エレオノールはルイズの桃髪を撫でながら、呟いた
「可愛いくて生意気で夢見がちな、私のちびルイズ。神の左手...
* * *
終了行:
ルイズは起きて朝食をご馳走になると、モンモランシ伯が手配...
「川下りも良いなぁ。うん、風が気持ち良い」
午前中の陽射しと川から来る風のお陰で、一枚絵の様な美少女...
実際に、船頭は見惚れてしまっている
「はぁ、流石モンモランシ伯のお知り合いの貴族様。えらい別...
「何を当たり前の事を言ってるの?この私、ルイズ=ド=ラ=...
胸を張ってえっへんと反らすルイズ
もう、絶好調である
以前なら、平民にわざわざ反応しなかったのだが、魅惑の妖精...
でも、言ってる内容はあれである
やはり、ルイズはルイズなんだろう
「では、本日はグラモンに輿入れの相談ですかい?」
ニヤニヤしながら聞く船頭
「違うわ、恐れ多くも、女王陛下直々の御下命よ?貴方も、女...
ズビシ!
っと、指差して眼をキランと光らせる
やっぱり、とってもあれである
船頭は気付いたのだろう
「そいつは光栄ですな、へぇ」
如才なさは、全ての商売の基本である
すぐに口を聞くのを止めてしまった
「ブルルルルル」
駅で乗り替えた馬がタイミング良く鳴く
やはり、この馬も解ってるらしい
そのつぶらな瞳を船頭に向けて、同じ様にふぅと溜め息を付いた
* * *
ルイズがグラモン伯の製鉄所の桟橋から降りた時、製鉄所の大...
「何これ?おっきぃ」
川からグラモン邸に行くには、製鉄所を突っ切るのが一番の近...
トリスタニアより広い道路に、赤色の粉が樹木から何からまぶ...
「…何これ?」
「あぁ、製鉄所は初めてかい?貴族様」
「うん」
「そりゃ全部、鉄鉱石と鉄が錆びた粉末さ」
河岸の歩哨に言われて納得する
「へぇ、製鉄って、すんごい大変なんだなぁ」
「まぁね。グラモンはラ=ロシェールを越える、トリステイン...
「驚いた。ラ=ロシェールだけじゃ無いんだ」
「彼処は空の玄関口だ。海の玄関口の方が、品物は大量なのよ」
「ありがと、勉強になったわ。グラモン伯邸は、この道真っ直...
「あぁ、途中造船工廠やドックが見えるけど、真っ直ぐ行けば...
「ありがと」
「今はお客さん大量に来てっから、気を付けてな!!」
「解ったぁ!!」
ルイズは逸る心のまま、馬の手綱をピシリと入れる
製鉄所は本当に大きく、水路が網の目の様に形成されていて、...
「成る程、鉄は重いから、舟使った方が楽なのか」
一人うんうん頷くルイズ
全員が魔法使える訳じゃないのを、改めて痛感する
そのままぽくぽく歩いて(製鉄所内は、速度出すのは厳禁)行く...
「うわぁ、此方もおっきい」
造船工廠には、安定翼の無い建造中の海船が何隻も建造されて...
排水式ドックには、ルイズが驚くモノが何隻もドック入りして...
「戦列艦?あんなに傷付いてる」
ルイズの所迄、槌の響きがカンカン響いて来る
そのまま歩いて行くと、張られた天幕が幾つも見えて来て、其...
「トリステイン軍……被害負ったんだ」
更に進むと、グリフォンが肉を食べつつ、痛む所を毛繕いしな...
数が少ない事にルイズが気付いた
「あれ?数が少ない?哨戒かな?」
偶々天幕から出てきた衛士隊の隊員が、以前乗せて貰ったグリ...
「あの、トロワさんでしたっけ?」
「あ、君はあの時の……トロワはコードネームで三番隊中隊長っ...
「あのエドワードさん、何かグリフォン達も痛々しい感じで」
「あぁ、負けたからね。戦列艦七隻の内、二隻喪失、艦隊司令...
ボロ負けである
ルイズは思わずしゅんとする
「あ、あの」
「気にしないで良い。俺達は此が仕事だし、堂々と戦って負け...
そう言って、肩を竦めるエドワード
「…サイトが居れば」
「ははは、奴は今、起死回生の代物作ってんだろ?其迄は俺達...
