X4-900
Last-modified: 2011-09-27 (火) 17:00:05 (4595d)

ルイズはずっと、魅惑の妖精亭で頑張っていた
と言っても、やる事は同じなので、あんまり画面に映らなかった訳である
其でも、シエスタとルイズの喧嘩はすっかり妖精さん達の名物になってしまっていた
「全く、乳が無いと本当に駄目・駄目・駄目なんですね」
「ななななんですってぇ!?」
「ほら、こんな檸檬みたいな酸っぱい女のコは駄目ですよね」
わなわなしてるルイズの前で檸檬を一つ、両手で胸の前で抱えて、済ましてひらひらするシエスタ
それを見て、妖精さん達がクスクス笑っている
「檸檬はそのまま食べるのは辛いから、こうやってスライスして……あら、ぺったんこ」
プッ、クスクス
スライスした檸檬をルイズの胸に合わせるシエスタ
周りが耐えきれずに吹き出す
「ああああんた、ちょっとばっかり胸が有るからって「ほら、女のコはこうやって、熟れた桃の様に胸が無いと駄目ですよね?」
そう言って、今度は桃を手に取って、自らの前に誇る
「甘くて柔らかくて、果汁一杯で美味しいですよ〜?」
ぷちん
無言でルイズがピッチャーの水をドボドボとシエスタの頭の上にご馳走する
「どうやら胸がでかいと、知恵が足らなくなるらしいわね」
パシッとシエスタが別のピッチャーを取って、ルイズの頭にもドボドボ水がご馳走される
「この桃色頭にはさっぱり知恵が無いみたい。をっほほほ」
そのまま無言で取っ組み合いを始めた二人
パンパン
手を叩いたスカロンからお声が掛かる
「毎回飽きないわね貴女達。そろそろ開店だから、持ち場に着きなさいな」
「「ウィ・ミ・マドモワゼル」」
水を使ったのは、拭けば落ちるからだ
仕事に影響しない様、暗黙のルールが有るのである
見てるだけで面白いし、何気に備品も一つも壊さず、二人がじゃれあってるだけだと全員気付いた為に、放置されている
その証拠に、一人寝が辛くなったルイズは、暑いにも関わらず、シエスタを部屋に引っ張り込んだ
「シエスタ、お願い」
「嫌です。暑いじゃないですか。才人さんとならともかく、何でミスなんかと一緒に」
「…お願い」
ルイズの部屋で、シエスタの服を両手でギュッと握って震えているのに気付いたシエスタが、溜め息を一つついて頷いたのだ
「仕方有りませんね」
そのままシエスタが添い寝するが、気落ちしてるせいか、非常に暗い
「…一体、何が有ったんです?」
「…姉さま」
「はい?」
「姉さまがサイトの事………」
『……あちゃー。本当ですか。この前の冗談が、本当になっちゃいましたか』
「本当ですか?ミス」シエスタの背中で、ルイズがこくりと頷いて、頭が背中に当たり、震えている
「ミスはどうします?」
「……サイトはあたしの」
「使い魔だからそうですよね。でも、才人さんにハマった女のコで、身近に接近した人は、ある意味諦めないと駄目ですよ?」
そう言って、寝返りをして振り返ると、ルイズが泣いている
「お姉さんの事、嫌いなんですか?」
首を振るルイズ
「苦手なだけ。嫌いじゃない」
「じゃあ、良いじゃないですか」
其でも、ルイズは泣き止まない
「だって、解るの。あたしより、ずっとサイトとウマが合う。あたしより、ずっとサイトの手助けが出来る。あたしが怖がって逃げた、仕事してるサイトに、正面からぶつかって、認めてしまった」
ひっくひっくとえづいて、更に言う
「姉さまが認めてる人って、片手で数えられるの。多分父さまと母さま、友達数人とコルベール先生位。姉さまは学生時代から、コルベール先生の事、面白い先生って話してた。アカデミーに入ってから、コルベール先生のしてた事解ったって、たまげてた」
「…」
