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Last-modified: 2012-03-15 (木) 07:41:15 (4425d)

「では、戦果をもたらした客人と、これからの勝利を祈って、乾杯!!」
「「「乾杯!!」」」
ウェールズ王子の音頭で宴が始まる
「もたらしたって、俺ら何もしてないよなぁ?」
ワルドも苦笑して頷く
「何を言うんだい。君達が、此処まで船を運んで来てくれたからこその戦果だよ」
「まぁ、そういう事なら、有り難く頂きます」
才人は料理にかぶりつく
「所でウェールズ王子」
「なんでしょう。子爵閣下」
「偶然とは言え、戦果をもたらし、私とルイズはこの地で再会する事が出来ました」
「このアルビオンに運命的な物を感じます。どうでしょう、このまま此処で、私とルイズの結婚式を上げたいと思うのですが」
「…そうきたか」
才人は小さく呟く
ルイズはワルドの発言を聞き、硬直する
「……今?」
「ふむ、確かに神官もおりますし、此処で幸せになる人達も居た方が良い。ヴァリエール公にも良い話になるでしょう」
「賛成して頂けるので?」
「えぇ、勿論。今すぐ神官に隣の部屋で用意させましょう。済まんが宜しく頼むよ」
「慶事と言われれば、喜んで」
神官が用意をする為に、席を立つ
「これが貴族か」
才人は小さく毒づき、立ち上がる
「あ、サイト。何処に行くの?」
「トイレ」
傍らに掛けたデルフを手に、トイレの場所を教えて貰ってそちらに向かう
『サイトが小さく吐き捨てた。あれは貴族なんて屑って、言ってた時と同じだ』
『結婚自体は貴族には普通なのに、何が問題なの? 理由無くサイトは怒らない』
『考えなさいルイズ。ワルドが強引に進めたから? あ、あたしの合意がきちんと取れて無いから、サイトは怒ったの?』
『そういえば、あたし、きちんと受けると返事してない。あたしはワルドと結婚したいの?』
『サイトがこのままだと、離れてしまうけど良いの? それは絶対、嫌。サイトが居ないと、ゼロのルイズに戻ってしまう』
『ワルドにサイトの代わりが出来る? 無理だ、ワルドは貴族としての振る舞いしか知らない。サイトにはなれない』
『サイトの発想はサイトにしか出来ない。それは、サイトが異国から来た異邦人だから』
『家族も居る筈。もしかすると結婚してるかも。家族に会いたいんだろうなぁ…………』
「あぁ!?」
ルイズがつい小さい叫びを上げる
「感激の余り、暫く声も出なかったみたいだね。私のルイズ」
「え、違っ」
「流石に婚礼衣装は用意出来ないけど、ヴェールは用意出来るそうだ、あちらで用意してる様なので、先に行っててくれたまえ」
「でも、今はサイトに」
「ルイズ、先に行ってなさい。そこの君、案内を付けて送ってくれないか。少々不安になってるみたいなのでね」
「解りました。では此方に」
「待って、今はサイトに言わなきゃいけない事が」
「使い魔なら、後から参加して貰うから大丈夫だよ。安心して行きなさい」
「ではミス、此方に」
少々強引に連れられ、隣の部屋に消えるルイズ
「少々強引では?」
「マリッジブルーと言うものでは有りませんかね? ウェールズ王子」
「ふむ、確かに急に不安になる女性が多いそうですな。ならば仕方無い部分も有りますか」
ウェールズ王子も頷く
「一つ、お伺いしたいのですが?」
「なんでしょう?」
「此方に居る方々で、全てなのでしょうか?」
「あぁ、式の参列者ですね? 勿論、今居るのから、見張りを残した全員を参加させますよ。そうすると、此処に居るので、ほぼ全員ですね」
「クックックック」
「やはり少ないですかね? ヴァリエール公の令嬢と、ワルド子爵の婚姻ですし」
「いやいや、そんな事は有りませんよ。中々見付からないと思ったら、こんな所に潜伏してるとは」
ワルドから禍々しい魔力が立ち上る
「一体何の事を?」
「こういう事です」
