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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:54:54 (5646d)

Midnight Lovers  ぎふと

 

注)ややビターです。シエスタ好きの同志には申し訳ない展開かも

 

 ――どういうわけか、その夜に限って目が覚めてしまった。

 窓に目を向けたが、外は暗く月の明かりさえない。漆黒にも近い色だ。
 まだ深夜から少し回ったぐらいだろうか。
 すっかりと意識が冴えてしまった。
 困ったなあ、と思った。
 明日もいつものように、朝早くから水精霊騎士隊の訓練がある。
 副隊長であるからには、皆にだらしない姿は見せられない。なにより自分はガンダールヴ、数々の手柄を立てた英雄。表にこそ出さないが、自負やプライドだって多少はある。
 できることなら無様な真似は避けたい。たっぷりと体を休ませておきたかった。

 目を閉じてなんとか睡魔を捉まえようと苦しんでいると、左右からそれぞれ別の寝息が聞こえてきた。ルイズとシエスタだ。
 あまりにも気持ち良さそうに寝ているので、無性に羨ましくなった。
 そんな自分だって日頃は相当に眠りが深いというのに現金なものだ。

 それにしても、と改めて考える。
 こんなふうに女の子二人に挟まれるようにして寝ている自分は相当な果報者じゃないだろうか。
 加えて両者ともに可愛くて、しかも自分を好いてるとなれば。この現状を天国と言わずしてなんと言おう。どうだうらやましいか!

(……なわけないだろっ!)

 誰を相手にでもなく言って、すかさず自分でつっこんだ。
 まったく。フタを開ければ針のむしろでしかない。神経をすり減らす毎日だっつの。
 もし誰かが代わってくれるというんなら、喜んで代わってやりたいぐらいだ。

 まあしかし。

(実際代われって言われたら、それも困るんだけどな……)

 ひとりごちながら、顔を左に傾けた。
 そちら側で眠っている姿を、目を凝らして見つめる。
 暗いのでほとんどシルエットでしかない。けれど、なんなく細かな所まで思い浮かべることができた。
 それぐらいに見慣れている、今ではもう家族以上に近いぐらいの存在だ。

 そっと手を伸ばして……、柔らかなほっぺたに触れた。
 やっぱり、と顔が緩む。
 口元によだれが垂れて、髪の毛が一すじ張りついている。ほんと子供みたいだ。
 手で綺麗にぬぐってやるついでに、軽く頬を撫でる。つくづく眠っているところは可愛い、と思う。

 そんなふうに最初に意識したのがいつだったか、今もはっきりと覚えている。
 出会ってまもなく、ギーシュとの決闘で酷い怪我を負った時だ。
 看病疲れで突っ伏して眠るルイズは、それはもう激しく可愛く見えた。
 その後の成り行きはひどいものだったが……、すりこまれるには十分だった。
 こうして毎晩見慣れてしまった今でも、その寝姿が魅力的なのは変わらない。
 理由は単純だ。
 究極に自分の好みだからだ。
 なぜ他のやつらがルイズを取り合わないのか不思議でならない。
 こっちの美意識は地球とは違ってるんだろうか。それとも単に使い魔補正のせいなのか。悩んでしまう。
 確かにルイズは子供っぽいし性格の方もちょっとアレだけれども、それを差っぴくだけの価値は十二分にあるはずなのだ。

 むにゃ……。そのルイズが突然身じろぎしたので、慌てて手を引っ込めた。
 危ない危ない。起こしでもしたら面倒だ。
 何しろ人並み以上に寝るやつなのだ。その気になれば一日中だって寝ていられる、幸せ極まりない人種。……仕方ないよな。ほら子供ってそんなもんだし。
 だもんで寝不足にでもさせて機嫌を損ねたりしたら大変なことになる。それこそ丸一日当り散らしかねない。女王様のご乱心。そしてターゲットはいつも俺。使い魔の俺。一心に愛情を注がれております。はい。

