ゼロの使い魔保管庫
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開始行:
才人達ゼロ機関がオストラントに乗ってフォンティーヌの屋敷...
「…何か有ったわね」
「梯子降ろせ、下船する。俺だけだ、全員艦内待機」
〈了解〉
才人が伝声管で指示を下して、そのまま艦橋から降りて行き、...
8デッキ左舷後方の扉が開いて梯子階段が降ろされ、才人がカ...
「こんにちは、君はアミアスさん、ダルシニさんどっちかな?...
「ぜぇっぜぇっ、ダルシニです。昨日、ラ=ラメー伯に、カリ...
途切れ途切れに言ったダルシニの言葉に、才人は反応に困った...
「アミアスさんは?」
「カリンの娘に付いてます」
「血は?」
「ヴァリエールで、カリン達に貰ってるから、平気」
「了解。とりあえず詳しいのは艦で聞こうと思う。構わないか...
ダルシニは素直に頷いた
* * *
サロンに全員集まって、ダルシニの言葉に眉間を険しくした
特に難しい顔をしたのはエレオノールだ
「ラ=ラメー伯ねぇ。ピエール坊やだっけ?確かに一番熱心に...
正直、才人は何も言えない
「ダーリン、どうするの?確かにラ=ラメー伯の言葉も一理有...
そう言って、キュルケは肩を竦めた
ルイズは何も言えない、言える筈が無い
周りで見ている部下達を見回すと、特に何も言って来ない
「ハルケギニアじゃ、こういう時はどうすんだ?」
才人が聞くと、一人が呟いた
「そりゃ、男の甲斐性が全てを決めるに決まってんだろ?拐う...
才人はその言葉に、わしわしと頭を掻いた
「お前らは俺が行くと行ったら、馬鹿馬鹿しい争いに首を突っ...
「そりゃ勿論。美女を賭けて戦争すんのなんざ、一番下らなく...
そう言って、皆してニヤニヤ笑っている
「拐って元の鞘って訳には」
「行かないわよ。ヴァリエールは関与しないと行動で示した。...
才人はモンモランシーを見る
「モンモン、モンモランシで預かれるか?」
「お断り。あぁ見えてお父様は現役バリバリ。お母様も嫉妬深...
才人はそのままキュルケを見た
「カトレアさんは家でもちょっとねぇ。綺麗過ぎるじゃない?...
結局、才人の傍しか居場所が無いと来た
「レティシアさんからは?」
「昨日の今日で返事なんか来るわけ無いでしょ?」
そう言ってエレオノールが切り捨て、才人は溜め息を付いた
「取り返す。現時点じゃ、決められんのこんだけ。今からラ=...
「反対だね」「おぅ、反対だ」「同じく」
次々に反対を口にされ、才人が見回すと、全員がニヤニヤとし...
「何でだよ?やるなら、一刻も早く態勢が整う前にが常道だろ...
「解ってねぇ。解ってねぇなぁ。なぁ皆!」
「そうだそうだ」
皆してニヤニヤしながら言っていて、才人は首を傾げている
「良いかあ?今回は俺達は間男だ。かっ拐いに行く瞬間は、結...
「その通りだ!」「ギャハハハハハ!」
腹を抱えて皆して笑い転げている
才人はそんな男達を見て、呆れてしまった
「ったく、そんじゃ、間男らしく、とことん悪どく行くか」
「決まりだ!」
全員が立ち上がり、顔付きを改めた
「おぅ、メイドさん。そんじゃ刺繍手伝うから、制服さっさと...
「全くだ!俺達ゼロ機関での初陣は間男かよ!実に下らなくて...
そう言いつつ、次々に才人の肩を叩いていき、才人は出ていっ...
「……絶対に、あいつらにハメられた」
「ま、諦めな、相棒」
カチッと出て来たデルフにそう言われ、才人はドカッと椅子に...
* * *
才人が艦長室に入るとダルシニが足早に付いて来て、他の女性...
「すいません、二人きりで話がございまして」
そう言って、ぱたりと閉めてガチャっと鍵が掛かった音が鳴り...
「ルイズ、行くわよ」
「え?だけど」
「あの人夫子持ち。心配する事は無いから安心なさい」
「あ、はい」
その言葉を聞いて、全員安心して踵を返した
* * *
才人がソファーに座ると腕を出した
「何か有ると不味い。力を使うと腹が減るだろ?先に補給しと...
「あ、はい」
才人に寄ってダルシニが才人の腕に噛み付いた
暫くするとダルシニが離れる
「あの、すいません」
「構わない。多少の血抜きは体調の向上に繋がるんだ」
才人の言葉にダルシニが目を丸くした
「そんな事もご存知なのですね?」
「まぁね。で、話って?アミアスさんの事?それとも先代イー...
ダルシニが対面に座り込んで話しかけた
「そうですね。私達がイーヴァルディと過ごしたのは、ほんの...
才人は聞いてみた
「容姿は?」
「それが、さっぱり憶えて無いんですよ。あの時、彼に相対し...
才人はその言葉に頭を捻る
「短い期間だから忘れたのか?」
「そうかもしれないし、そうじゃないのかも知れない。彼の雰...
