ゼロの使い魔保管庫
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新年の降臨際が始まる迄、本月合わせて三ヶ月
虚無の曜日だが、ゼロ機関のメンバーは、全員ラ=ロシェール...
社会見学という名目で、ルイズ、キュルケ、タバサ、モンモラ...
引率はコルベールが行い、学生の保護を担当した
何せ、何から何まででかい
迷子になると、冗談抜きで事故や迷子になりかねないのが、大...
キュルケは実家で見てたので特に感慨は無いが、他の者達はそ...
全員工場入口でヘルメットを渡され、学生達が嫌な顔をしたが...
「人間がぺしゃんこになる品々運んでるからな。簡単に言うと...
と叱り付けた為に、全員素直に被った
才人は地図を渡されると、装備品を借り受け、さっさと作業用...
「では学生は作業させる訳にはいかないとの事ですから、ルー...
コルベールがそう言って、連れて行く
「うっわ、グラモンもでかかったけど、ラ=ロシェールも大き...
ルイズがそう言って、本気で驚いている
更に通行路では、ひっきりなしに大量の木材や砲、各種作業用...
確かにでかいので、皆が驚いている
「確かに、社会見学になるわ」
モンモランシーがそう言って、うんうん頷いている
そしてルイズ達がゼロ級ドックに数十分歩いて着いた所、調度...
ピピピー、ピピピー、ピピピー、ピーーー
笛の音が響き、信号手が旗を振りながらゴーレム操者に合図し...
「オーケー、ちょいスライ(下降)」
大声を上げたのは才人だった
その近くでは、エレオノールとシエスタがそれぞれバインダー...
「コルベール先生、サイト何やってるの?」
「ボイラーの設置だね。微調整する為に、ああやって位置を示...
才人が拳を握って突き出すと信号手が旗を交叉し、下降が止まる
「ポートムーヴ(左舷に移動)」
声を出しながら親指を立てて左舷に指してクイックイッと動か...
ピッピー、ピッピー、ピッピー
才人がまた握り拳を突き上げる
ピーーー
信号手が旗を交叉するとゴーレムが止まる
「何で才人、あんなこと出来るの?」
モンモランシーの問いにコルベールが答えた
「船関係も、仕事した事が有るのだそうだ。道具が多少違えど...
「へぇ」
感心して皆が見ている
「ボイラーフォア(先頭)ちょい巻け」
その合図に他の作業員が滑車をカラカラ回してボイラーの傾き...
「オーライオーライ、ストーップ!」
才人の声で滑車を止めた
「ゴーレムちょいゴーヘー(上昇)」
その声で、信号手が旗を上に振りながら
ピピッ、ピピッ、ピピッ
才人がまた拳を突き出し
ピーーー
信号手が旗を交叉させて止まる
「フォアムーヴ(前方移動)」
そうやって合図と共に進行していき
「スライスライスライスライ。オッケー!フィニッシュ!外せ...
作業員達が取り付いて一斉にロープを外し始め、ボイラーが設...
「次に主機持って来い」
信号手が頷いて、ゴーレム操者に伝えると、ズシンズシンと歩...
才人はその間に、作業員と共に、ボイラーの設置作業に取り掛...
「親方、位置は合ってるか?」
「ちょいずれてる。先ず左舷側締めて移動させてくれ」
「了解だ」
才人の指示で皆がてきぱきと動く姿に皆がぽかんと見ている
「随分スムーズね。普通喧嘩しない?」
キュルケがそう聞き
「勿論したさ。才人君に向かって楯突いた連中とは全員拳でや...
「へぇ」
「姉さまとシエスタは、何してるんですか?」
「あれかい?次から作業員に全部任せるから、マニュアル作り...
皆してふんふん頷いている
「魔法で全て解決なんか絶対に出来ないと、こういう所に来る...
コルベールがそう締めて、才人の仕事を見学したルイズ達はず...
* * *
「なんて言うか、本当にダーリンは現場の人よね」
「何よ?それ?」
「第一線で働く職人って意味よ」
「ふぅん」
皆がたむろしてるのは、造船所併設の食堂兼休憩所だ
「サイトが職人だと何か有るの?」
「貴族とは住む世界が違うって事。道理で金にあんま興味ない...
そう言って、キュルケは紅茶を飲んでいる
「だから何なのよ?」
「私達じゃ、全員おんぶに抱っこよ。現場を知る統治者になる...
「……」
心当たりが有り過ぎるルイズが黙ってしまう
「私達ではここじゃ本当に邪魔になる。先生に言って帰りまし...
「そうね、私達じゃ邪魔しないのが、本当の仕事だわ。学生は...
キュルケの言にモンモランシーも頷いた
「ルイズ、手伝ったらあんたじゃ事故死しかねないから、絶対...
「わわわ判ってるわよ」
「どうだか」
モンモランシーがそう言って、タバサにキュルケが囁いて、ル...
「ちょっと何よ?離して」
「駄目。貴女暴走したら、ここじゃ死ぬ」
タバサにそう言われ、ルイズがずりずりと引き摺られて、皆が...
* * *
「親方、チェーンの張りチェックしてくれ」
「終わったか?」
「本日予定分は終了だ」
作業員達がそう言って報告し、才人が懐から金貨を何枚か出し...
「お疲れ。コイツで飲んでくれ、その代わり明日からも頼むぜ」
ニヤリとした作業員が答えた
「おぅ。話が解るじゃねぇか。お前ら、親方からゴチだ。有り...
「「「ゴチです」」」
そう言って作業員達が引き上げたのと対照に、才人は右翼から...
傍らには、エレオノールがずっとメモを取っている
シエスタとコルベールは、食べ物を仕入れに外している
「才人、一人で調整する積もり?」
「遊び調整が駄目過ぎる。俺が全部やらにゃならん」
「今日は徹夜?」
「まぁな。右舷終わったら宿に戻ってくれ。マニュアル作成は...
ギッギッとボルトを締めて、調整を主機側から行っている
「嫌よ」
「命令聞けよ」
「一人寝は嫌なのよ」
才人は咄嗟に返せない
「……仕事するなら文句は言わねぇ。勝手にしろ」
「勝手にするわ」
* * *
翌日、休日出勤した職人達がやって来ると二人がずっと作業し...
「おい、まさかあんた達、徹夜か?」
「あぁ気にしなくていいよ。これやんないと操舵と機関の配管...
才人は事も無く言い、コルベールがやって来るとこう言った
「それじゃ、後頼みます」
「了解だ、才人君」
そう言って、コルベール、シエスタ組に後は任せて宿に戻った
宿に戻って、才人が部屋に入ると、当然の如くエレオノールが...
