ゼロの使い魔保管庫
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「…どうしてこうなった?」
「さぁねぇ?」
「何で俺、往年の零戦パイロットと同じ事してんだよ?」
「さぁねぇ?」
「俺……何かしたか?」
「イロイロ」
「泣いていい?」
「勝ったらな」
「いやん冷たい!」
「たまにはそうしたくなるってもんだぜ、お前」
「……馬鹿犬、いい加減黙りなさい」
「…へい」「…あいよ」
今、才人は零戦で北に向かって飛んでいる
後部座席にはルイズが陣取っている
理由は単純、重量が軽いからだ
最軽量はタバサだが、ルイズにあっさり譲っている
ちょっぴりトラウマになってるらしい
才人一人で飛行させないのは理由があって、地形と星の位置、...
つまり、ルイズが頼りないが、ナビゲーター役なのである
方位磁石片手に地図を睨み、眼下の地形から進行方向を観測し...
一応竜籠部隊に連なって飛行しているが、航法を覚える立候補...
練習には最適な環境である
星の位置が解らない才人に、星から憶えていくのは大変過ぎる
「そろそろ、右に6度修正入るわよ」
「了解」
高度3000で飛んでおり、しかも北上していく為にどんどん気温...
ルイズはマントをぴっちり閉じ、手だけをちょこっと出している
才人はグローブをしていて、別段寒そうにはしていない
バイク乗りには慣れてる気温である
才人はグローブをルイズに渡そうとしたのだが
「要らない。操縦で手がかじかんだら、私迄落ちる。だからサ...
「イエス、マイロード」
久し振りの威厳あるご主人様の復活である
戦に向かってるのだから当然だろう
「そう言えばルイズは大使だろ?戦争に加担は不味くないか?」
「馬鹿犬だけで、戦場には行かせないわよ」
「…左様で」
そういうしか無かったのである
「次、左30度」
「あいよ」
先程からの進路変更は哨戒範囲を回避しての航路設定であり、...
「更に左3度」
「了解」
才人がクンクンと操舵し、零戦は問題なく飛んでいる
既に5時間、中継地に着くと火竜が何処からともなく上がって...
そんな事を繰り返していた
既に才人も左手のルーンは光ってない
何度も操縦した為、飛行は既に熟練したので問題無い
着陸や離陸も、ルーン無しでやってみせるだろう
パスパスパス
プロペラが不規則になり
「やべ、増槽切れた。主槽に切り替え」
いきなりがくんとなった零戦を、主槽に切り替えたエンジンが...
「ふぅ、助かった」
「全くだぁね。墜落なんざ洒落にならんね」
そのまま更に数時間飛行し、ルイズが言ったのだ
「目的地付近到着、サイト、迎えが来たわよ」
「あぁ、俺にも見える」
火竜が二頭飛び上がり網が二頭に渡って広がっていた
風に煽られた網が急に大人しくなる
すると、青い身体の風竜が才人達の前に飛び出て来た
『シルフィード、ナイスアシスト』
ニヤリとしながら才人は火竜達と同調し、機体が真ん中に位置...
ギシッ
網に力が掛かったのを確認してエンジンを切る
そのまま、火竜達が中継地に向かって降りて行き、才人達は零...
* * *
マジックアイテムにより擬装された中継地の下に天幕が張られ...
「竜籠補給部隊の運用は兵数300が限度だ。それ以上は、空輸に...
ツェルプストー伯がそう言って部隊長や才人達を見回し、口の...
「お前達、ツェルプストーとヴァリエールが共闘し、イーヴァ...
「「おぉ!」」
才人はイーヴァルディに祭り上げられ、苦笑している
ツェルプストー伯は士気を上げる為にやってるのが解る為、敢...
そんな中、エレオノールが天幕に入って来る
「あぁもう、いきなり戦争だなんてふざけないでよ。とりあえ...
補給物資から革を引っ張り出して擲弾兵に縫わせ、自身はマジ...
「竜挺降下だなんて無茶苦茶するわね。もう寝るわ。魔力切れ...
「エレオノールさんお疲れ」
「まだよ。勝ちなさい」
「おうよ。俺っちと相棒に任せな」
才人に声をかけられたエレオノールは杖をふふんと振りながら...
「ヴァリエールが、我がツェルプストー兵の安全を確保する為...
「「ヤー」」
ツェルプストー伯に敬礼をした指揮官達
「では、最終打ち合わせだ。今回威力偵察を先行した竜騎士隊...
陣地図の中に次々と配置を書いていくツェルプストー伯
「こちらが気をつける部分は勿論竜騎士と臼砲だ。擲弾兵を竜...
流石に一気にざわつく
「…出来るのか?」
「タルブ戦のスコアは、竜騎士26撃墜、ロイヤルソブリン級中...
デルフがそう言って実績を示し、周りがおぉと感嘆に包まれる
「出来るな?イーヴァルディ」
「対空ミサイルあっから、前より楽に出来ると思うぞ。装備試...
「有るが非メイジでは無理だ。乗れん」
「私が騎乗します」
ルイズが挙手をして主張する
「大使殿には、前線に出向いて欲しくないのだが?」
「私の使い魔が要求したと云う事は、乗り換えて行動する積も...
ツェルプストー伯が渋面をしたが結局は頷いた
「ではお願いする。乗り換えは補給部隊がサポートする様に、...
補給部隊の隊長がカッと踵を合わせて敬礼する
「無論です、閣下」
「キュルケとシュヴァリエと私は敵臼砲を潰す。後は降下した...
隊長の一人がグラスを人数分配り、更に別の隊長がグラスにワ...
そして全員に行き渡ると、ツェルプストー伯が杯を掲げ、皆も...
当然キュルケ、ルイズ、タバサ、才人も掲げた
「この戦、勝つぞ!プロージット!」
「「「プロージット!」」」
乾杯の声が唱和され、全員一息に飲み、そしてグラスから手を...
カシャシャーン
ここに全員が己の利益の為に、戦う事を決意したのである
* * *
キュルケとタバサとルイズは、全員魔法処理された革鎧を貸与...
擲弾兵の装備品の余りを支給されたのだ
ツェルプストー伯はお抱えメイジに安穏と働く事を許さず、軽...
ディテクトマジックに反応するので隠密行動には向かないが、...
才人はジャケットのままであり、革鎧を断った
理由は、機動戦闘がメインの才人には、革鎧とて邪魔なのである
ジャケットの方が邪魔そうだが、気温の低い北国の為に防寒を...
そして才人はキュルケ達と同じ天幕で、自身の得物類をチェッ...
