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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:55:25 (5645d)

DOGS  せんたいさん

 

とんでもない夢を見た。
その夢の中で、私は黒い革の首輪だけの姿で、ずっと部屋の中にいた。
だって、ご主人さまが『待て』って言ったから。
私はずっとずっと、待ち続けた。
気が狂いそうなほど長い間?それともあっという間?
それでも私には関係ない。ご主人様が帰ってくるまで待つだけ。
そして、部屋のドアが開く。
ご主人様が、帰ってくる。

「ただいま、テファ」
「おかえり、サイトっ!」

私は首輪だけの格好でご主人様に抱きついて…。
そこで目が覚めた。

「はー、うー。もうダメかも私…」

ティファニアは昼食後の紅茶を銀のスプーンでくりくりかき回しながら、食堂のテーブルの上で潰れていた。
原因は単純。
この一週間ばかり、才人の夢ばかり見るのだ。
それも尋常でない夢。
完全にペットとして、『飼われて』いる夢ばかりを見るのだ。
ある時は、部屋でずっとお預けをされる夢。ある時は、手ずからご飯を食べさせてもらう夢。
首輪をつけられ、部屋から逃げられないように繋がれ、全裸で才人に飼われている夢。
拘束などされなくとも自分は逃げ出す事などないのだが、その拘束が却ってティファニアの従属願望を満たしていた。
ティファニアはそんな夢を思い出して、はぁ、ともう一度溜息をつく。

「三日逢ってないだけだっていうのに…おかしいよこんなの…」

ティファニアはこの三日ほど、才人と逢っていない。
それは、才人が水精霊騎士団の任務で王都に行っているせいなのだが。
その逢えない三日の間、ティファニアは己の願望を投影した夢を見させられ続けている。
それも、一番いいところでその夢は醒めるのだ。
才人に抱きついた瞬間。才人に唇を奪われる瞬間。才人に押し倒される瞬間。
そんな一番ティファニアがどきどきする瞬間に、彼女の目は無情にも醒めてしまう。
そのせいでティファニアは余計に悶々としていた。
ちなみに才人は今日の午後帰ってくる予定だと、ティファニアは本人から聞いていた。
しかし、もう既にティファニアはガマンの限界だった。

…どうしよ。王都まで迎えに行っちゃおうかなあ。

その後できるならおねだりして、外でもいいからしてもらおうかな、などとだんだん危ない方向に思考が逝き掛けた瞬間。

「やっほーお姉ちゃん」

陽気な声で、前からブルネットのメイドが声を掛けてくる。
食器の載ったワゴンを牽いている事から、食べ終わった食器を下げているのだろう。

「…なぁにタニアぁ…?」

紅茶をくりくりかき回しながら、テーブルの上で潰れたまま、ぜんぜんやる気のない声で、ティファニアはタニアに用件を尋ねた。
タニアはティファニアの尋常ならざるテンションの低さに軽く驚いたが、そんな事はとりあえず置いておく事にした。

「…なんかテンション低いな。
 まあいいや。これ見てお姉ちゃん」

言ってタニアは屈みこみ、ちっちっち、と舌を鳴らす。
すると。
テーブルの隙間を、てってってー、と茶色い毛玉がタニアに向けて突進してきた。
それは、開立したオレンジ色の毛の、毛足の長い仔犬。
小さな三角の耳と、くりくしした目。へふへふと常に舌を垂れている小さな口。
『可愛い』としか形容しようのない生き物が、タニアの腕の中にいた。

「へえ、可愛い子ね。どうしたの?」

先ほどまでのテンションの低さとは打って変わり、ティファニアは上半身を起こしてその犬に見入る。

「聞いて驚け。この子ね、某クルデンホルフのお嬢様なんだ」
「え?これヴィ」
「ちょいまちそこでストップ。それ以上言うな。元に戻るから」

ベアトリスの名前を出そうとしたティファニアを、タニアは止めた。
そしてそこから、彼女の説明が始まった。

事の起こりは昨日の夕方。
タニアがいつものように夕食の片付けを終えて、厨房の裏でちょっと一息ついているところへ、ベアトリスがやってきた。
普通貴族の子女は厨房の裏になんぞこないものだが、彼女とマリコルヌは違った。
ベアトリスはタニアに逢いに、わざわざ夕食後まで待って、ここに来るのである。
まあ別に、他のお友達の所へ行ってもいいんですけれども、などとベアトリスは言っていたが。
タニアは確信していた。

