ゼロの使い魔保管庫
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開始行:
才人達がツェルプストー伯爵家に向かっていた頃、トリスタニ...
その中で唯一素顔を見せる、モノクルを掛けた白髪の混じる威...
何時もは色々な歓談が行われるのだが一人でぶち壊しており、...
元々、こういう場所は嫌いなのだ
「珍しいですなぁ、ヴァリエール公。今回は仮面着用の集まり...
プックスクスクス
何とか周りがそういう風に持って行こうとして、ヴァリエール...
軍人としての経験と最前線領地での統治、更に国家経済に指を...
その視線一つで、凡百の貴族は圧力に耐えられなくなる
別にヴァリエール公は彼らを威圧する積もりは全く無く、彼の...
「失礼。急な参加でドレスコードを失念していた様だ」
「それはそれは。忙しい最中でわざわざ参加して下さったので...
パチンと指を鳴らした主宰が執事を呼んで命じると、執事が下...
ヴァリエール公は素直に受け取り、仮面を嵌めた
わざわざ、モノクル側は露出している半仮面である
はっきり言って、非常に似合う
「実に素晴らしい。アルビオンの伝説の怪盗紳士も、こうであ...
事実、感嘆の溜め息が女性陣から漏れている
「まさか、私向けに?」
「勿論。ヴァリエール公の参加を求めて止まない我々サロンの...
ヴァリエール公は素直に一礼する
「この様な配慮、痛みいる」
「皆さん、今日はヴァリエール公が参加して下さった記念すべ...
そう言って、シャンパンが配られ、華やかなパーティーが始ま...
そしてヴァリエール公の周りには、人が集まって来た
普段参加が絶望レベルのヴァリエール公の参加である
パイプを持ちたい者、傘下になりたい者、資金援助を求めたい...
そして、財産目当てに自身の身体をそれとなく誇示する女達
全てがヴァリエール公にとって唾棄したくなる連中だが、そん...
「所で最近、女王陛下の気紛れをご存知ですかな?」
「ほほう、陛下の気紛れですか?良く平民を側使いしておりま...
「左様で有りましょうな。私の所に陛下直属だという平民が来...
そう言って、ヴァリエール公は全く嘆かずに言い切る
基本的に演技が苦手なので、敢えて平坦に話すのがヴァリエー...
そして周りも、ヴァリエール公だから許されるこの行為を黙認...
普通は、もっと大袈裟に動くのだ
「陛下直属の平民ですか?世も末ですなぁ」周りの者達がそれ...
サロンとは、それ自体が演劇の場と呼ぶべき代物である
酒が入ればまた一変するが、まだそこまで取り乱して居る者は...
「全面戦争で矢面に立つのは、平民ではなく我々貴族です。陛...
「ヴァリエール公、良くぞ言ってくれました!全くですなぁ」
「その通りですな。我ら貴族こそが、トリステインの伝統と力...
なら、何故コイツラは此所に居るのだ?
ヴァリエール公は老境に差し掛かった自分自身はともかくとし...
何故なら、グラモンでは後継の伯爵が自身を以てグラモン伯爵...
自分自身も若ければ出ていたのは間違いない
例え、その出兵自体に意味が無いとしてもだ
今回の出兵そのものに、条約破りの矯正以外価値は無いとヴァ...
ならば、経済封鎖で締め上げれば何れ根を上げるのだ
上陸は危険が有りすぎる
『だが、俺が老いたのかも知れん。嫌、俺は元々こうだな。結...
そう考えながらも表面的には何も変わらず、しかも仮面が表情...
「ヴァリエール公、陛下直属の平民とはどの様な者で?」
「異国人ですな。最早、我らトリステイン人すら信用出来ぬと...
「……それはそれは」言葉が続かない貴族達
失敗したか?と思いながらも更に言葉を紡ぐ
「そやつの仕事に協力しろと大使迄仕向けて要求したのですが...
「流石ヴァリエール公!良くぞきっぱりと。貴族の中の貴族で...
周りに集まってる連中は太鼓持ちの才能も無いのか?と、ヴァ...
「で、ここからが重要で。奴ら、契約を求めて来たのですよ。...
