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Last-modified: 2010-11-05 (金) 11:34:01 (4921d)

「艤装主任。新しい艦砲の進行具合はどうかね?」
此処はアルビオンロサイスの軍港
現在、旧名ロイヤルソブリン、今はレキシントンと改名された、戦列艦の改修が行われている
「予定通り進行してますな。サークロムウェル」
「うむ、素晴らしいだろう。今度の艦砲はな、このシェフィールド嬢の知識を用いて、錬金の得意なメイジを総動員して鋳造して造られた物でね。従来の1.5倍の長射程を誇るのだよ。トリステインやゲルマニアの艦砲なぞ、物の数にもならないだろうな」
「成程。ではこのロイヤルソブリンは、ハルケギニア最強の艦ですな。結婚式に向かう割には、物騒な物を積んでますな」
「レキシントンだよ、艤装主任」
「そう言われれば、そうでしたな」
艤装主任ボーウッドはさらりと皮肉を言いつつ、漂々としている
「中々骨が有るようだな、艤装主任。では、かつての主ならどうかね?」
クロムウェルの背後に立つ人物を見ると驚愕し、直ぐに膝をつく
「ウェールズ殿下」
「やぁ、ボーウッド。僕もレコンキスタに加わる事にしたよ」
ウェールズが手を出した為、臣下の口付けをするが驚愕する
生きてる感じがしないが、水の流れはウェールズ王子のそれである
ボーウッドは水メイジの為、全て感じ、それ故に驚愕する
「此は、尋常な状態じゃない」
噂が有った事を思い出す
クロムウェルは虚無の使い手だと
「まさか、虚無?」
クロムウェルは満足そうに頷いた

*  *  *
才人が眼を覚ますと、ルイズはまだ寝ている
しっかりと才人を掴み、脚は絡め、頭は才人の腕枕
ルイズにとっての、添い寝完全スタイル
才人は完全に諦め、ルイズが起きる迄待つ
今日は目覚め迄、きちんと付き合うと決めている
暫く待っていると、もぞもぞ動き出し、ルイズは目を開ける
「ルイズ、おはよう」
「サイト?おはよう」
ルイズの目の下の隈が取れ、髪にも艶が少し戻る。肌も少し艶が戻る。天下の美少女復活迄、もう少しだろう
「良く眠れたか?」
コクリと頷く
「サイト居ないと、眠れない」
「前は平気だったろ?」
ルイズは首を振る
「もう、無理だもん」
「…そうか。さて、着替えて今日は朝から掃除だ。良いな?ルイズ」
二人で荒れきった部屋を見回し、くすりと笑う
「さぁ、片付けるわよ?犬」
「わん」
二人は顔を洗い、箒と雑巾を片手に片付け始めた

*  *  *
授業を休んだコルベールとシュヴルーズ。シュヴルーズは、学院長の指示で手伝いを命じられている
土のトライアングルメイジなら、製作に向くだろうと言う理由だ
後は興味津々な学生とルイズ、其に冒険時のメンバー
アニエスと竜騎士
学院長も見物に来ている
一番広い広場の端で才人はジャケットとゴーグルをし、デルフと村雨を機内に置く
操縦席に座ると、ルーンが離陸距離が少々足りない事を教えてくれる
「滑走距離が足りないな。空母みたいに、風上なら大丈夫なんだがな」
「相棒、ならちっこい嬢ちゃんに、風送って貰えば良いんじゃね?」
「そうだな。タバサ、此方来てくれ」
タバサがとことこ駆けて来る
「俺が合図したらさ、機首に向かって、強めにウィンドを頼む、発動時間は離陸する迄。合図はこれな。場所は彼処で頼むわ」
こくりと頷き、タバサが駆けていき、配置につく
「良し、コルベール先生。お願いします」
「解った。行くぞ、才人君」
ゴロゴロ、プス、ブロロロロ!!
「お〜、こりゃ、おもろぇ」
「良し、プロペラピッチ良し、タバサに合図、ウィンド良し。ブレーキ解除、行くぞ」
零戦が滑走を始め離陸速度に少し足りないが、向かい風でカバーする
「今だ、相棒」
操縦捍を操作し、フラップを離陸位置にし、ふわりと浮かび離陸する
「お〜浮いた浮いた。こりゃ、おもれぇ」
「良くデルフが解るな」
「此だって、武器だろ?大体解らぁな」
「お前は最高のナビゲーターだな」

