ゼロの使い魔保管庫
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〈艦長、起きて下さい。艦長〉
伝声管の声で才人がぱちりと目を醒まし、ルイズの素またで飛...
「おはよう。訓練開始迄時間有るだろ?どうした?」
〈朝の定期点検で、し尿タンクの点検者が、そろそろ満タンだ...
「やっとか。一般廃水の方は?」
〈まだ大丈夫だそうです〉
「了解した、副艦長にも伝えて、トイレを点検中使用禁止にし...
〈ウィ〉
そう言って、才人はルイズに声をかけて、揺り起こした
「ルイズ、ルイズ」
「……むに」
「ルイズ、起きてルイズ」
「…サイトで星になるのぉ」
「…駄目だこりゃ」
才人はそう言って、身体を起こし、手早く準備を整えるとトイ...
* * *
才人が8番デッキに降りると、主だった者達が集合しており、...
「わり、俺が一番最後か」
「お待ちしておりました。では、タンクを開きます。作業カカ...
「ウィ」
そう言って作業員達がトイレの床を外すと、タンクが見えたの...
そして中からは一切匂いが出て来なかった
「何故匂いが……?」皆が不思議がる中、才人とコルベールがニ...
「実験成功だな、才人君」
「いや、全く。お前達、喜べ。中に純硝石と燐が大量に転がっ...
その言葉に、皆が才人を睨んだ
「は?確かに肥料から硝石は取るが。そんな馬鹿な。こんなに...
「論より証拠。回収用に手動サイフォンポンプ作って掃除用具...
「はい」
そう言って作業員がやり始め、ポンプをシュコシュコ作動させ...
「……!」
余りの驚きに全員目を見張る
「ま、ゼロ機関にかかればこんなもんだ。お前達が全員硝石生...
「才人君の知識と、我々の魔法の複合効果ですな。正にゼロ機...
コルベールの説明に皆が頷く
「あれは川から取った川砂利で、硝石の元になる物質を作る、...
「更に下には簀が敷かれていて、そこからほら、そこの小さい...
全員がその説明に熱心に聞き入れる
「それで?」
「後はこれ見て下さい、水に浮いてるのは草木灰ですね。これ...
全員が熱心に頷いている
「後は浄化と作用を促す錬金を掛けておけばほらこの通り。草...
「おおぉ!?」
コルベールと幹部達が驚き、才人も苦笑する
「そいや、食い物に硫黄も混じってるもんな」「…てな事になる...
才人の言にコルベールが締め、全員がうんうん頷いている
「他にコツは?」
「水温の管理と新鮮な空気の流入だ。タンクは換気システムに...
「はい。20℃から30℃の間で推移させてます」
「じゃあ、命令だ。硝石の回収作業と艦橋作業用水タンクに水...
「ウィ!作業入ります!」
バババ
全員が一斉に敬礼し作業に入ろうとした所、配管からチョロチ...
「………あ〜、やった奴、吊るして良いぞ。探せ」
「………探せ〜〜〜!!!」
才人の指示に、怒り浸透の軍人達が一気に駆け上がり、トイレ...
艦長室で、丁度トイレから出てきたルイズである
身繕いしてたので見られはしなかったが、血相を変えた軍人達...
* * *
「……ねぇ、サイト」
「…何だ?」
「……ご主人様に、こんな事しても良いと思ってるの?」
「強風吹き荒ぶ寒いアッパーデッキがご所望と申しましたか?...
「…4番デッキで良いです」
そう、ルイズはきちんとぶらんぶらんと、操りを駆使されて縄...
艦長命令は絶対なのだ
作業の邪魔したんだから仕方ないとはいえ、こんなの女のコの...
「女のコだもん!貴族だもん!外でなんか出来ないもん!」
ルイズの絶叫は、まぁ致し方ないだろう
「だから?貴族なら作業員に小便引っ掛けて良いんだな?ルイ...
「使い魔なんだから、ご主人様の言う事聞きなさぁい!」
その言葉で、才人が伝声管に寄ると指示を下した
「ちょっと、反省が足らねぇみたいだわ。急機動訓練開始。ぶ...
〈ウィ。総員に次ぐ。急機動開始する。掴まれ〉
その言葉に、ルイズはさぁと青ざめた
「サイト、冗談よね?」
「何が?」
才人はそう言って、ガクンと船が急機動を開始した
「きゃあぁぁぁぁぁ!?」
ぶらんぶらん揺られたルイズに、丸まって休んでた竜達が興味...
「いいやぁぁぁぁぁ!?」
「反省の言葉はまだかな〜〜?」
「やめてぇぇぇ〜〜!!」
更にぶん回されて、ルイズ式振り子になってしまっている
ぐぐんと機動転換の度に振られるルイズ
「サイトのバカァァァァ!」
才人はその様を見て、更に指示を下した
「駄目だな。もうちょい激しくいってくれ」〈ウィ〉
「きゃあぁぁぁぁぁ」
更に激しく機動され、とうとうルイズは反省の弁を洩らした
「……も、しません。だから許して下さい」
「俺じゃ無くて、作業員に謝れ。俺は艦長として、全員に責任...
才人はそう言って突き放す
「……はい。もうしません。艦内の指示はきちんと守ります。だ...
見てた作業員達と竜騎士達にぷらんぷらんしながらぺこりと頭...
「許すか?」
才人が聞くと、苦笑して作業員達が頷いた
まさか、女相手でも容赦しないとは思わなかったのだ
最も、男ならアッパーデッキに吊るされているだろう事は、想...
「訓練止め。通常航行。全員朝飯行くぞ」
〈ウィ。訓練止め。通常航行入ります〉
そして、才人が吊るした縄の固縛を解いてルイズを下ろすと抱...
ぐてぇとしたルイズは、されるがままだ
「酷いよぅ」
「艦内ルールは守れ。皆が楽に生活する為だ」
「サイトのばかぁ。だったら、作業中の簡易トイレ作ってよぅ」
ルイズの苦情に、才人ははっとした
「解った、作る。だけど、今回はルイズの落ち度だ。良いな」
「…うん」
「強情っぱりが、頑張り過ぎだ。朝飯行くか」
そう言ってルイズを抱っこし、そのまま食堂に向けて歩いて行...
「主人にお仕置きする使い魔なんて、初めて見たよ」
「は?俺は、誰だろうと等しいぞ。今ここにいる、100人の命預...
「…おっかないねぇ。でも、立派だと思うよ。まるで貴族みたい...