『何言ってるのよ。当たり前でしょ? 使い魔なんだから』

 何かにつけてこうだ。いつも俺を切ない気分につき落とすそんな台詞も、近頃はさほどこだわりを感じなくなった。
 よくよく考えてみれば自分だって、ルイズがご主人様でなければこんな気持ちになったか疑わしい。
 出会い頭にキスを交わし、使い魔として毎日を一緒に暮らし、数々の危険を共にして、どういう訳かまかり間違ってヒーロー気取りで守ってやるなんて真似をしていなければ、こうはならなかったはず。
 万が一、偶然ルイズに出あったとしても、
(うっわ、性格最悪。外見は可愛いけどこれはパスだなー)
 ぐらいで終わっていたかもしれない。
 見た目だけで命を賭けるほど、さすがに自分もバカじゃないと思うし。
 だから。そろそろどうにかしなきゃいけない。

 ……などと、つらつらと物思いにふけっていたら。
 いきなり襟元をきつく絞められた。窒息しそうになって、なんの怪奇現象だよと思っていたら、さらに口を塞がれた。ちょ、殺す気か!
 するとふわりと鼻先に漂う甘い香り。
 花と蜂蜜とミルクをごっちゃにしたような、馴染みのある匂い。
 んー、ぷはぁ。と息を吐き出して、その香りの主が俺の頬をするりと撫でた。
 なんだよ。起きてやがった。

 その香りの主は、今度は胸の辺りに指をつきつけてきた。
 もぞもぞと何をやってるのかと思えば、文字らしき物を書いている。
 なになに。……ば? か?
 いきなりバカはないだろ。そりゃ起こしたのは悪いけどさ。
 まだ続く。……い。……ぬ。
 はいはい。どうせバカ犬ですよ。
 さらに続く。……す。……き。
 え? どきんと心臓が大きく鳴り、そのままバクバクと止まらなくなった。
 何こいつ寝ぼけてる? それともまさか……、普段言えないことも文字でなら素直に言えてしまうとか。
 くらりと参った。急速に抱きしめたい気持ちが沸き上がって堪らなくなった。とてもそれだけじゃ済まなそうだ。ああだけど後ろにシエスタが……。ぐっと我慢に我慢を重ねて耐える。
 ところが続きがあった。……じゃ、な、い、も、ん。
 一気に書きなぐるから、後半は怪しかったけれど楽に予想できてしまった。
 最後にピシリと強く指で弾かれた。かなり痛い。手加減なし。そのままおやすみとばかりに寝返りを打って、背中を向けてしまった。

 はあっと息を吐いた。まったく女ってのは怖い。すっかり見透かされてるみたいだ。
 年の割りに子供っぽいと思っていたルイズも、これで日々進歩しているらしい。
 やっぱりどうにかしないといけない。……シエスタのこと。
 最近のルイズとシエスタはとても仲が良さそうで、二人してタッグを組んでは自分を責めてくる。
 けどそれは二人が同じ気持ちを共有しているからで。要するにこう言いたいんだろう。
『いいかげん、はっきりしてよね!』
 うわあ。すみませんごめんなさい。俺がすべて悪い。何もかも悪い。
 弁解の余地なし。わかってる。
 でも……、でもね。シエスタはやっぱり大事な人で、一緒にいるとあったかくて、今までのこともとても感謝していて。やっぱ追い出すなんて出来ねえよ……。
 身勝手とわかっていても、これが正直な気持ちだ。

 手を伸ばして、ルイズの背中に書いた。
 ――ご・め・ん。
 ぴくりとルイズの体が動いた。この後どう続けようかと迷っていたら、いきなり手首をつかまれて引き寄せられた。
 ぐいっと強く引っ張られる。そして顔の前まで持ってきた手を包むようにして両手で挟み、指をしっかりと絡ませながら、親指の先っぽだけをキスをするように唇に含んで……、そのまま動かなくなった。
 そのうち、すうすうと寝息らしきものが聞こえてきた。
 え? 寝るのか? このままの体勢で?
 右手に感じる柔らかな温もりと唇の感触。規則正しくあたる生暖かい息。
 心臓の鼓動が早くなり、じわりと熱い固まりのようなものが腹からこみ上げてきて、慌てて飲み下した。

