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Last-modified: 2014-03-21 (金) 01:17:35 (3690d)
小さな領地の中に、ひとつだけある大きなお屋敷。そこの庭で、5人の子どもたちが白い長方形のテーブルを囲んでいる。年のころは7・8歳といったところか。 「ぜーったいきみよりぼくの方が強い!」 二人の少年がテーブルごしに額を付き合わせている。 「なら、けっとうだ!」 少年たちが立ち上がって歩き出したのを見て、茶髪の少女が耐えかねて止めに入る。周りから見るとほほえましい光景であるが、本人たちにとっては一大事だ。 「ほらほら、ケンカはお止めなさいな。おちびちゃんたち」 そう言って、メイドはお盆をテーブルの上に置いた。それから、二人の少年の頭に手を乗せ、二人の目線に合うよう腰を下げた。 「本当に強い男の子は、こんなことではケンカしないのよ」 メイドの優しい声に、二人はばつが悪いといった風に俯いた。金髪の少年が目線だけ上げてメイドに尋ねる。 「……でも、父さまは強いけどケンカするよ?」 その言葉に、二人は顔を赤らめた。代わりに、さっきまでクッキーを口いっぱいに頬張っていた少女が尋ねた。 「じゃあ、本当に強い男は、なんでケンカするの?」 メイドは少し微笑んで、不思議そうに首をかしげる子どもたちの顔を見た。 「あなたたちが大きくなったらわかるわよ」 先ほどまでのしおらしい態度はどこへやら。不満そうに頬を膨らます少年たちに、メイドは諭すように囁く。 「これはね、自分で探さないと意味がないのよ。だから頑張りなさい、小さな騎士さんたち」 子どもたちはさらに不満そうな声をあげた。 「どうしても知りたいなら、旦那さまに聞きなさいな」 と言って去っていった。 「旦那さまって……りょうしゅさまのことかあ」 イタズラ顔の少年が呟いた。それを聞いた金髪の少年が身体を乗り出した。 「あの人、すごいんだろ!父さまが言ってた、七万人の敵を一人でやっつけたって!」 茶髪の少女の言葉に、金髪の少年はムキになって反論する。 「そんなことあるもんか!ぼくの父さまと、ハルケギニアの英雄は友達だぞ!」 イタズラ顔の少年が金髪の少年に尋ねた。 「わたしたちのりょうしゅさまのことよ」 食い意地のはった少女が代わりに答える。 「ハルケギニアを、恐ろしい魔法から守ったからって聞いたわ」 少女らは、ねーっと言って頷きあった。 「そういえば、りょうしゅさまは、でっかい龍を操れるって聞いたわ」 みんながてんでばらばらに噂話をするので、子どもたちはわけがわからなくなってきた。 「どれがほんとでどれが嘘なんだかわかんないじゃないか」 イタズラ顔の少年が頭を抱えた。それを見て、食い意地のはった少女は、さっきから一言も発していない少女を指差した。少女は話に加わらず、ずっと空を眺めている。 「あの子に聞きましょ。りょうしゅさまはあの子の父さまじゃない」 イタズラ顔の少年が、少女に話しかけた。少女は空を見上げていた顔を少年の方へ向ける。 「わたしの父さま?」 少女はぽかんとした顔で返事をした。しかし、すぐに質問の意味を理解したのか、誇らしげに笑った。 「わたしの父さまはね……」 少女はそこで一度言葉を切る。それから、母親譲りの桃色がかったブロンドの髪を揺らして言った。 「わたしの父さまは、ゼロの使い魔なの」 |
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