「01式並びに02式銃の弾丸と薬包は50発分、01式擲弾を3発、...
「流石に重いか?相棒」
「まぁな。でも普通に運べるわ。体力ついたなぁ」
才人はベルトに擲弾、村雨、弾薬を吊り、投げナイフは懐に、...
「ん、良し。こんなもんか」
「…上着貸して」
タバサがそう言って要求するので才人は背負ったデルフを外し...
タバサが詠唱を始め、杖を振り下ろすとジャケットが光に包ま...
「銃弾回避の風魔法。大体30発迄」
タバサがそう言い、才人が感心している
装甲擲弾兵に銃兵
相手は銃を大量に使用する。ガンダールヴと言えど、銃弾の雨...
「へぇ、こんな事も出来るのか」
「真似した」
「真似?」
才人がおうむ返しに聞くと
「この革鎧に掛かってる魔法ね。弱い風魔法や火魔法も反らす...
「サンキュー。助かるわ」
此で準備は整った
明日の為に、後は寝るだけである
全員が全員、装備を外して静かに就寝した
* * *
翌朝、朝日が昇る前に緊張と軽い高揚感に包まれていた全員が...
「ま……間に合った。平民にルイズ。あんた達も受け取りなさい...
「エレオノールさん、グッジョブ」
「私は出ないわよ。もう無理」
そう言って折り畳み椅子を引っ張り出して座り、才人が立ち上...
既に全員戦支度は終えている
そして才人が食事を持って来て、エレオノールが一人遅れて朝...
「時間だ。出るぞ」
ガタタ
全員が顔を引き締め、出撃していく
キュルケとタバサはシルフィードに乗り、火竜に擲弾兵が続々...
才人とルイズは網の下に木箱で支えられてる零戦に乗り込み、...
「こちらイーヴァルディ。各隊、聞こえてる?」
《こちらツェルプストー、良く聞こえておる。コイツは便利だ...
「イーヴァルディと交渉して下さい。補給部隊、応答願います」
《…こちら補給部隊》
「準備完了。先行して竜騎士を叩きます。離陸宜しく」
《ヤー、ザッ》
この応答を合図に、木々にかけられた不可視の布が兵達によっ...
竜騎士達が手綱を叩いて火竜達が羽ばたき、綱がグンと引かれ...
上空500メイルで上昇気流を掴んだ火竜達が一気に上昇し、プロ...
ブブ、ブ、ブロォォォ
才人が親指を立てて合図を送ると、火竜達が一気に降下し、零...
「さぁてと、何故か戦争になっちまったなぁ。ルイズ、こうい...
才人の問いに、ルイズが答えた
「えぇ、一昔前は、ちょっと往来でぶつかっただけで発生して...
「デルフ」
カチ
デルフが自ら出て来て保証する
「あいよ。嬢ちゃんの言う通りだぁね。相棒みたいに、なるべ...
「全く……日本の戦国時代みたいだな」
「戦国?」
ルイズの問いに才人が答える
「日本にもしょっちゅう戦ってた時代があったのさ。大体400年...
その言葉にルイズが渡された地形図と陣地図を見て唸る
「む〜。進路変更、12度取り舵」
「了解」
くいっと、哨戒地を迂回する零戦
《こちら後続、竜挺部隊並びにヒポグリフ隊。今出撃した》
「イーヴァルディ了解」
ルイズが無線に返事をした後、配置図を睨みながら才人に返す
「山の斜面の銃眼と臼砲群は厄介ね。こいつで叩けない?」
「残弾が20mm60発しか無い。7.7mmは対地に向かないよ。先ず竜...
「何?」
「エクスプロージョンは使い所を考えろ。基本は、ディスペル...
「解った」
そう、戦力比でメイジ比率はヒンデンブルグ伯軍が上回る
才人達が参戦しても、制空権が確保出来なければ負けるのだ
* * *
ヒンデンブルグ伯家の所有する鉱山では、ヒンデンブルグ伯そ...
ゲルマニア帝政府の裁定で、ツェルプストーが勝利した場合の...
ちなみにツェルプストーをヒンデンブルグが殺しても戦場では...
逆にツェルプストーはヒンデンブルグを殺せない
権利譲渡する相手が、おらねばならないからだ
勿論生きてサインか血判が押せれば良いので、五体満足である...
「7年越しか……遂に来たぞ、この時が。総員に告ぐ、ツェルプ...
「「「おおぉ!!」」」
ヒンデンブルグ中央伯の娘との婚姻は、ヒンデンブルグ伯家の...
此に沸き立たない兵も貴族も居ない
何故なら約束を違う事は、貴族の貴族たる所以を失うからだ
兵が付いてこなくなれば、ヒンデンブルグ伯家ですら没落する
没落したら、皇帝三家が持つ独占利権たる金鉱山すら、手離せ...
貴族の見栄とは、其ほどに大事なのである
「だからお前達の活躍を期待する。リヒテンシュタイン、後は...
「はっ、閣下」
カッ
一礼した鉄鉱山守備隊司令リヒテンシュタイン兵達に向き直った
「先日ツェルプストーが伯家から出撃したと偵察から報告があ...
「銃兵と砲兵は銃眼と臼砲に配置、増援たる装甲擲弾兵は装甲...
「今回は防衛戦だ。ツェルプストー伯軍が撤退すれば我々の勝...
バババッ
伝令の大声に、銃兵と砲兵が一気に持ち場に散って行く
「報告を」
「は、一騎です。ツェルプストー伯旗を確認。しかし妙です」
「妙?」
「百合と剣の紋章も確認しています。トリステインでは?」
「……同盟国だし援軍を頼んだか?私も監視所に行く」
リヒテンシュタインも走り出し、装甲擲弾兵も中隊指揮官の号...
* * *
才人達搭乗の零戦は、火竜騎士が全部離陸する迄旋回しながら...
別に騎士道精神からではなく、あくまで騎士が乗った状態じゃ...
当然追っ掛けっこになり、才人は逃げ回っている
「デルフ、騎数確認」
「おぅ、18、19、20…全騎来たぜ」
「射界500メイル前方だ。上手く収めるぞ。ルイズ、後続と連絡...
「解ったわ。こちらイーヴァルディ、応答願います」
マイクスイッチを投入して呼び掛けるルイズ
受信は常時だが、送信を任意にして、魔力消費を抑えている
《こちらツェルプストー。何だ?ザッ》
「現在交戦開始。1リーグ以内に近付かないで下さい。誤射し...
《ヤー。ザッ》
* * *
監視所に来て、零戦の奇妙な風体と一切の攻撃意思の無いのら...