「ほぅ、流石は直属と言った所ですなぁ」
「何、奴らの仕事で出来た代物に対する権利なぞ、我々封建貴...
「何と!?」
「その方策とは?」
一気に周りが食い付いた
「良いですか……」
ヴァリエール公が話し終えた後、一気に賞賛の嵐が相次いだ
「流石ヴァリエール公!貴族の中の貴族」
「素晴らしい!良くぞ、我らに教えて下さった」
「我らの懐は全く痛まず、尚且つその怪しい詐欺師のみダメー...
そして、その方策をどうやって一気に伝えるかが話題の焦点に...
「珍しい事をするな、ヴァリエール」
声を掛けて来たのは見知った体格の大男である、老境に差し掛...
「グランドプレか……お前は出るのか?」
「あぁ。俺はお前程頭は良くないからな。身体を使うしか忠誠...
「そうか……」
「お前の長女。息子の嫁にしても構わんぞ?」
その申し出に、ヴァリエールは首を振る
「いや、もうエレオノールは自分の人生を決めてしまった。あ...
「先程の異国人か?」
「……何故判る?」
ギラリとした視線に、グランドプレが笑い出した
「くっはっはっはっ!ヴァリエール。お前とは何年の付き合い...
「…ふん」
「相当その男が気に入ったみたいだな。悪い癖だ。素材を見付...
「…さぁな」
「少なくとも、お前の出す案件に根を上げたのが元婚約者達で...
「ふん」
ヴァリエールがそう言ってそっぽを向く
「さっきの話も、そう言ったものでは無いのか?」
「…さぁな。ヴァリエールは困らん」
その言葉に、グランドプレが頷く
「ヴァリエールは……か。連中が気の毒だ。お前の思う様に踊ら...
そう言って、ワインを煽ったグランドプレ、さりげなく杖を振...
サイレンスをかけると、逆に注目を浴びるのだ
だから、ディテクトマジックを軽く流しただけである
「好きで踊りたいのだから、踊らせてやれ」
「くっはっはっはっ。全く、本当にサロンの連中が嫌いなのは...
頭は良くないが気の置けない数少ない友人の為に、ヴァリエー...
「グラモンは異国人に付いておる。モンモランシもだ。今の所...
「ほぅ……全く、お前は罠をばら蒔くのが本当に好きだな。確か...
笑いの発作に任せて、グランドプレがバルコニーに後ろ手に肘...
ヴァリエールは憮然だ
「で、グランドプレは異国人と貴族筋、どちらが良いと思う?」
「静観しろ。誰かに誘われても適当に流しておけ。あれは……あ...
「つまり、旗色が判ってからでも遅くないと?」
「あぁ。先行者利益が欲しいなら付けば良いが、奴の気性は基...
そう言って、ヴァリエール公は口を閉じた
「からくりね、どういう男だ?」
「負けかけた」
「何!?お前がか?」
「あぁ。ゼッザールに勝ったと」
「そうか……娘をやるには安心だなぁ、ヴァリエール」
そう言って、ニヤニヤしてるとヴァリエール公が憮然とする
「ふん」
「まぁ、俺はお前の言う通り、静観するわ。見事に俺達三馬鹿...
「……あぁ。歳月は残酷だ」
「いつか、また轡を並べたいモノだ」
「だな……」
在りし日を思いながら、二人はバルコニーから離れた
* * *
才人達はツェルプストー伯の居城に於いても分室を提供され、...
ツェルプストー伯から見た場合、城11個分の経済効果としては...
メイドも才人専用に粒揃いを付けようとしたが、シエスタに阻...
才人自身は大して必要としない為に、確かに余剰人員になる
最も、才人が兵達の訓練に参加すると、メイド達がわらわら寄...
製鉄所にて製鉄法を伝授した才人達は、さらにフレームの図面...
「最初の出荷は二週間後だな」
「ラ=ロシェール到着は?」
「更に一日。物がでかいが、何。ゴーレムとメイジ達で期日迄...
「治具は?」
「治具類の製作はツェルプストーで出来る。心配ならチェック...
