ゼロの使い魔保管庫
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レドゥタブールの艦上のメインマストトップスルでは、すっか...
宵闇が明けようとして空が紅く染め上がっている様は、辛い見...
「ふぅ、やっぱり年末は寒ぃ」
連戦をこなして、すっかり精悍な顔付きが出来ており、不安要...
「近衛だから空っぽのトリスタニア防衛って、しゃあないって...
そう言ってブツブツ言ってると、交代要員が上がって来た
「先輩、何ブツブツ言ってるんですか?聴こえて来ましたよ?」
そう言ってお約束のワインを持ってマリコルヌがやって来て瓶...
「お、持って来たのは空になってね、助かるよ」
「飲んだら返して下さいよ。僕も飲むんですから」
マリコルヌの声を背に煽るスティックス
「……くぁ〜〜〜!効いたぁ!!酒ないと本当に辛いぜ。何で軍人...
「本当ですよね。どうすか、見張りの方は?」
「さっぱり何も。夜だったから鳥すら見えない」
「そうですか。まぁそう簡単に……」
そう言って見回してマリコルヌが黙って硬直するのを、スティ...
「……見えてるかな?」
「此方が見えてるんです。見えてるでしょうね」
「……だね。報告!高度3500!距離一万!艦影多数!レコンキス...
スティックスの大声に、当直の甲板員達が一気に走り回り、全...
「敵襲!敵襲だ!総員起こし〜〜!急げ〜!」
此処に、ロサイスへの進路を開く為の一大会戦が始まったので...
* * *
「敵艦影から推測するに、ロイヤルソブリン級3、スタンダー...
「ほぅ……全艦出して来たな」
そう言ってボーウッドは暫し思考に耽り、指示を下し始めた
「此方の命令は損害無視での絶対突破だ。総司令部に伝令。我...
「ウィ、復唱します。我、会敵セリ、コレヲ突破セントス」
「行け」「はっ」
伝令が退出し、ボーウッドも退出する
「私も艦上に出る」
「はっ」
ボーウッドはそのまま矢継ぎ早に指示を下しながら歩いて行き...
ボーウッドが出た時には艦隊は整列をするために艦列を移動中...
「どうにも駄目だな。かつての味方とは言え、顔がどうしても...
根っからの軍人のボーウッドには、この大会戦に対して指揮を...
どうしようもない、軍人としての性である
「ゲルマニアの駆逐艦群はどうだ?」
「は、上手く艦影に紛れてる筈です」
「遊撃が知られたらアウトだ。きちんと隠せ」
「ウィ」
「上下三段二列縦隊、整列完了。相対高度、合いました」
「両舷砲戦準備完了。どの様な機動も追随出来ます」
次々に指示と報告が交錯し、ボーウッドは一際唇の端を持ち上...
「アサルト」
「突撃!突撃だぁ!」「総員持ち場死守!メイジは杖を、水兵...
* * *
整然とした整列は、そのまま艦隊運用に於ける指揮能力の高さ...
そして用兵は指揮官の色がどうしても出てしまう
ホレイショは何度もぶつかった相手が大部隊を統率しきる技量...
「全く、流石かつての僕の司令官だ。敵に回すには惜しすぎま...
「イエス・サー」
ここを突破されたら、艦隊は半分以上無用になるからこその使...
味方領地の市街戦で艦砲を無闇にぶっぱなす訳にはいかないか...
こうしてロイヤルソブリン級から竜騎士部隊が発艦と同時に砲...
ドオン!ドオン!
遠方から飛んで来る砲弾と砲声が、大空が戦場である事を教え...
既に馴れてるボーウッド率いる中核部隊はちっとも動揺しない...
「うわぁ!?なんて砲だ!」
「落ち着け!あんな距離では当たらん!何度も対戦した司令官...
「りょ、了解!」
旗艦が全く動揺しない為、落ち着きが全部隊に伝播し、逆に士...
そう、歴戦の雄が指揮をしているのだ
自分達が間抜けを晒したら戦線が崩壊する
「司令官に続け〜〜!!」
「ロイヤルソブリン恐るるに足らず!女王アンリエッタ万歳!」
だが、そんな声が聞こえて来たボーウッドは眉をしかめる
「……入れ込み過ぎだ。人員を少しずつローテーションするべき...
伝令に聞くと伝令が魔法通信機を差し出した
「此方をお使い下さい。ゼロ機関の魔法通信機です。司令用は...
「ほぅ……」
ボーウッドは付け方が解らないので身に付けさせると、マイク...
「此方ボーウッド。ド=ゴール、フォン=ツェルプストー。応...
〈此方ツェルプストー。成る程、便利だ〉〈聞こえている〉
「ド=ゴールに右分艦隊を任せる。ツェルプストー、何時でも...
〈アルビオンの雄はツェルプストーの戦い方に付いて来れるの...
ボーウッドはまだ若いツェルプストーの応答に思わず破顔し、...
「遊撃のタイミングは任せる。ド=ゴール、我々の舞台は派手...
〈ウィ〉〈ヤー〉
その時、アルビオンは既に先手を打っていた
「竜騎士接近中!二頭で何かを牽引……焼き討ち船です!」
「散弾並びに榴弾。鶴瓶撃ちしろ!」
砲術士官が指示を下す中、航海士がボーウッドに回避を進言す...
「舵固定。進路まま」
「司令!このままでは大損害です!」
「良いからやれ。我々は輸送艦隊の露払いだ。損害も任務の内...
ボーウッドの冷徹な指示に流石に鼻白む航海士官だが、すかさ...
「舵固定、進路まま!当たらん様に神と始祖ブリミルの加護に...
