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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:55:33 (5645d)

それは蒼から始まった物語 (11):ブロブ 2  バレット

 

女3人寄れば姦しいというが、その言葉は時に男にも当てはまる。
高貴とされる貴族の少年達も大半は異性に過剰なまでの興味を持ち始める年頃の男ばかり。
そんな訳で、今日も暇が出来ると集まった少年達は今までの女性経験だの同学年や先輩達の女子生徒をネタに度々猥談を繰り広げていたりするのだが。

ガタン!!

「だから!胸の良さにサイズなんて関係無いって言ってんだろうが!!」
「いーや君は間違っている!大きすぎず小さすぎず、やはり胸はバランスと形が1番に決まっているじゃないか!」

・・・そういう事はもう少し小さな声でするべきだろう。少なくとも今睨み合う2人の少年と青年の声は中庭に盛大に響き渡っていた。
ああ、通りかかった女子生徒のウォーターカッターのような視線が痛い。
堪らずギャラリーの他の少年達は身を縮こませてそそくさと早くも立ち去りつつある。

胸倉を掴みかねない勢いで超至近距離で睨みあうのはサイトと年下の同級生(正確にはサイトの方が周りより年上なのだが)であるギーシュ・ド・グラモン。
当初は表向き平民出身だったり大国の王族3人+αをモノにしてたりで生徒からのサイトの受けはかなり悪かった。学院で働く他の平民を除き。
しかし時間が経つにつれ授業などで否応無しに彼と接する事になるとそれなりに親しみやすかったりである程度は年下の友人達もそれなりに出来た。
もっとも血筋や家柄などを最も優先する類のこってこての貴族至上主義者からは逆に憎悪されてたりする。

とにかくそんな中、でトリステインの軍人一家の末っ子として生まれたギーシュは最も初期に知り合った相手だった。
それなりに美形だがアホらしいくらいにキザでナルシストで色男を気取るギーシュが、リアルに美女美少女を囲っているサイトに興味を持って真っ先に向こうから接触してきたのがそもそもの始まり。
何やかんやで話を交わす内にいつの間にか悪友ポジションに収まったギーシュであるが、
決してサイト繋がりでイザベラ達にお近づきになるのが狙いでも無く、純粋にサイトとしょっちゅうバカ話を交わす辺りが少女達にも好印象を与えているのは本人にも予想外である。

だが今日に限っては只管に2人は互いに噛みつき合っていた。
もっともその内容はいつも以上にくだらない内容だ。本人達以外には。

「大体サイト、君の周囲の女性は確かに魅力的な身体をしているがハッキリ言わせてもらおう。
ミス・シャルロットからミス・ティファニアまで、確かに彼女達は魅力的な女性だが!幾らなんでも極端過ぎじゃないか!
やはり女性の胸というものは腰やお尻の曲線美に対して最もバランスの取れた大きさと適切なラインを描く形こそが世界一いいいいぃぃぃぃ!!!」

「んなっ!?言いやがったなテメェ!
胸っていうのはな、大きさとかで感触や感度も色々変わって、それが又良いんじゃねーか!外見だけ重視してんじゃねぇよ!このバカのギーシュ!」
「バカじゃなくて薔薇のギーシュだ!ふっ、どうもサイト、君はまだまだ真の女性の美しさについて知らないみたいだね。興奮する前のその事を理解すべきだったよ」
「ふん、そっちだってモンモンとまだニャンニャン出来てないせいで目ぇ血走ってまともに見えてねーんじゃないか?」

火花が散る。もちろん幻覚の筈なのだが何故だろう、2人の周囲が歪んで見える。
ちなみにその正体は、2人から漏れ出る魔力が衝突している為だ。
軟派な印象からは想像しにくいが、こう見えてギーシュはどうもイザベラと同じ昂ったりすると爆発的にレベルが跳ね上がるタイプらしい。
ギーシュはドットクラスなのだが、今の彼から漏れ出る魔力はラインクラスを超えそうな気配である。これだけカッカしている彼も珍しい。
サイトも負けじと歴戦の兵な闘気や魔力をばら撒く。