レイピアを抜き、そのままエアカッターを周囲に放つ
一瞬にして、周囲には血しぶきが舞い散る。中には、そのまま首を落とされた者もあった
「乱心したか、ワルド子爵」
「如何にも。我はレコンキスタの一員ジャン=ジャック=ワルド。ウェールズ王子、共和制実現の為に、御命頂戴仕る!!」
「レコンキスタ!? クソッ」

「ん? 何だいこりゃ? 変なのが右目に見えるな。デルフ?」
トイレでデルフの鯉口を切り、話かける
「ああ、そりゃ使い魔の能力だよ。主がピンチになると、自動的に主人の見てるもんに繋がるんだわ」
「デルフ、そういう事は先に言え!! 糞ったれ、泳がせ過ぎた!!」
デルフを背負いながら一気に走りだす
「泳がせ過ぎたってどういう事でぇ? 相棒」
「この前言ったろ? 内通者だよ」
「こいつぁ、マジでやべーな」
才人が宴の会場に戻ると一面の血の匂いと死体、首が切断された者も有る
才人は胃から逆流する物に耐えきれず、吐き出した
「ゲェェェ」
「相棒、死体を見るのは初めてか?」
「あぁ、でもこれからは、慣れないとならないんだろう?」
「そうだな」
「何で殺られてる?」
「こんな鋭利な切り口は、風魔法か、でなきゃ相棒と俺っち以外できねぇ」
「犯人俺かよ。ウェールズ王子は死体の仲間入りしてるか?」
「そのままの席配置だと、あっちだな」
「良し、居た。ウェールズ王子。生きてるなら返事しろ。誰に殺られた?」
身体を軽く揺すると、王子は目をあける
「‥‥あぁ、才人君か。ワルド子爵にやられた。レコンキスタだと」
「奴か。魔力を温存してたとはね」
「‥‥アンリエッタに伝えて欲しい。‥‥他に恋をしなさいと」
ウェールズ王子は静かに目を閉じる
「王子、王子。ちっ、まだ目は繋がってるな。これは隣の部屋か」
片手で礼をしながら軽く黙祷し、目に付いた指輪と遺髪を切り、ジャケットの内ポケットに納める
「相棒、遺品なんか後だ。急げ」
「視界繋がってるし、結婚式やってんなら、まだ大丈夫じゃ?」
「いきなりって事も、あらぁな」
「言われて気付く俺は馬鹿犬だ、クソッ」
才人は又走り出す

ワルドは、皆が何やらイベントを考えてくれてるので、後から来ると説明し、式を強行している
「新郎、ジャン=ジャック=フランシス=ド=ワルド。 健やかなる時も、病める時も、老いたる時も変わらぬ愛を誓いますか?」
「誓います」
「新婦、ルイズ=フランソワーズ=ル=ブラン=ド=ラ=ヴァリエール。 健やかなる時も、病める時も、老いたる時も変わらぬ愛を誓いますか?」
「…」
「ルイズ? どうした? 誓わないのか?」
「新婦どの?」
「…イヤ」
「ルイズ?」
「イヤったらイヤ。サイトは? サイトは何処?」
「使い魔ならイベントの企画に参加しているから、心配するな」
「嘘、サイトはそんな事しない。サイトはあたしの意思を無視して、こんな事しない!!」
「あたしの使い魔平賀才人は、ハルケギニア最高の使い魔よ!! 始祖ブリミルすら、才人には遠く及ばない!! そんなサイトが祝福してくれない結婚なんて、絶対嫌!!」
「なんと、罰当たりな。始祖ブリミルと使い魔を比べるなんて」
「そう。あの使い魔だ。だから、私と結婚するんだ、ルイズ」
ワルドはルイズの両肩に手をかける
「嫌、触らないで!! サイト、サイト、サイト」
ドサッ
神官が倒れる
それを見た二人の内、ワルドに拳が叩き込まれ、ワルドは吹っ飛ぶ
そのままルイズは、誰かの胸に抱き込まれる
「サイト!!」
「誰がルイズに触れて良いっつった、屑野郎」
「ザイド、ヒック。ザイド〜。ご免なざい〜〜。あたじザイドに謝らないどいげない事が〜、ヒック」
胸にそのまま抱きついてルイズは嗚咽する
そんなルイズの頭を撫で才人は言う
「ルイズ、今は後だ。これからキツイ事言うけど、頑張れるか?」
才人の言葉に目に力を乗せ、頷くルイズ
「良し、いい子だ」
才人はそのまま膝をつき、臣下の礼をする
『あぁ、なんてカッコイイんだろう。サイトは、何でいつも欲しい時に来てくれて、最高の時を魅せてくれるの?』