困った時こそ神頼み。だが、甲板長や水兵達は、往生際がすこ...
「水兵並びにメイジ、射撃開始!敵竜騎士を迎撃しろ!撃て撃...
次々に戦場に銃声と魔法が飛び始め、その中を竜騎士達が導火...
高空から飛行速度に自由落下速度を上乗せした焼き討ち船が上...
そのまま爆発を起こすと火薬に引火し、不幸な戦列艦は一瞬に...
マリコルヌは中段艦隊に居る自身の旗艦から、人がゴミとして...
「な……一発じゃないか」
そして、落下していく人の中に落下速度が遅くなった人を確認...
「スリサーズ・デル・ウィンデ!撃沈された人達、腰のマジッ...
マリコルヌの絶叫に甲板長が頷いている
竜騎士部隊の急降下爆撃により、あっという間に5隻轟沈。全...
「ふん、このタイミングか。見つかったから当然と言った所だ...
ボーウッドはそう言って、ツェルプストー旗を掲げた新型駆逐...
* * *
「ふぅ、ったく、いきなり新型艦の運用やれとか、新型砲使え...
「きゅるるるるる」
「そうかそうか、やっぱりそう思うよなぁ。ツェルプストーに...
そう言いながら、キュルケの使い魔たるサラマンダーの頭を撫...
ワルキューレの個人名を冠された9艦は、艦首に主砲4門を備...
最も、ワルキューレ級の主翼は前方に有り、ゼロ級とは重心の...
前方固定砲は、可動砲に較べて命中率が高い。つまり、戦闘機...
本来はゲルマニアに引き渡されたレキシントンの主砲を搭載す...
これにより、より軽量になり、機動を重視する駆逐艦に更に機...
「主砲、弾込めとけよ。弾種は……榴弾しか無かったな」
そんな事を命令しながら、竜騎士が一撃離脱をしていくのを見...
「ヤバイ、後衛に隠れてたの見付かった。上昇、高度4200越え...
「ヤー」
自身の判断ミスか、それとも戦列艦を盾にする当初の作戦通り...
「対竜騎士戦用意!突っ込むぞ!」
軽量たる駆逐艦のメリットは、帆船と言えども足が非常に速い...
一気に風を掴んでぐんぐん増速し、あっという間に味方艦隊を...
敵スタンダード艦隊を追い越し、竜騎士の到達高度を越えた位...
「帆を畳め!滑空するぞ!」
「ヤー!帆を畳め!急げ〜〜!」
バタバタと甲板員があっという間に帆を畳み、マストががらん...
「風石停止」
「風石停止!」
「操舵手、腕の見せ所だ!」
「待ってました!」
「突撃!」
「突撃ぃ〜〜〜!」
ブリュンヒルデを筆頭に、ゲルヒルデ、オルトリンデ、ヴァル...
「艦正面、ロイヤルソブリン!」
「主砲、ファイエル!」
カールの命令に、86ミリ砲が火を吹く
ブリュンヒルデの砲声を合図に、火線をずらし竜騎士同様3艦...
主砲を担当している砲兵は急降下中の傾斜に四苦八苦しつつ、...
ズガァァァン!
距離が縮む事に命中率がはね上がり、接触式榴弾が着弾と同時...
36門の一斉射撃で、連射速度は前装砲の比でない
上を取られたロイヤルソブリンのアッパーデッキは、あっとい...
「竜騎士、竜騎士に迎撃させろ!」
「負傷者収容急げ!」
竜騎士と同様の自由落下式の急降下砲撃である
竜騎士には既に行き足の付いた9人の戦乙女に追随する術が無...
「舵、反転上昇だ!置き土産忘れるな!上昇と同時に風石可動...
「ヤー!!」
「舵起こせ!」
「引き起こし、ようそろ!」
艦尾では重ね合わせの鉄板に火薬と鉛弾を積めた樽が用意され...
「土産の爆雷だ。つりは要らねぇよ!」
盛大な連鎖爆裂音が鳴り響き、ロイヤルソブリン級が一艦傾いた
それを見ていたホレイショは舌打ちする
「ちっ、ハンプシャーが大破か、不味いですね」
「司令、ハンプシャーに退艦命令が出ました」
「そのまま脱出させなさい」
「サー」
そして今砲撃を重ね、そのまま上昇していった駆逐艦を見てに...
「流石、我が竜騎士隊。対応が上手い」
上昇予測点には既に火竜騎士達が先回りしており、降下を始め...
その数15、半数が戦乙女に襲いかかるフェンリルと化したのだ
対面降下と艦上空から背後に回って挟み撃つ竜騎士隊に、カー...
「教わった奴、インメルマンターンとか言ったな、上昇ターン...
「ヤー!」
水平旋回は互いに読み易いが故に、風石と云う上昇動力を用い...
小型艦隊とは言え、艦隊が高機動を行うのは例が無い。カール...
驚いた竜騎士隊は、あっさり認識を改めて対処した。つまり、...
「あれは艦隊と言うより、我々竜騎士に近い。ドッグファイト...
竜騎士隊はバックに取り付いた小隊が機動の遅れた後続艦に対...
当然、彼我の攻撃が命中しうる、必中の距離である
上昇中の艦にロープで括り付いた水兵達のマスケット銃と魔法...
射撃音とブレスが空気を爆ぜる音を後ろに置いて行きながら、...
食い付かれた後続艦の事に、カール達他艦の乗組員も気にして...
対面から来た小隊達がふわりと後方に食い付いており、戦々恐...
「こんな所でやられるかよ!ウル・カーノ・ソウイル・イーサ...
カールはフレイムアローを一際高く、朗々と唄い上げ、火竜が...
