ゼロの使い魔保管庫
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ゼロ級0番艦オストラントは船籍はトリステイン、所有はゼロ...
次の1番艦から国軍所有になり、作戦行動に随伴させる様になる
既に1番艦は急ピッチで作業が行われており、慣れた作業者達...
進空したオストラントは何をしているかというと、空軍から特...
職務上、機関長と機関士が新設され、ゼロ級の心臓を携わる栄...
実際に動かすには、10人程度で済むという恐ろしい船である
その代わり、覚える内容は更に増え、皆が艦内で生活しながら...
オストラントは今はグラモン伯領にて、新型装備の受領を受け...
竜母艦としての運用訓練開始である
艦首が開いて続々と新型装備が搬入されていき、更に零戦用武...
そう、オストラントは空中空母である
最初から、零戦の運用が想定されていた
「では、離陸致しますぞ。補機始動、補給ハッチ閉め」
〈補機始動、補給ハッチ閉鎖開始〉
ゴゴゴゴン
鉄フレームが軋む音がなりながらハッチが閉まり。甲板員がロ...
〈ロック終了〉
「宜しいですぞ。では主機始動、補機閉鎖。風石稼働開始」
コルベールが着々と指示を下して、全員がばたばたと動いている
「アッパーデッキ前後柵外せ!左右柵の確認急げ!」
甲板がフルフラットの為に、皆が全力で走っている
「前後柵取り外し終了!格納入ります」
甲板員が柵を持って走ると、ハッチが開いてそこに居る人員に...
「副艦長。離発着準備完了」
様子を見てた士官が報告し、コルベールが頷いた
「では離陸ですぞ」
〈風石稼働出力最大。発進〉
重量が増えた為に、重厚に浮き上がるオストラント
「左舷プロペラ逆進、右舷プロペラ微速前進。超振地旋回」
「左舷プロペラ逆進、右舷プロペラ微速前進、ようそろ」
浮き上がりながら、その場で向きをくるりと変えるオストラント
「進路、トリステイン魔法学院」
「進路トリステイン魔法学院ようそろ」
「では、後は皆さん、存分に訓練して下さい」
「有り難うございます副艦長。指揮を引き継ぐぞ。左舷プロペ...
「左舷プロペラ微速前進ようそろ」
左舷ピッチハンドルをくるくる回して角度調整をする操舵手
操舵は三人で5個の舵輪と二種のピッチハンドルを操作し、一...
才人なら一人でやるが、設計者の長である
「前進開始後、ピッチ両舷最大」
「ウィ、前進開始後ピッチ両舷最大」
二人が同時にピッチを弄ると、機関室から声が掛かった
〈こちら機関室。抵抗が大きい。ピッチ角落としてくれ。現在...
「糞、空荷の時とは違うな。ピッチ微速戻し」
「ウィ、ピッチ微速戻し」
そんな彼らを邪魔しない様に、コルベールは艦橋から降りて行...
船舶は完全な階級式であり、艦長が一番広い部屋で、階級が下...
オストラントに於いても同様である
差別ではなく、有限なスペースを活用しなければならない為に...
オストラントはゼロ機関所属艦の為に、才人が艦長、コルベー...
彼らへの敬意の為に、訓練中に於いてもその座は固定されてお...
才人辺りは別に構わないと言ったのだが、軍人達が全員首を振...
「例え艦長が所用で不在であっても、オストラントの艦長はサ...
全員がそう言って才人に敬礼し、才人は礼を返すしか無かった
「訓練で存分に使い倒してくれ。各部品の慣らしもあっから過...
「了解致しました。艦長」
ザッと敬礼を返されて、才人は苦笑しながら礼を返したのである
* * *
オストラントに居なかった才人は、今は本部から零戦を発進さ...
エレオノールが魔法で一気にプロペラを回して才人が火を入れる
ブロロロロ
そしてすかさず才人の後ろにという訳ではなく、後ろにはルイ...
きちんとした女官ヴァリエールのお仕事、ミスゼロの参戦訓練...
「今回はタッチダウン数回と同調ブレーキ着陸にエレベーター...
「サイトこそ肝心な所でミスらないでよ」
「ほいほい、気をつけますよっと」
零戦の離陸の為に、広場を拡張してエレオノールが壁を崩して...
エレオノールがまるを作って合図すると、才人は一気に助走し...
後には、エレオノールとシエスタが残っている
「さ、メイド。仕事するわよ」
「…はい」
「新しいズボンプレゼントしたいんでしょ?ミシンでさっさと...
「そうですね。私が出来る事やれば良いだけでした」
「さてと。私も弾を作っておかないとね」
そう言って、二人は中に入って行った
* * *
才人達がルイズの航法指示で目的地付近に来ると、竜騎士隊が...
「ピュウ、壮観だねぇ。肝心のオストラントはっと?」
才人とルイズがキョロキョロと探すが見当たらない
「何だ?来てねぇの?デルフ、どうだ?」
カチッとデルフが出てくる
「ん〜。5000メイルで飛んでる奴じゃね?」
「はぁ?」
才人とルイズが上空を見ると、確かに居た
「おいおい、上手く調整出来て無いな?コルベール先生一人じ...
「わかった」
才人が零戦の機首を上げて一気に上昇していくのを見た竜騎士...
5000メイル上空じゃ無理だからだ
才人が艦尾からぶわっと姿を現すと、強風と寒さに震えた甲板...
才人が車輪を出して高度差1メイルの低空で着艦を試み、一気...
ガクンとオストラントの速度が同調して落ちる
「操舵手は仕事してんな」
丁度エレベーター付近で止まり、更にゆっくり移動してエレベ...
信号手が旗を交叉して範囲内を示して、才人はそのまま親指を...
ガクンと下がって行き艦内を入り込むと、風防を開けて二振り...
「艦長〜〜!助かりましたぁ」
「零戦格納作業入れ。そしたらエレベーター上げろ」
「ウィ。お前達、動かすぞ」
一斉に取り付いて人力で押し始めたのを背に、才人は艦橋に向...
「艦橋に行く。甲板員下げて暖房効いてる部屋に叩き込め、酒...
「うん」
才人の確かな足取りにルイズが付いて行き
船員達は安堵の溜め息を付いた
「どうなるかと思ったわ」
「おい、艦長からの命令だ。お前達全員降りて来い」
ハッチから怒鳴って、甲板員が震えながら降りて来た
「艦長なら5000メイルでも来るから耐えろって言われたから頑...
「お疲れだ。酒を飲んで暖まれだとさ。ほら、一番暖房効いて...
「話の解る艦長だぜ。暖房完備のオストラント様々だ」
正に新型艦の恩恵である
* * *
才人が艦橋に行くと、コルベールと航海長がパニックに陥って...
「どうやっても高度が下がりませんぞ!」
「あぁ、試せるのは全部試したのに」
「何してんだ?二人して?」
「才人君、やっと来てくれた。蒸気風石稼働装置の出力が下が...
