ゼロの使い魔保管庫
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「ん…」
男に跨がったまま寝てるキュルケが身動ぎを一つし、また夢の...
両隣には、タバサとシエスタがやはり同じ男に愛され安らかな...
キュルケは夢を見ていた
『ねぇカール兄様。わたし、大きくなったらカール兄様のお嫁...
『あはは、有り難うフレデリカ。じゃあ、その時迄には一人前...
『絶対に振り向かせてみせるんだからね!』
5歳位のキュルケが、9歳位の赤髪が良く似た白い肌の少年に...
夢は暗転し、少し成長したキュルケが映っていた
大体10歳位だろうか?
『お父様!今度はジークムンド兄様迄戦死ですか!!何で兄様達...
『キュルケ、貴族の務めとはそういうモノだ。傍系とてツェル...
『お父様なんて大嫌い!』
父の言葉に、父の部屋から走り去ったキュルケ
邸宅の自分だけの秘密の場所で一人すんすん泣いてたら、誰か...
『ここに居たのね、フレデリカ』
『マチルデ姉様』
振り返ったキュルケの視界に、褐色の肌と綺麗な金髪を靡かせ...
『良いもの見せて上げるわ。付いて来なさい』
そう言って歩き出したマチルデの後を、キュルケがとたとた付...
二人してそっと覗き込むと、父の背中が見え、執事が書類の束...
『…また死んだか』
『…左様で』
『ブラウンシュヴァイク、リューネブルク、ヒンデンブルグの...
『今回は、アルブレヒト=フォン=ブラウンシュヴァイクが伏...
『……いつぞやはリューネブルクとヒンデンブルグの代理決闘で...
『…はっ』
『息子達の無念を晴らす。オットー、出兵の用意だ。擲弾兵200...
『国境警備は?』
『ヴァリエールは現在静かだ。何もせずに放っておけ。刺激し...
『ヤー』
二人が覗いてた顔を見合わせ
『ね?良い?フレデリカ。お父様が一番悲しんでるの。でもね...
『…はい』
『強くなりなさい、誰も失わずに済む様に。知恵をつけなさい...
『はい、姉様』
『兄達も含めて私達は妾の子だけど、等しく扱って下さったお...
『はい、姉様』
そして姉は、バンと窓を開けて入って行く
『マチルデ!?』
『私も出ます。ツェルプストーに恥じぬ戦いは、私にも出来る...
『ならぬ』
『あら、なら勝手に付いて行きますわ』
また、暗転し、次の場面に移った
ツェルプストーの城塞に葬儀の参列者が列を列ねている
まだ10歳位のキュルケも喪服に身を包み、涙を堪えて参列して...
その時大扉がギギーと開いて行く
『帰ったぞ。アルブレヒトの皇位継承が決まった。奴に貸しを...
その言葉にカチンと来たキュルケが
『お父様の………馬鹿ぁ〜〜〜〜!!』
『……誰の葬儀だ?』
ツカツカ歩み寄ったツェルプストー伯が、棺の中を覗いて絶句...
『旦那様、産褥で奥様が……御子も産後間もなく……せっかくの赤...
オットーが肩を震わせて戦慄いている
本当に口惜しいのだろう。何せ主人の留守中に、妻と御子を死...
報告の義務が無ければ、自害してたかも知れない
『お前のせいではない。良くやってくれた。おい、今すぐ楽士...
キュルケがその物言いにキッと睨む
その命令にオットーは黙って頷き、去り際にキュルケに囁いた
『奥様は音楽が大好きでした。旦那様なりの手向けでございま...
何時もこうだ
情が深いのに、言葉足らずで決して表に出さない
楽団が到着し、盛大な演奏会が葬儀に華を添え、ツェルプスト...
『なぁ、聞けオットー。リューネブルクやヒンデンブルグの奴...
『それは素晴らしい活躍でした』
『クックックッ。我らの機動補給部隊のお陰で機動に付いて来...
そこで、何かを思い出したか
『おぅ、忘れる所だった。キュルケ、近くに寄れ。土産だ』
『はい』
キュルケがツェルプストー伯の前に立つと、懐からばさりと髪...
『あの……これは?』『マチルデの遺髪だ。確かに渡したぞ』
その瞬間、少女のキュルケが硬直し、ぺたんと尻餅を付いた
『…嘘』
『嘘ではない。遺体は私が焼いた』
キュルケは呆然としている
『そろそろ良かろう。楽団、一際派手な演奏を頼む』
その言葉に指揮者が頷き、盛大な演奏が始まった
『キュルケ、立て。ツェルプストー直系は泣いてはならぬ!立...
キュルケは父の叱咤に、泣きながら立ち上がる
『ツェルプストーの葬儀で最高のヴァルハラへの送り方はな、...
キュルケはいやいやと首を振っている
『やれ。お前は母達を行き所の無い亡者にする積もりか?兄達...
まだ少女のキュルケは、その言葉ふらふらと歩み、柩の前に立...
隣に父が寄り添っている
『足らぬ分は私が手を貸す。だから全力で全てを燃やせ。お前...
こくんと頷いてキュルケは詠唱を始め、全てを燃やし尽くす爆...
煌々と燃える炎をバックに楽団の演奏は最高潮に達した
『ほぅ、トライアングルに昇格したか。母達も安心だな』
二人で遺体を焼く輝く炎を眺め、父は言ったのだ
『キュルケ、強くなれ。誰も失わずに済む様に。誰とも争わず...
『…はい』
キュルケの少女時代との決別の瞬間だった
また暗転し、キュルケは美しく成長し、父の前に立っている
大体15歳位か?
『何が起きて教師含めて4人も死んで、ウィンドボナ魔法学院...
『私、何も悪い事してないわよ』
『…話してみろ』
『私にしつこく言い寄って来る男達が居たから、こう言ったの...
ツェルプストー伯が思わずニヤニヤし出し
『で、どうなった?』
『それで、4人が二組で決闘始めて、二人死んで、更に双方の...
『残りの一人は?』
『考えて見たけど、タイプじゃないわ、ごめんなさいって誠心...
ツェルプストー伯が肩を震わせている
『相手の姓は?』
『ヒンデンブルグ、ブラウンシュヴァイク、リューネブルク、...
聞いた瞬間、ツェルプストー伯が爆笑し出した
『ぶわっはははははは!!さてはキュルケ、わざとだろう?全部...
『やぁね、偶然よ、偶然。困ってしまったわ』
肩を竦めるキュルケに、ツェルプストー伯が笑って耐えている
自分の娘なら、普通に相手に勘違いさせる行動をするのを知っ...