「…何だあれは?」
「解りません」
「……確かに解らんとしか、答え様が無いな」
零戦の胴体には、ツェルプストー旗が魔法で無理矢理貼り付け...
つまり攻撃対象だ
ドンドンドン
臼砲が散弾ではなく榴弾を上空に向かって撃っており、振動が...
鉄鉱山の山の斜面を利用し、鉱夫に序でに掘らせた銃眼と、外...
それが鉱山の入り口を取り囲んでいる
今回の様な戦争が無い場合は兵数は50前後で回すのだが、紛争...
普段は野盗や他貴族、魔獣や幻獣対策であり、鉄鉱石の横取り...
火薬庫が鉱山内に無いのは、ひとえに安全対策であり、火薬の...
一般に出回らないだけで、流石に鉱山内では粉塵爆発の危険性...
「…何故魔法を撃たない?」
「流石に不明です」
リヒテンシュタインの問いに誰も答えられず、かなり余裕に20...
「…あれは陽動だな。火竜騎士に伝達、後続の本隊を叩け。奴が...
実際に本隊が見えている為、そうリヒテンシュタインが命令し...
* * *
「ちょっとサイト。全騎本隊に行ってしまうわ」
追いかけっこに合わせて滅茶苦茶な機動されたにも関わらず、...
「良し、追うぞ」
ゴーグルの下でニヤリとした才人が一気に回転を上げて、彼ら...
「相棒、全騎射界に収まったぞ?」
「待ってたよ」
通常の攻撃魔法では届かない距離500メイル
実際には300メイルに迄近寄り、才人は増設された左下の投下レ...
パシュシュシュ
ラック事空飛ぶ蛇君が落下し、ラックの外れがスイッチとなり...
ババババン
一際派手な音が木霊すると同時に黒煙が立ち込め、その黒煙の...
「……全騎……撃墜」
「……何なのだ?あれは」
リヒテンシュタイン達が監視所から双眼鏡で結果を見て唖然と...
ドンドンドン
臼砲が散弾を連発して攻撃するが届かない
そんな中、アウトレンジから左翼の蛇君が投下され、陣地に向...
「不味い、落とせ!!」
言われなくても兵達は解っている
パパパパパパン
マスケット銃の音と砲弾の狂想曲がリヒテンシュタインの耳を...
ドドドドーン
天井から土砂が降り砂だらけになりながら、リヒテンシュタイ...
「被害報告、急げ!」
「臼砲6門破壊!砲兵の戦死確認」
「火薬庫吹っ飛びました。手持ち弾薬で最後です!」
「何!?」
火薬庫を頑丈にする為に魔法を施したのが仇になり、蛇君の攻...
まだまだ被害報告は続く
「銃眼損壊10。中の銃兵は絶望」
「人的損害50を下りません!」
「敵の攻撃、10本中2本迎撃成功!」
「な……8割の攻撃力で此だと?」
リヒテンシュタインは驚愕に眼を開かせる
「敵本隊接近……ドラッケングレネーダー。来ます!」
「くっ、生き残った臼砲と装甲擲弾兵に迎撃させろ」
「ヤー!」
「敵魔法兵器。撤退します!」
「弾切れか?有り難い。なら勝負は五分だ。ここから押し返せ...
* * *
「こちらイーヴァルディ。攻撃終了。乗り換えします」
《こちら補給部隊。後方1.5リーグ、高度1500で滞空中。ヒポグ...
半径2リーグに収まる様に、連絡を取り合って、円滑に作戦が...
《こちらツェルプストー。本隊前進開始。パーティーのご馳走...
ルイズは気の効いた返事をしようとして、ちょっと考えた後
「勿論よ。私達が転進する迄、全部食べないでよ?クックベリ...
《そいつは豪勢だ。全部頂くぞ。ザッ》
そうして、才人達が撤退する下を竜挺部隊が交差して前進して...
才人も親指を立てて見送った
補給部隊とランデブーした才人達は零戦を空中で受け止めて貰...
「大戦果有り難うございます!更なる御武運を!」
「零戦は任せた。後は頼む!」
「ヤー!」
「行くわよ!犬」
「オーライ」
バッ
今度はルイズが騎手として、大空に馳せたのである
* * *
ツェルプストー伯の攻撃は巧みだった
竜挺部隊に臼砲の狙いを付けさせ、自身は遊撃部隊のヒポグリ...
臼砲は、山頂側に羽ばたくヒポグリフ達を追う為の旋回が出来...
「敵が別れます!ヒポグリフ達の目標は我々です!」
「臆すな!一合を耐えきろ!あくまで狙いは竜挺部隊だ」
「ヤー」
そう言って砲手以外は全員マスケット銃を手にヒポグリフ達の...
「風よ、大いなる風よ、我々を護りたまえなのね。きゅいきゅ...
シルフィードが詠唱すると精霊の力が皆を包むが、生憎飛行音...
「タバサ、コンボランスは飛行中は無理。個別に射撃するわよ」
タバサはコクンと頷いて、一番飛行力の有るシルフィードが先...
「ラグース・ウォータル・イス・イーサ・ハガラース」
「ウル・カーノ・イーサ・ティール・ギョーフ」
キュルケとタバサがそれぞれ狙いを付け、ジャベリンとファイ...
パパパンパパンパパン
更に遅れて、銃声を背にヒポグリフ隊とツェルプストー伯が、...
更に遅れて、爆発が相次いだ
ドドドドーン!
「臼砲破壊、完了……何!?」
そこに驚愕の事態がツェルプストー伯に起きた
先程通過した先から装甲擲弾兵の一隊が飛び出し、二人がかり...
空中に投げ出された擲弾兵
全員墜落死かと思われたが、全員渡されたレビテーションシュ...
パリンパリパリン
硝子玉が割れる音が聞こえて来て、ゆっくり落下していく擲弾...
ババババン!
都合40発の一斉射撃を受け、三人程墜落していく
更に擲弾兵は腰から擲弾を取り出し、黄燐を染み込ませた火縄...
装甲擲弾兵の集団に擲弾が炸裂する
ババババン
しかし、今度は大したダメージが与えられなかった
防御魔法を重ね掛けしてたのである
空中で緩やかな落下をする擲弾兵は、はっきり言って的だ
銃眼と装甲擲弾兵達が銃を構えて一斉射撃が始まり、あっとい...
そして生き残った竜挺部隊の本格的な降下が始まった
「急げ急げ急げ、走れ走れ走れ。銃眼を全部潰すぞ」
斜面を滑り降りながら擲弾兵達が上から降りて、銃眼に取り付...