「あたし、サイトのしてる事、何にも分かんない。分かろうともしなかった。あたし、やっぱり駄目な女で、貴族とは名ばかりで、シエスタにも助けて貰ってばっかで……本当は、帰って家族の元に行きたいのに、私が心配だから居てくれて……」
『…重症だわ』
何とか突破口を開こうと、今の話を反芻して思い付く
「えっと、大丈夫ですよ?ミス」
「…何が?」
「お姉さんがミスタコルベールのしてる事に気付いたのが、アカデミー入ってからって、言いましたよね?」
ルイズはこくりと頷く
「ならお姉さんも、今のミスみたいに、学生時代は解らなかったんですよ?つまり、才人さんのしてる事が、今解らないのは恥じゃないです」
はたとルイズも気付く
「私達とお姉さんや才人さん、其にミスタコルベールは、年齢という、出発点が違うんです」
ルイズはこくりと頷く
「だから、今から学びましょう。知らないなら、学べば良いんです。才人さんだって、最初から完璧に出来………そうだから嫌だな、あの人」
シエスタがポリポリ頭を掻くと、ルイズがプッと吹く
「異世界の人だから、ノーカンで行きましょう」
「くすっ。そうよね、追い付けば良いのよね?」
「でもさっさと追い付かないと、肉を竜に浚われた上に、ヒュドラに邪魔されますよ?トドメにエルフの軍隊が行進して来ちゃいます」
キランと眼を光らせたルイズが、シエスタの首に両手を回す
「じゃあ手始めに、目の前のうしちちミノタウルスから、始末しましょ」
「ちょっとミス!!目が笑ってません!!」
そのまま、きゃあきゃあベッドでどったんばったん
戦争の中でも、平和が続いている

*  *  *
ルイズがアンリエッタに呼び出され、私室で謁見したのはガリア方面軍が敗北前の話である
コンコン
「…どなた?」
「陛下、私でございます」
「まぁ、ルイズ!ルイズね!」
アンロックをかけてガチャリと開けて、入って来たルイズを両手で抱擁する
「もう、何で遊びに来てくれないの?寂しいですわ」
「有難い御言葉です。陛下」
「堅苦しい言葉遣いは止めて頂戴。私達はお友達でしょ?」
そのまま抱擁を解くと、抱擁をしている間から気になってて、キョロキョロと周りを見回し
「あの‥‥サイト殿は?」
『やっぱし本命はそっち?こんのクソアマ』
ルイズも付き合いが長い、隠してる積もりで自然に欲しいモノを探す癖が有るのを、何気ない仕草で判ってしまう
「サイトは先日仕事と言って、姉と一緒にトリスタニアを発ちました」
「‥そうですか」
笑顔に明らかにブルーの背景を乗せて、ルイズに席を進めて、自分も座る
『やさぐれたいのは此方よ』
「あの、其で御用と言うのは?」
「‥‥あ、そうですね。ルイズ、貴女の虚無を戦争に使わせて下さい」
アンリエッタが自ら紅茶をトポトポとカップに注ぎ、ルイズが紅茶を口につけると、本当に茶飲み話として切り出した
思わずルイズの動きが止まる
「……本気ですか?」
「勿論です。トリステインは弱い国。貴女の力が必要なのです」
「私の……力が必要」
「はい。総力を結集せねば、アルビオンには勝てませぬ」
アンリエッタは紅茶を飲みつつ、菓子に手を伸ばす
「私の部屋を見て、どう思いますか?」
アンリエッタの問いに、ルイズは部屋を見回して、何も変わっていない事を確認すると
「変わってませんね」
「えぇ、変わってません。貴女は今、トリスタニアで商いをしてますね?民はどうですか?」
ルイズは気付く、現在の内政状態の確認だ
全く、何処に罠を仕掛けるか油断が出来ない
だから、いけすかない部分が多分に有っても、ルイズはアンリエッタが好きなのである
真剣に考え、街の評判を総合的に浚えて答える
「金貨交換で泡銭が出来たって、喜んだ人が酒場に来て、何処もかしこも大繁盛して……あれ?」
ルイズは気付く
「何でですか?戦争中は増税で皆不機嫌になるのに……」