「凄い、本当に、飛んだ?」
見物した全員からどよめきが起きる
竜騎士が離陸し、零戦を追いかける
上空で竜騎士と零戦がランデブーし、才人が親指を立て、竜騎士に見せると竜騎士も同じく、親指を立てる
その後、同じ広場に着陸体制を取るが、大事な事を忘れてる事に気付く
「しまった、着陸の合図決めてねぇ!!」
「何とかきばれ、相棒」
着陸体制を取る零戦に、竜騎士が追随し、様子を見守る
33kt(約61km/h)で着陸ギアが地面を擦り、ランディング
「やべ、やっぱり滑走距離足りねぇ!!ぶつかる!!」
ブレーキをかけるが間に合わず、前方から強風が叩き付けられ、更に竜が脚で機体の胴体を掴み、翼で風を受け急制動
壁ギリギリで停止する
「危ねぇ、せっかくの零戦壊す所だった」
「ガンダールヴの癖に失敗か?相棒。停止距離、余裕有ったろ?」
「ガンダールヴでも、着陸操作は難しいんだよ。お〜い、助かったわ」
竜騎士に声をかけ、竜騎士が親指を立てる
「せっかくの玩具、壊れなくて良かったな」
「全くだ」
才人が苦笑を浮かべ、お互いに降りて竜騎士と握手を交わす
「タバサも有難うな。助かった」
コクリと頷くタバサ
「ほう、此が竜の羽衣かね」
「そうですよ。オスマンの爺さん。ちょっと改修に、人材貸して下さい」
「良いとも良いとも。此なら魔法学院の力を示す、良い機会だ。コルベールの他は、土メイジが良いじゃろ?ミセスシュヴルーズ」
「はい」
「才人君に手を貸したまえ。君の、土メイジとしての技量が必要だ」
「了解ですわ。オールドオスマン。才人さん宜しくお願いしますね」
「はい、早速ですが、機体全体に硬化を永続で掛けて頂けませんか?但し、中に操舵用のワイヤーが入ってるので、其にはかけないで下さい。あれは柔らかい必要が有ります」
「中身を見せて頂けませんか?」
「えぇ、此処に足掛けて登って下さい。フラップ踏んじゃ駄目ですよ?」
シュヴルーズは中を覗き込み
「へ〜成程。先程言ったワイヤーは此ですね?解りました。では」
シュヴルーズが機体全体に硬化をかけ、機体の装甲が上がる
「良し。懸案の防御問題が改善だな。タバサ、ちょっと来てくれ」
タバサが才人にエンジンと排気管を指し示す
「この排気管の出口とエンジンに、ちょっとサイレンスかけてくれないか?サイレンスの強さは弱めで」
タバサがこくりと頷き、サイレンスをかけると、才人が操縦席に搭乗し、コルベールに合図する
「コルベール先生、点火」
「解った」
一度かかったエンジンは、すんなりかかる
ブロロロロ
「やっぱり元の音がでかいせいで、サイレンスが丁度良いミュートになってるな。竜騎士殿、ちょっと機体を竜で押さえて」
「了解だ」
才人がエンジンの回転を上げる
ブオオオォォ!!
「良し、良い感じのミュートだな」
才人がエンジンを切る
「タバサ、サイレンスを永続でかけてくれないか?」
「条件変わると切れる」
「例えば?」
「破壊」
「成程ね。って事は、分解整備とかすると、かけ直しか。了解した。其で頼むよ」
コクリと頷き、サイレンスを一度解き、永続効果のサイレンスをかけ直す
「此で、機体そのものはオッケーだな。じゃ、次はオプションだ。ギーシュにシュヴルーズ先生」
「はい」
「僕もかい?」
「あぁ、ちょっと二人に、鉄の剣を錬金で出して欲しい」
「何をする気だい?才人」
「破壊試験だよ」
「はぁ?」
「私達が考えても、才人さんの考えは解りませんね。ミスタグラモン、言う通りにしましょう」
二人が錬金で鉄の剣を出す
「良し。アニエスさん、ギーシュの剣を横に持って」
「解った。こうか?」
アニエスが近寄り、ギーシュの剣を横手に出すと、才人は無造作にシュヴルーズの剣を振り下ろし、刃同士を衝突させる
ギィン!!
一際高い音が鳴り、周りの連中が思わず耳を塞ぐ
すると、才人が持っている剣が折れている
「ふむ、成程ね。ギーシュ、鉄の材料を指示するから錬金してくれ」
「何で、トライアングルが作った剣が、ドットが作った剣に負けたんだ?」
全員が、不可解な出来事に、首を傾げる
「コルベール先生。魔法はイメージでしたよね?」
「その通りだ」
「つまりギーシュのが、シュヴルーズ先生より、鉄に馴染んだ環境だったって事だよ。武門の影響だろう。良い武器は、良い鉄使われてるからね」
「あ、成程」
ギーシュ自身が一番驚いているが、才人の説明に納得する
「凄いですわね、ミスタグラモン。そんな所を見出す才人さんも、素晴らしいですわ」
「シュヴルーズ先生は、ガソリンの錬金をお願いします。揮発燃焼テストは、コルベール先生に教えてるんで、一度少量を錬金したら、試して下さい」