「はいっ!」
ぽくぽく歩いて行くと、どうやら野戦病院の様だ
聖具の象を帽子に刻んだ衛生兵と、水のメイジ達が慌ただしく...
「蘇生!行くわよ!1・2・3・!戻って来なさい!イル・ウ...
衛生兵が跨がって心臓マッサージすると同時に、水メイジの治...
「鼓動戻りました!」
「良し、偉いぞ!まだまだヴァルハラなんかに行かないで、働...
威勢の良い発破を掛けて、更に治癒を詠唱する
「あれ?見たことある?」
「そこの貴女!ちょっと手伝いなさい!」
「は、はい!!」
思わず馬から降りて、駈けよるルイズ
「アンタもメイジなら治癒使えるでしょ?全部魔力吐き出して...
「うっ……」
困った、ルイズはゼロである
「ごめんなさい、私、その、ゼロなんです」
「何ですってぇ!?この役立た……て、あら貴女、もしかしてエレ...
思わずまじまじと覗き込んで、彼女は問いかける
「姉さまをご存知なのですか?」
「あぁ、やっぱり。今エレオノールも此所に居るわ。包帯位は...
「え、ですが」
「しかしもかかしもですがも無い!!挫けた男を癒すのは、美女...
「は、はい!!」
余りに威勢の良い啖呵に、思わず直立不動で返事してしまうル...
衛生兵が笑いながら包帯を渡して、命に関わる怪我でない負傷...
「いや、ミセスグラモンは本当におっかなくて格好良いお方で...
「…納得」
そして場所に着くと、大量の負傷兵が思い思いの姿で、座った...
その光景にルイズは思わず息を飲む
「こういう所は初めてですかな?ミス」
こくりと頷くルイズ
「無理はしなくて構いません。青い顔された方が迷惑ですので...
非情な宣告だが、負傷兵に希望を持たせるには、女性の笑顔が...
青い顔されたら、意気消沈されて、本当に治療効果が悪くなる...
現代医学に於いても、看護婦に惚れると治療効果が上がるのは...
勿論、ハルケギニアでは経験則だ
そして、ルイズの耳に馴染みの声音の詠唱が届いて来た
「ほらほら、この私が治療するんだから、さっさと治りなさい...
掛けられた負傷兵から、憎まれ口が返ってきた
「んだよ。女帝様の魔法、効き悪いなぁ」
「るっさいわね。あんたなんか、実験台に決まってんでしょ?...
どっと負傷兵達が湧き、そして負傷兵から、からかいの声が出た
「やべぇぞ、次の奴は命が危ねぇ」
「俺、遠慮する」
「俺も辞退するわ」
「それじゃ、アンタに決定」
辞退を申し出た相手を指差し、死の宣告
「いやぁ、止めてぇぇぇぇ!!お婿に行けなくなっちゃう!!」
「ブワッハハハハ。止めろ、笑わすな。腹の傷口開く」
周りが全員笑っている
「姉さま」
「イル・ウォータル・デル……あら来たの?ルイズ」
振り向いたエレオノールが、薄く笑っている
『え?嘘?姉さまが、平民に笑顔を見せてる?』
「え、何々この美少女?女帝様の妹?」
「そうよ〜。手を出したらアンタ達全員、金貨として一生を過...
目付きが鋭くなり、逆に歓声が上がる
「女帝様、金貨にしてくれ!!」
「黙りなさい!!この豚共!!」
「うひょー!!」
なんか、異様な盛り上がりを見せている
「衛生兵さん」
「…何でしょう?」
「トリステイン軍って……馬鹿?」
「……空軍は特に」
「…そうなんだ」
知りたい様な、知りたく無かった様な
自分達の事を守る軍が、まさか変態ばかりだなんて、ルイズは...
其でも覚悟を決めて、えいやと飛び込み、血の滲んだ包帯を取...
* * *
ルイズ達が包帯を交換しては洗い、また交換していると、治療...
医師と水メイジ達の混成部隊である
竜籠の紋章は各家入り交じっており、正にトリステイン全土か...
先頭を歩くのは、トリステイン一の水使いたるヴァレリーだ
「エレオノール!良くやった!」
「後は任せた!トリステイン一の水使い!!」
ぱぁん!!
片手を掲げたヴァレリーに、エレオノールが手を思い切り叩い...