「その通りです。本来増税でも間に合わず、城内の家財道具一式、私の物も全て処分してました」
「…何でやらないんですか?」
「やる必要が無いからですよ、ルイズ」
ルイズにはさっぱり判らない
「それがゼロ機関の、いえ、サイト殿の功績です。今、戦争と云う大量消費に備える為、各地での買い付け、職人達への仕事発注、失業者に対する兵士雇用、農水関係の増産、林業の増産と、全てが上向いてます。しかも、増税をしないでです」
「…どういう事でしょうか?」
「働けば働く程、民は全員手元に収入が入ります。増税で、収入が減る事は無いのです」
「…あっ!?」
「そう、働けば働く程利益が入る。ならばどうしますか?」
ルイズはやっと理解する
「だから、酒場に来た客は皆明るく…」
「えぇ、マザリーニも余りの即効性に、舌を巻いておりました。この前の武勲、其に今回の政策指導。もう宰相候補に上げても構わないでしょう。恐らく、今の製作が軌道に乗れば、更に驚きの結果を、出して下さりますわね」
「あの……サイトを宰相にするんですか?」
すると、アンリエッタは紅茶を含んだ後、軽く言い放った
「いえ?しませんよ。するのは王ですから」
ルイズのカップがガチャリと派手に音がなり、ルイズが震える
「あの…姫様」
「手を貸しなさい、ルイズ。あのお方は至宝です。魔法が使えない?魔法以上の知恵と知識がある。平民だから?その平民に、何一つ敵わない、我々貴族は何なのです?」
アンリエッタの問いは、そのままルイズが抱いていた問いだ
「人を愛せない?ならば、私達が愛せば良い。ブリミル教徒じゃない?ブリミル教が招いたのは、マザリーニ枢機卿を招いた以外は、全て政治の混乱です。我々はブリミル教によって、陰謀や混乱に拍車をかけられてるのですよ」
「あの……姫様。神と始祖の侮辱は」
「貴女も政治に参入すれば判るでしょう。今の貴女では、理解出来ないと思います」
「あ……はい」
まだまだルイズは、政治の深い部分は解らない
封殺されてしまうのは、仕方が無いであろう
「あの、ですが王位はおろか、貴族にすら興味は持ってませんよ?」
「ですが、ハルケギニアは貴族社会です。彼が、彼の成したい事をする為には、早晩貴族にならざるを得ません。サイト殿が思っている程、ハルケギニアは甘くないのです」
「…はい」
「そして貴族になってしまえば、一緒の館で侍らして頂けます。一喜一憂しなくて済みますよ?」
「…」
ヴァリエールは珍しい、妾を持たない貴族だ
だが、本来の貴族は妾位普通に居る
中には、同じ家に住んで暮らしている者も珍しくない
だから、アンリエッタの言い分は普通だが、ルイズは無縁だった為に、いまいちピンと来ないのだ
「あの、姫様。サイトを王にしたら」
「勿論私が王妃になります。それとも、母様に再度結婚しろと?母様はとてもお美しいから、それも有りですが」
「あ、あの、そういう事じゃなくて」
ルイズは慌てて取り繕う
「あぁ、貴女の事ですね?修道院は如何でしょう?」
素っ気なく言い返された口調にルイズは気付き、ゆらりと立ち上がった
「ひっめっさっま〜?今の今迄、全部騙しましたねぇ〜〜〜?」
「きゃあ〜〜〜〜!!ルイズが怒った!ルイズが怒ったぁ〜〜!」
一気に口調が変わり、けらけら笑いながら逃げ出すアンリエッタ
「いい加減にして〜〜〜〜!!」
そのままじゃれつく取っ組み合い
お互いに笑いながらも床をゴロゴロ
なんだかんだで、アンリエッタは遊びたかったのだと気付き、ルイズは笑いながらアンリエッタとぽかぽかと叩きまくった

*  *  *
「ふぅ〜、ふぅ〜。姫様。色々と絡めて遊ぶの止めて下さい!!」
「だって、つまらないんですもの、サイト殿が居ないんですもの」