そして、そのままふらりと倒れるのを才人が支えた
「……だから言ったんだ。研究室で徹夜とは訳が違うってのに」
「……るさい、眠い、寝る」
「風呂入るぞ。汚れまくってんだからな。顔に吹き出物出来る...
「……入れて」
「仕事増やすな。我が侭姫」
才人はそう言って、おぶってエレオノールと一緒に風呂場に向...
* * *
その後配管作業も順調に行われ、それと同時に石炭と風石、水...
上部構造が殆ど無く、艦橋が右側に寄っていて、150メイルの平...
更に甲板中央やや前側に蒸気モーター式エレベーターが付いて...
調整が終わった主翼にも板が被され、プロペラのみが露出して...
第二週が終わる頃、艦としての形は全て整ったのである
この期間、ゼロ機関のメンバーは休み無しで働き、特に才人が...
虚無の曜日だが、ゼロ機関で働く職人全てと才人達の協力関係...
作戦行動中だが、アルビオンの公転周期で離れた為に、集まっ...
更にグラモンやモンモランシ伯、それにツェルプストー伯も艦...
アンリエッタが代表して、操舵手兼艦長を務める才人に命じた
「進空式を行います。ゼロ級0番艦、オストラント、始動」
「了解。機関室、火を入れろ」
才人が伝声管で指令し、コルベールが返答した
〈ウィ。始動開始〉
コルベールがボイラーに火を入れ吸気と排気を弄り始め、一気...
キンキンキンキン
ウォーターハンマーの音が鳴り響き、更に圧力が上がると、主...
「各員蒸気漏れの点検急げ」
〈ウィ〉
各所に散らばった結管を担当したメイジ達が、蒸気配管システ...
〈第23船室、漏れ確認〉
〈蒸気エレベーター配管漏れ〉
「他は無いか?」
〈有りません。全員担当区域点検終了〉
「機関室、フルブロー」
〈了解、フルブロー開始〉
プシューという音が鳴り響く
〈フルブロー完了。スロットル全閉。強制消火完了。圧力ゼロ〉
「気をつけて修復しろ」
〈ウィ、修復作業開始します〉
周りがざわつくが才人は無視だ
「大丈夫ですか?才人殿」
「あぁ、大丈夫大丈夫。俺の酷い教育に付いて来た連中だから...
そして、才人は正しかった
〈23室修復完了〉
〈エレベーター修復完了だ。チクショウ、減給無しで頼むぜ、...
「また漏れたら減給だ。機関室、加熱点火手順開始」
〈了解。加熱点火開始〉
また蒸気が走る音が聞こえ、アイドリングでプロペラが回りだす
「漏れ再チェック」
〈オーケーだ〉
〈こちらも無し〉
「そのまま点検員待機。機関室。常用圧力50迄上昇。行くぞ」
〈了解。ボイラースロットル全開燃焼開始〉
「風石室。風石稼働開始」
〈やっとね。蒸気式風石稼働開始します。初めてだから揺れる...
「了解。総員揺れに注意しろ」
そう言って、才人が舵輪を握ってるとガクンと揺れてドックか...
〈機関圧力15…20…25……30……40……50まだ上がる。才人君、主機回...
「上空だと空気が薄くなる。常に空燃比に留意」
〈了解〉
既にプロペラは派手な音を立てて回っているが、垂直上昇する...
「なんだおい、失敗か?才人」
「黙って見てろジェラール」
「高度上昇中…50…75100」
「良しプロペラピッチ最大、全員加速Gに注意、行くぞ」
そう言って才人が両手で左右のプロペラピッチハンドルを回し...
甲板に乗ってた連中は、どんどん速くなる艦速に驚きを隠せない
「「「オォ〜〜〜〜」」」
どよめきが起きるが、才人が警告した
「総員ロアデッキ(下層甲板)に退避しろ。機動を開始する」
「艦長の指示だ。急げ!」
ばたばたと艦橋にいる人間以外が降りていき、才人が動かし始...
方向舵を一気に回しながら先尾翼舵も回し、主翼舵も回す
一気にアップトリムにしながら回転しつつ上昇を始めた
「うわぁ!」
「おっと、舵強すぎた」
カララララ
舵輪を回して緩やかになる様にしトリムを1°程度に直す
「良し、舵直進。艦速60リーグ。高度500。風石室、稼働を落と...
〈了解。稼働落とします〉
艦速が上昇しながら下降し、100リーグが超えた辺りからまた上...
〈現在稼働1/4。まだ落とす?〉
「艦速上がる迄待った。110……130……150……良し落とせ」
〈了解。風石稼働0〉
一気に周りがざわめく
「嘘だろ?」
「空荷でもちょっとキツイか」
そう言って主翼舵を回して上昇にする
「駄目だな。高度下がる。機関室、オーバーロード開始。思い...
〈了解、石炭過重焚き開始だ……圧力上昇60…70…80。回転数2000...
下がってた高度が艦速の上昇と共にまた上昇する
「良し、高度500艦速200リーグで空荷で安定。進空成功だ」
才人の発言に、見てたアンリエッタが驚きつつ、声を上げた
「皆さん。ゼロ機関に協力した皆さん一人一人の力が今、結実...
「今、トリステインに新しい風が吹きました。その名はゼロ級...
「「「トリステイン万歳!女王アンリエッタ万歳!ゼロ機関万...
才人は歓呼の声を無視して、帰投の為に指示を下し始めた
「帰投するぞ。風石稼働、機関圧力下げ。ジェラール。航法は...
「こんな速い艦の航法なんざやった事ねぇよ」
そうぶつくさ言いながら、ジェラールは嬉々として手伝い始めた
やっぱり新しい玩具は良いと、目がキラキラしている
そしてルイズは、自分達が全く出来ない事を成し遂げた異世界...
* * *
その日、オストラントの艦上では盛大な宴会が開かれた
皆が努力の結実を祝い、更なる空軍力や輸送力を手に入れた事...
当然、主役は才人率いるゼロ機関であり、才人は全てのグルー...
職人達にはもみくちゃにされ、軍人達には最敬礼され、マザリ...
「さて、ヒラガ殿。ここまでの実績を出した者が、平民のまま...
モンモランシ伯がモンモランシーを傍に置いてニコニコしている
モンモランシーの顔は、お父様頑張れと期待の表情だ
「それについては大いに賛成だな」
グラモン伯ジョルジュも頷いている
「私はゲルマニア貴族だが、やはり貴卿が貴族で無いのはどう...
ツェルプストー伯がキュルケを傍に置いて、やはりニヤニヤし...
