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Last-modified: 2012-03-15 (木) 12:19:20 (4425d)

一週間後、調整を終えたアニエスは先ず、一通の命令書を携え学院長に挨拶に赴き、学院には安全以外には干渉しないと説明し、オールドオスマンの了解を取り付けた
アニエスが学院に来る様になり、生徒はおろか、教師も驚愕した
王女で有るアンリエッタが、宰相マザリーニに進言し、新設した平民で構成される銃士隊
その今、一番勢いが有る、しかも女性のみで編成された、銃士隊の隊長なのだ
アニエスはアンリエッタの懐刀として、その名が轟いており、全員すわ何事かと思ったのだが、本人が一言
「才人に剣術等を教える任務だ」
と、答えた為、トリステイン一番の剣士の稽古なら納得と皆、気にしない様にはなった
何故王宮から来るのかは、ヴァリエールとの繋がりだろうと、勝手に解釈したのだ
但し納得出来ない者も居た。そう、才人と親交の深い女性達である
普段全然笑わないアニエスが、才人にだけ笑顔を見せるのである
「先ずは、才人の基礎能力を上げる為にはどうするかだな。武器は使い魔の能力が発動するのだろう? 木剣はどうだ?」
木剣を手渡された才人は素振りをし、確認する
「駄目だ、アニエスさん。反応しちゃうや」
「木剣も武器と認識するのか」
「使い方次第じゃ、殺せるからなぁ」
「こいつは困ったな。つまりどう扱おうと、撲殺出来ないレベルじゃないと駄目な訳か」
「結構厳しいな、それ」
「う〜ん」
「悩んだ顔も綺麗だね」
「お前は、何でそう言う?」
赤面しつつ答える
「いやぁ、つい」
「ついで、話の腰を折るな、馬鹿」
アニエスは笑いながら答える
「ん、待てよ? デルフ」
「お、何だ? 相棒」
「ハルケギニアに竹刀、ってか竹って無いか?」
「竹刀って何でい?」
「ちっ、無いのか」
「竹って何だ? 才人」
「こちらに無いと、信じられんかも知れないけど、中が中空になった、節くれの有る樹木だよ、どっちかってと草に近い種類だな」
「特徴は?」
「強靭で凄いしなる。そして軽い。軽くてしなるから、それを束ねて稽古用に使うと、人を殺す事無く稽古出来る。昔から防具や防衛陣地に使われる素材で、今も俺の国の稽古用の素材として、引っ張りだこだな」
「ほう、そんな便利な樹木が有るのか」
「おでれーた。俺っちも初耳だ」
「此処じゃ無い物ねだりだね」
「そうだな。でも大分ヒントにはなった。要は、相手にダメージを与えなければ良いのだろう?」
「ん? 確かにそうだね」
「なら、ハルケギニアにある手段を取れば良い」
「何かアイデア有るの?」
「魔法だよ」
「あぁ、成程。俺の稽古用の、ダメージを与えない魔法剣を作るのか」
「そういう事だ」
「具体的にはどんな感じ?」
「そうだな、水で刀身を作って、人に当たった時は散り、物や同じ刀身に当たった時は、固体形状を持つ様にすれば良いか。しかも、ダメージを与えない程度」
「そんな事出来るんだ?」
「魔法付与技能者の腕にもよるが、色々出来るぞ」
「魔法って、本当に便利だなぁ。科学技術が発展しない訳だ」
「科学技術とは何だ?」
「話が長くなるから、おいおいで構わないか?」
「そうだな、しかし貴様は本当に知識の宝庫だな。話をしていて飽きないぞ」
「お互い違う文化圏に住んでたんだから、俺も新鮮だよ」
「最初は殿下も粋狂な命令をと思ったが、案外役得かもしれん」
「あれ、惚れた?」
「そういう事を口にするな、馬鹿」
才人を軽くはたきながら笑うアニエス
「あた。やっぱりアニエスさんは笑顔が良いねぇ」
「貴様以外にも、見せて良いのか? ならそうするが?」
「どうやって笑いかけるの?」
「どうやって? ふむ…………」
「…思いつかないと?」
かぁっと、赤くなるアニエス
「そっちは無理しないで良いよ。その内出来るでしょ」
「あ、あぁ、解った」
「で、具体的には依頼出して、どれ位で完成するのかな?」
「アカデミーに、殿下の名前で無理矢理ねじ込めば、明後日には試作品が届くだろう。予備含めると、最低6本要るな」
「何でそんなに?」
「あぁ、才人は2刀使いだろう? だから、2刀の稽古をしないと駄目だからな」
「アニエスさんは2刀出来るの?」
「実戦じゃ無理だが、稽古程度ならな。舞姫で練習しまくったからな」
「舞姫?」
「稽古が始まった時の、お楽しみだ」
「それじゃ、楽しみにしときますか」
「じゃ、今から手紙書いて竜騎士に渡すから、ちょっと離れる」
「行ってらっしゃい」
「相棒」
「何だ? デルフ」
「今迄の娘っ子の中で、一番相性良くないか?」
「ボロ剣」
「デルフさん」
「「デルフ」」
「「「「どういう意味かしら?」」」」
その声を聞き、才人はデルフを持ったまま、ゆっくりと振り返る
其処には4人の鬼が居た
才人は何時も以上の、凶悪な気配に震える以外ない
「え〜と、何時から居たのかな?」
「殿下も粋狂な命令を、辺りかしら?」
モンモランシーが答える
「で、覚悟は出来てるの? 犬」
「何のでしょうか? マイロード」
「…地獄の一丁目の回覧」
タバサが答える
「ミスモンモランシが居るから、心配しないで下さい」
「え〜と、4倍?」
「「「「16倍」」」」
「……デルフ、全部てめぇのせいだ」
「相棒、済まねぇ」