「はぁ、冗談だろ?おりゃ艦長の仕事してるだけだぜ?」
才人はそう言って、歩いて行くと、皆が一緒に歩いて行った。...
* * *
同じ頃、王宮
「ねぇねぇ、マザリーニ」
「何でしょう?陛下」
朝食の席で、アンリエッタがそわそわしながマザリーニに話し...
「オストラントに行っても宜しくて?」
「政務はどうなさるのです?」
「マザリーニが頑張って下さい。それに、やっと成果をこの目...
マザリーニはその言葉に、暫く黙って頷いた
「確かに、検分は必要ですな。ですが既に軍側から報告が届い...
「あの、居住性が相当改善されてましたよね?私、実際に上空...
そう言って、そわそわしている
「む、確かに行って試すのが一番ですな。何か色々と装備を受...
「貴方も解ってる筈です、マザリーニ!ネフテスと直接交易の...
「ネフテスと上手く結んで、平和的な聖地巡礼」
マザリーニがそう言って言葉を繋ぎ、アンリエッタが頷いた
「そうです!私達が、トリステインが、安全安心な旅と輸送を...
アンリエッタの痛切な思いに、マザリーニは頷いた
「その未来、すぐそこですな。良いでしょう、陛下、存分に御...
「はい」
「彼を引き込む事に付いては、私ももう何も言いませぬ。存分...
「はい!」
「後は、艦内ルールに従って頂きましょう。新型のからくりな...
「了解しました。二つじゃないですか」
そう言ってアンリエッタは笑う
「おっと、そうでしたな。では座乗してる士官達の使い魔に指...
アンリエッタはにこりと笑って頷いた
「はい、査定にスタッフを三人程連れて行きますが宜しくて?」
「構いません。護衛含めて陛下含めて5名程、って所ですね?」
「はい、では食事が終わり次第準備しますわ。アニエス!」
その声に、外で控えて居たアニエスが入って来た
「はっ」
「オストラントに向かいます。貴女も用意なさい。ゼロ機関の...
「御意」
「マザリーニ、スタッフの選抜は任せます」
「御意」
二人に命令を下したアンリエッタは、ルンルン気分で部屋に戻...
「サイト殿と艦長室で二人っきり〜〜。調度品を贅沢にしとい...
……無断で改装したの、やっぱりアンタか
* * *
その日の離発着訓練を全員終わらせて収容作業を終わらせたオ...
アニエスが、窓から発行信号を発してやり取りしている
「おっと、信号手の着陸指示に従えか。どこでもって訳には行...
既に夕刻を過ぎており、夕焼けに染まる空に着艦誘導灯を点灯...
「では竜に指示、宜しくお願い致しますわ」
「了解」
アンリエッタがスタッフに指示をすると、スタッフが竜籠の中...
非常に小さい馬車レベルの竜籠だ
牽引竜も一頭で済むが、二頭で安定させている
ランデブーポイントの指示を送って、きちんと回答が来たのが...
それにあわせてスタッフを選抜して調査資料用に紙を大量に用...
「新型艦ですか、ワクワクしますな」
「艦長命令は絶対だそうです。私でも逆らえません。皆さんお...
「了解です」
そう言って緊張しているスタッフに、アニエスが指示を下した
「そのまま降下。向こうで合わせるそうだ」
「は?何と?」
「良いから従え。文句言ってられる程余裕無いぞ?何せ空中着...
「り、了解」
オストラントが竜籠に同調しながら竜籠が降りていき、信号手...
「あの艦中央の四角内に着陸しろ」
窓を見て真剣にしてるアニエスに、御者が頷いた
そうして同調した竜籠がふわりと着陸すると、信号手が両旗を...
そして牽引索が外され、アンリエッタ達が降りようとしたが、...
「待ってくれ、外は寒い。陛下達は4番デッキに降ろすから、...
「…何だか知らないが承知した」
アニエスが頷いて待機姿勢を皆に示すと、腰を浮かせた全員が...
信号手が片手を上げて旗を左右に振りながらもう片方で下方に...
するとガコンとなって、竜籠事下がっていく
キャリキャリキャリ
「昇降機!?」
全員が驚いたのだ
そのまま降りて行くと、ガコンとなって固定される
着いた様だ
竜籠を士官の一人が開いて、アニエスが先に降り、更にスタッ...
士官達が敬礼する中、正面に二人居る
輝かしい頭をした中年の貴族と、ハルケギニアの衣装から外れ...
「ようこそ、オストラントへ。査定は甘くね」
才人がそう言ってウィンクすると、アンリエッタは微笑みなが...
「あら、ならたっぷり歓待しなさいな。甘くして差し上げてよ...
そう言って、皆がその様を笑って歓迎する
「ハッハッハ、一本取られましたな。艦長」
「いや、全く。悪いけど姫様エスコートしてる暇無いや。ルイ...
控えてたルイズが頷いて、彼女らを案内し始めた
「良し、お前ら仕事だ。8番デッキの糞寒い所で竜籠移動させ...
「ウィ」
「昇降機下げ、やれ」
「ウィ」
操縦士が操作してガコンとまた下がって行く様を見て、アンリ...
「凄いからくりですのね」
「サイトが作ったからくりですもん。当然です」
すかさず、スタッフがもう書き始めた
「これは、素晴らしい。魔法無しで、重量運搬自在では有りま...
「今は貴賓室に向かいます。彼らの指示に従うのがルールです...
「はっ」
ルイズの案内で、全員貴賓室に向かって行った
一方、才人は率先して動いている
「急げ!竜の収容が待ってる!レビテーションで一気に動かす...
メイジの一人がその言葉に頷いて竜籠をちょろっと浮かすと、...
「エレベーター退きました!」
「良し、メイジと一緒に上げろ。他の連中は固縛開始」
「ウィ」
才人がローブをぶん投げて、皆でフレームにかけ出した
「俺は歓待せにゃならん。悪いが後は頼む」
「了解、では行って、陛下のご機嫌取り頑張って下さい」
「あぁ」
そう言って、カンカンカンと階段を才人は上がって行った
* * *
アンリエッタ達は案内された貴賓室で、驚いている
「現在高度はいくつですか?」
「2000メイルだったと思います」
ルイズの説明で竜籠内で寒さに震えてた5人が、暖かい室内に...
「使って無かったので暖房は閉めてたのですが、陛下がお越し...
「この高度で完動ですか。素晴らしい」
天井ファンがゆっくり回って部屋の中の空気が対流する中、ア...
