ゼロの使い魔保管庫
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「で、大体一通りですかね」
「…只書くだけで、こんなに制約が有るんですね」
カトレアが才人の講義を上気した顔で真剣に受け、今しがた迄...
「身体弱いんでしょう?あんまり根詰めなくて良いですよ。休...
「駄目です。今すぐ復習しないと、忘れてしまいます」
こういう強情っぱりは、エレオノールと同じだ
思わず才人が溜め息を付く
「解りました。但し、簡単な奴で行きます。その後休憩で、解...
「はい、才人殿」
才人が簡単な手書き図面を書き、ドラフターの上部に貼り付け...
「じゃあ、コイツを三角法で書いて下さい。時間は30分、あの...
才人の合図からカトレアが真剣に書き出した
キュッキュッ、キュッ
カトレアのペンが走る音が部屋に木霊し、才人はその真剣さに...
『はぁ、本当に姉妹だな。そっくりだ』
変に感心しつつ、才人はカトレアの手元を見てると、格段に上...
見よう見真似に、才人の指導が加わったせいだろう
「はい、出来ました」
「25分か。中々ですね」
そう言った才人が図面を覗き込み、チェックを入れる
「ん〜、この部分に円入るの忘れてる。後は此処は破線。初め...
カトレアは指摘にショックを受け
「あぁ!?もう一度。もう一度やりましょう!次こそ完璧に」
「駄目。カトレアさん、気付いてる?」
「何がですか?まだ大丈夫です。才人殿がいらっしゃる時間を...
そんなカトレアの肩を軽くつつくとカトレアがぐらりと傾き、...
「…あ」
「ほら、こんなに根詰めて。本当に、エレオノールさんやルイ...
カトレアが悔しげに唇を噛み、俯く
「大丈夫ですよ。ヴァリエール公爵と交渉しなきゃならないか...
言外に休めと言われてるが、カトレアは悔しげな表情を変えない
「…付いて来れない身体が恨めしいかもしれないけど、俺は仕事...
ハッと顔を上げ、恥ずかしそうに今度は俯き、コクンと頷いた
「…そこ迄、考えが至りませんでした」
「ほら、こんなに根詰めて。本当に、エレオノールさんやルイ...
カトレアが悔しげに唇を噛み、俯く
「大丈夫ですよ。ヴァリエール公爵と交渉しなきゃならないか...
言外に休めと言われてるが、カトレアは悔しげな表情を変えない
「…付いて来れない身体が恨めしいかもしれないけど、俺は仕事...
ハッと顔を上げ、恥ずかしそうに今度は俯き、コクンと頷いた
「…そこ迄、考えが至りませんでした」
そう言ってベッドの上でカトレアが笑みを浮かべ、シエスタが...
「シエスタ、ナイスタイミング。カトレアさんに甘い奴お願い」
才人のお願いににこりとシエスタが微笑み、砂糖たっぷりのミ...
「あら、何で甘そうなのを淹れるんですの?」
「疲れた時には甘いモノ。俺の国じゃ普通の習慣です。頭に一...
そう言って、自身の頭に指でコツコツ指してニヤリとすると、...
「では、有り難く」
カトレアに淹れて貰ったモノと、全く同じモノを才人も飲む
シエスタの心遣いは本当に上手い
後ろ手に才人がシエスタにだけ見える様に親指を立て、シエス...
「くすくす、才人殿とメイドさん、以心伝心ですわね」
「シエスタは出来た娘でね。実に助かってるんだわ」
「あらあら、女性の前で、他の女性を褒めるものでは有りませ...
「おっと、美女に怒られた」
「あら、まぁ!」
一息付けたせいか、カトレアの顔色が良くなっている
シエスタが一旦退出すると、カトレアが手招きしたので、才人...
動物達はめいめいに過ごしており、時折才人の頭にモモンガが...
そのまま頭にモモンガを乗せてると、カトレアから話かけた
「日本って、ハルケギニアとは、全く違う世界ですよね?」
「ん?あぁ、そうだね」
「貴方は、違う世界から来た方ですわよね?」
「誰かに聞いた?」
「いえ。考えの芯、根本というか、その部分が全く違う気がす...
「…そうだね」
「隠さないのですか?」
「誰も見た事が無い、非常に遠い国。何か間違ってますか?」
才人がそう言うと、カトレアが微笑んだ
「あら、間違ってませんわね」
「でしょ?」
本当の事は誤魔化し、尚且つ嘘も吐かず、隠し事ですらない
ハルケギニアの世界が、余りに狭い範囲でしか知られていない...