床の上で二人して髪が乱れ、服もよれよれになっている
「……あのですね。今回呼んだのは、サイトが目的ですか?」
「はい、貴女は序ででして、本当にゼロ機関の中間報告を、所長から直にお願いしようかと思ってましたの。タイムラグが有りますが、ある程度動向は掴んでましたので、ルイズを呼べば来るかな?って」
悪びれもなく、舌をぺろっと出して照れて見せる
「はぁ〜〜〜。なら、直接呼べば良いじゃ無いですか?」
「出来ない理由が有るのですよ、ルイズ」
「え?」
一度立ち上がったアンリエッタは、そのまま机の上の書類を取り、ルイズに渡してみせる
「サイト殿の秘書から報告が上がってる、サイト殿の動向です」
ルイズが見た中には、びっしりと行動が書かれていて、更に他の書類からは、開発品のレポートが図解入りでこれまたびっしり
「……何なの?この行動?休みらしい休み無いじゃない」
「はい、各領滞在中の訓練が休みと言えるかも知れません。かなり遅く迄作業して、更に打ち合わせと報告書類の作成含めて、本当に時間が取れて無いです。ルイズの所に来てたのは、正に骨休みだったのですよ?恐らく、マザリーニと匹敵する仕事量です」
「……」
ルイズは溜め息を付く
「完全に、私達とは違う」
「その通りです。誰よりも働いてる姿勢を見せてる為、残った職人は、忠実に働いてる模様です。サイト殿とエレオノール姉様、それにミスタコルベールは、相当な成果を上げてます。ですが、我々には判断が出来ないのです」
「…判断が出来ない?」
ルイズが疑問を呈し、アンリエッタが頷く
「はい。例えば、此が新型艦が一隻出来て、見たとします」
「はい」
「それならば、私達にも判断出来ますよね?」
「その通りですね」
「ですが、途中経過では、どうして必要なのかがさっぱりなのです。試しに、からくりに詳しい時計趣味の貴族に見せてみました」
「……はい」
「理解不能と回答されましたよ。何でこういう技術が要るのか?この熱工程は何か?製鉄法の改工程は?この新開発の魔法は?全てが我々の理解を越えてるのです」
「……だから、直接報告を」
「はい。ですが、サイト殿の時間を削る事だけは出来ません。この仕事を理解し、実践出来るのはサイト殿だけだからです」
ルイズもやっと理解する
才人の行動の制約は、そのまま開発の停滞を招く
招くに招けないのだ
自身のスケジュールとのタイミングを見計らって呼んだ筈が、既に居なかった訳である
「サイトって、こんなに凄いんだ……」
「まぁ、サイト殿とて、完璧では有りませんけどね」
「そうなんですか?」
「えぇ、物事にはプラスがあれば必ずマイナスが発生します。色々と、困った状態になって来ました」
そう言って、本当に困った様に笑う
その様子を見て、ルイズは臣下の礼をする
「姫様。私で良ければ、存分にお使い下さい」
「はい、で、最初の話ですが。貴女の虚無を戦争に使わせて下さい。後、出来ればサイト殿を、王宮に連れて来て頂けますか?」
「御意にございます、姫様」
コンコン
「どなた?」
「私です、アニエスです」
「入りなさい」
「失礼します」
ガチャ
アニエスが入って来て、ルイズを見るなり
「おや、居たのかルイズ」
「いつの間にか呼び捨てね、アニエス」
ルイズがそう言うとアニエスが返した
「ヴァリエールが知り合いで二人も居るんじゃ、名前で呼ばないと区別つかないだろう?」
「そっか、それもそうね」
「で、用はなんでしょう?アニエス」
「はっ、これを見てください」
アニエスが持っているのは、才人達が開発した新式マスケットライフルだ
「開発コードで001式並びに002式と書いてる、ゼロ機関作製の新式マスケットライフルです。長銃が001、短銃が002ですね」
「新式銃ですか?」