「了解。各々やり方あるだろうし、口を出すの止めるわ」
「解っておるな」
ニヤリとツェルプストー伯が笑うと、才人もニヤリとする
「嫌われんのは慣れてるんでね」
すると、ツェルプストー伯が盛大に笑い始めた
「うわっはっはっはっはっ!だろうなぁ。クックックックッ。...
発作そのままに、ひたすら笑っている
「解りますか」
「何年貴族をやってると思っておる?人を見るには、二三言葉...
「…年の功ってのは、本当におっかねぇ」
そう言って才人は首を竦めた
* * *
ガチャ
才人がツェルプストーでの分室に入ると、エレオノールが乱れ...
「だぁぁぁぁぁ!!平民、とんでもない事になっちゃったわよ...
「何だ?どうした?」
つかつか寄ると、開封した手紙の山の前で頭を抱えているエレ...
「だから何?」
エレオノールは一度深呼吸してから、才人に畳み掛けた
「封建貴族の8割が敵に回っちゃったわよ!何なのよ?この状...
「…味方は?」
「グラモンとモンモランシだけ!残りは様子見!」
暫く黙ってた才人は、エレオノールの予想に反して笑い出した
「クックックックッ、思い切り四面楚歌かよ。やべ、面白ぇ」
そして、とうとう思い切り笑い始めた
「あっはっはっは!最高だ!これ位嫌われた方が遣り甲斐が有...
才人の笑いの発作が止まらない
そんな才人に、エレオノールは呆れた様に問い掛けた
「平民あんた解ってんの?トリステインでは翼をもがれたも同...
「内容は?」
「全部一緒。人足はおろか取引すらお断りって書いてるわ。ど...
「鉄鉱石は確保した。石炭は有る。炭は問題ない。木材は有る...
「精霊石よ!この馬鹿たれ!」
「……あ」
才人は地球に無い鉱物である素材を、すっかり忘れていた
無理も無いと言うべきか、馬鹿だなこいつと言うべきかは、判...
「なら市場仕入れか?」
「ゼロ級は国家予算だから良いのよ。問題は、研究用が確保出...
「そんなもん、ちょこっと使うだけだから横流し」スパーン!
盛大に才人が叩かれる
「あんたの事だから、絶対に研究だけじゃ済まなくなるに決ま...
叩かれた頬を抑えてた才人に寄り、両手の拳を握ってぽかぽか...
「お願いよ……お父様の事……見返してよ……」
本気で敵に回った父の強大さに怯むエレオノール
その腕を掴んだ才人がそのまま引き寄せ、エレオノールに唇を...
暫く二人共堪能してから離れ、エレオノールが呟く
「やっぱりあんた嫌い……こんな事で、私が落ち着くと思ってる」
そして、顔を才人の胸に埋めるエレオノール
「そして、その通りな自分が一番嫌い……」
* * *
コツンコツン
窓が叩かれ、才人達が外を見ると梟便が滞空していた
更に手紙を複数抱えており、エレオノールは邪魔された気分を...
バサバサバサ
才人が腕を掲げるとそこに止まり、才人が手紙を抜くと、ほぅ...
才人が裏面を見ると、百合紋の封とゼロの意匠をあしらったエ...
つまり、王政府と製作指揮担当のコルベールからだ
更にグラモンとモンモランシ、石臼を花押にしてるのはアニエ...
才人に言われて楷謔に目覚め、気に入ったと見える
「こいつぁ、トリステイン国内で陰謀が始まったって事か?」
才人は一つずつ開けて読み始めた
政府からは報酬の振り込み通知と、マザリーニとデムリの宰相...
そして有効に使って欲しいと記されていた
コルベールからは作業体制の拡大と基礎棟でエンジン工作機と...
グラモンからは鉄鉱石の輸入確保の礼と、資源が必要で他領を...
モンモランシからは説得工作の開始と自重を求める内容
そう、ヴァリエール公が動いたせいで、一気にトリステイン国...
そして、アニエスの内容が一番危険な内容だった
暗殺者が雇われた模様
身辺に気を付けろ
警護に銃士隊を潜入させた
陛下には報せてない、常に用心を怠るな
その全てをエレオノールに渡すと、エレオノールが一気に顔を...