ボン、ボン
「装甲擲弾兵二段射撃。アイン、ファイエル!」
ババババン
銃眼を攻撃し始めた擲弾兵に向かって銃が放たれ、過負荷にな...
「ツヴァイ、ファイエル!」
ババババン
また一掃され
「アイン、ファイエル!」
ババババン
連続射撃で各個撃破される擲弾兵
そこに支援攻撃が来た
制空権を完全に握ったタバサとキュルケ、それにツェルプスト...
「さぁてと、あんた達、死ぬわよ?」
キュルケとタバサがコンボランスを用意する為に滞空し、そこ...
「喰らいなさい!ファイエル!」
生き残った銃眼にコンボランスが突き刺さり、盛大に爆発した
ドォン!!
更に一度上空に羽ばたいたヒポグリフからまた滑空したツェル...
「ウル・カーノ・ソウイル・ベルカナ・ハガラース。我が白炎...
カッ
装甲擲弾兵の部隊に白く輝く閃光を伴った炎が出撃したが、障...
「ちっ、流石は装甲擲弾兵。ゲルマニア最強部隊な訳はある」
そして撃ち終わりを指揮官に狙われた
「目標、あのヒポグリフ」ビスッ
終わり迄言う前に、兜事貫通し、指揮官が倒れる
「な、我々の魔法の出し終わりを狙った?」
また一騎、桃髪の騎士が、後方に黒髪の騎士を同乗させて現れ...
才人が構えた銃口は、今しがたの狙撃で黒煙を吐いている
才人はガンダールヴで素早く朔杖を持って装填作業を通常の半...
パァン!!
ビスッ
また一人、あっさり倒され、目標が才人達に向いた
「気分はシモヘイへ〜」
「何言ってんだ?相棒?」
そのまま装甲擲弾兵の上空にルイズは降下し、才人がバッと飛...
降りてる最中に01式を格納しデルフを抜いて手近な敵を蹴り飛...
「行くぜ!ゼロの使い魔の本領は、こっからが本番だ!おおぉ...
雄叫びを上げて才人がデルフを叩き付け、数人が鎧がひしゃげ...
いきなりの白兵に慌てた装甲擲弾兵だが、ブレイドを構えて同...
「単騎で我々を潰せるか!殺れぇぇぇ!」
更に横薙ぎにデルフを振って数人を打ち倒し、間合いが出来た...
そして抜刀した瞬間にまた一人、兵が倒れる
上空では才人が突撃をしてる最中、ルイズが巧みに弧を描きな...
「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンヤクサ」
才人の身体に力が乗る
敵の動きが最早駒送りに見える
二本の太刀筋が別々に動き、片手で金属の塊を両断出来る凶悪...
「オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド」
才人の突撃にまた数人倒され、装甲擲弾兵達が圧倒的な剣技に...
「ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ」
気付いた兵から警告が上がる
「不味い、防御詠唱!」
次々とシールドが張られ、ルイズが杖を振り下ろした
生き残っていた兵の中央に光が発生し、次いで衝撃が空気を押...
ドォォォォォン!
装甲擲弾兵の50人以上が一発で防御事吹き飛び、才人は衝撃で...
「おわっ!?飛び過ぎ!?」
「今回は、中々派手な威力だねぇ」
墜落死寸前で才人もレビテーションシュートを発動させて着地...
「此処が使い所!イル・ウォータル・デル・パース・ウィアド」
一瞬で加速した才人が生き残りの中を通過し、周りに霧が残さ...
遅れて糸が切れた様に血飛沫を上げて倒れていく装甲擲弾兵
才人がぶんと村雨を抜いて収め、更にデルフも収めた
チン
そしてその場に尻餅を付き、両手で身体を支える
「あぁ、きっついわぁ」
「……ぐっ……何…者」
どうやら一撃で殺せなかった様だ
「あ、悪い。痛いだろ?トドメ要るか?」
兵が頷きながらまた問い掛けた
「討った御身の名を…」
才人は投げナイフを取り出しつつ接近し、兵に囁いた
「イーヴァルディ。君を殺したのはイーヴァルディだ。ヴァル...
兵は微笑み、才人のトドメを受け、そのまま絶命した
* * *
ツェルプストー伯は生き残りの擲弾兵と共に陣地内に突入し、...
捕らえた兵から場所を聞き出し、案内させたのである
バァン
「抵抗は無意味だ、降伏しろ!」
擲弾兵が一気に突入して、司令に銃を放射状に展開して突き付...
「…派手に敗けたな。何故だ?ツェルプストー。地の利はこちら...
通常、攻撃は守備の4倍は必要とされている
300を攻め落とすには、1200が必要なのだ
「何、答えは簡単だ。一騎当千の助っ人が味方したからだ。で...
リヒテンシュタインが苦々しく頷いた
「最初に制空権を奪われたのが痛かった。一体何を味方にした...
「イーヴァルディを味方にした。どうだ?納得だろう?」
虚を付かれたリヒテンシュタインはきょとんとし、そして笑い...
「クックックッ。イーヴァルディか……あのお伽噺のね………アッハ...
そのリヒテンシュタインの声を受け、ツェルプストー伯が号令...
「戦闘中止!ツェルプストーの勝利だ!敵味方総員戦闘を中止...
「あぁ、全員持っていけ。ツェルプストー。お前をヒンデンブ...
* * *
才人が大の字になって血塗れで伸びており、ルイズはう〜と唸...
「嬢ちゃんよ、俺っちが見張ると言ったろ?」
「自分の目で見ないと安心出来ないのよ」
「ま、最後の一撃にビビって、誰も近寄らないって」
更にシルフィードが降りて来た
「きゅい!」
キュルケとタバサが飛び降り、一目散に駆けて来る
「ダーリン負傷したの?」
「いんやぁ?力を使いきって伸びてるだけだぜ?」
キュルケ達もホッとして、シルフィードに才人を積み込んだ
「ツェルプストーは行かなくて良いの?」
「お父様が上手くやるわよ、それよりあんたもさっさと下がり...
言われてルイズはぽんと手を叩き、ヒポグリフに跳び乗った
「さっさと参上、すたこら退場。全く、相棒達は忙しいねぇ」
デルフがそう締め、
ツェルプストー伯軍
火竜8
ヒポグリフ10
擲弾兵117
の損害
ヒンデンブルグ伯軍
火竜20
臼砲12
装甲擲弾兵88
銃兵209
の損害を出しつつ、鉄鉱山攻略戦はツェルプストー伯の勝利に...