「解りました。量は?」
「取りあえず5樽。樽保管だと危ないので、成功したら、零戦に燃料入れて下さい」
「はい」
「キュルケ、コルベール先生」
「なぁに?ダーリン」
「何かな?」
「二人共、魔法制御試験。フレイムボールを詠唱して、杖の先端に、全ての炎を圧縮させて発動させて」
「また、無茶な注文を」
「ダーリンの注文は、無謀って言うのよ?」
二人共勉強会以上の注文に、こめかみをひくつかせる
「何だ。炎蛇も微熱も大した事ないな。日本なら、魔法使わないで普通に出来るってのに」
「才人君。二つ名の侮辱は、メイジに取ってタブーに近いのを知ってて、言ってるんだろうね?」
「幾らダーリンでも、許せない事も有るのよ?フォン=ツェルプストーを馬鹿にする気?」
「そうだね。ルイズをゼロって言ったら、俺がそいつを半殺しにするのを躊躇わない位は、理解してる」
「…ほぅ」
「…上等ね」
ルイズは才人の発言を聞き赤面するが、コルベールとキュルケは、剣呑をちらつかせる
一触即発
「私は闘うのは嫌いだが、出来ないって訳では無いのだよ?」
「ダーリン。お仕置き位は構わないわよね?きちんとお尻に敷いてあげるわ」
「二人共、勿論出来るよね?」
才人はニヤリと笑う
「当然だ」
「馬鹿にしないで頂戴」
二人共フレイムボールを詠唱し、可能な限り炎を圧縮させ、効果範囲を狭め始めると、二人共驚く
「何だ?炎の色が変わっていく?」
「ちょっと、何これ?どういう事?」
コルベールの炎は青を通り越し青紫
キュルケの炎は青くなる
「炎の色が変わったのは、炎の温度が変わったからだよ。通常は範囲の広いスペルを効果範囲を狭めて使う事により、エネルギーを一点に集束させて、より高い温度を実現させたのさ」
「キュルケの炎で3000〜3500℃位。コルベール先生ので4000〜5000℃位かな?二人共合格。流石、炎蛇と微熱だ」
「才人君、凄く疲れるんだが?」
「私も。もう止めて良い?」
「良いよ」
二人共、スペルを解除し、ため息をつく
「で、才人君、さっき言った、エネルギーとか温度の単位とかは何かね?」
「エネルギーってのは、簡単に言うと力です」
「力?」
「そう、例えば剣で何かを斬る。此は運動エネルギーが発生して起きた結果。炎で何かを焼く、此は熱エネルギーが起こした結果。つまり、物に対して何がしかの影響を与える力を指します」
「ふむふむ」
「エネルギーは大別すると5つ、光,運動,雷,熱,化学。メイジは魔力により、エネルギーを無理矢理生む、理不尽な存在です」
「メイジが理不尽と?考えた事無かったな」
「其に先住といった、違った系統でもやっぱりエネルギーを無理矢理生んでます。俺には、この力がどっから来てるか、不思議でしょうがないんですよ」
「才人君に解らないモノは、私達にも解らないだろうな。さっきの単位は?」
「通常大気圧下で、水が氷になる温度を0℃沸騰する温度を100℃と決め、それに対応した温度を指します。氷点下はマイナス表記で一番低い温度は-273.15度。空気すら凍りつきます。上限は有りません」
「ふむふむ」
「鉄の融点は1500℃位、熱を加え加工するには、炎は3000℃は必要です」
「成程、だからさっきの試験は合格と。何かやらせる積もりだね?」
「ダーリンの講義は、さっぱり解らないわ」
コルベールは才人の講義になるとメモを取り、熱心に聞きいるが、キュルケは炎の圧縮での話で、理解をするのを放棄した
「ギーシュ、鉄の錬金で、どれ位薄く出来る?」
「才人の希望は?」
「0.8/1000メイルから、1.2/1000メイル位」
「サントで言ってよ」
「0.08サントから、0.12サント」
「無茶だよ、才人」
「0.15サント越えると、堅くなりすぎて、面倒いんだよ」
「難しいなぁ」
「試しに、15サント四方で頼むよ。コルベール先生、ノギス出来ました?」
「実はまだだ。ストレート出すのが難しくてね」
「ヤスリは有るかな?」
「一応、持ってるが。全て魔法でやれる訳では無いからね」
「それじゃ、コルベール先生の研究室に。オスマン爺さん有難うな。此から呼ばれる人以外は戻って良いよ。後は試作しながらだから、時間かかると思う」
「あたしは?」
「ルイズは祝詞出来たか?」
「う、まだよ」
「じゃあ、そっちだ。出来たり、相談したかったら、顔出して」
「…うん」
才人に呼ばれた人達が、コルベールと共に研究室に向かう
「帰って来たんだから、相手してくれても構わないじゃない。馬鹿犬」