「私も賛成だ」
アニエス=シュヴァリエ=ド=ミランも何故か入って来た
「父とは意向が違うけど、次期ヴァリエール公としても同意し...
エレオノールが済ましてそう言って、皆で才人を取り囲む
才人は逃げ道が無い事に、冷や汗をかいた
「いや、別に貴族で無くたって」
「あぁ駄目だ駄目だ、何を言っておる。もう気付いておるのだ...
モンモランシ伯がそう言って説得する
「同感だ。あんなアサシン騒動なぞ二度とごめんだ。それもこ...
ジョルジュも本気で怒っている
「全くだ。卿ら、ちょっとこやつを貴族にする為に出資せぬか...
「名案だ。ヒラガ殿のお陰でモンモランシはどんどん景気が上...
「グラモンもだ。才人に幾ら儲けさせて貰ったか解らん。正直...
「で、肝心な所はだな……」
ツェルプストー伯がそう言って、皆が呼吸を合わせる
「「「とっとと貴族になって、お前にベタ惚れした娘の責任を...
「…あはははは」
才人は笑うしかない
「悪いが次期モンモランシは卿でないと嫌と娘が駄々をごねて...
「次期ツェルプストー伯は卿しかおらぬのだが」
「才人が妹と一緒になるならこの地位なんざ譲るぞ?お前の方...
そこで、エレオノールが凛として乱入した
「残念ですがお三方。次期ヴァリエール公はサイト=ヒラガが...
全員の眼光が鋭くなる
「先ずは現公爵と意見の一致から始めるべきですな、ヴァリエ...
モンモランシ伯がそう言って即座に切り捨てる
「ヴァリエールのモノを取るのはツェルプストーの伝統である...
「貴族で失敗したから平民に転んだのか。全くヴァリエールら...
エレオノールがワナワナするのを、才人がハラハラしながらみ...
「あら、楽しそうですね。混ぜて下さりません?」
「これは陛下」
そう言って、アンリエッタの登場を受け入れる
「話は聞こえて来ました。幾つか解決策がございますが、お聞...
「これは是非とも」
モンモランシ伯がそう言って、アンリエッタの意見を拝聴する...
「先ずはシュヴァリエになって頂き、何処かの婿養子になる。...
「えぇ」
皆がうんうん頷いている
「次は彼がヒラガになって貰う道ですね。皆様が彼の傘下に入...
「実は国内的にはヴァリエールの牽制勢力になりえる為に、情...
「おぉ!陛下は慧眼でいらっしゃる」
モンモランシ伯がそう言って頷く
「かかる問題は洒落になりませんが」
「確かに」
困った顔をするアンリエッタに、ツェルプストー伯が頷く
彼を手放す選択は無い。また新しい何かを開発してるとツェル...
彼は利益と権勢をもたらす金の卵だ
しかも殆どの連中が、金を黄鉄鉱と勘違いしている
今居る連中で山分けすれば、取り分は巨大だ
今の内に囲うべしと視線で各領主が合図を交わす
更に娘が幸せになって、自分が楽になるおまけ付きだ
孫と一緒に楽隠居して遊ぶ未来は実に良い
「続いて第三の道です」
まだ有るのかと、全員が注目した
「トリステインの国父になって貰う事ですわ」
そう言って、ちょっと恥ずかしそうに頬を染めた
その言葉に全員絶句し、そしてグラモン伯が笑い出した
「クックックッ。平民から出発してから一国の主か!立身出世...
その言葉に全員気付いた
そうだ、公爵か大公になってしまえば、後は女王との婚姻等何...
「中々面白い事をお考えになさる……あれ?彼は?」
ツェルプストー伯がそう言って見回すと居なかった
「あれ?いつの間に?」
アンリエッタも、いつの間にか消えた才人の存在をキョロキョ...
「陛下に注目が集まった時に逃げましたよ、アイツ」
アニエスがそう報告して、皆が笑い出した
「アッハッハッハ!上手く逃げるな!」
「何と捕まえておくのが難しい。娘がやきもきする訳だ」
全員笑いの発作に耐えられず、笑って宮廷政治の話は終える事...
たられば話だが、実に面白い話だった
やはり、こういう話題の方が良い
誰かを貶める為の会合には、皆がうんざりしてたのだ
* * *
才人はその頃、機関室に移動していた
「先生、見張りご苦労様」
「やはり来たかね、才人君」
機関室の監視所で、コルベールは蒸気バイパスで暖房用蒸気の...
スロットルを締めて、とろ火燃焼で1キロ前後の低圧供給である
「ま、俺はこういう所の方が落ち着く」
そう言って、ワインの瓶を取り出した
「頂こうか」
「ちょっと待って下さい。二人っきりなんてずるいですよ」
そう言って入って来たのはシエスタだった。エレオノールも連...
そう、ゼロ機関の中核4人が勢揃いだ
「絶対にここだと思ったわ。私達で乾杯しなきゃ駄目じゃない」
才人とコルベールは入って来た二人に対し、笑って頷いた
「おっと、失敬失敬。そうだな、我々の成果だ。才人君、音頭...
「あぁ、じゃあ皆グラス持って」
シエスタが持って来たグラスにワインを注いで、皆で掲げる
「皆の努力の結実に…乾杯」
「「「乾杯」」」
チチチン
彼らの努力は今、実を結んだ
ただそれも、これからの始まりに過ぎない程度である事を、皆...
* * *
才人は乾杯した後は、艦長室に歩いていた
「アンタは働き過ぎ。監視は私達でやるから寝なさい」
と、全員に追い出されたのだ
事実である為に、才人は苦笑して頷いた
才人が艦長室の扉を開くと、魔法ランプの灯かりが優しく部屋...
火事の可能性を考えて、全て魔法ランプが導入されている
「おめでとう、サイト」
「ルイズか」
ルイズは他の貴族と同様、ドレスを纏っていた
実に小さい背丈で丸い身体は、保護欲と情欲をそそる
才人は酔っているのも手伝って、武装を解いてベッド脇に立て...
それでも、才人の腰には無骨な銃や弾薬が吊るされており、ル...
「ズボン脱がねぇと外すの面倒い」
「ううん、大丈夫。サイトは何時狙われるか解らないから」
そのままルイズは暫く黙って、才人から話かけるのを待ってた...
結局、ルイズはポツポツと話し始めた
「あたしさ……サイトがやってる事、何にも解らなかった」
「…あぁ」
「何で五月蝿いのか、何で職人達と喧嘩迄して従わせて、姉さ...
「あぁ」
「でも、サイトはシエスタを助けてくれた。あんなに苦しんで...
「……あぁ」
「そんな厳しいサイトが何を作ってたか、何で姫様直属で、誰...