後方に対し吸い込まれる様に飛んで言った炎の矢は、ブレスを...
其所を更に水兵達が銃と魔法の対抗射撃で竜騎士達にも命中さ...
たった一合、時間にして僅か30秒に達するかどうかの交錯で、...
その様は戦場の一戦局でしか無く、メインの艦隊戦は更に変化...
戦列艦隊が互いに突撃を行い、衝突するかに見えたが、互いの...
彼岸の距離僅か数十から数百メイル
互いの顔迄認識しうる距離である
アルビオン艦隊とトリステイン艦隊が同時に火を吹いた
射撃命令はお互いに出していない
出すより先に興奮した兵が先に撃ってしまったのだ
「射撃命令出してないぞ!止まれ!」
「構わん、続けさせろ。もう意味は無い」
参謀が止めさせようと指示を下したが、ボーウッドは最早機は...
左右展開半包囲で一気に殲滅する予定だったが、砲兵達が先に...
戦列艦の攻撃力は晒した舷側の面に比例する。つまり、全艦隊...
ボーウッドの艦隊運用は、正に被害無視での絶対突破に忠実で...
アルビオン艦隊側は包囲に対し両舷砲を全力で撃ちつつ、遂に...
「目標、右舷先頭中央艦。ファイア!」
敵の動きがレドゥタブールに集中を始め、他艦から指示が飛ぶ
「旗艦を守れ〜〜〜〜!全力射撃!水兵は手を止めるなぁ!」
「ウィ!旗艦を守れっ!」
ドンドンドンドン
傷付いたロイヤルソブリン級からもレドゥタブールに砲撃が集...
「司令、不味いです。艦の移乗を!」
「何処に行けと言うのだ?」
「しかし」
「くどい!」
ボーウッドは頑なに艦移乗を拒否し、冷静に命令を下す
「敵艦隊、当艦に砲撃を集中させようとして乱れたぞ。突出し...
「はっ!目標、突出艦!撃て撃て撃て!」
ドオンドンドンドンドン
マリコルヌは甲板長に怒鳴られながら、魔法の手を緩めなかった
自ら放ったマジックミサイルが敵艦に命中したのを確認しては...
「ゲロコンビ!一々ガッツポーズしてんじゃねぇ!」
「魔法に感情必要なんすよ!」
「面倒くせぇなメイジってのは!コイツが終わったらしこたま...
「是非ともお供します!」
お互いに口の端を笑いに歪め、水兵は弾を込めてはパンと撃ち...
そんな最中、マリコルヌは上方艦がぐらりと傾いたのを視界の...
「先輩不味いです!上方艦がやられたみたいです!」
「何とかすんだろ!良いから手を止めんな!俺達も死ぬぞ!」
「はい!」
銃弾と魔法、更に砲弾と竜騎士のブレスが飛び交い、マリコル...
「まさか……あれ……」
そのまま高度を維持出来なくなった艦は高度を落とし、レドゥ...
その艦の艦上に、見知った顔が居たのを確認したマリコルヌ
「…ロレーヌ?」
旗艦の方を見て、泣き笑いの表情をするのを見てしまった
レドゥタブールの射撃中止命令が間に合わず、発砲があちこち...
「ロレーヌ〜〜〜〜!」
自らの級友に攻撃し、そのまま爆炎に包まれる様迄見てしまっ...
鼻水と涙でぐちゃぐちゃだ
「先輩、ロレーヌが……僕のクラスメイトが……」
横を向いたら、さっき迄軽口を叩いていた水兵の頭が無くなっ...
「……先輩?」
「何をしている!魔法の手を休めるな!魔力が尽きたなら、戦...
そう怒鳴り込んだ甲板員が、銃弾に貫かれて倒れ、更に視界の...
「あっあっ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
マリコルヌはそこから先は良く憶えていなかった
何故か魔力も精神力も尽きず、滅茶苦茶に見えるモノにひたす...
マリコルヌが封鎖戦とは全く違う全面衝突に恐慌を来している...
余計な事を、とはボーウッドは言わない
指揮官が死んだら、崩壊するのはトリステイン艦隊側である
ボーウッドは自身の戦死すら作戦の内と考えて居たのだが、同...
思わず頬が綻んで来るボーウッド
『戦友に認められるというのは、やはり良い』
そして更に転機が訪れる
その転機は砲声に彩られ、陽光に影を残して青い影として現れた
そう、アズーリ(青)が風切り音と共に上空から飛来し、敵火竜...
「来ました!ゼロ級からの援軍です!」
「………援軍!援軍だぁ!!総員雄叫びをあげろおぉぉぉぉ!!」
「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」
一気にトリステイン艦隊側の士気が上がり、先鋒を勤めたジュ...
「ぴゅう、コイツは壮観」
第三竜騎士隊は風竜のみで構成され(第六は火竜隊)、いつの間...
「無誘導弾持って来て正解だな。行くぞ!」
ジュリオが我に続けのサインをし、一気に戦場を青の風が吹き...
器用に飛びつつ、一気に無誘導弾を垂直降下と共にアルビオン...
「僕達の仕事は制空権の確保だ。目標、敵竜騎士」
剣を抜いて竜騎士を指すジュリオ、そのまま剣を振り下ろした
突撃を開始した竜騎士隊を、食い付かれて更に一艦を喪ってい...
「ざけんな!美味しい所は竜騎士が独占かよ!お前ら、あんな...
「「ヤー!」」
更に戦場に不協和音が追加され、後続の竜騎士隊が更に対艦弾...
爆発とは違う炎に包まれ、三艦が一気に火達磨になって、中の...
