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王宮の練兵場に勤務中の衛士隊全隊が壁や建物の前に立ち、円陣を組む
此は逃走の阻止ではなく、被害を抑える為の防御陣である
建物のバルコニーからはアンリエッタ、ルイズ、アニエス、マザリーニが眺め、円陣中央に5メイルの距離を置いてゼッザールと才人が立つ
ルイズは杖を取り上げられ、傍にはアニエスがおり、アンリエッタとマザリーニも杖を持つ
此方に魔法が飛んで来た時を考慮し、防御魔法を即座に張る為だ
ゼッザールが訓練を行う場合、スクウェアの固定化や硬化事、吹き飛ばす可能性が有るからである
「随分物騒な陣型だねぇ」
「何でぇ何でぇ、あっさり死のうとしやがって。俺ぁ怒ってんだぞ?相棒」
「姫様の魂胆が読めたんでね、死ぬのが一番の選択なんだから、仕方無かろう」
「…おめえ、干渉する気本当に無いんだな」
「デルフ、お前にも解らんと思うだろうけどな、王の権限で俺がやれる所迄やると、都市を廃墟に出来るんだよ。そんなのやる気なんざ起きねぇ」
「平和的には使えないのかよ?相棒」
「所詮力は力だ。人を殺せる力こそが、人を豊かに出来るんだよ。俺が使ってた道具の中にはな、毒物や危険物も結構含まれてたんだぞ?デルフなら解るだろ?道具そのものに、善悪なんざ無い」
「確かになぁ。でも、上手く使えば良いんじゃね?」
「出来ないね」
「何でさ?」
「ブリミル教が有るからな」
「どういう事でぇ?」
「キーワードは聖戦と異端だ」
「はぁ?訳解らんぞ?相棒」
「解らんで良いぞ」
そう言って、才人はデルフを抜く
「……使い魔、考え直せ。今からでも、シュヴァリエになれ」
「嫌なこった」
「私はな、貴様に味方になって欲しい。息子と呼びたいのだよ」
「だったら、叩き伏せてから説得するんだな」
「…仕方あるまい、そうするか」
「にしてもよ、相棒。あんだけタンカ切ったってのに、ちっとも心が震えないってのはどうなんだよ?」
「心が擦り切れた人間に期待すんな」
ゼッザールが詠唱を行い、一気に才人との間合いを詰め、サーベルの飛び込み斬りを才人に行い、才人は慌てて刃を受け流す
キィン!!
「なっ、俺より速ぇ!?ウィンドブレイクで身体動かしやがった」
「かぁ、ありゃ化物だ。あのガタイも、激しい魔法に耐える為だな、ありゃ」
「ほぅ、ガンダールヴより速いか、光栄だ」
更に次の詠唱を行いながらの刺突
才人はかわしつつ横薙ぎにデルフを払い、ゼッザールがそのまま飛び退き、追撃のエアハンマー
才人はデルフを使って吸い込みながら、かわせる範囲を作り出し、かわすが、肩に触れ、身体が弾かれる
「くぁっ!?ワルドなんかより、強ぇ!?」
「流石スクウェアだぁね」
「まだまだだ、行くぞ!」
「デルフ、点火2段階だ。放出方法は足場」
「あいよ」
才人は走りながら間合いを開け、跳躍する
「点火」
デルフが足元にエアハンマーを一旦開放。其を足場に更に身体を捻りながら跳躍
「何!?」
「点火」
身体が上下逆になった所で上部に足場を発生させ、其を踏み台にして、一気にゼッザールに急降下斬撃
ゼッザールは詠唱が間に合わず、回避する
ドガン!!
才人の斬撃が地面を断ち、ゼッザールが青くなる
「化物か貴様!?」
「あんたに言われたかねぇ!!」
デルフを地面から引き抜き、そのまま斬撃を繰り出す
突きを使わないのは危険だからだ
幾らスクウェアでも、タイミングを逃すと致命的なダメージになりかねない
斬撃そのものも、並のメイジならかわせないが、衛士隊隊長ゼッザールは勿論並じゃない
お互いに技量が有るからこそ、信頼での必殺の技の応酬
いつしか、ゼッザールに笑みが浮かんでくる
「クックック、ハッハッハ。良いぞ良いぞ、使い魔。こんなにギリギリなのは、前隊長のカリンとの稽古以来だ」
「知るか!?俺の力は借り物だ!!」
キィン
ブレイドを展開したゼッザールと鍔競り、デルフが魔法を吸う
すると、そのままライトニングの詠唱を始め、デルフが気付いて警告を出す
「マズイ、ライトニングだ」
才人はバックステップをしながら、デルフを地面にさすと、そのまま飛び退く
「此はかわせるか?使い魔!!」
杖であるサーベルを才人に向けて、その先からライトニングが疾る
カッ、ドーン!!