「あぁ」
「すんごい速度出せる空船だったんだね。こんなの、サイト以...
「そうか……そうだな」
「あたし、サイトの主人に相応しくないよ」
そう言って、ぽろぽろと涙を流し始めるルイズ
「俺は、俺の仕事をしただけだ。ルイズもそうだろ?」
ルイズは首を振った
「違うもん。私の大使としての仕事、全部失敗だもん」
「何かあったのか?」
「ヴァリエールでは決裂させて、ゲルマニアでは内政干渉を理...
「……そうか」
「鉄鉱石輸入確保より損失が大きいって、姫様に言われた。損...
「……」
「何で、サイトがやると上手く行くの?あたしの貴族の誇りじ...
ルイズの告白に、才人はぶちまけた
「上手くなんか行ってない」
「……え?」
「ルイズ、人間は必ず失敗する。失敗自体は悪くない。そこか...
「うん」
「俺はな、自分の思う通りにやろうとして、貴族を蹴った。そ...
「あっ……」
「そうだ。要らぬ嫉妬で、妨害、暗殺、襲撃の連鎖だ。おまけ...
「…」
ルイズは黙ってしまう
「貴族社会の本当の恐ろしさは身に染みた。シエスタを救った...
「……サイト」
だが、才人の酒につられた独白は続く
「俺はもう、ハルケギニアじゃ平民として混じって暮らすには...
「……」
「笑っちまうだろ?ルイズ。俺は、俺自身で、平民でいられな...
「どうなるの?」
「断っても、俺を神輿に担ぎ上げる連中が大量に出る。そした...
ルイズは、エレオノールと同じ未来を見てた才人に息を飲んだ
「俺が普通の人間に戻れる所は死ぬしか無い。だが、まだやり...
「俺は最低だ。ハルケギニアに干渉し過ぎた。もう、無かった...
「……サイト」
「ルイズ、俺はこれから大量に人を殺すぞ?そう、虐殺だ。見...
「…」
「俺は……そこまでして帰りたいのか?なぁルイズ、俺はさ、俺...
「…」ルイズには答えられない
「幾ら考えても、答えなんざ出ねぇ。ほんの少しの間、俺に情...
「…サイト」
「……こんな事言うの、お前だけだ」
どきんと心臓が跳ねた
ルイズは、サイトに何にも出来ないと思っていた
そんな事……無かった
「マイロード。俺の可愛いルイズ。お前は汚れるな。お前の仕...
あ、気付いた。気付いてしまった
彼は、私の事が大事過ぎるんだ
泣きたい、嬉しすぎる
同じ位、寂しすぎる
そんな才人にルイズは正面から乗っかった
「あたしは……サイトに汚されたい。サイトだけに汚されたい。...
「殺す。惨たらしく、命乞いをする様を笑いながらみじん切り...
「じゃああたし、ずっと結婚出来ないじゃない。責任取りなさ...
そう言って、ルイズは才人に口付けし、才人はルイズを抱えて...
ルイズのドレスを脱がし、自身も脱いで、ルイズはドキドキし...
「う、重い。サイト…優しく…」
「ぐぅ」
「……えっ?」
そうだった、彼はたっぷり飲んでいた
しかも、仕事も二徹三徹当たり前だったとシエスタが言ってた
つまり、完全な必然
「また……また……?なんでこう……ううぅ、サイトのバカ!始祖ブ...
そのまま才人の重みで全く動けず、酒臭い才人にこの際だと抱...
彼の体温と蒸気暖房のお陰で、冷える夜も寒くない
そして自分の傍だから、彼は安心して緊張の糸が切れたんだと...
「でも、ちょっとすりすりしちゃうもんね」
好きにして良いと思う
* * *
才人が微睡みの中で感じたのは、非常に小柄な胸の無い少女が...
微睡んだまま、彼女に合わせる様に腰を動かしつつ、上半身に...
そのまま腰を彼女に良く当たる様に動かすと、彼女が痙攣し、...
彼女の肌触りは良くて、才人はそれでも気持良かった
そこで意識が覚醒し、キスしてる相手を見るとルイズであり
ルイズの目は虚ろに自分を見ている
「あ……ごめんルイズ。俺寝惚け」
パッと離れると、ルイズはとろんとした眼のまま、才人に言い...
「サイト、おはよ。今までで最高の目覚めの挨拶よ。続きしよ...
そう言って、才人に誰よりも愛らしい入口を脚を畳んでクイッ...
それだけで射精して萎えた才人が勃ち上がった
「そっか、お尻好きなんだっけ?」
クルッて回って小さくて丸いお尻を持ち上げて見せる
無邪気な仕草に猛烈なエロスを感じ
「ほら、発情犬は交尾しないと駄目でしょ?人様に迷惑かけら...
才人が堪らずに近寄り、尻に手を当ててルイズがぴくんとする
『やっとだ。初めてをサイトに……早く来て』
思わず目を瞑ってその時を待つと、別の手がわさりとルイズを...
「え?やだ誰?シエスタ!?」
自分を離したのがシエスタで、ルイズが振り返ると、エレオノ...
そう、取られてたまるかと決意してる嫉妬深いルイズ自身の目だ
「残念ね、もう就業時間なの。ルイズは学院に戻りなさい」
「姉さま!」
「ミス、本当に時間です。才人さんは飲み過ぎて時間に起きて...
シエスタが申し訳なさそうに、尚且つちょっとタイミングの悪...
「私と使い魔の時間……!」
「勿論尊重してますよ、ミス。ですが仕事中はヴァリエール公...
本当に泣きそうになりながら、二人を睨む
そう、意思の強さが更に表に出た、ヴァリエールに相応しい目だ
「…良いわ」
ルイズは脱がされたドレスをまた身に付けて歩いて去って行く...
「私から本気で取り上げる積もりね?エレオノール=ド=ラ=...
「だから何だと言うの?ルイズ=ド=ラ=ヴァリエール」
「貴女は私の敵よ」
「やってみなさい」
そして歩いて去って行き、扉を閉める際に言い放った
「ヴァリエールとして受けて立つわ。私の使い魔は私のものよ」
パタン
才人は全裸のまま、溜め息を付くしか無かった
「才人、したいなら私でもメイドでも使いなさいな」
「止めてくれ、本気で萎えた」
才人はそう言って身支度を整えて歩いて行く
「悪いのは全部俺だけどさ、あんな二人の姿は見たく無かった...
パタン
才人が去った瞬間、エレオノールは一気に涙を溜めて言い放った
「そんな事位解ってるわよ!あんたは悪くない!」
「ミス」
シエスタがすすり泣き始めたエレオノールの肩を抱き、泣き止...