「ルイズの使い魔さんは貴族の事、どう思いますの?」
「封建制自体は日本にも有ったからね。腹立つ事はそら有るけ...
「平民だから、貴族に憧れたりとかは?」「無いね」
才人の即答に、カトレアが困った顔をする
「話が終わってしまいます」
「何が聞きたい?答えられる範囲なら、答えますよ」
そう言って、ぽふっとベッドに背中を預けると、カトレアが頭...
「使い魔さんの国では。直せない病気は有りますか?」
「有る。膠原病、狂犬病、ガン、白血病とかはその代表かな?」
「あの、名前だけ聞いても良く解りません」
「そだね。病気には大別すると遺伝等先天性、ウィルス性、細...
「はい?」
カトレアがモモンガ事才人を撫でつつ語尾を上げるが、才人は...
「気にしないで。そういう区別だって事。カトレアさんは産ま...
「はい」
「そしたら、先天性の疾患って事になる。基本的に治らないか...
「使い魔さんの国でも、駄目ですか」
「…はっきり言って、解析はともかく、医療技術自体はハルケギ...
才人がむくりと起き、カトレアがきょとんとする
「あの、何か思いついたのですか?」
「先住ですよ、先住。水の精霊に頼めば或いは」
カトレアもラグドリアン湖の精霊の話は知ってるが、基本的に...
「水の精霊は水そのものですから、私の病にも効くかも。です...
カトレアが言葉を切り、才人が応え
「水の精霊とは一応話は出来ます。だけど、今のままじゃ無理...
「借金……ですか?」
「えぇ、そいつを片付ければ、何とか……どうかな?」
真剣に考え込んだ才人を目に、カトレアが微笑んで答えた
「まぁまぁ。私の事迄考えて下さるのは有り難いのですが、今...
そう言って、後ろから才人をぽふりと自身に寄り掛からせるカ...
「……俺をルイズと勘違いしてません?」
「あら、そんな事は有りませんわ」
「男に、不用意にこんな事しちゃ駄目です」
「きちんとご用意してれば良いのですね?」
そう返されて、才人は苦笑している
「ねぇ、使い魔さん。ルイズの使い魔って、大変?」
才人はそんな問いに、考える迄もなく
「まぁ、ヒスは多いし、理不尽な暴力は有るし……エレオノール...
「あらあら……姉様との事、どうなさいますの?」
「どうしましょ?ってか、良く知ってますね」
「えぇ、色々と。例えば使い魔さんは何がお好きとか」
「へぇ、何が好きなんだろ?」
「胸が大きくて、腰がキュッて締まってる、お尻が丸い女のコ...
そう言って、才人の後頭部を胸に当てて、楽しそうに上から覗...
「で、ルイズの使い魔で、エレオノールさんのボスをどうすん...
「そうね……私の魅力で奪っちゃいましょうかしら?」
「姉妹喧嘩の種に使いますか?」
そう言って才人が苦笑すると、カトレアが笑っている
ここから、どうやってもって行こうかなと、明らかに表情が楽...
「私、フォンティーヌなんです」
「たしか……そう言ってましたね」
「はい、一代限りですが、当主なんです」
「……って事は?」
「私の行動を掣肘出来るのは、陛下と、私だけなんです」
そのまま少しずつ、顔を近付けて行くカトレア
「据え膳はお好き?」
「食わねど高楊枝ってのも、嫌いじゃないかな?」
「男は度胸じゃなくって?」
「女は愛嬌でしょ?」
そんな中、二人のやり取りを遊びと判断した犬が才人に吠えな...
「わんわん、わんわん!」
「おわっ!?」
犬を皮切りに才人がまた動物達に蹂躙され、更にベッドから引...
「のわぁぁぁぁぁぁ!?」
「あらあら、遊んでると勘違いされてしまったわ」
頬に手を当てて、ころころ笑うカトレア
才人が涎まみれになっていくのを楽しそうに眺めている
カトレアは気が済んだ動物達が離れていくと、ボロボロになっ...
「動物達が遊んでですって。本当にこんなに懐く人は初めてで...
「……俺、何もしてねぇんだけどなぁ」
カトレアは涎まみれになった才人の顔や服を浄化付きのハンカ...
「ハルケギニアの貴族の男性では、あり得ないですわね」
「……よっと。そうなんだ?」
立ち上がった才人に合わせて、カトレアも立ち上がり、にこや...
カトレアの歩調がまだおかしいのに気付いた才人が、無理矢理...