* * *
終了行:
「…どうしてこうなった?」
「さぁねぇ?」
「何で俺、往年の零戦パイロットと同じ事してんだよ?」
「さぁねぇ?」
「俺……何かしたか?」
「イロイロ」
「泣いていい?」
「勝ったらな」
「いやん冷たい!」
「たまにはそうしたくなるってもんだぜ、お前」
「……馬鹿犬、いい加減黙りなさい」
「…へい」「…あいよ」
今、才人は零戦で北に向かって飛んでいる
後部座席にはルイズが陣取っている
理由は単純、重量が軽いからだ
最軽量はタバサだが、ルイズにあっさり譲っている
ちょっぴりトラウマになってるらしい
才人一人で飛行させないのは理由があって、地形と星の位置、...
つまり、ルイズが頼りないが、ナビゲーター役なのである
方位磁石片手に地図を睨み、眼下の地形から進行方向を観測し...
一応竜籠部隊に連なって飛行しているが、航法を覚える立候補...
練習には最適な環境である
星の位置が解らない才人に、星から憶えていくのは大変過ぎる
「そろそろ、右に6度修正入るわよ」
「了解」
高度3000で飛んでおり、しかも北上していく為にどんどん気温...
ルイズはマントをぴっちり閉じ、手だけをちょこっと出している
才人はグローブをしていて、別段寒そうにはしていない
バイク乗りには慣れてる気温である
才人はグローブをルイズに渡そうとしたのだが
「要らない。操縦で手がかじかんだら、私迄落ちる。だからサ...
「イエス、マイロード」
久し振りの威厳あるご主人様の復活である
戦に向かってるのだから当然だろう
「そう言えばルイズは大使だろ?戦争に加担は不味くないか?」
「馬鹿犬だけで、戦場には行かせないわよ」
「…左様で」
そういうしか無かったのである
「次、左30度」
「あいよ」
先程からの進路変更は哨戒範囲を回避しての航路設定であり、...
「更に左3度」
「了解」
才人がクンクンと操舵し、零戦は問題なく飛んでいる
既に5時間、中継地に着くと火竜が何処からともなく上がって...
そんな事を繰り返していた
既に才人も左手のルーンは光ってない
何度も操縦した為、飛行は既に熟練したので問題無い
着陸や離陸も、ルーン無しでやってみせるだろう
パスパスパス
プロペラが不規則になり
「やべ、増槽切れた。主槽に切り替え」
いきなりがくんとなった零戦を、主槽に切り替えたエンジンが...
「ふぅ、助かった」
「全くだぁね。墜落なんざ洒落にならんね」
そのまま更に数時間飛行し、ルイズが言ったのだ
「目的地付近到着、サイト、迎えが来たわよ」
「あぁ、俺にも見える」
火竜が二頭飛び上がり網が二頭に渡って広がっていた
風に煽られた網が急に大人しくなる
すると、青い身体の風竜が才人達の前に飛び出て来た
『シルフィード、ナイスアシスト』
ニヤリとしながら才人は火竜達と同調し、機体が真ん中に位置...
ギシッ
網に力が掛かったのを確認してエンジンを切る
そのまま、火竜達が中継地に向かって降りて行き、才人達は零...
* * *
マジックアイテムにより擬装された中継地の下に天幕が張られ...
「竜籠補給部隊の運用は兵数300が限度だ。それ以上は、空輸に...
ツェルプストー伯がそう言って部隊長や才人達を見回し、口の...
「お前達、ツェルプストーとヴァリエールが共闘し、イーヴァ...
「「おぉ!」」
才人はイーヴァルディに祭り上げられ、苦笑している
ツェルプストー伯は士気を上げる為にやってるのが解る為、敢...
そんな中、エレオノールが天幕に入って来る
「あぁもう、いきなり戦争だなんてふざけないでよ。とりあえ...
補給物資から革を引っ張り出して擲弾兵に縫わせ、自身はマジ...
「竜挺降下だなんて無茶苦茶するわね。もう寝るわ。魔力切れ...
「エレオノールさんお疲れ」
「まだよ。勝ちなさい」
「おうよ。俺っちと相棒に任せな」
才人に声をかけられたエレオノールは杖をふふんと振りながら...
「ヴァリエールが、我がツェルプストー兵の安全を確保する為...
「「ヤー」」
ツェルプストー伯に敬礼をした指揮官達
「では、最終打ち合わせだ。今回威力偵察を先行した竜騎士隊...
陣地図の中に次々と配置を書いていくツェルプストー伯
「こちらが気をつける部分は勿論竜騎士と臼砲だ。擲弾兵を竜...
流石に一気にざわつく
「…出来るのか?」
「タルブ戦のスコアは、竜騎士26撃墜、ロイヤルソブリン級中...
デルフがそう言って実績を示し、周りがおぉと感嘆に包まれる
「出来るな?イーヴァルディ」
「対空ミサイルあっから、前より楽に出来ると思うぞ。装備試...
「有るが非メイジでは無理だ。乗れん」
「私が騎乗します」
ルイズが挙手をして主張する
「大使殿には、前線に出向いて欲しくないのだが?」
「私の使い魔が要求したと云う事は、乗り換えて行動する積も...
ツェルプストー伯が渋面をしたが結局は頷いた
「ではお願いする。乗り換えは補給部隊がサポートする様に、...
補給部隊の隊長がカッと踵を合わせて敬礼する
「無論です、閣下」
「キュルケとシュヴァリエと私は敵臼砲を潰す。後は降下した...
隊長の一人がグラスを人数分配り、更に別の隊長がグラスにワ...
そして全員に行き渡ると、ツェルプストー伯が杯を掲げ、皆も...
当然キュルケ、ルイズ、タバサ、才人も掲げた
「この戦、勝つぞ!プロージット!」
「「「プロージット!」」」
乾杯の声が唱和され、全員一息に飲み、そしてグラスから手を...
カシャシャーン
ここに全員が己の利益の為に、戦う事を決意したのである
* * *
キュルケとタバサとルイズは、全員魔法処理された革鎧を貸与...
擲弾兵の装備品の余りを支給されたのだ
ツェルプストー伯はお抱えメイジに安穏と働く事を許さず、軽...
ディテクトマジックに反応するので隠密行動には向かないが、...
才人はジャケットのままであり、革鎧を断った
理由は、機動戦闘がメインの才人には、革鎧とて邪魔なのである
ジャケットの方が邪魔そうだが、気温の低い北国の為に防寒を...
そして才人はキュルケ達と同じ天幕で、自身の得物類をチェッ...