ちなみにアニエスの便箋の裏面には
私に一日中身辺警護をさせろ、馬鹿才人と書かれていたが、才...
「……お父様が動くって言うのは、こういう事よ?」
「…暗殺者は想定外だな、おい」
「…水使いが要るわ。毒を検知出来ないと」
そう、一番簡単なのは毒殺だ
わざわざ正面に立つ必要など無い
才人とゼロ機関は、平民で有りながら、若く美しい女王直属の...
そして、平民なぞ貴族からすれば、唯の駒である
目障りなら排除するのが至極当然な思考だ
ハルケギニアでは、人の命が非常に軽いのだ
駒が意思を持つなど、許されるものでは無い
だが、意思を持つ駒たる平賀才人はへこたれない
寧ろ、一段と笑みを深くしたのである
「とりあえずは、エレオノールさんでも何とかなるか?」
「事前検知は水使いじゃないと無理だから、予防で浄化するし...
「充分だ。第二ラウンド開始だ。精度の上がったエンジン式工...
才人が手を差し出した
そしてエレオノールは、ついに呼び捨てにされた事に紅くなり...
此処からは、見知った者以外、国内ですら敵
更なる泥沼が待っている
* * *
才人周辺がキナ臭くなった為に、タバサは可能な限り張り付き...
皆、ゼロ機関の仕事に於いては、ルイズを突き放したのである
二人の寝室で疎外感に堪らなくなったルイズが、とうとうエレ...
「姉さま、何で皆ピリピリしてるんです?」
「アンタの使い魔の命が狙われてるから」
その瞬間、絶句するルイズ
「ちなみにアンタはその敵方。つまり私達ゼロ機関の敵」
「あたし……何もしてません」
「お父様が動いた。意味が解る?」
ルイズは首を振る
「ヴァリエール公が動くとトリステインが良くも悪くも動く。...
「お父さまが、そんな命令出す筈有りません!」
「知らないわよ。周辺の連中が勝手に動いてるだけだろうと、...
ルイズは、呆然とするしか出来なかった
ヴァリエールの名前の本当の巨大さを、やっと認識したのである
「あ……あたし」
「泣くなっ!立てっ!抗えっ!泣きわめくだけなら、修道院に...
厳しい、本当に厳しい叱咤
だが、肉親たるエレオノールの情は確かに籠っている
泣きそうに涙を溜めたルイズは涙を拭い、キッとエレオノール...
「抗います!誰よりも抗って抗って、あたしの未来を掴んでみ...
すると、やっとエレオノールが柔らかい笑みを浮かべ、優しく...
「良くぞ言った。今は、出来る事をやりなさい。ねぇ、平民を...
こくりと頷くルイズ
「貴族にしよ?ヴァリエールにしよ?ねぇ、私、夢を見てるっ...
「…解らないです」
「そうよね。私にもふざけた話だと思うもの。でもね、お父様...
「そうなの……ですか?」
「えぇ、次の功績は、敵対した封建貴族には自ら関与出来なく...
「…」
「平民は……いえ、才人はそんな事は絶対に嫌がる。だって、ア...
ルイズはこくんと頷く
「だから、アイツは嫌々だろうと貴族になる。だからアンタは...
やっと、納得した様にルイズは頷いた
「姉さま。二人だけで、どっか行っちゃうのは駄目ですよ?」
「駆け落ちなんかしないわよ。安心しなさい。私は全部ひっく...
そう言って、エレオノールは笑みを浮かべ
「だから、敵に回った連中の地団駄を見る迄止めないわ。こん...
「姉さま、ずるい」
ルイズがぶっすぅとむくれる
エレオノールは本当に楽しそうなのだ
「大丈夫、アンタの立場も多分面白い。だからお互い抗うぞ。...
「はい……姉さま」
「何?」
「一緒に寝て良い?サイトが居ないの……辛い」
「勿論よ、私の小さいルイズ」
幼少の本当に幼い時みたいに、ルイズはエレオノールと一緒に...
夢の中味は泡沫の彼方であり、ルイズにも定かでは無かった
だが、きっと良い夢だった筈だ
だって目が覚めた時には、気分が爽快だったのだから
* * *
終了行:
才人達がツェルプストー伯爵家に向かっていた頃、トリスタニ...