「はぁ、まさか……ねぇ」
ダルシニが才人の頭の捻り具合に聞いてみる
「心当たりでも?」
「まぁ、一人。でも、その人は既に故人だ」
「そう……ですか」
明らかに気落ちするダルシニ、才人は頭をガリガリ掻いて言葉...
「情報が少なくて断定が出来ないから、本当に判らない。雰囲...
「では、その人が先代のイーヴァルディ?」
「どうだろ?パイロットが地上戦でも滅茶苦茶強いって話は聞...
才人も頭を捻っており、ダルシニもそれ以上の追求は諦めた様だ
「すいません。解らないですよね?」
「あんまり役に立たないで悪いね」
「いえ」
ダルシニが少しでも手懸かりが得られた事に素直に頭を下げ、...
「アミアスも私も、吸血鬼ではなく、人と扱って下さったイー...
才人は黙って聞いている
「彼がゲルマニアの侵攻で総崩れになったトリステインとヴァ...
「やるね、食い止めたのか」
「えぇ」
ダルシニが頷いて、才人がひたすら感心している
「消えたって言ってたけど?」
「後の停戦交渉で、戦死していない事が確認されてるんです」
「成る程ね」
そしてダルシニが続きを
「あの時にヴァリエール公が戦死して、サンドリオンが爵位を...
「へぇ」
才人が相槌を打ち、ダルシニが恐る恐る繋げた
「あの……カリンとサンドリオン……お嫌いですか?」
「いんや、特には。利害が一致すりゃ、組んでくれると助かる...
「あの人達、本当に優しいんです!ちょっと意地っぱりで引っ...
力説するダルシニに、才人は手の平を向けて制止してみせた
「力説しなくても解るよ。エレオノールとルイズの親なんだ。...
その発言にダルシニが喜色を浮かべたのを、才人が無表情に言...
「だからこそ判った。絶対に向こうから頭下げなきゃ許さん。...
「……え?」
才人の言い分にダルシニがきょとんとし、更に才人が吐き捨てた
「次は絶対に叩きのめす。手加減なんざしてやらねぇ」
才人の言い分が解らないダルシニが、何とか翻して貰おうと試...
「あの……何を言ってるか解らないんですけど、サンドリオンは...
「あぁ、解らなくて良い。胸糞悪い話にしかならない」
才人は余りに不機嫌になった為に、立ち上がってワインセラー...
「カトレアさんは俺が出来る限り保護するけど、俺が死んだ場...
才人がそう言って、ダルシニは溜め息を付く
「私の夫を、そういう風に言わないで下さい」
「そうか」
才人が関心を払わないので、ダルシニは不意打ちに失敗した事...
「驚かれないのですね」
「ダルシニさんは幸せなんでしょ?なら、それで良いじゃない...
才人の言い分は突き放してる様であり、本当に幸せにしている...
「変な人。普通は驚きますよ?」
「そう?」
才人はそう言って、フッと微笑んでみせた
「それで、アミアスなんですけど」
「うん?」
才人がらっぱ飲みで瓶を口に含んだまま返事をし、ダルシニが...
「あの、30年イーヴァルディを待ってました。ですから、アミ...
「……俺は、君達の好きだったイーヴァルディじゃない。イーヴ...
才人がそう言って、また瓶を口に含んで飲み、ダルシニは涙を...
「なんでそういう風に言うんですか?イーヴァルディなんでし...
ぐすっぐすっと涙を浮かべて拭うダルシニに、才人は瓶をテー...
「俺はさ、女のコに甘いだけの屑なんだ。知識を与えてハルケ...
ダルシニはそんな才人をキッと睨んで、決然と言い放った
「私達はいつ殺されても仕方無いです、吸血鬼ですから。です...
才人はその発言に首を竦めた
「本当にハルケギニアの女のコは意志が強いね。俺じゃ勝てね...
* * *
才人達はその足のままトリスタニア郊外に着陸し、トリスタニ...
制服に使う御古の軍服とか、秘薬の材料の仕入れである
先頭に立つのは勿論シエスタだ
ゼロ機関のメンバー相手に、胸を張って訓示を始めた
「さぁ、皆さん。私の指示に従って買い物です!買い物は1に...
「あいよ〜」
二人のメイドが先頭に立ってぞろぞろと向かって行く列に、才...
ルイズも付いて行こうかとしたのだが
「悪い、こっちは本当に機密級。シエスタの手伝いしてやって」
才人にそう言われて渋々と離れた
仕事に関しては非情な事を散々教えられたルイズは、こう言わ...
才人達は別の所に向かっていた
最初は宝石職人の場所である
虚無の曜日なので市の出店に向かうと出ていなかったので、直...
こちらはちょっとスラムの雰囲気が強い為、ルイズが来るには...
「マルクさん、邪魔するよ」
「……旦那ですか。ちょっと待って貰えますかね」
「解った」
才人とエレオノールが黙って客席にとすんと座って、時計の音...
暫くするとコトリと道具を置いて、作業眼鏡を外してニコリと...
「良い時に来て下さいました。そちらの貴族様に、受け取って...