「きゃっ!?」
「お姫様は、まだお休みが必要の様です」
カトレアが恥ずかしそうにコクリと頷き
才人は問答無用でカトレアをベッドに連れていく
ベッドの毛布を脚で跳ね上げ、カトレアを横たえると、ふぁさ...
カトレアが上気した顔のまま、更に微笑んでいる
「無理して、笑わなくても良いですよ?」
「無理してなんかいません。本当に楽しいんですよ?」
そう言って、朗らかに否定する
「そっか。そいつは失礼。じゃあ、休むのに邪魔だし、そろそ...
「お願いです。もう少し、色々お話させて下さい」
「……いや、俺が居ると、どうも興奮し過ぎな気がするし」
「お願い……」
押しの強さはエレオノールもかくや
才人は頷くと、ベッドの脇で膝立ちになり、ベッドに肘を付い...
「ねぇ、使い魔さん。さっき言ってた殿方の話」
「うん?」
「貴族の殿方だと、皆見栄っ張りなんです」
「そうなんだ」
「はい。平民の方だと、おどおどしてしまうんです」
「へぇ」
「何でか最初はさっぱり解らなかったんですが、私、その、自...
恥ずかしそうに言ってるカトレアに、才人は笑って応じる
「自分自身で獲得したモノじゃ無いから、あんまり嬉しく無い...
コクンと頷いて、更に言葉に紡ぐ
「でも、使い魔さんは初対面から違ってたんです。私を前にし...
「美女美少女ばかりで、流石に慣れたよ」
「まぁ!?外にはそんなに沢山いらっしゃるんですの?」
「俺基準でね」
そう言っておどけて見せると、カトレアが更に笑い
「あら、そしたら私、何位位なんでしょう?」
「トップ争いは熾烈だなぁ。ってか、どっから漏れるか解らん...
「あらあらまぁまぁ!水責め?火責め?風責め?土責め?」
「更に鉄砲責めやら包丁責めやら」
「あははははは」
腹を抱えてカトレアが本気で笑っている
「ひぃっ……ひぃっ……お腹…苦し」
ぜぇぜぇ言いながら、カトレアは笑いの発作に耐えている
「面白かった?」
「思い切り責められてる使い魔さんを想像しちゃって………あはは...
思い出し笑いで発作に火が付き、更に腹を抱えてベッドで転げ...
『娯楽……少ないんだなぁ』
才人はそんな事を思いながら、笑い転げるカトレアを眺めている
「あははは……ぜぃ、ぜぃ……こんなに……笑わせないで……下さいな」
「えっと、俺が悪いの?」
「はい!」
きっぱりと断言された瞬間、やっぱりカトレアもヴァリエール...
『無意識の傲慢は、多分気付かないんだな』
そう思って、才人はその部分を指摘するのは止める事にした
多分、貴族になったら、才人の子孫もこうなるんだろう
そう思いながら、カトレアの求めるままに、相手をする事にした
* * *
「あたし、もう行くわよ」
「仕事してたら、邪魔しちゃ駄目よ?カトレアは真剣なんだか...
サクッと頭に巨大な剣が刺さり、ルイズは扉の前でふらつく
「姉さま…幾ら何でも」
「平民はルイズのゼロ時代から、きちんと相手してくれて、し...
その言葉に硬直し
「姉さま……いつご存知に?」
「否定しないのね」
「あ、違います姉さま!あたし、虚無じゃないです!ゼロです...
「もう少し、きちんと嘘付きなさい。お父様は、そんなんじゃ...
しゅんとうなだれ、席に着くルイズ
「姉さま、サイトから聞いたんですか?」
「いいえ、平民は使い魔のルーンを見せただけ。私は其をガン...
「確か、始祖ブリミルの彫像研究……あ!?」
「そう言う事。私はブリミルの彫像を如何に神々しく創るかを...
始祖ブリミルに対する、トリステイン一の研究者である
それが、ガンダールヴの胸に収まった
余りに偶然に過ぎる
「良い事教えて上げましょうか?」
「何でしょう?姉さま」
「イーヴァルディの勇者は実在するわ。あれは、実在の人物達...
「えぇ!?」
「イーヴァルディの勇者とは、剣に代表される『武器』で敵を...
「そうなんですか?」
「メイジ殺しの奴は、ほとんど普及してないのよ。見つかり次...
「…どういう事なんでしょう?」
「あんたよ、あんた。これは私の推論なんだけどね、イーヴァ...
「なんでそんな物が」
「メイジ殺しの勇者なんて、沢山居る訳無いでしょ?書に遺そ...