…クラスに友達いねえなこいつ。

でもまあ懐かれて悪い気はしないな、と元々子供好きのタニアは、そんな彼女を邪険にすることなく扱っていた。
そしてその日は、ベアトリスは奇妙な指輪を二つ、持ってきていた。
それは『アイシャの指輪』と呼ばれる魔法の指輪の模倣品で、嵌めると犬になってしまうらしい。
そして、その効果は自分の名前を呼ばれるまで続くのだと。
ベアトリスは、その指輪をティファニアにプレゼントしたらどうか、と相談してきた。
彼女の話によれば、普段本妻の影に怯えてまともに逢瀬も重ねられないティファニアのために、この指輪を用意したらしい。
タニアは半信半疑でその指輪を弄んでいたが、面白い事を思いつく。
そしてその指輪をつまんで、ダメ元で言ってみる。

「ほれベアちゃん、指出してみ」

タニアの言葉に、ベアトリスはなんと素直に指を差し出した。
その頭の中ではタタタタタニアさんがわわわわ私に指輪!?指輪!?お、女の子どうしなのに私たちああどうしましょうなどという妄想が繰り広げられていた。
しかしそんな事はタニアは露知らず。
タニアはなんだベアちゃんもつけてみたかったのか、などと素直にその指に指輪を嵌める。
そしてベアトリスが指輪を嵌めた瞬間、ぽへん、と奇妙な音と煙が立ち…。
タニアの目の前に、ベアトリスの服に絡まった小さなオレンジ色の仔犬が現れたのである。

「名前呼んじゃだめだよ。こんな公衆の面前で、裸にされたらオシマイだからさ」

故意に固有名詞を抜いて、ティファニアにそう警告するタニア。
彼女は服がその場に残った事から、この魔法が解けた瞬間のベアトリスは真っ裸であろうことを予測していた。
タニアの警告にティファニアはうんうん、と頷く。
そんな元保護者に、タニアは手を差し出した。

「そんなわけで、コレ。もう一個余った分。この子があげるって言ってたからさ、お姉ちゃんにあげるよ。
 どう使うかはおまかせするわ。んじゃね〜」

タニアはもう一度ベアトリスの化けたポメラニアンを床に置いて、ワゴンを牽いて去っていく。
ワゴンを牽くタニアの後ろを、てってってー、とち忠犬さながらにベアトリスは着いていく。
犬になった後さんざん愛撫されて、もう完全に心の底までタニアの犬と化していたベアトリスだった。
そんな奇妙な二人を見送って、ティファニアは手の中の指輪をまじまじと見つめる。

…ひょ、ひょっとしてこれって…!
サイトにホントに飼ってもらえる、最大のチャンス!?

犬でもいいのかお前、と突っ込んでくれる人は、そこにはいなかった。

 

水精霊騎士団の任務には、もちろんルイズが同行していた。
当然任務にかこつけて才人とにゃんにゃんしようという色ボケ女王の魔の手から、己が使い魔を守るためである。
しかしルイズの監視を縫って、しっかり女王は騎士とにゃんにゃんしたわけで。
結果、才人が王都を発ったのは他の団員よりまるっと一時間ほど遅れてからだった。

「で。弁解の余地があるなら言ってみなさいよ」
「ありまつぇん…」

フルボッコにされて縄で縛られて馬車に積み込まれ、才人は涙目だった。
本当はアンリエッタ女王のほうから迫ってきたのだが、女王の誘惑に軽々しく乗ってしまった自分も悪い、と犬根性の染み付いた才人は大人しくルイズの折檻を受けていた。
だがしかしガタピシ揺れる馬車の床に転がされ、ルイズの足で事あるごとに小突かれては実際たまったものではない。
いい加減酔って吐きそうになっていた才人を、ルイズの言葉が救う。