「何!?」
ゼッザール、デルフ、才人と一直線上に刺さったデルフに落雷し、魔法を吸い込み、余剰分は全て大地に流れる
「でぇ!?おでれーた!?」
「ナイス避雷針だ、デルフ」
ライトニングの発動で硬直したゼッザールに、才人はそのまま村雨に手を掛け、間合いを詰める
アニエスは其を見て、大声を上げた
「ゼッザール殿退がれ!!居相は避けられん!!」
ゼッザールはエアシールドを展開し、受け止め様とするが、才人が間合いに入った瞬間、嫌なモノを感じ、跳び退がる
ザン!!
霧が舞い、反応が僅かに遅れ、エアシールド事、ゼッザールの服が袈裟掛けに切り上げられる
「「何!?」」
ゼッザールはともかく、才人も驚いた
「何故貴様が驚く?」
「俺にだって想定外は有るんだよ!!」
ババッ
二人が一度間合いを離れ、その隙に才人はデルフを抜き、村雨と二刀になる
右手に村雨、左手にデルフ
散々やって来た構えだ
二人が仕切り直しをした瞬間、周りからどよめきが起きる
「ゼッザール隊長と互角だと?」
「烈風カリンと同格だって、隊長が」
「……何て奴だ」
「あれが元副長殿だとよ」
「何で元なんだ?隊長で通じるじゃないか」
ざわめきは収まらない
「貴様の腕前を皆が認めてるぞ?使い魔」
「借り物を褒められても嬉しかないね」

「アニエス」
「はっ」
「あんなに激しい稽古をしていたのですか?」
バルコニーは離れている為、一部始終を余す事無く見る事が出来る
訓練自体は時折見ている、アンリエッタ
初めてみる才人の動きが人間離れしており、ゼッザールと互角にやれる人間を初めて見た
前隊長のワルドは、経験の差で、僅かに及ばなかったと記憶している
ゼッザールは、何れ自分を越える逸材と太鼓判を押してたのだ
だからこそ、裏切りは許せなかった
ショックは、今でも衛士隊含め皆が引きずっている
「いえ、私がやってたのは使い魔の能力を出さずに、才人自身の基礎能力を上げる稽古です」
「其だけで、彼処迄の動きが出来るのですか?」
「才人の頭が並では無いのは解りますね?」
「はい、私程度の謀位、軽くお見通しになってしまいます」
「才人は今有る道具の特性、其に使い魔としての能力を組み合わせて、最大限のパフォーマンスを発揮させる事が出来るのです。私は、ライトニングが地面に流れる所を初めて見ました。恐らく才人は狙ってやってます」
「私も初めて見ました」
「才人の持つインテリジェンスソードの特性を最大限に使うからこそ、通常では有り得ない跳躍や急降下を行ってますね」
「そして、才人の国の武器、日本刀。才人に聞いたのですが、あれの居相抜きは、演劇の役者ですら、観客に見えないレベルでやったそうです。其をガンダールヴの能力で更に加速させてます。人間では、回避は無理です」
「‥本当に、凄い方ですのね」
「……ですが、ガンダールヴとしては、欠陥品なんだそうです」
「あれで‥‥‥ですか?」
「はい。デルフのみと話す機会があったので聞いたのですが、ガンダールヴの力を発揮する為には、心が震えないと駄目だとか。心の震えとは言わば感情、喜怒哀楽そのものです」
「才人は、徹底的に心が震えないのだとか。デルフが才人に聞いた所、心が擦り切れ、摩滅してるそうです。ガンダールヴとしては、最低レベルだそうです」
「シエスタ、ちょっと来てくれる?」
「はい」
其を黙って聞いてたルイズは、後ろに控えてたシエスタに先程の顛末を話すと、シエスタが返す
「解るでしょ?」
「勿論です」
「シエスタの発言の全責任は私が取るわ。あの腹黒陛下にぶつけましょ」
「宜しいのですか?」
「サイトが居なくなって良いの?」
「嫌に決まってます」
「では、言いましょうか?」
「はい」
「「女王陛下」」
「何ですか?」
「「御恨み申し上げます」」
「‥‥何故でしょう?」
「あんたがやったのはね、サイトがハルケギニアから出ていく口実を作ったのよ」
「女王陛下、あんまりです。才人さんはそんな性急に事を運ぼうとしても、絶対に頷きません」