言われて見ればその通りだ
ルイズはその言い分に頷く
「何故、物語なんでしょう?」
「一番読み易いからに決まってるでしょ?」
「あ、そうか」
ルイズはポンと手を叩き、納得する
「で、此処からが本題よ」
ルイズはごくりと頷く
「ちびルイズ。今のままなら、当代のイーヴァルディの勇者の...
「……えっ?」
「あんたは余りにも、自分自身の事しか考えて無い。アイツが...
「いきなり……そんな」
「良い?私は仕事で付き合って、何を考えてるか大体解ったし...
エレオノールは菓子を一摘まみし、更に紡ぐ
「今のゼロ級は量産前提で全てを製作している。政治、外交、...
「……」
「戦艦級ゼロ級10隻と新型武装で、多分ネフテスすら圧倒出来...
「……」
「ゼロ機関の長は、大量虐殺者と英雄の名を冠し、更に莫大な...
「……」
「アイツは多分、最初から全部読んでる。だから出ていく。私...
「姉さま。そんな事言わないで「甘い!!」
エレオノールに一喝され、黙るルイズ
「アンタは認めて貰いたがってるだけ。虚無を得てから何をし...
「アイツは貴族、平民に関わらず、国に生きる全ての民を、出...
「もう一度言うわ。アンタはまだまだ子供。大人のアイツの苦...
「アイツの苦悩は、アイツの生きる場所が、此所じゃ無い所か...
エレオノールが震えている
「でも、嫌。帰したく無い。でも帰さないと、彼の御家族や御...
「どうすれば帰せる?どうすれば呼び戻せる?どうすれば全部...
「そんな事は有りません!!姉さま、幾ら何でも酷い!!」
「嘘だ!!だって、虚無の呪文は、必要なら現れるんでしょう?...
ルイズが愕然とする
つまり、今ルイズがそういう呪文がもし有ったとして、今現れ...
本心は 絶 対 に 帰 し た く な い との現れである
「…あっ」
気付いたルイズが蒼白になり、エレオノールも気付く
そんな魔法が、都合良く存在するとは限らない
「悪い、言い過ぎた。そんな都合の良い魔法…………有るじゃない」
「え?」
「始祖ブリミルは降臨したの!生誕じゃないのよ!つまり、や...
「そんな……嘘、私に?」
いきなりの宣言に、ルイズの方がぽかんとする
「良いから、今すぐ祈祷書とルビーを持って来なさい!!あんた...
「は、はい!」
言われて慌てて走り去ったルイズを見つつ、エレオノールは拳...
「そうよ、虚無よ。全ては虚無から始まってるんだから、虚無...
バタン
息を弾ませたルイズがテーブルにどさりと始祖の祈祷書を置き...
「持って来ました、姉さま。こうやってルビーをはめると読め...
「試しに読んで見なさい」
「はい」
序文を読んでいき、ルイズはうっかり命を削る部分迄、エレオ...
「ちょっと待ちなさい!あんた、命削ってるの?平民は知って...
「知らないけど、知ってます」
「どういう事よ?」
詰め寄るエレオノールにルイズは素直に答える
「エクスプロージョンの効果を見て、カガクから推測出来るか...
エレオノールはその言い分に、深い溜め息を付く
「本当にアイツが使い魔で良かったわ。守ってるのね?」
コクリと頷くルイズを見て、エレオノールはほっとする
「ああもう、本当にアイツが使い魔なのは運命じゃない。早く...
ルイズにとって、使い魔召喚の儀は、全てを決定付ける授業で...
「はい、姉さま」
ルイズはひたすらに願う
『ハルケギニアとサイトの故郷……日本だったかな?その行き来...
ぱらぱらと捲っていくが、何も反応しない
「あぁもう、イメージが足りないんじゃ?」
分厚い祈祷書のページを全て捲り、成果が無い事にエレオノー...
「イメージ……そうか、あの零戦と刀!!」
イメージを膨らませる為に思い起こし、もう一度ルイズは捲っ...
やはり何も応答しないかと思われたが、ルイズはふと、後ろの...
「何これ?ハッケンデン?」
「何よ?それ?」
「さぁ?」
結局収穫は其だけで終わり、二人共に落胆したのである
「良い?あんたは基本的に不器用よ。使い魔召喚ですら、何十...
「はい、姉さま」
二人して炎を瞳に宿し、帰れる路を切り開き、また来る路の可...
最も、二人の思惑も実際に帰れる魔法が有ったらの話であり、...