木材、砲、人だったモノが風石と爆風で上方に吹き飛ばされつ...
ホレイショは指揮をしながら、新手の竜騎士の戦法に舌を巻い...
「アレは不味い、消火出来ない!竜騎士、迎撃させなさい!」
「無理です司令!竜騎士が10騎に減りました!敵の風竜騎士隊...
「トリステインの何処にそんな戦力が……そうか、傭兵!」
ホレイショは思わず拳で手の平を叩き、更に指示を下す
「あちらは?」
「無事通過の模様です」
「良し、作戦目的は達した。此処までです!総員撤退!信号弾...
「イエス・サー!」
撤退信号弾を放ち、その様をボーウッドは見逃さない
「追撃戦開始。温存させるな」
「ウィ!追撃戦開始!撤退を阻止しろ」
発光信号で命令を確認したカールは、残った五艦に命令を下した
「武装使いきるぞ!突撃!」
「突撃ぃ!宜候(ようそろう)!」
元々ワルキューレ級は弾薬搭載数が少ない
更に連射速度の高さは、そのまま弾薬の消費数を倍にも三倍に...
駆逐艦と云う艦の規模は、一戦で弾薬を使い切る程少なかった...
その残った86ミリ榴弾と爆雷を全て使うべく、また突撃するブ...
姉妹の仇として、更にロイヤルソブリン級一艦に攻撃を集中し...
突撃により、砲弾が更に甲板を歩行不能に迄損壊させ、砲列甲...
「ヨーク……轟沈……しました」
「…ゴータの足が一番遅い。殿を務めます。僚艦の脱出を支援し...
「司令……」
参謀が思わずホレイショの顔を見るが、ホレイショの顔は晴れ...
「復唱は?」
「ゴータにて殿、僚艦脱出支援後に撤退……竜騎士隊は僚艦脱出...
「良いでしょう。行きなさい」
「サー・イエス・サー」
敬礼を一際強くした参謀が退出する際に、更にホレイショは付...
「あ、そうそう」
「……何か?」
カッと軍靴を鳴り響かせて振り向く参謀にホレイショは更に命...
「歳若いのと参謀は退艦を命じます。士官少ないのに、無駄に...
「…イエス………サー」
昔ながらの貴族の誇りに合理性を滲ませた命令に、参謀はまた...
「さてと、甲板に出て直接指揮をしないと。人居ませんからね」
* * *
追撃戦に移行した艦隊戦に、更に彩りを加えたのは、油を積ん...
火竜騎士隊の防衛を潜り抜けた、対艦弾を積んだ火竜隊が次々...
そして、撤退を支援するアルビオン艦隊旗艦ゴータの砲声が、...
砲観測により、詳細なデータが上乗せされたお陰で、本来の破...
竜騎士に迄命中して、胴体をぶち抜かれたのを見た瞬間、形勢...
「不味い、砲戦を重ねたせいで命中率が上がっている。駆逐艦...
「ウィ」
ボーウッドの命令を発し、発光信号を受け取った信号手の報告...
「返信来ました。当艦隊、弾尽キレリ。以上です」
「サノバビッチ!」
思わずスラングを発して、帽子を叩き付けてしまったボーウッ...
「ゲルマニアめ、弾切れする程余裕の無い艦なんぞ寄越すな。...
「ウィ」
* * *
トリステイン艦隊の追撃の手が緩むのを双眼鏡で見て、ホレイ...
「ピュ〜〜。素晴らしい命中。どんどん撃って味方を脱出させ...
「イエス・サー」
「上方の駆逐艦は旋回ばかりと。弾切れですかね?上昇させな...
「イエス・サー」
命令を受けたゴータが上昇限界迄上昇する中、トリステイン竜...
ロイヤルソブリン級は重量級の為に、竜騎士と同程度しか高度...
お互いに水平射撃であり、しかも対艦弾は火薬推進で有るにも...
「不味い。100メイル以内に近付かないと」
対艦弾を装備した竜騎士部隊は100メイル以内に近付き、ソコは...
次々に散弾が放たれ、竜騎士に命中して撃墜されていく
「駄目です、司令。撃墜されて行きます」
「アズーリはどうした?」
言われて気付いた参謀達がきょろきょろと探すが、いつの間に...
「居ません」
「撤退を許していないと言うのに……」
総司令部付きの竜騎士隊への指示は、艦隊司令のボーウッドで...
命令形態の縦割りが出たとボーウッドは舌打ちしていた
* * *
その頃、快足を活かしたアズーリ達は竜母に帰還していて、甲...
「対空誘導弾装着急げ!味方が死ぬぞ!」
「だったら、ラック捨てて来てんじゃねぇ!良いから大人しく...
「頼む!」
ジュリオの指示に次々とラックと対空弾を装着させ、信号手が...
「別動隊はどうした?」
「成功らしい!後はあんた達の仕事だけだ!」
「了解!大した戦友だ!魔法通信機寄越せ!出る!」
その言葉を残し、魔法通信機を受け取ったジュリオのアズーロ...
手信号でやり取りし、お互いの先行具合を確認したアズーリは...
「此方アズーリ。ロイヤルソブリン級から離れろ。誘導弾を放...
〈此方ワルキューレ、了解。撤退する〉〈此方艦隊司令、了解...
次々に命令が伝達する中、ワルキューレが突如撤退を始めたの...
「迎撃!」
ドンドンドンドン
ゴータから散弾と榴弾が飛ぶ中、ミサイルの飽和攻撃が段階的...
ホレイショは爆炎に巻き込まれる最後迄指揮を続けて撤退を支...