その中で唯一素顔を見せる、モノクルを掛けた白髪の混じる威...
何時もは色々な歓談が行われるのだが一人でぶち壊しており、...
元々、こういう場所は嫌いなのだ
「珍しいですなぁ、ヴァリエール公。今回は仮面着用の集まり...
プックスクスクス
何とか周りがそういう風に持って行こうとして、ヴァリエール...
軍人としての経験と最前線領地での統治、更に国家経済に指を...
その視線一つで、凡百の貴族は圧力に耐えられなくなる
別にヴァリエール公は彼らを威圧する積もりは全く無く、彼の...
「失礼。急な参加でドレスコードを失念していた様だ」
「それはそれは。忙しい最中でわざわざ参加して下さったので...
パチンと指を鳴らした主宰が執事を呼んで命じると、執事が下...
ヴァリエール公は素直に受け取り、仮面を嵌めた
わざわざ、モノクル側は露出している半仮面である
はっきり言って、非常に似合う
「実に素晴らしい。アルビオンの伝説の怪盗紳士も、こうであ...
事実、感嘆の溜め息が女性陣から漏れている
「まさか、私向けに?」
「勿論。ヴァリエール公の参加を求めて止まない我々サロンの...
ヴァリエール公は素直に一礼する
「この様な配慮、痛みいる」
「皆さん、今日はヴァリエール公が参加して下さった記念すべ...
そう言って、シャンパンが配られ、華やかなパーティーが始ま...
そしてヴァリエール公の周りには、人が集まって来た
普段参加が絶望レベルのヴァリエール公の参加である
パイプを持ちたい者、傘下になりたい者、資金援助を求めたい...
そして、財産目当てに自身の身体をそれとなく誇示する女達
全てがヴァリエール公にとって唾棄したくなる連中だが、そん...
「所で最近、女王陛下の気紛れをご存知ですかな?」
「ほほう、陛下の気紛れですか?良く平民を側使いしておりま...
「左様で有りましょうな。私の所に陛下直属だという平民が来...
そう言って、ヴァリエール公は全く嘆かずに言い切る
基本的に演技が苦手なので、敢えて平坦に話すのがヴァリエー...
そして周りも、ヴァリエール公だから許されるこの行為を黙認...
普通は、もっと大袈裟に動くのだ
「陛下直属の平民ですか?世も末ですなぁ」周りの者達がそれ...
サロンとは、それ自体が演劇の場と呼ぶべき代物である
酒が入ればまた一変するが、まだそこまで取り乱して居る者は...
「全面戦争で矢面に立つのは、平民ではなく我々貴族です。陛...
「ヴァリエール公、良くぞ言ってくれました!全くですなぁ」
「その通りですな。我ら貴族こそが、トリステインの伝統と力...
なら、何故コイツラは此所に居るのだ?
ヴァリエール公は老境に差し掛かった自分自身はともかくとし...
何故なら、グラモンでは後継の伯爵が自身を以てグラモン伯爵...
自分自身も若ければ出ていたのは間違いない
例え、その出兵自体に意味が無いとしてもだ
今回の出兵そのものに、条約破りの矯正以外価値は無いとヴァ...
ならば、経済封鎖で締め上げれば何れ根を上げるのだ
上陸は危険が有りすぎる
『だが、俺が老いたのかも知れん。嫌、俺は元々こうだな。結...
そう考えながらも表面的には何も変わらず、しかも仮面が表情...
「ヴァリエール公、陛下直属の平民とはどの様な者で?」
「異国人ですな。最早、我らトリステイン人すら信用出来ぬと...
「……それはそれは」言葉が続かない貴族達
失敗したか?と思いながらも更に言葉を紡ぐ
「そやつの仕事に協力しろと大使迄仕向けて要求したのですが...
「流石ヴァリエール公!良くぞきっぱりと。貴族の中の貴族で...
周りに集まってる連中は太鼓持ちの才能も無いのか?と、ヴァ...
「で、ここからが重要で。奴ら、契約を求めて来たのですよ。...