 ああ、もう。かまうもんか。
 寝れるもんなら寝てみろと少しだけ驚かしてやるつもりで、掴まれている手を引っこ抜きもう一方の腕も伸ばして、背中からぐっとルイズの身体を抱きしめた。その温かさと柔らかさに、一気に体に熱が回る。首筋に唇をあてて色づくように吸い上げた。
 すると息をのむ音とともに、ルイズが大きくかぶりをふった。
 ダメだと言いたげなその仕草に、そんな理性など吹き飛ばしてしまいたい衝動に駆られる。
 
 後方に耳をそばだててみたが、もう一つの寝息は規則正しく変わる気配がない。
 出来るだけ音を立てないように、ベッドを揺らさないようにと注意を払いながら、ゆっくりと手をずらしてネグリジェの上から胸を探り、その薄いふくらみをやや乱暴に握りしめ、浮いた突起を指でつまみ上げて、きゅっとねじりあげた。
 ルイズの体が大きく跳ねた。それをなだめるようにさらに強く抱きしめる。
 静かに。動いちゃいけない。と口に指を添えて伝える。
 どう理解したのか、ルイズは身を固くしておとなしくなった。
 ただ耐えるように唇を噛みしめて、時おり息を苦しげに紛らわせている。

 そんな様子に、さてどこまで耐えられるかと試したくなって、首筋から耳の裏の柔らかい所にじわりと舌を這わせながら、胸に遊ばせていた手を身体の横のラインに沿わせて太ももまでたっぷりと時間をかけて撫で下ろした。
 感じやすいルイズはそれだけでぶるぶると体を震わせる。再び大きくかぶりをふった。けれどその程度で止めるならはなっからしていない。
 まだまだ余裕があるだろうと、意に介さずに片方の足に手をかけてぐいと上に持ち上げた。そうしてできた両足の間の空間に指を滑り込ませる。
 
 驚いたことにその場所は既にぐっしょりと濡れそぼっていた。軽く触れただけでひくひくと応えてくる。ゆっくりと指を沈めると、すぐさま強く締め付けられた。肉壁がねだるように奥へと導こうとする。
 いつにないルイズの敏感な反応に興奮を覚えて、思わず喉を鳴らした。
 何がそうさせるのか、よくわかっている。見られているかもしれないという背徳感。
 抑えつけるほどに高まる欲望が一層身体を熱くさせる。

 うだる下半身を持て余し、少しだけならと自分を誤魔化して、昂ぶっている己の物を取り出して指の代わりにあてがった。手を添えて入り口に先端を押し付けると、ぐちゅりと淫靡な水音が響いた。同時にルイズの唇から「ふぁっ」と甘い声がもれる。
 予想外に大きく響いた声に、慌ててルイズの口を塞ぎ……、凍りついたように動けなくなった。
 触れ合っている場所から、じっとりとルイズの物が溢れ出しているのがわかる。愉悦の証しがこれまでにないほどたっぷりと二人の躯を濡らして足を伝ってゆく。少しでも動いたら、きっと音をたててしまう。

 息をつめて、背後で眠っているシエスタの寝息をうかがった。
 ……特に変わりはないようだ。
 ほっとしたその時、きゅうっと今までに一度も覚えのない強さで入り口がきつく先端を締めあげた。
 ぞくりと快感が駆け上り、急いで別のことを考えてかろうじて散らす。警報が鳴る。そろそろレッドゾーンに差し掛かっている。
 このまま体を離して終わらせるべきだ。わかってはいても、ぴったりと張りついた肌がアルコールを含んだように熱く火照って、じりじりとした焦燥感に焼かれて、たまらなく情欲を掻き立てる。