2人の手が、造花を模した杖と杖としての能力も持つ短剣の握りにかかった。

「君に教えてあげよう!入学前から実家の家庭教師を日々相手どって悟った女性の真理というものを!」
「こちとら伊達に毎日4人相手に繰り広げてんのは伊達じゃねぇんだよ!」

詳しい説明は省こう。
とりあえず言えるのは2人ともれっきとした『大人』の男という事だけである。

中庭を静寂が包む。
相手の瞳に映る己の顔が見える位の距離で。
どちらが先に抜くのか。

呆れた様子から一転緊迫の空気に呼吸すら忘れたギャラリーの1人が、ゴクリと息を呑む。
―――――それを合図に

・・・・・・睨み合っていた2人の元に雷撃が叩きこまれた。
それもとんでもないのが。

サイトとギーシュ、何とか回避成功。でも余波だけでぶっ飛ばされた。

「のぎゃー!?」
「な、何だぁ!?」
「今のって『ライトニング・クラウド』!?トライアングルクラスじゃねぇか!」
「誰だ今撃ちこんだの!?」

「――――ボクダヨ」

その瞬間、少年達は見た。見てしまった。
小太りの、一見気弱そうにも見える少年が、切り裂かれたようにも見える位口元をつり上げてケタケタ笑っているのを。
というかむしろ、嗤ってる?
どっちにしたってドン引きしたくなる表情だった。握られてる杖もバッチンバッチン音立てて放電してるし。

「あれ、誰だよ?」
「あいつだ、マリコルヌ!確か、『風上』とかいう奴!」
「冗談、アイツも確かドットクラスだった筈だぞ!?」
「いやでも今のアイツなら吸血鬼も裸で逃げ出しそうな顔してるじゃないか!」
「殿中でござる!殿中でござる!」

良い具合にギャラリー、テンパリ気味である。
そんな周囲に目もくれず、マリコルヌは1歩1歩、恐怖を少しずつ与えるかのようにゆっくりサイトとギーシュの元へゆっくり近づいていく。

「いやうん。世の中って不平等だよね。僕の家の家庭教師なんてよぼよぼの年寄りメイジだったし。系統別の班分けでも僕の周りだけ女の子寄ってこないし」
「お、おおおおおお落ち着きたまえ君!そう、きっと話し合えば分かる!」
「そそそそそうだって!それにさ、きっとお前にもお前の事好きになってくれる奇特な子が出来るってきっと!きっと!」

だからそんな杖が血塗れのナイフにも見えてきそうな表情で寄ってこないで!とさっきまでの迫力はどこへやらで互いにしがみつく2人。
人間、どれだけ凄くても本能レベルでありったけの恐怖を感じてしまう事柄の1つや2つあるのだ。やっぱりその原因はしょぼいが。

そういえば前にジョゼフに聞いたところによると『虚無』の動力源は恨みとか妬みとか狂気とかそういう思考なんだとか。
もしマリコルヌが『虚無』の使い手だったら今なら世界すらも消滅させれそうなエクスプロージョンを生み出しそうだなぁとサイトは現実逃避気味に思った。

それから自分の言葉が微妙にフォローになってないのにはまだ気付いていない。

そんな2人を見下ろし足を止めた太っちょの少年は、邪悪の極北とも言えるイカレた笑みからコロリと今度は後光さえ見えてきそうな穏やかな微笑に変えた。

その表情に思わずギーシュは安堵の溜息を盛大に吐き出し、ギャラリーもこれで一安心だと思って胸を撫で下ろしたが。
修羅場慣れしたサイトだけは気付いていた。

―――――こ、コイツ、眼だけ全然笑ってNEeeeeeeeee!!!

1人慌てて生死を賭けて制止にかかる。

「た、頼むからマリコルヌストッ――――――」
「サンダー・レ○ジィィィィィィィ!!!!!!」
「作品が違うだろうがバッキャロー!!!!」

余談だが、その日以来マリコルヌの2つ名に『太っちょの悪魔』が追加された。主に周囲から。

 

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