ゼロの使い魔保管庫
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学院では、その頃大量に刺繍作業と制服丈の調整でメイド達が...
小遣いに悩む女生徒には渡りに舟であり、バイト代欲しさに結...
勿論メイド達にもバイト代を払っている
制服一式揃えるにも、予備含めると大量に必要なので、数百着...
そんな中、エレオノールとルイズは刺繍をやろうとして解れさ...
「あんた達揃いも揃って下手くそね。そっちでワッペン作って...
モンモランシーにそう切り捨てられたが、流石にマントを穴だ...
何気に貴族の子女達で出来ない人の方が少なく、才人は驚いた
「皆、裁縫出来るんだな」
「服は高いのよ。補修出来なくてどうするの?」
「…納得」
キュルケの言に、深く頷いたのである
タバサも縫っていて、正に貴族の子女の教養の一つなんだなと...
皆がゼロ機関の休憩所で所狭しと針糸をチクチクやってる中、...
「あの、才人さん、これ、どうですか?」
そう言って出したのが、厚手の帆布ベースのズボンだ
帆布自体はジーンズと同様綿素材だ
非常に堅いが、着馴れると柔らかく且つ丈夫なのが売りで、実...
溶接を生業にする才人には、耐火目的の腕カバーや前掛け、頭...
「あぁ、試しに縫ってた奴か……どうやって染めたの?」
縫ってた時は帆布特有のクリーム色だったのだが、綺麗な濃紺...
「草汁煮詰めて作った染料に、水魔法掛けて生地に深く浸透さ...
才人は感心して受け取り、二人に本気で頭を下げた
「すんげぇ嬉しい。有り難う二人共。やっと、着替えが出来た」
才人がちょっと涙ぐんで、ぐしっと鼻をすすっている
日本人には、着た切り雀はやっぱりキツイ
口に出さないだけで、毎日洗濯したかったのだろう
ブーツも同じ型で替えが届き、才人が首を捻ってたら、エレオ...
才人の感激ぶりに、シエスタはニコッて微笑んだ
「喜んで貰えて良かった。少しは御返し出来ましたよね?」
「充分だよ」
「まだまだですよ〜?私は、御返ししなきゃならない分が山盛...
そう言って、指をチッチッチッチッと振ってウィンクしたシエ...
「楽しみにしてるよ」「はい!」
そんなシエスタの行いを見て、目の前のワッペンの刺繍の様な...
「なんで皆チクチク出来るのよ?」
「全くよ」
エレオノールも苦心しながら、一針一針人の三倍の時間を掛け...
「ヴァリエールは他の仕事やってなさい。冗談抜きで邪魔」
周りからジトーと見詰められたエレオノールは、そそくさと立...
「それじゃ任せるわ。他の仕事も山積みだし」
そう言って逃げ出し、ルイズは視線に耐えつつ、必死に針糸を...
ルイズもバイト代は欲しいのだ
何だかんだで借金返済をモンモランシーとかにしてたら夏休み...
* * *
才人は仮眠室をダルシニに明け渡し、ダルシニは昼間は皆と一...
話し相手たるアミアスが居ない為に、調子が出ない様だ
才人はそんなダルシニの様子がちょっと気になった為に、ちょ...
「イーヴァルディ。そんなに頻繁に来なくても大丈夫ですよ」
「そう見えないんでね。飲む?」
そう言ってワインを掲げて見せると、ダルシニは首を振って微...
「水は飲みますが、口に出来るのは血だけなんです」
「厄介だね。人の料理なんて気持ち悪いだけか」
「そうですね。でも馴れました。何時までも気持ち悪がってる...
才人はその言葉に頷く
「そっか」
「私を酔わせたいですか?」
「いや、気晴らしになるならって思っただけ」
才人にそう言われ、ダルシニはクスリとした
「一つ方法が有ります」
「へぇ、どんな?」
「貴方が酔って、私がその血を飲めば、酔っ払えます」
才人はその言葉を聞いた途端、ワインをグビグビやり出した
「旦那の酔っ払い中に飲んだんだな?」
「当たり」
才人は彼女の気晴らしの為に一気に飲み、腕を差し出した
「酔う?」
「そうですね……ちょっと酔いたいかな?」
仮眠室のベッドに二人座って、才人の腕にかぷりと牙を突き立...
「あ〜、もう酔った?」
「おいひい、これおいひい。なんれ?」
「そいや、日本人は美味いって、人食い種族の人が言ってた様...
才人がそう言って首を傾げてると、ダルシニは妖しい瞳をして...
「旦那裏切っちゃ駄目だよ」
「ちがう〜しょくよくぅ」
そのままぎしりと才人にのし掛かって才人をベッドに押し倒す...
そのまま頬をペロペロ舐め出し、才人が擽ったさに身を悶える
「おいひい。もっとなめさせてぇ」
どんどん呂律が回らなくなっていくダルシニに、才人は思わず...
「汗にアルコール混じってんだな」
才人の服を上をはだけてペロペロ舐めたダルシニは、そのまま...
* * *
才人がルイズの部屋に戻ると、ルイズはちくちくと針仕事をや...
「あんまり根詰めるなよ」
「皆と同じノルマこなさないと、バイト代貰うの恥ずかしいじ...
「ご立派。だけど、そろそろ寝る時間だろ?」
「中途半端は嫌なの」
ルイズの真剣な仕事を見ながら、才人は首を捻って呟いた
「そいやこれ、ヴァリエールとの契約違反だな?」
真面目に考えてる為、ルイズはちらっと見た瞬間に才人に命令...
「内緒よ内緒。お小遣いピンチなの」
「ん〜。他の家でも不干渉契約した家の子女にも手伝って貰っ...
そう言って少々落ち込んでいるが、そんな才人にルイズは縫い...