アニエスが戻って来ると、ボロ屑になった才人がモンモランシーに治療を受けていた
「才人!? 一体何があったんだ?」
「ちょっと、貴女に妬いた人が多数居たのよ」
「何でこうなる?」
「あら、私達じゃ、才人に何か教える事なんて、出来ないもの。妬くのは当然ね」
「才人の人気はそんなにか?」
「其処に踏み込むんだから、貴女も覚悟するのね。シュヴァリエ」
「こう言うのも何だが、私は行き遅れだぞ?」
「あら、そしたら才人が最後のチャンスになるじゃない。私達はそう見るわよ?」
「私は、才人の周りの女性達と、険悪になる積もりは無いんだが?」
「なら、なるべく他の女性も連れるのね。そうしないとこうなるわ」
「やっぱり、前途多難だ」
アニエスは深々と溜め息をついた
「そうそう、シュヴァリエ、何処まで才人の事知ってるの?」
「何処までとは?」
「此れから、別の稽古するから」
「それは何だ?」
「その調子だと知らない様ね。才人、どうする?」
「どうすっかねぇ。あんまり知られたくないんだよなぁ。ルイズに知られちまうと厄介だ。ルイズが落ち込んじまう」
目を覚ました才人が言う
「ミスヴァリエールに、知られなければ良いのか?」
「他のメイジ全員。姫様含む」
「私は殿下に報告する義務が有るんだが?」
「なら此処まで、付いて来ちゃ駄目な」
アニエスは悩むが決断する
「殿下の最優先の命令は、才人と仲良くなる事だ。貴様が隠さねばならないと言うなら、守ろう」
「そんな命令受けてたの?」
「そ、しかも俺の目の前で」
才人は苦笑する
「他の者には、内緒にしててくれないか?」
「シュヴァリエも私に秘密を明かしたのね。才人、どうする?」
「モンモンに明かしたら仕方ないな。付いて来て良いよ。尾行に警戒してくれ」
「尾行する奴が居るのか?」
「おぅ、居るぜ。嬢ちゃん達が、相棒が何やってるか気になって、ちょくちょく来るわ」
「聞いてはいたが、凄い人気だな。解った」
三人は学院を出て、近くの森に入る
「デルフ、尾行は?」
「今日は大丈夫みてぇだな。相棒ボコったせいじゃねぇか?」
「全く、何がどう転ぶか解りゃしねぇな」
「全くだ」
暫くすると軽い広場に出る
だが、広場になってるのでは無く、木が幾つも倒れた状態になっていて、一つ一つの樹木には無数の太刀筋が刻まれている
「それじゃ、今日もやりますか」
「此方は何時でも良いぞ、相棒」
「モンモンは?」
「大丈夫、すぐに対処出来るわ」
「一体、何をするんだ?」
「見てのお楽しみよ。多分見れないけど」
「見るのに見れない?」
「本日は発動は、以前の1/5を目安にすっか」
「あら、もう上げるの?」
「モンモンの治療技術が、上がってるからな」
「褒めても何も出ないわよ。寧ろ絞りたくなっちゃうじゃない」
「そりゃ、勘弁。じゃ行くぜ」
才人が村雨を抜き、デルフと二刀で木に向かって走り、いきなり姿が消える
ガガガガガ
音が聞こえたと思ったら、才人が木の前に立って居た
木は先程より、1/8程削られている
村雨を鞘に戻し、デルフを地面に突き立てた所で、才人は倒れこんだ
「才人、口をこちらへ向けなさい」
「な、何が起きた?」
モンモランシーは才人が消えた瞬間に走り出しており、既に才人の側に膝を付いている

