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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:51:44 (5646d)

682 名前:王様の御命令[sage] 投稿日:2008/01/29(火) 01:58:32 ID:2yHCo7TK
「……で、これは何?」
 才人は呆れ果てた顔でつぶやいた。
 目の前には、至って真剣な眼差しで見つめてくる、ルイズとシエスタ。
 二人が突き出す手には、各々こよりの紙が握られている。
「王様ゲームのくじに決まってるじゃない」
「同じくです」
 二人は先程うっかり才人が意味ごと教えてしまった言葉を示す。
「いや、それは流れ上わかってるけどさ……。なんで二人とも作ったんだよ、くじ?」
 そう、王様ゲームなら、くじは一組あれば済むはずだ。
「だ、だって! シエスタってばイカサマしようとしてたんだもん!」
「私はただ、全部に王様のしるしをつけただけですわ」
「だってそれサイトと二人でやるつもりだったんでしょ!」
「……うふふ。ばれちゃいました?」
「と、いうわけよ! だから私もくじつくったのっ」
「あのね、君たちね。王様ゲームは複数人でやる事に意味があってだね……」
「知らないわそんな事」
 わざわざ識者ぶった物言いをしたのを、ルイズはあっさり切り捨てた。
「さあ、はじめるわよ。ご主人さまの私が先よね。ひきなさい」
「あ、ズルいです、ミス・ヴァリエール!」
 こうなったルイズは止まらない。もう、それは痛いほどにわかっている。
 だから、才人は抗うことを諦めて、素直にルイズの持つくじをひいた。
 三人の目が、引き抜かれるこよりの先に集中する。
 …………その先は赤く染まっていた。
「……ミス、私と同じことしました?」
「ち、違うわよ! ほら」
 シエスタにジト目で見られて、ルイズはかっと頬を染めた。
 そしてぱっと手を開いたが、確かに他に赤いこよりは一つもない。
 シエスタは愕然とした顔でそのくじをあらためる。
「……あのぅ、ミス・ヴァリエール。バカ正直って言葉は、ご存知ですか?」
「うぅうるさいわね! ふん、これはあれね。ご主人さまと使い魔のキズナってやつよね」
「そんなの聞いたことありませんわ」
「いいの! とにかくサイトが王様のくじひいたのは間違いないでしょ!」
「まあ……そうですけど」
「あー、ストップストップ。そろそろ王様命令していいですか?」
 争っている間にずいと割って入る。
 すると二人は口論をぴたりとやめて、才人をじっと見詰めた。
 あまりの真剣さに少しばかり罪悪感を感じないでもないが……。

 

「じゃ、王様はー……、

 

 ……王様ゲームをおしまいにすることを命令します」
「はあ!?」
「ええっ!」
「王様はナンデモ命令できるの。これルールだから」
「……なによそれ」
 ルイズは頬を膨れさせて拗ねた。
 あぁ、ごめんよ。でも俺あとでシエスタに延々冷たくされるのイヤだし。
「私なんてまだ引いてもらってないじゃないですか」
 シエスタは哀しげな目をした。
 あぁ、ごめんよ。でも俺あとでルイズに何度も虚無打たれるの目に見えてるし。

 

「それじゃ俺、水精霊騎士隊の訓練あるから。二人ともごゆっくり!」
「あ、ちょっとサイトっ!」
「あぁっサイトさん、待ってください!」
 言い捨てて、才人はデルフリンガーを引っ掴み部屋を飛び出した。
 廊下を走る背中にはまだ二人の文句が届く。
「いやあ、色男ってなあ大変だ。おりゃあ剣でよかったなあってしみじみ思うね」
「うっせえ。黙ってろ」
 笑いながら言うデルフを、才人は思い切りにらみつけた。


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