才人は聞いた瞬間に指示を下した
「機関室並びに機関員。緊急訓練だ。走らない奴は後で5000メ...
〈了解〉
「今から命令する手順を、マニュアルを見ながら確実に操作し...
〈了解〉
「機関一次三次バイパス解放」
〈一次三次バイパス解放ヨシ〉
「吸排気全閉。吸気を閉めてから排気を閉める」
〈吸排気全閉。吸気を閉めてから排気を閉める。ヨシ〉
「圧力、火室燃焼報告」
〈現在一次5キロ。火室消火確認〉
「三次管風石稼働配管を探って閉鎖。確か7番送管じゃなかっ...
〈ビンゴです。7番送管閉鎖〉
「7番帰管閉鎖。閉鎖系統ゆっくりブローしろ。但し蒸気に注...
〈了解。走れ、行け〉「艦長。高度低下中。4800…4500…どんど...
「風石稼働室。手動開始。働け」
〈了解、手動開始。お前ら仕事だ〉
「各員に告ぐ。手透きの者は先程出てた甲板員以外、風石稼働...
〈こちら倉庫了解。行くぞ〉
〈7番ブロー完了。怪我人無し〉
「良くやった。操作バルブ交換しろ。きちんと同じ番手の奴が...
〈了解〉
才人の指示でどんどんと対処が進み、皆が額に汗を足らして見...
「艦長。艦内温度低下中。ボイラーの始動を」
「馬鹿かお前は?修理中にボイラーに火を入れたら、修理して...
そう言われて、ピシッと直立不動になる
「失礼しましたぁ!」
「俺は軍人じゃないからあんたは殴らん。気合いが欲しけりゃ...
「はっ!終わり次第、そうさせて頂きます」
才人の厳しさは、軍に通じるものが有るのだろう
「まだかね?才人君」
「ここは黙って待つのが仕事です」
「中々キツいな。我々が行けばすぐなのに、敢えて全てやらせ...
「解りますか?やっぱり」
ルイズはその様を見て、トラブルすら利用して訓練に使ってる...
しかも、マジものの墜落の危機対処である
〈交換……完了!〉
オオオオ
艦橋に歓声が上がるが、サイトは一人厳しい顔をしている
「交換はボルトナットだな?」
〈そうです。錬金一体型じゃ有りません〉
「ガスケットの確認をしろ。座面に挟む奴だ」
〈了解。確認……駄目だ、忘れてる〉
「やり直せ。お前が死ぬぞ」
〈ウィ。やり直し入ります〉
「成る程。初心者がやるミスを想定してたのだね?」
「そゆこと」
そしてまた待ち
〈今度こそ、完了!〉
「良し、増し締めしなきゃならないからそのまま待機しろ」
〈ウィ〉
「機関室バイパス閉鎖。加熱点火開始」
〈了解、点火開始…圧力上昇……糞、上がり辛い〉
「空気薄いから、吸気ファンが回る迄我慢だ」
〈了解〉
「両舷ピッチニュートラル」
「両舷ピッチニュートラル、ようそろ」
〈圧力5キロ。アイドリング来ました。空気流入。10キロ行け...
「7番送帰開放」
〈送帰開放ヨシ〉
〈こちら操作、漏れてます、あちちち〉
「7番送管閉鎖」
〈ウィ〉
そして、修理に走った人間に才人は伝声管越しに怒鳴った
「報告入れる暇ありゃ逃げろ馬鹿たれ!全員蒸し焼きになんぞ...
〈すいません!……良し、今度こそ〉
「次漏れたら、そこで手伝ってる連中に謝れよ」
〈はい〉
「7番開放」
〈7番開放良し〉
〈稼働室。漏れてません〉
「良し。手動停止と同時にバルブ開放だ」
〈了解。手動停止。バルブ開放……良し〉
「そこからゆっくり絞れ」
〈ゆっくり絞ります〉「高度報告」
「4500…4600…4650」「今」
〈放しました〉
「更に絞れ」
〈了解〉
「高度4600…4500。順調に下降してます」
「良し。そこで止めろ」
〈ウィ〉
「総員、修理完了だ!お疲れ!」
うわぁぁぁぁぁ
一気に歓声が上がり、皆が喜ぶ
「壊れたバルブをショップに持って来い。点検する」
〈了解です〉
「訓練に戻れ。俺はコルベール先生と原因探りに行く」
全員が敬礼したのを才人はそのまま通過し、機関室に向かった...
機関室の部品ショップで故障の原因を見て才人は溜め息をつく
「ゴミかよ」
「こんな小さなゴミ一つで、バルブが動かなくなるのかね?」
「良くある話です。慣らしを増やしましょう。空中で同じトラ...
「そうだな。しかし才人君が来てくれて助かった」
「補給して艦載量増えてたのが幸いしましたね。空荷なら、全...
そして、ズシンズシンと振動が響いて来た
「お、始まったか」
「艦長」
「何?」
呼ばれたので振り向くと、航海長が頬を腫らして立っていた
「助けて頂き、有り難うございました」
「丁度いいや。原因見ていって」
「はっ」
そう言って才人がバルブに挟まったゴミを見せる
「俺達は、こんなゴミに殺されそうになったのさ」
「この程度で!?」
「誰かが製作過程でゴミを落とすってのは良くある。気をつけ...
「はっ、確かに危機状況そのものでした」
「絶対は無いんだ。常に気をつけてくれ」
「肝に命じます」
才人の危機指導はそのままマニュアルに載り、更なるデータを...
* * *
「何だこの空船?」
傭兵部隊である第三第六竜騎士中隊
その第三竜騎士中隊長に模擬戦の結果勝ち取ったジュリオは、...
「成る程ね。コイツがあり得ざる工芸品の生産者の作品か」
今回は第一から第三が普段の演習空域からオストラントに来て...
そしてジュリオ達は順次先行した第一第二とは違い、遅めに出...
理由は着艦作業で詰まるからであり、特段疑問の余地は無いが...
竜の身体には、常に身に付けろと言われたラックが鞍と一緒に...
但、正規軍の竜騎士達には非常に好評で、何故かは良く解らな...
そして、今回どうやらその秘密を見せてくれると見え、ワクワ...
全騎が甲板に降り立つと、甲板員が怒鳴った
「もっと優しく降りろ!この傭兵ども!お前達以外にも、使う...
「竜母なんだから構わないだろ?」
ジュリオが疑問に思って言い返す
「違う!オストラントは竜母じゃねぇ!空母だ!竜騎士側が間...
ひらりと飛び降りたジュリオが疑問に思って問い掛ける
「軍艦じゃないのか?これ?」
「軍艦は建造中だ。オストラントは同型艦の0番艦。つまり制...
「要は一艦しかないから優しく扱えって事?」
「人のもん壊して、修理出来るなら構わんぞ。言っておくが、...
「そうかい、せいぜい気をつけるよ。で、竜は外に繋いでおく...
「信号手の指示に従ってくれよ。向こうで合図してんじゃねえ...
そう言って指を指してる方向を見て、ジュリオがガリガリ頭を...