「さてと、まさか土石を売る事なく、使う事になるとはなぁ」
「土石使えば、集中出来るかも」
「試してみてくれ」
「解ったよ」
「あの、才人さん。ガソリンって、こんな感じですか?」
コルベールに説明を受けたシュヴルーズが、錬金した物を持って来る。才人が見ると少々粘度がある
「ちょっとテストしましょうか。揮発…しない。先生着火」
「はい。ウル・カーノ」
中々点火せず、暫くすると燃焼を始め、煤が出る
「此は、軽油だ。しっかり、硫黄が不純物で混じってやがる」
「違うのですか?」
「えぇ、コルベール先生。試しに錬金して下さい」
「解った」
コルベールが錬金した物を持って来て、シュヴルーズに渡す
「こんな感じですよ。ミセスシュヴルーズ」
「あら、凄い蒸発しますわね。点火しても宜しいですか?」
「えぇ」
「ウル・カーノ」
ボン!!
シュヴルーズの前髪が、炎に巻き込まれて縮れ、呆然としている
「び、びっくりした」
「あちゃー、火を付ける量が多すぎた」
才人が言い、周りから笑い声が起きる
「イメージとして、理解出来ました?」
「はい、凄い爆発でしたね。良いイメージになりました」
シュヴルーズはまた錬金する為、石炭の山に挑む
「コルベール先生、ノギスの試作品は?」
「此だよ」
コルベールがノギスを渡す
「ふむ」
才人が各部を点検し、歪みを確認する
「成程、ボディが刀みたいに反った上に捻れがあるな。万力有ります?」
「万力?」
「こうやって挟んで、物を固定する奴」
「此だな」
「ヤスリ、平面の奴。それとギーシュ、鉄でこんな感じの棒を30サント位の長さで錬金」
「解った」
ギーシュが錬金した先端がコの字型をした、棒を万力に挟んだノギスにかけ、捻れと逆方向にくいくいっと捻る
「良し、次はっと、ギーシュ、2サント四方位の鉄の駒、3個」
「解った」
錬金した物を受け取り、万力からノギスを外し、駒を三点に置いてまた挟む
「キュルケ、青い炎。出力範囲は杖一本」
「解ったわ」
キュルケが青い炎を出すと、才人はキュルケの杖を持った手を、むんずと掴む
「やだ、ダーリンったら、こんな所で」
「俺の手の動きに合わせて。炎の維持に集中してくれ」
「もう。解ったわよ」
才人が炎でノギスを焙り、ノギスが熱を帯びた頃を見計らい、万力を締め付けると、ノギスがストレートになる
「良しオッケー」
「ふぅ。これ、疲れるわよ」
「ほう、そんな風に加工するのか」
才人の手つきをみて、コルベールは感心する
「急冷すると歪むから、自然冷却ね。ギーシュ、試験用の鉄板は?」
「一応錬金した。どうかな?」
才人に鉄板を渡す
「ふうむ、ちと厚いな」
「見て解るのかい?」
「あぁ、これで大体1.6mmって所かな?」
「これ以上は無理だよ」
「そうか、じゃあしょうがない。なるべく薄くなる様に努力してくれ」
「解ったよ」
「次、タバサ、コルベール先生。今のキュルケがやった青い炎の真ん中に、タバサが其より細い風を起こせない?」
「才人君、幾らなんでも無理だ。僕達が青い炎を出す事すら重労働なのに、更に其の真ん中に風だって?無謀も極まる」
「タバサもそう思うか?」
「…試してみる」
「だとさ、先生」
「まあ、試すのは構わないか」
コルベールが青い炎を出し、汗を垂らしながら維持する
「良しタバサ、吹かせて」
シュー、ポン
「駄目か、消えてしまった。諦めよう」
「随分あっさり諦めるんだな」
「他の方法を取る」
「代案有るのかい?」
「まぁね」
ギーシュが用意した鉄板を万力に挟み、其にペンでケガキ、才人は村雨をすらりと抜く
「全員太刀筋の範囲から退避」
皆が退避すると
「食らえ、人間シャーリング!!」
才人は一気に村雨を振る
ジャギィン!!
火花が跳ね、印通りに切断された事を確認し、切断面を見る
「ん〜さっきの火花と破断状態から察するに、加工にはちょい難儀だな。炭素量が高そうだ。こりゃバーナーが要るな」
「才人君。さっきのは切断用かい?」
「そうですよ。でも此方のが加工速いですわ。使い魔って、便利だなぁ」
才人は、ガンダールヴで有る事を感謝した
「才人さん、此でどうでしょう?」
持って来た油を確認すると、さっきより粘度が落ち、サラサラしている
「お、良い感じになってきたかな?では揮発……しない。先生着火」
「はい、ウル・カーノ」
今度は先程より早く火が付くが、爆発は起きないし、まだ煤が出る
「一段階上昇しました。此は灯油ですね。ガソリンは、もう一段階上です」
「えっと、改善してますか?」
「勿論です。流石シュヴルーズ先生ですね。赤土は伊達じゃない」
「まぁ。おだてても何も出ませんよ?」
笑いながら石炭の山に戻り、また集中し始めるシュヴルーズ
「そろそろ、ノギスが冷えたかな?」
才人がノギスを触ると少々熱い
グローブをはめ、そのまま点検する
「ふむ、ストレートは大体オッケー。じゃ、バリを削るか」
才人がヤスリを手に、万力にノギスを固定して、出っ張った所を削り始める
ジャッジャッ
「良しこんなもんか、此で部品はまらないかな?コルベール先生」
「部品の加工精度も良く無いんだが。才人君」
「じゃあ、削りますよ。物は?」
「此だね」
グリップを渡されると才人はヤスリを使って削り始め、擦り合わせを行い、はめて確認する
「はい、完了。後は目盛りをきちんと付けて下さい」
「うむ、了解した」