「我が清楚にして可憐なる主、ルイズ=フランソワーズ=ル=ブラン=ド=ラ=ヴァリエールに、御身が使い魔、平賀才人が申し上げる」
ドキンドキンドキン
ヴェールの下で、ルイズは紅潮し、鼓動が跳ね上がり、下腹部に熱が籠る
「此方におわす者、ジャン=ジャック=フランシス=ド=ワルドは、トリステイン王国魔法衛士隊グリフォン隊隊長という要職に有りながら、レコンキスタと通じており、あまつさえ、アルビオン王国ウェールズ王子以下、王党派を弑殺なさいました」
「トリステイン王国に禄を食む者としては、重大なる謀反と思われます。御決断を」
「…本当に?」
「然り、此方に王子の遺髪と遺品を頂戴しました」
才人は懐から、王子の遺髪と指輪を取り出し見せた後、またしまう
『才人は、隠し事はしても嘘はつかない。手を汚すって言っている。あたしにはやるなと言ってる』
「私、ルイズ=フランソワーズ=ル=ブラン=ド=ラ=ヴァリエールが、我が忠実にして勇壮なる使い魔、平賀才人に命じます」
「我が婚約者、ジャン=ジャック=フランシス=ド=ワルドの諸行、トリステイン王国に禄を食む者として、到底赦せません。即刻捕縛しなさい」
「捕縛が不可能ならば……」
『ならせめて……一緒に背負うのよ、ルイズ』
ルイズは息を継ぎ、言う
「…速やかに、死を」
「イエス、マイロード!!」

才人はすっくと立ち上がり、デルフを抜きにかかる
「よう、嬢ちゃん」
「何よ、ボロ剣」
「今から起きる事は、絶っ対見逃すなよ。今の相棒は・・・強えぇぞ!!」
ルイズは全力で頷く
才人が振り向くと、ワルドが仁王立ちで立っている。顔は憤怒の形相
「よう、ワルド。何で背中から襲いかからない?」
「初めて名前で呼んだな。貴様を狙えばルイズを巻き込む。それに貴様とそのインテリジェンスソードなら見切るだろう」
「そりゃ、買い被りだ。それにデルフをお宅の前で抜いたっけ?」
「一つ質問だ、何故今になって名前を呼ぶ? それにいつバレた?」
「もう『隊長殿』じゃないし、『子爵閣下』でもないし、『パトロン殿』でもない。今の形相じゃ『色男』ですらない。名前で呼ぶしか無かろう」
「内通を疑ったのは襲撃時だな。情報が正確に漏れ過ぎた。レコンキスタに通じてるのを疑ったのは港での会話だよ。王子の遺言で確信した時には遅すぎたけど。こっちも一個質問。魔力切れじゃ無かったのか?」
「ふん、殆ど見抜くとは化物か貴様。あの船はレコンキスタに物資を輸送する船だ。正体明かせば、すぐに演技に協力してくれたさ」
「此方にも風使いが居るってのに、良くもまぁ騙したもんだ。正直感心するわ」
「貴様は頭が切れすぎる。貴様が居るからルイズが私になびかない。貴様を殺してルイズを連れ去り、新しい虚無の使い魔を呼べば良い」
「略奪婚か、良いねぇ。男の浪漫だね。一個教えてやるよワルド」
「何だ?」
「使い魔は、本人の資質から、何が来るか解らんが、必要なモノを呼び出すんだろ?」
「その通りだ」
「俺は国に帰れば、何処にでも居る普通の日本人だ。つまり、ルイズが必要なのはそういう人間だ」
「何が言いたい?」
「まだ解らんのか? 俺を従えられないワルドじゃ、ルイズがルイズである限り、何度やっても伝説の力は手に入らんよ」
「貴様の様な人間が、ザラに居るわけ無かろう。貴様を殺して終わりだ」
「それが居るんだよねぇ。なんせ1億2千万も居るもんで」
「何だと!?」
「だから、さっさと諦めて、お縄につきな」
「ふん、減らず口を。この私を前に、其処まで言えたのは誉めてやる。だが、もう終わりだ!!」
詠唱を始めるワルド
「相棒、相棒を見て思い出した事が有るから聞け」
「何だ? デルフ」
「俺っちは、初代ガンダールヴが使ってた剣だ」
ワルドのウィンドブレイクが才人の態勢を崩すべく強風を叩き、才人はそれを避ける
「ヒュウ♪ まさか、伝説の剣が、冴えない武器屋に転がってるとはな」