「刺繍や縫い物なんか機密じゃないから平気でしょ?」
「契約は違うんだよなぁ」
才人の頭の堅さをルイズは更に弄る
「靡かせる為の懐柔作戦と思えば良いのよ。ウチに付けば得す...
「あ、そうか」
ポンと手の平を拳の底で叩いて納得し、才人は頷いた
「先に寝てて良いわよ」
そう言うルイズから針糸を取り上げた才人は、そのまま後ろか...
「ちょっと、ご主人様の仕事を邪魔しないでよ!」
「使い魔は根詰めたご主人様が朝迄頑張る未来が見えたので、...
「あたしは仕事が遅いから、人の三倍頑張らないと!」
「女のコが徹夜すんのは美容の大敵。隈作ったルイズは見たく...
「才人は二徹三徹するじゃない!」
「野郎は耐久性有るから良いの」
そう言ってもがくルイズを抱き上げたまま、ベッドに横たえる...
単純な力差を発揮されるとルイズには抵抗出来ず、しかも無理...
『えっと、私、無理矢理脱がされて抱っこされて、しかも抱き...
逃れようとしたが、腕枕に胸元の匂いをスピスピしたら逃げる...
才人の身体は、ルイズにとって完全な安眠薬になってしまって...
* * *
ラ=ラメー伯の礼拝堂で、ささやかながら結婚式に参加する貴...
その頃、カトレアは別室にてウェディングドレスに身を包んで...
とうとう彼は来なかった
「解ってました。平民の彼では、病気持ちの私は重すぎる」
そう呟いて、表情を堅くしているカトレア
「夢を有り難う、才人殿。私も、現実に向かい合わなくちゃね」
アミアスの言い分も解るが、そうそう上手く話が転がる訳が無...
「少なくとも、ピエールは私を好きでいてくれる。無難な相手...
そう自身に言い聞かせ、椅子の上でギュッと握った両手にぽた...
「ひっく、ひっく……私も健康な身体なら……今頃……きっと……」
コンコンとノックが響き、カトレアは涙を拭ってから返事をする
「はい」
「花嫁、時間です」
「分かりました」
そう言って、カトレアは席を立った
『もう少し、冒険したかったな。さよならカトレア』
心で呟いて、カトレアは表情を朗らかに変えて扉に向かって歩...
* * *
「だぁもう、ギリギリになっちまったじゃないか!何でいきな...
オストラントの艦橋で才人は頭をガシガシしながら呆れており...
コルベールが舵を握っていて、航海長のトビが航路を決めて進...
才人のジャケットの左肩にはゼロ機関の刺繍(ルイズ縫製)がさ...
シエスタもメイド服の肩口にワッペンが才人同様縫い付けられ...
そう、ゼロ機関は全員統一デザインで刺繍された品が制服やマ...
キュルケやモンモランシーも着けようとしたのだが
「協力貴族でも学生は駄目よ。学生は学院所属が第一」
そうエレオノールが言って却下した為、渋々学生用マントのま...
で、小遣い欲しさに手伝ったモノが船に運び込まれたのを見て...
才人が女のコに甘いのは周知の事実であり、押し通せると思っ...
「だって、こんなに速い空船なんて興味津々になりますわ!」
そう言って、ケティが好奇心に満ちた眼で才人をキラキラ見て...
「いや、君ん所の親父さんとウチ、仲悪いのよ。契約違反なん...
才人が頭をガリガリ掻きながら言う才人に、ケティは更に涙を...
「だったら良いですわ。私、ゼロ機関のお仕事しちゃったって...
自分の仕事を楯にした脅迫に、とうとう才人が折れた。頭をガ...
「ああもう。勝手に動かない。命令には従う。守れる?」
「はい!」
勢い良く返事をしたケティ達に才人がルイズに指示を下した
「ルイズ、悪いけど彼女達を二人部屋に案内して。艦橋に遊び...
最初はルイズに、後はケティ達に話しかけて、皆が頷いてルイ...
「すっかり遠足になってしまったね、才人君」
そう言ってコルベールが笑っていて、才人も苦笑しながら頷いた
「トビ、好みの娘は居たか?」
「いやぁ、俺じゃ無理。なんせ平民だしね。艦長が異常なんだ...
才人が話を振ると、トビはそう言って、片目隻脚の身体を笑い...
「艦長、そろそろラ=ラメー伯領上空だ」
「総員戦闘配置。ゼロドラグーン、アッパーデッキに出せ」
〈了解、ゼロドラグーン出します〉
トビの報告を元に才人が艦橋から指示を下し、甲板員が返答を...
続いて、シルフィードに乗ったタバサも上がって来る
「総員に告ぐ。なるべく殺すな。なるたけ穏便に済ませたいっ...
才人がそう言うと、アッパーデッキの連中がニヤニヤしながら...
外には拡声器で声を届けているのだ
「力ずくで突破しなきゃならない場合も、なるたけ人は撃つな...
そう言うと、才人が良くやる様に、全員が親指を立てて見せ、...
「戦はあんたらの方が得意だろうから任せる。頼むぜ、マルセ...
そう言うと、分隊長のマルセル=アルベールが自身の騎獣たる...
「総員聴こえる?管制は私がやるわ。あんた達、勝手に動かな...
〈ウィ〉
エレオノールが話すと返事が入る
〈1時方向距離5000高度1500艦影有り。ラ=ラメー旗、哨戒艦...
才人はその報告に暫く思考すると、トビに聞いてみる
「追い掛けて来ると思うか?」
「そりゃ、勿論。こっちが色々やってる最中に追い付いて、後...
才人はその言葉に頷いて指示を下した
「先生、舵を戦列艦に。上を取るぞ。上を取ったと同時に出撃...