「本当に素敵な船ですのね」
アンリエッタの言にアニエス達が頷いた
「全くです。こんなに快適な空の旅等、あり得ない」
「5000メイルで暖房効きますよ。もう試しました」
全員が驚いてルイズに振り向いた
コンコン
その時にノックの音が響いたのでルイズが扉を開けた
ガチャ
才人が入って来る
「いや、艦長の癖に自分自身で働かないと駄目な性分で、申し...
「いえ」
アンリエッタの答えに、才人は立ったまま艦長として伝え出した
「査定として艦内を歩き周りたいのは理解出来ますが、現在訓...
「はい」
「一つは機関室。残念ながら、貴方方を招いて説明出来る余裕...
「解りました」
アンリエッタは頷く
「続いて作戦司令部。一番デッキ中央に位置しますが、軍令部...
「解りました」
「後は立ち入る場合は作業員達の案内に従って下さい。絶対に...
「はい」
「では査定開始の前に、皆さん食事にしましょう。残念ながら...
「解りました」
「尚、夕食後は食堂はバーになってます。バーにも、きちんと...
必ず顔を出せとの仰せだ
スタッフ達が頷いた
「姫様達で女性三人になったので、別風呂沸かすか、艦長室の...
アンリエッタは即答した
「水が有限なのでしょう?ならば艦長室で。三人だけですしね」
「了解。では皆さん、司厨達が腕によりを掛けてます。是非と...
その言葉に、全員荷物を置いて立ち上がった
* * *
才人とコルベール、ルイズが相席し、王政府達と会食を共にする
司厨の一人が給仕を買って出ており
アンリエッタは特に不自由を感じない
「素晴らしい空の旅です。まるで地上にいるみたい」
「設計の都合上、窓側に用意出来なかったんだよなぁ」
そう言って才人がワインを飲んでいる
「仕方ないでしょう。客船仕様なら、そう言ったモノも考慮に...
「勿論。但しあんまりでかくするのも何だから、上部構造を軽...
「充分ですわ。料理も素晴らしいですし」
アンリエッタが素直に褒め、アニエスは無心に食べている
「司厨達を褒めて下さい。やっぱり、やり手ですよ」
そう言って才人が褒めるとコルベールやルイズも頷いた
「ハルケギニア初の艦に、負けてはなりませんからね」
そう言って給仕の司厨が胸を張ると、皆が笑って会食を楽しんだ
全員の食事が終わると、早速アンリエッタが言い出す
「では、休憩を挟んで、各部屋に戻って査定を開始して下さい...
その言葉にスタッフが頷いたので、才人が指示を下す
「スタッフ全員に案内を一人ずつ付けて上げて。慣れりゃ迷わ...
「ウィ。艦橋に伝えます」
「スタッフさん達、案内が来るまで部屋に待機宜しく。試験兼...
「了解しました」
素直に頷いて、案内の元に退出していくスタッフ達
「さて我々は、艦長並びに副艦長だな」
アニエスがそう言って、アンリエッタがにこりと頷いた
* * *
才人達と共に、副艦長室に入る
アンリエッタは艦長室かと期待したのだが、拍子抜けした
「あの、何故副艦長室なのでしょう?」
「今はルイズがお湯を沸かしてます。それにゼロ機関の機密は...
そう言って、才人はルイズを外した理由を説明する
つまり、悩み事とは完全に無縁の、冷徹な話と云うわけだ
アンリエッタは頷いて、周囲にサイレンスを被せた
「これで宜しくて?」
「あぁ、じゃあ、アニエスさん。先ずは軍の補給目録に目を通...
そう言ってアニエスに渡して、アニエスは目を通し始め、新装...
「空飛ぶ蛇君?対空誘導弾並びに無誘導弾?」
「発射口は倉庫から片舷一層4基、一基10発が発射口にセット...
二人が息を飲む
「既に8番デッキには装填済みだ。4番デッキはとある都合上...
「次に、現在傭兵が搭乗しており、ロマリアの神官が嗅ぎ回っ...
アニエスが目を鋭くし
「ロマリアは、もうこんな所に迄。嗅覚は本当に鋭いですね」
アンリエッタはそう言って、溜め息をつく
「で、傭兵は才人君暗殺依頼を請け負っている可能性は常に否...
「了解しました。では後は何かございまして?」
その声に、才人は念を押した
「きちんとルール守ってくんないと、例え二人でも吊るすよ?...
才人がそう言ってにやりとすると、アンリエッタは笑い出す
「くすくすくすくす。本当におっかない艦長様ですわ。聞きま...
アニエスが笑って応じる
「凄いな才人。女王陛下を吊るしたら大惨事になるぞ?」
「さあね」
才人は肩を竦めた
「今後の展望はどうなさいますの?」
アンリエッタが聞くと才人が答えた
「ま、補機を主機にした、50メイル級空船の生産メインかな?...
二人はふむふむと頷いている
「他には?」
「空船のメリットはスピード。こいつを上手く使えば、恐らく...
「凄いですわね」
アンリエッタが頷いて、アニエスが疑問を投げ掛ける
「それは構わないのだが、そんな事したら輸送に携わる人間が...
アニエスの問いに、更に才人は答える
「鉄道という新交通手段を造っても良い。多分コイツなら、馬...
そう言って、才人は宙をさしてくるくる指を回す
「だから全部、ゼロ級の乗組員にしちまえばいい。輸送に違い...
「あ、成る程」
アニエスが膝を叩いて頷く
「問題は、軍事的強奪です」
アンリエッタが懸念を表明すると、才人は肩を竦めた
「実はゼロ級は機関、ボイラー共に、一級と二級がある」
その言葉にアンリエッタ達が目を見張る
「オストラントは一級エンジンを搭載してる。熱損失が非常に...
才人はそう言って、水を飲み、更に喋る
「商船級は全てカスタマイズ無しか必要最小限の二級船。圧力...
「それってつまり?」
アンリエッタが聞くと、才人が答えた
「トリステイン軍に卸すのは一級。つまり、性能差が最初から...
そう言って、才人は締めた
「……そこまで、トリステインの為を思ってくれてたのか」
アニエスは思わず唸る
「出資者に有利になる様にするのは、開発者の義務さ」
才人の言葉に、コルベールも頷いた
「で、次、アニエスさんには既に見せたけど、コイツを見てく...
才人がデルフから外してごとりと03式銃と弾を置く
「詳しいのははしょるけど、大体砲弾径8.6サント位で既存12イ...