「はい、コイツは射程が1.5倍、貫通力、命中力も格段に向上してます。しかも、新型擲弾も使用可能です」
「‥どういう事でしょうか?」
「我々銃士隊や、今回出兵する銃兵に持たせれば、更なる活躍が期待出来ると云う事です」
「‥本当ですか?」
「使用方法はほぼ一緒。擲弾使用時のみちょっと違うだけ。我々に使い易く設計してます。ゼロ機関全員での共同発明。我々近衛は、この新式銃の採用を要求します」
其処でアンリエッタも気付く
アニエスは、はっきり要求したのだ
「と、云う事は?」
「はい、ゼッザール、グラモンの署名もこの通り」
評価報告書に、きちんとサインが載っている
元帥格三人での共同署名
戦争に勝ちたければ採用しろとの、強烈な圧力である
「予算の都合で検討、としか言えません。明日の議題に載せましょう」
「他にも有るんですが?」
「まだ有るのですか?」
「はい」
この後もアニエスが目が爛々としてアンリエッタに要求し、アンリエッタがたじたじとなる
魔法が使えない平民が、マジックアイテムの力でメイジ並のサバイバビリティーに向上するのだ
全軍に採用出来れば、死傷率の低減に繋がる
普段からメイジに比べて辛い思いをしているアニエスには、非常に欲しいものばかりだ
「解りました、解りましたから。アニエス、落ち着いて」
アンリエッタが鼻息荒く接近するアニエスに、思わず両手で抑えて抵抗する
「ったく、才人も才人ですよ。陛下に見せれば一発オーケーかも知れないのに、わざわざ近衛に試験させたり。警らに出てたからって、私を呼び戻さなかったり。ったく、あいつめ、次に会った時は足腰立たなくしてやる」
目が爛々と燃えている。呼ばれなかったのが、相当頭にキテるのだろう
「その件に付いては、私も言いたい事が有るので、許可しましょう。ではルイズ、ちょっとサイト殿にお仕置きしたいので、連れて来てくれますね?」
「…かしこまりました、陛下」
『何か、嫌な予感がする』
こうして、ルイズは一人モンモランシ領に通常の交通手段を以て、向かう事になった
衛士隊は出撃中、竜騎士隊はルイズから見たら行方知れず
王宮の竜籠は、通常業務で手一杯
馬を使うしか無かったのである

*  *  *
ルイズが最初に向かった先はラ=ロシェールより西方、ラグドリアン湖の西側のモンモランシ伯領であり、トリスタニアから馬で4日という所だ
最も邸宅に向かうには、更に半日が追加される
駅を使って交換しながら軽快に飛ばすルイズだが、元々の体力が無い分早めに宿を取る為、行程に変更は無い
今は、きちんと貴族のマントをアンリエッタから借りて纏っている
お忍びじゃないからだ
出る前には、きちんとスカロン達にも挨拶し、その時に給金を頂戴したのが、チップと合わせて現在の活動費である
「ん〜。ひっさし振りの貴族働き〜!」
宿に着いたルイズはかなりご機嫌だ
大好きな乗馬を、久し振りに堪能してるからだろう
「待ってなさいよ、馬鹿犬!うんとうんとお仕置きしちゃうんだから!!」

*  *  *
ルイズはモンモランシ伯邸に向かう為、舟に馬事乗ってぷかぷか下っていたら、ゴーレムに引かれて遡上する一艘の舟に遭遇する
「モンモランシー?モンモランシーじゃない?お〜い!!船頭さん止めて!!」
「悪いが無理だ。貴族様以外にも、荷物運んでんでな」
「此は命令よ!」
「じゃあ、違約金払ってくれ。俺達は貿易担ってんでね。定時に荷物運んで、なんぼなんだよ」
ルイズは荷物と一緒に、運んで貰ってるのだ
自分の一存だけで、決められないのである
「う、解ったわよ」
「しっかし、貴族様にも色々と居るけど、まさか荷物と一緒に運んでくれって貴族様は、初めてみらあ」
そう言って、船頭はがっはっはと笑う
「節約しないといけないのよ。節約」
ルイズがそう言って、ぷっくうと膨らむ