此処に、ロサイス侵攻の露は払われたのである
* * *
終了行:
レドゥタブールの艦上のメインマストトップスルでは、すっか...
宵闇が明けようとして空が紅く染め上がっている様は、辛い見...
「ふぅ、やっぱり年末は寒ぃ」
連戦をこなして、すっかり精悍な顔付きが出来ており、不安要...
「近衛だから空っぽのトリスタニア防衛って、しゃあないって...
そう言ってブツブツ言ってると、交代要員が上がって来た
「先輩、何ブツブツ言ってるんですか?聴こえて来ましたよ?」
そう言ってお約束のワインを持ってマリコルヌがやって来て瓶...
「お、持って来たのは空になってね、助かるよ」
「飲んだら返して下さいよ。僕も飲むんですから」
マリコルヌの声を背に煽るスティックス
「……くぁ〜〜〜!効いたぁ!!酒ないと本当に辛いぜ。何で軍人...
「本当ですよね。どうすか、見張りの方は?」
「さっぱり何も。夜だったから鳥すら見えない」
「そうですか。まぁそう簡単に……」
そう言って見回してマリコルヌが黙って硬直するのを、スティ...
「……見えてるかな?」
「此方が見えてるんです。見えてるでしょうね」
「……だね。報告!高度3500!距離一万!艦影多数!レコンキス...
スティックスの大声に、当直の甲板員達が一気に走り回り、全...
「敵襲!敵襲だ!総員起こし〜〜!急げ〜!」
此処に、ロサイスへの進路を開く為の一大会戦が始まったので...
* * *
「敵艦影から推測するに、ロイヤルソブリン級3、スタンダー...
「ほぅ……全艦出して来たな」
そう言ってボーウッドは暫し思考に耽り、指示を下し始めた
「此方の命令は損害無視での絶対突破だ。総司令部に伝令。我...
「ウィ、復唱します。我、会敵セリ、コレヲ突破セントス」
「行け」「はっ」
伝令が退出し、ボーウッドも退出する
「私も艦上に出る」
「はっ」
ボーウッドはそのまま矢継ぎ早に指示を下しながら歩いて行き...
ボーウッドが出た時には艦隊は整列をするために艦列を移動中...
「どうにも駄目だな。かつての味方とは言え、顔がどうしても...
根っからの軍人のボーウッドには、この大会戦に対して指揮を...
どうしようもない、軍人としての性である
「ゲルマニアの駆逐艦群はどうだ?」
「は、上手く艦影に紛れてる筈です」
「遊撃が知られたらアウトだ。きちんと隠せ」
「ウィ」
「上下三段二列縦隊、整列完了。相対高度、合いました」
「両舷砲戦準備完了。どの様な機動も追随出来ます」
次々に指示と報告が交錯し、ボーウッドは一際唇の端を持ち上...
「アサルト」
「突撃!突撃だぁ!」「総員持ち場死守!メイジは杖を、水兵...
* * *
整然とした整列は、そのまま艦隊運用に於ける指揮能力の高さ...
そして用兵は指揮官の色がどうしても出てしまう
ホレイショは何度もぶつかった相手が大部隊を統率しきる技量...
「全く、流石かつての僕の司令官だ。敵に回すには惜しすぎま...
「イエス・サー」
ここを突破されたら、艦隊は半分以上無用になるからこその使...
味方領地の市街戦で艦砲を無闇にぶっぱなす訳にはいかないか...
こうしてロイヤルソブリン級から竜騎士部隊が発艦と同時に砲...
ドオン!ドオン!
遠方から飛んで来る砲弾と砲声が、大空が戦場である事を教え...
既に馴れてるボーウッド率いる中核部隊はちっとも動揺しない...
「うわぁ!?なんて砲だ!」
「落ち着け!あんな距離では当たらん!何度も対戦した司令官...
「りょ、了解!」
旗艦が全く動揺しない為、落ち着きが全部隊に伝播し、逆に士...
そう、歴戦の雄が指揮をしているのだ
自分達が間抜けを晒したら戦線が崩壊する
「司令官に続け〜〜!!」
「ロイヤルソブリン恐るるに足らず!女王アンリエッタ万歳!」
だが、そんな声が聞こえて来たボーウッドは眉をしかめる
「……入れ込み過ぎだ。人員を少しずつローテーションするべき...
伝令に聞くと伝令が魔法通信機を差し出した
「此方をお使い下さい。ゼロ機関の魔法通信機です。司令用は...
「ほぅ……」
ボーウッドは付け方が解らないので身に付けさせると、マイク...
「此方ボーウッド。ド=ゴール、フォン=ツェルプストー。応...
〈此方ツェルプストー。成る程、便利だ〉〈聞こえている〉
「ド=ゴールに右分艦隊を任せる。ツェルプストー、何時でも...
〈アルビオンの雄はツェルプストーの戦い方に付いて来れるの...
ボーウッドはまだ若いツェルプストーの応答に思わず破顔し、...
「遊撃のタイミングは任せる。ド=ゴール、我々の舞台は派手...
〈ウィ〉〈ヤー〉
その時、アルビオンは既に先手を打っていた
「竜騎士接近中!二頭で何かを牽引……焼き討ち船です!」
「散弾並びに榴弾。鶴瓶撃ちしろ!」
砲術士官が指示を下す中、航海士がボーウッドに回避を進言す...
「舵固定。進路まま」
「司令!このままでは大損害です!」
「良いからやれ。我々は輸送艦隊の露払いだ。損害も任務の内...
ボーウッドの冷徹な指示に流石に鼻白む航海士官だが、すかさ...
「舵固定、進路まま!当たらん様に神と始祖ブリミルの加護に...