渡されたノギスを確認し、ご満悦なコルベール。後はきちんと目盛りを振れば、使用出来るだろう。簡易型の為、深さを測る部品は無しとなっている
「才人君。随分加工が上手いんだな」
「此が本職です。武器持つより、ハンマー握ってた方が良いですね」
「ダーリンって、職人なの?」
「日本なら、何処にでも居る職人さ」
特に感慨に耽るでもなく、あっさり言う才人
「ツェルプストーで働かない?給料たっぷり払うわよ?」
「食いぶちに困ったら、お願いするよ」
「楽しみにしているわ」
「才人さん、此でどうでしょう?」
シュヴルーズが錬金した物を持って来る
「はい、今度は揮発。ばっちりしてますね。では着火」
「はい。ウル・カーノ」
ボン!!
炎が才人の顔を舐め、才人の髪が縮れる
「あらま。凄い爆発力。此で大丈夫ですね」
顔を真っ黒にしつつ才人が答える
そんな才人を指して、皆で爆笑した

*  *  *
「随分と彼方に時間取られたな。騎乗しろ」
「あいさ」
二人共馬に騎乗し、手には稽古剣を延長し、槍形状にしている
「此が騎兵のチャージだ、良く見ておけ」
アニエスが馬の腹に蹴りを入れ、才人に向かって突進
ダカラッダカラッ
槍を腰溜めに構えて才人の左脇を通過しつつ、才人を槍で突き、そのまま離脱する
「へぇ、一撃離脱か」
「そうだ、突破力を利用して、一撃離脱がチャージの特徴だ。メイジや銃兵相手だと、一列目が被弾担当になるからな。中々辛い役目だぞ」
「味方が喰らってる間に、蹴散らすって訳か」
「そういう事だ」
「銃士隊は?」
「基本は銃兵だ。剣はサブウェポン。騎乗突撃はしない。馬は輸送用途がメインだな。何分、武装に予算注ぎ込んでる。メイジに比べて重装だからな」
「一番重装な竜騎士隊と魔法衛士隊でも、ランスと自前の杖と隊制服だけだ。銃士隊はチェインメイルに短銃2丁,マスケット銃,長剣が基本装備だ」
「メイジって、安上がりだね」
「何を言ってる?竜や、幻獣の維持費のが馬鹿にならん。騎兵は傭兵に頼む事が多いぞ。馬は金食うからな」
「幻獣騎兵は?」
「幻獣騎兵は、竜騎士と同様にメイジ専門の兵科だ。竜騎士に対して、破壊力,速度は劣るがその分小回りが利いてな。竜騎士のブレスの一撃を軽く回避する。集団戦やらせると相当強い。竜騎士でも、集団でやられると、良く食われる」
「竜騎士に比べて、メイジの平均クラスが高いのも特徴だ。先代のマンティコア隊隊長の烈風カリンなんざ、強烈でな。空でも陸でも敵無しで、出陣の噂が出ただけで、敵が逃げ出す程だったと、きちんと記録に残っている」
「おっそろしいな」
「ま、最早伝説の域だな」
「竜騎士は?」
「騎兵における最強の兵科だ。所属は他の騎兵が陸軍に対し、竜騎士は空軍だ。最大の特徴は、速度とブレスだな。火竜のブレスは強烈で、スクウェアメイジでも、防御不能だ」
「他に速度に徹する場合、風竜で編制する場合もある。風竜は非常に速いのが特徴だが、その分ブレスが劣る」
「ハルケギニアで此より速い乗り物は、存在しない。風竜だと、火竜に比べて破壊力がいまいちなので、ロングランスを携行して、魔力切れ時に攻撃手段の足しにしてるが、余り役に立った事が無いと、言われてるな」
「何で?」
「爪や牙でも充分強力だし、逃げ足使って離脱した方が楽だからだ」
「確かに」
「それじゃあ、やってみろ」
「俺、乗馬下手くそなんだよなぁ」
「なら、良い訓練になるだろう」
才人は覚悟を決め、アニエスの馬と距離を取り、思い切って馬の腹に蹴りを入れた

「……貴様、騎兵は諦めろ」
「…俺もそう思う」
その後、チャージの度にバランスを崩し、落馬も二桁を越え、流石にダメージを抱えた才人に、アニエスは溜め息をつく
「最初は、きちんと乗馬からだな」
「最初から、そうしてくれよ」
「貴様なら、大丈夫かと思ったんだが」
「俺は万能じゃねぇ」
「ふむ、意外な発見だな」
アニエスはクックと笑った

*  *  *
「ううう、思いつかない」
ルイズは祝詞を考えて記しては、上手く行かないと丸めて放り投げ、部屋の中には紙が散乱している
「本当に思いつかないもん。もうすぐ結婚式なのに。どうしよう?」
「サイトが部屋に居れば何か閃くのに。ううぅ、帰って来ても放りっぱなしなんて、馬鹿馬鹿馬鹿。早く戻って来なさいよ、馬鹿犬」
ガチャ
「ふぅ、疲れた。こりゃ凄い状態だな」
ルイズは才人をキッと睨み、立ち上がる
「馬鹿犬〜!!何時までご主人様を放っておくのよ!?」
「あぁ、済まん済まん。零戦改修と騎兵訓練が長引いてね」
「あたしの事は、どうでも良いの?」
「そんな訳無いだろ?今日は初日だから、色々手間取ったんだって」
「明日から、もっと早く帰って来なさい!!」
眼を吊り上げ、ビシッと指を突き付け、片手を腰にふんぞり返るルイズ
身長と容姿のせいで、そんな仕草も可愛いらしい
「ん、可愛い可愛い」
才人はついルイズを撫でる
「子供扱いするなぁ〜〜!!」
才人は胸に視線に移し、はぁっとため息を付く
「その胸じゃなぁ」
ドゲシッ!!
「グハッ」
「ああああんたは帰って来て早々、ごごごご主人様を怒らせる事がしたいのね?ちちちちょっとは甘い顔しようかと、思ったあたしが間違ってたわ。かかか覚悟は良いかしら?馬鹿犬」
蹴りを入れ、倒れた才人に馬乗りになり、ルイズはにっこり微笑む
「ご随意に、マイロード」
「宜しい」
ルイズの久し振りのお仕置きを、才人は黙って受け入れた

「ふぅ、すっとした」
ボロ屑になった才人の上で、満足のため息を洩らすルイズ
「ん、何か閃きそうだわ」
そのまま机に向かい、ルイズは祝詞の草稿を、考えながら書き始める
「……此で日常だな」
ぼろぼろになりながら、才人は床の上で呟いた