「え?私?」
思わずずれた眼鏡をついと上げてマルクを見たエレオノールだ...
「いやぁ、水晶硝子の磨きを手紙で旦那に頼まれた時に、指の...
そう言って、取り出したのは銀の指輪だ
径は小さく、小指に嵌めるピンキーリングである
才人にそのまま手渡し、才人がエレオノールの右手を取り、小...
その指輪の台座には、暗殺騒動時に切り分けた金剛石が輝いて...
「外国から伝わったんだけど、俺の国じゃ、銀の指輪を小指に...
まさか、才人の国の言い伝えに託つけて、こんなプレゼントを...
「お気に召したかな?」
瞳を潤ませたエレオノールはしきりに頷き、嵌められた指輪を...
「いや、旦那の国の言い伝えと聞いて張り切りましたわ。しか...
「マルクさんの仕事には勝てねぇよ。頼んだブツは?」
「あいよ。きちんと小型望遠鏡レンズ、要求精度出しましたぜ...
そう言ってニヤニヤしながら才人に油紙にくるんだレンズを手...
才人は出したレンズを見て、口笛を思わず吹いてしまう
「ピュー、良い仕事するわ。精密レンズはあんたに任せりゃ完...
「勿論。あっしも遣り甲斐有りますわ。で、二線級を硝子職人...
「全部お見通しかよ。マルクさん、時計の軸とかもやってませ...
「そっちもお見通しですか」
二人してくっくっくっくっと笑っている
「また宜しくな。後は何時も通り、請求書は纏めて回してくれ...
「あぁ、コイツは金剛石加工代分でペイですわ」
そう言ってニヤニヤしている
才人もニヤリとし、お互いに職人同士が通じる意思表示でコン...
「貴族様。中々面白い見立てをする旦那ですから、大切に願い...
マルクの言葉に、エレオノールが頷いた
「勿論。私の所長は、ハルケギニア随一だからね」
才人が出る時に腕を自然に絡めたエレオノールの後ろ姿を見送...
次は、あの男がもっと面白い仕事を抱えて来てくれるだろう事...
* * *
才人とエレオノールは他のギルドに顔を出して発破をかけつつ...
「邪魔するよ」
「あら、才人ちゃんじゃない」
スカロンがすかさず反応して、二人を席に案内して座らせ、ス...
「あのボンクラは思い切り殴り倒しました。本当に申し訳ない...
才人は失敗したと顔に出しており、エレオノールがその様子を...
「我が所長はそんな態度を欲していない。それ以上やると、付...
だが、スカロンは聞いても平伏の姿勢を崩さない
「少しだけ、けじめをさせて下さい。後は何時も通りにします...
そう言われてしまっては何も言えない
才人は居心地の悪さを感じても暫くそのままで、そんな才人に...
「いらっしゃい、ルイズちゃんのお兄さん。そちらの貴族様は...
「まだ開店前でしょ?」
「あら、貴方方を歓待しないだなんて恥知らずを、私達にさせ...
気が済んだスカロンは顔を上げてうふんとウィンクし、何時も...
「ちょっと、今から50人位来るから予約したいんだ」
「まぁまぁ、トレビアン!聞いたでしょ?皆、席を用意して頂...
パンパン手を叩いて、妖精さん達がばたばたとやり出し、ジェ...
「あれ以来どう?」
才人はタルブに直接行けない為にスカロン達に聞き、スカロン...
「ん、現アストン伯は断絶処置で現在王家直轄。ワルド子爵領...
そう言って更にジェシカが繋げた
「タルブの村じゃ、元アストン伯の行状の被害家族って事で、...
「そうか。喧嘩とかは?」
才人の言外の意図を汲み取ったジェシカが、あっけらかんとし
「ちぃっとも、問題無いって。9人目仕込むもんって、叔母さ...
才人のホッとした表情に、ジェシカが微笑んでみせた
「大丈夫よ。私も皆も、大丈夫。才人さんは何も心配しないで...
才人は背もたれに寄り掛かり、スカロンが笑い出した
「もう、何でもかんでも背負わないで大丈夫よ。私達を甘く見...
才人は息を深く吐いて、エレオノールはそんな才人が少し哀れ...
あくまでもさりげなくを装っているが、ジェシカは直ぐに気付...
そう、あれは指摘した途端に陶酔の雨あられになる前段階である
スカロンも暫くして気付いたが、どうするか才人に耳元で囁い...
「あれ、才人ちゃんのプレゼントでしょ?」
「…まぁ」
「…本人の目の前で惚ける気満々よ」
「…好きにやらせてやって」
「良いの?」
「…出来れば聞きたく無い」
「だよねぇ」
才人達がひそひそ話をしているのを、エレオノールは今か今か...
「はいは〜い。皆さん到着で〜す」
シエスタの大声と共にぞろぞろ入って来たのを機に、才人はこ...
「ふぅ、すんごい量だったわ。あれはちょっと一仕事以上にな...
「ん?これ?良くぞ聞いてくれたわね。こっれっは、ゼロ機関...
ムカッとしたキュルケがそのまま手をグイっと引っ張って覗き...
「ほら、ゼロ機関所長秘書って、特別じゃない?才人のサポー...