困った時こそ神頼み。だが、甲板長や水兵達は、往生際がすこ...
「水兵並びにメイジ、射撃開始!敵竜騎士を迎撃しろ!撃て撃...
次々に戦場に銃声と魔法が飛び始め、その中を竜騎士達が導火...
高空から飛行速度に自由落下速度を上乗せした焼き討ち船が上...
そのまま爆発を起こすと火薬に引火し、不幸な戦列艦は一瞬に...
マリコルヌは中段艦隊に居る自身の旗艦から、人がゴミとして...
「な……一発じゃないか」
そして、落下していく人の中に落下速度が遅くなった人を確認...
「スリサーズ・デル・ウィンデ!撃沈された人達、腰のマジッ...
マリコルヌの絶叫に甲板長が頷いている
竜騎士部隊の急降下爆撃により、あっという間に5隻轟沈。全...
「ふん、このタイミングか。見つかったから当然と言った所だ...
ボーウッドはそう言って、ツェルプストー旗を掲げた新型駆逐...
* * *
「ふぅ、ったく、いきなり新型艦の運用やれとか、新型砲使え...
「きゅるるるるる」
「そうかそうか、やっぱりそう思うよなぁ。ツェルプストーに...
そう言いながら、キュルケの使い魔たるサラマンダーの頭を撫...
ワルキューレの個人名を冠された9艦は、艦首に主砲4門を備...
最も、ワルキューレ級の主翼は前方に有り、ゼロ級とは重心の...
前方固定砲は、可動砲に較べて命中率が高い。つまり、戦闘機...
本来はゲルマニアに引き渡されたレキシントンの主砲を搭載す...
これにより、より軽量になり、機動を重視する駆逐艦に更に機...
「主砲、弾込めとけよ。弾種は……榴弾しか無かったな」
そんな事を命令しながら、竜騎士が一撃離脱をしていくのを見...
「ヤバイ、後衛に隠れてたの見付かった。上昇、高度4200越え...
「ヤー」
自身の判断ミスか、それとも戦列艦を盾にする当初の作戦通り...
「対竜騎士戦用意!突っ込むぞ!」
軽量たる駆逐艦のメリットは、帆船と言えども足が非常に速い...
一気に風を掴んでぐんぐん増速し、あっという間に味方艦隊を...
敵スタンダード艦隊を追い越し、竜騎士の到達高度を越えた位...
「帆を畳め!滑空するぞ!」
「ヤー!帆を畳め!急げ〜〜!」
バタバタと甲板員があっという間に帆を畳み、マストががらん...
「風石停止」
「風石停止!」
「操舵手、腕の見せ所だ!」
「待ってました!」
「突撃!」
「突撃ぃ〜〜〜!」
ブリュンヒルデを筆頭に、ゲルヒルデ、オルトリンデ、ヴァル...
「艦正面、ロイヤルソブリン!」
「主砲、ファイエル!」
カールの命令に、86ミリ砲が火を吹く
ブリュンヒルデの砲声を合図に、火線をずらし竜騎士同様3艦...
主砲を担当している砲兵は急降下中の傾斜に四苦八苦しつつ、...
ズガァァァン!
距離が縮む事に命中率がはね上がり、接触式榴弾が着弾と同時...
36門の一斉射撃で、連射速度は前装砲の比でない
上を取られたロイヤルソブリンのアッパーデッキは、あっとい...
「竜騎士、竜騎士に迎撃させろ!」
「負傷者収容急げ!」
竜騎士と同様の自由落下式の急降下砲撃である
竜騎士には既に行き足の付いた9人の戦乙女に追随する術が無...
「舵、反転上昇だ!置き土産忘れるな!上昇と同時に風石可動...
「ヤー!!」
「舵起こせ!」
「引き起こし、ようそろ!」
艦尾では重ね合わせの鉄板に火薬と鉛弾を積めた樽が用意され...
「土産の爆雷だ。つりは要らねぇよ!」
盛大な連鎖爆裂音が鳴り響き、ロイヤルソブリン級が一艦傾いた
それを見ていたホレイショは舌打ちする
「ちっ、ハンプシャーが大破か、不味いですね」
「司令、ハンプシャーに退艦命令が出ました」
「そのまま脱出させなさい」
「サー」
そして今砲撃を重ね、そのまま上昇していった駆逐艦を見てに...
「流石、我が竜騎士隊。対応が上手い」
上昇予測点には既に火竜騎士達が先回りしており、降下を始め...
その数15、半数が戦乙女に襲いかかるフェンリルと化したのだ
対面降下と艦上空から背後に回って挟み撃つ竜騎士隊に、カー...
「教わった奴、インメルマンターンとか言ったな、上昇ターン...
「ヤー!」
水平旋回は互いに読み易いが故に、風石と云う上昇動力を用い...
小型艦隊とは言え、艦隊が高機動を行うのは例が無い。カール...
驚いた竜騎士隊は、あっさり認識を改めて対処した。つまり、...
「あれは艦隊と言うより、我々竜騎士に近い。ドッグファイト...
竜騎士隊はバックに取り付いた小隊が機動の遅れた後続艦に対...
当然、彼我の攻撃が命中しうる、必中の距離である
上昇中の艦にロープで括り付いた水兵達のマスケット銃と魔法...
射撃音とブレスが空気を爆ぜる音を後ろに置いて行きながら、...
食い付かれた後続艦の事に、カール達他艦の乗組員も気にして...
対面から来た小隊達がふわりと後方に食い付いており、戦々恐...
「こんな所でやられるかよ!ウル・カーノ・ソウイル・イーサ...
カールはフレイムアローを一際高く、朗々と唄い上げ、火竜が...