* * *
終了行:
新年の降臨際が始まる迄、本月合わせて三ヶ月
虚無の曜日だが、ゼロ機関のメンバーは、全員ラ=ロシェール...
社会見学という名目で、ルイズ、キュルケ、タバサ、モンモラ...
引率はコルベールが行い、学生の保護を担当した
何せ、何から何まででかい
迷子になると、冗談抜きで事故や迷子になりかねないのが、大...
キュルケは実家で見てたので特に感慨は無いが、他の者達はそ...
全員工場入口でヘルメットを渡され、学生達が嫌な顔をしたが...
「人間がぺしゃんこになる品々運んでるからな。簡単に言うと...
と叱り付けた為に、全員素直に被った
才人は地図を渡されると、装備品を借り受け、さっさと作業用...
「では学生は作業させる訳にはいかないとの事ですから、ルー...
コルベールがそう言って、連れて行く
「うっわ、グラモンもでかかったけど、ラ=ロシェールも大き...
ルイズがそう言って、本気で驚いている
更に通行路では、ひっきりなしに大量の木材や砲、各種作業用...
確かにでかいので、皆が驚いている
「確かに、社会見学になるわ」
モンモランシーがそう言って、うんうん頷いている
そしてルイズ達がゼロ級ドックに数十分歩いて着いた所、調度...
ピピピー、ピピピー、ピピピー、ピーーー
笛の音が響き、信号手が旗を振りながらゴーレム操者に合図し...
「オーケー、ちょいスライ(下降)」
大声を上げたのは才人だった
その近くでは、エレオノールとシエスタがそれぞれバインダー...
「コルベール先生、サイト何やってるの?」
「ボイラーの設置だね。微調整する為に、ああやって位置を示...
才人が拳を握って突き出すと信号手が旗を交叉し、下降が止まる
「ポートムーヴ(左舷に移動)」
声を出しながら親指を立てて左舷に指してクイックイッと動か...
ピッピー、ピッピー、ピッピー
才人がまた握り拳を突き上げる
ピーーー
信号手が旗を交叉するとゴーレムが止まる
「何で才人、あんなこと出来るの?」
モンモランシーの問いにコルベールが答えた
「船関係も、仕事した事が有るのだそうだ。道具が多少違えど...
「へぇ」
感心して皆が見ている
「ボイラーフォア(先頭)ちょい巻け」
その合図に他の作業員が滑車をカラカラ回してボイラーの傾き...
「オーライオーライ、ストーップ!」
才人の声で滑車を止めた
「ゴーレムちょいゴーヘー(上昇)」
その声で、信号手が旗を上に振りながら
ピピッ、ピピッ、ピピッ
才人がまた拳を突き出し
ピーーー
信号手が旗を交叉させて止まる
「フォアムーヴ(前方移動)」
そうやって合図と共に進行していき
「スライスライスライスライ。オッケー!フィニッシュ!外せ...
作業員達が取り付いて一斉にロープを外し始め、ボイラーが設...
「次に主機持って来い」
信号手が頷いて、ゴーレム操者に伝えると、ズシンズシンと歩...
才人はその間に、作業員と共に、ボイラーの設置作業に取り掛...
「親方、位置は合ってるか?」
「ちょいずれてる。先ず左舷側締めて移動させてくれ」
「了解だ」
才人の指示で皆がてきぱきと動く姿に皆がぽかんと見ている
「随分スムーズね。普通喧嘩しない?」
キュルケがそう聞き
「勿論したさ。才人君に向かって楯突いた連中とは全員拳でや...
「へぇ」
「姉さまとシエスタは、何してるんですか?」
「あれかい?次から作業員に全部任せるから、マニュアル作り...
皆してふんふん頷いている
「魔法で全て解決なんか絶対に出来ないと、こういう所に来る...
コルベールがそう締めて、才人の仕事を見学したルイズ達はず...
* * *
「なんて言うか、本当にダーリンは現場の人よね」
「何よ?それ?」
「第一線で働く職人って意味よ」
「ふぅん」
皆がたむろしてるのは、造船所併設の食堂兼休憩所だ
「サイトが職人だと何か有るの?」
「貴族とは住む世界が違うって事。道理で金にあんま興味ない...
そう言って、キュルケは紅茶を飲んでいる
「だから何なのよ?」
「私達じゃ、全員おんぶに抱っこよ。現場を知る統治者になる...
「……」
心当たりが有り過ぎるルイズが黙ってしまう
「私達ではここじゃ本当に邪魔になる。先生に言って帰りまし...
「そうね、私達じゃ邪魔しないのが、本当の仕事だわ。学生は...
キュルケの言にモンモランシーも頷いた
「ルイズ、手伝ったらあんたじゃ事故死しかねないから、絶対...
「わわわ判ってるわよ」
「どうだか」
モンモランシーがそう言って、タバサにキュルケが囁いて、ル...
「ちょっと何よ?離して」
「駄目。貴女暴走したら、ここじゃ死ぬ」
タバサにそう言われ、ルイズがずりずりと引き摺られて、皆が...
* * *
「親方、チェーンの張りチェックしてくれ」
「終わったか?」
「本日予定分は終了だ」
作業員達がそう言って報告し、才人が懐から金貨を何枚か出し...
「お疲れ。コイツで飲んでくれ、その代わり明日からも頼むぜ」
ニヤリとした作業員が答えた
「おぅ。話が解るじゃねぇか。お前ら、親方からゴチだ。有り...
「「「ゴチです」」」
そう言って作業員達が引き上げたのと対照に、才人は右翼から...
傍らには、エレオノールがずっとメモを取っている
シエスタとコルベールは、食べ物を仕入れに外している
「才人、一人で調整する積もり?」
「遊び調整が駄目過ぎる。俺が全部やらにゃならん」
「今日は徹夜?」
「まぁな。右舷終わったら宿に戻ってくれ。マニュアル作成は...
ギッギッとボルトを締めて、調整を主機側から行っている
「嫌よ」
「命令聞けよ」
「一人寝は嫌なのよ」
才人は咄嗟に返せない
「……仕事するなら文句は言わねぇ。勝手にしろ」
「勝手にするわ」
* * *
翌日、休日出勤した職人達がやって来ると二人がずっと作業し...
「おい、まさかあんた達、徹夜か?」
「あぁ気にしなくていいよ。これやんないと操舵と機関の配管...
才人は事も無く言い、コルベールがやって来るとこう言った
「それじゃ、後頼みます」
「了解だ、才人君」
そう言って、コルベール、シエスタ組に後は任せて宿に戻った
宿に戻って、才人が部屋に入ると、当然の如くエレオノールが...
