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Last-modified: 2010-10-25 (月) 09:39:11 (4932d)

テントを張り、焚き火を皆で囲む
「お〜い、モンモン」
「才人、何?」
「悪いんだけど、デルフの手入れ手伝ってくれ」
「どうかしたの?」
「其がさぁ、血糊付きで収める時が最近多くてさ、鞘の中に溜ってデルフが気持ち悪いって。幾らデルフが魔法掛ってるからといっても、なるべく刃物の状態悪くしたくないんだよ。その点村雨は便利だわ、一振りするだけで、血糊が全て落ちる」
「そういう事なら了解よ。鞘貸して、洗って上げる」
デルフを抜きモンモランシに鞘を渡す
「済まねぇな。香水の嬢ちゃん」
「あんたは才人の相棒だからね。あんたの状態は、才人の生存に直結するの」
「かぁ〜、佳い女だねぇ、嬢ちゃん」
「もっと褒めなさい。称賛は宜しくってよ」
とりわけ済ましてモンモランシーは答えつつ、鞘に水の洗浄と浄化を交互に掛け、丹念に洗う
刀身は、才人に点検を受けている
「流石伝説。オークの怪力受けたにも関わらず、刃溢れも歪みも無いな。研ぐ必要も今回は無しっと」
「俺っち潰すには、エルフか虚無か溶鉱炉辺りじゃないと無理だぞ?」
「やっぱり、掘り出しもんだわ。でもよ、研ぐと減るだろ?今までどうしてたんだ?」
「錆び付いた状態あっただろ?」
「ああ」
「あの状態から、今の状態にする時によ、リフレッシュしてるんだわ」
「つまり、新品同様になるって事か?」
「おう」
「やっぱり、魔法は便利だな」
「鞘の洗浄終わりっと。あら、中から水がまだ出てくるわ。タバサ、お願い」
こくりと頷き、タバサはウィンドを唱え、鞘の中から水を吹き出す
「はい、才人」
「有難うな二人共。さてとチェックだ、デルフ」
才人が鞘を受け取りデルフを収め、また出す
「どうだ?」
「おでれーた。スゲー綺麗になってたぜ。長年の埃迄無くなってたわ。こりゃ、住み心地良いねぇ」
デルフはカタカタと笑い、喜ぶ
「お前さんの今迄の所有者は、随分ぞんざいなんだな」
「魔法掛ってるインテリジェンス系の武器に、其処まで手入れする奴なんざ居ねぇからな。自己修復当たり前だしよ。折れたら其迄だし」
「道具は手入れをして、大事に使うもんだぞ?持ちが違うからな」
「自己修復するんじゃ、意味無しじゃねぇのか?」
「馬鹿だな、手入れするってのはな、いざという時の踏ん張り感が違うんだよ。道具の状態が解るから、何処までが大丈夫か、必然的に身に付くもんだ。俺はお前に命預けてんだぞ?」
「かぁ、やっぱり相棒は違うやぁね。俺っちの事、こんなに気を使ってくれてるなんざ、初代でも無かったってのによ」
「多分にお前の口調が、原因だと思うぞ」
様子を見てた皆が頷く
「ちぇっ、娘っ子共も酷えなぁ」
「さてと、明日はヒュドラか。キュルケ、ヒュドラってどんな奴だ?」
「頭が複数有る大蛇ね。馬程度なら丸のみするし、人間なんか言わずもがな。しかも再生力が洒落にならないから、首落としても再生するの。種類によって、毒を使うタイプ、毒の他に炎ブレスも使うタイプ、毒のブレスを使うタイプって、色々居るわ」
「馬を丸のみって事は、相当でかいのか」
「そうね、成体で10〜15メイル位は普通よ」
「俺達で勝てるか?」
「正直お手上げ。ダーリンお得意の近接戦は、ヒュドラ相手じゃ致命的なの。ヒュドラの血は毒なのよ」
「つまり、キュルケの炎とギーシュのワルキューレが一番有効と?」
「ギーシュのワルキューレじゃ、吹き飛ばされて終わり。フーケのゴーレム位あれば別よ。私の炎も再生力の前に、多分ネタ切れになるわね」
「コンボランスは?」
「同じ理由で却下。鱗自体硬いし、地面に伏せられたら、多分威力の半分は吸収されて終わり」
「弱点は?」
「…心臓」
「タバサ、どうやって狙うんだ?」
「…腹側なら多少は通用する」
「つまり、懐に飛び込んで一突きか。心臓の場所は?」
「首が分岐する直下に有る。でも、其所は大抵、地面に接触している」
「ひっくり返す必要有るのか。本当にお手上げだな」