「ルイズ、あんたも良くやった。ヴァレリー来たから、もう大...
「はい、姉さま」
そう言って、エレオノールは又奥に入って行く
「あの、姉さまは?」
「あぁ、レティシアの馬鹿たれ、引っ張って来るだけよ。あい...
そう言って、エレオノールが奥に入って行く
そしてルイズが治療団を良く見ると、学院の制服を纏った上級...
「ゼロのルイズ!あんたの事見直したわ!後は、私達水使いに...
「お願いします、先輩に同級生達!」
そして、ルイズの後ろから、ポンと両肩を叩かれた
振り返ったルイズが見たのは、今朝挨拶を交わした彼女だ
「モンモランシー」
「全く、こんな事になってるなら、私も一緒に来るんだった。...
「うん」
モンモランシーも治療に加わる為に天幕に入って行き、ルイズ...
アンリエッタの言葉が、染み込んで来る
『私達トリステインは弱い国です。総力を結集せねば勝てませ...
「姫様が、敗北知って、皆を動かしたんだ」
ルイズは意思も新たにうしと気合いを入れると、口論の声とズ...
「こら、レティシア。さっさと邸宅に行くわよ。あんた働き過...
「るっさ〜い!離せエレオノール!!私はジョルジュに頼まれた...
「……すご」
思わずルイズが声のする方に歩いて行くと、レティシアを羽交...
「は〜な〜せ〜〜〜〜!!」
「だぁもう、誰かこのワーカホリック眠らせて!!」
「嫌よ。何でそんな事に、魔力使わないといけないのよ?」
ヴァレリーの言葉に周りの水使い達が全員頷き、治癒の詠唱を...
「あぁ、もう。ルイズ、丁度良いわ。アンタも手伝って」
「は、はい姉さま。あのミセスグラモン。貴女はもう充分に」
「そんな事なぁい!私はまだまだ唱えられる!此所で全開でや...
ヴァリエール姉妹が、その言葉にきょとんとする
「……あんたまさか、ご褒美欲しくてやってるの?」
「るっさいわね。私がジョルジュにベタ惚れなのよ。別に良い...
そんなやり取りしてると、ヴァレリーから声が掛かった
「レティシア、私だけじゃキツイわ。同調詠唱やるわよ。じゃ...
「離せ、エレオノール」
思わずエレオノールが離してしまい、レティシアが配置に付き...
「乗数は?」
「四乗に決まってるでしょうが」
「了解」
「姉さま、同調詠唱って?」
そんなやり取りを聞き、エレオノールはルイズに語り出した
「元々は、パラディンの聖歌斉唱がベースになってる詠唱方法...
「はい」
集中し始めた二人にトントントンと足でのリズムが鳴り響き、...
「「イル・ウォータル・デル」」
瀕死の患者にに光が集まり、顔色が良くなって呼吸が復活する
「ふぅ、安定終了」
ヴァレリーが汗を拭って宣言すると
ドサリ
レティシアが、精神力を切らしてぶっ倒れた
「それ、さっさと旦那のベッドに放り込みなさい」
「さっき迄、あんなに元気だったのに」
通常は精神力が減ると、明らかに体調がおかしくなる
なのに、元気だったのに一発で倒れてしまった
ルイズの驚きは当然だ
「欠点は、威力は有っても同調に精神力を思い切り磨り減らす...
「あれ?じゃあまさか、わざと?」
「エレオノールの妹さん、勘違いしない事ね。私達は、必要だ...
他の水使い達が頷き、ヴァレリーは別の天幕に向かって行った
「ちびルイズ、アカデミーの主席研究員を馬鹿にしないで頂戴」
ごつん
久し振りの鉄拳制裁
ルイズは涙目になりながら、エレオノールに謝った
「ごめんなさい、姉さま」
「さてと、じゃあ、罰ゲームはレティシアおぶって運びなさい」
「え゛?」
「どうせ、馬かなんか持って来てんでしょ?」
お見通しらしい
ルイズは素直に頷いた
* * *
ルイズ達が馬に気絶したレティシアを乗せて、グラモン邸に向...
「で、どうしたのルイズ?向こうの仕事終わったの?」
「はい、姉さま。きちんと陛下の御下命で参りました。サイト...