「出来るのか?」
「あぁ、試験装備として、既に設計は終わっている。まぁ、コ...
アンリエッタが息を飲む
「つまり、既存大砲に比べれば、遥かに軽くて強い、風石消耗...
「まぁね。ゼロ級の機動と組み合わせれば、竜騎士に対する対...
ごくりと息を飲むアンリエッタ
「更にトドメだ。最終的に竜の羽衣をハルケギニア仕様に設計...
「……は?」
アンリエッタが思わず固まり、更にアニエスが驚愕に暫く言葉...
「嘘………だろ?」
「マジ。先ずディーゼルエンジンを製作。そして機銃をコピー...
「ま、戦闘機は現時点じゃ完全に妄想だ。更に5年から10年掛...
才人は、とりあえずの構想を全て話した
「貴方は、何処まで行くつもりなのです?」
「人を殺しまくって、家に帰る事……かな?もう、他国になんざ...
才人が聞くとアンリエッタが頷いた
「えぇ」
「一応、ここまではぶちまけた。でも、今度の出兵で死んだら...
才人の問いに、コルベールが答えた
「才人君が居ないのでは、東方に行く価値が無くなる。せっか...
そう言って、コルベールは匙を投げた
もう結果を出したので、夢の続きが見れないなら、躊躇は無い...
アンリエッタは困った様に頷いた
「何から何まで頼ってしまい、本当に申し訳ありません」
「いんや、これだけやっても、駄目な時は駄目だからね。そん...
才人はそう締めて、終わりを告げた
才人のとことん非情で、戦略と政略を絡めつつ、しかも自身を...
アンリエッタがサイレンスを解くと、ルイズがずっとノックし...
「姫様、お風呂沸きましたよ?機密話済みましたか?」
コンコンコンコン叩いてる
「あら、じゃあ頂きましょう。艦長に拘束権限を行使します。...
「了解です」
そう言って才人が立ち上がり、コルベールに挨拶して才人は部...
「じゃ、コルベール先生。バーでも行って寛いでて下さい。後...
「承知した。才人君」
* * *
コルベールを除いた才人達が艦長室に入ると、ソファーに全員...
「ルイズ、アニエス。先に入りなさい。それとルイズ、申し訳...
「私、姫様の女官ですが?」
「私がきちんと貴女の現在の評価をした上での話です」
つまり、まだ早いから引っ込めと言われてるのだ
「既に私に付加された艦長の拘束権限は発動しました。艦長の...
そう言ってルイズを切り捨て、ルイズはムッとする
「姫様なら、トイレ我慢出来るんですね?」
「船の中なら、一時的に貯めるのなんか有るじゃないですか。...
アンリエッタがグラスを指して、ルイズは絶句する
「指示に従うとはそう言う事です。船は地上とは違うのですよ...
「…はい」
ルイズは神妙にする
この船はあらゆる部分で実験が行われてる実験練習艦なのだ
トイレ一つとっても、ルイズの預かり知らぬ実験をしてるので...
「ルイズ、貴女が思ってる事は私にも解ります。自分の使い魔...
「…はい」
アンリエッタとはお互いに対面にソファーに座ってルイズを諭...
「男女の仲でぎゃあぎゃあ騒ぐのも構いませんが、もう少し余...
ルイズがビクッとする
「黙秘します」
「なら、その件に付いてはお互い様ですわね」
アンリエッタにそう言われ、ルイズはぷるぷる震える
「さっきから、そっちの話ばかりじゃないですか!」
「だって貴女がそう望んでるのですもの。私はね、早く貴女と...
そう言って、アンリエッタは本当にルイズの前に杖を置く
メイジとしては、非情に重い宣言と行動、ルイズにも痛い位に...
「……姫様」
「才人殿も私も、まだルイズには血生臭い話は耐えられないと...
「はい」
良く解るから、素直にルイズは頷いた
「貴女はやらなきゃならないとして、人を大量に殺せて?」
「出来ません。以前失敗しました」
ルイズはそう、素直に報告する
「才人殿はやります。貴女の為に、私の為に、トリステインの...
「やればやる程、封建貴族に嫌われ、平民達から距離を置かれ...
「……」
ルイズは黙ってしまう
「…答えなさい、ルイズ」
「…ご命令とあらば」
「才人殿は命令せずともやってますよ?貴女、きちんと労って...
そこで、ルイズは哀しくなってしまった
「労いたい!いつも失敗する!いつも邪魔が入る!何であたし...
「それがサイト殿の魅力だからです。貴女の父、ヴァリエール...
そこでルイズは固まった
「お父さまとサイトが一緒?」
「そうよ。だから私は、ヴァリエール公爵とゼロ機関を敵対さ...
はぁと、溜め息を付いたアンリエッタ
「私はね、確かにサイト殿に惹かれています。それに付いては...
ルイズは、アンリエッタの悲痛な表情を見て理解してしまった
ルイズは何時でも泣ける
でも、姫さまは泣けない
泣ける場所は、自分の使い魔の胸なのだ
「……拘束時間は何時までですか?」
「朝迄、少し、一人の女のコに戻りたいのです」
「明日には戻りますね?」
「えぇ、お借りしても宜しくて?」
「許したく無いけど、我慢します。でも一つだけ」
「あら、何かしら?」
「サイトは私のモノよ。もう姉さま達にも、はっきり言った。...
「ルイズ……」
「全部許して私もその一人になるのが一番楽で皆幸せになれる...
とうとうルイズは泣き出してしまい、才人が肩を抱くと素直に...
「サイト殿。片方ではなく、両方取って下さいな。ハルケギニ...
アンリエッタがそう言って、才人はポリポリと頬をかくと、ア...
「じゃないと休暇中の酒池肉林、ルイズにばらしますわ」
さぁぁと真っ青になる才人
「……鋭意努力します」
「では、努力していただきましょう」
アンリエッタはうって変わってニコニコとパンパン手を叩いて...
「さ、ルイズ。さっさとお風呂入って消えた消えた。あ、アニ...
「御意。さ、ルイズ、風呂に入って来い」
すんすんして首を振るルイズに、仕方なくアニエスは耳に囁いた
「陛下と艦長。最高機密を握る二人が、二人きりで密談したら...
ルイズはハッとして振り返って、アンリエッタを見た
「姫さま……非っ常に悪趣味。最悪です」
「あら、お褒めに預かり光栄ですわ」
アンリエッタは、にっこり笑って優雅に礼をした
* * *
終了行:
〈艦長、起きて下さい。艦長〉
伝声管の声で才人がぱちりと目を醒まし、ルイズの素またで飛...