「ありゃ、見落としてた。ごめんごめん」
ジュリオがそのまま歩いてアズーロが付いて行き、信号手の指...
「おい。もう一頭来てくれ。こっちだ」
良く見ると、四角線が書いてあり、その枠に収めるらしい
もう一頭が枠に収まり、信号手がジュリオに声をかけた
「あんた、騎竜に乗ってくれ。初めてだと大抵ビビるから、落...
「はぁ?」
指示に従えと言われてるので黙って乗り、すると信号手が何や...
ガコン
「きゅいぃぃぃ!?」
確かに竜がびっくりして軽く暴れてるので、ジュリオも手綱を...
「昇降装置。しかも船に乗るレベルのか!?」
キャリキャリキャリとチェーンが回る音が鳴り響いて、竜達の...
「おぉ、流石の傭兵部隊も驚いてるぞ」
「トリステインの新兵器群にかかりゃ、今までの戦いが馬鹿に...
そう言って、先行した二隊の騎士達がたむろしながら笑っている
「ほら、早く退いて上げないと収容作業の邪魔だぜ?」
「あ、そうだった」
ジュリオ達が退くとまたキャリキャリ音を立てて昇り、竜を全...
「驚いたな。なんて船なんだ」
「まだ驚くぜ?お前寒いか?」
言われて気付く
「…暖かい」
「だろ?すげぇよな。暖房完備だぜ?暖房完備。俺達に滅茶苦...
「しかも帆がないせいか大して揺れない。いや、本気で凄いよ」
ジュリオも完全に同意して頷いた
「船室はもっと暖かいんだと。も、最高だよ」
「そんなに居心地良いなら、何で君達は船室に行かないんだ?」
「そりゃ、歴戦の傭兵隊に見て欲しいモノが有るからだよ、な...
そう言って、皆が頷いた
「言っておくけど、集まった連中は全員純粋な興味だよ?君達...
その意見に、第三中隊の全員が怪訝な顔をした
「付いて来てくれよ」
そう言って手招きするので向かうと、妙な代物が鎮座していた
「これさ、何だと思う?」
その代物をバンバン叩いて案内した小太りの少年に言われ、全...
「何だこりゃ?新種の生き物か?」
そう言って、皆が確かに面白いモノを見て頭を捻っていて、そ...
「良いかい?コイツが」
ガン!
ルネの背後からしこたまに叩かれて、ルネが前のめりに倒れる
「誰だいきなり!何するんだ!」
「何するんだは此方の台詞だ馬鹿ルネが!お前には、叩くなっ...
「才人!?ごめん、つい自慢したくて」
「だったら、あんときのチャージ決めたのと、一騎撃墜の方が...
「いや、だってあれは出来すぎでさぁ」
てれてれしてるルネに、逆に傭兵含めて集まってきた
「ちょっと待ってくれ、そのチャージ話聞かせてくれよ!凄い...
特に傭兵の食い付きが良い
「チャージなんて、トリステイン騎兵の基本攻撃なんだけど?」
思わずぽかんとするルネに、傭兵隊の連中が更に食い付く
「杖持ちながらランス構えてチャージだなんて馬鹿くせぇって...
やいのやいのやり始めたルネを尻目に、ひたすら零戦に見入っ...
「やっぱり珍しいか」
「あぁ」
そこで少年が振り返ると、絶世が付く美貌具合に才人が驚いた
「あらまオッドアイか、珍しいね」
「お陰で女のコにモテて困ってるんだ」
「そうかい。じゃあ、触んなきゃ見てても構わないから、それ...
「サイト、戻ろう。航海長や機関士達がやたら質問攻めして、...
「その為に居て貰ってんだけど?解らないのだけ俺に持って来...
「ん〜、今まで働き過ぎだったから、それで丁度いっか」
「流石はマイロード。使い魔の身を案じて下さって、この使い...
「せめて泣いて言え」
蹴りが軽く入って、二人が行こうとするのを思わずジュリオが...
「もし、そこの貴婦人」
「何?」
振り向いた瞬間の美少年
ルイズの好みど真ん中だ
『あら、美形だわ』
さて、ルイズに取って、使い魔と別腹の美少年どっちが重要な...
「余りの美しさに僕は暫く感嘆の為に言葉を発する事が出来な...
そう言って手を取ろうとして、気が付いたら刃が霧を発して彼...
「…何の真似だい?」
「俺の仕事。一応使い魔でね。彼女守るのが仕事なんよ」
「はぁ?ちょっと手の甲にキスする位」
「やった瞬間に、お前の首は床に転がっている」
静かな威圧に、ジュリオが顔を真顔に持って行く
「サイト……」
この前の告白は本気だ
「君はそんな簡単に人を殺せるのか?」
「残念ながら殺し過ぎた。あんた一人増えた所で、罪が更に一...
殺しに慣れてしまった男の発言だ
「僕にも、貴婦人への挨拶という大義名分があるんだが?」
「やれば?命懸けで。ハルケギニアじゃ、命懸けがルールなん...
ルイズは、才人が自分が決めたルールに沿ってしか動かないの...
結局、こう言った
「サイトは、私を守る為には手段を選びません。あたしに触れ...
「へぇ、面白いな。何人殺したの?」
「150人以上よ。そして、あたしの為に、今度は万人殺すわ。貴...
流石にジュリオが呆れる
「君の使い魔は何なんだい?」
「只の悪魔よ」
去って行くルイズは、更にこう心の中で付け加えた
『そんな悪魔に魅入られたのは……私』
* * *
そして、才人達がきちんと顔合わせする為に、サロンに集めら...
「良く集まってくれた。今度の出兵前に全員顔合わせしておこ...
そう言って、作戦指令ウィンプフェンが発言する
「何で訓練中に司令が乗ってるんだ?」
才人の疑問はごく当然だが、誰も答えない
「今回の訓練は武装の速やかな装着と、整然とした離発着を行...
竜騎士達が全員敬礼し、才人はやらない
そんな才人をルイズが小突いた
「ちょっと」
「いや、俺今、軍人じゃねぇし」
「…言われて見ればそうね」
そして才人を見た途端、ウィンプフェンが逆に敬礼した
「艦長、素晴らしい船ですな。新艦が出来る迄の間、借りさせ...
「あぁ、宜しく」
そんな才人に、ジュリオが興味深そうに話しかけた
「何だい、君の船なのかい?しかも軍人じゃないのか?」
「実はそうなんだよ」
才人への発言は取っ掛かりに過ぎず、すぐに本命に身体を向け...
「それにしても、やはり君の美しさは何にも代えがたい、是非...
ジュリオが懲りずにルイズの手を取ろうとし
バギィン!
大理石で出来たテーブルが綺麗に裂けた
「……で?」
「いや……何でもないです」
才人の威嚇に、ジュリオが手を引っ込めた
「……自分の船をどう使おうと自由だがね」
「竜騎士減らすよりは良いでしょ」
「…まぁ、そうだな。見ての通りだ。ミスゼロは最重要人物であ...