軽口を叩きながら、才人はワルドと接近、剣を一合交え、横に飛ぶ。其処にワルドが追撃のエアハンマー
才人は更に横に走る
「良いか相棒、ガンダールヴの力は心の震えの強さで決まる」
「ほう、そうなのか」
「相棒、守る者は有るか?」
「おぅ」
「心は震えているか?」
「おう!!」
「倒すべき敵は居るか?」
「目の前に居らぁ!!」
「では行け!!」
「応!!」
一気に接近しデルフを叩き付けるがワルドはレイピアを上手くしならせ、軽くいなす
いなし様、横から蹴りを加え、更にレイピアを突くと同時にエアハンマーを発動させ、周囲ごと飛ばす
「ぐはっ!?」
「ふん、魔法衛士隊隊長がお飾りと思われても困るんでな。速いだけでは、この私には勝てん」
「相棒、大丈夫か?」
「ってぇ。こいつザクとは違う。スピードもパワーも」
「相棒、何だそりゃ?」
「只の冗談だから気にすんな」
「こんな時に冗談言えるたぁ、余裕だね。相棒、左に避けろ!!」
「おわっ!? 冗談でも言わなきゃ、やってらんねぇ位、強えんだよ」
「く、ちょこまかと」
更にエアカッターの追撃をかわしながら接近、今度は逆袈裟から切り込むが、今度は受け止められる
「ふん、甘い」
「頂き」
左手はそのままで、右手で村雨を抜刀し切り上げるが、舞った霧ごと、風が軌道を反らす
「ち、両手で居相しなきゃ無理か、糞ッ」
村雨を鞘にしまう
「中々やるな。肝を冷やした。だが、此処で終らせる」
「ユビキタス・デル・ウィンデ」
「何!? 聞かせた?」
「相棒、ヤバい。ありゃ偏在だ」
「あの時襲撃したのは私だよ。風は偏在する。風使いたる私もだ」
ワルドが二人、二人から四人に別れる
「虚像にして実体。この四人からの攻勢、受けきれるか? 虚無の使い魔」
「だぁ、分身の術かよ!?」
「相棒、それぞれが魔法も使って来るぞ」
「デルフ、指示しろ。こっから詰め将棋だ」
「おぅ、任せろ」
「行くぞ」
「端から追い込め、中央に捉えられるな」
「ラジャ」
見ていたルイズは息を飲む
「偏在って、スクウェアスペル。幾ら才人でもワルドが4人では」
左手のワルドに斬りかかり、合わせ様に蹴りを放って牽制するがワルドは無理せず下がる
「相棒、しゃがめ」
才人がしゃがむとエアニードルでワルドが右手から頭の位置を突いて来る
とっさにデルフを床に差し、両手を村雨にかけ、一気に抜刀
「何!?」
霧が舞い、霧が晴れ、ワルドが抜き打ちで斬られ、そのまま倒れる
「サイト凄い!?」
ルイズに剣筋を見れはしないが余りの斬撃に目を見張る。そしてそれは、ルイズ自身に熱をもたらす
才人はそんな事お構い無しに、次のワルドと床から抜いたデルフで剣戟に入っている
「相棒、今の斬撃は何だ? 俺っちも、初めて見らぁ」
「居相抜刀、刀で行える、最速の抜刀術」
「何なのだ、今の剣技は? 全く見えなかったぞ?」
ワルドも驚愕する
「だから、言ったろうが。刀と剣を一緒にするなってな」
『うっ。サイトが刀にこだわったの、こういう訳』
ルイズはもう二度と、刀を剣と呼ぶのは止めようと心に決める
「確かに刀は脅威だな、だが」
分身が再び増える
「マジかよ」
「これが偏在の厄介さだ、相棒」
「どうすりゃ良いんだよ?」
「本体見つけてぶった斬るか、全部同時に斬る」
「幾らガンダールヴでも、無理言うな」
「今の相棒じゃ、それしか対策がねぇ」
「無理を承知でやれってか?」
「おぅ」
「それじゃ、無理するか。可愛い女のコの前なら、百人力は嘘じゃないって証明したる」
「相棒、その意気だ。心の震えも上がってるぜ、っと、左に飛べ」
才人が左に飛ぶと、今まで居た空間の天井から床まで亀裂が走る
「くっちゃべってる暇ねぇな。次何処だ、デルフ」
「そのまま突っ込め」
「おう」
「杖に乗せた魔法には気をつけろ」
「正面狙え」
デルフを袈裟掛けに斬り込むが、エアシールドで受け止められる
「マズイ、後ろに飛べ」
才人はバク転をし、今迄居た場所の左右からエアハンマーが追突
ごぉん!!