* * *
終了行:
「で、大体一通りですかね」
「…只書くだけで、こんなに制約が有るんですね」
カトレアが才人の講義を上気した顔で真剣に受け、今しがた迄...
「身体弱いんでしょう?あんまり根詰めなくて良いですよ。休...
「駄目です。今すぐ復習しないと、忘れてしまいます」
こういう強情っぱりは、エレオノールと同じだ
思わず才人が溜め息を付く
「解りました。但し、簡単な奴で行きます。その後休憩で、解...
「はい、才人殿」
才人が簡単な手書き図面を書き、ドラフターの上部に貼り付け...
「じゃあ、コイツを三角法で書いて下さい。時間は30分、あの...
才人の合図からカトレアが真剣に書き出した
キュッキュッ、キュッ
カトレアのペンが走る音が部屋に木霊し、才人はその真剣さに...
『はぁ、本当に姉妹だな。そっくりだ』
変に感心しつつ、才人はカトレアの手元を見てると、格段に上...
見よう見真似に、才人の指導が加わったせいだろう
「はい、出来ました」
「25分か。中々ですね」
そう言った才人が図面を覗き込み、チェックを入れる
「ん〜、この部分に円入るの忘れてる。後は此処は破線。初め...
カトレアは指摘にショックを受け
「あぁ!?もう一度。もう一度やりましょう!次こそ完璧に」
「駄目。カトレアさん、気付いてる?」
「何がですか?まだ大丈夫です。才人殿がいらっしゃる時間を...
そんなカトレアの肩を軽くつつくとカトレアがぐらりと傾き、...
「…あ」
「ほら、こんなに根詰めて。本当に、エレオノールさんやルイ...
カトレアが悔しげに唇を噛み、俯く
「大丈夫ですよ。ヴァリエール公爵と交渉しなきゃならないか...
言外に休めと言われてるが、カトレアは悔しげな表情を変えない
「…付いて来れない身体が恨めしいかもしれないけど、俺は仕事...
ハッと顔を上げ、恥ずかしそうに今度は俯き、コクンと頷いた
「…そこ迄、考えが至りませんでした」
「ほら、こんなに根詰めて。本当に、エレオノールさんやルイ...
カトレアが悔しげに唇を噛み、俯く
「大丈夫ですよ。ヴァリエール公爵と交渉しなきゃならないか...
言外に休めと言われてるが、カトレアは悔しげな表情を変えない
「…付いて来れない身体が恨めしいかもしれないけど、俺は仕事...
ハッと顔を上げ、恥ずかしそうに今度は俯き、コクンと頷いた
「…そこ迄、考えが至りませんでした」
そう言ってベッドの上でカトレアが笑みを浮かべ、シエスタが...
「シエスタ、ナイスタイミング。カトレアさんに甘い奴お願い」
才人のお願いににこりとシエスタが微笑み、砂糖たっぷりのミ...
「あら、何で甘そうなのを淹れるんですの?」
「疲れた時には甘いモノ。俺の国じゃ普通の習慣です。頭に一...
そう言って、自身の頭に指でコツコツ指してニヤリとすると、...
「では、有り難く」
カトレアに淹れて貰ったモノと、全く同じモノを才人も飲む
シエスタの心遣いは本当に上手い
後ろ手に才人がシエスタにだけ見える様に親指を立て、シエス...
「くすくす、才人殿とメイドさん、以心伝心ですわね」
「シエスタは出来た娘でね。実に助かってるんだわ」
「あらあら、女性の前で、他の女性を褒めるものでは有りませ...
「おっと、美女に怒られた」
「あら、まぁ!」
一息付けたせいか、カトレアの顔色が良くなっている
シエスタが一旦退出すると、カトレアが手招きしたので、才人...
動物達はめいめいに過ごしており、時折才人の頭にモモンガが...
そのまま頭にモモンガを乗せてると、カトレアから話かけた
「日本って、ハルケギニアとは、全く違う世界ですよね?」
「ん?あぁ、そうだね」
「貴方は、違う世界から来た方ですわよね?」
「誰かに聞いた?」
「いえ。考えの芯、根本というか、その部分が全く違う気がす...
「…そうだね」
「隠さないのですか?」
「誰も見た事が無い、非常に遠い国。何か間違ってますか?」
才人がそう言うと、カトレアが微笑んだ
「あら、間違ってませんわね」
「でしょ?」
本当の事は誤魔化し、尚且つ嘘も吐かず、隠し事ですらない
ハルケギニアの世界が、余りに狭い範囲でしか知られていない...