「了解だ、才人君」
「ゼロドラグーン、出撃準備。上を取ったと同時に飛び出して...
〈了解〉
エレオノールとコルベールが才人の指示に頷いて指示を伝え、...
戦列艦のクラスは砲門数で区分される
戦列艦は砲門数イコール攻撃力であり、現在のトリステイン艦...
片舷38門の76門艦はスタンダードと呼ばれるクラスで、製造コ...
フルで運用すると、砲手一門三〜四人で最低220人、運航で40人...
如何に戦列艦の運用に金が掛かるか、お分かりになって頂ける...
人手不足のトリステインには、渡りに舟なのだ
当然払い下げ品はフルでの運用人数は回していない。片舷分の...
アルビオンのロイヤルソブリン就役、それにゲルマニアやガリ...
要は退役艦を売り払って、財源不足に充当していたのである
一部は裏ルートで空賊に回った事が確認されており、ネフテス...
全ては貧乏が悪い…と言うべきか、それとも、きちんと対策練ら...
そう言った細かい積み重ねが、現在のトリステイン封建貴族の...
ラ=ラメー伯領にスタンダードが有るのはそんな王政府に対す...
才人はそう言った細かい事情迄は知らないが、とにかく犠牲者...
事情を知っているコルベールやエレオノールは口許を綻ばせて...
トビは口笛を一つ吹いて、コルベールに視線を合わせて口許を...
そんな中、付いて来たケティ達が上がって来たのと、ゼロドラ...
「うわっ!綺麗!」
* * *
スタンダードに乗って居た乗組員は不幸だった
普段は適当に手抜きして、哨戒任務もなおざりにしても文句す...
自分達も、本来なら新伯爵の式に参列して盛大に宴会で盛り上...
そんな中、猛スピードで突っ込んで来る、所属旗が良く判らな...
艦速180リーグで飛行した場合、1リーグ進むのに僅か20秒。5...
最も、艦速とは風の流れに対する速度である為、地上に対する...
つまり、理論上は向かい風が時速180リーグなら、オストラント...
そんな時には、飛行しないのがお約束である
そんな訳で向かって来るので舷側を向けるべく転舵しながら上...
混成幻獣騎兵と風竜の騎士が降り様、帆という帆を全て燃やす...
余りの一撃離脱に全員ポカンとしながら見送るしかなかった
「……おい、帆の予備有るか?」
「有る訳ねぇだろ。全部だぜ、全部。修理代だけで偉い出費だ」
「…撃沈よかましだよな」
「…だな。通信手、報告だ。我、攻撃により航行不能。離脱する」
* * *
「逆進ブレーキ」
「逆進ブレーキようそろ」
才人が後方を見ながらコルベールに指示を下し、コルベールが...
エレオノールが指示を下した
「初陣お見事。綺麗な一撃離脱だわ。総員そのまま待機」
〈了解〉
「いや、マルセルすげぇな。混成部隊を一匹の生き物にしてる...
才人が感心してると、トビが自分の事の様に宣った
「マルセルは元グリフォン隊の中隊長だってさ。両足膝から無...
「ウチには勿体ねぇ人材だな」
才人がそう言ってうんうん頷いてると、コルベールが苦笑して...
〈艦長の艦の扱いが巧いから、楽させて貰ってる〉「だって」
エレオノールが魔法通信機でマルセルに話しをしたらしく、才...
「さてと、そろそろか?」
「あぁ、見えた。艦長、魔法拡声器」
「あいよ」
* * *
教会の式場では、花嫁の美しさに皆が息を飲んで注視し、一歩...
伏し目がちの眼からは、感情は伺う事が出来ず、全体としては...
「……誓いますか?」
「誓います」
ラ=ラメー伯ピエールの宣誓が、気が付いたら終わっていた
カトレアは笑みを浮かべてるが、どうも心此処に在らずとの様だ
「嫁……花嫁?」
カトレアは暫く自分が呼ばれている事に気が付かず、先程入っ...
劇的なタイミングなら、絶対今だ。だが、一向に来ない
誓ってしまったら、反故には出来ない
流石に参列者がざわめき始め、カトレアが先程から扉を見てい...
「おい、どうしたって言うんだ?」「さぁな」「マリッジブル...
司祭も慣れてるのか、辛抱強くカトレアに何度も何度も同じ文...
そんな中、走る足音が聞こえて来て、カトレアは身体を向けて...
ダダダダダダダ
走る足音が大きくなって人影が現れた
「ほ、報こ〈カトレアァァァァァ!〉
拡声器で多少変調しているが聴こえた瞬間、カトレアはいつの...
「待つんだ、カトレア」
ラ=ラメー伯の声を背にカトレアは走った
走って走って、産まれて初めての全力疾走
『走れ、走るのよ、カトレア。今走らなきゃ、私は絶対に後悔...
教会から飛び出すと、目前にオストラント
そして、オストラントからは風竜が丁度離陸し、背中には求め...
「ぜぃ……イル………ソラ……フル………ウィンデェェェェ!!」
太ももから杖を抜いて、力の限りルーンを唱えてフライで飛ぶ
そして、そんなカトレアの下をシルフィードが滑空し、両手を...
「ひっく……ひっく」
「ごめんな。来るの遅くなった」
カトレアはそんな才人の胸で泣いている
「……ごめんなざい。…信じきれながった、わだし……ごめ……」「ほ...
カトレアは首を振って、そのまま才人の首にしがみ付いて離さ...
その様を、ルイズはアッパーデッキから見て、一人暗い表情を...
ちぃ姉さまが一番綺麗なのは知っている
でも、反則的な美女振りは酷い。アレでは、ルイズが幾ら頑張...
そんな中、花婿の衣装を纏った男が歩み寄って来たのがルイズ...