「喰らったら、ぺしゃんこじゃねぇか」
「クソッ、こんな時に打開する方法、あった気がするんだが、思い出せねぇ」
「無い知恵絞れよデルフ、俺も考える」
相手との距離を保ち、攻撃をかけながら思案する
『確かコルベール先生は』
『戦闘詠唱は見せない、聞かせないのがポイント』
『それを見せる場合は、自己満足又は、強力なスペルを唱え、戦意を削ぐのが目的』
『熟練した使い手ならば、ドットやラインメイジでも聞かせない』
『詠唱と発動を別に制御する、ディレイ(詠唱遅延発動)技能者も少なからずいる』
『目の前で会話してても既に発動準備は終わってたりする時もある。この様にね。杖を持ってる限り、メイジに対しては警戒を解かない事だ』
『そのまま着火を発動させて、皆を驚かせたっけ』
攻撃を避け、仕掛け、回避、また仕掛け回避、回避、回避
『つまり、気付かせない。発動も制御の2点か』
『ワルドは発動制御はしてる様には見えねえ』
『以前俺が試した時は一秒程度、威力も範囲も並未満』
『ん、待てよ? 攻撃に回さなきゃ良いのか』
『…良し』
「クッソ、思い出せねぇ、相棒左からだ」
「よっと」
「口数が減ったな、そろそろか」
「何言ってんだ。此からが見せ場だっての」
「なら、其を見せろ。使い魔!!」
「相棒、詰まれた!?」
「しまった!?」
四人の中央に立たされ、今迄誘導された事に気付く
「終わりだ」
四方からの詠唱と発動が才人に迫る
「……思い出した!! 相棒、俺を上に掲げろ!!」
「おう」
才人がデルフを掲げるとデルフから光が発し、消えると其処には年代を感じさせない業物が一振り
そのデルフが魔法を全て吸い込む
「何!?」
「チャンス!」
デルフをそのまま上に放り、村雨の柄に手をかけ小さく詠唱
一気に詰め寄り、抜刀と同時に発動
正に刹那、霧が4ヶ所で舞う
霧が晴れると、才人が立って居るのは突っ込んだ正面ではなく、左隣
そして、村雨を振り下ろした状態で静止し、顔には汗が滴っている
カラ〜ン
デルフが床に落ちた音で、再び時は動き出す
「一体、何が起きたの?」
「貴様、最後にとんでもない動きをしたな。だが外れの様だ。此で詰みだ」
ぶんっ
才人は村雨を一祓いし、刀身に付いた血糊を露で払い、鞘に収める
チン
「まだ気付いて無いのか? 終わりだよ。ワルド」
そのまま歩いてデルフを拾う
「おでれーた。確かに終わりだ。相棒、一体何をした?」
「ガンダールヴには加速装置が付いてるのに気付いてね。奥歯のスイッチ噛んだのさ」
「何だい、そりゃ?」
ぼととっ
音が四つ重なる
「お、おおおぉお!? 腕が、私の腕が」
「嘘、あの一瞬で4人いっぺんに斬ったの!?」
杖であるレイピアを持った右腕を斬られ、偏在の分身も全て消滅する
「ぐぅうぅぅ。殺せ」
「嫌なこった。俺の命じられた仕事は、お前さんの捕縛。さて、牢屋が待ってるぞ、ワルド」
「ワルド、こっちだ。急げ」
「ありゃ〜。フーケかい」
ワルドは痛みで顔をしかめながら、腕とレイピアを拾い上げ、才人を睨む
「この屈辱、忘れんぞ。だが貴様らも終わりだ」
「レコンキスタの援軍が来てんだろ?」
「その通りだ。貴様の減らず口にわざわざ付き合ったのは、この為だ」
「才人、早く逃げないと」
「その前に捕縛しなきゃね」
「くっ」
ワルドはフーケの場所に走る
「先に行け」
「済まん」
「才人、悪いが脱出手段の船は此方が押さえた」
「フーケが来た時点でこうならぁな。一緒の船だったか」
「そうだよ。ずっと我慢したんだから。でも此処でお別れだね」
「そうみたいだな。今度は仕事無しで呑もうや」