そして、そのままふらりと倒れるのを才人が支えた
「……だから言ったんだ。研究室で徹夜とは訳が違うってのに」
「……るさい、眠い、寝る」
「風呂入るぞ。汚れまくってんだからな。顔に吹き出物出来る...
「……入れて」
「仕事増やすな。我が侭姫」
才人はそう言って、おぶってエレオノールと一緒に風呂場に向...
* * *
その後配管作業も順調に行われ、それと同時に石炭と風石、水...
上部構造が殆ど無く、艦橋が右側に寄っていて、150メイルの平...
更に甲板中央やや前側に蒸気モーター式エレベーターが付いて...
調整が終わった主翼にも板が被され、プロペラのみが露出して...
第二週が終わる頃、艦としての形は全て整ったのである
この期間、ゼロ機関のメンバーは休み無しで働き、特に才人が...
虚無の曜日だが、ゼロ機関で働く職人全てと才人達の協力関係...
作戦行動中だが、アルビオンの公転周期で離れた為に、集まっ...
更にグラモンやモンモランシ伯、それにツェルプストー伯も艦...
アンリエッタが代表して、操舵手兼艦長を務める才人に命じた
「進空式を行います。ゼロ級0番艦、オストラント、始動」
「了解。機関室、火を入れろ」
才人が伝声管で指令し、コルベールが返答した
〈ウィ。始動開始〉
コルベールがボイラーに火を入れ吸気と排気を弄り始め、一気...
キンキンキンキン
ウォーターハンマーの音が鳴り響き、更に圧力が上がると、主...
「各員蒸気漏れの点検急げ」
〈ウィ〉
各所に散らばった結管を担当したメイジ達が、蒸気配管システ...
〈第23船室、漏れ確認〉
〈蒸気エレベーター配管漏れ〉
「他は無いか?」
〈有りません。全員担当区域点検終了〉
「機関室、フルブロー」
〈了解、フルブロー開始〉
プシューという音が鳴り響く
〈フルブロー完了。スロットル全閉。強制消火完了。圧力ゼロ〉
「気をつけて修復しろ」
〈ウィ、修復作業開始します〉
周りがざわつくが才人は無視だ
「大丈夫ですか?才人殿」
「あぁ、大丈夫大丈夫。俺の酷い教育に付いて来た連中だから...
そして、才人は正しかった
〈23室修復完了〉
〈エレベーター修復完了だ。チクショウ、減給無しで頼むぜ、...
「また漏れたら減給だ。機関室、加熱点火手順開始」
〈了解。加熱点火開始〉
また蒸気が走る音が聞こえ、アイドリングでプロペラが回りだす
「漏れ再チェック」
〈オーケーだ〉
〈こちらも無し〉
「そのまま点検員待機。機関室。常用圧力50迄上昇。行くぞ」
〈了解。ボイラースロットル全開燃焼開始〉
「風石室。風石稼働開始」
〈やっとね。蒸気式風石稼働開始します。初めてだから揺れる...
「了解。総員揺れに注意しろ」
そう言って、才人が舵輪を握ってるとガクンと揺れてドックか...
〈機関圧力15…20…25……30……40……50まだ上がる。才人君、主機回...
「上空だと空気が薄くなる。常に空燃比に留意」
〈了解〉
既にプロペラは派手な音を立てて回っているが、垂直上昇する...
「なんだおい、失敗か?才人」
「黙って見てろジェラール」
「高度上昇中…50…75100」
「良しプロペラピッチ最大、全員加速Gに注意、行くぞ」
そう言って才人が両手で左右のプロペラピッチハンドルを回し...
甲板に乗ってた連中は、どんどん速くなる艦速に驚きを隠せない
「「「オォ〜〜〜〜」」」
どよめきが起きるが、才人が警告した
「総員ロアデッキ(下層甲板)に退避しろ。機動を開始する」
「艦長の指示だ。急げ!」
ばたばたと艦橋にいる人間以外が降りていき、才人が動かし始...
方向舵を一気に回しながら先尾翼舵も回し、主翼舵も回す
一気にアップトリムにしながら回転しつつ上昇を始めた
「うわぁ!」
「おっと、舵強すぎた」
カララララ
舵輪を回して緩やかになる様にしトリムを1°程度に直す
「良し、舵直進。艦速60リーグ。高度500。風石室、稼働を落と...
〈了解。稼働落とします〉
艦速が上昇しながら下降し、100リーグが超えた辺りからまた上...
〈現在稼働1/4。まだ落とす?〉
「艦速上がる迄待った。110……130……150……良し落とせ」
〈了解。風石稼働0〉
一気に周りがざわめく
「嘘だろ?」
「空荷でもちょっとキツイか」
そう言って主翼舵を回して上昇にする
「駄目だな。高度下がる。機関室、オーバーロード開始。思い...
〈了解、石炭過重焚き開始だ……圧力上昇60…70…80。回転数2000...
下がってた高度が艦速の上昇と共にまた上昇する
「良し、高度500艦速200リーグで空荷で安定。進空成功だ」
才人の発言に、見てたアンリエッタが驚きつつ、声を上げた
「皆さん。ゼロ機関に協力した皆さん一人一人の力が今、結実...
「今、トリステインに新しい風が吹きました。その名はゼロ級...
「「「トリステイン万歳!女王アンリエッタ万歳!ゼロ機関万...
才人は歓呼の声を無視して、帰投の為に指示を下し始めた
「帰投するぞ。風石稼働、機関圧力下げ。ジェラール。航法は...
「こんな速い艦の航法なんざやった事ねぇよ」
そうぶつくさ言いながら、ジェラールは嬉々として手伝い始めた
やっぱり新しい玩具は良いと、目がキラキラしている
そしてルイズは、自分達が全く出来ない事を成し遂げた異世界...
* * *
その日、オストラントの艦上では盛大な宴会が開かれた
皆が努力の結実を祝い、更なる空軍力や輸送力を手に入れた事...
当然、主役は才人率いるゼロ機関であり、才人は全てのグルー...
職人達にはもみくちゃにされ、軍人達には最敬礼され、マザリ...
「さて、ヒラガ殿。ここまでの実績を出した者が、平民のまま...
モンモランシ伯がモンモランシーを傍に置いてニコニコしている
モンモランシーの顔は、お父様頑張れと期待の表情だ
「それについては大いに賛成だな」
グラモン伯ジョルジュも頷いている
「私はゲルマニア貴族だが、やはり貴卿が貴族で無いのはどう...
ツェルプストー伯がキュルケを傍に置いて、やはりニヤニヤし...