*  *  *
ロサイスの軍港。ボーウッドは艤装主任から艦隊司令へと、アルビオンの慣例通りに拝命している
「今、なんと言いました?もう一度言って下さい」
「接触したら、艦を自沈させ、其を理由に戦端を開けと言ったのだが?艦隊司令」
「本気で言っておるのですか?」
「勿論だ」
「冗談では有りません。このアルビオンの歴史上、条約破りなど、只の一度も無いのですよ?貴方はアルビオンの信用を地に落とし、他国から嘲笑を浴びる積もりですか?」
「勝てば良い。会議での決定事項だ。君は、何時から政治家になったのかな?ボーウッド。軍人が抗命して良いのかね?」
「……謹んで拝命致します。サークロムウェル」
敬礼を返すボーウッド
「参謀に会議の者を連れよう。ワルド子爵」
「此処に」
「竜は操れるかね?」
「私は、ハルケギニアに住まう幻獣は、全て操れると自負しております」
「宜しい、貴君には竜騎士隊の隊長として、指揮して頂こう。宜しいか?」
「拝命、謹んでお受け致します」
ワルドも敬礼する
「君達なら、トリスタニア迄あっさり落とすだろうな」
「そんな事は有りません。長引く戦乱のせいで、熟達した者達が次々戦死し、今の兵達は新兵が多数。錬度では、弱体化してるトリステイン軍と、大して変わりません」
「その為の新型砲だ。其に竜騎士に於いては、まだまだ精強だ。トリステイン王女アンリエッタを捕縛してきなさい。委細は任せる」
「イエス・サー」
ボーウッドは表情を消し、敬礼する

クロムウェルが去ると、溜め息を付く
「こんな命令、陛下なら絶対にしなかったのだが」
王党派でありながら、上官がレコンキスタに与した為、そのままレコンキスタの士官として働いている。その上官は、王党派との戦いで、既に亡い
自身の顛末に皮肉を感じ、今夜は酒を浴びるしかなさそうだと、ボーウッドは心に決めた

「あのボーウッドと言う男、信用出来ますかな?クロムウェル陛下」
「あぁ、大丈夫だよ、ワルド子爵。あれは根っからの軍人だ。自身の領分に於いては実に忠実な男だよ。どんなに不服な命令でも、いざとなれば実行するだろう。ああいう男だからこそ、信用出来るのだよ」
「成程」
「其よりも君の方だ。せっかく付けたミスサウスゴータに、手を出していないと聞いてるが?きちんと上官の命令には、絶対服従と契約させた筈だが?」
「残念ながら、私は嫌われてましてね。必要な時意外は、全く側におりません。仕事に付いては、完璧にこなしてる為、文句も言えないのですよ」
「ふむ、中々上手く行かない様ですな」
「陛下の様にはべらす事等、とてもとても」
「あれは、虚無の血統を後世に残す為ですからな。聖なる行為です」
「聖職ですから、勿論そうでしょうな」
「君は私から見ると無欲に感じるのだが?もう少し、欲を見せて頂かないと、安心出来ないのですがね?」
「そんな事は有りませんよ。私は、誰よりも強欲です」
「グリードですか。7つの大罪の一つですな」
「陛下はラストですな」
お互いにニヤリとする
「では陛下、お互いの欲の為に」
「うむ、期待してますよ。閃光殿」

クロムウェルが執務室に戻ると、黒装束のエルフの女のみ。シェフィールドは別室で待機させている
執務室は机と椅子。其に接客用のソファーが二つ、間にテーブルが置いてあり、軍港として、一切の虚飾を廃している
クロムウェルが椅子に腰掛けると、女はヴェールを上げ、そのままクロムウェルの股間にうずくまる
ピチャ、ピチャ、ヌル
「うぉ、おっおっおっ。出る!!」
ドクン
クロムウェルの、勢いある射精をエルフの女は、苦もなく飲み込む
射精が終わると、服の胸を開き、クロムウェルの顔を柔らかく巨大な胸で挟みつつ、クロムウェルのモノを飲み込む
スカートの下には、何も穿いてない
「うおぉぉぉ。本当に堪らん。もう出すぞ」
「はい、クロムウェル様」
「オリヴァーと呼べ。うく」
「はい、クロムウェル様」
ドクンドクン
クロムウェルは、女の中に射精する
「く、やはり呼ばぬか。名は何という?」
「始祖ブリミルに敵対する、私如き卑しきエルフの女なぞ、端女で充分でございます。クロムウェル様」
そのまま膣を締め上げ、クロムウェルに次弾を発射させるべく、うねうねと締め付け、腰を捻り、巨乳好きでなくても極楽な、胸の谷間でクロムウェルの顔を埋め、その細い身体に、抱き心地の良さを全て詰め込み、クロムウェルを誘う
「くっ。やはり名乗らぬか。しかし、滑稽だな。2年前の異端審問を思い出すぞ?なぁ、あの時は、貫いた時点で自害したものなぁ。クックックックッ。ハッハッハッハッ。おぅ」
クロムウェルはまた射精する
「あの時は、私が愚かだったのです。もっと早くクロムウェル様の教えに帰依してれば、モードの妾等にならなかったでしょうに」
「今はどうだ?」
「クロムウェル様の子を宿す事が出来ぬのが。口惜しく思います。あぁ、あの人間の女共。孕めるだけの価値しか無い癖に、私のクロムウェル様の寵を受けるとは。クロムウェル様を、一番満足させる事が出来るのは、私なのに!!」
「随分と嫉妬深いんだな。以前の女達を、知らぬ間にオークとトロルに引き渡したな?」
「えぇ、引き渡しましたとも。妾で有り続ける苦しみなぞ、同じ立場で無ければ解りませぬ」
「クックックックッ。モードへの愚痴か。此は面白い。其に子を産めぬ事なぞ案ずるな」
「宜しいのですか?」
「そなたの子に、代わりに果たして貰おう。娘の場所は知らぬか?」
「残念ながら。其に、2年も経ってしまえば、どちらに行ったも解りませぬ」
会話をしながら、腰と膣は休めず、ずっとクロムウェルを攻めたてる
「其もそうだな。やっとアルビオン全土を征服したからな。此からじっくりと探してやる。居なければトリステインだ。子供に会いたかろう?うぉっ」
ドクンドクン
「勿論ですわ。クロムウェル様」
「そしたらお前の娘に私の子を産んで貰おう。そうすれば、名実共に、余はアルビオンの王だ」
「娘もきっと喜ぶでしょう」
「そうだとも、そして次は、トリステインのアンリエッタだ」
「素敵ですわ」
「トリステインとアルビオンを征服すれば、次はガリアのイザベラだ。此で始祖の血統全てが我が手に、真の王になれる!!」
「この身果てる迄、愛し、お仕え致しますわ」
「そうだ、先住の力で余を守れ」
「勿論ですわ。愛しいクロムウェル様。愛の証を、沢山注いで下さいまし」
「勿論だ。行くぞ」
「はい」
クロムウェルが射精する度にエルフの女の胸に顔を埋め、表情は伺えない
女の顔は笑顔も快楽も浮かべず、自身を犯す生物を、汚物を見る眼で見ていた