「最後迄良い男だよ、アンタは・・・馬鹿」
フーケは踵を返し、去っていく
「サイト、フーケは敵でしょ? 何で仲良いのよ?」
「仕事に誠実な人間は、例え敵でも大好きなもんでね」
「ふん。ねえサイト、あたし達は終わりなの?」
「終わりなのは俺だけさ、ルイズはレコンキスタに捕われたら、ワルドに引き渡されて、ワルドの要望通り、略奪婚の完成だ」
才人はデルフを握ったまま話す。汗は流れ続ける
「そんなの嫌、サイト」
才人にルイズは抱きつく
「何だい、ルイズ」
「さっきのあたし、頑張れた?」
「あぁ、はなまるだよ、ルイズ」
ルイズの頭を右手で撫でる
「じゃあ、ご褒美頂戴」
「今、あげてるだろう?」
「タバサと一緒じゃ、嫌」
「じゃあ、どんな褒美が御所望かな? マイロード」
「……ス」
「ん?」
「キス! 姫様にしたやつ!!」
「いえす。マイロード」
ヴェールを上げ、デルフを握った左手を腰に回し、右手で顎を軽く上げる
ルイズはうっとりと才人を見つめ、そのまま目を閉じる
才人も唇が触れる瞬間に目を閉じ、唇が合わさると右手をルイズの後頭部に回し、首を固定する
そのまま唇に舌を入れ、ルイズの小さな口腔内を、ぬるりと舐め上げる
その瞬間、ルイズは歓喜で爆発する
両手は才人の首に回し、力一杯抱きつき、股が才人に当たる様に、脚を開いて押し付ける
口からは声にならない声が漏れ、舌は才人を求めより深く、より絡まる様にぬるり、ぬるりと才人に絡みつく
更に身体を密着させるべく、力一杯抱きつき、そしてビクンビクンと痙攣をするも、才人からは離れようとはしない
才人が唇を離すと、唾液が二人の間に繋がる
目を見ると、其処には、才人を求める牝が居た
「サイト、サイト、サイト。あたしの使い魔、あたしだけの使い魔。絶対絶対絶対誰にも渡さない」
「だから何処にも行かないで。ミスヴァリエールって呼ばないで。もっともっと教えて。もっと撫でて。もっと抱きしめて。もっとキスして」
「……サイトのモノにして!!」
ルイズからキスを求める
才人はそれに応じる
『全身悲鳴上げてて、応えられないんだけど。デルフ握ってないと倒れるわ』
更にエスカレートするルイズの求愛に、気絶した方が良いかなと思い始めた時、床がぼこりと崩れる
二人ともびくりとして振り返ると、其処には人間と同等の大きさのモグラが一匹才人を見つめる
「あれ? ヴェルダンデじゃないか? てっきり、シルフィードに乗ったタバサが来るかと」
まだ興奮した頭で、まともに考えられないルイズ
「ねぇ、サイト。続きしよ。もう終わりなんでしょ? なら、サイトのモノになってから終わるの」
「待てルイズ。救援だ」
「サイトに呼ばれて身体中が痺れるのは、マイロードよね。そう呼んでめちゃくちゃにして」
「ルイズ! 救援だ!」
「ねぇサイト、服破って無理矢理して………救援?」
「そう救援だ。脱出するぞ」
「じゃあ、救援にも見せちゃえ」
「あぁ、もう。ヴェルダンデ、行くぞ」
ルイズを抱え上げた姿勢で穴に入る
「やん、サイト狭い。こんな所でしたいだなんて、変態なんだから」
「良いから抱きついてろ」
「うん」
ルイズは首に手を回し、脚を腰に巻きつかせ、花弁を才人の股間に密着させ、ぐりぐり動かす
「駄目だ、完全に理性無くしてるわ」
「相棒、カッコつけすぎだ。彼処迄やられちゃ、大抵の娘っこは転ぶぜ」
「解るのか、デルフ?」
「まぁ、そういうのも見てきたからねぇ」
「流石6000歳、何とか正気に戻せんか?」
「一発やりゃ、大人しくなるんじゃね?」
「今は非常時だっての」