「私も賛成だ」
アニエス=シュヴァリエ=ド=ミランも何故か入って来た
「父とは意向が違うけど、次期ヴァリエール公としても同意し...
エレオノールが済ましてそう言って、皆で才人を取り囲む
才人は逃げ道が無い事に、冷や汗をかいた
「いや、別に貴族で無くたって」
「あぁ駄目だ駄目だ、何を言っておる。もう気付いておるのだ...
モンモランシ伯がそう言って説得する
「同感だ。あんなアサシン騒動なぞ二度とごめんだ。それもこ...
ジョルジュも本気で怒っている
「全くだ。卿ら、ちょっとこやつを貴族にする為に出資せぬか...
「名案だ。ヒラガ殿のお陰でモンモランシはどんどん景気が上...
「グラモンもだ。才人に幾ら儲けさせて貰ったか解らん。正直...
「で、肝心な所はだな……」
ツェルプストー伯がそう言って、皆が呼吸を合わせる
「「「とっとと貴族になって、お前にベタ惚れした娘の責任を...
「…あはははは」
才人は笑うしかない
「悪いが次期モンモランシは卿でないと嫌と娘が駄々をごねて...
「次期ツェルプストー伯は卿しかおらぬのだが」
「才人が妹と一緒になるならこの地位なんざ譲るぞ?お前の方...
そこで、エレオノールが凛として乱入した
「残念ですがお三方。次期ヴァリエール公はサイト=ヒラガが...
全員の眼光が鋭くなる
「先ずは現公爵と意見の一致から始めるべきですな、ヴァリエ...
モンモランシ伯がそう言って即座に切り捨てる
「ヴァリエールのモノを取るのはツェルプストーの伝統である...
「貴族で失敗したから平民に転んだのか。全くヴァリエールら...
エレオノールがワナワナするのを、才人がハラハラしながらみ...
「あら、楽しそうですね。混ぜて下さりません?」
「これは陛下」
そう言って、アンリエッタの登場を受け入れる
「話は聞こえて来ました。幾つか解決策がございますが、お聞...
「これは是非とも」
モンモランシ伯がそう言って、アンリエッタの意見を拝聴する...
「先ずはシュヴァリエになって頂き、何処かの婿養子になる。...
「えぇ」
皆がうんうん頷いている
「次は彼がヒラガになって貰う道ですね。皆様が彼の傘下に入...
「実は国内的にはヴァリエールの牽制勢力になりえる為に、情...
「おぉ!陛下は慧眼でいらっしゃる」
モンモランシ伯がそう言って頷く
「かかる問題は洒落になりませんが」
「確かに」
困った顔をするアンリエッタに、ツェルプストー伯が頷く
彼を手放す選択は無い。また新しい何かを開発してるとツェル...
彼は利益と権勢をもたらす金の卵だ
しかも殆どの連中が、金を黄鉄鉱と勘違いしている
今居る連中で山分けすれば、取り分は巨大だ
今の内に囲うべしと視線で各領主が合図を交わす
更に娘が幸せになって、自分が楽になるおまけ付きだ
孫と一緒に楽隠居して遊ぶ未来は実に良い
「続いて第三の道です」
まだ有るのかと、全員が注目した
「トリステインの国父になって貰う事ですわ」
そう言って、ちょっと恥ずかしそうに頬を染めた
その言葉に全員絶句し、そしてグラモン伯が笑い出した
「クックックッ。平民から出発してから一国の主か!立身出世...
その言葉に全員気付いた
そうだ、公爵か大公になってしまえば、後は女王との婚姻等何...
「中々面白い事をお考えになさる……あれ?彼は?」
ツェルプストー伯がそう言って見回すと居なかった
「あれ?いつの間に?」
アンリエッタも、いつの間にか消えた才人の存在をキョロキョ...
「陛下に注目が集まった時に逃げましたよ、アイツ」
アニエスがそう報告して、皆が笑い出した
「アッハッハッハ!上手く逃げるな!」
「何と捕まえておくのが難しい。娘がやきもきする訳だ」
全員笑いの発作に耐えられず、笑って宮廷政治の話は終える事...
たられば話だが、実に面白い話だった
やはり、こういう話題の方が良い
誰かを貶める為の会合には、皆がうんざりしてたのだ
* * *
才人はその頃、機関室に移動していた
「先生、見張りご苦労様」
「やはり来たかね、才人君」
機関室の監視所で、コルベールは蒸気バイパスで暖房用蒸気の...
スロットルを締めて、とろ火燃焼で1キロ前後の低圧供給である
「ま、俺はこういう所の方が落ち着く」
そう言って、ワインの瓶を取り出した
「頂こうか」
「ちょっと待って下さい。二人っきりなんてずるいですよ」
そう言って入って来たのはシエスタだった。エレオノールも連...
そう、ゼロ機関の中核4人が勢揃いだ
「絶対にここだと思ったわ。私達で乾杯しなきゃ駄目じゃない」
才人とコルベールは入って来た二人に対し、笑って頷いた
「おっと、失敬失敬。そうだな、我々の成果だ。才人君、音頭...
「あぁ、じゃあ皆グラス持って」
シエスタが持って来たグラスにワインを注いで、皆で掲げる
「皆の努力の結実に…乾杯」
「「「乾杯」」」
チチチン
彼らの努力は今、実を結んだ
ただそれも、これからの始まりに過ぎない程度である事を、皆...
* * *
才人は乾杯した後は、艦長室に歩いていた
「アンタは働き過ぎ。監視は私達でやるから寝なさい」
と、全員に追い出されたのだ
事実である為に、才人は苦笑して頷いた
才人が艦長室の扉を開くと、魔法ランプの灯かりが優しく部屋...
火事の可能性を考えて、全て魔法ランプが導入されている
「おめでとう、サイト」
「ルイズか」
ルイズは他の貴族と同様、ドレスを纏っていた
実に小さい背丈で丸い身体は、保護欲と情欲をそそる
才人は酔っているのも手伝って、武装を解いてベッド脇に立て...
それでも、才人の腰には無骨な銃や弾薬が吊るされており、ル...
「ズボン脱がねぇと外すの面倒い」
「ううん、大丈夫。サイトは何時狙われるか解らないから」
そのままルイズは暫く黙って、才人から話かけるのを待ってた...
結局、ルイズはポツポツと話し始めた
「あたしさ……サイトがやってる事、何にも解らなかった」
「…あぁ」
「何で五月蝿いのか、何で職人達と喧嘩迄して従わせて、姉さ...
「あぁ」
「でも、サイトはシエスタを助けてくれた。あんなに苦しんで...
「……あぁ」
「そんな厳しいサイトが何を作ってたか、何で姫様直属で、誰...
