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Last-modified: 2008-11-10 (月) 22:55:45 (5646d)
それは蒼から始まった物語 (12):とりっくおあとりーと? バレット氏
とんとん、と少女は扉を軽く叩いてから、その音が誰かに聞かれてやしないかと柄に無くこそこそと見回す。
すぐに扉は開けられた。顔を覗かせたのは小柄なメガネの少女。
導かれるまま中に入る。背後で扉がすぐさま閉じられる。
部屋の中には他にも金髪の少女と妙齢の緑色の髪の女性が2人。
部屋に最後にやってきた少女は我が子の様に抱き締めていた小包を3人が囲んでいたテーブルにそっと置くと、厳かに口を開いた。
「・・・実家に頼んどいた物がやっと届いたよ」
その瞬間、少女達の間に何とも言えない空気が流れる。恥ずかしさと期待と興奮、といった所か。
そんな気配を敏感に感じ取ったのか、青い長髪の少女の頭に乗っていた『何か』が蠢いた。
無色透明、水そっくりな液体だがしかしその密度と濃さは段違いだ。大体、単なる水が染み込んだり零れたりしないままふよふよSD人形形態のまま形状を保ったりしない。
この液体生物の名前はその名もポヨ。ポ○ョでは無い。ポヨである。
魚の子でもないし赤くないし、それに性別だって分からない。
水の秘薬その他諸々の魔法的効能を持った薬品が多数混ざり合った結果、偶然生まれたこのスライムとでも言うべき疑似生命体は今ではイザベラの使い魔という扱いだ。
少々フライング気味だが、彼女の地位を考慮して特例で許可された結果である。
だって一応生きてるし、人畜無害だし―誕生時のイヤンでウフンな出来事はともかくとして―何よりイザベラに懐いている。
定位置は彼女の頭の上で、ポヨを乗せてると髪がぱさつく事無く油でも塗ったような美しい光沢が保たれるというお年頃の女生徒達からは人気が出そうな効能も持っているとか。
しかしサイトが傍にやってくるとすぐに隠れてしまう。最初の遭遇がトラウマになっているようだ。結構知性は高いのかもしれない。
それはともかく。
ガサガサと彼女達は袋の中身を取り出す。
そして数秒後
「「「「う、うわぁ・・・・・・//////」」」」
揃って赤面。
「ほ、本当にやるんだね?これ着て」
出てきたそれの1つを広げながらマチルダが少し躊躇いがちに聞いた。
1番年食って『ドゴンッ!』ウボァー!!
・・・・・・年長の彼女だがしかし、男性経験が最も浅いのも彼女である。
ここに居る彼女達全員、1人の男しか知らないのだが。
「当たり前じゃないか。せっかくわざわざ実家の方にまで頼んで仕立てて貰ったんだよ」
「それにこの衣装を使うのに最も最適なのは明日だけ。それを過ぎれば次は1年後になる」
「う、ううう、で、でもねぇ」
何というか、これを着てしまったら最後女として色々終わってしまいそうというか。
「きっと大丈夫よマチルダ姉さん、お兄様だって姉さんに着て貰えればきっと喜ぶから!」
妹分の言葉には弱いお姉ちゃんであるマチルダはその一言で腹を括った。
―――あーもう、どっちにしたってアイツにはもう色々と恥ずかしいとこ見られたり見せちゃったりしてるんだからこれぐらい!!