「ルイズの使い魔さんは貴族の事、どう思いますの?」
「封建制自体は日本にも有ったからね。腹立つ事はそら有るけ...
「平民だから、貴族に憧れたりとかは?」「無いね」
才人の即答に、カトレアが困った顔をする
「話が終わってしまいます」
「何が聞きたい?答えられる範囲なら、答えますよ」
そう言って、ぽふっとベッドに背中を預けると、カトレアが頭...
「使い魔さんの国では。直せない病気は有りますか?」
「有る。膠原病、狂犬病、ガン、白血病とかはその代表かな?」
「あの、名前だけ聞いても良く解りません」
「そだね。病気には大別すると遺伝等先天性、ウィルス性、細...
「はい?」
カトレアがモモンガ事才人を撫でつつ語尾を上げるが、才人は...
「気にしないで。そういう区別だって事。カトレアさんは産ま...
「はい」
「そしたら、先天性の疾患って事になる。基本的に治らないか...
「使い魔さんの国でも、駄目ですか」
「…はっきり言って、解析はともかく、医療技術自体はハルケギ...
才人がむくりと起き、カトレアがきょとんとする
「あの、何か思いついたのですか?」
「先住ですよ、先住。水の精霊に頼めば或いは」
カトレアもラグドリアン湖の精霊の話は知ってるが、基本的に...
「水の精霊は水そのものですから、私の病にも効くかも。です...
カトレアが言葉を切り、才人が応え
「水の精霊とは一応話は出来ます。だけど、今のままじゃ無理...
「借金……ですか?」
「えぇ、そいつを片付ければ、何とか……どうかな?」
真剣に考え込んだ才人を目に、カトレアが微笑んで答えた
「まぁまぁ。私の事迄考えて下さるのは有り難いのですが、今...
そう言って、後ろから才人をぽふりと自身に寄り掛からせるカ...
「……俺をルイズと勘違いしてません?」
「あら、そんな事は有りませんわ」
「男に、不用意にこんな事しちゃ駄目です」
「きちんとご用意してれば良いのですね?」
そう返されて、才人は苦笑している
「ねぇ、使い魔さん。ルイズの使い魔って、大変?」
才人はそんな問いに、考える迄もなく
「まぁ、ヒスは多いし、理不尽な暴力は有るし……エレオノール...
「あらあら……姉様との事、どうなさいますの?」
「どうしましょ?ってか、良く知ってますね」
「えぇ、色々と。例えば使い魔さんは何がお好きとか」
「へぇ、何が好きなんだろ?」
「胸が大きくて、腰がキュッて締まってる、お尻が丸い女のコ...
そう言って、才人の後頭部を胸に当てて、楽しそうに上から覗...
「で、ルイズの使い魔で、エレオノールさんのボスをどうすん...
「そうね……私の魅力で奪っちゃいましょうかしら?」
「姉妹喧嘩の種に使いますか?」
そう言って才人が苦笑すると、カトレアが笑っている
ここから、どうやってもって行こうかなと、明らかに表情が楽...
「私、フォンティーヌなんです」
「たしか……そう言ってましたね」
「はい、一代限りですが、当主なんです」
「……って事は?」
「私の行動を掣肘出来るのは、陛下と、私だけなんです」
そのまま少しずつ、顔を近付けて行くカトレア
「据え膳はお好き?」
「食わねど高楊枝ってのも、嫌いじゃないかな?」
「男は度胸じゃなくって?」
「女は愛嬌でしょ?」
そんな中、二人のやり取りを遊びと判断した犬が才人に吠えな...
「わんわん、わんわん!」
「おわっ!?」
犬を皮切りに才人がまた動物達に蹂躙され、更にベッドから引...
「のわぁぁぁぁぁぁ!?」
「あらあら、遊んでると勘違いされてしまったわ」
頬に手を当てて、ころころ笑うカトレア
才人が涎まみれになっていくのを楽しそうに眺めている
カトレアは気が済んだ動物達が離れていくと、ボロボロになっ...
「動物達が遊んでですって。本当にこんなに懐く人は初めてで...
「……俺、何もしてねぇんだけどなぁ」
カトレアは涎まみれになった才人の顔や服を浄化付きのハンカ...
「ハルケギニアの貴族の男性では、あり得ないですわね」
「……よっと。そうなんだ?」
立ち上がった才人に合わせて、カトレアも立ち上がり、にこや...
カトレアの歩調がまだおかしいのに気付いた才人が、無理矢理...