「サイトはね、私達に遠慮して遠慮して遠慮して、ずっと自分の事を後回しにして、私達が自分の足で立てる様になる迄、気長に付き合ってくれようとしてくれてたのよ?」
「才人さんはですね、待ってる誰かの為に、今直ぐに帰りたいんですよ?解ってます?」
「あんたが」
「貴女が」
「「あたし(私)達からサイトを取り上げようとしてるんだ!!」」
「あたしはね、サイトにお願いしたの。トリステイン人になってって。サイトはね、考えるって、言ってくれたのよ?解る?あのサイトがよ?」
「本当ですか?ミスヴァリエール?」
「本当よ」
「凄いじゃないですか」
「そうよ。其を、姫様は全部ひっくり返したんだ。アニエスなら解るんじゃない?サイトが考えるって、答える事の意味が」
アニエスは少し考え込み、答える
「あぁ、アイツは嫌なら、やんわりでも絶対に拒絶する。考えるって事は、選択肢に入るって事だ」
「其を、姫様は国に必要だからって言って、強引に進めようとした。サイトは一回二回なら苦笑して受け入れた。でも、サイトは三度同じ事は受け入れない。何故か解る?進歩が無いからよ」
「才人さんは心が震えないって、言ってましたよね?逆に言えば、何時でも冷静かつ冷徹なんです。どんな時でもです。だから才人さんは強いんです」
「この後サイトが出て行く事になったらね、あたし、ヴァリエールを捨ててサイトに付いて行く。使い魔と主人は、生涯一緒なの」
「私も才人さんに付いて行きます」
「サイトの居ないハルケギニアなんか、要らない」
「私の家は、才人さんが住む所です」
「「何とか言ったらどうだ?腹黒女王!!」」
「‥‥私が悪いのですか?トリステインの為を思ってやったのですが」
「時間を掛けなきゃいけない所を、性急にやろうとしたのがいけないのよ。子供の頃から変わって無いじゃない」
「欲しいとなると、周りを省る事無く欲しがって、飽きたらぽいですか?サイトから必要な情報仕入れたら、漏れを防ぐ為に暗殺しそうですよね?」
「‥‥幾ら何でもそんな事」
「必要ならしますよね?だって、女王陛下ですもの」
「‥」
「ミスヴァリエール、其位に」
「じゃあ、アニエスは、サイト居なくなっても良いの?」
「……」
「此が終わったら、サイトに謝るのね。サイトは非を認めれば、きちんと許してくれるモノ。其と今回はシュヴァリエ叙勲は諦めて。サイトはあぁなったら、絶対に頷かない」
「サイトは異邦人なの。サイトは自分自身で言ってる様に、異端なの。そして異端だからこそ、サイトなの。サイトは異端審問されたって、絶対に鼻で笑ってこう言うよ『異端そのものに、異端審問って馬鹿じゃね?』って」
「サイトは正義に囚われない。サイトは国に囚われない。サイトは宗教に囚われない。サイトは名誉に囚われない。サイトを縛るのは、約束だけ。だから、合意の元に行うべき約束を、きちんと行わない姫様の行為に腹を立てた」
「‥‥流石は主人って、所ですね」
「違う。あたしはサイトに教えて貰ってばっかり。あたしはサイトの事は、何にも知らない。サイトが話してくれる迄、ずっと待つ。あたしには、それしか出来ないもん」

バルコニーの下では、ゼッザールと才人が激しくやりあっている

*  *  *
「サイトーン?」
「才人だよ、居るんだろ?面会させてくれって、言ってるだろう。ギーシュ=ド=グラモンの名前じゃ駄目なのかい?」
ギーシュは受け付けににじり寄っている
傍に居るのはモンモランシー
「そう言われても、王宮勤めの名簿には無いんですよ。登録されてない人間に面会求められても、出来ないとしか言えません」
「こんのお役所仕事!!もう良い、押し通る!!」
「ギーシュ、幾ら何でもヤバいでしょ?」
「見て解らないのかい?何故か衛士隊が居ない。メイジが無理を通せば、今なら通る」
「才人見たさに、牢獄もちょっとなぁ……」
「なら此処で待ってるんだね。僕が探して来る」
スコーン!!