「じゃあ、脱出迄きばれよ、相棒。こりゃ面白れぇ」
「剣は気楽に言いやがる」
才人は痛む手足を使い、ルイズを極力傷つけない様に穴を降っていく
「サイト、サイト。は〜や〜く、は〜や〜く。焦・ら・し・す・ぎ」
「だぁぁぁぁ、首筋舐めるな、落ちる!?」
とうとう手を滑らし、滑落を始める
「おわっ!?」
「きゃっ!?」
先行してたヴェルダンデも巻き込み、穴から落ち、空を落下する
「きゅい!?」
「シルフィード、急いで」
シルフィードが速度に合わせ急降下、タバサ,キュルケ,ギーシュがそれぞれレビテーションを二人と一匹にかけ、落下速度を緩めた下から、シルフィードが受け止める
「ふぅ、助かった。有り難う、皆」
「あん、サイト、空でするのも良いわね」
「……ヴァリエール? ダーリンどうしたの?」
「話せば長くなるけど、とりあえずルイズを何とかしてくれ」
落ちてる最中もしっかり離さず、シルフィードの背に居る今も、完全密着、しかも大洪水でサイトのジーンズにもしみが大量に付いている
タバサが詠唱し、水がルイズにぶっかけられる
「きゃっ、何すんのよ。あれ? 此処何処?」
「…アルビオン空域。シルフィードの上の才人の上」
顎に手を当て考え、ぽんと拳で手の平を叩くルイズ
「ん〜、サイトの上なら問題ないわ。ねぇ、サイトぉ〜」
また、猫那で声で始めるルイズ
ごん
「痛っ」
ごん
「痛っ」
ごん
「いい加減にして。杖で殴んないでよ。タバサ、喧嘩売ってんの?」
「…場合によっては」
振り返ると、完全に表情を無くした、才人が来る前の雪風が其処に居た
氷の瞳に見据えられ、完全に頭が冷えるルイズ
「才人から退いて」
「いいい嫌よ。サイトはあたしの使い魔なんだから、別に良いでしょ」
「本当にどきなさいよ、ルイズ。才人の様子がおかしいから診るわ」
デルフを鞘に収めた途端苦しみ、ぜいぜい吐息を洩らす才人に、ようやく気付くルイズ
「え、嘘? 一体どうしたの? ワルドの魔法でやられたの?」
「ルイズ、何で才人とワルドがやりあうんだい?」
「…内通者」
「タバサ、知ってたの?」
コクンと頷き言う
「…才人に口止めされてた」
「何で皆に言わないのよ」
「…確証が無かった。才人以外、全員容疑者だった」
「…才人は自分と友達がやりあう所は、皆に見せたくないと」
「モンモン、事情説明すっから喋れる位で良いわ、サンキュ。タバサ、随分お喋りだな」
「…迷惑?」
泣きそうな顔になるタバサ
「あ〜、こっち来いタバサ」
才人に近付き、ちょこんと傍に座る
才人は頭を撫で、言う
「迷惑じゃない。只、あんまり恥ずかしい事言うな。頼むよ」
「…うん」
タバサは紅くなりながら頷く
才人はそれから事情を説明する
シルフィードは、既にアルビオン空域からの離脱に入っていた
「ワルドが裏切って、ウェールズ王子を殺害だって!?」
「早く王宮に行かないと」
「駄目よ。一旦宿を取る。才人の状態が良くない。路銀まだ有るでしょ?」
「うん、けど一泊分で終わり」
「じゃあ、一泊してから王宮にシルフィードで向かうで良いわね? ヴァリエール」
「えぇ、タバサ、悪いけどシルフィードで宜しくね」
「…解った」
*  *  *


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Last-modified: 2012-03-15 (木) 07:41:15 (4425d)

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