ウィンプフェンがそう言い、剣閃が全く見えなかった騎士達は...
* * *
模擬弾を装着させる為に、竜騎士達が竜に話し掛けつつ、クル...
次々に指示が飛んで装着した竜騎士達が降りたエレベーターに...
才人達は一番奥なので最後だ
キャリキャリキャリ、ゴン
エレベーターが上がりきった音がし、ジュリオは信号手の合図...
信号手が旗を一気に振り上げて離陸の指示を下し、ジュリオは...
「いや、面白い船だな。一体何なんだあの男?」
空中で編隊を組んで滞空してるとどんどん離陸していって、最...
甲板上では、指示が飛びまくっている
「艦速50リーグに上げろ!」
才人が怒鳴って信号手が手旗信号で艦橋に伝えて、ぐぐんと速...
「ラッキー、コイツだ」
ブロロロロ
才人が親指を立てると信号手が前方クリアを指示し旗を前に振る
才人は風防を閉めながら零戦のブレーキを外して走り出し、艦...
才人も無誘導弾を装着して編隊の後尾に付き、そのまま演習場...
的が見え始めたら、第一と第二の隊が一斉に降下を始めて、装...
模擬弾に火が付いて目標に向かって着弾し、油がぶちまけられる
その様を見て、初の訓練参加の傭兵隊も同じ様に行っている
そして最後は才人だ
才人も射程に入ってラック三つ全て投下し、一気に火が付いて...
轟音と共に大炎上を起こす
何時もの訓練とは違う一際派手な幕に、竜騎士達が全員騎竜の...
こういう時のジェスチャーは簡単に受け入れられるらしい
ルイズも思わず驚いた
「何なの?この威力」
「油大量に撒いて火を点けただけ。火薬で点火したって所。焼...
「虐殺じゃない」
「そうだよ。戦争だろ?ルイズ」
「…貴族の戦争と全然違う」
「そうさ。俺の国は、常に殺し合いでは世界に名だたる国さ。...
「変な国」
「離れて感じる異常性。俺もそう思う」
そう言いながら、大きな弧を描いて滞空してるオストラントが...
チカチカと点滅してるのが見える
「発光信号だ。読めねぇ」
今の才人に軍用信号や航法を学ぶ暇なぞ無い
才人がそう言って渋面を浮かべると、ルイズがマニュアルを取...
航法と連絡手段たる信号マニュアルは、初心者航法士のルイズ...
手旗信号も、マニュアル片手に頑張って読むだろう
「大丈夫。あたしが読むわ。えっと、ちょっと待って、繰り返...
「了解。じゃあ、お先に下がるか」
才人が零戦の機首を巡らせて、艦尾から着陸体制に入った
その頃、オストラントでは艦橋でひたすら訓練の怒声が走って...
「報告、ミスゼロ着艦体制に入りました!」
「艦速30リーグに落とす!右舷主尾翼水平、両舷ピッチ逆進。...
「右舷主尾翼水平、両舷ピッチ逆進ようそろ」
〈風石室高度維持ようそろ〉
水平でゆったりとした弧を描く場合、外周側ピッチを増やし(増...
主舵をきるのは、回転半径を狭くする場合だ
空中静止状態は風石の消耗が一番激しいので、浮力の発生する...
風石より石炭の方がずっと安いのだ
「着艦誘導灯、今度はきちんと付けろ!」
「誘導灯点けろ!急げ!」
甲板員がバタバタ走って誘導灯の鉄板で出来た蓋をひっくり返...
夜間着陸時には絶対に必要なので、竜母にも搭載が決まってる
誘導灯のお陰で進路誘導された零戦は、相対速度40リーグで近...
降りて甲板を走り始めたのを確認すると更に指示が飛ぶ
「艦速10リーグ。逆進ブレーキ」
「逆進ブレーキようそろ」
またガクンと落ちると、エレベーターハッチに向かって信号手...
「補機始動。エレベーター降下」
〈補機始動、エレベーター降下開始〉
機関室がバルブを操作すると、ロアデッキの操縦士がレバーを...
補機の回転数をギヤで減速して繋いでる為に、トルク重視でゆ...
ガコンと最初にロックが外れてキャリキャリキャリとチェーン...
ゴゴン
階下に到着すると、ロアデッキに一体化した
才人はブレーキを解除すると声をかける
「押してくれ」
「了解」
才人含めて皆で押し、エレベーターから退くと操縦士がまた動...
「どうでしたか訓練は?」
「初めて参加したけど、派手だったよ」
「そりゃ本番が楽しみだ、期待してますぜ」
皆が明るい。ゼロ級が有れば空軍は更に強くなると皆が信じ、...
才人達が零戦をロープで固縛を行なっていると、次々に竜騎士...
「才人〜〜〜!今日の訓練一際派手だったね!」
「お〜ルネ、帰って来るの速いじゃないか」
「着艦は第一から、発艦は第三からって決めてるんだよ。第三...
「あ、成る程。傭兵に対する嫌がらせとか、そんなじゃ無いの...
「失礼な!多少は否定しないけどさ、寧ろ船室の等級は僕らが...
固縛作業をしながら思わず才人が感心する
「結構まともな軍隊なんだな。ちょっと驚いた」
「トリステインの伝統を馬鹿にしないでくれ」
「その通りよサイト」
横で才人がロープで南京結びをして絞って固縛してるのを、摩...
「じゃ、伝統とやらで南京結びやってみ?」
才人がそう言ってロープを渡すと、甲板員達がゲラゲラ笑い出...
「艦長、あんた結構意地悪だな、おい」
出来る甲板員達が、素人では出来ない事を知ってる為に、盛大...
「うぅ〜、良いわ、見てなさい!ここここんな結び位あたしに...
ルイズがそう言うので、才人が練習用にフレームのステーから...
皆が敢えて教えない
どうなるか解ってて、どんな有り様になるのか期待してるのだ
「えっとここでこうやって……」
ルイズの足元にロープの束が転がっており、ルイズが何故か立...
* * *
ジュリオ達が着艦し、ジュリオは隊長として、最後に収容された
発艦時に最初に飛び立つ為だ
「全く何だあの演習は?油を撒いて点火だけで、とんでもない...
そうブツブツ言いながら騎竜から降りると、歓声が聴こえて来た
オオオォォォ!!
「何だ?」
気になったので輪を掻き分けて行くと、あられもない姿で縄に...
「…一体何が起きたんだ?」
「トリステインの伝統技、自縄自縛だそうだ」
言ったのは才人である
「何で助けないんだい?こんな可憐な少女が、助けを求めてる...
「芸術とは鑑賞するモノだ。違うか?」
キュピンと目を光らせて、顎に手を持っていき、もう片方で肘...
同じ姿勢を取ったジュリオが、ルイズを暫く見て頷いた
「……確かに、芸術だ」
「だろう?芸術鑑賞は皆でしないとな、なぁ?」
皆してうんうん頷いて、全員の視線に晒されて、ぷるぷる震え...