*  *  *
才人はハンマーを握ると、突然笑い出す
「クックックックッ。アッハッハッハッハッハ。そっか、そうだよなぁ。ハンマーは 撲殺出来る道具 だもんなぁ。クックックックッ、こりゃ良い」
「…才人君?」
「人間プレスになれと、ルーンが語ってるんですよ」
才人の明らかにおかしい様子に、コルベールが汗を垂らす
「才人君?」
「さてと、ケガキだな。円錐台展開はh=al÷(a−b)で板厚センターで………」
「才人君?」
「五月蝿ぇ。今話かけんな」
「はい?」
「職人の仕事中に話かけんなってんだ。計算とか、関数電卓ねぇから、しちめんどいんだよ。話は後でまとめて聞いてやる。だから邪魔すんな。解ったな?」
「才人君?」
「返事はどうしたぁ!!コッパゲェ!!」
「サ、サー!!イエス・サー!!」
思わず、アルビオン式で答礼するコルベール
「ミスタコルベール?才人さん、どうしちゃったんですか?」
「わ、私にも解らないよ、ミセスシュヴルーズ。只、今の才人君には、近寄っては駄目だな。完全に仕事人の顔だ。あれが、仕事中の才人君なんだろう」
「今迄見た中で、一番素敵な顔ですわね」
ギーシュが錬金した鉄板の上で、紙に計算を記しながら、ぶつぶつ喋る才人
「あ〜いぼ〜」
「60kg爆弾を搭載するとして、比重1と仮定して計算すると、容積が60リットルだから…」
「あ〜いぼ〜」
「大体胴体部と円錐2本として…」
「あ〜いぼ〜よ〜」
「黙れデルフ」
「何でおめぇ、戦ってる時より、心が震えてんだよ?」
「知るか、んなもん。計算の邪魔すんな!!」
「相棒、俺っちは悲しいねぇ」
「だからこうなって、おっと、前方と後方で円錐の高さ変えないと。先端はティアドロップにしなきゃだから、叩いて成型した奴で」
ぶつぶつ計算しながら紙に書き、寸法が決まると、ペンで鉄板にケガキを入れ、村雨を握る
「クックックックッ。俺がガンダールヴなのは、こういう理由か?存分に使わせて貰う」
村雨をスラリと抜き鉄板を刻み始める
ギィン!!ギィン!!ギィン!!
「クックックックッ。シャーリング使うより速ぇ。コルベール、台座と三本ローラー」
「何だね、それは?」
「ち、無いのか、なら」
ハンマーを構え、鉄板を叩き出す。その振りは、人間の目に追う事は出来ない
ガガガガガ
テーブルの縁を利用して、鉄板が曲がっていき、ドンドン形成されて行く
その様を見て、騒音に顔をしかめながらも二人は感心する
「へぇ、ああやって形成するんですねぇ」
「私も、初めて見た時は驚いた。あれで、非常に正確に加工するからね」
「どれ位出来るんですか?」
「才人君が言うには、自分は並だから、0.01サントがせいぜいだって。熟達した本物は、0.0001サント迄、感知して加工出来ると言ってたね」
「細工職人でも、其処まで出来るかしら?」
「私は職人じゃないから、解らないね」