才人は肩をすくめる
「軍が必要って理由が、解ったでしょ?」
「全くだ。せめて毒の対処法を、何とかしないと」
「あ、其なら任せて」
「モンモン、何か有るのか?」
「えぇ、浄化の簡易マジックアイテムを作るわ。其で何とかならない?」
「出来るのか?」
「魔法石鹸あったでしょ?原理はあれと一緒だもの。但し、一回の防御で多分壊れるわね。其を人数分と才人には複数。多分徹夜になるから、私は翌日参加出来ないわ」
「ギーシュ、意見は?」
「特に無いよ。今回は、僕とは相性悪そうだ」
「そうだ、ギーシュ。耳貸せ」
才人が耳打ちする
「戦闘中に出来るか?」
「どうだろ?難しいと思う」
「出来るだけやってくれ。今回は撤退も考えよう」
皆が頷く
「さて、明日の為に寝るか」
「二番手私だったけど、徹夜するから、三番の人に譲るわよ」
「それじゃ私ね。ダーリン寝ましょ」
「そういえば、ミスタバサ。毎回一番ですね」
「そういえばそうだね。サイコロの賭け言い出したのもタバサだし」
皆がタバサを見ると、タバサは本を読んでいる
「「「「ハメたね?」」」」
タバサは無表情を装い、本を読んでいた

*  *  *
「さてと、この森ね」
「気配は解るか?タバサ」
「無理」
「しゃあねえ、踏み込むか」
キュルケ、タバサ、ギーシュが頷く
モンモランシーは宣言通り、浄化付きマジックアイテムを徹夜で複数製作し、シエスタと共に居て、シルフィードとフレイムの護衛の元、睡眠している
「全員に2個ずつ、シルフィード,フレイム,シエスタ,ヴェルダンデの分も有るわ。貴方達、護符にしといたから、首からぶら下げておきなさい。才人は最前線だから10個ね」
「有難うな、モンモン」
「危なくなったら逃げなさい。恥なんかじゃ無いわよ」
「助かるわ、モンモランシー」
「魔力も切れたし、もう寝るわ。ギーシュ、これ渡しとく」
「ポーションかい?」
「えぇ、此方が治療、此方が解毒。治癒や浄化と一緒に使えば効果倍増よ。必ず組み合わせて使ってね」
「解ったよ。僕のモンモランシー」
「シエスタ、後は宜しくね。オヤスミ」
「はい、任せて下さい。ミスモンモランシ、おやすみなさい」

「デルフ、握らんが周辺探れ」
「おぅ。しかし相棒は俺っちの事、使い倒すねぇ」
「道具は最大限に使うのが、俺のモットーだ」
「お陰で退屈はしないがね」
「ま、相手が蛇なら、多分向こうから見付けてくれるわ」
「才人、どういう事?」
「俺の国での蛇全般はな、相手を温度で見る事が出来るのさ。だから、獲物の体温を追跡して捕える」
「へぇ、凄い機能ね。ハルケギニアでもそうかしら?」
「さぁねえ。何せテレビの受け売りだからなぁ」
「テレビって何だい?才人」
「受信専用の通信機器さ。映像が送れるから、遠隔地から現場を見たり出来る」
「そんなのが有るんだ。本当に便利だな、才人の国は」
「俺は見る暇、あんま無かったけどな」
「へぇ」
「静かにしろ、何か音がする」
デルフが言い、全員黙る
ずり、ずり、シュルルルルル
「来たか」
「思ったより早かったぁね」
「ここら辺の獲物、全部食ったんじゃ?」
「そうかも知れねぇな、相棒」
ずり、ずり

森の中とは言え、ヒュドラが這い回るには、其なりのスペースが必要で、木々の間はそこそこ間隔が空いている
ヒュドラが全体を現すと、皆が息を飲む
「なんつう胴の太さだ。ありゃ、確かに馬呑めるわ。首は9つか、八俣大蛇より1本多いな」
「相棒、八俣大蛇って何でぇ?」
「俺の国の伝説のヒュドラだ。国を滅ぼしかけた」
「かぁ、そいつは強ぇな。こいつは其に匹敵するかね?」
「さてね。俺はスサノオじゃないもんで」
「んじゃ、今からそのスサノオって奴に挑戦だな。相棒」
「気楽に言うな」
デルフを抜き、戦闘体制を取る
「コンボランス、準備。指揮は今からギーシュが取れ、俺が機を作る」
「解った。才人、危なくなったら逃げろよ」
「あぁ、デルフ頼むぞ」
「おう」
「タバサ、私達でダーリンを援護よ。気合い入れるわよ」
こくりと頷き、二人同時に詠唱を始める
ダッ
才人が駆け出し、ヒュドラの首の射程に入った途端、其は起こった
ドドドドドドドドド!!