「サイトのバカ〜〜〜!!!」
* * *
終了行:
ゼロ級0番艦オストラントは船籍はトリステイン、所有はゼロ...
次の1番艦から国軍所有になり、作戦行動に随伴させる様になる
既に1番艦は急ピッチで作業が行われており、慣れた作業者達...
進空したオストラントは何をしているかというと、空軍から特...
職務上、機関長と機関士が新設され、ゼロ級の心臓を携わる栄...
実際に動かすには、10人程度で済むという恐ろしい船である
その代わり、覚える内容は更に増え、皆が艦内で生活しながら...
オストラントは今はグラモン伯領にて、新型装備の受領を受け...
竜母艦としての運用訓練開始である
艦首が開いて続々と新型装備が搬入されていき、更に零戦用武...
そう、オストラントは空中空母である
最初から、零戦の運用が想定されていた
「では、離陸致しますぞ。補機始動、補給ハッチ閉め」
〈補機始動、補給ハッチ閉鎖開始〉
ゴゴゴゴン
鉄フレームが軋む音がなりながらハッチが閉まり。甲板員がロ...
〈ロック終了〉
「宜しいですぞ。では主機始動、補機閉鎖。風石稼働開始」
コルベールが着々と指示を下して、全員がばたばたと動いている
「アッパーデッキ前後柵外せ!左右柵の確認急げ!」
甲板がフルフラットの為に、皆が全力で走っている
「前後柵取り外し終了!格納入ります」
甲板員が柵を持って走ると、ハッチが開いてそこに居る人員に...
「副艦長。離発着準備完了」
様子を見てた士官が報告し、コルベールが頷いた
「では離陸ですぞ」
〈風石稼働出力最大。発進〉
重量が増えた為に、重厚に浮き上がるオストラント
「左舷プロペラ逆進、右舷プロペラ微速前進。超振地旋回」
「左舷プロペラ逆進、右舷プロペラ微速前進、ようそろ」
浮き上がりながら、その場で向きをくるりと変えるオストラント
「進路、トリステイン魔法学院」
「進路トリステイン魔法学院ようそろ」
「では、後は皆さん、存分に訓練して下さい」
「有り難うございます副艦長。指揮を引き継ぐぞ。左舷プロペ...
「左舷プロペラ微速前進ようそろ」
左舷ピッチハンドルをくるくる回して角度調整をする操舵手
操舵は三人で5個の舵輪と二種のピッチハンドルを操作し、一...
才人なら一人でやるが、設計者の長である
「前進開始後、ピッチ両舷最大」
「ウィ、前進開始後ピッチ両舷最大」
二人が同時にピッチを弄ると、機関室から声が掛かった
〈こちら機関室。抵抗が大きい。ピッチ角落としてくれ。現在...
「糞、空荷の時とは違うな。ピッチ微速戻し」
「ウィ、ピッチ微速戻し」
そんな彼らを邪魔しない様に、コルベールは艦橋から降りて行...
船舶は完全な階級式であり、艦長が一番広い部屋で、階級が下...
オストラントに於いても同様である
差別ではなく、有限なスペースを活用しなければならない為に...
オストラントはゼロ機関所属艦の為に、才人が艦長、コルベー...
彼らへの敬意の為に、訓練中に於いてもその座は固定されてお...
才人辺りは別に構わないと言ったのだが、軍人達が全員首を振...
「例え艦長が所用で不在であっても、オストラントの艦長はサ...
全員がそう言って才人に敬礼し、才人は礼を返すしか無かった
「訓練で存分に使い倒してくれ。各部品の慣らしもあっから過...
「了解致しました。艦長」
ザッと敬礼を返されて、才人は苦笑しながら礼を返したのである
* * *
オストラントに居なかった才人は、今は本部から零戦を発進さ...
エレオノールが魔法で一気にプロペラを回して才人が火を入れる
ブロロロロ
そしてすかさず才人の後ろにという訳ではなく、後ろにはルイ...
きちんとした女官ヴァリエールのお仕事、ミスゼロの参戦訓練...
「今回はタッチダウン数回と同調ブレーキ着陸にエレベーター...
「サイトこそ肝心な所でミスらないでよ」
「ほいほい、気をつけますよっと」
零戦の離陸の為に、広場を拡張してエレオノールが壁を崩して...
エレオノールがまるを作って合図すると、才人は一気に助走し...
後には、エレオノールとシエスタが残っている
「さ、メイド。仕事するわよ」
「…はい」
「新しいズボンプレゼントしたいんでしょ?ミシンでさっさと...
「そうですね。私が出来る事やれば良いだけでした」
「さてと。私も弾を作っておかないとね」
そう言って、二人は中に入って行った
* * *
才人達がルイズの航法指示で目的地付近に来ると、竜騎士隊が...
「ピュウ、壮観だねぇ。肝心のオストラントはっと?」
才人とルイズがキョロキョロと探すが見当たらない
「何だ?来てねぇの?デルフ、どうだ?」
カチッとデルフが出てくる
「ん〜。5000メイルで飛んでる奴じゃね?」
「はぁ?」
才人とルイズが上空を見ると、確かに居た
「おいおい、上手く調整出来て無いな?コルベール先生一人じ...
「わかった」
才人が零戦の機首を上げて一気に上昇していくのを見た竜騎士...
5000メイル上空じゃ無理だからだ
才人が艦尾からぶわっと姿を現すと、強風と寒さに震えた甲板...
才人が車輪を出して高度差1メイルの低空で着艦を試み、一気...
ガクンとオストラントの速度が同調して落ちる
「操舵手は仕事してんな」
丁度エレベーター付近で止まり、更にゆっくり移動してエレベ...
信号手が旗を交叉して範囲内を示して、才人はそのまま親指を...
ガクンと下がって行き艦内を入り込むと、風防を開けて二振り...
「艦長〜〜!助かりましたぁ」
「零戦格納作業入れ。そしたらエレベーター上げろ」
「ウィ。お前達、動かすぞ」
一斉に取り付いて人力で押し始めたのを背に、才人は艦橋に向...
「艦橋に行く。甲板員下げて暖房効いてる部屋に叩き込め、酒...
「うん」
才人の確かな足取りにルイズが付いて行き
船員達は安堵の溜め息を付いた
「どうなるかと思ったわ」
「おい、艦長からの命令だ。お前達全員降りて来い」
ハッチから怒鳴って、甲板員が震えながら降りて来た
「艦長なら5000メイルでも来るから耐えろって言われたから頑...
「お疲れだ。酒を飲んで暖まれだとさ。ほら、一番暖房効いて...
「話の解る艦長だぜ。暖房完備のオストラント様々だ」
正に新型艦の恩恵である
* * *
才人が艦橋に行くと、コルベールと航海長がパニックに陥って...
「どうやっても高度が下がりませんぞ!」
「あぁ、試せるのは全部試したのに」
「何してんだ?二人して?」
「才人君、やっと来てくれた。蒸気風石稼働装置の出力が下が...
才人は聞いた瞬間に指示を下した
「機関室並びに機関員。緊急訓練だ。走らない奴は後で5000メ...