「きゃっ!?」
「お姫様は、まだお休みが必要の様です」
カトレアが恥ずかしそうにコクリと頷き
才人は問答無用でカトレアをベッドに連れていく
ベッドの毛布を脚で跳ね上げ、カトレアを横たえると、ふぁさ...
カトレアが上気した顔のまま、更に微笑んでいる
「無理して、笑わなくても良いですよ?」
「無理してなんかいません。本当に楽しいんですよ?」
そう言って、朗らかに否定する
「そっか。そいつは失礼。じゃあ、休むのに邪魔だし、そろそ...
「お願いです。もう少し、色々お話させて下さい」
「……いや、俺が居ると、どうも興奮し過ぎな気がするし」
「お願い……」
押しの強さはエレオノールもかくや
才人は頷くと、ベッドの脇で膝立ちになり、ベッドに肘を付い...
「ねぇ、使い魔さん。さっき言ってた殿方の話」
「うん?」
「貴族の殿方だと、皆見栄っ張りなんです」
「そうなんだ」
「はい。平民の方だと、おどおどしてしまうんです」
「へぇ」
「何でか最初はさっぱり解らなかったんですが、私、その、自...
恥ずかしそうに言ってるカトレアに、才人は笑って応じる
「自分自身で獲得したモノじゃ無いから、あんまり嬉しく無い...
コクンと頷いて、更に言葉に紡ぐ
「でも、使い魔さんは初対面から違ってたんです。私を前にし...
「美女美少女ばかりで、流石に慣れたよ」
「まぁ!?外にはそんなに沢山いらっしゃるんですの?」
「俺基準でね」
そう言っておどけて見せると、カトレアが更に笑い
「あら、そしたら私、何位位なんでしょう?」
「トップ争いは熾烈だなぁ。ってか、どっから漏れるか解らん...
「あらあらまぁまぁ!水責め?火責め?風責め?土責め?」
「更に鉄砲責めやら包丁責めやら」
「あははははは」
腹を抱えてカトレアが本気で笑っている
「ひぃっ……ひぃっ……お腹…苦し」
ぜぇぜぇ言いながら、カトレアは笑いの発作に耐えている
「面白かった?」
「思い切り責められてる使い魔さんを想像しちゃって………あはは...
思い出し笑いで発作に火が付き、更に腹を抱えてベッドで転げ...
『娯楽……少ないんだなぁ』
才人はそんな事を思いながら、笑い転げるカトレアを眺めている
「あははは……ぜぃ、ぜぃ……こんなに……笑わせないで……下さいな」
「えっと、俺が悪いの?」
「はい!」
きっぱりと断言された瞬間、やっぱりカトレアもヴァリエール...
『無意識の傲慢は、多分気付かないんだな』
そう思って、才人はその部分を指摘するのは止める事にした
多分、貴族になったら、才人の子孫もこうなるんだろう
そう思いながら、カトレアの求めるままに、相手をする事にした
* * *
「あたし、もう行くわよ」
「仕事してたら、邪魔しちゃ駄目よ?カトレアは真剣なんだか...
サクッと頭に巨大な剣が刺さり、ルイズは扉の前でふらつく
「姉さま…幾ら何でも」
「平民はルイズのゼロ時代から、きちんと相手してくれて、し...
その言葉に硬直し
「姉さま……いつご存知に?」
「否定しないのね」
「あ、違います姉さま!あたし、虚無じゃないです!ゼロです...
「もう少し、きちんと嘘付きなさい。お父様は、そんなんじゃ...
しゅんとうなだれ、席に着くルイズ
「姉さま、サイトから聞いたんですか?」
「いいえ、平民は使い魔のルーンを見せただけ。私は其をガン...
「確か、始祖ブリミルの彫像研究……あ!?」
「そう言う事。私はブリミルの彫像を如何に神々しく創るかを...
始祖ブリミルに対する、トリステイン一の研究者である
それが、ガンダールヴの胸に収まった
余りに偶然に過ぎる
「良い事教えて上げましょうか?」
「何でしょう?姉さま」
「イーヴァルディの勇者は実在するわ。あれは、実在の人物達...
「えぇ!?」
「イーヴァルディの勇者とは、剣に代表される『武器』で敵を...
「そうなんですか?」
「メイジ殺しの奴は、ほとんど普及してないのよ。見つかり次...
「…どういう事なんでしょう?」
「あんたよ、あんた。これは私の推論なんだけどね、イーヴァ...
「なんでそんな物が」
「メイジ殺しの勇者なんて、沢山居る訳無いでしょ?書に遺そ...