「…ほら犬。着いたわよ」

学院に着くまで折檻、と言っていた手前、学院に着いたならば手を引くのが道理。
ルイズは馬車が学院の門に到着したのを確認すると、才人の縄を解いた。
本当はルイズだってこんなことはしたくない。

…ちょっと蹴るのキモチよかったケド。

思わず浮かんだサディスティックな笑みを慌てて打ち消し、ルイズは開いたドアに向けて才人の背中を押す。

「…コレに懲りたら、二度と浮気なんて考えない事ね」

実際は二度どころではないのだが、これはもう半分お約束の儀式になりつつあった。
今ではもうルイズも心の中では半分諦めている。
才人に、他の女が寄ってくるのは仕方のないこと。だって自分が堕とされた相手だし。
それはもう、きれいな花に蝶が寄ってくるのと同じで、止められないのだ。
だったら、寄ってくるたびに虫どもを追い払うしかない。それで花の蜜を採られてしまったら、それは自分の責任なのだと。

だから、使い魔の手綱はしっかり握らなきゃね。

とりあえず簡単に赦すことはせず、そのたびにきっつぅいお仕置きをするのが今の自分に出来る精一杯、とルイズは思うようになっていた。
そして、押された才人は踏鞴を踏み、馬車の外に転がり出る。

「わっとっと」

才人は思わず転びそうになるが、何とか体勢を立て直す。日頃の鍛錬の賜物だろう。
しかし。

わふ!わふ!

バランスを崩したところへ、巨大な毛玉が才人を襲う。

「わーっ!?」

わふわふわふわふわふん!

才人を地面に引き倒した巨大な毛足の長い山吹色の毛玉は、問答無用で才人の顔をべろんちょべろんちょと嘗め回す。

「ちょ、わ、やめ、なんだっ?」

才人は慌てて自分の上に乗っかっているその山吹色の毛玉を退ける。
思いのほか少ない抵抗で、その毛玉は才人の目の前にちょこん、とお座りをする。

その毛玉の正体は大型犬。
現代日本では、ゴールデンレトリバーと呼ばれる類の、猟犬である。
毛足の長いしっぽをべっふべっふと振りたくり、才人をぢいいっ、と見つめている。

「な、なんだお前、どこから来た?」
「わ、何その子!可愛い!」

後れて馬車から降りたルイズが、地面に座り込む才人と対峙する犬を見て、そんな言葉を漏らす。
動物を飼うのが趣味のカトレアの妹だけあり、ルイズもひとかたならぬ動物好きであった。
カエルはダメだが。
その犬はルイズのその言葉に応えるように、わふ!と喉を鳴らす。
人の言葉を理解しているようなその素振りに、ルイズは思わず、その犬の頭を撫ぜようとする。

「賢いわね〜あなた」

しかし。
その犬はするりっ、とルイズの手をかいくぐり、膝をたてて座っている才人の足に前足をかけ、才人の顔を舐めんばかりの勢いで近づく。
ルイズは一瞬ムっとする。

「あ、あら、随分サイトに懐いてるのねえ?」

そう言って今度は後ろから背中を撫ぜようとした。

ばすん。

びゅんかびゅんか振り回されていたその犬の尻尾が、ルイズの細い手を綺麗に跳ね除けた。
その場に流れるイヤ〜〜〜な空気。
ルイズの顔が黒く染まっていく。気がした。
才人はそんなルイズを気遣って、声を掛ける。

「あ、あのさルイズ?」

しかしそれは逆効果だった模様。

「あっそう。そういうつもりなわけ?」

顔を上げたルイズの目は完全に据わっていた。

「い、犬に怒ってもしょうがないんじゃないかなあ?」
「そうね、そうだわね」
「だからさ、怒るなよ?絶対怒るなよ?」
「その通りだわね。そうよ、犬は犬と仲良くしてれば!?
 もう今日は部屋に帰ってくるんじゃないわよっ!?いいわねッ!」

やっぱり怒った。
ルイズはぷんすか怒りながら、全くもう失礼しちゃうわふんとにもう、などと言いながら、女子寮のほうへすたすたと去ってしまう。
残されたのは、謎のレトリバーと才人だけ。

「…あのー?ルイズさーん?」

わふん!