『クックックッ、良くやった。しかし、このままではちょっと...
父の提案に、キュルケはちょっと思案してから答えた
『他国に留学するのは構わないけど、我が侭言って良い?』
『内戦が起き始めたアルビオンは駄目だ』
『なら大丈夫ね。トリステインに行きたい。私、イーヴァルデ...
昔話を聞かせてたのを憶えていたらしい
思わず苦笑に切り替えたツェルプストー伯
『…もう、数十年も昔の話だぞ?死んでてもおかしくない』
キュルケは確と答えた
『それでも良い。墓参り出来るだけでも構わない。英雄達が居...
暗転し、タバサとの決闘が展開されていた
『……違う』
二人共に気付き、真犯人を茂みの中で見付けて、綺麗に焼いて...
この時にタバサと友達になり、以後共にする様になった
また暗転し、目の前に輝く黒髪の平民が居て、岩に的を書いて...
『じゃあ、ちょっと試してみようか。ファイアランスとジャベ...
『難しい要求だな、才人君』
『慣れれば平気ですよ』
『全く、無茶ばっかり要求しちゃって』
また暗転し、目の前の30メイルの大ゴーレム相手に通用せず、...
正に自分が嫌悪した状況を生み出してしまった
『…まだ足りない。それに、ポッと出た使い魔が、私なんかより...
更に暗転し、アルビオン帰りの宿での会話を楽しんでいる自分...
『くすっ。あの時はタバサが先にイカれたのよねぇ』
更に場面が切り替わり狭いテントで皆で雑魚寝していて
『この時だっけ?バリバリに意識し始めたの。その前は、何時...
また場面が切り替わり、才人が自分の部屋で涙を流している
『あぁ、この人もなんだ。あはっ、だから惹かれてしまったの...
そこで夢から覚め、自分に温もりを与える男の胸の上で瞼を開...
「…何か色々見てた気がする」
まだ朝早い
だが目覚めてしまったのは、才人の朝勃ちがキュルケの中を掻...
無意識に腰が動いていたのを確認し、更に陰核も才人に押し付...
才人と繋がりながら寝るのを三人で取り合い、タバサは軽量を...
昨日は凄かった
何で父が妾を侍らしてるのか痛い程に判った
最も、年若い妾の方が父にイカれてるのが実情で、なんせ仕事...
執務の邪魔はしない様に言い渡してるので、乱入はやらないら...
帰って来たらまた新顔が増えてたが、何処の家の娘だろうか?
ツェルプストー伯と懇意になる為に娘を差し出す貴族が居て、...
情の深さが仇になっている
父に子作り好きかと問いかけたら
「…流石に飽きた」
と、心の奥底からの言葉を聞いている
兄妹は未確認含めて10人以上は居て、生き残りは既に二人
ツェルプストーの炎は戦に於いて非常に有用な為に、常に最前...
多産でないと、あっという間に命脈が尽きる
妾が絶対に必要なのが、ツェルプストー伯家なのである
キュルケは自分より年下の妾を見て、流石に呆れてしまったの...
「子を授からずに帰ると殺されると主張してるのだ、仕方なか...
父のこの言葉に頷くしか無かった
以前、突っ返して本当に死者が出てるのだ
死が身近なツェルプストー伯家だからこそ、なるべく死者は出...
妾は子を授かって自家の後継として子と一緒に帰る者も居るし...
年配の妾達はでしゃばらずに、優雅に御茶会等をやっている
ツェルプストーの文化を担っているのが妾達だ
正妻の条件は単純で、直系を産む事である
そして次代のツェルプストー伯候補は今、キュルケを寝ながら...
「ダーリン、起きて。私だけ気持ち良いは無し……ね?」
そう言いながら腰を動かし、クチュクチュと音が鳴る
「ダーリン起きてくれないと、私だけイッちゃうよ?ハッハッ...
ビクッビクッ
才人の上で痙攣し、完全に才人に身体を預ける
「ん、起きて」
キュルケの要求は更に続き、起きたのは暫く後になる
* * *
朝食の席にも、ツェルプストー伯は顔を出さなかった
謁見の時を非常に楽しみにしてるらしく、敢えて会わないと決...
そして朝食に出されたモノを見て、才人が震えたのである
メインディッシュに載せられたモノは、長い体を20cm位にした...
「…執事さん」
「オットーと言います。是非とも呼び捨てになさる様」
「オットーさん、当ててみせるから、ヤーかナインで答えてな...
「ヤー」
才人は深呼吸をしてから問い質した
「…穴子?」
「ナイン」
「…蛇?」
「ナイン」
「…ウツボ?」
「ナイン」
ゴクリと唾を飲み込む才人
そんな才人を、皆がポカンと眺めている
「……う、鰻?」
「ヤー」
才人が固まり、暫く震えている
「ど、どうしたの、ダーリン?」
ガタッと立ち上がった才人が拳を突き上げて、思い切り叫んだ
「よっしゃあ!!鰻だぁ!!食えると思わなかった!もう食えない...
オットーの両手を握り締めた才人が、涙を流している
オットーは困惑しきりだ
「ダーリン、鰻好きなの?」
「そうとも!日本人に鰻は中々味わえない、そこそこ値段のか...
パン
思い切り両手の平を合わせた才人が、猛然と鰻に食い付いた
30秒で鰻が消え
「うん、この味付けも良いね、お代わり!」
「はっ、直ちに」
才人が何時も以上の食い意地を見せて猛然と食っていく
皆がぽかんとしながらも食べ出した
「美味しいけど、涙迄流すものかしら?」
エレオノールがそう言って首を傾げる
「ダーリンにしか解らないわ。私達は祖国の味を、二度と味わ...
「…そうね」
その言葉を聞いた執事がキュルケの席に寄り、問い掛けた
客人の好みを把握出来る事は、執事の重要な仕事である
「お嬢様、ミスタの祖国は遠いのですかな?」
「えぇ、二度と帰れないんじゃないかって位。使い魔召喚で喚...
「左様でございますか」
才人はお代わりもぺろりと平らげ、更に食べている
執事はまた才人に寄り、問い掛けた
「味付けはどうですかな?ミスタ」
「うん、白焼きも有るからこれは此で良い。鰻タレは流石に無...
才人が頬張りながらくっちゃべっている
「どの様な食材ですかな?ミスタ」
「材料は米と大豆を蒸した奴を発酵させるんだけど、製法知ら...
「コメ?」
「やっぱり無いか。元々亜熱帯産の植物で、稲の種子なんだよ」
「ふむ、難しいですな。ロマリア南部に出向けば、有るかも知...