「01式並びに02式銃の弾丸と薬包は50発分、01式擲弾を3発、...
「流石に重いか?相棒」
「まぁな。でも普通に運べるわ。体力ついたなぁ」
才人はベルトに擲弾、村雨、弾薬を吊り、投げナイフは懐に、...
「ん、良し。こんなもんか」
「…上着貸して」
タバサがそう言って要求するので才人は背負ったデルフを外し...
タバサが詠唱を始め、杖を振り下ろすとジャケットが光に包ま...
「銃弾回避の風魔法。大体30発迄」
タバサがそう言い、才人が感心している
装甲擲弾兵に銃兵
相手は銃を大量に使用する。ガンダールヴと言えど、銃弾の雨...
「へぇ、こんな事も出来るのか」
「真似した」
「真似?」
才人がおうむ返しに聞くと
「この革鎧に掛かってる魔法ね。弱い風魔法や火魔法も反らす...
「サンキュー。助かるわ」
此で準備は整った
明日の為に、後は寝るだけである
全員が全員、装備を外して静かに就寝した
* * *
翌朝、朝日が昇る前に緊張と軽い高揚感に包まれていた全員が...
「ま……間に合った。平民にルイズ。あんた達も受け取りなさい...
「エレオノールさん、グッジョブ」
「私は出ないわよ。もう無理」
そう言って折り畳み椅子を引っ張り出して座り、才人が立ち上...
既に全員戦支度は終えている
そして才人が食事を持って来て、エレオノールが一人遅れて朝...
「時間だ。出るぞ」
ガタタ
全員が顔を引き締め、出撃していく
キュルケとタバサはシルフィードに乗り、火竜に擲弾兵が続々...
才人とルイズは網の下に木箱で支えられてる零戦に乗り込み、...
「こちらイーヴァルディ。各隊、聞こえてる?」
《こちらツェルプストー、良く聞こえておる。コイツは便利だ...
「イーヴァルディと交渉して下さい。補給部隊、応答願います」
《…こちら補給部隊》
「準備完了。先行して竜騎士を叩きます。離陸宜しく」
《ヤー、ザッ》
この応答を合図に、木々にかけられた不可視の布が兵達によっ...
竜騎士達が手綱を叩いて火竜達が羽ばたき、綱がグンと引かれ...
上空500メイルで上昇気流を掴んだ火竜達が一気に上昇し、プロ...
ブブ、ブ、ブロォォォ
才人が親指を立てて合図を送ると、火竜達が一気に降下し、零...
「さぁてと、何故か戦争になっちまったなぁ。ルイズ、こうい...
才人の問いに、ルイズが答えた
「えぇ、一昔前は、ちょっと往来でぶつかっただけで発生して...
「デルフ」
カチ
デルフが自ら出て来て保証する
「あいよ。嬢ちゃんの言う通りだぁね。相棒みたいに、なるべ...
「全く……日本の戦国時代みたいだな」
「戦国?」
ルイズの問いに才人が答える
「日本にもしょっちゅう戦ってた時代があったのさ。大体400年...
その言葉にルイズが渡された地形図と陣地図を見て唸る
「む〜。進路変更、12度取り舵」
「了解」
くいっと、哨戒地を迂回する零戦
《こちら後続、竜挺部隊並びにヒポグリフ隊。今出撃した》
「イーヴァルディ了解」
ルイズが無線に返事をした後、配置図を睨みながら才人に返す
「山の斜面の銃眼と臼砲群は厄介ね。こいつで叩けない?」
「残弾が20mm60発しか無い。7.7mmは対地に向かないよ。先ず竜...
「何?」
「エクスプロージョンは使い所を考えろ。基本は、ディスペル...
「解った」
そう、戦力比でメイジ比率はヒンデンブルグ伯軍が上回る
才人達が参戦しても、制空権が確保出来なければ負けるのだ
* * *
ヒンデンブルグ伯家の所有する鉱山では、ヒンデンブルグ伯そ...
ゲルマニア帝政府の裁定で、ツェルプストーが勝利した場合の...
ちなみにツェルプストーをヒンデンブルグが殺しても戦場では...
逆にツェルプストーはヒンデンブルグを殺せない
権利譲渡する相手が、おらねばならないからだ
勿論生きてサインか血判が押せれば良いので、五体満足である...
「7年越しか……遂に来たぞ、この時が。総員に告ぐ、ツェルプ...
「「「おおぉ!!」」」
ヒンデンブルグ中央伯の娘との婚姻は、ヒンデンブルグ伯家の...
此に沸き立たない兵も貴族も居ない
何故なら約束を違う事は、貴族の貴族たる所以を失うからだ
兵が付いてこなくなれば、ヒンデンブルグ伯家ですら没落する
没落したら、皇帝三家が持つ独占利権たる金鉱山すら、手離せ...
貴族の見栄とは、其ほどに大事なのである
「だからお前達の活躍を期待する。リヒテンシュタイン、後は...
「はっ、閣下」
カッ
一礼した鉄鉱山守備隊司令リヒテンシュタイン兵達に向き直った
「先日ツェルプストーが伯家から出撃したと偵察から報告があ...
「銃兵と砲兵は銃眼と臼砲に配置、増援たる装甲擲弾兵は装甲...
「今回は防衛戦だ。ツェルプストー伯軍が撤退すれば我々の勝...
バババッ
伝令の大声に、銃兵と砲兵が一気に持ち場に散って行く
「報告を」
「は、一騎です。ツェルプストー伯旗を確認。しかし妙です」
「妙?」
「百合と剣の紋章も確認しています。トリステインでは?」
「……同盟国だし援軍を頼んだか?私も監視所に行く」
リヒテンシュタインも走り出し、装甲擲弾兵も中隊指揮官の号...
* * *
才人達搭乗の零戦は、火竜騎士が全部離陸する迄旋回しながら...
別に騎士道精神からではなく、あくまで騎士が乗った状態じゃ...
当然追っ掛けっこになり、才人は逃げ回っている
「デルフ、騎数確認」
「おぅ、18、19、20…全騎来たぜ」
「射界500メイル前方だ。上手く収めるぞ。ルイズ、後続と連絡...
「解ったわ。こちらイーヴァルディ、応答願います」
マイクスイッチを投入して呼び掛けるルイズ
受信は常時だが、送信を任意にして、魔力消費を抑えている
《こちらツェルプストー。何だ?ザッ》
「現在交戦開始。1リーグ以内に近付かないで下さい。誤射し...
《ヤー。ザッ》
* * *
監視所に来て、零戦の奇妙な風体と一切の攻撃意思の無いのら...