「嘘だろっ!?才人より速い9連撃だって!?」
キュルケとタバサはスペルにかかりきりで、発言迄は出来ないが、呆然としている
「安心しろ、相棒は無事だ!!」
「デルフっ!!本当かい!?」
「ヤ、ヤバかった。まさか、こんなに速いとは。アニエスさんとの稽古前じゃ、絶対に死んでた。こりゃ、確かに軍要るわ」
「相棒、護符1枚イカレタぞ」
「おいおい、直撃はデルフ使って流したじゃねぇか」
「どうやら、毒のブレスタイプだな。只の呼気でやられやがった。長期戦は無理だな」
「ちっ。こりゃ本気出さないと無理か。瞬動使うぞ」
「先ずは、剣が鱗に通じるか、試してからじゃねぇとな」
「しゃあねぇ。居合と組み合わせて使うからな」
「おう」
ヒュドラは土に埋まった頭達を出し、ゆらりと構える
「さってと、俺がスサノオに何処まで迫れるか、行くぜ!!」
才人はまた駆け出すと跳躍し、木に横付けになり其所から一気に飛び、デルフを首の一つに斬り付ける
虚を付かれたヒュドラは、そのまま受けるが、僅かに鱗を切り裂いただけに終わり、着地する
「糞、切り裂いただけか」
「左に跳べ!!」
才人が跳躍すると、今迄居た場所に別の頭が毒のブレスを吐き、周辺の木が腐る
「おいおい。木を腐蝕させるだと!?」
「こりゃ、厄介だぁね」
「デルフ、お前さん切れ味低いんじゃね?」
「んな訳あるかい!!」
「良し、村雨使って首落とせたら、負け認めろよ?」
喋りながら駆け、再度機を伺いながら、的を絞らせない様に動く
最初の連撃とは違い、散発的な頭の攻撃は速くても、一度見た才人は予測し、デルフを使って受け流しながら、上手く身体を回転させいなすと、そのまま村雨を抜刀
ズバッ!!
首を綺麗に落とすと、血を避ける為、跳躍する
「ほい、デルフの負け」
「嘘だぁ!!俺っちは伝説だぞ?凄いんだぞ?こんなの絶対に認めねぇ!!」
「才人、コンボランス行くぞ!!撃て!!」
ヒュッ、ドカン!!