「あぁ」
「すんごい速度出せる空船だったんだね。こんなの、サイト以...
「そうか……そうだな」
「あたし、サイトの主人に相応しくないよ」
そう言って、ぽろぽろと涙を流し始めるルイズ
「俺は、俺の仕事をしただけだ。ルイズもそうだろ?」
ルイズは首を振った
「違うもん。私の大使としての仕事、全部失敗だもん」
「何かあったのか?」
「ヴァリエールでは決裂させて、ゲルマニアでは内政干渉を理...
「……そうか」
「鉄鉱石輸入確保より損失が大きいって、姫様に言われた。損...
「……」
「何で、サイトがやると上手く行くの?あたしの貴族の誇りじ...
ルイズの告白に、才人はぶちまけた
「上手くなんか行ってない」
「……え?」
「ルイズ、人間は必ず失敗する。失敗自体は悪くない。そこか...
「うん」
「俺はな、自分の思う通りにやろうとして、貴族を蹴った。そ...
「あっ……」
「そうだ。要らぬ嫉妬で、妨害、暗殺、襲撃の連鎖だ。おまけ...
「…」
ルイズは黙ってしまう
「貴族社会の本当の恐ろしさは身に染みた。シエスタを救った...
「……サイト」
だが、才人の酒につられた独白は続く
「俺はもう、ハルケギニアじゃ平民として混じって暮らすには...
「……」
「笑っちまうだろ?ルイズ。俺は、俺自身で、平民でいられな...
「どうなるの?」
「断っても、俺を神輿に担ぎ上げる連中が大量に出る。そした...
ルイズは、エレオノールと同じ未来を見てた才人に息を飲んだ
「俺が普通の人間に戻れる所は死ぬしか無い。だが、まだやり...
「俺は最低だ。ハルケギニアに干渉し過ぎた。もう、無かった...
「……サイト」
「ルイズ、俺はこれから大量に人を殺すぞ?そう、虐殺だ。見...
「…」
「俺は……そこまでして帰りたいのか?なぁルイズ、俺はさ、俺...
「…」ルイズには答えられない
「幾ら考えても、答えなんざ出ねぇ。ほんの少しの間、俺に情...
「…サイト」
「……こんな事言うの、お前だけだ」
どきんと心臓が跳ねた
ルイズは、サイトに何にも出来ないと思っていた
そんな事……無かった
「マイロード。俺の可愛いルイズ。お前は汚れるな。お前の仕...
あ、気付いた。気付いてしまった
彼は、私の事が大事過ぎるんだ
泣きたい、嬉しすぎる
同じ位、寂しすぎる
そんな才人にルイズは正面から乗っかった
「あたしは……サイトに汚されたい。サイトだけに汚されたい。...
「殺す。惨たらしく、命乞いをする様を笑いながらみじん切り...
「じゃああたし、ずっと結婚出来ないじゃない。責任取りなさ...
そう言って、ルイズは才人に口付けし、才人はルイズを抱えて...
ルイズのドレスを脱がし、自身も脱いで、ルイズはドキドキし...
「う、重い。サイト…優しく…」
「ぐぅ」
「……えっ?」
そうだった、彼はたっぷり飲んでいた
しかも、仕事も二徹三徹当たり前だったとシエスタが言ってた
つまり、完全な必然
「また……また……?なんでこう……ううぅ、サイトのバカ!始祖ブ...
そのまま才人の重みで全く動けず、酒臭い才人にこの際だと抱...
彼の体温と蒸気暖房のお陰で、冷える夜も寒くない
そして自分の傍だから、彼は安心して緊張の糸が切れたんだと...
「でも、ちょっとすりすりしちゃうもんね」
好きにして良いと思う
* * *
才人が微睡みの中で感じたのは、非常に小柄な胸の無い少女が...
微睡んだまま、彼女に合わせる様に腰を動かしつつ、上半身に...
そのまま腰を彼女に良く当たる様に動かすと、彼女が痙攣し、...
彼女の肌触りは良くて、才人はそれでも気持良かった
そこで意識が覚醒し、キスしてる相手を見るとルイズであり
ルイズの目は虚ろに自分を見ている
「あ……ごめんルイズ。俺寝惚け」
パッと離れると、ルイズはとろんとした眼のまま、才人に言い...
「サイト、おはよ。今までで最高の目覚めの挨拶よ。続きしよ...
そう言って、才人に誰よりも愛らしい入口を脚を畳んでクイッ...
それだけで射精して萎えた才人が勃ち上がった
「そっか、お尻好きなんだっけ?」
クルッて回って小さくて丸いお尻を持ち上げて見せる
無邪気な仕草に猛烈なエロスを感じ
「ほら、発情犬は交尾しないと駄目でしょ?人様に迷惑かけら...
才人が堪らずに近寄り、尻に手を当ててルイズがぴくんとする
『やっとだ。初めてをサイトに……早く来て』
思わず目を瞑ってその時を待つと、別の手がわさりとルイズを...
「え?やだ誰?シエスタ!?」
自分を離したのがシエスタで、ルイズが振り返ると、エレオノ...
そう、取られてたまるかと決意してる嫉妬深いルイズ自身の目だ
「残念ね、もう就業時間なの。ルイズは学院に戻りなさい」
「姉さま!」
「ミス、本当に時間です。才人さんは飲み過ぎて時間に起きて...
シエスタが申し訳なさそうに、尚且つちょっとタイミングの悪...
「私と使い魔の時間……!」
「勿論尊重してますよ、ミス。ですが仕事中はヴァリエール公...
本当に泣きそうになりながら、二人を睨む
そう、意思の強さが更に表に出た、ヴァリエールに相応しい目だ
「…良いわ」
ルイズは脱がされたドレスをまた身に付けて歩いて去って行く...
「私から本気で取り上げる積もりね?エレオノール=ド=ラ=...
「だから何だと言うの?ルイズ=ド=ラ=ヴァリエール」
「貴女は私の敵よ」
「やってみなさい」
そして歩いて去って行き、扉を閉める際に言い放った
「ヴァリエールとして受けて立つわ。私の使い魔は私のものよ」
パタン
才人は全裸のまま、溜め息を付くしか無かった
「才人、したいなら私でもメイドでも使いなさいな」
「止めてくれ、本気で萎えた」
才人はそう言って身支度を整えて歩いて行く
「悪いのは全部俺だけどさ、あんな二人の姿は見たく無かった...
パタン
才人が去った瞬間、エレオノールは一気に涙を溜めて言い放った
「そんな事位解ってるわよ!あんたは悪くない!」
「ミス」
シエスタがすすり泣き始めたエレオノールの肩を抱き、泣き止...
* * *
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