「あいたっ!?」
「なぁに、やってんだお前は?グラモン家に恥かかす積もりか?ギーシュ」
ギーシュが振り返ると、女を抱き寄せた状態のジェラールが居る
さっき、投げられたのは落ちてた石だ
「ジェラール兄さん!?兄さんに言われたくないや。女連れで出勤なんざ、そっちのが恥じゃないか?」
「まぁ、グラモンですから」
受け付けの役人も最早気にして居ないし、周りで整理してた役人も、其に受付で待ってる者達すら頷いた
「…兄さん何やってんの?」
「グラモン家の男として、誰にも後ろ指を指されない様に、女を口説きまくってんだが?」
ギーシュもモンモランシーもがくりと崩れる
「やっぱり、グラモンの男は駄目駄目ね」
「其にな、この娘も今から出勤なんだよ、ね?」
「ねー」
人前で恥ずかしがらずにいちゃつく
王宮ではグラモンだから許される。普通は絶対に許されない
「で、お前は何の用で来たんだ?学生なんだから、きちんと勉強して来い」
「才人だよ。居るんだろ?会わせてくれよ。もう6日も見て無いんだ!!」
ジェラールは苦笑する
「ったく、お前は一途だな。受付、面会者は俺だ。なら構わないだろ?」
「えぇ、其なら」
「付いて来い」
「うん」
ギーシュとモンモランシーはジェラールの後ろに付いて行く
「あらやだアメリー。貴女グラモンに口説かれちゃったの?」
「良いじゃない。ちゃんと、将軍仕留めちゃったんだもの」
「此は失礼マドモアゼル。貴女と言う花が有りながら、他に目移りしてしまう俺の不忠を責めてくれ」
「せめて隣に女が居る時位は控えろ!!この馬鹿!!」
ギリギリ首を締められるジェラール
「ちょっ、まっ、ギブギブ」
ブン、ドカ!!
そのまま床に叩き付けられるジェラール
「ふん!!」
ツカツカとアメリーは立ち去る
「あたたた、もう、余裕が無いなぁ」
「…全部兄さんが悪いと思う」
「…私もそう思う」
「違うよ。衛士隊が何で居ないのか、聞こうとしただけだっての。近衛の銃士なら知ってるだろ?」
「あぁ、成程。でも兄さんの場合、前科有りすぎなんじゃ?」
「私もそう思いますわ、ミスタグラモン」
チャキ
短銃をジェラールに構えながら、にっこりと銃士は話しかける
「本当だって。全く、俺はこんなに仕事熱心なのに」
全員カクンと口をあんぐり開ける
「ヒポグリフ隊隊長としての質問だ。きっちり答えてくれ。陛下の客人と衛士隊が居ない理由を知ってるか?」
「はい、隊長殿。陛下の客人とゼッザール隊長殿が決闘……いえ訓練をしております。衛士隊は防御の為に駈り出されました」
その瞬間、ジェラールは真顔になる
「場所は?」
「練兵場です」
「解った。付いて来い」
ジェラールは歩き出すと二人に話し始める
「ちっ、あの使い魔。調子に乗りすぎだ」
「どういう事だい、兄さん?」
「ゼッザール隊長が、何で30年も隊長やってるか解るか?ギーシュ」
「突然聞かれても…」
「代わりが居ないんだよ。カリン退役後、最強なのがゼッザール隊長だ。隊長職に求められるのはな、先ず強さだ。何故か解るか?じゃないと幻獣が従わない」
「あっ」
「群れの頭が最強じゃないと、集団として統率出来ないんだよ。だから頭脳が欲しい場合は参謀を付ける。サンドリオンが在籍してた時は、ゼッザール隊長もサンドリオンに頼りっぱなしだったみたいだな」
「そしてゼッザール隊長は温厚だ。先ず怒らない。なのにお前の使い魔は隊長を怒らせた。洒落にならん。言っとくが、俺がタイマン張っても、ゼッザール隊長に一発食らわせられれば良い程度だ。大抵防戦一方だ」
「騎乗なら負けんがね。ゼッザール隊長は、徒歩の地上戦のが圧倒的に強い」
「何でだい?」