「兄弟。敢えてそう呼ばせて貰うよ。彼女と僕が結婚すれば、...
カトレアが眼を見開き、すかさず才人の背後に回り、才人はカ...
「さて、未来の予定は未定だから、そう呼ばれるのは抵抗有る...
「カトレアを渡してくれ」
手を差し出しながら歩み寄る男に、才人は一度カトレアを見る...
「嫌だってさ。俺、甘チャンで、女のコのお願いに弱いのよ」
そう言って、才人は拒否し、ピエールは杖を抜いた
「きちんと抜け。決闘だ。生死を賭けて、カトレアを寄越せ」
「悪いけど、アンタを殺す気にはなれん」
「なら、そのまま死ね」
才人は拒否するが、ピエールは問答無用でブレイドを纏って斬...
才人は初太刀をあっさり避け、そのまま説得を試みる
「だからやる気は無い。彼女さえゼロ機関で預かれれば、アン...
「黙れ!お前なんかに何が解る!平民のお前なんかに何が!僕...
更に刺突を繰り出すが、才人はバックステップで間合いを開け...
「其をお前、お前だ!ぽっと出たお前なんかに、何故想い人が...
才人はカチンとし、デルフに手を掛けた
「…平民のお前なんかに……か」
ブン
風が唸りを上げてデルフが抜かれ、デルフが才人に声を掛けた
「よう相棒、久し振り。寂しくて寂しくてずっと泣いてたわ」
「デルフが村雨みたいに濡れるのか?悪い冗談だ」
「おぅよ。もう娘っ子共なりに濡れて濡れてヌレヌレよ?相棒...
才人がげんなりしつつピエールを見据える
「生死を賭けるんだろ?本気で来い。本気で相手してやる。結...
「クックックックッ。なら、食らうが良い」
そう言って、長い長い詠唱を始めたピエール。才人は黙って見...
「なんでぇ相棒。攻めねぇのかよ?」
「本気でやりたいってなら、気の済む迄は付き合わないとな」
そして、20メイル級土のゴーレムが生まれると才人は無造作に0...
ダアァン!
一発でゴーレムの腕の半ば迄抉れ、ピエールが唖然とする中、...
ダアァン!
ゴーレムの左手が落ち、そのまま才人が狙いを付けて撃つ度に...
「ひ、卑怯だぁ!」「…魔法使うアンタが言うか?」
才人はそう言って、今度は腰から緑の弾丸を抜いて03式にセッ...
ダァン!
衝撃波で身体事吹き飛び、狙いを付けられた杖が粉々になって...
「…グァ」
「ほぅ、通常ドレッドなら、衝撃波で死なないのか」
ザッザッザッ
才人が03式をしまった後に歩み寄りながらデルフを持ってピエ...
「死ぬか?」
「…殺せ」「…そうか」
才人がそのままデルフを振り上げ「止めて下さい!」その声に...
出したのは、他でもないカトレアだ
「才人殿、お願いします。私の友人の一人を殺さないで下さい」
「…」
才人は無言でデルフを鞘に収めると、何も言わずに踵を返し、...
「アミアスさんの居場所は知ってる?知ってるなら連れ出して...
「はい」
二人がシルフィードに乗り込むと、ピエールが笑い出した
「くくくくく。反則だ。僕は何にも勝てないじゃないか」
大の字に寝転がりながら笑っているピエールの様を参列者達が...
* * *
カトレアの案内で路往く二人が塔の牢屋を村雨で切り開き、才...
「やっぱり、来てくれた」
「遅くてごめん」
「ううん、良い」
少々儚げに言いつつ、確かな足取りで立ち上がるアミアス
「帰ろうか」
「…何処へ?」
アミアスの問いに、ちょっと考えて才人は答えた
「オストラントへ。俺達ゼロ機関の家だ」
「はい」
* * *
才人達がアッパーデッキにシルフィードで乗り上げると、アミ...
二人共に特に話さないが、気持ちは通じてるのだろう
「誰の為に?」「姉様、言わせる積もり?」
にこにこしながら言うカトレアに、エレオノールはフッと微笑...
「ゼロ機関で正式に雇うわ。良いわね、才人」「あぁ」
才人も頷いてそこで思い出したのか、懐から何かを取り出し、...
「エレオノールとモンモンとヴァレリーさんの協同作品。加工...
そう、指輪の台座の水晶内に精霊の涙が治癒の魔法効果を乗せ...
見た目はありふれたマジックアイテムだが、カトレアにはその...
「あ…」
モンモランシーが歩み寄って来て話し掛けた
「ミスフォンティーヌ。精霊の涙はまだ有るから大丈夫。気軽...
「有り難うございます」
深々と頭を下げたカトレアはそのまま才人を抱き締めた
カトレアの庇護はゼロ機関で受け入れた
もう、カトレアの瞳に迷いは無い
ずっと自分を見ながら何も言わないルイズに、カトレアはにっ...
「ごめんなさいねルイズ。私、才人殿が居ないと生きていけな...
「……絶対、ぜぇったい、許しません」
カトレアは嫉妬バリバリのルイズに近寄って抱き締め、耳に囁...
「皆で好きな人のお嫁さんになりましょ。正妻は譲らないから...
ルイズはそんなカトレアを睨み、言い放った
「将来性なら、断然あたしだもん」
「楽しみにしてるわ」
カトレアはにこりとしながら才人の傍に寄って、ゼロ機関の男...
「皆様、ご迷惑をかけるとは思いますが、メイドと共に宜しく...
「美人は大歓迎だ。なぁ、皆」
トビが大声で皆を代表して答え、カトレアはにこりと微笑み、...
「帰るぞ。全員配置につけ」
「「「ウィ」」」
才人の指示に全員持ち場に散り、才人も艦橋に向けて歩き出した
* * *
終了行:
学院では、その頃大量に刺繍作業と制服丈の調整でメイド達が...
