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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:51:47 (5646d)
129 名前:未来図β 2[sage] 投稿日:2008/02/02(土) 21:58:46 ID:tvXrwvSE ……しかし、いつの世もそういう時間は長く続かない。 どすどすどすどす……。 「……ん? なんか廊下からすごい地響きが……、いや、足音か? これ」 やけに怯えた声色におや? と思った瞬間。 「ぅお、いって……おい、ルイズ! いきなり何すん……」 バァン。 「エ、エレオノール姉さま。おはようございます」 ルイズは引きつった顔で、姉のそれ以上に引きつった顔を見る。 「こンのバカ! バカルイズ! 脳天気のちびルイズ! 本当に迷惑ばかりかけて!」 おはようじゃないわよ! と叫びながら、彼女は強くルイズの頬をつねり、ひっぱった。 「ひぅーっ、ひふぁい、ひふぁいへふ……」 頬をうにょーん、と引き伸ばされ、ルイズは解読の難しい言葉で喋った。 「あ、あの、エレオノールさん。ルイズはさっきやっと気がついたばかりで……」 見かねて口を挟んだ才人はルイズ以上に凄みの効いた視線と声にびくりと身を竦ませた。 「エレオノール姉さま、もうそのくらいにしてあげて。私はもう大丈夫なのよ」 後ろから遅れて入ってきたカトレアの声に、エレオノールはフン、と言って手を離した。 「……わかっているの? おちび。カトレアはあなたに治癒をかけ続けて倒れたのよ」 ルイズは頬をさすりながらも、神妙な面持ちで一番上の姉を見上げる。 ルイズは唇をかんで俯き、素直に返事を続ける。 「ねぇルイズ。今日ばかりはわたしもあなたに言わなくちゃならないわ」 普段かばってくれるカトレアにそう言われ、びくんとルイズの肩がはねる。 「あなたはね、私たち家族にとっては、虚無の担い手ではないの。わかっているかしら?」 思わず反発しかけたルイズの口をカトレアは指でそっと押えた。 「……虚無の系統を使うあなただけにしか出来ない事が時にあるけれど……、あなたはね、 「あ……。ご、ごめんなさい……ちいねえさま……!」 大粒の涙を零しながら、ルイズはカトレアの胸に飛び込んだ。 「……まったく、カトレアはいつもおちびに甘すぎるのよ」 泣いているルイズは気づいていないが、才人にはそれが聞こえてしまった。 彼女は愛情表現の形が違うだけなのだ。 パン粥を一掬い。それをルイズの口元にやり、また一掬い。その繰り返し。 東へ危険な長旅をして、戻って。ルイズが無茶をして倒れて、眠り続けて。 しかし、繰り返し続けて何度目か。 「おいこら……、冷めちまうだろ。食えっつの」 ぐいぐいと唇に押し付けて、やっとできた隙間からスプーンを押し込み、流し込んだ。 「……? どうしたんだよ。嫌いなのか? パン粥」 さっきまでぱくぱく食ってたろうに。それに実家のメシなんて、いいじゃねえか。 「じゃあなんで食うのやめてんだよ。……胃の調子でも悪いのか?」 ……お姉さま方が様子を見に来る直前までは、あんなに素直でかわいかったのに。 そっけない言葉に反し、気遣わしげに歪んだ顔。 「お前が無理したのは俺のためだろ。……なのに、その無理した分も治らねえ内に放って 何かと気にしすぎては落ち込んでしまう、真面目で優しいご主人さま。 「でも、それじゃサイトのご両親が……。アンタが帰るのを心待ちにしてるはずだわ」 不承不承といった風ながら、ルイズはうなずいた。 「さ、わかったんなら食え。早いとこ元気になってくれねえと困る」 怒りもなく、至って真面目に、むしろ微笑んでルイズは言った。 「…………。うん、そうそう。俺使い魔だしね。ご主人さまが弱ってると離れらんねえの」 だから才人は、呆れ半分拗ね半分で、ぶっきらぼうに答えた。 そりゃ、家族には会いたい。なんせ、もうずいぶん長いこと会ってないのだ。 ……けど、早く元気になって欲しいのは「好きな娘が寝込んでると心配だから」だ。 ……たく、だから、こうして自分からお前を看病してんじゃねえかよ。 ……才人は自分の普段の鈍感さを棚に上げて、そんなことを考えた。 |
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