「ほぅ、流石は直属と言った所ですなぁ」
「何、奴らの仕事で出来た代物に対する権利なぞ、我々封建貴...
「何と!?」
「その方策とは?」
一気に周りが食い付いた
「良いですか……」
ヴァリエール公が話し終えた後、一気に賞賛の嵐が相次いだ
「流石ヴァリエール公!貴族の中の貴族」
「素晴らしい!良くぞ、我らに教えて下さった」
「我らの懐は全く痛まず、尚且つその怪しい詐欺師のみダメー...
そして、その方策をどうやって一気に伝えるかが話題の焦点に...
「珍しい事をするな、ヴァリエール」
声を掛けて来たのは見知った体格の大男である、老境に差し掛...
「グランドプレか……お前は出るのか?」
「あぁ。俺はお前程頭は良くないからな。身体を使うしか忠誠...
「そうか……」
「お前の長女。息子の嫁にしても構わんぞ?」
その申し出に、ヴァリエールは首を振る
「いや、もうエレオノールは自分の人生を決めてしまった。あ...
「先程の異国人か?」
「……何故判る?」
ギラリとした視線に、グランドプレが笑い出した
「くっはっはっはっ!ヴァリエール。お前とは何年の付き合い...
「…ふん」
「相当その男が気に入ったみたいだな。悪い癖だ。素材を見付...
「…さぁな」
「少なくとも、お前の出す案件に根を上げたのが元婚約者達で...
「ふん」
ヴァリエールがそう言ってそっぽを向く
「さっきの話も、そう言ったものでは無いのか?」
「…さぁな。ヴァリエールは困らん」
その言葉に、グランドプレが頷く
「ヴァリエールは……か。連中が気の毒だ。お前の思う様に踊ら...
そう言って、ワインを煽ったグランドプレ、さりげなく杖を振...
サイレンスをかけると、逆に注目を浴びるのだ
だから、ディテクトマジックを軽く流しただけである
「好きで踊りたいのだから、踊らせてやれ」
「くっはっはっはっ。全く、本当にサロンの連中が嫌いなのは...
頭は良くないが気の置けない数少ない友人の為に、ヴァリエー...
「グラモンは異国人に付いておる。モンモランシもだ。今の所...
「ほぅ……全く、お前は罠をばら蒔くのが本当に好きだな。確か...
笑いの発作に任せて、グランドプレがバルコニーに後ろ手に肘...
ヴァリエールは憮然だ
「で、グランドプレは異国人と貴族筋、どちらが良いと思う?」
「静観しろ。誰かに誘われても適当に流しておけ。あれは……あ...
「つまり、旗色が判ってからでも遅くないと?」
「あぁ。先行者利益が欲しいなら付けば良いが、奴の気性は基...
そう言って、ヴァリエール公は口を閉じた
「からくりね、どういう男だ?」
「負けかけた」
「何!?お前がか?」
「あぁ。ゼッザールに勝ったと」
「そうか……娘をやるには安心だなぁ、ヴァリエール」
そう言って、ニヤニヤしてるとヴァリエール公が憮然とする
「ふん」
「まぁ、俺はお前の言う通り、静観するわ。見事に俺達三馬鹿...
「……あぁ。歳月は残酷だ」
「いつか、また轡を並べたいモノだ」
「だな……」
在りし日を思いながら、二人はバルコニーから離れた
* * *
才人達はツェルプストー伯の居城に於いても分室を提供され、...
ツェルプストー伯から見た場合、城11個分の経済効果としては...
メイドも才人専用に粒揃いを付けようとしたが、シエスタに阻...
才人自身は大して必要としない為に、確かに余剰人員になる
最も、才人が兵達の訓練に参加すると、メイド達がわらわら寄...
製鉄所にて製鉄法を伝授した才人達は、さらにフレームの図面...
「最初の出荷は二週間後だな」
「ラ=ロシェール到着は?」
「更に一日。物がでかいが、何。ゴーレムとメイジ達で期日迄...
「治具は?」
「治具類の製作はツェルプストーで出来る。心配ならチェック...