「いやいや、充分だよ。鰻は精力付くと評判なんだ」
「此は良い事をお聞きしました。旦那様も好んで食べてますが...
満腹になった才人はすっかり上機嫌で食堂を後にし、一時間後...
* * *
「平民、デモ用に01式と02式持って来てるけどどうする?」
ゼロ機関の新型7.6ミリ(7.7mm)マスケットライフルの型式番号...
口径比で以前型(9ミリマスケット)より長口径、弾の直径を下げ...
一番の理由は材料費の節約と軽量化であるが、更に先のモデル...
銃身強度的には、以前型より冶金技術の向上により、遥かに上...
「俺用にしてたっけ?。今でも目一杯だが?」
「はい、こいつ」
エレオノールが差し出したのはデルフリンガーの鞘に取り付け...
此なら更に吊り下げずに済む
「お、こんなの作ってたんだ。試しに付けてみっか」
才人が更に武装し、確認するが
「駄目だな……ちと重い、重心の取り方何とかしないと」
そう言って、長銃の方は取り外した
「もう、せっかく作ったのに」
「今回はって事。相手はツェルプストー伯。ヴァリエール公と...
「えぇ」
「なら、慣れてる武装で」
才人とエレオノールが武装方法で論議しているが、ルイズは手...
実際武器には詳しくないので仕方ない
「駄目よ。飛び道具有るのと無いのとじゃ、違う筈よ。それで...
「…暴発したらどうすんだよ?相手は火の使い手だぜ?背中で暴...
カチ
才人が呼び出して問い掛けると
「確かに火に火薬はやべぇ」
「…それもそうね」
「02式だけ持って行く。サンキューな。手裏剣有れば違うかも...
「シュリケン?」
「投げナイフだよ」
エレオノールがかっとなり「そういう事は先に言いなさい!今...
「あ、はい」
ガラッとルイズが窓を開けると、エレオノールがバッと飛び降...
暫く戻って来なかったが、少し泥だらけになって浮いて来た
「何度か試した。アンタの鉄鋼と焼き入れを8割がた再現した...
「あぁ」
受け取った才人がルーンを光らせ、壁に向かって投げ付けて
カツン
硬化と固定化が丹念に掛かった壁に、見事に突き刺さったので...
「ふん、私にかかればこんなもんよ」
「…ガンダールヴって、本当に便利だなぁ」
改めて才人が自身のルーンに感心したのである
はっきり言って、ガンダールヴの超速に手裏剣の名手の技量が...
実はマスケット銃弾より弓矢の方が、遥かに破壊力が有るので...
ローテクとて価値は有るのだ
要は使い方に尽きる
「風魔法付けて加速させれば、更に強くなるわ」
「ちょっと止めとこう。別に戦場に行くわけじゃないし」
「それもそうね」
「交渉相手殺しちゃ、不味いもんなぁ」
最後にデルフがカタカタ笑って、話を締めたのである
そして、半日後、メンバーはこの時の会議を思い出し、すこぶ...
* * *
才人達が謁見の間に入ると何も装飾品が無かった
燭台とシャンデリアだけであり、玉座の後ろにツェルプストー...
流石に緊張した面持ちでルイズが先頭に立ち、一礼をした
「ツェルプストー伯爵、御初にお目にかかります。我らはトリ...
聞いたツェルプストー伯が面白そうな顔をし
「ほぅ、ヴァリエールが二人もか。面白い巡り合わせだな……」
「はい、珍しい巡り合わせ、これも神と始祖ブリミルの思し召...
そうルイズは言葉を締めた
後は、ツェルプストー伯が口を開くのを待つばかりである
「世辞はお互い肩が凝るばかりだな。実直に行こうか。さて、...
「あぁ」
才人が返事をする
「娘に聞いたぞ?イーヴァルディを名乗った様だな」
その言葉に、ルイズとエレオノールが才人に振り向いた
「あん時は事情があってね」
才人がそう言って返事したが、ツェルプストー伯には感慨も与...
「イーヴァルディを名乗る連中は事情持ちだ。そなたが特別な...
才人は溜め息を付いて、背中のデルフに手を掛けた
「…どうすりゃ、この螺旋から抜け出せるんだよ?」
「そりゃ、問題を解決すんのに、一番力が手っ取り早いからだ...
「……やんなるぜ」
ぶん
才人がデルフを振り抜くと、ツェルプストー伯が立ち上がった
ルイズ達は言われて下がる
小手調べと言ってるので、酷い事にはならないだろう
キュルケは何時もの余裕は何処へやら、両手を拳をぎゅっと握...
隣のタバサがそんなキュルケを心配げに見つめるが、キュルケ...
「お父様、ダーリン、お願い……」
そして、大量に炎の矢が形成されて、一気に襲いかかった
「先代は余裕で避けたぞ?」
ヒュヒュヒュヒュ
炎の矢の雨を才人が横っ飛びに避けながら、デルフで斬り払う
「だぁ、マジかよ?」
「相棒もまだまだって事かよ?堪らんねぇ」
間合いを詰めたら小さい炎の珠が周囲にばら蒔かれた
「不味い、炸裂すんぞ?」
才人は間合いを詰めるのを止めて壁に向かって走り、珠が炸裂...
ババババン
轟音に耳を塞いだルイズ達は才人の姿を見失う
「あれ?」
だが、タバサとツェルプストー伯は見逃していなかった
才人は燭台に跳躍し、燭台を足場に更にシャンデリアに跳躍し...
「ざけんな、食らえ!」
ギィン
鎖がデルフで切られ、シャンデリアがツェルプストー伯に落下...
炎の勢いに、純金製のシャンデリアが溶けながら跳ね、才人は...
炎が切れた瞬間、才人が引金を引いた
バン!
擲弾が弾丸で射出され、ツェルプストー伯に迫る
「02式擲弾、魔力感知式だ」
バァン!
台詞と同時にツェルプストー伯が爆発に巻き込まれ、周りを黒...
「ダーリンやり過ぎよ!お父様!」
キュルケが悲鳴を上げるが、煙が晴れると、ツェルプストー伯...
ダメージが有るようにには見えない
「…相棒、爆発を爆発で相殺したぞ」
「……マジかよ」
「クックックッ。アッハッハッハッ!やるなイーヴァルディ!...
笑いながら、ジャリッジャリッと破片を踏み締めながら、歩み...
「…あぁ」
「小細工無しで来い!もっと遊ばせろ!」
ツェルプストー伯が本気で楽しんでいる
キュルケはホッとしつつ、父の実力を見直した
「やっぱり、お父様強いわ」
タバサは相次いで古強者の実力を見て、自分の実力がまだまだ...