「あららら、タイミング悪かったわね」
「まさか、居ないんですか?」
「えぇ、タバサって娘居たでしょ?」
「タバサに、何か有ったんですか?」
「えぇ、孤立無援のピンチだからって、義妹さんが平民に助け...
「……」
全く、タイミング悪い時は本当に悪い
「姉さまは?」
「きちんと此方で対策練る部分は練ってたのよ。でも負傷兵が...
『やっぱり、姉さまには敵わないなぁ。本当の、貴族の誇りを...
そんなエレオノールを見ると、丁度二人を風が撫で、エレオノ...
「姉さま。更に綺麗になってる……」
「そう?お世辞言っても、何も出ないわよ?」
さっきもそうだったが、鋭さは相変わらずなのに、柔らかさが...
以前の寄れば刺す感じだったエレオノールには、無かった仕草だ
「お世辞じゃないもん。本当に綺麗だなって」
「ふふっ、ありがと」
「ほら、また笑った」
「…何よ?私が笑うと変だと言うの?」
「はっきり言って変です。以前はそんな風に、笑いませんでし...
「…あんたは、相変わらず余計な事ばっかり言って。そんな事言...
歩きながら器用にルイズの頬っぺたを両方つまみ上げ、ルイズ...
「いふぁい、いふぁい、いふぁいれす」
* * *
日が暮れてから二人はグラモン邸に着き、エントランスに迄馬...
「奥様!?」
「精神力切れよ。男はジョルジュ以外寄るな。メイド、運びな...
「それには及ばない」
後ろから声がかかり、ジョルジュが埃だらけで居た
「毎日訓練ご苦労様」「レティシアは?」
「あんたに可愛がって貰いたくて、不眠不休で働いてたわ」
「流石は俺の嫁。たっぷり可愛がってやらないと」
そう言うや、レビテーションを掛けて浮かせ、自分自身の腕で...
「起きな、我が姫。君の王子がお呼びだよ」
抱き止めながらぺしぺしと頬を叩いて覚醒を促し、レティシア...
「……ジョルジュ?」
「良く働いてたんだってな。ご褒美は何が欲しい?」
「二人目が欲しい」
「良し解った。作るぞ」
「うん」
レティシアがジョルジュの首に手を回し、すっかり二人の世界...
パタンと扉が閉められると、ルイズがほうって溜め息を付く
「……羨ましい」
「あれで、浮気癖が酷くなければねぇ」
エレオノールが苦笑しながら答える
「姉さま、そんなに酷いの?」
「グラモンの旦那なんだから、当たり前でしょうが。平民なん...
その事実はルイズに軽くさくっと刺さる
『才人で序の口……あたしだけを見てってのは、贅沢な望みなん...
* * *
そして、ルイズの部屋は、エレオノールと同じに指定された
姉妹積もり話も有るだろうとの配慮である
そして部屋に入るなり、クンクン匂いを嗅いで、また犬の痕跡...
「サイトの匂いがする」
「…ちびルイズ。あんたが犬なんじゃない?」
「うっ」
ついどもってしまうルイズ
「さて、私もあんたの姉だし、悩んでる様子位解るのよ。たま...
そう言って、自身は椅子に座り、ルイズはベッドに座る
そして、ベッドの品物にもクンクンクンクン
「あのね。シーツとか毎日換えてあるわよ」
「サイトの匂いがする」
「だから、交換してるって」
「シーツの下から匂うもの」
「……あのね」
「サイト、この部屋で寝たんでしょ?」
隠すとムキになる
エレオノールは頷いた
「えぇ、そうよ」
そして、ルイズはきゅっと下唇を噛んでから、言ったのだ
「姉さま。男の人って何人位妾取るの?」
ルイズの問いは真剣だ
実はエレオノールも苦手な分野だが、真面目に答える
「そうね……人によるとしか言えないけど、5人は貴族なら当た...
「そんなに?」
「えぇ。今回は、最大20万人動員されるらしいわ。今やってる...
「そうなんだ」
「そう、そして貴族は大体2万人位、その殆どが男性よ」
「うん」
「実はこれ、トリステインの10代半ばから40代迄の、戦える貴...
「ほぼ…全員?」
「そう、戦える貴族の総人口って事は、結婚適齢期の総人口っ...
「うん」
「で、貴族の場合男女同じ数位なのは、実はあんたの年代迄な...
