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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:55:08 (5660d)

違うよ!変態と言う名の紳士だよ!  せんたいさん

 

※このマリコルヌは本編よりはるかにアレです。ヤマグチ神のマリコルヌとは別物です※

 

「ん?なんだありゃ」

ある虚無の曜日の朝。
才人は、魔法学院の男子寮の前に、黒山の人だかりが出来ているのを見つけた。
虚無の曜日には町に出かける生徒が大半なのに、その日に限っては男子寮一階の部屋の前に、多数の生徒が集まっていた。
そして良く見ると。
そこに集まっているのは全てが男子生徒。
人だかりの中心にある窓を覗こうと、全員必死になっている。

「…気になるな」

ルイズとの待ち合わせまでもうちょっとあるな、と思い、才人はその人だかりの原因を確かめに行く事にした。

人だかりの成分の大半は、虚無の曜日でもヒマと性欲をもてあます、水精霊騎士団の間抜けな面々だった。
才人は半ば呆れながら、手近な団員に話しかける。

「なあ、何やってんの?」

声を掛けられた銀髪の少年は、副隊長の姿を確認すると軽く会釈し、そして応える。

「絶世の美女が現れたんだって!そりゃもう、アンリエッタ陛下なみの!」

興奮したようにそう言う団員。
なるほど、と才人は納得する。
美女の来訪を聞きつけ、男どもが群がっている、というわけだ。
そして続ける。

「でもってその子、マリコルヌの許婚だっていうんだよ!」
「な、なんだってーーーーー!」

才人もすぐさまその人ごみに加わったのは言うまでもない。

部屋の外の喧騒が煩かったが、マリコルヌはあえてその喧騒を放って置いた。
目の前の人物に、さっさとお帰り願うためだ。
目の前にいるのは、件の絶世の美女。
流れる亜麻色の髪は絹糸のように柔らかく、肌は染み一つなく、彼女の纏う極上のシルクのドレスより木目細かい。
少し垂れた深い紫の目尻は優しい光を湛え、薄い唇には柔らかいピンクのルージュが控えめに引かれている。
華奢な身体は抱きしめれば折れてしまいそう、しかし身体の各所は確実に女性を主張し、張り詰めていた。
そして、その姿から予想されるとおりの、小鳥のさえずるような美しい声で、彼女はマリコルヌに囁きかける。

「あ、あの、お久しぶりですね。マリコルヌにいさま…」

照れたようにほ、と頬を染める彼女は。
マリコルヌのまたいとこにあたる、トリステイン辺境豪族の娘。
名を、エリス・イヴォンヌ・ラ・シフォンといった。
十五になった娘を、彼女の両親がグランドプレ家との繋がり欲しさに、許婚に差し出したのである。
もちろんマリコルヌの両親は快諾する。
それになによりも。
エリス自身が、それを強く望んだというのだ。
壁の方を見つめ、自分の方を振り返らないマリコルヌに、エリスは困惑したように語り掛ける。

「にいさまは、覚えてらっしゃらないかもしれませんけど…。
 『一人前のレディになったら、娶ってやる』って、ちんちくりんだった私に、言ってくださいましたわよね…」

言いながら、潤んだ瞳でマリコルヌのまぁるい背中を見つめる。
窓の外からは『おいこら代われ』『なんでマリコルヌが』なんて言葉が聞こえるが気にしないことにする。

「ああ、確かに言ったね」

マリコルヌの声は、何故か不機嫌そうだった。
彼の不機嫌を察知したエリスは、慌ててフォローする。

「あ、あの、ご迷惑でしょうけれども!
 私、なんでもしますから!にいさまにだったら、何されても平気ですから!ですから、お傍に」

おいこら代われ、世の中くるっとる、神は死んだ、とか騒音がどんどん大きくなる。
だが、マリコルヌは。

「昔の僕だったら、その申し出を悦んで受けただろう」
「で、でしたら!私をもらってくださるのね!お傍においてくださるのね!」
「だが時すでに時間切れ、だ」

言ってマリコルヌは、じっと見つめていた壁に掛けられた大きな、人間大の肖像画をびしい!と指差す。
そこには。
相手を蔑む酷薄な笑顔で、素足を振り上げて今まさに相手を踏み潰さんとする、青い長い髪の美女。
知っている人は知っている、イルククゥことシルフィードの肖像だった。

「ああっ、僕の女神ぃぃぃぃぃぃ」

言ってマリコルヌは肖像の振り上げられた脚にすりつく。
踏んでくれ、と言わんばかりに。

「に、にいさま!そのような得体の知れない女など、どうでもいいではないですか!」
「お前じゃダメなんだよ!」

自分に寄ってこようとする絶世の美女に、マリコルヌはびしい!と指を突きつける。

「お前、僕を尊敬しているだろう!」
「はい、にいさまは私の憧れですもの!全てですもの!」
「お前、僕になにされてもいいんだろう!」
「はい!私、にいさまにならどんな辱めを受けても…むしろ辱めて…やん…」
「お前、虐められるのが大好きだろう!この牝豚!」
「は、はいぃ!エリスは、エリスは虐められるのが大好きな、だらしない牝豚れすぅ!…あぁん…」

マリコルヌの侮蔑の言葉に、真っ赤な顔で興奮しながら、エリスはへたん、と床に座り込む。
その顔は愉悦に蕩けていた。
窓の前の観客は全員ドン引きだ。

「だからお前はダメなんだよ!僕は、僕はなあ!」

言ってマリコルヌは目の前で悶える変態に指を突きつける。

「踏んでなじって蔑んでくれる、逞しい女性にしか興味がないんだよっっ!」

凍る空気。
止まる世界。

「お前にできるか!僕を蔑んで、なじって、いたぶることが!」

エリスは目をまん丸に見開きながら、固まっていた。

「で、できません…」
「ならばお前に用はない!失せろこのマゾヒストめ!」

その言葉に、エリスの目尻に涙がたまり。
そして。

「マリコルヌにいさまの変態ーーーーっ!」

泣きながら捨て台詞を残し、マリコルヌの部屋から走り去ってしまう。
それを見送りながら、丸い背中がぷるり、と震える。

「なんだ」

ほう、と溜息をつき、脚を振り上げるシルフィードの肖像を熱い視線で見つめて。

「やればちょっとはできるじゃないか」

女神にははるか遠く及ばないが、もうちょっと上手に罵れるなら考えてやってもいいかな、などと思うマリコルヌだった。

この出来事以降、マリコルヌにもう一つの二つ名が付け加えられた。
『至高の変態紳士』と。
勿論そう呼ばれたマリコルヌは妙に嬉しそうだったが。〜fin


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