才人の情けない呼び声に、ルイズではなくそのレトリバーが景気よく鳴いて応えた。

鍵が掛かっていて開かない。
ルイズの部屋は完全に閉ざされていた。
中からはシエスタの『えーサイトさん締め出しちゃうんですかあ?』という不満タラタラな声と、ルイズの『いいのよあんな犬!』というルイズの怒った声が聞こえる。

「…疲れてるってのに…参ったなあ」

水精霊騎士団の任務と女王との情事、さらに飼い主の折檻で体力の消耗の激しい才人は、一刻も早く横になって休みたかった。
そんな才人に、足元から呼びかける声。

わふん!

尻尾をばふんばふんと床に叩きつけながら、才人の右斜め後ろで先ほどの山吹色のレトリバーが吼える。
才人はルイズとの仲を引き裂いたこの犬を一時は追い払おうとしたのだが、何度追い払ってもべふべふ言いながら尻尾を振って着いてくるこの犬に、完全に根負けしてしまったのだった。

「いいよなあお前は暢気でさ」

才人は溜息交じりにそう言って、女子寮の入り口に向かって歩き始めた。
そして今夜の寝床をどうしようか考え始める。

…タバサんとこ行ってみるか?

才人のいう事なら何でも聞く、小さな青い髪のお姫様を思い浮かべ、しかし才人は頭を振る。
タバサのところに泊めて貰って、誘惑に勝つ自信は毛ほどもない才人だった。
ただでさえしんどいのに、あのロリっ子に搾り取られたら、明日は昼までおねむだろう。ひょっとすると腰痛も再発するかもしれない。
そしてもしその事がルイズにバレたら。

『少し…頭冷やそうか…ヴァカ犬』

嫉妬と独占欲を魔力の源とする虚無の担い手に、バインドからダイレクトシュートでお仕置きされるのは目に見えている。
どうしたもんかなあ、と頭を捻りながら女子寮の入り口の石段に腰掛ける。

わふん!

その目の前で、お座りをしているレトリバーが吼えた。
飼い犬。ペット。
才人はピンときた。
ティファニアに、自分のペットだと言い張る常識知らずの規格外エルフのところに、泊めて貰おう。
ティファニアなら、今日はしんどいから寝るだけな、と言えばちゃんと『お預け』を聞いてくれるだろう。
そう予想した才人は、立ち上がってティファニアの部屋に向かった。

しかし おへやは からっぽだった
ティファニアは部屋にいなかった。
鍵も掛かっていないその部屋は見事にもぬけの空で、人影もない。

「…どっか出かけてんのかな」

言って無人なのを確認し、女性の部屋に無断で入り込む才人。
鍵が掛かっていないとはいえ公序良俗に反する行動だったが。
才人はテファなら別になんも文句いわねえよな、などと楽観視していた。
実際ティファニアも文句をいう事はないだろうが、だからと言って。
そんな才人の足元を、山吹色の毛玉が駆け抜ける。

わふ!わふ!

颯爽と部屋を駆け抜け、山吹色の犬はティファニアのベッドの上に駆け上ってしまう。

「あ、こら!」

流石にそれはまずいと思ったのか、才人はベッドの上のレトリバーを叱る。
しかしレトリバーはどこ吹く風でベッドの上でべふんべふんと尻尾を振りたくっている。
才人はベッドの上に上がり、尻尾を振る犬を抱え込んで抱き上げようとする。

「こら、降りろ!そこはテファのベッドだぞ!」

ぼふん!

