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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:46:15 (5646d)
478 名前:1/7[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 00:23:46 ID:gmVk61Jx 「本当にもう……信用できないです」 シエスタの手に握られているのは、薄い桃色の封筒。 「だ、だってずっとそれどころじゃ……」 シエスタが見つけたのはカトレアからの手紙。 それが…… 「未開封……信じられません」 戦争から帰ってきたルイズがずっと手紙の返事どころではなかったのは、シエスタも知っている。 「ミス・ヴァリエールのお家の方にとっては、今どういう事態か分かっていますか?」 シエスタの視線が更に冷たくなった。 「ミス・ヴァリエールのお家の方にとって、 手の中に有る未開封の封筒の束を、見せ付けるようにテーブルに乗せる。 「……あ……」 やっと事態を理解したらしいルイズが、わたわたと暴れ始めた。 「じゃ、じゃあ……ちいねえさま、わたしが死んでると……思ってたり?」 ……実際には貴族のルイズが死んでいたら連絡が入るため、死んでいるとは思われないだろうけれど、 479 名前:2/7[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 00:24:27 ID:gmVk61Jx お、お葬式とかしてたら、実家に帰ったわたしを見て、皆どう思うだろう? 「だ、誰か飛び降りてたらどうしよう?」 ちいねえさま辺りは、飛び降りなくても衰弱してそうだし。 「とりあえず読まないと」 ルイズの手に消印の日付順に並べられた封筒の束と、ペーパーナイフを渡したシエスタが、黙って席を外そうとした。 「ま、まって……一緒に居て」 自分が何を放置してきたのか理解したルイズが、怖気づきシエスタを呼び止めた。 「居るだけですよ?」 小さく溜息をつくと、シエスタは少し離れてルイズの観察を始めた。 「ち、ちいねえさまったら……そ、そんなのじゃ……」 ヴァリエールの領地を出た辺りは、サイトとの事をからかわれているのだろうけれど。 「どどど、どうしよぉ……」 実際他に出来ることもない。 手紙を読んでいるルイズの目が、そわそわと落ち着かず一刻も早く返事を書きたそうにしているが、 「きちんと全部読んでからです」 シエスタに容赦は無かった。 ルイズがサイトに会えて浮かれていた頃の手紙等は、その頃のルイズといっそ清々しいほどの温度差で、 「ごめんなさい、ちいねえさま。ごめんなさい」 ようやく全て読み終わった頃には、すっかり落ち込んだルイズが居た。 「反省しましたか?」 480 名前:3/7[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 00:24:59 ID:gmVk61Jx 伝える事はたくさん有った。 今読んだ手紙ほど、想いが伝えられるとは思えないけれど。 遅くまでかかって、ようやく書き上げた近況は、数枚の便箋に渡っていた。 「お、怒られるかな?」 書き上げた手紙を封筒に入れながらシエスタに意見を求めると、ばっさりと切り捨てられた。 「でも……」 ふわりと笑ったシエスタが、優しくルイズを抱き寄せた。 「遅くても、ちゃんとお返事書けて偉いですね」 落ち込んでいるルイズを慰めるため、わざと怒るようなことをしたシエスタが笑いながら身を引いた。 「お家の方からの手紙を読まないのも、お返事しないのも、子供みたいなものです」 落ち込んでいたところに優しくされて、ルイズは更にシエスタに頭が上がらない。 「ほら、封をして……出来るだけ早く着くように、今日中に出しちゃいましょうね?」 封蝋を出しに行こうとするシエスタの袖を、ルイズがつんと引いていた。 「あの……ね……ありがとう」 俯きながら、ぼそぼそと。 もう一度ルイズを抱きしめると、照れたように二人で笑いあった。 481 名前:4/7[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 00:25:46 ID:gmVk61Jx 身体の弱いカトレアが、息を切らせながら母親の部屋に飛び込んでいく。 「なんですか、騒々しい」 いつも大人しいカトレアの滅多に無い様子を、怪訝に思いながらそれでも躾を忘れない。 「ルイズから手紙が着きました」 ほんの少し前に騒々しいと怒った口が金切り声を上げた。 「そ、それでっ? ルイズは無事なの?」 