「おはよう。訓練開始迄時間有るだろ?どうした?」
〈朝の定期点検で、し尿タンクの点検者が、そろそろ満タンだ...
「やっとか。一般廃水の方は?」
〈まだ大丈夫だそうです〉
「了解した、副艦長にも伝えて、トイレを点検中使用禁止にし...
〈ウィ〉
そう言って、才人はルイズに声をかけて、揺り起こした
「ルイズ、ルイズ」
「……むに」
「ルイズ、起きてルイズ」
「…サイトで星になるのぉ」
「…駄目だこりゃ」
才人はそう言って、身体を起こし、手早く準備を整えるとトイ...
* * *
才人が8番デッキに降りると、主だった者達が集合しており、...
「わり、俺が一番最後か」
「お待ちしておりました。では、タンクを開きます。作業カカ...
「ウィ」
そう言って作業員達がトイレの床を外すと、タンクが見えたの...
そして中からは一切匂いが出て来なかった
「何故匂いが……?」皆が不思議がる中、才人とコルベールがニ...
「実験成功だな、才人君」
「いや、全く。お前達、喜べ。中に純硝石と燐が大量に転がっ...
その言葉に、皆が才人を睨んだ
「は?確かに肥料から硝石は取るが。そんな馬鹿な。こんなに...
「論より証拠。回収用に手動サイフォンポンプ作って掃除用具...
「はい」
そう言って作業員がやり始め、ポンプをシュコシュコ作動させ...
「……!」
余りの驚きに全員目を見張る
「ま、ゼロ機関にかかればこんなもんだ。お前達が全員硝石生...
「才人君の知識と、我々の魔法の複合効果ですな。正にゼロ機...
コルベールの説明に皆が頷く
「あれは川から取った川砂利で、硝石の元になる物質を作る、...
「更に下には簀が敷かれていて、そこからほら、そこの小さい...
全員がその説明に熱心に聞き入れる
「それで?」
「後はこれ見て下さい、水に浮いてるのは草木灰ですね。これ...
全員が熱心に頷いている
「後は浄化と作用を促す錬金を掛けておけばほらこの通り。草...
「おおぉ!?」
コルベールと幹部達が驚き、才人も苦笑する
「そいや、食い物に硫黄も混じってるもんな」「…てな事になる...
才人の言にコルベールが締め、全員がうんうん頷いている
「他にコツは?」
「水温の管理と新鮮な空気の流入だ。タンクは換気システムに...
「はい。20℃から30℃の間で推移させてます」
「じゃあ、命令だ。硝石の回収作業と艦橋作業用水タンクに水...
「ウィ!作業入ります!」
バババ
全員が一斉に敬礼し作業に入ろうとした所、配管からチョロチ...
「………あ〜、やった奴、吊るして良いぞ。探せ」
「………探せ〜〜〜!!!」
才人の指示に、怒り浸透の軍人達が一気に駆け上がり、トイレ...
艦長室で、丁度トイレから出てきたルイズである
身繕いしてたので見られはしなかったが、血相を変えた軍人達...
* * *
「……ねぇ、サイト」
「…何だ?」
「……ご主人様に、こんな事しても良いと思ってるの?」
「強風吹き荒ぶ寒いアッパーデッキがご所望と申しましたか?...
「…4番デッキで良いです」
そう、ルイズはきちんとぶらんぶらんと、操りを駆使されて縄...
艦長命令は絶対なのだ
作業の邪魔したんだから仕方ないとはいえ、こんなの女のコの...
「女のコだもん!貴族だもん!外でなんか出来ないもん!」
ルイズの絶叫は、まぁ致し方ないだろう
「だから?貴族なら作業員に小便引っ掛けて良いんだな?ルイ...
「使い魔なんだから、ご主人様の言う事聞きなさぁい!」
その言葉で、才人が伝声管に寄ると指示を下した
「ちょっと、反省が足らねぇみたいだわ。急機動訓練開始。ぶ...
〈ウィ。総員に次ぐ。急機動開始する。掴まれ〉
その言葉に、ルイズはさぁと青ざめた
「サイト、冗談よね?」
「何が?」
才人はそう言って、ガクンと船が急機動を開始した
「きゃあぁぁぁぁぁ!?」
ぶらんぶらん揺られたルイズに、丸まって休んでた竜達が興味...
「いいやぁぁぁぁぁ!?」
「反省の言葉はまだかな〜〜?」
「やめてぇぇぇ〜〜!!」
更にぶん回されて、ルイズ式振り子になってしまっている
ぐぐんと機動転換の度に振られるルイズ
「サイトのバカァァァァ!」
才人はその様を見て、更に指示を下した
「駄目だな。もうちょい激しくいってくれ」〈ウィ〉
「きゃあぁぁぁぁぁ」
更に激しく機動され、とうとうルイズは反省の弁を洩らした
「……も、しません。だから許して下さい」
「俺じゃ無くて、作業員に謝れ。俺は艦長として、全員に責任...
才人はそう言って突き放す
「……はい。もうしません。艦内の指示はきちんと守ります。だ...
見てた作業員達と竜騎士達にぷらんぷらんしながらぺこりと頭...
「許すか?」
才人が聞くと、苦笑して作業員達が頷いた
まさか、女相手でも容赦しないとは思わなかったのだ
最も、男ならアッパーデッキに吊るされているだろう事は、想...
「訓練止め。通常航行。全員朝飯行くぞ」
〈ウィ。訓練止め。通常航行入ります〉
そして、才人が吊るした縄の固縛を解いてルイズを下ろすと抱...
ぐてぇとしたルイズは、されるがままだ
「酷いよぅ」
「艦内ルールは守れ。皆が楽に生活する為だ」
「サイトのばかぁ。だったら、作業中の簡易トイレ作ってよぅ」
ルイズの苦情に、才人ははっとした
「解った、作る。だけど、今回はルイズの落ち度だ。良いな」
「…うん」
「強情っぱりが、頑張り過ぎだ。朝飯行くか」
そう言ってルイズを抱っこし、そのまま食堂に向けて歩いて行...
「主人にお仕置きする使い魔なんて、初めて見たよ」
「は?俺は、誰だろうと等しいぞ。今ここにいる、100人の命預...
「…おっかないねぇ。でも、立派だと思うよ。まるで貴族みたい...