「……まだまだ」
そう一人ごちる
そして才人が突撃を始めると、ツェルプストー伯はブレイドを...
ブレイドは才人が接近する間に赤、橙、白、青、青紫、そして...
「不味い、デルフ絶対に斬り結ぶな!」
「おうよ」
才人はそのまま一太刀を浴びせると輝くブレイドで受け止め様...
ガキン
石造りの床に亀裂が入り、デルフがめり込む
「相棒、あれ位吸い込み出来るわ!」
「止めろ!数秒掛からずに刀身が溶け落ちる!」
「よくぞ、気付いた!」
振りかぶったツェルプストー伯が輝くブレイドを振り下ろすと...
そして村雨の刃と追随したツェルプストー伯の輝く炎の刃が互...
「…熱いんだけど?」
「…合格だ」
そう言ってツェルプストー伯が炎を収め、熱せられた杖を放り...
「いや、実はあれやると儂も熱くてな。アッハッハッハッ」
革手袋をしてたのは、耐熱の為らしい
「しかし、良く初見であの輝く炎を見切ったな?全てを溶かす...
すると、才人は村雨を収めながら説明した
「あの炎は恒常的に使ってたんで。見慣れてるんですよ、俺」
「何と!?アレを普通に出せるのか?」
「えぇ。俺の国はそういう技術の国です」
「クックックッ。キュルケは良い男を見付けて来たモノだ。で...
ツェルプストー伯がそう言って、才人を促して歩いて行く
「えっと、どちらへ?製鉄所?」
「違う、戦場だ。鉄鉱山を襲撃する」
ツェルプストー伯がそう言って、暫く全員無言だった
「……はっ?どういう事でしょう?」
ルイズが聞くとツェルプストー伯が逆に問い質した
「何を言っている?お前達トリステインの国益に叶う行為だ。...
* * *
言葉足らずなツェルプストー伯に代わって、執事のオットーが...
「先ずはゼロ機関の皆様並びにトリステイン王政府の皆様。我...
「勿論、鉄鉱石販売を以前価格で売買とバーターにゼロ機関の...
そう言ってエレオノールが言うと、執事のオットーが頷く
「正にそれでございます。ツェルプストー伯所有の鉱山のみで...
「だから襲撃するって訳?随分乱暴じゃない。買い取るなりレ...
エレオノールが場を代表して言うと、オットーは頷いた
「その通りでございます。我らもきちんと鉱山買取り交渉から...
とりあえず黙って聞く才人達
「続きを」
エレオノールが促して、オットーが頷いて更に喋る
「はい。それで最大鉄鉱山を有するヒンデンブルグ中央伯家と...
「私共はゲルマニア帝政府に提訴しましたが、全面戦争前の小...
「……」
「鉄鉱山権益ならば金鉱山と違い、帝政府の裁定が得られると...
「基本的な質問良いか?」
才人がそう言って手を上げる
「どうぞ」
「同じ伯爵家だから、同格だから杖を使えと云う事かい?」
「いえ、違います。ヒンデンブルグ中央伯家はリューネブルク...
「……ってぇと、何か?」
「はい、ヒンデンブルグ伯家とは前回の戦役での敵同士。お互...
才人は頭を抱えてしまった
「ツェルプストー伯、武装しろってのは」
「勿論、そのまま戦場に向かう為だ」
才人とエレオノールが顔を見合わせ、お互いに天を扇いだ
味方しないと鉄鉱石が輸入出来ない
ゼロ機関に否やは無かったのである
「解った、助勢する。勝利条件と戦闘方式は?」
「鉄鉱山の守備隊の撃滅。鉱夫と司令官のみ殺してはならん。...
「ちょっと待ってくれ、何故皆殺しにしないとならない?」
才人が抗議すると、オットーが答えた
「ヒンデンブルグ伯家の力を削ぐ為です。我らツェルプストー...
「なら、再起不能にすれば」
カチ
デルフが出てきた
「相棒、反対だ。再起不能?ハルケギニアでそれがどういう意...
「どういう事だよ?デルフ」
「再起不能になった兵が、どういう扱いになんのか知ってんの...
才人は黙ってしまった
ハルケギニアでは勝者は英雄扱いだが、敗者の事に迄気が回ら...
やはり日本人の自分は甘い
才人は痛感せざるを得ない
「戦死が一番の慈悲だ。覚悟を決めろ、イーヴァルディ」
才人は表情を消して頷いた
「…場所は?」
すると地図を指してオットーが説明し出した
「こちら、ウィンドボナより更に北方の鉱山になります。竜籠...
凡そ1500リーグ以上有る
零戦でも遠征と呼べる距離だ
「…補給と移動どうすんだよ?」
「問題有りません」
そう言って、地図に印を次々に付けていく
ゲルマニアの国土を全てカバーした印を見て、才人が問い掛けた
「コイツは?」
「我がツェルプストー伯家が整備した竜籠補給部隊の中継地だ...
ツェルプストー伯の意見に才人がキュルケに聞いてみる
「キュルケ、知ってるか?」
「ちょろっとしか知らなかったわ……まさかゲルマニア全土とは...
キュルケがうんうんと頷いて、オットーが繋いだ
「では説明させて頂きます。これら中継地は各家に無許可で貿...
「そんなマジックアイテム有るのかよ……究極のステルスじゃね...
才人が汗を足らす
「はい、で、普段から物資を積み増しすると、魔獣や動物達に...
「こいつぁスゲー…待てよ?って事は外の馬車は?」
「はい、補給物資の納品です」
才人が気付いた事をオットーが肯定し
「って事は、零戦は戦力と見られてた訳だ……頭痛ぇ」
つまり、キュルケが大した戦力を引っ張って来たから、皆が思...
本当に頭が痛い
「で、本日の移動で、鉱山前の100リーグ地点迄の中継地に移動...
ツェルプストー伯の言い分に、才人が抗議する
「って事はあれか?あの演習はこういう目的か?」
「その通りだ」
「ちょっと待ってくれ!あの演習で増槽棄てちまった。流石に...
「あぁ、竜騎士が回収している。我々は珍しいモノが好きでな...
ぺしっと才人が額を叩いた
そう、ツェルプストー伯家は技術に対し並々ならぬ関心を寄せ...
捨てた増槽なぞ、好奇心の対象にしかならない
「解った、取り付ける。メイジ貸してくれ。出撃準備だ。向こ...
「無い。空中で停止しろ。補給部隊が網と魔法で回収する。向...
「…了解」
無茶苦茶な運用だが、魔法のあるハルケギニアでは当然かも知...