「風のスクウェアだからだ。余計な装備は他の三系統と違って、逆に枷になるんだよ。風は、最大の能力を発揮させるなら、個人単位が一番使い易い」
「…そんな事無いよ。ね、モンモランシー」
「そうね、ギーシュ」
「「才人なら、コンビネーションで更に強く出来るもの」」
「おいおい、平民だろ?何で出来るんだよ?」
「兄さんは、才人と肩を並べて戦って無いから解らないんだよ」
「その通りですわ、お兄様」
歩きながら練兵場に着くと、どよめきが起きている
「何だ?済まん通してくれ」
「グラモン隊長?」
ジェラールが見たモノは、ゼッザールが風を纏わせて高速戦闘をするのに対し、才人が其に少々劣るが似たスピードで応戦しながら二刀を繰り出し、ゼッザールも迂濶に近寄れない、正に熱戦が繰り広げられていた
更にウィンディアイシクル、ウィンドカッター、ジャベリン、マジックミサイルはかわされるかデルフが吸い込み、逆にゼッザールに斬撃と共に放たれる
「…何なんだ?此は?」
「元副長殿、強すぎです。魔法使えないのに、インテリジェンスソード使って、ゼッザール隊長の魔法を利用してます」
「お、やってるやってる。才人の剣技の集大成だね」
「あら、本当だわ。へぇ、いつの間にか衛士隊隊長と互角迄行ったのか」
「二人共、知ってたのか?」
「「勿論」」
剣技と魔法の高速の応酬を見ながら、ジェラールは呟く
「だが、ゼッザール隊長は奥の手出して無いな」
「偏在でしょ?」
「…まぁな」
「多分才人には通じないよ。一度戦ってるしね」
「そうね。才人も奥の手出してないし」
ジェラールは二人の発言に唖然とする
「使い魔にも奥の手が有るのか?」
「そうよ」
ギィン!!
ザッ
互いに一気に飛び退き、また仕切り直す二人
「いや、正直驚いた。此処までやるとはな」
「そりゃ、どうも。アンタの強さの方が化物だ」
「全くでぇ。相棒が軽口見せられねぇなんざ驚きだ」
「こうなったら、奥の手を出させて貰う。ユビキタス・デル・ウィンデ」
分身が発生し、都合5人のゼッザールが現れる
「イヤァね、奥さん。また偏在ですって。どうしましょうかしらん?」
「あぁら、奥様。全部ぶった斬るしか無いのではなくって?」
「其しか無いわよね?奥さん。本当に参ってしまいますわ」
才人の漫才にゼッザールは肩を震わせる
「ククク、本当に面白い男だ。此は受けきれるか?」
わざと本体の帽子を取り、分身は帽子を被ったまま
「何で本体の帽子を取る?」
「あぁ、此処まで来れないからな。サービスだ」
才人は一度村雨をしまう
「デルフ、警戒しろ。ありゃ、ワルドの分身とは違うぞ」
「…だな」
分身のゼッザールがサーベルを二人ずつ重ねて掲げ、同時詠唱を始める
風,風,風、風,風,風
本人同士だから出来る、完全な調律の風の六乗
「大判振る舞いだ。たっぷり馳走してやる」
竜巻が発生し、竜巻内に電光が疾る
「……何だありゃ?」
「ヘキサゴンスペル!?マズイ相棒、ありゃ戦術級魔法だ。周り事吹き飛ばす積もりだぞ!!」
「……マジかよ」
其に気付いた衛士隊が才人の背後に集結し、全員で防御魔法を詠唱し、構える
「総員上に流せ!!絶対に受け止めるな!!」
ジェラールがその場で指揮をする
「受け取れ!!」
サーベルを振り下ろし、二つの雷を纏った竜巻が、才人に向かって向きを変えて襲いかかる
ゴオォッ!!
「くっ、二段構えだ。デルフ、雷は地面に流して竜巻吸え!!」
「おぅ!!」
片方の竜巻に対峙し、デルフを突き立てると退き、更に村雨を地面に突き立てると竜巻に呑まれた
「後は俺の運と、ジャケットの電気抵抗に期待するっきゃねぇ!!」
ゴオォォ!!