「はぁ、冗談だろ?おりゃ艦長の仕事してるだけだぜ?」
才人はそう言って、歩いて行くと、皆が一緒に歩いて行った。...
* * *
同じ頃、王宮
「ねぇねぇ、マザリーニ」
「何でしょう?陛下」
朝食の席で、アンリエッタがそわそわしながマザリーニに話し...
「オストラントに行っても宜しくて?」
「政務はどうなさるのです?」
「マザリーニが頑張って下さい。それに、やっと成果をこの目...
マザリーニはその言葉に、暫く黙って頷いた
「確かに、検分は必要ですな。ですが既に軍側から報告が届い...
「あの、居住性が相当改善されてましたよね?私、実際に上空...
そう言って、そわそわしている
「む、確かに行って試すのが一番ですな。何か色々と装備を受...
「貴方も解ってる筈です、マザリーニ!ネフテスと直接交易の...
「ネフテスと上手く結んで、平和的な聖地巡礼」
マザリーニがそう言って言葉を繋ぎ、アンリエッタが頷いた
「そうです!私達が、トリステインが、安全安心な旅と輸送を...
アンリエッタの痛切な思いに、マザリーニは頷いた
「その未来、すぐそこですな。良いでしょう、陛下、存分に御...
「はい」
「彼を引き込む事に付いては、私ももう何も言いませぬ。存分...
「はい!」
「後は、艦内ルールに従って頂きましょう。新型のからくりな...
「了解しました。二つじゃないですか」
そう言ってアンリエッタは笑う
「おっと、そうでしたな。では座乗してる士官達の使い魔に指...
アンリエッタはにこりと笑って頷いた
「はい、査定にスタッフを三人程連れて行きますが宜しくて?」
「構いません。護衛含めて陛下含めて5名程、って所ですね?」
「はい、では食事が終わり次第準備しますわ。アニエス!」
その声に、外で控えて居たアニエスが入って来た
「はっ」
「オストラントに向かいます。貴女も用意なさい。ゼロ機関の...
「御意」
「マザリーニ、スタッフの選抜は任せます」
「御意」
二人に命令を下したアンリエッタは、ルンルン気分で部屋に戻...
「サイト殿と艦長室で二人っきり〜〜。調度品を贅沢にしとい...
……無断で改装したの、やっぱりアンタか
* * *
その日の離発着訓練を全員終わらせて収容作業を終わらせたオ...
アニエスが、窓から発行信号を発してやり取りしている
「おっと、信号手の着陸指示に従えか。どこでもって訳には行...
既に夕刻を過ぎており、夕焼けに染まる空に着艦誘導灯を点灯...
「では竜に指示、宜しくお願い致しますわ」
「了解」
アンリエッタがスタッフに指示をすると、スタッフが竜籠の中...
非常に小さい馬車レベルの竜籠だ
牽引竜も一頭で済むが、二頭で安定させている
ランデブーポイントの指示を送って、きちんと回答が来たのが...
それにあわせてスタッフを選抜して調査資料用に紙を大量に用...
「新型艦ですか、ワクワクしますな」
「艦長命令は絶対だそうです。私でも逆らえません。皆さんお...
「了解です」
そう言って緊張しているスタッフに、アニエスが指示を下した
「そのまま降下。向こうで合わせるそうだ」
「は?何と?」
「良いから従え。文句言ってられる程余裕無いぞ?何せ空中着...
「り、了解」
オストラントが竜籠に同調しながら竜籠が降りていき、信号手...
「あの艦中央の四角内に着陸しろ」
窓を見て真剣にしてるアニエスに、御者が頷いた
そうして同調した竜籠がふわりと着陸すると、信号手が両旗を...
そして牽引索が外され、アンリエッタ達が降りようとしたが、...
「待ってくれ、外は寒い。陛下達は4番デッキに降ろすから、...
「…何だか知らないが承知した」
アニエスが頷いて待機姿勢を皆に示すと、腰を浮かせた全員が...
信号手が片手を上げて旗を左右に振りながらもう片方で下方に...
するとガコンとなって、竜籠事下がっていく
キャリキャリキャリ
「昇降機!?」
全員が驚いたのだ
そのまま降りて行くと、ガコンとなって固定される
着いた様だ
竜籠を士官の一人が開いて、アニエスが先に降り、更にスタッ...
士官達が敬礼する中、正面に二人居る
輝かしい頭をした中年の貴族と、ハルケギニアの衣装から外れ...
「ようこそ、オストラントへ。査定は甘くね」
才人がそう言ってウィンクすると、アンリエッタは微笑みなが...
「あら、ならたっぷり歓待しなさいな。甘くして差し上げてよ...
そう言って、皆がその様を笑って歓迎する
「ハッハッハ、一本取られましたな。艦長」
「いや、全く。悪いけど姫様エスコートしてる暇無いや。ルイ...
控えてたルイズが頷いて、彼女らを案内し始めた
「良し、お前ら仕事だ。8番デッキの糞寒い所で竜籠移動させ...
「ウィ」
「昇降機下げ、やれ」
「ウィ」
操縦士が操作してガコンとまた下がって行く様を見て、アンリ...
「凄いからくりですのね」
「サイトが作ったからくりですもん。当然です」
すかさず、スタッフがもう書き始めた
「これは、素晴らしい。魔法無しで、重量運搬自在では有りま...
「今は貴賓室に向かいます。彼らの指示に従うのがルールです...
「はっ」
ルイズの案内で、全員貴賓室に向かって行った
一方、才人は率先して動いている
「急げ!竜の収容が待ってる!レビテーションで一気に動かす...
メイジの一人がその言葉に頷いて竜籠をちょろっと浮かすと、...
「エレベーター退きました!」
「良し、メイジと一緒に上げろ。他の連中は固縛開始」
「ウィ」
才人がローブをぶん投げて、皆でフレームにかけ出した
「俺は歓待せにゃならん。悪いが後は頼む」
「了解、では行って、陛下のご機嫌取り頑張って下さい」
「あぁ」
そう言って、カンカンカンと階段を才人は上がって行った
* * *
アンリエッタ達は案内された貴賓室で、驚いている
「現在高度はいくつですか?」
「2000メイルだったと思います」
ルイズの説明で竜籠内で寒さに震えてた5人が、暖かい室内に...
「使って無かったので暖房は閉めてたのですが、陛下がお越し...
「この高度で完動ですか。素晴らしい」
天井ファンがゆっくり回って部屋の中の空気が対流する中、ア...