才人はそう判断して頷いた
* * *
終了行:
「ん…」
男に跨がったまま寝てるキュルケが身動ぎを一つし、また夢の...
両隣には、タバサとシエスタがやはり同じ男に愛され安らかな...
キュルケは夢を見ていた
『ねぇカール兄様。わたし、大きくなったらカール兄様のお嫁...
『あはは、有り難うフレデリカ。じゃあ、その時迄には一人前...
『絶対に振り向かせてみせるんだからね!』
5歳位のキュルケが、9歳位の赤髪が良く似た白い肌の少年に...
夢は暗転し、少し成長したキュルケが映っていた
大体10歳位だろうか?
『お父様!今度はジークムンド兄様迄戦死ですか!!何で兄様達...
『キュルケ、貴族の務めとはそういうモノだ。傍系とてツェル...
『お父様なんて大嫌い!』
父の言葉に、父の部屋から走り去ったキュルケ
邸宅の自分だけの秘密の場所で一人すんすん泣いてたら、誰か...
『ここに居たのね、フレデリカ』
『マチルデ姉様』
振り返ったキュルケの視界に、褐色の肌と綺麗な金髪を靡かせ...
『良いもの見せて上げるわ。付いて来なさい』
そう言って歩き出したマチルデの後を、キュルケがとたとた付...
二人してそっと覗き込むと、父の背中が見え、執事が書類の束...
『…また死んだか』
『…左様で』
『ブラウンシュヴァイク、リューネブルク、ヒンデンブルグの...
『今回は、アルブレヒト=フォン=ブラウンシュヴァイクが伏...
『……いつぞやはリューネブルクとヒンデンブルグの代理決闘で...
『…はっ』
『息子達の無念を晴らす。オットー、出兵の用意だ。擲弾兵200...
『国境警備は?』
『ヴァリエールは現在静かだ。何もせずに放っておけ。刺激し...
『ヤー』
二人が覗いてた顔を見合わせ
『ね?良い?フレデリカ。お父様が一番悲しんでるの。でもね...
『…はい』
『強くなりなさい、誰も失わずに済む様に。知恵をつけなさい...
『はい、姉様』
『兄達も含めて私達は妾の子だけど、等しく扱って下さったお...
『はい、姉様』
そして姉は、バンと窓を開けて入って行く
『マチルデ!?』
『私も出ます。ツェルプストーに恥じぬ戦いは、私にも出来る...
『ならぬ』
『あら、なら勝手に付いて行きますわ』
また、暗転し、次の場面に移った
ツェルプストーの城塞に葬儀の参列者が列を列ねている
まだ10歳位のキュルケも喪服に身を包み、涙を堪えて参列して...
その時大扉がギギーと開いて行く
『帰ったぞ。アルブレヒトの皇位継承が決まった。奴に貸しを...
その言葉にカチンと来たキュルケが
『お父様の………馬鹿ぁ〜〜〜〜!!』
『……誰の葬儀だ?』
ツカツカ歩み寄ったツェルプストー伯が、棺の中を覗いて絶句...
『旦那様、産褥で奥様が……御子も産後間もなく……せっかくの赤...
オットーが肩を震わせて戦慄いている
本当に口惜しいのだろう。何せ主人の留守中に、妻と御子を死...
報告の義務が無ければ、自害してたかも知れない
『お前のせいではない。良くやってくれた。おい、今すぐ楽士...
キュルケがその物言いにキッと睨む
その命令にオットーは黙って頷き、去り際にキュルケに囁いた
『奥様は音楽が大好きでした。旦那様なりの手向けでございま...
何時もこうだ
情が深いのに、言葉足らずで決して表に出さない
楽団が到着し、盛大な演奏会が葬儀に華を添え、ツェルプスト...
『なぁ、聞けオットー。リューネブルクやヒンデンブルグの奴...
『それは素晴らしい活躍でした』
『クックックッ。我らの機動補給部隊のお陰で機動に付いて来...
そこで、何かを思い出したか
『おぅ、忘れる所だった。キュルケ、近くに寄れ。土産だ』
『はい』
キュルケがツェルプストー伯の前に立つと、懐からばさりと髪...
『あの……これは?』『マチルデの遺髪だ。確かに渡したぞ』
その瞬間、少女のキュルケが硬直し、ぺたんと尻餅を付いた
『…嘘』
『嘘ではない。遺体は私が焼いた』
キュルケは呆然としている
『そろそろ良かろう。楽団、一際派手な演奏を頼む』
その言葉に指揮者が頷き、盛大な演奏が始まった
『キュルケ、立て。ツェルプストー直系は泣いてはならぬ!立...
キュルケは父の叱咤に、泣きながら立ち上がる
『ツェルプストーの葬儀で最高のヴァルハラへの送り方はな、...
キュルケはいやいやと首を振っている
『やれ。お前は母達を行き所の無い亡者にする積もりか?兄達...
まだ少女のキュルケは、その言葉ふらふらと歩み、柩の前に立...
隣に父が寄り添っている
『足らぬ分は私が手を貸す。だから全力で全てを燃やせ。お前...
こくんと頷いてキュルケは詠唱を始め、全てを燃やし尽くす爆...
煌々と燃える炎をバックに楽団の演奏は最高潮に達した
『ほぅ、トライアングルに昇格したか。母達も安心だな』
二人で遺体を焼く輝く炎を眺め、父は言ったのだ
『キュルケ、強くなれ。誰も失わずに済む様に。誰とも争わず...
『…はい』
キュルケの少女時代との決別の瞬間だった
また暗転し、キュルケは美しく成長し、父の前に立っている
大体15歳位か?
『何が起きて教師含めて4人も死んで、ウィンドボナ魔法学院...
『私、何も悪い事してないわよ』
『…話してみろ』
『私にしつこく言い寄って来る男達が居たから、こう言ったの...
ツェルプストー伯が思わずニヤニヤし出し
『で、どうなった?』
『それで、4人が二組で決闘始めて、二人死んで、更に双方の...
『残りの一人は?』
『考えて見たけど、タイプじゃないわ、ごめんなさいって誠心...
ツェルプストー伯が肩を震わせている
『相手の姓は?』
『ヒンデンブルグ、ブラウンシュヴァイク、リューネブルク、...
聞いた瞬間、ツェルプストー伯が爆笑し出した
『ぶわっはははははは!!さてはキュルケ、わざとだろう?全部...
『やぁね、偶然よ、偶然。困ってしまったわ』
肩を竦めるキュルケに、ツェルプストー伯が笑って耐えている
自分の娘なら、普通に相手に勘違いさせる行動をするのを知っ...