小遣いに悩む女生徒には渡りに舟であり、バイト代欲しさに結...
勿論メイド達にもバイト代を払っている
制服一式揃えるにも、予備含めると大量に必要なので、数百着...
そんな中、エレオノールとルイズは刺繍をやろうとして解れさ...
「あんた達揃いも揃って下手くそね。そっちでワッペン作って...
モンモランシーにそう切り捨てられたが、流石にマントを穴だ...
何気に貴族の子女達で出来ない人の方が少なく、才人は驚いた
「皆、裁縫出来るんだな」
「服は高いのよ。補修出来なくてどうするの?」
「…納得」
キュルケの言に、深く頷いたのである
タバサも縫っていて、正に貴族の子女の教養の一つなんだなと...
皆がゼロ機関の休憩所で所狭しと針糸をチクチクやってる中、...
「あの、才人さん、これ、どうですか?」
そう言って出したのが、厚手の帆布ベースのズボンだ
帆布自体はジーンズと同様綿素材だ
非常に堅いが、着馴れると柔らかく且つ丈夫なのが売りで、実...
溶接を生業にする才人には、耐火目的の腕カバーや前掛け、頭...
「あぁ、試しに縫ってた奴か……どうやって染めたの?」
縫ってた時は帆布特有のクリーム色だったのだが、綺麗な濃紺...
「草汁煮詰めて作った染料に、水魔法掛けて生地に深く浸透さ...
才人は感心して受け取り、二人に本気で頭を下げた
「すんげぇ嬉しい。有り難う二人共。やっと、着替えが出来た」
才人がちょっと涙ぐんで、ぐしっと鼻をすすっている
日本人には、着た切り雀はやっぱりキツイ
口に出さないだけで、毎日洗濯したかったのだろう
ブーツも同じ型で替えが届き、才人が首を捻ってたら、エレオ...
才人の感激ぶりに、シエスタはニコッて微笑んだ
「喜んで貰えて良かった。少しは御返し出来ましたよね?」
「充分だよ」
「まだまだですよ〜?私は、御返ししなきゃならない分が山盛...
そう言って、指をチッチッチッチッと振ってウィンクしたシエ...
「楽しみにしてるよ」「はい!」
そんなシエスタの行いを見て、目の前のワッペンの刺繍の様な...
「なんで皆チクチク出来るのよ?」
「全くよ」
エレオノールも苦心しながら、一針一針人の三倍の時間を掛け...
「ヴァリエールは他の仕事やってなさい。冗談抜きで邪魔」
周りからジトーと見詰められたエレオノールは、そそくさと立...
「それじゃ任せるわ。他の仕事も山積みだし」
そう言って逃げ出し、ルイズは視線に耐えつつ、必死に針糸を...
ルイズもバイト代は欲しいのだ
何だかんだで借金返済をモンモランシーとかにしてたら夏休み...
* * *
才人は仮眠室をダルシニに明け渡し、ダルシニは昼間は皆と一...
話し相手たるアミアスが居ない為に、調子が出ない様だ
才人はそんなダルシニの様子がちょっと気になった為に、ちょ...
「イーヴァルディ。そんなに頻繁に来なくても大丈夫ですよ」
「そう見えないんでね。飲む?」
そう言ってワインを掲げて見せると、ダルシニは首を振って微...
「水は飲みますが、口に出来るのは血だけなんです」
「厄介だね。人の料理なんて気持ち悪いだけか」
「そうですね。でも馴れました。何時までも気持ち悪がってる...
才人はその言葉に頷く
「そっか」
「私を酔わせたいですか?」
「いや、気晴らしになるならって思っただけ」
才人にそう言われ、ダルシニはクスリとした
「一つ方法が有ります」
「へぇ、どんな?」
「貴方が酔って、私がその血を飲めば、酔っ払えます」
才人はその言葉を聞いた途端、ワインをグビグビやり出した
「旦那の酔っ払い中に飲んだんだな?」
「当たり」
才人は彼女の気晴らしの為に一気に飲み、腕を差し出した
「酔う?」
「そうですね……ちょっと酔いたいかな?」
仮眠室のベッドに二人座って、才人の腕にかぷりと牙を突き立...
「あ〜、もう酔った?」
「おいひい、これおいひい。なんれ?」
「そいや、日本人は美味いって、人食い種族の人が言ってた様...
才人がそう言って首を傾げてると、ダルシニは妖しい瞳をして...
「旦那裏切っちゃ駄目だよ」
「ちがう〜しょくよくぅ」
そのままぎしりと才人にのし掛かって才人をベッドに押し倒す...
そのまま頬をペロペロ舐め出し、才人が擽ったさに身を悶える
「おいひい。もっとなめさせてぇ」
どんどん呂律が回らなくなっていくダルシニに、才人は思わず...
「汗にアルコール混じってんだな」
才人の服を上をはだけてペロペロ舐めたダルシニは、そのまま...
* * *
才人がルイズの部屋に戻ると、ルイズはちくちくと針仕事をや...
「あんまり根詰めるなよ」
「皆と同じノルマこなさないと、バイト代貰うの恥ずかしいじ...
「ご立派。だけど、そろそろ寝る時間だろ?」
「中途半端は嫌なの」
ルイズの真剣な仕事を見ながら、才人は首を捻って呟いた
「そいやこれ、ヴァリエールとの契約違反だな?」
真面目に考えてる為、ルイズはちらっと見た瞬間に才人に命令...
「内緒よ内緒。お小遣いピンチなの」
「ん〜。他の家でも不干渉契約した家の子女にも手伝って貰っ...
そう言って少々落ち込んでいるが、そんな才人にルイズは縫い...