「本当に素敵な船ですのね」
アンリエッタの言にアニエス達が頷いた
「全くです。こんなに快適な空の旅等、あり得ない」
「5000メイルで暖房効きますよ。もう試しました」
全員が驚いてルイズに振り向いた
コンコン
その時にノックの音が響いたのでルイズが扉を開けた
ガチャ
才人が入って来る
「いや、艦長の癖に自分自身で働かないと駄目な性分で、申し...
「いえ」
アンリエッタの答えに、才人は立ったまま艦長として伝え出した
「査定として艦内を歩き周りたいのは理解出来ますが、現在訓...
「はい」
「一つは機関室。残念ながら、貴方方を招いて説明出来る余裕...
「解りました」
アンリエッタは頷く
「続いて作戦司令部。一番デッキ中央に位置しますが、軍令部...
「解りました」
「後は立ち入る場合は作業員達の案内に従って下さい。絶対に...
「はい」
「では査定開始の前に、皆さん食事にしましょう。残念ながら...
「解りました」
「尚、夕食後は食堂はバーになってます。バーにも、きちんと...
必ず顔を出せとの仰せだ
スタッフ達が頷いた
「姫様達で女性三人になったので、別風呂沸かすか、艦長室の...
アンリエッタは即答した
「水が有限なのでしょう?ならば艦長室で。三人だけですしね」
「了解。では皆さん、司厨達が腕によりを掛けてます。是非と...
その言葉に、全員荷物を置いて立ち上がった
* * *
才人とコルベール、ルイズが相席し、王政府達と会食を共にする
司厨の一人が給仕を買って出ており
アンリエッタは特に不自由を感じない
「素晴らしい空の旅です。まるで地上にいるみたい」
「設計の都合上、窓側に用意出来なかったんだよなぁ」
そう言って才人がワインを飲んでいる
「仕方ないでしょう。客船仕様なら、そう言ったモノも考慮に...
「勿論。但しあんまりでかくするのも何だから、上部構造を軽...
「充分ですわ。料理も素晴らしいですし」
アンリエッタが素直に褒め、アニエスは無心に食べている
「司厨達を褒めて下さい。やっぱり、やり手ですよ」
そう言って才人が褒めるとコルベールやルイズも頷いた
「ハルケギニア初の艦に、負けてはなりませんからね」
そう言って給仕の司厨が胸を張ると、皆が笑って会食を楽しんだ
全員の食事が終わると、早速アンリエッタが言い出す
「では、休憩を挟んで、各部屋に戻って査定を開始して下さい...
その言葉にスタッフが頷いたので、才人が指示を下す
「スタッフ全員に案内を一人ずつ付けて上げて。慣れりゃ迷わ...
「ウィ。艦橋に伝えます」
「スタッフさん達、案内が来るまで部屋に待機宜しく。試験兼...
「了解しました」
素直に頷いて、案内の元に退出していくスタッフ達
「さて我々は、艦長並びに副艦長だな」
アニエスがそう言って、アンリエッタがにこりと頷いた
* * *
才人達と共に、副艦長室に入る
アンリエッタは艦長室かと期待したのだが、拍子抜けした
「あの、何故副艦長室なのでしょう?」
「今はルイズがお湯を沸かしてます。それにゼロ機関の機密は...
そう言って、才人はルイズを外した理由を説明する
つまり、悩み事とは完全に無縁の、冷徹な話と云うわけだ
アンリエッタは頷いて、周囲にサイレンスを被せた
「これで宜しくて?」
「あぁ、じゃあ、アニエスさん。先ずは軍の補給目録に目を通...
そう言ってアニエスに渡して、アニエスは目を通し始め、新装...
「空飛ぶ蛇君?対空誘導弾並びに無誘導弾?」
「発射口は倉庫から片舷一層4基、一基10発が発射口にセット...
二人が息を飲む
「既に8番デッキには装填済みだ。4番デッキはとある都合上...
「次に、現在傭兵が搭乗しており、ロマリアの神官が嗅ぎ回っ...
アニエスが目を鋭くし
「ロマリアは、もうこんな所に迄。嗅覚は本当に鋭いですね」
アンリエッタはそう言って、溜め息をつく
「で、傭兵は才人君暗殺依頼を請け負っている可能性は常に否...
「了解しました。では後は何かございまして?」
その声に、才人は念を押した
「きちんとルール守ってくんないと、例え二人でも吊るすよ?...
才人がそう言ってにやりとすると、アンリエッタは笑い出す
「くすくすくすくす。本当におっかない艦長様ですわ。聞きま...
アニエスが笑って応じる
「凄いな才人。女王陛下を吊るしたら大惨事になるぞ?」
「さあね」
才人は肩を竦めた
「今後の展望はどうなさいますの?」
アンリエッタが聞くと才人が答えた
「ま、補機を主機にした、50メイル級空船の生産メインかな?...
二人はふむふむと頷いている
「他には?」
「空船のメリットはスピード。こいつを上手く使えば、恐らく...
「凄いですわね」
アンリエッタが頷いて、アニエスが疑問を投げ掛ける
「それは構わないのだが、そんな事したら輸送に携わる人間が...
アニエスの問いに、更に才人は答える
「鉄道という新交通手段を造っても良い。多分コイツなら、馬...
そう言って、才人は宙をさしてくるくる指を回す
「だから全部、ゼロ級の乗組員にしちまえばいい。輸送に違い...
「あ、成る程」
アニエスが膝を叩いて頷く
「問題は、軍事的強奪です」
アンリエッタが懸念を表明すると、才人は肩を竦めた
「実はゼロ級は機関、ボイラー共に、一級と二級がある」
その言葉にアンリエッタ達が目を見張る
「オストラントは一級エンジンを搭載してる。熱損失が非常に...
才人はそう言って、水を飲み、更に喋る
「商船級は全てカスタマイズ無しか必要最小限の二級船。圧力...
「それってつまり?」
アンリエッタが聞くと、才人が答えた
「トリステイン軍に卸すのは一級。つまり、性能差が最初から...
そう言って、才人は締めた
「……そこまで、トリステインの為を思ってくれてたのか」
アニエスは思わず唸る
「出資者に有利になる様にするのは、開発者の義務さ」
才人の言葉に、コルベールも頷いた
「で、次、アニエスさんには既に見せたけど、コイツを見てく...
才人がデルフから外してごとりと03式銃と弾を置く
「詳しいのははしょるけど、大体砲弾径8.6サント位で既存12イ...