「分かった、分かったよ!私も着るよ!着てやろうじゃないか!」
額を突き合わせてヒソヒソと密談を交わす少女達以外に明日起こる事を知る者は・・・・・・口を持たないポヨだけである。
「もう秋も終わりかぁ」
草原の遥か彼方の地平線に沈みゆく紅の夕日を眺めながら、サイトは感慨深く呟いた。
ただ今学院中の廊下や食堂の灯り用の燭台は、お化け風に中身と皮の一部をくり抜かれたカボチャのランタンにとって代わっている。
今日はパンプキン・デイ。
かつて始祖ブリミルと4人の使い魔がカボチャを使ってお化けと魔物のフリをして人々を助けた、なんて言い伝えから生まれた記念日だ。
まあ数千年経った今となっては伝わってるのはそんな概要ぐらいで、実際にはあちこちで化け物の仮装をしてカボチャ料理を食べてお祝いする日みたいな感じで定着している。
魔法使いの原点で信奉の対象でもあるブリミル由縁と言う事で、平民以外にも貴族達の間でもそういった催しをやるのが定例だ。
他に特筆すべき事があるとしたら、パンプキン・デイは秋と冬の境目にあるので、その日以降ハルケギニアの暦上では冬の季節に入るといった辺りか。
あ、あともう1つ。
子供達はカボチャのお化けや怪物に仮装してお菓子を貰って回るのが微笑ましくもその日の定番な光景である。
だが吸血鬼など一部の怪物の場合、ハルケギニアでは実在してる上にとんでもなく恐れられてるので、代わりに動物の仮装などもする人間は多い。
でも『お菓子くれなきゃ悪戯するぞー』なんてフレーズ、ハルケギニアでも定番だとは知らなかった。
「そーれなんてハロウィン、てなもんだよなあ。まー楽しいんだからいいんだけど」
まあ向こうじゃ名前と概要ぐらいしか知らなかったけど。
そういやジョゼフが調子に乗って『イリュージョン』まで使ってすっげーリアルなお化けとか作ったら、シャルロットが怯え過ぎてお漏らししちゃったんだよなぁ。
でもってシャルロットのお母さんに笑顔でフルボッコにされて余計シャルロットが怖がって―――
いい歳した大人がバカやってたなぁ、とちょっと遠い目。
今でも目に浮かぶ。あの『無駄無駄無駄無駄!!』との叫びと共に放たれたラッシュで地面に足が触れる事無く強制滞空させられて紅く染まるあの髭を。
シャルロットのお母さん、実は石仮面被った事でもあるんデスカー?なんて思わず口走ったのは良い思い出だ。
・・・・・・そういえばあの人、にっこり微笑んだだけで答えてくれなかった気が――――
「いやうん、これ以上触れちゃいけない事もあるよなうん!」
賢明である。
夕食を取りに食堂へ向かうと、壁際には大量の、そして中央部には直径10メイルはありそうな超特大カボチャのランタンがセッティングされていた。
魔法薬でも使って特別栽培された品種だろうか?
「うわぁ・・・」
ガリアに居た時も似たようなのは見た事あるけどやっぱり感嘆の息が漏れる。
でも落ちてきたらヤダなあと思いつつ指定席に向かった。
ちなみにこのカボチャの装飾、明日になれば全て撤去されてる筈だ。片付ける人達は一苦労程度で済むかどうか、甚だ疑問に思う。
今日ばかりは何人もの生徒が制服では無く、思い思いの仮装服姿に変身している。
しかし実際に魔物の類が実在しているハルケギニアだけに普通とは一味違う。ユニコーンの鬣とかドラゴンの鱗とか、実際のそういった生物のを使った衣装ばかりだ。
そういう訳で仮装を楽しむというより、仮想に使う衣装の質や装飾の豪華さを張り合う為に仮装してるような輩がちらほらと――――
でも似合ってるかどうかはまた別問題だ。
特にマリコルヌ。そりゃアレか。オークのコスプレのつもりか。
そんな中、サイトはお目当ての蒼い頭2つに金髪を見つけて声をかけようとしたが、
「あれ?」
「何だい、微妙に期待外れだったみたいな声出して」
まさしくその通りです。
イザベラ、シャルロット、そしてティファニアはいつも通りの制服姿だった。
いやま、3人共いつもの制服姿でも十分眼福なんだけどね?
「いやさ、イザベラもシャルロットもガリアに居た時は楽しそうに毎年仮装とかしてたから今年もそうかな〜って思ってたんだけど」
「たまにはこんな時もあるさ・・・・・・あんなの、アンタ以外に見せる訳にいかないよ(ボソリ)」
「な?何か言ったか?」
「い、いーや別に!」
「お兄ちゃん、これ食べて」
右隣のイザベラが何故か顔をほんのり染めてそっぽを向くと、左隣のシャルロットが皿を突き出した。
乗っかっているのは今日のメインのパンプキンパイ。うまそうだ。
「おう、サンキュ」
躊躇い無く受け取ってぱくつ――――
こうとしたのだが・・・・・・何故か3方向から注目浴びてるのに気付いて手を止めた。
「え、えーっと、どうかしたのか?そんな見つめられると食い辛いんだけど」
「う、ううん何でもないのお兄様!」
あわあわだった。あからさまに怪しかった。でも可愛かった。萌ゑ。
あーもう、顔と一緒に先っぽまで真っ赤になってぴょこぴょこしてる耳をはみはみしてやりてー!