「若い時は苦労するもんですぜ、貴族様。そうすりゃ、下々の事が分かりますぜ」
「えぇ、そうね」
すると、向こうの舟からモンモランシーが大声を上げて来た
「ルイズゥ〜〜〜!家で待ってて〜〜!」
「解ったぁ〜〜〜〜!」
「おや、モンモランシ伯のお嬢様とお知り合いで?」
「えぇ、学友よ」
「ありゃ、そうですかい。最近、毎日ああやって舟使ってんですぜ、あのお嬢様。何でも、上流に大したもんが出来たみたいで。定期的に上流と下流を結ぶ舟迄増えて、この川も賑やかになりましてなぁ。俺達も商売増えて、万々歳でして」
『才人の仕事だ。こんな所に迄影響してるんだ』
行く先々の宿で聞いた、景気の良い話
才人が仕掛け、マザリーニが調整し、アンリエッタが施行する
戦争中なのに、皆が明るい
戦争は、増税で民の不満が続出すると聞いていたのが、嘘みたいだ
ルイズは俄然気が良くなる
『良い?アナタ達の仕事を増やして、景気を上向かせてるのは、この私の使い魔よ?どう、驚いた?驚いたなら、平伏しなさい!!』
そう言って、ズビシっと指を指して胸を張りそうになるが、いけないと思って口をつぐむ
「ふっふっふっふっふっ」
口に手を置いて笑いを堪える姿は、異様に気持ち悪い
「どうも、変な貴族様拾っちまったなぁ」
船頭は肩を竦めてぼやき、馬がヒヒンと相槌を打った

*  *  *
ルイズがモンモランシ伯邸近くの桟橋で降りて礼を言い、船頭は荷物の積み替え準備をしながら手を振った
「貴族様の所で仕事あったら、うちらラグドリアン河川組合に宜しくな!!」
「父さまに伝えておくわ!」
もう、本当に楽しい
自分の使い魔が、どれだけ仕事してるかが如実に解るのだ
『我慢して良かった。会ったら久し振りに一緒に寝るんだ!!』
「そして〜そして〜サイトの手やあれがあれしてあれになって、あたしは星になっちゃうの!?きゃあきゃあきゃあきゃあ!?」
ぽくぽく歩く馬の上で悶絶する少女貴族の姿を見て、道行く人々はさぁっと道を拓いて行く
流石、元祖痛い娘である
勿論、そんな痛い状態でモンモランシ邸に入ろうとして、やっぱり止められる
「待て、貴殿は貴族の様だが、向かう場所は塔の幽閉場所では無いのか?」
「ちょっ、失礼ね。あたしを誰だと思ってるの?」
門衛がお互いに顔を見合わせて、同時に頭を指して指でくるくる回して一言
「……脱走してきたのでは無いのか?」
「な、なんですってぇ?よりによって、このあたしを、ヴァリエールを何だと思ってるの!?」
思い切り怒鳴りつけ、ヴァリエールの名前を聞いた瞬間に、門衛が直立不動になる
「し、失礼しましたぁ!!」
「モンモランシ伯息女、モンモランシーに話は通してあるわ。あたし、彼女の友達なの。入って良いでしょ?」
「ど、どうぞ此方に」
そのまま応接室に通され、暫くするとモンモランシ伯が入室して来た
ガチャ
「マドモアゼル、失礼する」
「モンモランシ伯爵」
ルイズは立ち上がってスカートを持ち上げて礼をし、モンモランシ伯の勧めで再度着席する
「此方には、姉君に御用ですかな?それとも我が娘に?」
モンモランシ伯がメイドに渡された紅茶をルイズに提供してから口をつけ、ルイズは一口飲んでから言葉を発した
「それもございますが、ゼロ機関所長サイト=ヒラガを、陛下の命で探しに参りました」
「そうでしたか。平民の癖に、奴には色々と借りが出来てしまってですな。まぁ、さっさとシュヴァリエ位になって貰わないと困ると、お伝え下さい」
「って事は、モンモランシには」
「はい、現在グラモンに向かった模様でして。何やら問題が発生したとか」
「…そうですか」
明らかにしゅんとするルイズに、モンモランシ伯が深みのある笑みを浮かべる