「出来るのか?」
「あぁ、試験装備として、既に設計は終わっている。まぁ、コ...
アンリエッタが息を飲む
「つまり、既存大砲に比べれば、遥かに軽くて強い、風石消耗...
「まぁね。ゼロ級の機動と組み合わせれば、竜騎士に対する対...
ごくりと息を飲むアンリエッタ
「更にトドメだ。最終的に竜の羽衣をハルケギニア仕様に設計...
「……は?」
アンリエッタが思わず固まり、更にアニエスが驚愕に暫く言葉...
「嘘………だろ?」
「マジ。先ずディーゼルエンジンを製作。そして機銃をコピー...
「ま、戦闘機は現時点じゃ完全に妄想だ。更に5年から10年掛...
才人は、とりあえずの構想を全て話した
「貴方は、何処まで行くつもりなのです?」
「人を殺しまくって、家に帰る事……かな?もう、他国になんざ...
才人が聞くとアンリエッタが頷いた
「えぇ」
「一応、ここまではぶちまけた。でも、今度の出兵で死んだら...
才人の問いに、コルベールが答えた
「才人君が居ないのでは、東方に行く価値が無くなる。せっか...
そう言って、コルベールは匙を投げた
もう結果を出したので、夢の続きが見れないなら、躊躇は無い...
アンリエッタは困った様に頷いた
「何から何まで頼ってしまい、本当に申し訳ありません」
「いんや、これだけやっても、駄目な時は駄目だからね。そん...
才人はそう締めて、終わりを告げた
才人のとことん非情で、戦略と政略を絡めつつ、しかも自身を...
アンリエッタがサイレンスを解くと、ルイズがずっとノックし...
「姫様、お風呂沸きましたよ?機密話済みましたか?」
コンコンコンコン叩いてる
「あら、じゃあ頂きましょう。艦長に拘束権限を行使します。...
「了解です」
そう言って才人が立ち上がり、コルベールに挨拶して才人は部...
「じゃ、コルベール先生。バーでも行って寛いでて下さい。後...
「承知した。才人君」
* * *
コルベールを除いた才人達が艦長室に入ると、ソファーに全員...
「ルイズ、アニエス。先に入りなさい。それとルイズ、申し訳...
「私、姫様の女官ですが?」
「私がきちんと貴女の現在の評価をした上での話です」
つまり、まだ早いから引っ込めと言われてるのだ
「既に私に付加された艦長の拘束権限は発動しました。艦長の...
そう言ってルイズを切り捨て、ルイズはムッとする
「姫様なら、トイレ我慢出来るんですね?」
「船の中なら、一時的に貯めるのなんか有るじゃないですか。...
アンリエッタがグラスを指して、ルイズは絶句する
「指示に従うとはそう言う事です。船は地上とは違うのですよ...
「…はい」
ルイズは神妙にする
この船はあらゆる部分で実験が行われてる実験練習艦なのだ
トイレ一つとっても、ルイズの預かり知らぬ実験をしてるので...
「ルイズ、貴女が思ってる事は私にも解ります。自分の使い魔...
「…はい」
アンリエッタとはお互いに対面にソファーに座ってルイズを諭...
「男女の仲でぎゃあぎゃあ騒ぐのも構いませんが、もう少し余...
ルイズがビクッとする
「黙秘します」
「なら、その件に付いてはお互い様ですわね」
アンリエッタにそう言われ、ルイズはぷるぷる震える
「さっきから、そっちの話ばかりじゃないですか!」
「だって貴女がそう望んでるのですもの。私はね、早く貴女と...
そう言って、アンリエッタは本当にルイズの前に杖を置く
メイジとしては、非情に重い宣言と行動、ルイズにも痛い位に...
「……姫様」
「才人殿も私も、まだルイズには血生臭い話は耐えられないと...
「はい」
良く解るから、素直にルイズは頷いた
「貴女はやらなきゃならないとして、人を大量に殺せて?」
「出来ません。以前失敗しました」
ルイズはそう、素直に報告する
「才人殿はやります。貴女の為に、私の為に、トリステインの...
「やればやる程、封建貴族に嫌われ、平民達から距離を置かれ...
「……」
ルイズは黙ってしまう
「…答えなさい、ルイズ」
「…ご命令とあらば」
「才人殿は命令せずともやってますよ?貴女、きちんと労って...
そこで、ルイズは哀しくなってしまった
「労いたい!いつも失敗する!いつも邪魔が入る!何であたし...
「それがサイト殿の魅力だからです。貴女の父、ヴァリエール...
そこでルイズは固まった
「お父さまとサイトが一緒?」
「そうよ。だから私は、ヴァリエール公爵とゼロ機関を敵対さ...
はぁと、溜め息を付いたアンリエッタ
「私はね、確かにサイト殿に惹かれています。それに付いては...
ルイズは、アンリエッタの悲痛な表情を見て理解してしまった
ルイズは何時でも泣ける
でも、姫さまは泣けない
泣ける場所は、自分の使い魔の胸なのだ
「……拘束時間は何時までですか?」
「朝迄、少し、一人の女のコに戻りたいのです」
「明日には戻りますね?」
「えぇ、お借りしても宜しくて?」
「許したく無いけど、我慢します。でも一つだけ」
「あら、何かしら?」
「サイトは私のモノよ。もう姉さま達にも、はっきり言った。...
「ルイズ……」
「全部許して私もその一人になるのが一番楽で皆幸せになれる...
とうとうルイズは泣き出してしまい、才人が肩を抱くと素直に...
「サイト殿。片方ではなく、両方取って下さいな。ハルケギニ...
アンリエッタがそう言って、才人はポリポリと頬をかくと、ア...
「じゃないと休暇中の酒池肉林、ルイズにばらしますわ」
さぁぁと真っ青になる才人
「……鋭意努力します」
「では、努力していただきましょう」
アンリエッタはうって変わってニコニコとパンパン手を叩いて...
「さ、ルイズ。さっさとお風呂入って消えた消えた。あ、アニ...
「御意。さ、ルイズ、風呂に入って来い」
すんすんして首を振るルイズに、仕方なくアニエスは耳に囁いた
「陛下と艦長。最高機密を握る二人が、二人きりで密談したら...
ルイズはハッとして振り返って、アンリエッタを見た
「姫さま……非っ常に悪趣味。最悪です」
「あら、お褒めに預かり光栄ですわ」
アンリエッタは、にっこり笑って優雅に礼をした
* * *
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