後方に対し吸い込まれる様に飛んで言った炎の矢は、ブレスを...
其所を更に水兵達が銃と魔法の対抗射撃で竜騎士達にも命中さ...
たった一合、時間にして僅か30秒に達するかどうかの交錯で、...
その様は戦場の一戦局でしか無く、メインの艦隊戦は更に変化...
戦列艦隊が互いに突撃を行い、衝突するかに見えたが、互いの...
彼岸の距離僅か数十から数百メイル
互いの顔迄認識しうる距離である
アルビオン艦隊とトリステイン艦隊が同時に火を吹いた
射撃命令はお互いに出していない
出すより先に興奮した兵が先に撃ってしまったのだ
「射撃命令出してないぞ!止まれ!」
「構わん、続けさせろ。もう意味は無い」
参謀が止めさせようと指示を下したが、ボーウッドは最早機は...
左右展開半包囲で一気に殲滅する予定だったが、砲兵達が先に...
戦列艦の攻撃力は晒した舷側の面に比例する。つまり、全艦隊...
ボーウッドの艦隊運用は、正に被害無視での絶対突破に忠実で...
アルビオン艦隊側は包囲に対し両舷砲を全力で撃ちつつ、遂に...
「目標、右舷先頭中央艦。ファイア!」
敵の動きがレドゥタブールに集中を始め、他艦から指示が飛ぶ
「旗艦を守れ〜〜〜〜!全力射撃!水兵は手を止めるなぁ!」
「ウィ!旗艦を守れっ!」
ドンドンドンドン
傷付いたロイヤルソブリン級からもレドゥタブールに砲撃が集...
「司令、不味いです。艦の移乗を!」
「何処に行けと言うのだ?」
「しかし」
「くどい!」
ボーウッドは頑なに艦移乗を拒否し、冷静に命令を下す
「敵艦隊、当艦に砲撃を集中させようとして乱れたぞ。突出し...
「はっ!目標、突出艦!撃て撃て撃て!」
ドオンドンドンドンドン
マリコルヌは甲板長に怒鳴られながら、魔法の手を緩めなかった
自ら放ったマジックミサイルが敵艦に命中したのを確認しては...
「ゲロコンビ!一々ガッツポーズしてんじゃねぇ!」
「魔法に感情必要なんすよ!」
「面倒くせぇなメイジってのは!コイツが終わったらしこたま...
「是非ともお供します!」
お互いに口の端を笑いに歪め、水兵は弾を込めてはパンと撃ち...
そんな最中、マリコルヌは上方艦がぐらりと傾いたのを視界の...
「先輩不味いです!上方艦がやられたみたいです!」
「何とかすんだろ!良いから手を止めんな!俺達も死ぬぞ!」
「はい!」
銃弾と魔法、更に砲弾と竜騎士のブレスが飛び交い、マリコル...
「まさか……あれ……」
そのまま高度を維持出来なくなった艦は高度を落とし、レドゥ...
その艦の艦上に、見知った顔が居たのを確認したマリコルヌ
「…ロレーヌ?」
旗艦の方を見て、泣き笑いの表情をするのを見てしまった
レドゥタブールの射撃中止命令が間に合わず、発砲があちこち...
「ロレーヌ〜〜〜〜!」
自らの級友に攻撃し、そのまま爆炎に包まれる様迄見てしまっ...
鼻水と涙でぐちゃぐちゃだ
「先輩、ロレーヌが……僕のクラスメイトが……」
横を向いたら、さっき迄軽口を叩いていた水兵の頭が無くなっ...
「……先輩?」
「何をしている!魔法の手を休めるな!魔力が尽きたなら、戦...
そう怒鳴り込んだ甲板員が、銃弾に貫かれて倒れ、更に視界の...
「あっあっ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
マリコルヌはそこから先は良く憶えていなかった
何故か魔力も精神力も尽きず、滅茶苦茶に見えるモノにひたす...
マリコルヌが封鎖戦とは全く違う全面衝突に恐慌を来している...
余計な事を、とはボーウッドは言わない
指揮官が死んだら、崩壊するのはトリステイン艦隊側である
ボーウッドは自身の戦死すら作戦の内と考えて居たのだが、同...
思わず頬が綻んで来るボーウッド
『戦友に認められるというのは、やはり良い』
そして更に転機が訪れる
その転機は砲声に彩られ、陽光に影を残して青い影として現れた
そう、アズーリ(青)が風切り音と共に上空から飛来し、敵火竜...
「来ました!ゼロ級からの援軍です!」
「………援軍!援軍だぁ!!総員雄叫びをあげろおぉぉぉぉ!!」
「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」
一気にトリステイン艦隊側の士気が上がり、先鋒を勤めたジュ...
「ぴゅう、コイツは壮観」
第三竜騎士隊は風竜のみで構成され(第六は火竜隊)、いつの間...
「無誘導弾持って来て正解だな。行くぞ!」
ジュリオが我に続けのサインをし、一気に戦場を青の風が吹き...
器用に飛びつつ、一気に無誘導弾を垂直降下と共にアルビオン...
「僕達の仕事は制空権の確保だ。目標、敵竜騎士」
剣を抜いて竜騎士を指すジュリオ、そのまま剣を振り下ろした
突撃を開始した竜騎士隊を、食い付かれて更に一艦を喪ってい...
「ざけんな!美味しい所は竜騎士が独占かよ!お前ら、あんな...
「「ヤー!」」
更に戦場に不協和音が追加され、後続の竜騎士隊が更に対艦弾...
爆発とは違う炎に包まれ、三艦が一気に火達磨になって、中の...