〈了解〉
「今から命令する手順を、マニュアルを見ながら確実に操作し...
〈了解〉
「機関一次三次バイパス解放」
〈一次三次バイパス解放ヨシ〉
「吸排気全閉。吸気を閉めてから排気を閉める」
〈吸排気全閉。吸気を閉めてから排気を閉める。ヨシ〉
「圧力、火室燃焼報告」
〈現在一次5キロ。火室消火確認〉
「三次管風石稼働配管を探って閉鎖。確か7番送管じゃなかっ...
〈ビンゴです。7番送管閉鎖〉
「7番帰管閉鎖。閉鎖系統ゆっくりブローしろ。但し蒸気に注...
〈了解。走れ、行け〉「艦長。高度低下中。4800…4500…どんど...
「風石稼働室。手動開始。働け」
〈了解、手動開始。お前ら仕事だ〉
「各員に告ぐ。手透きの者は先程出てた甲板員以外、風石稼働...
〈こちら倉庫了解。行くぞ〉
〈7番ブロー完了。怪我人無し〉
「良くやった。操作バルブ交換しろ。きちんと同じ番手の奴が...
〈了解〉
才人の指示でどんどんと対処が進み、皆が額に汗を足らして見...
「艦長。艦内温度低下中。ボイラーの始動を」
「馬鹿かお前は?修理中にボイラーに火を入れたら、修理して...
そう言われて、ピシッと直立不動になる
「失礼しましたぁ!」
「俺は軍人じゃないからあんたは殴らん。気合いが欲しけりゃ...
「はっ!終わり次第、そうさせて頂きます」
才人の厳しさは、軍に通じるものが有るのだろう
「まだかね?才人君」
「ここは黙って待つのが仕事です」
「中々キツいな。我々が行けばすぐなのに、敢えて全てやらせ...
「解りますか?やっぱり」
ルイズはその様を見て、トラブルすら利用して訓練に使ってる...
しかも、マジものの墜落の危機対処である
〈交換……完了!〉
オオオオ
艦橋に歓声が上がるが、サイトは一人厳しい顔をしている
「交換はボルトナットだな?」
〈そうです。錬金一体型じゃ有りません〉
「ガスケットの確認をしろ。座面に挟む奴だ」
〈了解。確認……駄目だ、忘れてる〉
「やり直せ。お前が死ぬぞ」
〈ウィ。やり直し入ります〉
「成る程。初心者がやるミスを想定してたのだね?」
「そゆこと」
そしてまた待ち
〈今度こそ、完了!〉
「良し、増し締めしなきゃならないからそのまま待機しろ」
〈ウィ〉
「機関室バイパス閉鎖。加熱点火開始」
〈了解、点火開始…圧力上昇……糞、上がり辛い〉
「空気薄いから、吸気ファンが回る迄我慢だ」
〈了解〉
「両舷ピッチニュートラル」
「両舷ピッチニュートラル、ようそろ」
〈圧力5キロ。アイドリング来ました。空気流入。10キロ行け...
「7番送帰開放」
〈送帰開放ヨシ〉
〈こちら操作、漏れてます、あちちち〉
「7番送管閉鎖」
〈ウィ〉
そして、修理に走った人間に才人は伝声管越しに怒鳴った
「報告入れる暇ありゃ逃げろ馬鹿たれ!全員蒸し焼きになんぞ...
〈すいません!……良し、今度こそ〉
「次漏れたら、そこで手伝ってる連中に謝れよ」
〈はい〉
「7番開放」
〈7番開放良し〉
〈稼働室。漏れてません〉
「良し。手動停止と同時にバルブ開放だ」
〈了解。手動停止。バルブ開放……良し〉
「そこからゆっくり絞れ」
〈ゆっくり絞ります〉「高度報告」
「4500…4600…4650」「今」
〈放しました〉
「更に絞れ」
〈了解〉
「高度4600…4500。順調に下降してます」
「良し。そこで止めろ」
〈ウィ〉
「総員、修理完了だ!お疲れ!」
うわぁぁぁぁぁ
一気に歓声が上がり、皆が喜ぶ
「壊れたバルブをショップに持って来い。点検する」
〈了解です〉
「訓練に戻れ。俺はコルベール先生と原因探りに行く」
全員が敬礼したのを才人はそのまま通過し、機関室に向かった...
機関室の部品ショップで故障の原因を見て才人は溜め息をつく
「ゴミかよ」
「こんな小さなゴミ一つで、バルブが動かなくなるのかね?」
「良くある話です。慣らしを増やしましょう。空中で同じトラ...
「そうだな。しかし才人君が来てくれて助かった」
「補給して艦載量増えてたのが幸いしましたね。空荷なら、全...
そして、ズシンズシンと振動が響いて来た
「お、始まったか」
「艦長」
「何?」
呼ばれたので振り向くと、航海長が頬を腫らして立っていた
「助けて頂き、有り難うございました」
「丁度いいや。原因見ていって」
「はっ」
そう言って才人がバルブに挟まったゴミを見せる
「俺達は、こんなゴミに殺されそうになったのさ」
「この程度で!?」
「誰かが製作過程でゴミを落とすってのは良くある。気をつけ...
「はっ、確かに危機状況そのものでした」
「絶対は無いんだ。常に気をつけてくれ」
「肝に命じます」
才人の危機指導はそのままマニュアルに載り、更なるデータを...
* * *
「何だこの空船?」
傭兵部隊である第三第六竜騎士中隊
その第三竜騎士中隊長に模擬戦の結果勝ち取ったジュリオは、...
「成る程ね。コイツがあり得ざる工芸品の生産者の作品か」
今回は第一から第三が普段の演習空域からオストラントに来て...
そしてジュリオ達は順次先行した第一第二とは違い、遅めに出...
理由は着艦作業で詰まるからであり、特段疑問の余地は無いが...
竜の身体には、常に身に付けろと言われたラックが鞍と一緒に...
但、正規軍の竜騎士達には非常に好評で、何故かは良く解らな...
そして、今回どうやらその秘密を見せてくれると見え、ワクワ...
全騎が甲板に降り立つと、甲板員が怒鳴った
「もっと優しく降りろ!この傭兵ども!お前達以外にも、使う...
「竜母なんだから構わないだろ?」
ジュリオが疑問に思って言い返す
「違う!オストラントは竜母じゃねぇ!空母だ!竜騎士側が間...
ひらりと飛び降りたジュリオが疑問に思って問い掛ける
「軍艦じゃないのか?これ?」
「軍艦は建造中だ。オストラントは同型艦の0番艦。つまり制...
「要は一艦しかないから優しく扱えって事?」
「人のもん壊して、修理出来るなら構わんぞ。言っておくが、...
「そうかい、せいぜい気をつけるよ。で、竜は外に繋いでおく...
「信号手の指示に従ってくれよ。向こうで合図してんじゃねえ...
そう言って指を指してる方向を見て、ジュリオがガリガリ頭を...