「今日はこちらで一泊して、明日の舟で下流に向かえば宜しいでしょう。手配させて頂きますので。娘めも喜ぶと思いますので、是非とも御滞在を」
「も、申し訳ありません。助勢、有り難く頂戴致します」
思わず立ち上がって、そのまま頭を下げるルイズ
「陛下の使者であれば当然の事。お気に為さらずに」
こうして、ルイズは一夜の宿を得たのである

*  *  *
ルイズがモンモランシーと再会した第一印象は
『何か綺麗になってるわね』
「ねぇ、モンモランシー。何か綺麗になってない?」
「あら?解る?最近ウェスト周りも減って、胸も少しだけど、大きくなったの」
そう言ってクルって回るモンモランシー
「いや、なんて言うか、仕草変わった?」
「あら、そう?」
なんと言うか、色気が有る
ルイズはびっくりしまくりだ
「そうね。多分恋って、女には一番大切な栄養素って、事かしら?」
「ああああんた、まさかサイトと」
「さぁてどうかしら?私、才人と一緒なら、地獄でも断頭台でも行くもの」
「むぅ〜」
「ま、貴女も頑張りなさいな。別に独占しないから、たっぷり甘えちゃいなさい。一緒にお風呂入りましょ?」
もう、一足先に大人になられた感じで、非常に悔しい
しかも、その変化を与えたのが自分の使い魔である
「あの馬鹿犬の何処が良いんだか」
そして、一緒に風呂に入って驚いた
「うわ、本当にスタイル良くなってる!?」
「ふっふん、良いでしょ?」
そして、つい股間に注目してしまったのだ
ハルケギニアの貴族の子女は、例外無くつるつるである
当然、男を受け入れて形が微妙に変わってしまうと、モロバレになる
学園に居た時より頻繁に抱かれた為、カタチが男を受け入れ易い様に変化している
「ちょっと、股間のそれ」
「女になった、あ・か・し」
「あ…あたしより先に、経験してる〜〜〜〜!?」
「女って、良いものよねぇ。私、女に産まれて本っ当に良かったわぁ」
はふんと吐息を漏らして、湯船に沈むモンモランシー
「ちょっと、どうなのよ?き、気持ち良いの?」
「もう、あの人居ないと生きていけない!って思っちゃう位?」
「そ、そんなに?」
思わず身を乗り出して、鼻息を荒くするルイズ
「もっと凄いわよ〜?」
そう言って、ルイズの耳元に唇を寄せて、ボソボソ言うモンモランシー
ルイズが一気に逆上せ上がり、きゅうとひっくり返ってしまった
「あらら、まだ序の口なのに」

*  *  *
そして部屋を提供されたにも関わらず、モンモランシーの部屋に一緒に居る
才人の使ってた部屋に行こうとしたら、モンモランシーに止められたのだ
「才人の部屋はゼロ機関分室になってるの。ルイズが見たらびっくりする位の書類の山よ?悪いけど、主無しでは案内出来ないわ。其に、コルベール先生も使ってるから余計ね」
「そうなの?」
「職人達も私の家に寝泊まりさせてるし、今結構手狭なのよ。お父様が貴女に一室提供したのも、無理が有るのよ」
「だったら、余計見に「駄目。書類や備品ひっくり返したら、才人の仕事が滞る。私、貴女を許せなくなる様な事は、したくない」
モンモランシーの目が真剣だ、ルイズも折れる
「解ったわ」
「代わりに私の部屋行きましょ」
そう言って、モンモランシーのベッドの上で、モンモランシーに借りたネグリジェを着て、毛布を一緒に被って女同士のイケナイ話
「でね、あのカタチがね」
「イヤー!?」
「こうね、ペロリと舐めると」
「ヤメテー!?」
興味津々で、黄色い悲鳴を上げまくるルイズ
「でね、どういうのが好きかって言うと」
一気に顔を付き合わせるルイズ
ごつん
毛布の中で、二人は額をぶつける
「な、何が好きなの?」
「おでこくっ付け無いでよ?痛いじゃない」
「い、良いからその先」
「ど・お・し・よ・お・っ・か・な・?」
「ちょっと、モンモランシー。ここまでやっといて、話さないなんて無し!!」