キュルケはその出来具合の良さに明らかに機嫌を悪くし、モン...
才人が戻って来たら、少女達がガタッと立ち上がって、才人に...
「ダーリン、ヴァリエールばっかりずるい!私も欲しいぃぃぃ...
「私も欲しい!」
「…」
訴えられた才人自身、こうなる事は予測していた
だから、あんまりひけらかして欲しくなかった訳だが
才人は皆の機嫌を取る為に、一人一人の好み聞き出した
「キュルケは金持ちだろう?」
「ダーリンから欲しいの!」
女とはそんなものである。貴族も平民も関係無い
ルイズがやって来てエレオノールの指輪を見て固まり、才人に...
「ルイズ、あんたは以前貰ったでしょ?だからあんたは無し。...
そう言ってキュルケはルイズを邪険に扱い、納得出来る理由だ...
「あたしは主人だもん」
「使い魔に給料払わない主人のお陰で、自力で稼いじゃったわ...
モンモランシーの指摘にうぐっと詰まるルイズ
「使い魔の価値を金の稼ぎで判断するのは良くないですよねぇ...
シエスタが料理を抱えて持って来て、テーブルに置きながらち...
ルイズはぷるぷると、皆と違う意味で涙目だ
なんと言うか、何で何時もこう全てが墓穴になるのか、ルイズ...
「…今回は装飾品は一人ひとつで、良いね?」
少女達がぶんぶん頷いて才人に絡み付き、其を見てたジェシカ...
「本当にモテるんだ。しかも貴族相手……」
「シエスタって、本当に命懸けなのね。ちょっと、尊敬出来ち...
そんな感じで盛り上がり始めた店内で、才人とシエスタでスカ...
* * *
ラ=ラメー伯領で、カトレアはラ=ラメー伯と対面していた
「この様な事をして、私の心が手に入るとお思いですの?」
「それに付いては、もう諦めた。伊達に10年も求婚してないよ...
そう言って、肩を竦めるラ=ラメー伯にカトレアは顔をしかめる
「だけど、それでも僕は、君が僕の子を産んで、慈しむ姿を見...
カトレアは、彼が自分の身体を慮って行動に移さざるを得なか...
「ピエール」
「久し振りに呼んでくれたね」
カトレアに名前を呼ばれて本当に嬉しそうにするラ=ラメー伯...
「何度も言ってるでしょう?貴方では震えないのよ。私の身体...
「だから君には意に沿わぬ結婚になるね。まぁ、貴族同士には...
そう言って悪びれないラ=ラメー伯
少なくとも、事実になりつつある現実に、カトレアは息苦しさ...
「アミアスはどうしたのです?」
「あぁ、あの吸血鬼?殺したよ」
ごく当たり前に言い切ったラ=ラメー伯にその瞬間、目を見開...
「お母様が紹介して下さった方なら、間違いは有りません。我...
両手を掲げて降参の意を示して、慌てて喋る
「君が家に来た時に、感激の余り手を出そうとしたら、約束が...
「本当でしょうね?」
「見に来ると良いよ」
そう言って立ち上がったので、カトレアも付いて行く為に立ち...
* * *
暗い牢の中で、アミアスは両手両足を拘束されて幽閉されていた
口には猿轡を噛まされて、先住の詠唱と噛み付きを防止している
キィ
そんな折、鉄格子の扉が開いて二人入室して来た
「吸血鬼と言えど、可愛いからね。家の馬鹿が手出ししない様...
「……感謝するわ」
そう言って、カトレアはアミアスに駆け寄り、猿轡を外して語...
「アミアス、大丈夫?私のせいでごめんね。貴女が吸血鬼と気...
アミアスは首を疲れた様に振って、力無く微笑んでみせた
「大丈夫ですよ、慣れてますから。捕まるの何度も有りました...
「なら、私の血を」
アミアスは毅然と首を振って答えた
「貴女の血は駄目。貴女が弱ってしまう。私がイーヴァルディ...
「今、君に死なれても困るな。僕の血を」
「要らない、不味いもの。男の血はもう、イーヴァルディ以外...
アミアスの決然とした決意に、こめかみをピクピクさせるラ=...
「捕まってるのに、随分生意気だな」
「だって、私は何もしなくても平気だから。イーヴァルディは...
そう言って、一切媚びないアミアスの態度に憮然とする
「普通は取られたら、態勢を整える前に直ぐに取り返しに来る...
「来る、絶対よ。多分、一番劇的なタイミングで。貴族に負け...
そう嘯き、アミアスはカトレアにウィンクしてみせた
「一番綺麗な格好で待っててあげて。きっと、楽しい事になる...
カトレアはハッとして彼女を見た
「産まれた時から……ずっと?」
コクリと頷くアミアス
「だから、大丈夫。お姉さんの言う事信じなさいな。貴女達よ...
その言葉に、カトレアはクスリと笑って頷いた
「はい、お姉様」
「では僕も、年寄りの忠告に従って、警戒を強めよう。君を殺...
「充分よ。貴方も貴族の中では優しい人ね」
「褒められてるのかな?それは?」
首を捻ってるラ=ラメー伯に、笑ってアミアスが頷いた
* * *
終了行:
才人達ゼロ機関がオストラントに乗ってフォンティーヌの屋敷...