首の切断面にファイアランスとジャベリンが同箇所に突き刺さり、水蒸気爆発を起こし、周りに水蒸気が立ち込める
「こら、ギーシュ!?せめて、もうちょい退避時間くれよ!!」
「駄目だよ、才人!!ヒュドラは時間かけると再生するんだ!!」
お互いに距離が有る為、怒鳴りあう
「ったく。どした?デルフ?」
「しくしくしくしく。俺っちの剣としての誇りがぁ。絶対に嘘だぁ」
「あぁ。種明かしするとだな、ヒュドラの突撃の威力を、回転させた俺自身を使って、ヒュドラにそのまま返したんだよ。村雨単体の威力じゃねぇよ」
「本当か?相棒?」
「本当だ。村雨の切れ味だけじゃねぇ。多分デルフなら、重さ使って同じ事出来た」
「そういう事はきちんと言えよ、相棒」
「今言ったろうが。で、ヒュドラの状態は?」
「まだ死んでねぇな。動きは鈍ったみたいだが、こりゃ、まだまだ叩かないと駄目だな」
「タフだねぇ、どうも。護符は?」
「後7枚」
「そういや、デルフ」
「何でぇ?」
「いつも吸い込んだ魔法、どうしてんだ?」
「許容量越えない様に、徐々に散らしてらぁね」
「発散方法は、一気に放出出来るのか?」
「そんな事、考えた事ねぇな。忘れてるだけかも知れんが」
「じゃ、試すか。デルフ、吸い込め。ウル・カーノ」
村雨に手を掛け、発火した小さな炎を吸い込むデルフ
「そのまま、放出しろ」
ポンと炎が現れ、直ぐに消える
「へぇ、成程ねぇ」
「何か思い付いたのか?相棒」
「まぁな、キュルケ!!」
「なぁに、ダーリン?」
「最大火力で爆炎を圧縮して撃てるか?」
「有る程度は出来るわよ!!範囲どれ位?」
「人間一人分!!」
「何とかする!!」
「オッケーだ、デルフに向かって撃て!!」
「ヤー!!」
デルフを上に突き出すと、デルフに向かって爆炎が起き、デルフが其を全て吸い込む
「良し、準備完了」
「何する気だ、相棒?」
「面白い事さ。俺が点火って言う迄、出すなよ?」
「了解だ、相棒」
「才人!!コンボランス撃てなくなったぞ!!どうするんだ?」
「タバサにライトニングクラウド頼め!!仕込みはどうした!?」
「今、必死にやってる!!」
「解った、突っ込むぞ!!デルフ!!」
「おぅ!!」
ヒュドラがダメージから、のそりとやっと起き上がる。コンボランスの爆発から、時間にして2分。才人が会話しながら待ってたのは、ヒュドラの力を利用しないと、その身体を貫くのが難しいからだ
「さてと、最後迄付き合えよ。ヒュドラ殿!!」
ヒュドラの首の内、一本が分岐の根本迄破壊され、傷からの再生が遅れている
残りの8本の内、2本の色が違う
恐らく、水蒸気爆発に巻き込まれて吹き飛ばされ、再生したのだろう
「こういう時は、再生直後のを狙うのがセオリーだな」
「相棒、そんなセオリー誰が決めた?」
「甲殻類や昆虫類とかの脱皮直後は、弱いのが定説」
「相棒の知識にゃ脱帽だ。其でいけ」
「おう」
右肩にデルフを乗せ、一気に走り出す
才人の読み通り、再生された首はまだ動きがトロく、前からの首のみ攻撃してくる
都合六本の頭からの毒のブレス
周りの木々や草が腐り、その中を才人は護符を信じて走る
「やべーぞ相棒、6、5、4、3、2。良し抜けた」
跳躍し、才人に向けてブレスを吐いた頭を踏み台にし、更に跳躍。
高い位置にあった再生首を、デルフで一刀両断し、別の頭に着地すると跳躍し、返す刀でまた落とす
「ほら、柔らけぇだろうが?」
「本当に相棒はスゲーわ」
「才人避けて!!」
才人はその声でヒュドラから走り、退避すると、
カッ、ドーン!!
切断された首にライトニングクラウドが炸裂し、ヒュドラが痙攣すると、何故かそのまま地面にのめり込む
「チャンス!!」
村雨を抜き、根元迄破壊された再生中の首の切断面に一気に駆け、残り数歩で詠唱、発動
才人の姿がブレ、村雨とデルフが胴体に深く突き刺さる
「デルフ点火だ」
「おぅ!!」
ボン!!