『クックックッ、良くやった。しかし、このままではちょっと...
父の提案に、キュルケはちょっと思案してから答えた
『他国に留学するのは構わないけど、我が侭言って良い?』
『内戦が起き始めたアルビオンは駄目だ』
『なら大丈夫ね。トリステインに行きたい。私、イーヴァルデ...
昔話を聞かせてたのを憶えていたらしい
思わず苦笑に切り替えたツェルプストー伯
『…もう、数十年も昔の話だぞ?死んでてもおかしくない』
キュルケは確と答えた
『それでも良い。墓参り出来るだけでも構わない。英雄達が居...
暗転し、タバサとの決闘が展開されていた
『……違う』
二人共に気付き、真犯人を茂みの中で見付けて、綺麗に焼いて...
この時にタバサと友達になり、以後共にする様になった
また暗転し、目の前に輝く黒髪の平民が居て、岩に的を書いて...
『じゃあ、ちょっと試してみようか。ファイアランスとジャベ...
『難しい要求だな、才人君』
『慣れれば平気ですよ』
『全く、無茶ばっかり要求しちゃって』
また暗転し、目の前の30メイルの大ゴーレム相手に通用せず、...
正に自分が嫌悪した状況を生み出してしまった
『…まだ足りない。それに、ポッと出た使い魔が、私なんかより...
更に暗転し、アルビオン帰りの宿での会話を楽しんでいる自分...
『くすっ。あの時はタバサが先にイカれたのよねぇ』
更に場面が切り替わり狭いテントで皆で雑魚寝していて
『この時だっけ?バリバリに意識し始めたの。その前は、何時...
また場面が切り替わり、才人が自分の部屋で涙を流している
『あぁ、この人もなんだ。あはっ、だから惹かれてしまったの...
そこで夢から覚め、自分に温もりを与える男の胸の上で瞼を開...
「…何か色々見てた気がする」
まだ朝早い
だが目覚めてしまったのは、才人の朝勃ちがキュルケの中を掻...
無意識に腰が動いていたのを確認し、更に陰核も才人に押し付...
才人と繋がりながら寝るのを三人で取り合い、タバサは軽量を...
昨日は凄かった
何で父が妾を侍らしてるのか痛い程に判った
最も、年若い妾の方が父にイカれてるのが実情で、なんせ仕事...
執務の邪魔はしない様に言い渡してるので、乱入はやらないら...
帰って来たらまた新顔が増えてたが、何処の家の娘だろうか?
ツェルプストー伯と懇意になる為に娘を差し出す貴族が居て、...
情の深さが仇になっている
父に子作り好きかと問いかけたら
「…流石に飽きた」
と、心の奥底からの言葉を聞いている
兄妹は未確認含めて10人以上は居て、生き残りは既に二人
ツェルプストーの炎は戦に於いて非常に有用な為に、常に最前...
多産でないと、あっという間に命脈が尽きる
妾が絶対に必要なのが、ツェルプストー伯家なのである
キュルケは自分より年下の妾を見て、流石に呆れてしまったの...
「子を授からずに帰ると殺されると主張してるのだ、仕方なか...
父のこの言葉に頷くしか無かった
以前、突っ返して本当に死者が出てるのだ
死が身近なツェルプストー伯家だからこそ、なるべく死者は出...
妾は子を授かって自家の後継として子と一緒に帰る者も居るし...
年配の妾達はでしゃばらずに、優雅に御茶会等をやっている
ツェルプストーの文化を担っているのが妾達だ
正妻の条件は単純で、直系を産む事である
そして次代のツェルプストー伯候補は今、キュルケを寝ながら...
「ダーリン、起きて。私だけ気持ち良いは無し……ね?」
そう言いながら腰を動かし、クチュクチュと音が鳴る
「ダーリン起きてくれないと、私だけイッちゃうよ?ハッハッ...
ビクッビクッ
才人の上で痙攣し、完全に才人に身体を預ける
「ん、起きて」
キュルケの要求は更に続き、起きたのは暫く後になる
* * *
朝食の席にも、ツェルプストー伯は顔を出さなかった
謁見の時を非常に楽しみにしてるらしく、敢えて会わないと決...
そして朝食に出されたモノを見て、才人が震えたのである
メインディッシュに載せられたモノは、長い体を20cm位にした...
「…執事さん」
「オットーと言います。是非とも呼び捨てになさる様」
「オットーさん、当ててみせるから、ヤーかナインで答えてな...
「ヤー」
才人は深呼吸をしてから問い質した
「…穴子?」
「ナイン」
「…蛇?」
「ナイン」
「…ウツボ?」
「ナイン」
ゴクリと唾を飲み込む才人
そんな才人を、皆がポカンと眺めている
「……う、鰻?」
「ヤー」
才人が固まり、暫く震えている
「ど、どうしたの、ダーリン?」
ガタッと立ち上がった才人が拳を突き上げて、思い切り叫んだ
「よっしゃあ!!鰻だぁ!!食えると思わなかった!もう食えない...
オットーの両手を握り締めた才人が、涙を流している
オットーは困惑しきりだ
「ダーリン、鰻好きなの?」
「そうとも!日本人に鰻は中々味わえない、そこそこ値段のか...
パン
思い切り両手の平を合わせた才人が、猛然と鰻に食い付いた
30秒で鰻が消え
「うん、この味付けも良いね、お代わり!」
「はっ、直ちに」
才人が何時も以上の食い意地を見せて猛然と食っていく
皆がぽかんとしながらも食べ出した
「美味しいけど、涙迄流すものかしら?」
エレオノールがそう言って首を傾げる
「ダーリンにしか解らないわ。私達は祖国の味を、二度と味わ...
「…そうね」
その言葉を聞いた執事がキュルケの席に寄り、問い掛けた
客人の好みを把握出来る事は、執事の重要な仕事である
「お嬢様、ミスタの祖国は遠いのですかな?」
「えぇ、二度と帰れないんじゃないかって位。使い魔召喚で喚...
「左様でございますか」
才人はお代わりもぺろりと平らげ、更に食べている
執事はまた才人に寄り、問い掛けた
「味付けはどうですかな?ミスタ」
「うん、白焼きも有るからこれは此で良い。鰻タレは流石に無...
才人が頬張りながらくっちゃべっている
「どの様な食材ですかな?ミスタ」
「材料は米と大豆を蒸した奴を発酵させるんだけど、製法知ら...
「コメ?」
「やっぱり無いか。元々亜熱帯産の植物で、稲の種子なんだよ」
「ふむ、難しいですな。ロマリア南部に出向けば、有るかも知...