*  *  *
キュルケ達は放課後に研究室に向かう。メンバーはキュルケ,タバサ,ギーシュ、そして、呼ばれていないがルイズである
モンモランシーは、溜った調合を片付けると言って、さっさと部屋に戻ってしまっている
「研究室に行くのは良いけど、この人数じゃ狭いのよね〜。其にごちゃごちゃしてるし」
「才人が何を作ろうとしてるかは解らないけど、やってる事は参考になるよ」
「ギーシュは、彫金とかもするんだっけ?」
「うん、するよ。僕からすると、あの手つき見たら、僕のは完全に趣味レベル」
「サイトって、鉄を加工する職人だったんだ。そういえば、以前にデルフを研いでた時に、ちらりと言ってたっけ」
「で、呼ばれてないのに、何でルイズ迄来てるのよ?彼処狭いから、冗談抜きで困るんだけど?ダーリンが刀振るってたら、大変よ?」
「使い魔の仕事振り見るのも、主人の務めだもん」
「ま、一応正論ね。でも、頼まれた人達の邪魔はしないでよ?ダーリン、何時もと様子違うし」
「違うの?」
「昨日で気付かなかったの?眼付きからして、違ってたじゃない。あの顔つきは痺れるわぁ」
「…ややややっぱり、監視が必要ね」
「今のダーリンは、女なんか見てないわよ。色恋ばっかで見ない事ね」
「うぐ」
「さてと、着いた。コルベール先生に才人、入るよ」
扉を開けると、製作途中の代物が形成された状態でごろりとしていて、シュヴルーズが部屋の隅でぶつぶつ言っており、コルベールが机で突っ伏していた
才人は残りの鉄板の上に座り頬杖を付き、退屈そうにしている
「何?この惨状?」
キュルケ達がポカンとして見渡し、ルイズがシュヴルーズに近寄り、話しかける
「ミセスシュヴルーズ?」
「もう駄目です許して下さいそんなキツイ錬金なんて無茶です鉄板同士組成変えずに一部だけ錬金で融合なんてそんな無茶止めて下さい私もう魔力もちません怒鳴らないでごめんなさいごめんなさいトライアングルですいませんスクウェアじゃなくてごめんなさい」
「…サイト、何やったの?」
「……皆、逃げろ。今の才人君は……鬼だ」
コルベールは、精神力の許容を越えた魔力の行使により、気絶した
「……やっと来たな。溶接機とバーナー共」
才人がキュルケ達の背後に周り込み、ガシリとキュルケとギーシュの肩を組む
「ちょっと、ダーリン?」
「才人、何か変だよ?」
「良いから良いから。さぁ、楽しい物作りだ」
その顔は凄絶な形相を呈しており、皆が息を飲む
「…また今度と言う事で」
「まぁまぁ、乗り掛かった船なんだ。最後迄付き合え。な?」
「…タバサ、一人で逃げようなんて、許さないわよ」
キュルケが逃げようとしたタバサを、がしりと掴む
タバサは怯えた顔で、ぷるぷる首を振る
「それじゃ、ちゃっちゃか、魔力を全部出せ。メイジの使用率なんざ、溶接機の使用率より低い、10%以下なんだ。ちったぁ、気合い入れろ」
「い、いやあああああ!?」
全員の絶叫が木霊し、才人に使い倒された皆が、魔力切れで気絶するのに、そう時間はかからなかった

「ねぇ、ボロ剣」
「なんでぇ?」
「今日のサイト、ずっとこんな感じ?」
「…物作り中のハンマー持った相棒には、絶対に逆らうな。俺っち握ってる時より、遥かに強ぇぇぞ?」
「…ワルドの時より?」
「あんなん、今の相棒からすりゃ、雑魚だっての。心の震え方がさっぱり違うわぁ」
「何なのよ?それ?」
「知らん」

死々累々となった研究室に一人頬杖を付いた才人を見て、ルイズは唖然と見渡した
「ちっ、メイジの仕事じゃ、ちっとも進まねぇ」

*  *  *
「才人君、提案なんだが」
「なんでしょう、コルベール先生」
「うむ、こう爆弾に火薬を使った推進機関を搭載するのはどうかね?原理としては、銃と一緒だな」
「構いませんけど、出来るんですか?」
「うむ、火の使い方は色々研究してたモノでね。大体の部分は解る」
「へ〜流石ですね。それじゃ、爆弾じゃなくて、ロケット弾になるや」
「だが火薬は衝撃に弱くてね、弾頭に詰めると欲しい所に到達前に、爆発してしまうだろうね」
「黒色火薬の特性ですか?俺は、火薬は良く解らないんですよね」
「其処ら辺は任せて頂こう、つまりだね…」
「…ふむふむ、成程。それでいきましょう。重量オーバーは、500kg積める仕様も有ったから、大丈夫かな?」
「大丈夫かね?」
「多分大丈夫でしょう。いざとなったら、レビテーションで重量軽減させましょう。重量問題は此で対応出来るでしょう。余り不格好だと、空気抵抗増えるから、宜しくないですけど」
「ふむ、流石才人君。魔法を応用させたら、ピカイチだな」
「問題は」
「…我々の魔力切れだな」
「こればっかりは、どうにもなりませんね」
「才人君のやり方は合理的なんだが、とにかく制御が大変でね。あっという間に尽きてしまうんだよ。ミセスシュヴルーズも、そう思うだろう?」
「えぇ、余りにも大変なんで、初めての時は取り乱してしまいました。でも、慣れて来ると、応用部分は授業にも還元出来ますわね。大変やりがいが有りますわ」
「では、もう一段の改造と言う事で」
「解りました。でも此って、鉄が薄すぎませんか?」
「最初は対艦爆弾だったんで、わざと破壊され易くして、雷管付けて対象物表面で爆発する様にしたんですけど、対艦ロケット弾だと、弾速が半端無いから、目標物深部に突っ込む前に、粉々になりますね。どうすっかな?」
「じゃあ、不味そうな部分に、硬化処理を施すのは如何でしょう?」
「流石、赤土。其で行きましょう」
「ドンドン、大変になっていきますわね」
シュヴルーズはクスっと笑う
「職人の仕事の大半は、どうしてこうなった?が、基本ですよ」
「まぁ」
「それはそれは」
コルベールとシュヴルーズは、笑いあった

*  *  *


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Last-modified: 2010-11-05 (金) 11:34:01 (4921d)

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