「…何だあれは?」
「解りません」
「……確かに解らんとしか、答え様が無いな」
零戦の胴体には、ツェルプストー旗が魔法で無理矢理貼り付け...
つまり攻撃対象だ
ドンドンドン
臼砲が散弾ではなく榴弾を上空に向かって撃っており、振動が...
鉄鉱山の山の斜面を利用し、鉱夫に序でに掘らせた銃眼と、外...
それが鉱山の入り口を取り囲んでいる
今回の様な戦争が無い場合は兵数は50前後で回すのだが、紛争...
普段は野盗や他貴族、魔獣や幻獣対策であり、鉄鉱石の横取り...
火薬庫が鉱山内に無いのは、ひとえに安全対策であり、火薬の...
一般に出回らないだけで、流石に鉱山内では粉塵爆発の危険性...
「…何故魔法を撃たない?」
「流石に不明です」
リヒテンシュタインの問いに誰も答えられず、かなり余裕に20...
「…あれは陽動だな。火竜騎士に伝達、後続の本隊を叩け。奴が...
実際に本隊が見えている為、そうリヒテンシュタインが命令し...
* * *
「ちょっとサイト。全騎本隊に行ってしまうわ」
追いかけっこに合わせて滅茶苦茶な機動されたにも関わらず、...
「良し、追うぞ」
ゴーグルの下でニヤリとした才人が一気に回転を上げて、彼ら...
「相棒、全騎射界に収まったぞ?」
「待ってたよ」
通常の攻撃魔法では届かない距離500メイル
実際には300メイルに迄近寄り、才人は増設された左下の投下レ...
パシュシュシュ
ラック事空飛ぶ蛇君が落下し、ラックの外れがスイッチとなり...
ババババン
一際派手な音が木霊すると同時に黒煙が立ち込め、その黒煙の...
「……全騎……撃墜」
「……何なのだ?あれは」
リヒテンシュタイン達が監視所から双眼鏡で結果を見て唖然と...
ドンドンドン
臼砲が散弾を連発して攻撃するが届かない
そんな中、アウトレンジから左翼の蛇君が投下され、陣地に向...
「不味い、落とせ!!」
言われなくても兵達は解っている
パパパパパパン
マスケット銃の音と砲弾の狂想曲がリヒテンシュタインの耳を...
ドドドドーン
天井から土砂が降り砂だらけになりながら、リヒテンシュタイ...
「被害報告、急げ!」
「臼砲6門破壊!砲兵の戦死確認」
「火薬庫吹っ飛びました。手持ち弾薬で最後です!」
「何!?」
火薬庫を頑丈にする為に魔法を施したのが仇になり、蛇君の攻...
まだまだ被害報告は続く
「銃眼損壊10。中の銃兵は絶望」
「人的損害50を下りません!」
「敵の攻撃、10本中2本迎撃成功!」
「な……8割の攻撃力で此だと?」
リヒテンシュタインは驚愕に眼を開かせる
「敵本隊接近……ドラッケングレネーダー。来ます!」
「くっ、生き残った臼砲と装甲擲弾兵に迎撃させろ」
「ヤー!」
「敵魔法兵器。撤退します!」
「弾切れか?有り難い。なら勝負は五分だ。ここから押し返せ...
* * *
「こちらイーヴァルディ。攻撃終了。乗り換えします」
《こちら補給部隊。後方1.5リーグ、高度1500で滞空中。ヒポグ...
半径2リーグに収まる様に、連絡を取り合って、円滑に作戦が...
《こちらツェルプストー。本隊前進開始。パーティーのご馳走...
ルイズは気の効いた返事をしようとして、ちょっと考えた後
「勿論よ。私達が転進する迄、全部食べないでよ?クックベリ...
《そいつは豪勢だ。全部頂くぞ。ザッ》
そうして、才人達が撤退する下を竜挺部隊が交差して前進して...
才人も親指を立てて見送った
補給部隊とランデブーした才人達は零戦を空中で受け止めて貰...
「大戦果有り難うございます!更なる御武運を!」
「零戦は任せた。後は頼む!」
「ヤー!」
「行くわよ!犬」
「オーライ」
バッ
今度はルイズが騎手として、大空に馳せたのである
* * *
ツェルプストー伯の攻撃は巧みだった
竜挺部隊に臼砲の狙いを付けさせ、自身は遊撃部隊のヒポグリ...
臼砲は、山頂側に羽ばたくヒポグリフ達を追う為の旋回が出来...
「敵が別れます!ヒポグリフ達の目標は我々です!」
「臆すな!一合を耐えきろ!あくまで狙いは竜挺部隊だ」
「ヤー」
そう言って砲手以外は全員マスケット銃を手にヒポグリフ達の...
「風よ、大いなる風よ、我々を護りたまえなのね。きゅいきゅ...
シルフィードが詠唱すると精霊の力が皆を包むが、生憎飛行音...
「タバサ、コンボランスは飛行中は無理。個別に射撃するわよ」
タバサはコクンと頷いて、一番飛行力の有るシルフィードが先...
「ラグース・ウォータル・イス・イーサ・ハガラース」
「ウル・カーノ・イーサ・ティール・ギョーフ」
キュルケとタバサがそれぞれ狙いを付け、ジャベリンとファイ...
パパパンパパンパパン
更に遅れて、銃声を背にヒポグリフ隊とツェルプストー伯が、...
更に遅れて、爆発が相次いだ
ドドドドーン!
「臼砲破壊、完了……何!?」
そこに驚愕の事態がツェルプストー伯に起きた
先程通過した先から装甲擲弾兵の一隊が飛び出し、二人がかり...
空中に投げ出された擲弾兵
全員墜落死かと思われたが、全員渡されたレビテーションシュ...
パリンパリパリン
硝子玉が割れる音が聞こえて来て、ゆっくり落下していく擲弾...
ババババン!
都合40発の一斉射撃を受け、三人程墜落していく
更に擲弾兵は腰から擲弾を取り出し、黄燐を染み込ませた火縄...
装甲擲弾兵の集団に擲弾が炸裂する
ババババン
しかし、今度は大したダメージが与えられなかった
防御魔法を重ね掛けしてたのである
空中で緩やかな落下をする擲弾兵は、はっきり言って的だ
銃眼と装甲擲弾兵達が銃を構えて一斉射撃が始まり、あっとい...
そして生き残った竜挺部隊の本格的な降下が始まった
「急げ急げ急げ、走れ走れ走れ。銃眼を全部潰すぞ」
斜面を滑り降りながら擲弾兵達が上から降りて、銃眼に取り付...