「了解。各々やり方あるだろうし、口を出すの止めるわ」
「解っておるな」
ニヤリとツェルプストー伯が笑うと、才人もニヤリとする
「嫌われんのは慣れてるんでね」
すると、ツェルプストー伯が盛大に笑い始めた
「うわっはっはっはっはっ!だろうなぁ。クックックックッ。...
発作そのままに、ひたすら笑っている
「解りますか」
「何年貴族をやってると思っておる?人を見るには、二三言葉...
「…年の功ってのは、本当におっかねぇ」
そう言って才人は首を竦めた
* * *
ガチャ
才人がツェルプストーでの分室に入ると、エレオノールが乱れ...
「だぁぁぁぁぁ!!平民、とんでもない事になっちゃったわよ...
「何だ?どうした?」
つかつか寄ると、開封した手紙の山の前で頭を抱えているエレ...
「だから何?」
エレオノールは一度深呼吸してから、才人に畳み掛けた
「封建貴族の8割が敵に回っちゃったわよ!何なのよ?この状...
「…味方は?」
「グラモンとモンモランシだけ!残りは様子見!」
暫く黙ってた才人は、エレオノールの予想に反して笑い出した
「クックックックッ、思い切り四面楚歌かよ。やべ、面白ぇ」
そして、とうとう思い切り笑い始めた
「あっはっはっは!最高だ!これ位嫌われた方が遣り甲斐が有...
才人の笑いの発作が止まらない
そんな才人に、エレオノールは呆れた様に問い掛けた
「平民あんた解ってんの?トリステインでは翼をもがれたも同...
「内容は?」
「全部一緒。人足はおろか取引すらお断りって書いてるわ。ど...
「鉄鉱石は確保した。石炭は有る。炭は問題ない。木材は有る...
「精霊石よ!この馬鹿たれ!」
「……あ」
才人は地球に無い鉱物である素材を、すっかり忘れていた
無理も無いと言うべきか、馬鹿だなこいつと言うべきかは、判...
「なら市場仕入れか?」
「ゼロ級は国家予算だから良いのよ。問題は、研究用が確保出...
「そんなもん、ちょこっと使うだけだから横流し」スパーン!
盛大に才人が叩かれる
「あんたの事だから、絶対に研究だけじゃ済まなくなるに決ま...
叩かれた頬を抑えてた才人に寄り、両手の拳を握ってぽかぽか...
「お願いよ……お父様の事……見返してよ……」
本気で敵に回った父の強大さに怯むエレオノール
その腕を掴んだ才人がそのまま引き寄せ、エレオノールに唇を...
暫く二人共堪能してから離れ、エレオノールが呟く
「やっぱりあんた嫌い……こんな事で、私が落ち着くと思ってる」
そして、顔を才人の胸に埋めるエレオノール
「そして、その通りな自分が一番嫌い……」
* * *
コツンコツン
窓が叩かれ、才人達が外を見ると梟便が滞空していた
更に手紙を複数抱えており、エレオノールは邪魔された気分を...
バサバサバサ
才人が腕を掲げるとそこに止まり、才人が手紙を抜くと、ほぅ...
才人が裏面を見ると、百合紋の封とゼロの意匠をあしらったエ...
つまり、王政府と製作指揮担当のコルベールからだ
更にグラモンとモンモランシ、石臼を花押にしてるのはアニエ...
才人に言われて楷謔に目覚め、気に入ったと見える
「こいつぁ、トリステイン国内で陰謀が始まったって事か?」
才人は一つずつ開けて読み始めた
政府からは報酬の振り込み通知と、マザリーニとデムリの宰相...
そして有効に使って欲しいと記されていた
コルベールからは作業体制の拡大と基礎棟でエンジン工作機と...
グラモンからは鉄鉱石の輸入確保の礼と、資源が必要で他領を...
モンモランシからは説得工作の開始と自重を求める内容
そう、ヴァリエール公が動いたせいで、一気にトリステイン国...
そして、アニエスの内容が一番危険な内容だった
暗殺者が雇われた模様
身辺に気を付けろ
警護に銃士隊を潜入させた
陛下には報せてない、常に用心を怠るな
その全てをエレオノールに渡すと、エレオノールが一気に顔を...