「ありゃ、見落としてた。ごめんごめん」
ジュリオがそのまま歩いてアズーロが付いて行き、信号手の指...
「おい。もう一頭来てくれ。こっちだ」
良く見ると、四角線が書いてあり、その枠に収めるらしい
もう一頭が枠に収まり、信号手がジュリオに声をかけた
「あんた、騎竜に乗ってくれ。初めてだと大抵ビビるから、落...
「はぁ?」
指示に従えと言われてるので黙って乗り、すると信号手が何や...
ガコン
「きゅいぃぃぃ!?」
確かに竜がびっくりして軽く暴れてるので、ジュリオも手綱を...
「昇降装置。しかも船に乗るレベルのか!?」
キャリキャリキャリとチェーンが回る音が鳴り響いて、竜達の...
「おぉ、流石の傭兵部隊も驚いてるぞ」
「トリステインの新兵器群にかかりゃ、今までの戦いが馬鹿に...
そう言って、先行した二隊の騎士達がたむろしながら笑っている
「ほら、早く退いて上げないと収容作業の邪魔だぜ?」
「あ、そうだった」
ジュリオ達が退くとまたキャリキャリ音を立てて昇り、竜を全...
「驚いたな。なんて船なんだ」
「まだ驚くぜ?お前寒いか?」
言われて気付く
「…暖かい」
「だろ?すげぇよな。暖房完備だぜ?暖房完備。俺達に滅茶苦...
「しかも帆がないせいか大して揺れない。いや、本気で凄いよ」
ジュリオも完全に同意して頷いた
「船室はもっと暖かいんだと。も、最高だよ」
「そんなに居心地良いなら、何で君達は船室に行かないんだ?」
「そりゃ、歴戦の傭兵隊に見て欲しいモノが有るからだよ、な...
そう言って、皆が頷いた
「言っておくけど、集まった連中は全員純粋な興味だよ?君達...
その意見に、第三中隊の全員が怪訝な顔をした
「付いて来てくれよ」
そう言って手招きするので向かうと、妙な代物が鎮座していた
「これさ、何だと思う?」
その代物をバンバン叩いて案内した小太りの少年に言われ、全...
「何だこりゃ?新種の生き物か?」
そう言って、皆が確かに面白いモノを見て頭を捻っていて、そ...
「良いかい?コイツが」
ガン!
ルネの背後からしこたまに叩かれて、ルネが前のめりに倒れる
「誰だいきなり!何するんだ!」
「何するんだは此方の台詞だ馬鹿ルネが!お前には、叩くなっ...
「才人!?ごめん、つい自慢したくて」
「だったら、あんときのチャージ決めたのと、一騎撃墜の方が...
「いや、だってあれは出来すぎでさぁ」
てれてれしてるルネに、逆に傭兵含めて集まってきた
「ちょっと待ってくれ、そのチャージ話聞かせてくれよ!凄い...
特に傭兵の食い付きが良い
「チャージなんて、トリステイン騎兵の基本攻撃なんだけど?」
思わずぽかんとするルネに、傭兵隊の連中が更に食い付く
「杖持ちながらランス構えてチャージだなんて馬鹿くせぇって...
やいのやいのやり始めたルネを尻目に、ひたすら零戦に見入っ...
「やっぱり珍しいか」
「あぁ」
そこで少年が振り返ると、絶世が付く美貌具合に才人が驚いた
「あらまオッドアイか、珍しいね」
「お陰で女のコにモテて困ってるんだ」
「そうかい。じゃあ、触んなきゃ見てても構わないから、それ...
「サイト、戻ろう。航海長や機関士達がやたら質問攻めして、...
「その為に居て貰ってんだけど?解らないのだけ俺に持って来...
「ん〜、今まで働き過ぎだったから、それで丁度いっか」
「流石はマイロード。使い魔の身を案じて下さって、この使い...
「せめて泣いて言え」
蹴りが軽く入って、二人が行こうとするのを思わずジュリオが...
「もし、そこの貴婦人」
「何?」
振り向いた瞬間の美少年
ルイズの好みど真ん中だ
『あら、美形だわ』
さて、ルイズに取って、使い魔と別腹の美少年どっちが重要な...
「余りの美しさに僕は暫く感嘆の為に言葉を発する事が出来な...
そう言って手を取ろうとして、気が付いたら刃が霧を発して彼...
「…何の真似だい?」
「俺の仕事。一応使い魔でね。彼女守るのが仕事なんよ」
「はぁ?ちょっと手の甲にキスする位」
「やった瞬間に、お前の首は床に転がっている」
静かな威圧に、ジュリオが顔を真顔に持って行く
「サイト……」
この前の告白は本気だ
「君はそんな簡単に人を殺せるのか?」
「残念ながら殺し過ぎた。あんた一人増えた所で、罪が更に一...
殺しに慣れてしまった男の発言だ
「僕にも、貴婦人への挨拶という大義名分があるんだが?」
「やれば?命懸けで。ハルケギニアじゃ、命懸けがルールなん...
ルイズは、才人が自分が決めたルールに沿ってしか動かないの...
結局、こう言った
「サイトは、私を守る為には手段を選びません。あたしに触れ...
「へぇ、面白いな。何人殺したの?」
「150人以上よ。そして、あたしの為に、今度は万人殺すわ。貴...
流石にジュリオが呆れる
「君の使い魔は何なんだい?」
「只の悪魔よ」
去って行くルイズは、更にこう心の中で付け加えた
『そんな悪魔に魅入られたのは……私』
* * *
そして、才人達がきちんと顔合わせする為に、サロンに集めら...
「良く集まってくれた。今度の出兵前に全員顔合わせしておこ...
そう言って、作戦指令ウィンプフェンが発言する
「何で訓練中に司令が乗ってるんだ?」
才人の疑問はごく当然だが、誰も答えない
「今回の訓練は武装の速やかな装着と、整然とした離発着を行...
竜騎士達が全員敬礼し、才人はやらない
そんな才人をルイズが小突いた
「ちょっと」
「いや、俺今、軍人じゃねぇし」
「…言われて見ればそうね」
そして才人を見た途端、ウィンプフェンが逆に敬礼した
「艦長、素晴らしい船ですな。新艦が出来る迄の間、借りさせ...
「あぁ、宜しく」
そんな才人に、ジュリオが興味深そうに話しかけた
「何だい、君の船なのかい?しかも軍人じゃないのか?」
「実はそうなんだよ」
才人への発言は取っ掛かりに過ぎず、すぐに本命に身体を向け...
「それにしても、やはり君の美しさは何にも代えがたい、是非...
ジュリオが懲りずにルイズの手を取ろうとし
バギィン!
大理石で出来たテーブルが綺麗に裂けた
「……で?」
「いや……何でもないです」
才人の威嚇に、ジュリオが手を引っ込めた
「……自分の船をどう使おうと自由だがね」
「竜騎士減らすよりは良いでしょ」
「…まぁ、そうだな。見ての通りだ。ミスゼロは最重要人物であ...