「…何か有ったわね」
「梯子降ろせ、下船する。俺だけだ、全員艦内待機」
〈了解〉
才人が伝声管で指示を下して、そのまま艦橋から降りて行き、...
8デッキ左舷後方の扉が開いて梯子階段が降ろされ、才人がカ...
「こんにちは、君はアミアスさん、ダルシニさんどっちかな?...
「ぜぇっぜぇっ、ダルシニです。昨日、ラ=ラメー伯に、カリ...
途切れ途切れに言ったダルシニの言葉に、才人は反応に困った...
「アミアスさんは?」
「カリンの娘に付いてます」
「血は?」
「ヴァリエールで、カリン達に貰ってるから、平気」
「了解。とりあえず詳しいのは艦で聞こうと思う。構わないか...
ダルシニは素直に頷いた
* * *
サロンに全員集まって、ダルシニの言葉に眉間を険しくした
特に難しい顔をしたのはエレオノールだ
「ラ=ラメー伯ねぇ。ピエール坊やだっけ?確かに一番熱心に...
正直、才人は何も言えない
「ダーリン、どうするの?確かにラ=ラメー伯の言葉も一理有...
そう言って、キュルケは肩を竦めた
ルイズは何も言えない、言える筈が無い
周りで見ている部下達を見回すと、特に何も言って来ない
「ハルケギニアじゃ、こういう時はどうすんだ?」
才人が聞くと、一人が呟いた
「そりゃ、男の甲斐性が全てを決めるに決まってんだろ?拐う...
才人はその言葉に、わしわしと頭を掻いた
「お前らは俺が行くと行ったら、馬鹿馬鹿しい争いに首を突っ...
「そりゃ勿論。美女を賭けて戦争すんのなんざ、一番下らなく...
そう言って、皆してニヤニヤ笑っている
「拐って元の鞘って訳には」
「行かないわよ。ヴァリエールは関与しないと行動で示した。...
才人はモンモランシーを見る
「モンモン、モンモランシで預かれるか?」
「お断り。あぁ見えてお父様は現役バリバリ。お母様も嫉妬深...
才人はそのままキュルケを見た
「カトレアさんは家でもちょっとねぇ。綺麗過ぎるじゃない?...
結局、才人の傍しか居場所が無いと来た
「レティシアさんからは?」
「昨日の今日で返事なんか来るわけ無いでしょ?」
そう言ってエレオノールが切り捨て、才人は溜め息を付いた
「取り返す。現時点じゃ、決められんのこんだけ。今からラ=...
「反対だね」「おぅ、反対だ」「同じく」
次々に反対を口にされ、才人が見回すと、全員がニヤニヤとし...
「何でだよ?やるなら、一刻も早く態勢が整う前にが常道だろ...
「解ってねぇ。解ってねぇなぁ。なぁ皆!」
「そうだそうだ」
皆してニヤニヤしながら言っていて、才人は首を傾げている
「良いかあ?今回は俺達は間男だ。かっ拐いに行く瞬間は、結...
「その通りだ!」「ギャハハハハハ!」
腹を抱えて皆して笑い転げている
才人はそんな男達を見て、呆れてしまった
「ったく、そんじゃ、間男らしく、とことん悪どく行くか」
「決まりだ!」
全員が立ち上がり、顔付きを改めた
「おぅ、メイドさん。そんじゃ刺繍手伝うから、制服さっさと...
「全くだ!俺達ゼロ機関での初陣は間男かよ!実に下らなくて...
そう言いつつ、次々に才人の肩を叩いていき、才人は出ていっ...
「……絶対に、あいつらにハメられた」
「ま、諦めな、相棒」
カチッと出て来たデルフにそう言われ、才人はドカッと椅子に...
* * *
才人が艦長室に入るとダルシニが足早に付いて来て、他の女性...
「すいません、二人きりで話がございまして」
そう言って、ぱたりと閉めてガチャっと鍵が掛かった音が鳴り...
「ルイズ、行くわよ」
「え?だけど」
「あの人夫子持ち。心配する事は無いから安心なさい」
「あ、はい」
その言葉を聞いて、全員安心して踵を返した
* * *
才人がソファーに座ると腕を出した
「何か有ると不味い。力を使うと腹が減るだろ?先に補給しと...
「あ、はい」
才人に寄ってダルシニが才人の腕に噛み付いた
暫くするとダルシニが離れる
「あの、すいません」
「構わない。多少の血抜きは体調の向上に繋がるんだ」
才人の言葉にダルシニが目を丸くした
「そんな事もご存知なのですね?」
「まぁね。で、話って?アミアスさんの事?それとも先代イー...
ダルシニが対面に座り込んで話しかけた
「そうですね。私達がイーヴァルディと過ごしたのは、ほんの...
才人は聞いてみた
「容姿は?」
「それが、さっぱり憶えて無いんですよ。あの時、彼に相対し...
才人はその言葉に頭を捻る
「短い期間だから忘れたのか?」
「そうかもしれないし、そうじゃないのかも知れない。彼の雰...