ボン、ボン
「装甲擲弾兵二段射撃。アイン、ファイエル!」
ババババン
銃眼を攻撃し始めた擲弾兵に向かって銃が放たれ、過負荷にな...
「ツヴァイ、ファイエル!」
ババババン
また一掃され
「アイン、ファイエル!」
ババババン
連続射撃で各個撃破される擲弾兵
そこに支援攻撃が来た
制空権を完全に握ったタバサとキュルケ、それにツェルプスト...
「さぁてと、あんた達、死ぬわよ?」
キュルケとタバサがコンボランスを用意する為に滞空し、そこ...
「喰らいなさい!ファイエル!」
生き残った銃眼にコンボランスが突き刺さり、盛大に爆発した
ドォン!!
更に一度上空に羽ばたいたヒポグリフからまた滑空したツェル...
「ウル・カーノ・ソウイル・ベルカナ・ハガラース。我が白炎...
カッ
装甲擲弾兵の部隊に白く輝く閃光を伴った炎が出撃したが、障...
「ちっ、流石は装甲擲弾兵。ゲルマニア最強部隊な訳はある」
そして撃ち終わりを指揮官に狙われた
「目標、あのヒポグリフ」ビスッ
終わり迄言う前に、兜事貫通し、指揮官が倒れる
「な、我々の魔法の出し終わりを狙った?」
また一騎、桃髪の騎士が、後方に黒髪の騎士を同乗させて現れ...
才人が構えた銃口は、今しがたの狙撃で黒煙を吐いている
才人はガンダールヴで素早く朔杖を持って装填作業を通常の半...
パァン!!
ビスッ
また一人、あっさり倒され、目標が才人達に向いた
「気分はシモヘイへ〜」
「何言ってんだ?相棒?」
そのまま装甲擲弾兵の上空にルイズは降下し、才人がバッと飛...
降りてる最中に01式を格納しデルフを抜いて手近な敵を蹴り飛...
「行くぜ!ゼロの使い魔の本領は、こっからが本番だ!おおぉ...
雄叫びを上げて才人がデルフを叩き付け、数人が鎧がひしゃげ...
いきなりの白兵に慌てた装甲擲弾兵だが、ブレイドを構えて同...
「単騎で我々を潰せるか!殺れぇぇぇ!」
更に横薙ぎにデルフを振って数人を打ち倒し、間合いが出来た...
そして抜刀した瞬間にまた一人、兵が倒れる
上空では才人が突撃をしてる最中、ルイズが巧みに弧を描きな...
「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンヤクサ」
才人の身体に力が乗る
敵の動きが最早駒送りに見える
二本の太刀筋が別々に動き、片手で金属の塊を両断出来る凶悪...
「オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド」
才人の突撃にまた数人倒され、装甲擲弾兵達が圧倒的な剣技に...
「ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ」
気付いた兵から警告が上がる
「不味い、防御詠唱!」
次々とシールドが張られ、ルイズが杖を振り下ろした
生き残っていた兵の中央に光が発生し、次いで衝撃が空気を押...
ドォォォォォン!
装甲擲弾兵の50人以上が一発で防御事吹き飛び、才人は衝撃で...
「おわっ!?飛び過ぎ!?」
「今回は、中々派手な威力だねぇ」
墜落死寸前で才人もレビテーションシュートを発動させて着地...
「此処が使い所!イル・ウォータル・デル・パース・ウィアド」
一瞬で加速した才人が生き残りの中を通過し、周りに霧が残さ...
遅れて糸が切れた様に血飛沫を上げて倒れていく装甲擲弾兵
才人がぶんと村雨を抜いて収め、更にデルフも収めた
チン
そしてその場に尻餅を付き、両手で身体を支える
「あぁ、きっついわぁ」
「……ぐっ……何…者」
どうやら一撃で殺せなかった様だ
「あ、悪い。痛いだろ?トドメ要るか?」
兵が頷きながらまた問い掛けた
「討った御身の名を…」
才人は投げナイフを取り出しつつ接近し、兵に囁いた
「イーヴァルディ。君を殺したのはイーヴァルディだ。ヴァル...
兵は微笑み、才人のトドメを受け、そのまま絶命した
* * *
ツェルプストー伯は生き残りの擲弾兵と共に陣地内に突入し、...
捕らえた兵から場所を聞き出し、案内させたのである
バァン
「抵抗は無意味だ、降伏しろ!」
擲弾兵が一気に突入して、司令に銃を放射状に展開して突き付...
「…派手に敗けたな。何故だ?ツェルプストー。地の利はこちら...
通常、攻撃は守備の4倍は必要とされている
300を攻め落とすには、1200が必要なのだ
「何、答えは簡単だ。一騎当千の助っ人が味方したからだ。で...
リヒテンシュタインが苦々しく頷いた
「最初に制空権を奪われたのが痛かった。一体何を味方にした...
「イーヴァルディを味方にした。どうだ?納得だろう?」
虚を付かれたリヒテンシュタインはきょとんとし、そして笑い...
「クックックッ。イーヴァルディか……あのお伽噺のね………アッハ...
そのリヒテンシュタインの声を受け、ツェルプストー伯が号令...
「戦闘中止!ツェルプストーの勝利だ!敵味方総員戦闘を中止...
「あぁ、全員持っていけ。ツェルプストー。お前をヒンデンブ...
* * *
才人が大の字になって血塗れで伸びており、ルイズはう〜と唸...
「嬢ちゃんよ、俺っちが見張ると言ったろ?」
「自分の目で見ないと安心出来ないのよ」
「ま、最後の一撃にビビって、誰も近寄らないって」
更にシルフィードが降りて来た
「きゅい!」
キュルケとタバサが飛び降り、一目散に駆けて来る
「ダーリン負傷したの?」
「いんやぁ?力を使いきって伸びてるだけだぜ?」
キュルケ達もホッとして、シルフィードに才人を積み込んだ
「ツェルプストーは行かなくて良いの?」
「お父様が上手くやるわよ、それよりあんたもさっさと下がり...
言われてルイズはぽんと手を叩き、ヒポグリフに跳び乗った
「さっさと参上、すたこら退場。全く、相棒達は忙しいねぇ」
デルフがそう締め、
ツェルプストー伯軍
火竜8
ヒポグリフ10
擲弾兵117
の損害
ヒンデンブルグ伯軍
火竜20
臼砲12
装甲擲弾兵88
銃兵209
の損害を出しつつ、鉄鉱山攻略戦はツェルプストー伯の勝利に...
* * *
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