そんな益体も無い事考えてる間にさっきの視線の意味も忘れて、自然とフォークに突き刺したパイを口一杯に頬張っていた。
「(ちゃんと仕込んであるね?)」
「(ばっちり。無味無臭でほんの1滴だけで効果がある)」
――――その時、両隣の席で小さく口の端が釣り上がった事に、サイトは気付かなかった・・・・・・・・
目が覚めるとベッドの上で拘束されていた。
「これ、なんてデジャヴ!?」
3回目だよこのネタ。いい加減使い回し止めようぜ。
いやいや今考えるべきは作者への文句じゃなくて。
「ここ、俺の部屋、だよなぁ・・・・・・?」
見覚えのあり過ぎる室内。というか意識を失う最後の瞬間に見た風景とそっくりだし。
えーっと、飯食い終わった後部屋に戻る途中いきなりすっげー眠くなってきて、何とか自分の部屋に辿り着いたんだけどもう我慢できずにぶっ倒れて・・・
騎士団相手に丸3日間山岳演習したんでもあるまいし、そこまで疲れてた覚えは全く無い。眠気に襲われた時周りに人は居なかったのも確かだ。
なら可能性としては睡眠薬でも飲まされたのか。でもそれは何時だ?
―――――――まさか。
「あの食事ん時か?」
思い出すのは3人が注目していたパンプキンパイ。アレにでも仕込まれてたのだろうか?
でも何でそんな事?と悩んでいると、くぐもった声が聞こえてきたから首を無理矢理捻ってそっちの方を向く。
扉の向こうで、えらく聞き慣れた声が4つ。
『目ぇ覚ましたみたいだよ。ほら、早く入りなよ。誰かに見られたらどうすんだい?』
『う、うるさいねぇ!やっぱり恥ずかしいじゃないのさ!』
『彼以外に見られる方がよほど恥ずかしい。早く』
『マチルダ姉さん、私も一緒だから、勇気出して、ね?』
『うううううあーもう、行くよ!』
扉が開いた。
「ぶはっ!!!!!?」
そして噴いた。
勢い良く部屋に飛び込んできたのはいつもの恋人達、でもその恰好はいつもの恰好と違っていて。
パタン
「な、なんじゃそりゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!?!?!?!」
さり気なく律儀に最後に床を滑る様に入ってきたポヨが扉を閉めていなければ、サイトの絶叫は寮中に轟いていただろう。
まずイザベラ。
頭には何故か髪と同じ色の蒼色の三角の獣耳。
身に纏っているのはビキニっぽい下着だけだが上も下ふさふさした蒼い毛に覆われていて、何故か後ろのお尻の辺りでは艶めかしい光沢のサラサラフンワリとした尻尾がどういう原理か揺れている。
次にシャルロット。
真っ白な細長い耳をぴょっこり生やし、お尻の所にはもこもこした小さな尻尾。
着てるのはレオタードかと思ったらよくよく見てみると水着だった。スク水だった。しかもなぜか白だった。胸元にはひらがなで『しゃるろっと』。誰が書いた一体。似合ってるけど。
そしてティファニア。
金色の獣耳がこれまたパタパタ、お尻の所にも同じ色の、でもイザベラのよりスラッと細身の尻尾がフリフリ。
下の方は色以外イザベラと変わりないが、上の方は胸を下から持ち上げて支えるタイプだが余りの質量に圧倒されて完全に支え切れていない。先端のぽっちが毛皮の間でチラチラ見え隠れするのがベリーグッド。
最後にマチルダ。
丸っこい茶色の獣耳に、尻尾は短く太くもふもふもふとした感じ。
イザベラ同様彼女も着痩せする性質で、深い谷間を形成してる2つの膨らみを恥ずかしげに押さえるその手は何故か毛皮の手袋。
イザベラが狐でシャルロットが兎、ティファニアが犬でマチルダが・・・・・・熊?
彼女達はせーのと息を吸い込んでから、少なからず朱色に染め上げた顔で、
『お菓子くれなきゃ悪戯するよ(する・します)!』
もちろん両手を縛られてるサイトがお菓子をあげれる筈も無く。
へ?へ?とサイトは暫くの間呆気に取られてはいたが、一度状況を理解すると即座に悟った。
は、嵌められた!というか、ハメられちゃう俺!?