「いやいや、充分だよ。鰻は精力付くと評判なんだ」
「此は良い事をお聞きしました。旦那様も好んで食べてますが...
満腹になった才人はすっかり上機嫌で食堂を後にし、一時間後...
* * *
「平民、デモ用に01式と02式持って来てるけどどうする?」
ゼロ機関の新型7.6ミリ(7.7mm)マスケットライフルの型式番号...
口径比で以前型(9ミリマスケット)より長口径、弾の直径を下げ...
一番の理由は材料費の節約と軽量化であるが、更に先のモデル...
銃身強度的には、以前型より冶金技術の向上により、遥かに上...
「俺用にしてたっけ?。今でも目一杯だが?」
「はい、こいつ」
エレオノールが差し出したのはデルフリンガーの鞘に取り付け...
此なら更に吊り下げずに済む
「お、こんなの作ってたんだ。試しに付けてみっか」
才人が更に武装し、確認するが
「駄目だな……ちと重い、重心の取り方何とかしないと」
そう言って、長銃の方は取り外した
「もう、せっかく作ったのに」
「今回はって事。相手はツェルプストー伯。ヴァリエール公と...
「えぇ」
「なら、慣れてる武装で」
才人とエレオノールが武装方法で論議しているが、ルイズは手...
実際武器には詳しくないので仕方ない
「駄目よ。飛び道具有るのと無いのとじゃ、違う筈よ。それで...
「…暴発したらどうすんだよ?相手は火の使い手だぜ?背中で暴...
カチ
才人が呼び出して問い掛けると
「確かに火に火薬はやべぇ」
「…それもそうね」
「02式だけ持って行く。サンキューな。手裏剣有れば違うかも...
「シュリケン?」
「投げナイフだよ」
エレオノールがかっとなり「そういう事は先に言いなさい!今...
「あ、はい」
ガラッとルイズが窓を開けると、エレオノールがバッと飛び降...
暫く戻って来なかったが、少し泥だらけになって浮いて来た
「何度か試した。アンタの鉄鋼と焼き入れを8割がた再現した...
「あぁ」
受け取った才人がルーンを光らせ、壁に向かって投げ付けて
カツン
硬化と固定化が丹念に掛かった壁に、見事に突き刺さったので...
「ふん、私にかかればこんなもんよ」
「…ガンダールヴって、本当に便利だなぁ」
改めて才人が自身のルーンに感心したのである
はっきり言って、ガンダールヴの超速に手裏剣の名手の技量が...
実はマスケット銃弾より弓矢の方が、遥かに破壊力が有るので...
ローテクとて価値は有るのだ
要は使い方に尽きる
「風魔法付けて加速させれば、更に強くなるわ」
「ちょっと止めとこう。別に戦場に行くわけじゃないし」
「それもそうね」
「交渉相手殺しちゃ、不味いもんなぁ」
最後にデルフがカタカタ笑って、話を締めたのである
そして、半日後、メンバーはこの時の会議を思い出し、すこぶ...
* * *
才人達が謁見の間に入ると何も装飾品が無かった
燭台とシャンデリアだけであり、玉座の後ろにツェルプストー...
流石に緊張した面持ちでルイズが先頭に立ち、一礼をした
「ツェルプストー伯爵、御初にお目にかかります。我らはトリ...
聞いたツェルプストー伯が面白そうな顔をし
「ほぅ、ヴァリエールが二人もか。面白い巡り合わせだな……」
「はい、珍しい巡り合わせ、これも神と始祖ブリミルの思し召...
そうルイズは言葉を締めた
後は、ツェルプストー伯が口を開くのを待つばかりである
「世辞はお互い肩が凝るばかりだな。実直に行こうか。さて、...
「あぁ」
才人が返事をする
「娘に聞いたぞ?イーヴァルディを名乗った様だな」
その言葉に、ルイズとエレオノールが才人に振り向いた
「あん時は事情があってね」
才人がそう言って返事したが、ツェルプストー伯には感慨も与...
「イーヴァルディを名乗る連中は事情持ちだ。そなたが特別な...
才人は溜め息を付いて、背中のデルフに手を掛けた
「…どうすりゃ、この螺旋から抜け出せるんだよ?」
「そりゃ、問題を解決すんのに、一番力が手っ取り早いからだ...
「……やんなるぜ」
ぶん
才人がデルフを振り抜くと、ツェルプストー伯が立ち上がった
ルイズ達は言われて下がる
小手調べと言ってるので、酷い事にはならないだろう
キュルケは何時もの余裕は何処へやら、両手を拳をぎゅっと握...
隣のタバサがそんなキュルケを心配げに見つめるが、キュルケ...
「お父様、ダーリン、お願い……」
そして、大量に炎の矢が形成されて、一気に襲いかかった
「先代は余裕で避けたぞ?」
ヒュヒュヒュヒュ
炎の矢の雨を才人が横っ飛びに避けながら、デルフで斬り払う
「だぁ、マジかよ?」
「相棒もまだまだって事かよ?堪らんねぇ」
間合いを詰めたら小さい炎の珠が周囲にばら蒔かれた
「不味い、炸裂すんぞ?」
才人は間合いを詰めるのを止めて壁に向かって走り、珠が炸裂...
ババババン
轟音に耳を塞いだルイズ達は才人の姿を見失う
「あれ?」
だが、タバサとツェルプストー伯は見逃していなかった
才人は燭台に跳躍し、燭台を足場に更にシャンデリアに跳躍し...
「ざけんな、食らえ!」
ギィン
鎖がデルフで切られ、シャンデリアがツェルプストー伯に落下...
炎の勢いに、純金製のシャンデリアが溶けながら跳ね、才人は...
炎が切れた瞬間、才人が引金を引いた
バン!
擲弾が弾丸で射出され、ツェルプストー伯に迫る
「02式擲弾、魔力感知式だ」
バァン!
台詞と同時にツェルプストー伯が爆発に巻き込まれ、周りを黒...
「ダーリンやり過ぎよ!お父様!」
キュルケが悲鳴を上げるが、煙が晴れると、ツェルプストー伯...
ダメージが有るようにには見えない
「…相棒、爆発を爆発で相殺したぞ」
「……マジかよ」
「クックックッ。アッハッハッハッ!やるなイーヴァルディ!...
笑いながら、ジャリッジャリッと破片を踏み締めながら、歩み...
「…あぁ」
「小細工無しで来い!もっと遊ばせろ!」
ツェルプストー伯が本気で楽しんでいる
キュルケはホッとしつつ、父の実力を見直した
「やっぱり、お父様強いわ」
タバサは相次いで古強者の実力を見て、自分の実力がまだまだ...