才人が言った瞬間、レトリバーが軽い爆発を起こす。
不思議な青い光が辺りを照らし、奇妙な黄色い煙が才人を覆う。

「わ?なんだなんだ?」

驚いて思わず目の前の犬を抱きしめ。

むにゅう。

…なんだこのどこかで揉んだようなやわらかい感覚。

「…ここは私のベッドですけど何か?」

才人の腕の中にいたのは、犬ではなかった。
鈴を鳴らすような声で応えたのは、ティファニアだった。
金色の絹の糸のような髪の隙間から、いつもの細長い耳ではなく、山吹色の長い毛足の耳を垂らし。
なにもはいてないお尻から、これまた山吹色の毛足の長い尻尾を生やした。
全裸のティファニアだった。
ティファニアは、驚いて思わず手を放した才人に、まるで大型犬が獲物に飛び掛るように飛びつく。

「わっ!?ちょ、わっ!?」

あまりの勢いのよさに、ベッドに押し倒される才人。
その際、ティファニアの傍若無人な胸がぼにゅん、と才人の胸板に押し当てられる。

ああ、やーらけー…。

思わずその法外な感触に浸ってしまった才人だったが。
すぐに自分が疲れていたことを思い出す。

「ちょ、ちょっと待てテファ!落ち着け!」

しかし首ったまを完全にロックされ、完璧なフォールの状態になっている才人は、そう下から訴えるしかない。
そして、三日間大好きなご主人様の寸止めの夢ばかり見ていたティファニアは。

「サイトっ♪だいすき、サイトっ♪」

全然人の話を聞いていない。
長い尻尾を勢いよくびゅんかびゅんか振りたくり、身体を全力で押し付けてくる。
柔らかい牝の身体の刺激に、防御力が後期型ゼロ戦なみの才人の牡は敏感に反応する。
疲れているはずなのに、才人は完全に臨戦態勢になってしまった。
しかしそれでも、抵抗はするべきであって。

「まて!テファ!『おあずけ』!」

ペットに言うようにそう命令する才人。
普段のティファニアなら、そのような命令などどこ吹く風で才人に詰め寄っていただろう。
しかし、半分犬となったティファニアは、主人のその言葉に従い。
耳をくんにゃりと垂れ下がらせ、尻尾をへなん、と垂らして、才人の上から退く。
ぺたん、と才人の前で座り込み、ティファニアは泣きそうな顔で、『お預け』を聞き入れたのだった。

「くぅ〜ん…」

悲しそうな声で啼くティファニアに、才人は意を決して言った。

「きょ、今日は俺疲れてるから!休みたいの、な?だから、今日はお預け!」

才人の言葉に、ティファニアは一瞬びくん!と震えて。

「…はぁい…わかりました…」

しゅんとなって、座ったままうなだれる。
今にも泣き出しそうな顔で、文字通り指を咥えて才人を涙を溜めた眼でぢいぃっ、と見る。
犬耳を生やして尻尾を垂らすその姿はあまりにも現実味を欠いて、才人の煩悩を刺激する。
反応しはじめた我がムスコに、これはまずい、と才人は慌てて自分のペットから視線を逸らし、そして、本来の目的を遂げる。
頭までシーツに潜り込み、丸くなって、ティファニアに言った。

「んじゃ、俺寝るからっ!お休みっ!」
「くぅん…おやすみなさぁい…」

無情な才人の言葉に従うしかないティファニア。
『犬』に変化したティファニアの中で、主人の命令は絶対だった。
主人が『お預け』と言えば『お預け』なのである。
泣きそうな顔で、シーツに包まった主人を見つめる。
仕方ないので、ティファニアは、主人の眠るシーツの中に潜り込む。
『お預け』なので、丸まった主人の背中にぴったりくっつくだけにしておく。
全裸で。
しかし嗅覚の鋭くなったティファニアには、シーツの中に満ちた主人の香りすら、刺激になる。
自然に股間に手が伸び、黄金色の毛が生え揃った割れ目をまさぐる。
まだ濡れてはいなかったが、ティファニアの奥に眠る牝の器官からはとろりとろりと煮立った汁が溢れてきていた。