その通り。
という訳で、お菓子を貰えなかった彼女達は顔が赤いままニヤリと―ティファニアは性格故ごめんなさいお兄様と漏らしていたものの―
悪戯決行。
「こーん♪」
「きゅーん♪」
「わんわん♪」
「く・・・くまー///」
「いや、最後の違(ry」
「わ、ちょ、お前ら、ちょい、そきょはー!!」
ぺろぺろ
ぺろぺろ
あっという間にすっぽんぽんにされたサイトの身体に動物の仮装をした恋人達に群がられて、裏返った嬌声を上げた。
動物なだけにそれっぽく振る舞ってるのか、イザベラは顔や首元、シャルロットは脇や胸、ティファニアは脇腹や股間、マチルダに至っては足の裏や指を舐め立ててきているのだ。
全身を同時に這いまわる生暖かい体温にぬるりとそして僅かにザラリとした舌の感触がくすぐったくも気持ちいい。
「うわ、うわわ、マチルダ、そんな所まで」
「はむっぅ・・・ちょっと、しょっぱいねぇ・・・」
丁寧に丹念に足の指の1本1本をしゃぶる感触に腰が浮く。
そしたら今やサイトの愚息を銜えこんでいたティファニアの喉の奥にこつんと当たる感触。
「わふ、わふぅん」
ティファニアの肢体がサイトの身体に乗る。69な態勢でサイトの方に向けられたティファニアの下は既にじっとり濡れて太股もテラテラ煌めくほど滴っている。
フンワリプンニャリした感触に包まれた気配に、ああ今胸に挟まれてんなと悟って、すぐに限界に襲われた。
びゅくっ びゅびゅっ!
「はっふあぁ・・・」
「ずるい―――私も」
噴火した白い溶岩の大半はティファニアとシャルロットに舐め取られた。
目の前でフリフリ揺れる金色の毛皮に白い水着。そしてお尻から生えた尻尾。
・・・・・あれ?
よくよく見てみたら、尻尾は文字通りお尻から生えていた。
毛皮と水着のお尻の部分の布地が三角にくり抜かれていて、そこから覗く尻の谷間から尻尾が覗いているのだ。
更によくよく見てみると、尻尾の根元は丸い真珠の玉らしきものが繋がっていて―――――
ああ、なるほど。魔法で生やしてるんじゃなくてお尻に埋め込んでる訳か。
・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
ぐいっ
ずるるるるるっ!
「ひっ――――きああぁぁぁぁんっ!?」
ティファニアの尻尾を銜えて(シャルロットの尻尾は短いので首を伸ばしても届かなかった)思いっきり頭と首全体を使って引っ張ってやると、
谷底の窄まりから次々連結した真珠が出てきた。
玉が1つ抜ける度に腸内と入口を擦り立てられる感触を瞬間的に連続で味わったティファニアは大きく震えてから、へなへなと倒れこむ。
「あー、テファだけずるいよ?ほら私にもして頂戴よ」
「ふむっ!?」
いきなり視界が塞がると同時に口と鼻も塞がれた。
文字通り目前に青い尻尾。イザベラにお尻を乗せられてるらしい。口に当たる布地も毛皮も十分以上に湿っている。
いや、というか息が!息が!
―――――身動き取れない時に濡れてる布を顔に被せてはいけない。これ常識。
「〜〜〜!?〜〜〜〜!!!!」
「んきゅぅ、こすっちゃらめぇ!」
そっちは顔乗っちゃらめぇぇぇぇぇぇ!!
堪らずご丁寧に『錬金』で鋼鉄化されてるロープで固定された腕以外の全身全てを使ってもがく。もがく。
腹上死ならぬ股下死。そんなの勘弁死ぬのも勘弁。
「ってチョイ待ち、もしかして息出来てないんじゃないのかい!?」
「え?」
「〜〜〜〜〜・・・・・・!!?・・・・・・・!・・・・・・」
「うわ、うわわわわわっ!?ご、ゴメンよサイト!」
「ぷはっ!!あー死ぬかと思った」
慌ててイザベラがどいて開放する。
冗談抜きで本気で咳き込むサイト。その様子にすぐさまマチルダはサイトの両手も自由にすると、ようやく身動きが取れる様になったサイトは4人から背を向けてゼイゼイ喘いだ。
視界がチカチカする。死ぬ時は絶対窒息死だけはゴメンだとサイトは固く誓った。
「ご、ゴメンよ!本当にゴメンよサイト!」
イザベラ、涙目。
・・・・・・・・うん、やっぱり可愛い。
「もちろん、許すに決まってるだろ」
「サイトぉ・・・・・・」
「でも――――今度はこっちが悪戯する番だーっ!!」
「きゃーっ♪」
「・・・私も。ウサギは寂しいと死んじゃう」
「わ、私も忘れないでおくれよ?」
「おにいさまぁ・・・私も、もっとおねがいしますぅ・・・・・・」
「どんとこいやー!!」
そんな訳で結局、お菓子の代わりに別の物をたっぷりもらいましたとさ。