「……まだまだ」
そう一人ごちる
そして才人が突撃を始めると、ツェルプストー伯はブレイドを...
ブレイドは才人が接近する間に赤、橙、白、青、青紫、そして...
「不味い、デルフ絶対に斬り結ぶな!」
「おうよ」
才人はそのまま一太刀を浴びせると輝くブレイドで受け止め様...
ガキン
石造りの床に亀裂が入り、デルフがめり込む
「相棒、あれ位吸い込み出来るわ!」
「止めろ!数秒掛からずに刀身が溶け落ちる!」
「よくぞ、気付いた!」
振りかぶったツェルプストー伯が輝くブレイドを振り下ろすと...
そして村雨の刃と追随したツェルプストー伯の輝く炎の刃が互...
「…熱いんだけど?」
「…合格だ」
そう言ってツェルプストー伯が炎を収め、熱せられた杖を放り...
「いや、実はあれやると儂も熱くてな。アッハッハッハッ」
革手袋をしてたのは、耐熱の為らしい
「しかし、良く初見であの輝く炎を見切ったな?全てを溶かす...
すると、才人は村雨を収めながら説明した
「あの炎は恒常的に使ってたんで。見慣れてるんですよ、俺」
「何と!?アレを普通に出せるのか?」
「えぇ。俺の国はそういう技術の国です」
「クックックッ。キュルケは良い男を見付けて来たモノだ。で...
ツェルプストー伯がそう言って、才人を促して歩いて行く
「えっと、どちらへ?製鉄所?」
「違う、戦場だ。鉄鉱山を襲撃する」
ツェルプストー伯がそう言って、暫く全員無言だった
「……はっ?どういう事でしょう?」
ルイズが聞くとツェルプストー伯が逆に問い質した
「何を言っている?お前達トリステインの国益に叶う行為だ。...
* * *
言葉足らずなツェルプストー伯に代わって、執事のオットーが...
「先ずはゼロ機関の皆様並びにトリステイン王政府の皆様。我...
「勿論、鉄鉱石販売を以前価格で売買とバーターにゼロ機関の...
そう言ってエレオノールが言うと、執事のオットーが頷く
「正にそれでございます。ツェルプストー伯所有の鉱山のみで...
「だから襲撃するって訳?随分乱暴じゃない。買い取るなりレ...
エレオノールが場を代表して言うと、オットーは頷いた
「その通りでございます。我らもきちんと鉱山買取り交渉から...
とりあえず黙って聞く才人達
「続きを」
エレオノールが促して、オットーが頷いて更に喋る
「はい。それで最大鉄鉱山を有するヒンデンブルグ中央伯家と...
「私共はゲルマニア帝政府に提訴しましたが、全面戦争前の小...
「……」
「鉄鉱山権益ならば金鉱山と違い、帝政府の裁定が得られると...
「基本的な質問良いか?」
才人がそう言って手を上げる
「どうぞ」
「同じ伯爵家だから、同格だから杖を使えと云う事かい?」
「いえ、違います。ヒンデンブルグ中央伯家はリューネブルク...
「……ってぇと、何か?」
「はい、ヒンデンブルグ伯家とは前回の戦役での敵同士。お互...
才人は頭を抱えてしまった
「ツェルプストー伯、武装しろってのは」
「勿論、そのまま戦場に向かう為だ」
才人とエレオノールが顔を見合わせ、お互いに天を扇いだ
味方しないと鉄鉱石が輸入出来ない
ゼロ機関に否やは無かったのである
「解った、助勢する。勝利条件と戦闘方式は?」
「鉄鉱山の守備隊の撃滅。鉱夫と司令官のみ殺してはならん。...
「ちょっと待ってくれ、何故皆殺しにしないとならない?」
才人が抗議すると、オットーが答えた
「ヒンデンブルグ伯家の力を削ぐ為です。我らツェルプストー...
「なら、再起不能にすれば」
カチ
デルフが出てきた
「相棒、反対だ。再起不能?ハルケギニアでそれがどういう意...
「どういう事だよ?デルフ」
「再起不能になった兵が、どういう扱いになんのか知ってんの...
才人は黙ってしまった
ハルケギニアでは勝者は英雄扱いだが、敗者の事に迄気が回ら...
やはり日本人の自分は甘い
才人は痛感せざるを得ない
「戦死が一番の慈悲だ。覚悟を決めろ、イーヴァルディ」
才人は表情を消して頷いた
「…場所は?」
すると地図を指してオットーが説明し出した
「こちら、ウィンドボナより更に北方の鉱山になります。竜籠...
凡そ1500リーグ以上有る
零戦でも遠征と呼べる距離だ
「…補給と移動どうすんだよ?」
「問題有りません」
そう言って、地図に印を次々に付けていく
ゲルマニアの国土を全てカバーした印を見て、才人が問い掛けた
「コイツは?」
「我がツェルプストー伯家が整備した竜籠補給部隊の中継地だ...
ツェルプストー伯の意見に才人がキュルケに聞いてみる
「キュルケ、知ってるか?」
「ちょろっとしか知らなかったわ……まさかゲルマニア全土とは...
キュルケがうんうんと頷いて、オットーが繋いだ
「では説明させて頂きます。これら中継地は各家に無許可で貿...
「そんなマジックアイテム有るのかよ……究極のステルスじゃね...
才人が汗を足らす
「はい、で、普段から物資を積み増しすると、魔獣や動物達に...
「こいつぁスゲー…待てよ?って事は外の馬車は?」
「はい、補給物資の納品です」
才人が気付いた事をオットーが肯定し
「って事は、零戦は戦力と見られてた訳だ……頭痛ぇ」
つまり、キュルケが大した戦力を引っ張って来たから、皆が思...
本当に頭が痛い
「で、本日の移動で、鉱山前の100リーグ地点迄の中継地に移動...
ツェルプストー伯の言い分に、才人が抗議する
「って事はあれか?あの演習はこういう目的か?」
「その通りだ」
「ちょっと待ってくれ!あの演習で増槽棄てちまった。流石に...
「あぁ、竜騎士が回収している。我々は珍しいモノが好きでな...
ぺしっと才人が額を叩いた
そう、ツェルプストー伯家は技術に対し並々ならぬ関心を寄せ...
捨てた増槽なぞ、好奇心の対象にしかならない
「解った、取り付ける。メイジ貸してくれ。出撃準備だ。向こ...
「無い。空中で停止しろ。補給部隊が網と魔法で回収する。向...
「…了解」
無茶苦茶な運用だが、魔法のあるハルケギニアでは当然かも知...
才人はそう判断して頷いた
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