木材、砲、人だったモノが風石と爆風で上方に吹き飛ばされつ...
ホレイショは指揮をしながら、新手の竜騎士の戦法に舌を巻い...
「アレは不味い、消火出来ない!竜騎士、迎撃させなさい!」
「無理です司令!竜騎士が10騎に減りました!敵の風竜騎士隊...
「トリステインの何処にそんな戦力が……そうか、傭兵!」
ホレイショは思わず拳で手の平を叩き、更に指示を下す
「あちらは?」
「無事通過の模様です」
「良し、作戦目的は達した。此処までです!総員撤退!信号弾...
「イエス・サー!」
撤退信号弾を放ち、その様をボーウッドは見逃さない
「追撃戦開始。温存させるな」
「ウィ!追撃戦開始!撤退を阻止しろ」
発光信号で命令を確認したカールは、残った五艦に命令を下した
「武装使いきるぞ!突撃!」
「突撃ぃ!宜候(ようそろう)!」
元々ワルキューレ級は弾薬搭載数が少ない
更に連射速度の高さは、そのまま弾薬の消費数を倍にも三倍に...
駆逐艦と云う艦の規模は、一戦で弾薬を使い切る程少なかった...
その残った86ミリ榴弾と爆雷を全て使うべく、また突撃するブ...
姉妹の仇として、更にロイヤルソブリン級一艦に攻撃を集中し...
突撃により、砲弾が更に甲板を歩行不能に迄損壊させ、砲列甲...
「ヨーク……轟沈……しました」
「…ゴータの足が一番遅い。殿を務めます。僚艦の脱出を支援し...
「司令……」
参謀が思わずホレイショの顔を見るが、ホレイショの顔は晴れ...
「復唱は?」
「ゴータにて殿、僚艦脱出支援後に撤退……竜騎士隊は僚艦脱出...
「良いでしょう。行きなさい」
「サー・イエス・サー」
敬礼を一際強くした参謀が退出する際に、更にホレイショは付...
「あ、そうそう」
「……何か?」
カッと軍靴を鳴り響かせて振り向く参謀にホレイショは更に命...
「歳若いのと参謀は退艦を命じます。士官少ないのに、無駄に...
「…イエス………サー」
昔ながらの貴族の誇りに合理性を滲ませた命令に、参謀はまた...
「さてと、甲板に出て直接指揮をしないと。人居ませんからね」
* * *
追撃戦に移行した艦隊戦に、更に彩りを加えたのは、油を積ん...
火竜騎士隊の防衛を潜り抜けた、対艦弾を積んだ火竜隊が次々...
そして、撤退を支援するアルビオン艦隊旗艦ゴータの砲声が、...
砲観測により、詳細なデータが上乗せされたお陰で、本来の破...
竜騎士に迄命中して、胴体をぶち抜かれたのを見た瞬間、形勢...
「不味い、砲戦を重ねたせいで命中率が上がっている。駆逐艦...
「ウィ」
ボーウッドの命令を発し、発光信号を受け取った信号手の報告...
「返信来ました。当艦隊、弾尽キレリ。以上です」
「サノバビッチ!」
思わずスラングを発して、帽子を叩き付けてしまったボーウッ...
「ゲルマニアめ、弾切れする程余裕の無い艦なんぞ寄越すな。...
「ウィ」
* * *
トリステイン艦隊の追撃の手が緩むのを双眼鏡で見て、ホレイ...
「ピュ〜〜。素晴らしい命中。どんどん撃って味方を脱出させ...
「イエス・サー」
「上方の駆逐艦は旋回ばかりと。弾切れですかね?上昇させな...
「イエス・サー」
命令を受けたゴータが上昇限界迄上昇する中、トリステイン竜...
ロイヤルソブリン級は重量級の為に、竜騎士と同程度しか高度...
お互いに水平射撃であり、しかも対艦弾は火薬推進で有るにも...
「不味い。100メイル以内に近付かないと」
対艦弾を装備した竜騎士部隊は100メイル以内に近付き、ソコは...
次々に散弾が放たれ、竜騎士に命中して撃墜されていく
「駄目です、司令。撃墜されて行きます」
「アズーリはどうした?」
言われて気付いた参謀達がきょろきょろと探すが、いつの間に...
「居ません」
「撤退を許していないと言うのに……」
総司令部付きの竜騎士隊への指示は、艦隊司令のボーウッドで...
命令形態の縦割りが出たとボーウッドは舌打ちしていた
* * *
その頃、快足を活かしたアズーリ達は竜母に帰還していて、甲...
「対空誘導弾装着急げ!味方が死ぬぞ!」
「だったら、ラック捨てて来てんじゃねぇ!良いから大人しく...
「頼む!」
ジュリオの指示に次々とラックと対空弾を装着させ、信号手が...
「別動隊はどうした?」
「成功らしい!後はあんた達の仕事だけだ!」
「了解!大した戦友だ!魔法通信機寄越せ!出る!」
その言葉を残し、魔法通信機を受け取ったジュリオのアズーロ...
手信号でやり取りし、お互いの先行具合を確認したアズーリは...
「此方アズーリ。ロイヤルソブリン級から離れろ。誘導弾を放...
〈此方ワルキューレ、了解。撤退する〉〈此方艦隊司令、了解...
次々に命令が伝達する中、ワルキューレが突如撤退を始めたの...
「迎撃!」
ドンドンドンドン
ゴータから散弾と榴弾が飛ぶ中、ミサイルの飽和攻撃が段階的...
ホレイショは爆炎に巻き込まれる最後迄指揮を続けて撤退を支...
此処に、ロサイス侵攻の露は払われたのである
* * *
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