言われて見ればその通りだ
ルイズはその言い分に頷く
「何故、物語なんでしょう?」
「一番読み易いからに決まってるでしょ?」
「あ、そうか」
ルイズはポンと手を叩き、納得する
「で、此処からが本題よ」
ルイズはごくりと頷く
「ちびルイズ。今のままなら、当代のイーヴァルディの勇者の...
「……えっ?」
「あんたは余りにも、自分自身の事しか考えて無い。アイツが...
「いきなり……そんな」
「良い?私は仕事で付き合って、何を考えてるか大体解ったし...
エレオノールは菓子を一摘まみし、更に紡ぐ
「今のゼロ級は量産前提で全てを製作している。政治、外交、...
「……」
「戦艦級ゼロ級10隻と新型武装で、多分ネフテスすら圧倒出来...
「……」
「ゼロ機関の長は、大量虐殺者と英雄の名を冠し、更に莫大な...
「……」
「アイツは多分、最初から全部読んでる。だから出ていく。私...
「姉さま。そんな事言わないで「甘い!!」
エレオノールに一喝され、黙るルイズ
「アンタは認めて貰いたがってるだけ。虚無を得てから何をし...
「アイツは貴族、平民に関わらず、国に生きる全ての民を、出...
「もう一度言うわ。アンタはまだまだ子供。大人のアイツの苦...
「アイツの苦悩は、アイツの生きる場所が、此所じゃ無い所か...
エレオノールが震えている
「でも、嫌。帰したく無い。でも帰さないと、彼の御家族や御...
「どうすれば帰せる?どうすれば呼び戻せる?どうすれば全部...
「そんな事は有りません!!姉さま、幾ら何でも酷い!!」
「嘘だ!!だって、虚無の呪文は、必要なら現れるんでしょう?...
ルイズが愕然とする
つまり、今ルイズがそういう呪文がもし有ったとして、今現れ...
本心は 絶 対 に 帰 し た く な い との現れである
「…あっ」
気付いたルイズが蒼白になり、エレオノールも気付く
そんな魔法が、都合良く存在するとは限らない
「悪い、言い過ぎた。そんな都合の良い魔法…………有るじゃない」
「え?」
「始祖ブリミルは降臨したの!生誕じゃないのよ!つまり、や...
「そんな……嘘、私に?」
いきなりの宣言に、ルイズの方がぽかんとする
「良いから、今すぐ祈祷書とルビーを持って来なさい!!あんた...
「は、はい!」
言われて慌てて走り去ったルイズを見つつ、エレオノールは拳...
「そうよ、虚無よ。全ては虚無から始まってるんだから、虚無...
バタン
息を弾ませたルイズがテーブルにどさりと始祖の祈祷書を置き...
「持って来ました、姉さま。こうやってルビーをはめると読め...
「試しに読んで見なさい」
「はい」
序文を読んでいき、ルイズはうっかり命を削る部分迄、エレオ...
「ちょっと待ちなさい!あんた、命削ってるの?平民は知って...
「知らないけど、知ってます」
「どういう事よ?」
詰め寄るエレオノールにルイズは素直に答える
「エクスプロージョンの効果を見て、カガクから推測出来るか...
エレオノールはその言い分に、深い溜め息を付く
「本当にアイツが使い魔で良かったわ。守ってるのね?」
コクリと頷くルイズを見て、エレオノールはほっとする
「ああもう、本当にアイツが使い魔なのは運命じゃない。早く...
ルイズにとって、使い魔召喚の儀は、全てを決定付ける授業で...
「はい、姉さま」
ルイズはひたすらに願う
『ハルケギニアとサイトの故郷……日本だったかな?その行き来...
ぱらぱらと捲っていくが、何も反応しない
「あぁもう、イメージが足りないんじゃ?」
分厚い祈祷書のページを全て捲り、成果が無い事にエレオノー...
「イメージ……そうか、あの零戦と刀!!」
イメージを膨らませる為に思い起こし、もう一度ルイズは捲っ...
やはり何も応答しないかと思われたが、ルイズはふと、後ろの...
「何これ?ハッケンデン?」
「何よ?それ?」
「さぁ?」
結局収穫は其だけで終わり、二人共に落胆したのである
「良い?あんたは基本的に不器用よ。使い魔召喚ですら、何十...
「はい、姉さま」
二人して炎を瞳に宿し、帰れる路を切り開き、また来る路の可...
最も、二人の思惑も実際に帰れる魔法が有ったらの話であり、...
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