ルイズはゾッとする
生きて命脈を保つ事自体が難しいのだ
「今回で、どれ位死ぬと思う?」
「解らないです、姉さま」
「快勝しても、5000人。苦戦すれば5万は死ぬわね」
「そんなに」
「で、貴族ってのは士官でしょ?」
「うん」
「士官って、戦場では真っ先に狙われるの。何でか解る?一番...
「それって、簡単に死ぬって事?」
「そう、貴族の総人口が人口の5%なら、戦場で10%。そして...
「うん」
「実はそういう部隊は強力な反面、損耗も激しい。私の魔法学...
どんどんしゅんとなっていく、ルイズ
「解る?今回の戦争で、戦列艦や上陸前線部隊に配置された貴...
そう、今でも恋の争いをしてるが、更に其が激烈になる
「そしたら…」
「そう、結婚する為に、男を求めて争奪戦が開始される。ブリ...
「…うん」
「私達の父様が、なんで批判されまくってるか知ってる?公爵...
「……」
「解った?強い男が尊敬されて、強さを求めて決闘し、ばたば...
「…」
「結局、貴女は戦争で学友亡くすみたいだから。私と変わらな...
「サイトも……死ぬの?」
「…あいつはどうかな?周りを死なせない為に働いて、自分自身...
ちくん
ルイズは涙が込み上げて来る
「ヤダよ。サイトに死んで欲しくないよ」
「そうね。ルイズは何が望み?」
「…サイトがあたしだけを見て欲しい」
「そして、私みたいに結婚出来ない女を、無意識に量産するん...
「そ、そんな事思って」
「思って無くてもそうなってしまうの。貴女が思ってるのはハ...
徹底的に現実を突き付けられ、ルイズは落ち込む
「…私、何で貴族に産まれちゃったのかな?」
ルイズの落ち込みに、ベッドに移動して座り、ルイズを自身の...
「父様と母様に望まれたからに決まってるじゃない。さっきの...
「うん。すっごく綺麗で羨ましかった」
あの時の情景を思い出し、目を輝かせるルイズ
「私もよ。一度言ってみたいわ」
「姉さまの言いたい人って誰?」
すると、ぴたりと止まって、黙りこくるエレオノール
「…姉さま?」
「……隠すのも止めるわ。ちびルイズ、あんたの使い魔寝取った...
ルイズは正面から言われ、流石に衝撃を受ける
「でででも姉さま」
「さぁ、覚悟を決めなさい、ルイズ。姉と決闘して、姉を仕留...
エレオノールの眼は真剣だ、答え次第では本当に杖を取るだろう
ルイズには、その真剣さに呑まれ、ガクガクだ
「ああああたし、姉さまとけけけ決闘なんて」
すると、くすりと笑ってエレオノールがルイズを抱き締めた
「きゃっ!!」
「いやぁね。冗談よ冗談。私がルイズと決闘なんかする訳無い...
「姉さま?」
エレオノールの身体が震えている
「ごめんね、ルイズ。私、本気なの。馬鹿な姉でごめんね。貴...
ルイズの頭に手を添えて、強く、ひたすら強く、そして震える
「…姉さま」
「何が貴族よ?何が平民よ?あの馬鹿全部ひっくり返して!!こ...
「…姉さま」
そして、エレオノールはルイズを離し、語りかけた
「ルイズはどうするの?あいつとの利害が分かたれたら、終わ...
父が、絶対に認めない事を理解してるのだろう
公爵位は、それ程重い
「姉さま……向けるの?」
「えぇ、向けるわ。もう、あいつ以外駄目。私の安らぎは、あ...
ルイズは、その感覚に共感を覚える
何故なら、自分もそうだからだ
「姉さまは、父さまを説得しないんですか?」
「杖以外で、どうやって説得すんのよ?」
「…その通りです」
そしてルイズは、思った事を口にした
「ヴァリエールって、馬鹿揃いなのね」
「そうよ〜。先祖代々馬鹿揃い。皆平民に恋してんのよ?知っ...
「嘘っ!?」
「本当よ、本当。御先祖様の日記に平民の恋人宛の苦悩の日々...
「え?本当に?聞く聞く!!」
父の余りに情けない話を聞き、ルイズは厳しくも優しいの父の...
エレオノールはルイズの桃髪を撫でながら、呟いた
「可愛いくて生意気で夢見がちな、私のちびルイズ。神の左手...
* * *
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