「はぁ、まさか……ねぇ」
ダルシニが才人の頭の捻り具合に聞いてみる
「心当たりでも?」
「まぁ、一人。でも、その人は既に故人だ」
「そう……ですか」
明らかに気落ちするダルシニ、才人は頭をガリガリ掻いて言葉...
「情報が少なくて断定が出来ないから、本当に判らない。雰囲...
「では、その人が先代のイーヴァルディ?」
「どうだろ?パイロットが地上戦でも滅茶苦茶強いって話は聞...
才人も頭を捻っており、ダルシニもそれ以上の追求は諦めた様だ
「すいません。解らないですよね?」
「あんまり役に立たないで悪いね」
「いえ」
ダルシニが少しでも手懸かりが得られた事に素直に頭を下げ、...
「アミアスも私も、吸血鬼ではなく、人と扱って下さったイー...
才人は黙って聞いている
「彼がゲルマニアの侵攻で総崩れになったトリステインとヴァ...
「やるね、食い止めたのか」
「えぇ」
ダルシニが頷いて、才人がひたすら感心している
「消えたって言ってたけど?」
「後の停戦交渉で、戦死していない事が確認されてるんです」
「成る程ね」
そしてダルシニが続きを
「あの時にヴァリエール公が戦死して、サンドリオンが爵位を...
「へぇ」
才人が相槌を打ち、ダルシニが恐る恐る繋げた
「あの……カリンとサンドリオン……お嫌いですか?」
「いんや、特には。利害が一致すりゃ、組んでくれると助かる...
「あの人達、本当に優しいんです!ちょっと意地っぱりで引っ...
力説するダルシニに、才人は手の平を向けて制止してみせた
「力説しなくても解るよ。エレオノールとルイズの親なんだ。...
その発言にダルシニが喜色を浮かべたのを、才人が無表情に言...
「だからこそ判った。絶対に向こうから頭下げなきゃ許さん。...
「……え?」
才人の言い分にダルシニがきょとんとし、更に才人が吐き捨てた
「次は絶対に叩きのめす。手加減なんざしてやらねぇ」
才人の言い分が解らないダルシニが、何とか翻して貰おうと試...
「あの……何を言ってるか解らないんですけど、サンドリオンは...
「あぁ、解らなくて良い。胸糞悪い話にしかならない」
才人は余りに不機嫌になった為に、立ち上がってワインセラー...
「カトレアさんは俺が出来る限り保護するけど、俺が死んだ場...
才人がそう言って、ダルシニは溜め息を付く
「私の夫を、そういう風に言わないで下さい」
「そうか」
才人が関心を払わないので、ダルシニは不意打ちに失敗した事...
「驚かれないのですね」
「ダルシニさんは幸せなんでしょ?なら、それで良いじゃない...
才人の言い分は突き放してる様であり、本当に幸せにしている...
「変な人。普通は驚きますよ?」
「そう?」
才人はそう言って、フッと微笑んでみせた
「それで、アミアスなんですけど」
「うん?」
才人がらっぱ飲みで瓶を口に含んだまま返事をし、ダルシニが...
「あの、30年イーヴァルディを待ってました。ですから、アミ...
「……俺は、君達の好きだったイーヴァルディじゃない。イーヴ...
才人がそう言って、また瓶を口に含んで飲み、ダルシニは涙を...
「なんでそういう風に言うんですか?イーヴァルディなんでし...
ぐすっぐすっと涙を浮かべて拭うダルシニに、才人は瓶をテー...
「俺はさ、女のコに甘いだけの屑なんだ。知識を与えてハルケ...
ダルシニはそんな才人をキッと睨んで、決然と言い放った
「私達はいつ殺されても仕方無いです、吸血鬼ですから。です...
才人はその発言に首を竦めた
「本当にハルケギニアの女のコは意志が強いね。俺じゃ勝てね...
* * *
才人達はその足のままトリスタニア郊外に着陸し、トリスタニ...
制服に使う御古の軍服とか、秘薬の材料の仕入れである
先頭に立つのは勿論シエスタだ
ゼロ機関のメンバー相手に、胸を張って訓示を始めた
「さぁ、皆さん。私の指示に従って買い物です!買い物は1に...
「あいよ〜」
二人のメイドが先頭に立ってぞろぞろと向かって行く列に、才...
ルイズも付いて行こうかとしたのだが
「悪い、こっちは本当に機密級。シエスタの手伝いしてやって」
才人にそう言われて渋々と離れた
仕事に関しては非情な事を散々教えられたルイズは、こう言わ...
才人達は別の所に向かっていた
最初は宝石職人の場所である
虚無の曜日なので市の出店に向かうと出ていなかったので、直...
こちらはちょっとスラムの雰囲気が強い為、ルイズが来るには...
「マルクさん、邪魔するよ」
「……旦那ですか。ちょっと待って貰えますかね」
「解った」
才人とエレオノールが黙って客席にとすんと座って、時計の音...
暫くするとコトリと道具を置いて、作業眼鏡を外してニコリと...
「良い時に来て下さいました。そちらの貴族様に、受け取って...
「え?私?」
思わずずれた眼鏡をついと上げてマルクを見たエレオノールだ...