「刺繍や縫い物なんか機密じゃないから平気でしょ?」
「契約は違うんだよなぁ」
才人の頭の堅さをルイズは更に弄る
「靡かせる為の懐柔作戦と思えば良いのよ。ウチに付けば得す...
「あ、そうか」
ポンと手の平を拳の底で叩いて納得し、才人は頷いた
「先に寝てて良いわよ」
そう言うルイズから針糸を取り上げた才人は、そのまま後ろか...
「ちょっと、ご主人様の仕事を邪魔しないでよ!」
「使い魔は根詰めたご主人様が朝迄頑張る未来が見えたので、...
「あたしは仕事が遅いから、人の三倍頑張らないと!」
「女のコが徹夜すんのは美容の大敵。隈作ったルイズは見たく...
「才人は二徹三徹するじゃない!」
「野郎は耐久性有るから良いの」
そう言ってもがくルイズを抱き上げたまま、ベッドに横たえる...
単純な力差を発揮されるとルイズには抵抗出来ず、しかも無理...
『えっと、私、無理矢理脱がされて抱っこされて、しかも抱き...
逃れようとしたが、腕枕に胸元の匂いをスピスピしたら逃げる...
才人の身体は、ルイズにとって完全な安眠薬になってしまって...
* * *
ラ=ラメー伯の礼拝堂で、ささやかながら結婚式に参加する貴...
その頃、カトレアは別室にてウェディングドレスに身を包んで...
とうとう彼は来なかった
「解ってました。平民の彼では、病気持ちの私は重すぎる」
そう呟いて、表情を堅くしているカトレア
「夢を有り難う、才人殿。私も、現実に向かい合わなくちゃね」
アミアスの言い分も解るが、そうそう上手く話が転がる訳が無...
「少なくとも、ピエールは私を好きでいてくれる。無難な相手...
そう自身に言い聞かせ、椅子の上でギュッと握った両手にぽた...
「ひっく、ひっく……私も健康な身体なら……今頃……きっと……」
コンコンとノックが響き、カトレアは涙を拭ってから返事をする
「はい」
「花嫁、時間です」
「分かりました」
そう言って、カトレアは席を立った
『もう少し、冒険したかったな。さよならカトレア』
心で呟いて、カトレアは表情を朗らかに変えて扉に向かって歩...
* * *
「だぁもう、ギリギリになっちまったじゃないか!何でいきな...
オストラントの艦橋で才人は頭をガシガシしながら呆れており...
コルベールが舵を握っていて、航海長のトビが航路を決めて進...
才人のジャケットの左肩にはゼロ機関の刺繍(ルイズ縫製)がさ...
シエスタもメイド服の肩口にワッペンが才人同様縫い付けられ...
そう、ゼロ機関は全員統一デザインで刺繍された品が制服やマ...
キュルケやモンモランシーも着けようとしたのだが
「協力貴族でも学生は駄目よ。学生は学院所属が第一」
そうエレオノールが言って却下した為、渋々学生用マントのま...
で、小遣い欲しさに手伝ったモノが船に運び込まれたのを見て...
才人が女のコに甘いのは周知の事実であり、押し通せると思っ...
「だって、こんなに速い空船なんて興味津々になりますわ!」
そう言って、ケティが好奇心に満ちた眼で才人をキラキラ見て...
「いや、君ん所の親父さんとウチ、仲悪いのよ。契約違反なん...
才人が頭をガリガリ掻きながら言う才人に、ケティは更に涙を...
「だったら良いですわ。私、ゼロ機関のお仕事しちゃったって...
自分の仕事を楯にした脅迫に、とうとう才人が折れた。頭をガ...
「ああもう。勝手に動かない。命令には従う。守れる?」
「はい!」
勢い良く返事をしたケティ達に才人がルイズに指示を下した
「ルイズ、悪いけど彼女達を二人部屋に案内して。艦橋に遊び...
最初はルイズに、後はケティ達に話しかけて、皆が頷いてルイ...
「すっかり遠足になってしまったね、才人君」
そう言ってコルベールが笑っていて、才人も苦笑しながら頷いた
「トビ、好みの娘は居たか?」
「いやぁ、俺じゃ無理。なんせ平民だしね。艦長が異常なんだ...
才人が話を振ると、トビはそう言って、片目隻脚の身体を笑い...
「艦長、そろそろラ=ラメー伯領上空だ」
「総員戦闘配置。ゼロドラグーン、アッパーデッキに出せ」
〈了解、ゼロドラグーン出します〉
トビの報告を元に才人が艦橋から指示を下し、甲板員が返答を...
続いて、シルフィードに乗ったタバサも上がって来る
「総員に告ぐ。なるべく殺すな。なるたけ穏便に済ませたいっ...
才人がそう言うと、アッパーデッキの連中がニヤニヤしながら...
外には拡声器で声を届けているのだ
「力ずくで突破しなきゃならない場合も、なるたけ人は撃つな...
そう言うと、才人が良くやる様に、全員が親指を立てて見せ、...
「戦はあんたらの方が得意だろうから任せる。頼むぜ、マルセ...
そう言うと、分隊長のマルセル=アルベールが自身の騎獣たる...
「総員聴こえる?管制は私がやるわ。あんた達、勝手に動かな...
〈ウィ〉
エレオノールが話すと返事が入る
〈1時方向距離5000高度1500艦影有り。ラ=ラメー旗、哨戒艦...
才人はその報告に暫く思考すると、トビに聞いてみる
「追い掛けて来ると思うか?」
「そりゃ、勿論。こっちが色々やってる最中に追い付いて、後...
才人はその言葉に頷いて指示を下した
「先生、舵を戦列艦に。上を取るぞ。上を取ったと同時に出撃...
