20-213
Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:49:08 (5645d)

213 名前: 29Q [sage] 投稿日: 2007/09/21(金) 01:03:48 ID:FITj371Q
 晴れ晴れとした気持ちのいい日。透き通るような大空に、気持ちのいい日差しを降り注いでくれている太陽の下、マリコルヌは隠れていた。
「ああ、ルイズかわいいよ」
 ハァハァと気持ちの悪い息を吐きながら、マリコルヌはルイズを見つめている。ルイズはその視線に気づかずに、楽しそうにサイトと談笑している。
「サイト。僕は君が羨ましくない。なぜなら僕には僕だけのルイズがいるからね」
 寂しい発言である。そのルイズというのも、結局は脳内での妄想にすぎず、さらにマリコルヌを寂しい存在にしている。
 だが、マリコルヌはそんなことには気にしない。なぜなら、彼には脳内ルイズがいるのだから。
「ああ、ルイズかわいいよルイズ。どうして君はそんなにかわいいんだい。タバサもいいけど、やはりルイズが一番だ!」
 木の陰に隠れながら怪しいことを呟いているマリコルヌ。何処からどう見ても怪しい人である。通りかかる人も『うわなにこいつ死ねばいいんじゃね?』という素敵な感想を持ちながら、マリコルヌを見ないようにして足早に通り過ぎていく。
 哀れなマリコルヌであるが、彼はそんなこと気にしない。なぜなら、彼には脳内ルイズがいるのだから。
 脳内ルイズは彼にとって最高の存在である。彼を優しく包み、彼を激しく罵倒し、彼を優しく導き、彼を激しく責め立てる。そんなギャップを彼はたまらなく恋し、ますます脳内ルイズへの思いを深めていくことになる。
『信じられない! わたしを見てハァハァしてるなんて! 生きる価値無いわね! 死になさい!』
「ああ、もっとだ! 僕をもっと罵倒してくれ!」
 このドMが! と思ったのは、偶然通りかかったギーシュである。同じ水精霊騎士隊として、これほどの屈辱を感じたことは無かった。
 僕は自分が恥ずかしい。
 そう思ったギーシュは、本気で水精霊騎士隊を抜けようかと考えながら、自分の部屋へと去っていった。
 当の本人であるマリコルヌは、そんなギーシュのことなどお構いなしにルイズの観察を続けている。
 笑うルイズ。怒るルイズ。眠そうなルイズ。拗ねるルイズ。様々なルイズの表情が彼の記憶に残っている。
 しかし、彼は思う。記憶だけではなく、この芸術を実際に残したいと。
 そして、彼は思い出す。サイトが言っていた言葉を。
『俺の世界にはカメラってのがあってな。風景を残すことが出来るんだ』
 どうして風景を残すことが出来るのだろう。もしもそんなものが実在したら、いつまでもルイズの表情を残すことが出来るのに。
『自分で作れば?』
 脳内ルイズがマリコルヌに語りかける。
『ありがとう、僕のルイズ。目が覚めたよ。そうだよ! 作ればいいんだよ! 本当に君は素敵だ!』
『素敵だなんて……褒めても何も出ないわよ!』
 あはははは、とお花畑の中(空想)で笑うマリコルヌ。突然響いてきた笑い声を、ルイズ(本人)は気持ち悪そうに見ていたが、既に旅立っているマリコルヌは気づきもしなかった。
 そして、人間は時にとてつもない力を発揮するものである。そう、マリコルヌはとてつもない偉業をやってのけたのである。
 その時のことを、友人の一人であるヒラガサイトはこう語る。
「マリコルヌが一晩でやってくれました(事実)」
 その日、ハルケギニアにカメラというものが誕生した。

 追記。
 カメラが作られた夜、学院には『待っててねルイズたん!』という怪しい声と怪しい笑い声が響いていたという。


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