「いやぁ、水晶硝子の磨きを手紙で旦那に頼まれた時に、指の...
そう言って、取り出したのは銀の指輪だ
径は小さく、小指に嵌めるピンキーリングである
才人にそのまま手渡し、才人がエレオノールの右手を取り、小...
その指輪の台座には、暗殺騒動時に切り分けた金剛石が輝いて...
「外国から伝わったんだけど、俺の国じゃ、銀の指輪を小指に...
まさか、才人の国の言い伝えに託つけて、こんなプレゼントを...
「お気に召したかな?」
瞳を潤ませたエレオノールはしきりに頷き、嵌められた指輪を...
「いや、旦那の国の言い伝えと聞いて張り切りましたわ。しか...
「マルクさんの仕事には勝てねぇよ。頼んだブツは?」
「あいよ。きちんと小型望遠鏡レンズ、要求精度出しましたぜ...
そう言ってニヤニヤしながら才人に油紙にくるんだレンズを手...
才人は出したレンズを見て、口笛を思わず吹いてしまう
「ピュー、良い仕事するわ。精密レンズはあんたに任せりゃ完...
「勿論。あっしも遣り甲斐有りますわ。で、二線級を硝子職人...
「全部お見通しかよ。マルクさん、時計の軸とかもやってませ...
「そっちもお見通しですか」
二人してくっくっくっくっと笑っている
「また宜しくな。後は何時も通り、請求書は纏めて回してくれ...
「あぁ、コイツは金剛石加工代分でペイですわ」
そう言ってニヤニヤしている
才人もニヤリとし、お互いに職人同士が通じる意思表示でコン...
「貴族様。中々面白い見立てをする旦那ですから、大切に願い...
マルクの言葉に、エレオノールが頷いた
「勿論。私の所長は、ハルケギニア随一だからね」
才人が出る時に腕を自然に絡めたエレオノールの後ろ姿を見送...
次は、あの男がもっと面白い仕事を抱えて来てくれるだろう事...
* * *
才人とエレオノールは他のギルドに顔を出して発破をかけつつ...
「邪魔するよ」
「あら、才人ちゃんじゃない」
スカロンがすかさず反応して、二人を席に案内して座らせ、ス...
「あのボンクラは思い切り殴り倒しました。本当に申し訳ない...
才人は失敗したと顔に出しており、エレオノールがその様子を...
「我が所長はそんな態度を欲していない。それ以上やると、付...
だが、スカロンは聞いても平伏の姿勢を崩さない
「少しだけ、けじめをさせて下さい。後は何時も通りにします...
そう言われてしまっては何も言えない
才人は居心地の悪さを感じても暫くそのままで、そんな才人に...
「いらっしゃい、ルイズちゃんのお兄さん。そちらの貴族様は...
「まだ開店前でしょ?」
「あら、貴方方を歓待しないだなんて恥知らずを、私達にさせ...
気が済んだスカロンは顔を上げてうふんとウィンクし、何時も...
「ちょっと、今から50人位来るから予約したいんだ」
「まぁまぁ、トレビアン!聞いたでしょ?皆、席を用意して頂...
パンパン手を叩いて、妖精さん達がばたばたとやり出し、ジェ...
「あれ以来どう?」
才人はタルブに直接行けない為にスカロン達に聞き、スカロン...
「ん、現アストン伯は断絶処置で現在王家直轄。ワルド子爵領...
そう言って更にジェシカが繋げた
「タルブの村じゃ、元アストン伯の行状の被害家族って事で、...
「そうか。喧嘩とかは?」
才人の言外の意図を汲み取ったジェシカが、あっけらかんとし
「ちぃっとも、問題無いって。9人目仕込むもんって、叔母さ...
才人のホッとした表情に、ジェシカが微笑んでみせた
「大丈夫よ。私も皆も、大丈夫。才人さんは何も心配しないで...
才人は背もたれに寄り掛かり、スカロンが笑い出した
「もう、何でもかんでも背負わないで大丈夫よ。私達を甘く見...
才人は息を深く吐いて、エレオノールはそんな才人が少し哀れ...
あくまでもさりげなくを装っているが、ジェシカは直ぐに気付...
そう、あれは指摘した途端に陶酔の雨あられになる前段階である
スカロンも暫くして気付いたが、どうするか才人に耳元で囁い...
「あれ、才人ちゃんのプレゼントでしょ?」
「…まぁ」
「…本人の目の前で惚ける気満々よ」
「…好きにやらせてやって」
「良いの?」
「…出来れば聞きたく無い」
「だよねぇ」
才人達がひそひそ話をしているのを、エレオノールは今か今か...
「はいは〜い。皆さん到着で〜す」
シエスタの大声と共にぞろぞろ入って来たのを機に、才人はこ...
「ふぅ、すんごい量だったわ。あれはちょっと一仕事以上にな...
「ん?これ?良くぞ聞いてくれたわね。こっれっは、ゼロ機関...
ムカッとしたキュルケがそのまま手をグイっと引っ張って覗き...
「ほら、ゼロ機関所長秘書って、特別じゃない?才人のサポー...