一気に体液が沸騰し、肉が焼け、四散する
才人は村雨を払い、鞘に収めつつ、デルフ片手に仲間の元に歩く
「剣の舞姫その変型、剣の焔姫って所かな?」
「おでれーた。本当におでれーた。相棒は一体、どんだけネタ有るんだよ?」
「デルフ、護符は?」
「トドメで全部イカレタさ」
「ぎりぎりだったなぁ」
「凄い凄い凄いわダーリン。やっぱりダーリンは最高ね!!」
キュルケが飛び出し、才人を豊満な胸に埋める
「うわっ、ちょっ、キュルケ?」
「本当に凄かったよ、才人。ねぇ、タバサ」
タバサもこくりと頷く
「キュルケ、離してくれ」
「もう、イケズ」
そのまま頬にキスをし、才人を離す
「此は皆の勝利だ。俺はトドメ刺しただけ。モンモンが護符を用意して、キュルケやタバサが魔法で援護して、ギーシュがタイミングを全て読み切った。完全に作戦勝ちだ」
ボコッ
ヴェルダンデが顔を出す
「ヴェルダンデもナイスアシスト。ぎりぎり間に合ったな」
才人がヴェルダンデの頭を撫で、気持ち良さそうにするヴェルダンデ
「さてと、後宜しくな」
デルフを収めると、そのまま才人はぶっ倒れた
「「才人!?」」
「ダーリン!?」
「ギーシュ、薬」
タバサが手で薬を要求し、ギーシュが渡すと、タバサが薬を仰向けにした才人に口移しで飲ませ、治癒を詠唱する
「私じゃ、此で精一杯。早くモンモランシーに」
「じゃあ、僕がレビテーションで運ぶよ。タバサは討伐証拠を回収出来る?」
こくりと頷くタバサ
「私はどうしよっか?」
「タバサ一人じゃ危ないから、一応見張りで残ってて。ヴェルダンデも残すよ。良いね?ヴェルダンデ」
ヴェルダンデが頷く
「才人が心臓を完全に潰したから大丈夫だろうけど、気を付けて。なんせ相手はヒュドラだ。フレイムを応援に寄越すよ」
「解ったわ。もう少し待った方が良いかもね。まだ別の頭動きそうじゃない?」
確かに断末魔の痙攣を繰り返してるが、目は光を失ってない
「フレイム来る迄待つ」
「其が良いわね」

*  *  *
才人達は今回の成功で気を良くし、宿に泊まって打ち上げをすると決め、現在は宿である
一応安宿では有るが、風呂だけはきちんと指定した
なんせ毒血と毒息を浴びたのだ。魔法で防げたとしても、気分はそうも行かないのである
「ふぅ、極楽極楽。働いた上の風呂は格別だねぇ、デルフも洗うぞ」
「あぁ、こうやって洗われるのも良いねぇ」
「にしても、今回大部屋しか取れなかったな」
「まぁ、テントの時と変わらないんじゃね?」
「其もそうだな」
才人が風呂から上がると、女性陣は全員上がっていた
「あれま、俺が一番最後か」
「一番の立役者なんだから、気にしないで良いわよ」
「ミスモンモランシの言う通りです。も、びっくりです。あんなに大きいヒュドラを、才人さんが仕留めただなんて。普通、軍を使いますよ?」
「ギリギリだったって。モンモンが用意した護符が一枚足りないだけで、結果が逆だった」
「じゃあ、役に立ったのね?」
「証拠取る時にも役に立ったわよ。ねぇ、タバサ」
タバサがこくりと頷く
「皆、無事で良かったわ」
「それじゃ、皆揃ったから、打ち上げだ。乾杯!!」
ギーシュが音頭を取り、カチンとジョッキが合わさる
「ふぅ、中々収穫があったわよねぇ」
「まさか、ヒュドラ狩れるとは思わなかったわ。ダーリン最後に何やったの?」
「あれか?デルフに爆炎吸い込ませて、ヒュドラに突き刺した時点で、吸い込んだ爆炎を開放したのさ。体内で発動させた威力はあの通り」
「ダーリンの発想力には完敗ね」
食事も全て部屋に持ち込んでおり、周りの目を気にせずに楽しむ
シエスタが給仕をしようとしたのだが、才人に止められ、皆と一緒に食事を取り緊張している
貴族と同席する事は、まず平民には無いのだ
「あ、あの、私、一緒に良いんですか?」
「良いんだよ」
「才人が言うから大丈夫だよ。その為に、部屋に食事持って来たんだしね」