それだけ聞くと力の抜けた身体をカトレアに預けながら、こぼれる涙を拭おうともせずに、 「よ、良かった……始祖よ……感謝します……」 その場で泣き始めた。 「戦争が終わっても、色々立て込んでいたようです……お返事が遅くなってごめんなさい…… カトレアは知っていた。 「手紙は……わたし宛だけなの」 何度か勧めたけれど、母はルイズに手紙を書こうとしなかった。 「ええ、良いのよ、手紙を書いたのは貴方だけですもの、それでいいの」 母の文箱に、出されることの無かったルイズ宛の手紙の束が有る事を、 「だって……親からの手紙なんて……その……ねぇ……」 ルイズに迷惑だと思われる、そう思っていたらしい。 そう言いながら俯いて、もじもじとテーブルで指先を遊ばせる母は…… 「母さま……可愛い」 素直に成れない母親は、やはり…… 「ルイズと親子ですわね」 仲のよい親子は、それから時間を忘れてルイズのことを語り合った。 482 名前:5/7[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 00:26:31 ID:gmVk61Jx 待ちに待った返事を見て、ルイズは苦悩していた。 「どうしました?」 カトレアからの返事は優しかったけれど、母に一言も無かったことを怒っていた。 「それで、近いうちに何か手紙に添えてプレゼントでも贈りなさいって」 ルイズの許しを得て読んだシエスタには、怒っている文面には見えなかったけれど、 「こ、これはむちゃくちゃ怒ってる、笑っていると思うけど、ぜーーったい、怒ってる」 らしかった。 「では、何か良いプレゼントを考えないといけませんね」 母親の世代が喜ぶもの……ルイズもシエスタも、あーでもない、こーでもないと悩んでいると、 「どうしたんだ?」 サイトが部屋に帰ってきた。 「母さまに何贈ればいいと思う?」 投げやりな様子のサイトに、ルイズの眉が跳ね上がった。 「……へー、サイトあんた、わたしの母親にどう思われてもいいのね?」 騎士隊の訓練で、最近構ってくれないサイトに、ルイズのストレスは溜まっていた。 「……犬……」 最悪に近かった。 「わ、分かった、俺に出来る限りの協力するから……な?」 目の据わったルイズに、サイトは壁際まで追い詰められた。 「あ、ほらっ、ミス・ヴァリエール、お姉さん、お姉さんに聞きましょう」 困ったサイトにシエスタが助け舟を出した。 「……ちいねえさまに?」 サイトがほっと一息吐く。が、 「……って、良く考えると聞き捨てならないこと言いませんでしたか?ミス・ヴァリエール」 今度はシエスタの迫力が増していった。 483 名前:6/7[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 00:27:04 ID:gmVk61Jx 「あら……あらあらあら」 可愛い妹の可愛い質問に、カトレアは顔を綻ばせた。 「……んーと、でも……これは……」 直接聞かずに、遠まわしに聞いたほうが…… 「母さまを驚かせる事が出来るわね」 案外稚気に富んだカトレアは、ルイズの事を秘密にしたまま母親から欲しい物を聞きだす事に決めて…… ―――――― 「こまったわねー」 困っていた。 上位の貴族の正妻。 「どれも、ルイズに買える物じゃ……ないわねぇ……」 ルイズが贈ろうとしている。 「今更聞きなおすのも……」 間が抜けている。 「折角良い事をしようとしているのですもの……何とかして……」 ルイズでも何とか出来て、母が喜ぶもの。 「……母さま……欲しい物……母さま……う〜〜〜」 悩みぬいたカトレアは、ふ……と、 「あっ、あぁぁぁぁ、そうよっ!」 いつも母が欲しがっていて、 「ルイズならっ……うん、これなら……」 自分の妙案をルイズに伝えるため、カトレアは嬉々として筆を取った。 484 名前:7/7[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 00:27:37 ID:gmVk61Jx 「あら、どうしました? ミス・ヴァリエール」 ルイズの手には一枚の便箋。 「あ、お返事来たんですね、何が書いてありました?」 歯切れの悪いルイズを、シエスタは不思議そうに見つめながら、問いを重ねる。 「お姉さんも思いつかなかったのですか?」 ……何を悩んでいるのかしら? 「……何が書いてあるんですか?」 だらだらと冷や汗を流すルイズを問い詰めようとしていると、 「サ、サイト」 楽しそうに話すサイトとシエスタを見ながら…… 『孫』 と書かれた手紙をただひたすら握りしめて…… 「ち、ちいねえさまの……ばかぁぁぁぁぁぁぁ」 二人が驚くほどの叫びを上げた。 |
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