キュルケはその出来具合の良さに明らかに機嫌を悪くし、モン...
才人が戻って来たら、少女達がガタッと立ち上がって、才人に...
「ダーリン、ヴァリエールばっかりずるい!私も欲しいぃぃぃ...
「私も欲しい!」
「…」
訴えられた才人自身、こうなる事は予測していた
だから、あんまりひけらかして欲しくなかった訳だが
才人は皆の機嫌を取る為に、一人一人の好み聞き出した
「キュルケは金持ちだろう?」
「ダーリンから欲しいの!」
女とはそんなものである。貴族も平民も関係無い
ルイズがやって来てエレオノールの指輪を見て固まり、才人に...
「ルイズ、あんたは以前貰ったでしょ?だからあんたは無し。...
そう言ってキュルケはルイズを邪険に扱い、納得出来る理由だ...
「あたしは主人だもん」
「使い魔に給料払わない主人のお陰で、自力で稼いじゃったわ...
モンモランシーの指摘にうぐっと詰まるルイズ
「使い魔の価値を金の稼ぎで判断するのは良くないですよねぇ...
シエスタが料理を抱えて持って来て、テーブルに置きながらち...
ルイズはぷるぷると、皆と違う意味で涙目だ
なんと言うか、何で何時もこう全てが墓穴になるのか、ルイズ...
「…今回は装飾品は一人ひとつで、良いね?」
少女達がぶんぶん頷いて才人に絡み付き、其を見てたジェシカ...
「本当にモテるんだ。しかも貴族相手……」
「シエスタって、本当に命懸けなのね。ちょっと、尊敬出来ち...
そんな感じで盛り上がり始めた店内で、才人とシエスタでスカ...
* * *
ラ=ラメー伯領で、カトレアはラ=ラメー伯と対面していた
「この様な事をして、私の心が手に入るとお思いですの?」
「それに付いては、もう諦めた。伊達に10年も求婚してないよ...
そう言って、肩を竦めるラ=ラメー伯にカトレアは顔をしかめる
「だけど、それでも僕は、君が僕の子を産んで、慈しむ姿を見...
カトレアは、彼が自分の身体を慮って行動に移さざるを得なか...
「ピエール」
「久し振りに呼んでくれたね」
カトレアに名前を呼ばれて本当に嬉しそうにするラ=ラメー伯...
「何度も言ってるでしょう?貴方では震えないのよ。私の身体...
「だから君には意に沿わぬ結婚になるね。まぁ、貴族同士には...
そう言って悪びれないラ=ラメー伯
少なくとも、事実になりつつある現実に、カトレアは息苦しさ...
「アミアスはどうしたのです?」
「あぁ、あの吸血鬼?殺したよ」
ごく当たり前に言い切ったラ=ラメー伯にその瞬間、目を見開...
「お母様が紹介して下さった方なら、間違いは有りません。我...
両手を掲げて降参の意を示して、慌てて喋る
「君が家に来た時に、感激の余り手を出そうとしたら、約束が...
「本当でしょうね?」
「見に来ると良いよ」
そう言って立ち上がったので、カトレアも付いて行く為に立ち...
* * *
暗い牢の中で、アミアスは両手両足を拘束されて幽閉されていた
口には猿轡を噛まされて、先住の詠唱と噛み付きを防止している
キィ
そんな折、鉄格子の扉が開いて二人入室して来た
「吸血鬼と言えど、可愛いからね。家の馬鹿が手出ししない様...
「……感謝するわ」
そう言って、カトレアはアミアスに駆け寄り、猿轡を外して語...
「アミアス、大丈夫?私のせいでごめんね。貴女が吸血鬼と気...
アミアスは首を疲れた様に振って、力無く微笑んでみせた
「大丈夫ですよ、慣れてますから。捕まるの何度も有りました...
「なら、私の血を」
アミアスは毅然と首を振って答えた
「貴女の血は駄目。貴女が弱ってしまう。私がイーヴァルディ...
「今、君に死なれても困るな。僕の血を」
「要らない、不味いもの。男の血はもう、イーヴァルディ以外...
アミアスの決然とした決意に、こめかみをピクピクさせるラ=...
「捕まってるのに、随分生意気だな」
「だって、私は何もしなくても平気だから。イーヴァルディは...
そう言って、一切媚びないアミアスの態度に憮然とする
「普通は取られたら、態勢を整える前に直ぐに取り返しに来る...
「来る、絶対よ。多分、一番劇的なタイミングで。貴族に負け...
そう嘯き、アミアスはカトレアにウィンクしてみせた
「一番綺麗な格好で待っててあげて。きっと、楽しい事になる...
カトレアはハッとして彼女を見た
「産まれた時から……ずっと?」
コクリと頷くアミアス
「だから、大丈夫。お姉さんの言う事信じなさいな。貴女達よ...
その言葉に、カトレアはクスリと笑って頷いた
「はい、お姉様」
「では僕も、年寄りの忠告に従って、警戒を強めよう。君を殺...
「充分よ。貴方も貴族の中では優しい人ね」
「褒められてるのかな?それは?」
首を捻ってるラ=ラメー伯に、笑ってアミアスが頷いた
* * *
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