 動けないままどうしようもなくなっていると、不意にルイズが口を覆っている手をぎゅっと握って、人差し指の一本だけをわずかに開いた唇で咥えると強く吸い上げた。まるで別の方の物を吸い上げたいとでもいいたげに、唾液を絡めて強く吸う。
 さすがに堪えきれず、腰を動かしてじわじわと押し入れた。音を立てないようにゆっくりともどかしげに進ませると、ぬるま湯につかったようなとろけるような心地の後、肉壁がざわりと蠕動した。
 感じている証拠だ。さらにそそりたてるように大きくかき回す動作で腰を回しながら、上のほうの足を持ち上げて膝を折り曲げさせるとルイズ自身の手でそれを支えさせた。

 自由になった手を前に伸ばして、最も感じやすい場所を探る。熱く柔らかな肌を押し分けると、すでにぷっくりと充血したそれがひくひくと求めてきた。直接触れないようにそっと近くだけを指の腹で擦ってやると、それだけで耐え切れないように躯が跳ねた。
 すすり泣くような嗚咽。繋がった場所から絶え間なく水音が響いて耳を犯す。もはやそれ以外の何物でもなく、隠しきれるものではなくなっていた。
 それでも高ぶる快楽にストップをかけることはできない。迷わせる暇を与えずに、腰に手を添えて一気に奥まで突き入れる。膣の入り口をえぐるようにさらに腰に力をこめた。ひあっ、と鋭い声が漏れた。

 その瞬間。背後で息をつめるような気配がした、ような気がした。
 気のせいかもしれない。すぐに寝息が続いたからだ。
 まだ引き返すことはできるだろうかと考える。けれど、気づかれているかもしれないと思うと、苦い罪悪感で体が一層熱に満たされた。いっそ聞かせてしまいたいという黒い欲望が湧き上がる。
 答えをルイズに委ねようと、指で突起をつまみあげた。
 するとルイズはぶるりと大きく震えて、口を覆っていた手を跳ね除けると顔をシーツに埋めてしまった。荒い息で背中が大きく波打たせ、羞恥と快感の相乗から生まれる興奮に身を震わせている。
 その様子にもう戻れないことを覚悟した。

 こうなったら一刻も早く終わらせるだけだ。腰に手を添えてひたすらに突き上げることに終始する。
 声を上げられない苦しさからかえって情動をかき立てられるのか、かつてない反応をみせるルイズの躯に急速に追い詰められてゆく。歯を食いしばったルイズの口から、絶え間なく喘ぎ声が流れ出す。それに合わせてひたすらに最奥を突き上げた。
 そろそろ限界を感じ始めた時、膣壁がぎゅうっと強く締めつけて、ルイズの背が折れそうにしなった。その時、腰に添えている手にぴりっとした小さな痛みが走った。手の甲に爪を立てられたのだ。まるでは、や、く、と合図するように。
 唯一こいつが素直に感情を吐露する時だ。その瞬間例えようもない幸福感に酔う。
 さらに擦り立てるように激しく突きたてると、内側が絡み付いて促してくる。 強く締め付けられた刹那、奥からぐっとこみ上げてきた物が電流のように背筋から頭に走り、大きく脈打った。ルイズが最後の嬌声を放つ。

 ぎりぎりの瞬間に引き抜いて、いつものようにルイズの上にのしかかり、その腹に……、そこではっと気がついて硬直した。
 視界の端に別の人影。
 忘れていなかったけれど、忘れていた。……すっかりと。
 途端、高まった射精欲も瞬間冷凍された。
 ルイズもばつの悪そうな顔で、恥ずかしげにシエスタの方を見ている。
 さすがに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。ごめん、本当にごめん……。

 ベッドを揺らさないようにゆっくりと降りながら、トイレに向かうために部屋を出た。
 いったい明日、どんな顔をして、二人の同居人におはようを言えばいいのか。
 けれど一方で思う。今日みたいなのも悪くないなと。
 
 いつかチャンスがあればまた……。
 こっそりと胸の内に収めた。
 
〜FIN〜
 

 

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