「了解だ、才人君」
「ゼロドラグーン、出撃準備。上を取ったと同時に飛び出して...
〈了解〉
エレオノールとコルベールが才人の指示に頷いて指示を伝え、...
戦列艦のクラスは砲門数で区分される
戦列艦は砲門数イコール攻撃力であり、現在のトリステイン艦...
片舷38門の76門艦はスタンダードと呼ばれるクラスで、製造コ...
フルで運用すると、砲手一門三〜四人で最低220人、運航で40人...
如何に戦列艦の運用に金が掛かるか、お分かりになって頂ける...
人手不足のトリステインには、渡りに舟なのだ
当然払い下げ品はフルでの運用人数は回していない。片舷分の...
アルビオンのロイヤルソブリン就役、それにゲルマニアやガリ...
要は退役艦を売り払って、財源不足に充当していたのである
一部は裏ルートで空賊に回った事が確認されており、ネフテス...
全ては貧乏が悪い…と言うべきか、それとも、きちんと対策練ら...
そう言った細かい積み重ねが、現在のトリステイン封建貴族の...
ラ=ラメー伯領にスタンダードが有るのはそんな王政府に対す...
才人はそう言った細かい事情迄は知らないが、とにかく犠牲者...
事情を知っているコルベールやエレオノールは口許を綻ばせて...
トビは口笛を一つ吹いて、コルベールに視線を合わせて口許を...
そんな中、付いて来たケティ達が上がって来たのと、ゼロドラ...
「うわっ!綺麗!」
* * *
スタンダードに乗って居た乗組員は不幸だった
普段は適当に手抜きして、哨戒任務もなおざりにしても文句す...
自分達も、本来なら新伯爵の式に参列して盛大に宴会で盛り上...
そんな中、猛スピードで突っ込んで来る、所属旗が良く判らな...
艦速180リーグで飛行した場合、1リーグ進むのに僅か20秒。5...
最も、艦速とは風の流れに対する速度である為、地上に対する...
つまり、理論上は向かい風が時速180リーグなら、オストラント...
そんな時には、飛行しないのがお約束である
そんな訳で向かって来るので舷側を向けるべく転舵しながら上...
混成幻獣騎兵と風竜の騎士が降り様、帆という帆を全て燃やす...
余りの一撃離脱に全員ポカンとしながら見送るしかなかった
「……おい、帆の予備有るか?」
「有る訳ねぇだろ。全部だぜ、全部。修理代だけで偉い出費だ」
「…撃沈よかましだよな」
「…だな。通信手、報告だ。我、攻撃により航行不能。離脱する」
* * *
「逆進ブレーキ」
「逆進ブレーキようそろ」
才人が後方を見ながらコルベールに指示を下し、コルベールが...
エレオノールが指示を下した
「初陣お見事。綺麗な一撃離脱だわ。総員そのまま待機」
〈了解〉
「いや、マルセルすげぇな。混成部隊を一匹の生き物にしてる...
才人が感心してると、トビが自分の事の様に宣った
「マルセルは元グリフォン隊の中隊長だってさ。両足膝から無...
「ウチには勿体ねぇ人材だな」
才人がそう言ってうんうん頷いてると、コルベールが苦笑して...
〈艦長の艦の扱いが巧いから、楽させて貰ってる〉「だって」
エレオノールが魔法通信機でマルセルに話しをしたらしく、才...
「さてと、そろそろか?」
「あぁ、見えた。艦長、魔法拡声器」
「あいよ」
* * *
教会の式場では、花嫁の美しさに皆が息を飲んで注視し、一歩...
伏し目がちの眼からは、感情は伺う事が出来ず、全体としては...
「……誓いますか?」
「誓います」
ラ=ラメー伯ピエールの宣誓が、気が付いたら終わっていた
カトレアは笑みを浮かべてるが、どうも心此処に在らずとの様だ
「嫁……花嫁?」
カトレアは暫く自分が呼ばれている事に気が付かず、先程入っ...
劇的なタイミングなら、絶対今だ。だが、一向に来ない
誓ってしまったら、反故には出来ない
流石に参列者がざわめき始め、カトレアが先程から扉を見てい...
「おい、どうしたって言うんだ?」「さぁな」「マリッジブル...
司祭も慣れてるのか、辛抱強くカトレアに何度も何度も同じ文...
そんな中、走る足音が聞こえて来て、カトレアは身体を向けて...
ダダダダダダダ
走る足音が大きくなって人影が現れた
「ほ、報こ〈カトレアァァァァァ!〉
拡声器で多少変調しているが聴こえた瞬間、カトレアはいつの...
「待つんだ、カトレア」
ラ=ラメー伯の声を背にカトレアは走った
走って走って、産まれて初めての全力疾走
『走れ、走るのよ、カトレア。今走らなきゃ、私は絶対に後悔...
教会から飛び出すと、目前にオストラント
そして、オストラントからは風竜が丁度離陸し、背中には求め...
「ぜぃ……イル………ソラ……フル………ウィンデェェェェ!!」
太ももから杖を抜いて、力の限りルーンを唱えてフライで飛ぶ
そして、そんなカトレアの下をシルフィードが滑空し、両手を...
「ひっく……ひっく」
「ごめんな。来るの遅くなった」
カトレアはそんな才人の胸で泣いている
「……ごめんなざい。…信じきれながった、わだし……ごめ……」「ほ...
カトレアは首を振って、そのまま才人の首にしがみ付いて離さ...
その様を、ルイズはアッパーデッキから見て、一人暗い表情を...
ちぃ姉さまが一番綺麗なのは知っている
でも、反則的な美女振りは酷い。アレでは、ルイズが幾ら頑張...
そんな中、花婿の衣装を纏った男が歩み寄って来たのがルイズ...