才人が何とか向けるとモンモランシーは口移しで薬を飲ませる。一度では足りないので、二度、三度、四度
そして直ぐに治癒の詠唱を始めた
「ふぅ、毎回この瞬間は生き返るわ。あんがとな、モンモン」
「で、相棒の状態はどうでぇ?」
「信じられないけど、耐久力が普通の人間に有り得ない速度で、上がってるわ。これも使い魔の力かしら?」
「それだけ、負荷が強いせいじゃねぇか? 普通じゃ、有り得ない負荷だもんな」
「確かにそうね。でも、まだまだ実戦向きじゃないわよ」
「…さっきから置いてけぼりなんだが、そろそろ説明してくれないか?」
アニエスが聞く
「絶対誰にも言わないでよ。もし漏れたら、私、貴女に杖向けるからね」
「剣に賭けて誓おう」
「魔法よ。しかも才人が開発した禁術」
「禁術?」
「そうよ。普通のメイジが使ったら死ぬわね」
「才人は死んでないが?」
「才人は使い魔の能力が有るから、使いこなせるのよ」
「そんなに危険な術を開発して、どうして使うんだ?」
「今の見たでしょ?」
「あぁ、見えなかったがな」
「あれが効果よ」
「つまり、回避不能の攻撃か」
「そう。才人はね、此れからも、そういう事に足を突っ込むの。だって、才人は使い魔だから」
「私はね、才人がそんな状態に追い込まれない様にしたいけど、出来ないの」
モンモランシーの頬に涙が伝う
「だからね、少しでも才人の負荷が減る様にしたいの。シュヴァリエ、才人に剣術を教えて、才人が死なない様にして下さい。お願いします」
モンモランシーはアニエスに頭を下げる
「頭を上げてくれ、ミスモンモランシ。私の事はアニエスで良い」
「私の事はモンモランシーで構いません、アニエスさん」
「才人の事はどう思ってるんだ?」
「未来の夫です」
「本気か?」
「多分、貴女も才人の側に居たら、そう思う様になりますよ」
「そう思ってるのは何人居る?」
「最低4人、いや、5人かな?」
「最低だと?」
「はい、此れから増えていきますよ。だって才人は、どんどん手柄を上げて出世するもの」
「俺は出世に興味無いんだけどね」
「あんたが無くても、周りが放って置かないのよ。諦めなさい」
「さいですか」
「そうよ」
「…殿下の命令は、慧眼だったのか」
「どうして、そんな命令を下したのかしら?」
「あぁ、ミスヴァリエールがあの時の報告で手紙を出してね。才人の話で、びっしりだった」
「あらあら、ルイズの事だから、すんごい美化してるんじゃないかしら? 才人の事になると、見境無くなるのよね」
「話半分でも、充分凄かったぞ?」
「そうでしょうね。才人は凄いもの」
「アイツは本当に何書いたんだ?」
「只のノロケ話さ」
アニエスはそう答える
「俺達は、ノロケ話に振り回されてんのか」
才人は苦笑する
「まぁ、そう言うな。私もノロケる心境には、憧れてるモノでな」
「才人の側に居れば、直ぐになれるわ」
「俺はノロケ製造機かよ?」
「あら、まだ気付いて無かったの?」
クスクスとモンモランシーは笑う
「今日の稽古は止める?」
「あぁ、話で時間食われたしな。今日は早めに切り上げっか」
「解ったわ。ねぇ、才人」
モンモランシーから才人に寄り、そのままキスをする。アニエスの目の前なのにディープの方だ
「私の前で見せ付けるのか?」
「あら、貴女もして構わないわよ? 私は独占しないもの」
「私は、まだ其処まではだな」
「あら、明日からは、貴女が才人にポーション飲ませるのよ?」
「は、何故だ?」
「あの状態はね、放っておくと才人が再起不能になるの。だから、二人居るなら、治癒魔法と投薬を、同時に出来る方が良いの。本当に時間との勝負なのよ」
「…つまり、今此処で慣れないと、明日から困る事になると」
「そういう事ね」
「才人は?」
「この稽古をやる限り、俺には選択肢が無いんだ」
「嫌か?」
「美人とのキスは、大歓迎だ」
「……本当に貴様は」
「あ、そうそう、一つ言っておくけど」
「何だ?」
「夢中になるわよ?」
「キス程度でか?」
「…才人、手加減無しでやって上げて」
「ふぅ、どんどんモンモンは強くなるな」
才人は溜め息をつき、アニエスを抱き寄せキスをする
モンモランシーの言う通り、アニエスを逃さない様に、頭を固定し腰を抱き寄せる
そして舌を侵入し絡め、口腔をぬるりと舐め上げる
アニエスは最初、抵抗しようとするも、力の差で抗しきれない
日々の訓練は、アニエスより筋力を上げていたのを、才人自身は気付いてない
そして、暫くすると、抵抗を辞め力の抜けた手が才人の背中に回され、更にキツク抱き締められる
それから充分に絡めた後、唾液を繋げたまま離れると、すっかりのぼせたアニエスが居た
「あ、や、何で? もっと」
「ほうら、夢中になった。此で貴女は6人目ね」
かあぁと、アニエスは真っ赤になる
「モンモン、あんまいじめるな」
「あら、私はあんたに必要な事しかしないわよ」
「どう見てもイジってるって。本当に子悪魔だな」
「こんな私を知ってるのも、あんただけ」
「全く困ったもんだ。アニエスさん、大丈夫?」
「……何で、巧いんだ?」
「さぁ? 本当にさっぱりです」
「そうか」
今度はアニエスからキスをする
「此は、本当に、慣れないと、駄目だな」
才人の口を、アニエスは満足する迄ついばんだ
「本当にモテモテだな、相棒」
「勘弁してくれ、命が幾つあっても、足りないわ」