ウィンプフェンがそう言い、剣閃が全く見えなかった騎士達は...
* * *
模擬弾を装着させる為に、竜騎士達が竜に話し掛けつつ、クル...
次々に指示が飛んで装着した竜騎士達が降りたエレベーターに...
才人達は一番奥なので最後だ
キャリキャリキャリ、ゴン
エレベーターが上がりきった音がし、ジュリオは信号手の合図...
信号手が旗を一気に振り上げて離陸の指示を下し、ジュリオは...
「いや、面白い船だな。一体何なんだあの男?」
空中で編隊を組んで滞空してるとどんどん離陸していって、最...
甲板上では、指示が飛びまくっている
「艦速50リーグに上げろ!」
才人が怒鳴って信号手が手旗信号で艦橋に伝えて、ぐぐんと速...
「ラッキー、コイツだ」
ブロロロロ
才人が親指を立てると信号手が前方クリアを指示し旗を前に振る
才人は風防を閉めながら零戦のブレーキを外して走り出し、艦...
才人も無誘導弾を装着して編隊の後尾に付き、そのまま演習場...
的が見え始めたら、第一と第二の隊が一斉に降下を始めて、装...
模擬弾に火が付いて目標に向かって着弾し、油がぶちまけられる
その様を見て、初の訓練参加の傭兵隊も同じ様に行っている
そして最後は才人だ
才人も射程に入ってラック三つ全て投下し、一気に火が付いて...
轟音と共に大炎上を起こす
何時もの訓練とは違う一際派手な幕に、竜騎士達が全員騎竜の...
こういう時のジェスチャーは簡単に受け入れられるらしい
ルイズも思わず驚いた
「何なの?この威力」
「油大量に撒いて火を点けただけ。火薬で点火したって所。焼...
「虐殺じゃない」
「そうだよ。戦争だろ?ルイズ」
「…貴族の戦争と全然違う」
「そうさ。俺の国は、常に殺し合いでは世界に名だたる国さ。...
「変な国」
「離れて感じる異常性。俺もそう思う」
そう言いながら、大きな弧を描いて滞空してるオストラントが...
チカチカと点滅してるのが見える
「発光信号だ。読めねぇ」
今の才人に軍用信号や航法を学ぶ暇なぞ無い
才人がそう言って渋面を浮かべると、ルイズがマニュアルを取...
航法と連絡手段たる信号マニュアルは、初心者航法士のルイズ...
手旗信号も、マニュアル片手に頑張って読むだろう
「大丈夫。あたしが読むわ。えっと、ちょっと待って、繰り返...
「了解。じゃあ、お先に下がるか」
才人が零戦の機首を巡らせて、艦尾から着陸体制に入った
その頃、オストラントでは艦橋でひたすら訓練の怒声が走って...
「報告、ミスゼロ着艦体制に入りました!」
「艦速30リーグに落とす!右舷主尾翼水平、両舷ピッチ逆進。...
「右舷主尾翼水平、両舷ピッチ逆進ようそろ」
〈風石室高度維持ようそろ〉
水平でゆったりとした弧を描く場合、外周側ピッチを増やし(増...
主舵をきるのは、回転半径を狭くする場合だ
空中静止状態は風石の消耗が一番激しいので、浮力の発生する...
風石より石炭の方がずっと安いのだ
「着艦誘導灯、今度はきちんと付けろ!」
「誘導灯点けろ!急げ!」
甲板員がバタバタ走って誘導灯の鉄板で出来た蓋をひっくり返...
夜間着陸時には絶対に必要なので、竜母にも搭載が決まってる
誘導灯のお陰で進路誘導された零戦は、相対速度40リーグで近...
降りて甲板を走り始めたのを確認すると更に指示が飛ぶ
「艦速10リーグ。逆進ブレーキ」
「逆進ブレーキようそろ」
またガクンと落ちると、エレベーターハッチに向かって信号手...
「補機始動。エレベーター降下」
〈補機始動、エレベーター降下開始〉
機関室がバルブを操作すると、ロアデッキの操縦士がレバーを...
補機の回転数をギヤで減速して繋いでる為に、トルク重視でゆ...
ガコンと最初にロックが外れてキャリキャリキャリとチェーン...
ゴゴン
階下に到着すると、ロアデッキに一体化した
才人はブレーキを解除すると声をかける
「押してくれ」
「了解」
才人含めて皆で押し、エレベーターから退くと操縦士がまた動...
「どうでしたか訓練は?」
「初めて参加したけど、派手だったよ」
「そりゃ本番が楽しみだ、期待してますぜ」
皆が明るい。ゼロ級が有れば空軍は更に強くなると皆が信じ、...
才人達が零戦をロープで固縛を行なっていると、次々に竜騎士...
「才人〜〜〜!今日の訓練一際派手だったね!」
「お〜ルネ、帰って来るの速いじゃないか」
「着艦は第一から、発艦は第三からって決めてるんだよ。第三...
「あ、成る程。傭兵に対する嫌がらせとか、そんなじゃ無いの...
「失礼な!多少は否定しないけどさ、寧ろ船室の等級は僕らが...
固縛作業をしながら思わず才人が感心する
「結構まともな軍隊なんだな。ちょっと驚いた」
「トリステインの伝統を馬鹿にしないでくれ」
「その通りよサイト」
横で才人がロープで南京結びをして絞って固縛してるのを、摩...
「じゃ、伝統とやらで南京結びやってみ?」
才人がそう言ってロープを渡すと、甲板員達がゲラゲラ笑い出...
「艦長、あんた結構意地悪だな、おい」
出来る甲板員達が、素人では出来ない事を知ってる為に、盛大...
「うぅ〜、良いわ、見てなさい!ここここんな結び位あたしに...
ルイズがそう言うので、才人が練習用にフレームのステーから...
皆が敢えて教えない
どうなるか解ってて、どんな有り様になるのか期待してるのだ
「えっとここでこうやって……」
ルイズの足元にロープの束が転がっており、ルイズが何故か立...
* * *
ジュリオ達が着艦し、ジュリオは隊長として、最後に収容された
発艦時に最初に飛び立つ為だ
「全く何だあの演習は?油を撒いて点火だけで、とんでもない...
そうブツブツ言いながら騎竜から降りると、歓声が聴こえて来た
オオオォォォ!!
「何だ?」
気になったので輪を掻き分けて行くと、あられもない姿で縄に...
「…一体何が起きたんだ?」
「トリステインの伝統技、自縄自縛だそうだ」
言ったのは才人である
「何で助けないんだい?こんな可憐な少女が、助けを求めてる...
「芸術とは鑑賞するモノだ。違うか?」
キュピンと目を光らせて、顎に手を持っていき、もう片方で肘...
同じ姿勢を取ったジュリオが、ルイズを暫く見て頷いた
「……確かに、芸術だ」
「だろう?芸術鑑賞は皆でしないとな、なぁ?」
皆してうんうん頷いて、全員の視線に晒されて、ぷるぷる震え...
「サイトのバカ〜〜〜!!!」
* * *
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