「くぅぅん…きゅ〜ん…」

切なく啼きながら、主人の背中で自らを慰めるティファニア。
その鳴き声に、少しずつくちゅりくちゅりと粘液をかき混ぜる音が混じり始める。

「サイト…サイトぉ…」

半分涙交じりの声で、才人の背中で自慰を続ける。
そして。
才人は我慢の限界だった。
それはそうだ。自分を好いてくれる女の子が、同じベッドの中で、自分の名前を呼びながらオナニーしているのだ。
しかも、その女の子は標準以上に可愛く、しかも規格外に胸が大きいと来ている。
この状況でガマンできる男がいるなら、そいつはきっと同性愛者だろう。
才人はたまらず、背中で淫らな声を発し続けるペットに、声を掛ける。

「…あ、あのさ、テファ…」
「…ふえ?」

突然呼びかけられ、手を止めるティファニア。
才人は覚悟を決めた。

…もうどうにでもなれ。

才人はシーツの中で振り返り、短く一言だけ言った。

「…『よし』」

ティファニアの顔がみるみる歓喜に輝き、へなんと垂れていた尻尾がシーツの中でばふばふ揺れる。

「いいの?ホントにいいの?サイト?」

信じられない、といった顔で才人を見つめるティファニア。
才人は嬉しそうなティファニアに、覆いかぶさりながら、言った。

「男に二言はねえ!思いっきり可愛がってやるからな!」
「わーい♪」

ベッドに組み敷かれながら、これ以上ないほど嬉しそうな笑顔で、ティファニアは悦んだのだった。

全裸になった才人がまずしたことは、もちろんティファニアの規格外の胸を揉みしだく事。
しかし、その愛撫はいつもとは違っていた。
巧妙に、一番感じる桜色の先端からは指を外し、肌色の乳房だけを丹念に、乱暴に揉みしだく。

「やっ…はっ…さい、とぉ…ンっ…」

一番感じる、一番弄って欲しい部分を巧妙に避けられ、しかし主人には命令できないという負い目から、視線だけで訴えるしかないティファニア。
才人はそんなティファニアに、意地悪く言う。

「テファは胸弄られるの大好きだもんなー?」
「そ、だけどっ…そこ、あ、じゃなくてぇっ…!」

身をよじり、なんとか乳首に才人の指を絡めようとするティファニアだったが、しかし、柔らかすぎる彼女の胸はその度に歪に歪み、才人の掌の中で踊るだけ。
思うままにならない自分の身体にもどかしさを感じながら、それでもティファニアの官能は燃え上がっていく。
じわりじわりと押し寄せてくる快感に、ティファニアの先端は物欲しげに膨らみ、ぷるぷると震える。
才人は今すぐその先端を蹂躙したい欲望にかられたが、じっと耐える。
このどうしようもない淫乱なペットが、ペットの分を忘れておねだりしてくるまでは、このじれったい愛撫を止めるつもりはなかった。
そして才人は、その真っ白な乳房を、横から握り締め、まるで牛の乳を搾るように先端に向けてこき上げる。
勿論、乳首には一切触れずに。

「ひ、あ、やだ、こんな、のぉ…!」

中途半端な、それでもしっかりと下腹部に火をくべていく快感に、悶えるティファニア。
もう、ガマンの限界だった。

「あ、あの、サイト、ちょっと、いい?」
「ん?何かな?」

ティファニアのいよいよの呼びかけに、才人は手を止めて先を促す。
ティファニアは才人の下でもじもじしながら、言葉を放つ。

「あ、あの、その、ち、ちくびも、乳首も虐めてほしいの…」

それを…待っていたァーっ!