「兄弟。敢えてそう呼ばせて貰うよ。彼女と僕が結婚すれば、...
カトレアが眼を見開き、すかさず才人の背後に回り、才人はカ...
「さて、未来の予定は未定だから、そう呼ばれるのは抵抗有る...
「カトレアを渡してくれ」
手を差し出しながら歩み寄る男に、才人は一度カトレアを見る...
「嫌だってさ。俺、甘チャンで、女のコのお願いに弱いのよ」
そう言って、才人は拒否し、ピエールは杖を抜いた
「きちんと抜け。決闘だ。生死を賭けて、カトレアを寄越せ」
「悪いけど、アンタを殺す気にはなれん」
「なら、そのまま死ね」
才人は拒否するが、ピエールは問答無用でブレイドを纏って斬...
才人は初太刀をあっさり避け、そのまま説得を試みる
「だからやる気は無い。彼女さえゼロ機関で預かれれば、アン...
「黙れ!お前なんかに何が解る!平民のお前なんかに何が!僕...
更に刺突を繰り出すが、才人はバックステップで間合いを開け...
「其をお前、お前だ!ぽっと出たお前なんかに、何故想い人が...
才人はカチンとし、デルフに手を掛けた
「…平民のお前なんかに……か」
ブン
風が唸りを上げてデルフが抜かれ、デルフが才人に声を掛けた
「よう相棒、久し振り。寂しくて寂しくてずっと泣いてたわ」
「デルフが村雨みたいに濡れるのか?悪い冗談だ」
「おぅよ。もう娘っ子共なりに濡れて濡れてヌレヌレよ?相棒...
才人がげんなりしつつピエールを見据える
「生死を賭けるんだろ?本気で来い。本気で相手してやる。結...
「クックックックッ。なら、食らうが良い」
そう言って、長い長い詠唱を始めたピエール。才人は黙って見...
「なんでぇ相棒。攻めねぇのかよ?」
「本気でやりたいってなら、気の済む迄は付き合わないとな」
そして、20メイル級土のゴーレムが生まれると才人は無造作に0...
ダアァン!
一発でゴーレムの腕の半ば迄抉れ、ピエールが唖然とする中、...
ダアァン!
ゴーレムの左手が落ち、そのまま才人が狙いを付けて撃つ度に...
「ひ、卑怯だぁ!」「…魔法使うアンタが言うか?」
才人はそう言って、今度は腰から緑の弾丸を抜いて03式にセッ...
ダァン!
衝撃波で身体事吹き飛び、狙いを付けられた杖が粉々になって...
「…グァ」
「ほぅ、通常ドレッドなら、衝撃波で死なないのか」
ザッザッザッ
才人が03式をしまった後に歩み寄りながらデルフを持ってピエ...
「死ぬか?」
「…殺せ」「…そうか」
才人がそのままデルフを振り上げ「止めて下さい!」その声に...
出したのは、他でもないカトレアだ
「才人殿、お願いします。私の友人の一人を殺さないで下さい」
「…」
才人は無言でデルフを鞘に収めると、何も言わずに踵を返し、...
「アミアスさんの居場所は知ってる?知ってるなら連れ出して...
「はい」
二人がシルフィードに乗り込むと、ピエールが笑い出した
「くくくくく。反則だ。僕は何にも勝てないじゃないか」
大の字に寝転がりながら笑っているピエールの様を参列者達が...
* * *
カトレアの案内で路往く二人が塔の牢屋を村雨で切り開き、才...
「やっぱり、来てくれた」
「遅くてごめん」
「ううん、良い」
少々儚げに言いつつ、確かな足取りで立ち上がるアミアス
「帰ろうか」
「…何処へ?」
アミアスの問いに、ちょっと考えて才人は答えた
「オストラントへ。俺達ゼロ機関の家だ」
「はい」
* * *
才人達がアッパーデッキにシルフィードで乗り上げると、アミ...
二人共に特に話さないが、気持ちは通じてるのだろう
「誰の為に?」「姉様、言わせる積もり?」
にこにこしながら言うカトレアに、エレオノールはフッと微笑...
「ゼロ機関で正式に雇うわ。良いわね、才人」「あぁ」
才人も頷いてそこで思い出したのか、懐から何かを取り出し、...
「エレオノールとモンモンとヴァレリーさんの協同作品。加工...
そう、指輪の台座の水晶内に精霊の涙が治癒の魔法効果を乗せ...
見た目はありふれたマジックアイテムだが、カトレアにはその...
「あ…」
モンモランシーが歩み寄って来て話し掛けた
「ミスフォンティーヌ。精霊の涙はまだ有るから大丈夫。気軽...
「有り難うございます」
深々と頭を下げたカトレアはそのまま才人を抱き締めた
カトレアの庇護はゼロ機関で受け入れた
もう、カトレアの瞳に迷いは無い
ずっと自分を見ながら何も言わないルイズに、カトレアはにっ...
「ごめんなさいねルイズ。私、才人殿が居ないと生きていけな...
「……絶対、ぜぇったい、許しません」
カトレアは嫉妬バリバリのルイズに近寄って抱き締め、耳に囁...
「皆で好きな人のお嫁さんになりましょ。正妻は譲らないから...
ルイズはそんなカトレアを睨み、言い放った
「将来性なら、断然あたしだもん」
「楽しみにしてるわ」
カトレアはにこりとしながら才人の傍に寄って、ゼロ機関の男...
「皆様、ご迷惑をかけるとは思いますが、メイドと共に宜しく...
「美人は大歓迎だ。なぁ、皆」
トビが大声で皆を代表して答え、カトレアはにこりと微笑み、...
「帰るぞ。全員配置につけ」
「「「ウィ」」」
才人の指示に全員持ち場に散り、才人も艦橋に向けて歩き出した
* * *
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