ちなみにアニエスの便箋の裏面には
私に一日中身辺警護をさせろ、馬鹿才人と書かれていたが、才...
「……お父様が動くって言うのは、こういう事よ?」
「…暗殺者は想定外だな、おい」
「…水使いが要るわ。毒を検知出来ないと」
そう、一番簡単なのは毒殺だ
わざわざ正面に立つ必要など無い
才人とゼロ機関は、平民で有りながら、若く美しい女王直属の...
そして、平民なぞ貴族からすれば、唯の駒である
目障りなら排除するのが至極当然な思考だ
ハルケギニアでは、人の命が非常に軽いのだ
駒が意思を持つなど、許されるものでは無い
だが、意思を持つ駒たる平賀才人はへこたれない
寧ろ、一段と笑みを深くしたのである
「とりあえずは、エレオノールさんでも何とかなるか?」
「事前検知は水使いじゃないと無理だから、予防で浄化するし...
「充分だ。第二ラウンド開始だ。精度の上がったエンジン式工...
才人が手を差し出した
そしてエレオノールは、ついに呼び捨てにされた事に紅くなり...
此処からは、見知った者以外、国内ですら敵
更なる泥沼が待っている
* * *
才人周辺がキナ臭くなった為に、タバサは可能な限り張り付き...
皆、ゼロ機関の仕事に於いては、ルイズを突き放したのである
二人の寝室で疎外感に堪らなくなったルイズが、とうとうエレ...
「姉さま、何で皆ピリピリしてるんです?」
「アンタの使い魔の命が狙われてるから」
その瞬間、絶句するルイズ
「ちなみにアンタはその敵方。つまり私達ゼロ機関の敵」
「あたし……何もしてません」
「お父様が動いた。意味が解る?」
ルイズは首を振る
「ヴァリエール公が動くとトリステインが良くも悪くも動く。...
「お父さまが、そんな命令出す筈有りません!」
「知らないわよ。周辺の連中が勝手に動いてるだけだろうと、...
ルイズは、呆然とするしか出来なかった
ヴァリエールの名前の本当の巨大さを、やっと認識したのである
「あ……あたし」
「泣くなっ!立てっ!抗えっ!泣きわめくだけなら、修道院に...
厳しい、本当に厳しい叱咤
だが、肉親たるエレオノールの情は確かに籠っている
泣きそうに涙を溜めたルイズは涙を拭い、キッとエレオノール...
「抗います!誰よりも抗って抗って、あたしの未来を掴んでみ...
すると、やっとエレオノールが柔らかい笑みを浮かべ、優しく...
「良くぞ言った。今は、出来る事をやりなさい。ねぇ、平民を...
こくりと頷くルイズ
「貴族にしよ?ヴァリエールにしよ?ねぇ、私、夢を見てるっ...
「…解らないです」
「そうよね。私にもふざけた話だと思うもの。でもね、お父様...
「そうなの……ですか?」
「えぇ、次の功績は、敵対した封建貴族には自ら関与出来なく...
「…」
「平民は……いえ、才人はそんな事は絶対に嫌がる。だって、ア...
ルイズはこくんと頷く
「だから、アイツは嫌々だろうと貴族になる。だからアンタは...
やっと、納得した様にルイズは頷いた
「姉さま。二人だけで、どっか行っちゃうのは駄目ですよ?」
「駆け落ちなんかしないわよ。安心しなさい。私は全部ひっく...
そう言って、エレオノールは笑みを浮かべ
「だから、敵に回った連中の地団駄を見る迄止めないわ。こん...
「姉さま、ずるい」
ルイズがぶっすぅとむくれる
エレオノールは本当に楽しそうなのだ
「大丈夫、アンタの立場も多分面白い。だからお互い抗うぞ。...
「はい……姉さま」
「何?」
「一緒に寝て良い?サイトが居ないの……辛い」
「勿論よ、私の小さいルイズ」
幼少の本当に幼い時みたいに、ルイズはエレオノールと一緒に...
夢の中味は泡沫の彼方であり、ルイズにも定かでは無かった
だが、きっと良い夢だった筈だ
だって目が覚めた時には、気分が爽快だったのだから
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