心の中だけでガッツポーズを取り、才人は切羽詰った顔のティファニアに。

「んー?テファ、人にモノを頼む時はどうすればいいのかなあ?」

意地悪な笑顔で、そう言い放つ。
ティファニアは一瞬考え、そして応えた。

「…お願いします…ティファニアのえっちなちくび、いっぱい、虐めてください、ご主人様ぁ…」

とろんとした顔で、恥も外聞もなくそう訴えるティファニアに、才人の支配欲は満たされた。

「よく出来ました♪」

そして、才人はティファニアの膨らんだ左の乳首に文字通り噛み付いた。
歯の間で弾力のあるソレを、コリコリと磨り潰す。

「ひう!ひあ!それ、ちょ、ちょっと痛いっ…!」

しかし、そのピリピリとした痛みもスパイスとなって、ティファニアを襲う。
そして。
空いた左側を、才人の指が根元から押し出すように、コリ、と押しつぶした。

「ひう!」

びくん!とティファニアの背筋が反り上がり、長い毛足の耳がふぁさ、と跳ねた。
ティファニアは、胸で、胸への愛撫だけで、絶頂を迎えようとしていた。
ソレを察してか、才人の愛撫の性質が変わった。
乳輪ごと口の中に含み、ちゅうちゅうと吸い上げながら舌で乳首を蹂躙する。
指で柔らかい乳房の中まで乳首を押し込み、乳腺をかき回すように胸の中からティファニアを犯す。

「ひ!ひぁ───────────────────────!!」

ティファニアの身体が反り上がり、口でティファニアの胸を犯す才人の顔を柔肉に埋める。
ひく、ひくと絶頂に震えるティファニアを見下ろし、才人は言った。

「胸だけで逝っちゃったね、テファ」
「は、は、はぁっ──────」

犬と化した身体が、三日間の淫夢が、ティファニアの身体を敏感にしていた。
そんなティファニアの身体を、才人の視線が捉える。
才人の視線は息づく胸から下っていき、なだらかに震える腹部を伝い、金色の恥毛に覆われた陰部に釘付けになる。
そこはひくひくと物欲しげに桜色の大陰唇を震わせ、そして。
こぷりこぷりと、煮詰まった濃密な牝の果汁を零していた。
準備の整った牝を目の前にした才人の牡は、完全にいきり立つ。
先走りに濡れる肉棒を、才人はティファニアの裂け目に押し当てる。

「あ─────────」

絶頂の余韻に呆けていたティファニアの意識が戻り、そして、股間にその意識が集中する。
今から訪れる最大の歓喜を一瞬たりとも逃さぬように。
そして、ティファニアは己の意思で、大きく足を開き、股間の肉の門を弛緩させる。
そして。
愛しい愛しいご主人様に、最大級のおねだりをした。

「おねがいします、サイトの熱くて硬いので、ティファニアのえっちなおまんこを、いっぱいにしてください…」
「了解♪」

満面の笑顔で、才人はティファニアを貫いた。
入れるときとは真逆に、ティファニアは股間に力を込め、才人を噛み締める。
脚が勝手に才人の腰を抱え込み、腕で才人を抱きしめる。
ぐにゃりとティファニアの暴力的な胸が二人の間で潰れ、それがまたティファニアの快感を助長する。
そして。
ごり、と才人の先端が、ティファニアの小さな膣道の奥を押し上げた瞬間。

「ふぁっ!?んふぅぅぅっ!?」

ぎゅぎゅ、とティファニアの中が才人を締め上げる。
膣奥を突かれただけで、ティファニアは二度目の絶頂を迎えたのだ。
その締めつけに、才人も。

「く、な、なんだこれっ…!」

びゅるびゅると、ティファニアの中に才人の精液が満たされる。
ただの一合で、才人は吐き出してしまった。

「あ、きた、きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ…!」

歓喜に満ちた笑顔で、牡の精液の熱さに舌を出し、蕩けるティファニア。
そのティファニアの中で、どくんどくんと脈打ち、再び才人が大きくなる。
ぐにぐにと締め上げるティファニアの襞に刺激され、牡が復活したのだ。

「ご、ごめん、テファ…っ!動くよ…っ!」
「ふえ…?」

才人の謝罪に、呆けた声を返すティファニア。
才人はそのまま、激しく腰を動かし始める。

「やぁ!なか、なか、あついのにぃ!とけちゃう、とけちゃうぅぅ!」

びくびくと震えながら、三度目の絶頂の波がティファニアを襲う。

「ダ…めぇ!また、またキちゃうっ…!」

ぎゅり、と背筋を反らせたティファニアの中が才人を締め上げる。三度目の絶頂だ。
しかし、一度吐き出した才人は、刺激に対して耐性が出来ていた。
そのまま激しく腰を打ちつけ続け、ティファニアを更なる高みへ運んでいく。
子宮から零れた精液が愛液と混じりあい、ティファニアの膣をじゅるじゅると融かしていく。