「は、はい」
「次で最後ね。ん〜と、竜の羽衣?」
ぶっ
シエスタが吹き出す
「どうしたの、シエスタ?」
モンモランシーが聞き、咳き込むシエスタを覗き込む
「あの、次は戦闘とか、一切有りません」
「シエスタ、解るのか?」
「はい。私の故郷、タルブの村の宝ですね」
「そっか。じゃあ、のんびり出来るな」
才人は伸びをする
「あ、あの、そんなに良いモノじゃないですよ?」
「見てから判断するよ」
「そうよね。意外なお宝かもしれないし」
「そんなんじゃ、無いんだけどなぁ」
今回、一番最初に潰れたのは才人である
やはりダメージの蓄積は、酒が回ると表面に出るのだろう
限界を感じると、寝ると言い、先に寝てしまった
「ま、ダーリン一番働いてるし、構わないよね、皆?」
皆が頷く
「報酬もヒュドラ狩れたから、期待出来そうね。楽しみよ」
「いいえ〜、違いますよぉ〜。楽しみなのは此からです〜」
「シエスタ?」
「ミスタバサ、よくも私達をハメてくれましたね〜?」
シエスタは完全に出来上がってる
酔っ払いの対処法は只一つ、適当に話を合わせる事
皆で目線で確認し、ギーシュが話かける
「ちょっと、シエスタ落ち着いて」
「大体ですねぇ、洗濯板の癖に才人さんにくっつくなんて、有り得ませんねぇ」
タバサが怒りの様相を呈する
「此から成長する。母様だってある」
「ふん、どうだか。ミスタバサは小さいから良いですよね。まるで妹みたいに、可愛がって貰えますもんね〜」
「喧嘩、売ってるの?」
「喧嘩なんてしませんよ〜。才人さんが怒りますから〜。只、本当の事言っただけです〜」
「…上等」
「ちょっと待って、タバサ。相手は酔っ払いよ?」
「大丈夫、素手」
「まぁまぁ。何ならサイコロ以外で賭ければ、ね。シエスタも其で収めて、な?」
ギーシュがとりなすと、タバサの眼鏡がキランと光る
「其で良い」
「良いですよ〜」
「暇潰しと思って、カード持って来てたんだ」
「…ゲームは?」
「ブラックジャックとポーカー。どちらにする?」
「ブラックジャックで〜」
「其で良い」
「じゃあ、言い出しっぺだから、僕がディーラーやるよ」
ギーシュがカードを切り、タイマンでのブラックジャックが始まった
「ショウダウン」
「21」
「くっ、19です」
この後、シエスタは20連敗し、ポーカーに切り替える
「此なら勝つるです!!フルハウス!!」
「ストレートフラッシュ」
「つ、強い」
ポーカーで更に20連敗し、ガクリと倒れ、そのまま寝てしまった
「タバサって、ギャンブル全般強いのね」
「此は駄目だ。勝てそうにないや」
「ダーリン寝てるけど、タバサなら大丈夫か。勝利者の権利よ。譲るわ」
タバサは頷き、とことこ歩き、才人の上にぽふっと倒れ、そのまま寝てしまった

*  *  *
「ふあぁ、良く寝た。あれ?」
見るとタバサが身体の上で一緒に寝ている
「寝てから記憶無いからなぁ。何でこうなってんだ?」
タバサを起こすかどうか迷う才人
何せ、一人で起きると、後のご機嫌取りが大変である
「タバサ、タバサ」
タバサを揺り起こす
「ん…」
タバサは目を開けると、才人の顔を確認し、また目を閉じる
「おはよう。タバサ、朝だよ」
「…まだ早い」
「タバサ」
「嫌」
「全く、随分我が侭になって来たな」
「才人が悪い」
「何でだ?」
「たっぷり味わえって言った」
「ありゃま。確かにそうだな」
才人は苦笑し、タバサの気の済む迄、起きるのを止め、そのままで居た

*  *  *


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Last-modified: 2010-10-25 (月) 09:39:11 (4932d)

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