竜巻に呑まれ、風に飛ばされそうになりながら、突き立てた村雨を足掛かりに身体を縮めて才人は耐える
デルフが前面で竜巻を吸い込んでいる為、かろうじて耐えられる
バシンバシン
雷により空気が弾け、雷の殆どは二振りのアースにより地面に流れる
だが、疾った雷が才人の顔や手の傍を通過し、才人に少なくないダメージを与える
後方で障壁を重ね掛けした衛士隊は、その巨大な威力を上に流す為、斜めに障壁を張る
其でも圧力は相当な物で、一人、また一人と精神力が尽き、倒れていく
射程は砲撃や射撃に較べると短く、150メイル程度とは言え、その周辺の形有る物全てを吹き飛ばす、凶悪な魔法だ
「ぐうぅぅぅぅ」
「耐えろ!!相棒!!」
二つの雷を帯びた竜巻が終わり、衛士隊は集合してた100人の内1/3が精神力切れで倒れる
「ったく、ゼッザール殿。ヘキサゴンスペルなんざ使わないで下さい……何!?」
ジェラールは、信じられないモノを目にする
才人は蹲りながら、とうとう耐えた
顔には裂傷が出来、爪が幾つか剥がれ、足腰は弱まったとは言え誘導雷を多少喰らい、ガタガタだ
「良し、耐えたぞ。デルフ、流石伝説の仕事だ。はなまるくれてやらぁ」
「あったり前よ!!俺っちは相棒の左腕、デルフリンガー様だぜ!!」
デルフは高々と自らの口上を唄う
「……手加減したとは言え、あれを耐えるかよ」
ゼッザールは驚愕する
「あれだけの大技だ。スクウェアと言えどもネタ切れだ。行け、相棒!!」
「おうよ!!」
ダッ!!
村雨を引き抜き、デルフを抜きながら走り
分身二人にデルフを突き付け
「返すぞ」
その瞬間、膨大な竜巻がデルフから発生し、二体の分身は遠く吹き飛ばされる
「「うおぉぉぉぉ!?」」
「まず二つ」
直ぐに残り二体に対し、流れる様に対峙しながら小さく詠唱し、発動
サーベルを突いて来るが、今度は才人が受け流しながらの二刀の斬撃、舞姫の暴風になる
「更に二つ!!」
「相棒、正面飛び込んで来るぞ!!」
デルフの警告にデルフと村雨を交叉し、高速の刺突を正面で受け止め、巻き込みながら身体を倒し、蹴り飛ばす
剣を用いた巴投げ。そのままゼッザールは背中から叩き付けられた
ダァン!!
「グアッ!?」
「一本!!だぁね」
「……ぶい」
才人は立ち上がり、村雨とデルフを収め、バルコニーに向かってVサインを出すと、そのまま倒れた
ダッ
モンモランシーが駆け寄り、ポーチから薬を取り出し、口移しで飲ませながら、治癒の詠唱を行う
「ゼッザール殿、大丈夫ですか?」
ジェラールがゼッザールに近寄り、身体を起こす
「ふぅ、効いた………クククク、アッハハハハハ!!気に入った。絶対に使い魔殿をシュヴァリエにするぞ!!異論は有るか?ジェラール」
「有る訳無いでしょう。あれだけのモノを見せられたんだ」
「何故決闘、いや訓練だな。訓練をしたかと言うとだな、使い魔殿がシュヴァリエを拒否したからだ。そして奴は見ての通り、押し通した。クックックック、こんな痛快な奴、久し振りだ」
「決…いえ、訓練して迄拒否ですか。筋金入りですな」
「使い魔殿には、最高の礼を以って相対せよ。ゼッザールから、全近衛に訓辞だ」
「了解。聞こえるか、アニエス殿!!」
ジェラールが大声を上げる
「聞こえてる!!」
「ゼッザール殿からの訓辞だ。全近衛は、使い魔殿に対し、最高の礼を以って相対せよ!!」
「承知!!」
最後迄静かに観戦してたアンリエッタは、感動しつつ言葉を紡ぐ
「‥‥何と素晴らしいお方なのでしょう。ゼッザールが惚れてしまいました」
其を聞き、ルイズは胸を張りつつ答えた
「此で、サイトのシュヴァリエ就任は撤回ですね」
「仕方有りません。見事に押し通してしまいましたからね。きちんと、私から打診したが明確に断られたと記します。ですが戦果は文書に残し、機会が有れば何度でも打診すると追記します。妥協点としてはこんな所です。宜しいですか?ルイズ」
「はい」
「其でルイズ、貴女は使い魔さんのシュヴァリエ就任が、嫌なのですか?」
ルイズはピタリと身体を止めると、身体を小刻みに震わせ、身体の奥から声を出す
「そんなの………大歓迎に決まってるじゃないですか!!あんの馬鹿犬〜〜〜〜〜〜!!帰ったらお仕置きなんだからぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

練兵場にルイズの絶叫が木霊し、ゼッザールの号令の元、叩き起こされた衛士隊が整列
モンモランシーの膝枕で介抱されながら気絶している才人の隣にギーシュが立ち、その才人に対して礼をする
「衛士隊総員、杖抜け〜〜〜!!」
ザシャッ
「無冠のシュヴァリエに、捧げ〜〜〜杖!!」
シャッ

*  *  *


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