「やぁ!だ、だめぇ、こんなのぉ!どろどろになっちゃう!わたしの、なか、ど、どろどろになっちゃ、うぅ!」

融けきったティファニアの中で、ずるずると才人の一物は摩擦を打ち消し、スピードと威力を上げていく。
ずんずんと奥を突かれ、ぐりぐりと膣襞を磨り潰されるたび、ティファニアの思考が彼女の言葉の通りどろどろになっていく。

「やあ、いく、いくのとまりゃないのぉ、いくのぉ、またいくのぉ!」

四度目と五度目の絶頂は間を置かずに来る。
引く腰で膣を擦りあげられて達し、そのまま押し込まれた腰で陰核を押しつぶされてまた達した。
ティファニアの身体は快感に完全に溶け切っていた。
そして。

「く、また出るっ、出すよ、テファっ…!」

絶頂が止まらず締め上げ続けるティファニアに、才人の牡が吼える。
ごぶり、と最奥で精液を吐き出す。
流石に勢いを無くし、ティファニアの中から才人が引き抜かれる。

「あ、く、あく、いっぱい…いっぱいぃ…。
 わたしのおまんこ、サイトのせいえきでぇ…いっぱいぃ…」

力なく引き抜かれた才人を追う様に、ティファニアの中から白濁がごぶり、と漏れ、ティファニアの長い尻尾を精液でどろどろにした。

「ま、まあ、しょうがないわね。シエスタがそこまで言うんだったらね」
「はいはい、私がお願いしたってことにしておけばミス・ヴァリエールのプライドは痛みませんからねえ」

女子寮の廊下を、メイドと貴族の凸凹コンビが歩く。
目的地は、才人の目撃報告のあった、ティファニアの部屋の前。
女生徒Aが、そこで犬と一緒に部屋に入っていく才人を見たという。
ルイズは一応、才人とティファニアの関係を知っている。
まあメイドとよく似た扱いだし私が正妻だし問題ないわよね、と思っていたが。
もし万が一、才人がティファニアとしていたら。
フルボッコにしよう、そう思っていたルイズだった。
そして、二人は問題の部屋に着く。
そして、二人はその扉を開く。

「あぁん♪くるぅ!だいしゅきなサイトのしぇいえきぃ!またくるぅ!」
「テファっ!テファっ!とまんねえよ、俺っ!」

二人の目の前で、才人とティファニアは犬のように四つん這いで交わっていたのである。
その交わりはすぐにひと段落し、ティファニアの中に才人がぶちまけて、そして力の抜けた一物を引き抜く。
くたん、とうつ伏せにティファニアがベッドに埋もれ、才人は一息つくべくベッドの横に腰掛ける。
そして。

「…ぇあ。」

ナニカの気配に振り向いた才人と、二人の視線が見事に絡み合う。

「ねえシエスタ。縄と鞭、ある?」
「ええ。ここにありますわマイロード」
「うん、まあ俺がこう言うのもなんだけど。落ち着こう。」
「「少し…頭冷やそうか…」」

しゅるん、とわっかになった麻縄が才人の首に巻きつき、床に引き倒し。
二人の手に揃った白と黒の鞭が、容赦なく才人に振り下ろされた。
ぎにゃあああああ、と断末魔の悲鳴を上げる主人の声も、気絶して夢の中にいるティファニアには届かなかった。

「んにゅ…しょんなにしたらわたし、おばかになっちゃうよう…」

夢の中までしっかり才人に抱かれ、幸せいっぱいのティファニアだったが。
才人はその後、二人にさんざん鞭でしばかれ、約二週間もの間、鞭の痕が消えず、外出すらままならなかったという。〜fin

 

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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:55:25 (5645d)

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