三人はいそいそと学院に戻り、アニエスは竜騎士に乗り帰って行った

風呂上がりにルイズの部屋に戻ると、ルイズは不機嫌なのか何なのか、何か落ち着いていない
「どした? ルイズ」
「あああんた、今迄何処行ってたの?」
「ちょっとね」
「ご主人様にも言えないの?」
「そうだな」
「他の女?」
「何でそうなる?」
「……だって、あんた、その、モテるから」
しょげたルイズに、くしゃりと頭を撫で、才人は言う
「確かに協力して貰ってる人は居る、でもそれだけだ」
「……私じゃ、駄目なの?」
「ルイズは心配するな。構ってやれなくて、悪かった」
「だって、剣術を教えに来たって、アニエスは言ってたけど、サイトは充分強いじゃない」
「あぁ、剣術に関しては、俺はズブの素人だよ。本当に学ぶ必要が有るんだ」
「あんなに強いのに?」
「そう、だから心配するな」
ルイズは才人に抱きつく
「才人は、あたしの使い魔だよね?」
「あぁ、そうだ」
「勝手に、居なくなったりしないよね?」
「勿論だ」
「今、隠してるのも、あたしの為?」
「そうだよ」
「信じて良い?」
「信じなくても良いぞ」
「何でそんな事言うの?」
「ルイズは俺の事、疑いたい? それとも信じたい?」
「……信じたい」
「なら、ルイズは自分の答えに自信を持てば良い。俺はそれを手助けするだけだ」
「うん」
サイトに撫でられる感触に、そのまま身体を委ねるルイズ
「ねぇ、サイト」
「何だ?」
「床で寝るの、寒い?」
「もう慣れたな」
「寒いと言いなさい」
「寒いです。マイロード」
「つつつ使い魔が、かかか風邪引いたら困るからね。こここ今夜から、ベッドに寝なさい」
「いえす。マイロード」
「では、着替えますか? マイロード」
ルイズは全身を紅くするが、こくんと頷く
「あの、あたし、胸無いから」
「可愛いですよ。マイロード」
才人は声をかけながら、ネグリジェに着替えさせる
「才人はその堅いズボンと上着は脱いで」
「いえす。マイロード」
才人も下着姿になる
「ここここに寝なさい」
ベッドの真ん中をルイズは指定する
「いえす。マイロード」
才人が寝ると、ルイズは才人に抱きつき、顔を擦り寄せる
才人が腕枕をすると、丁度ルイズには良い高さになった
『う〜、何で今迄やらなかったのかしら? 最初に添い寝するって言ってくれてたのに、あたしの馬鹿馬鹿馬鹿。凄い気持ち良い。安心出来るし。あったかい……』
ルイズは直ぐに寝ついてしまった
「ふぅ、まだ子供だなぁ」
「相棒、本当に扱い上手いな」
「そうか?」
「相変わらず無自覚かい」
「ま、俺も寝るさ」
「おぅ」

添い寝が、ルイズの自身への依存度を上げる事になってしまう事を、才人は気付く事が出来ない

*  *  *


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