「あれ?才人の事、許しちゃうの?」
「ゆ、許すも許さないも、そ、そんな関係じゃ」
一気にしおしおになるルイズ
モンモランシーが、あちゃーと失敗を認める
そんなルイズをモンモランシーは胸に抱き締めた
「ねぇ、ルイズ。人にはペースがあるわ」
「…うん」
「自分のペースで頑張りなさい。私は、私のペースが、貴女よりちょっとだけ早かっただけよ?」
「…うん」
「才人も言ってたわ。ルイズは、とっても可愛いって。あの馬鹿はね、本当に大事なモノには、手を出さないタイプよ?」
「…そんなの…嫌」
「なら、素直になりましょ?主人面してる限り、ずっと主従で終わってしまうわ」
「うん」
「私達はハルケギニアの女。一人の男に集うのは当たり前。だから、私は貴女を受け入れる。ねぇ、ルイズ。一緒に愛されるのも、気持ち良いのよ?」
「…本当?」
「えぇ、だから大丈夫。貴女が貴女らしく、可愛らしいまま、素直になるだけで変われるわ。私、貴女と結構仲良くやれると思うんだけど?私と一緒は嫌?」
ルイズはモンモランシーの胸に抱かれたまま、考えてみる
「悪く無い……かな?」
「今は其で充分よ、ルイズ。一緒に寝ましょ?」
「うん」
そのまま、モンモランシーの胸ですぴすぴすると、ルイズはあの匂いに気付く
「このネグリジェ。私のもだけど、サイトの匂いがする」
どうも、さっきから股間がもぞもぞする訳だ
「あらあら、気付いちゃったか。匂い染み付いちゃったのよねぇ。でも、此が一番なのよ」
「…」
「お気に召さなかった?」
「ううん。そんな事無い。でも知らない」
「何がよ?」
ルイズの言葉が判明するのは、二人が意識を手離した後だ

*  *  *
モンモランシーが何か太ももに擦り付けられる感覚に、微睡みの中で目覚める
身体は重い、変な時間に起きたせいだろう、身体に力が入らない
「はっはっはっはっ」誰の声だろう?
『ルイズ?』
「サイト、サイト、んんん!?」
『この感触は、穿いてないわね』
モンモランシーの太ももに脚を絡め、股間を擦り付けて、更にネグリジェをずり下ろして、胸にぱくりと吸い付いた
『ちょっと、それ才人のよ』
そのまま吸い付きながら舌を転がし、太ももに更に擦り付けて、ルイズが身体を痙攣させる
「〜〜〜!?」
ビクッビクッビクッ
はふうと溜め息をし、またクンクンと匂いを嗅ぎ出す
「サイトの匂い、サイトの匂い。我慢出来ない」
「ちょっとルイズ」
「ふぇっ!?」
思わずびくってなるルイズ
「キスマーク付けないでよ、才人に誤解されちゃうじゃない」
「あの、その、ごめんなさい」
「良いわよ、別に」
「へ?怒って無いの?」
「よっと、やっと力入るわ」
そう言って、ルイズを胸に寄せる
「私は貴女と仲良くやれると思うって、言ったでしょ?当然、ベッドの中も一緒よ?」
「……うん」
「才人の匂いに我慢出来なかったのね。大丈夫、私も良くなるわ」
「…うん」
「で、教えなさい。学園で一緒に寝てた時、してたの?」
「…うん」
「うわぁ。あの馬鹿、ずっと寝てたの?」
「うん、一度寝たら起きないから」
「あらあら、ずっと生殺し状態なんだ」
ルイズは耳迄赤くして、モンモランシーに顔を埋める
「なんて言うか、私、貴女の事が気の毒になって来ちゃった。絶対に、あの馬鹿を落とすわよ?頑張りましょ」
「モンモランシー、ありがと」
ルイズはそのまま眼を閉じ、すとんと寝入った
『なんて言うか、天然の末っ子気質よねぇ。私、一人っ子なのに、妹出来たみたいだわ。ルイズは可愛いし、私もどうせ一緒に暮らすなら、可愛らしい女のコと一緒が良いし』

*  *  *


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Last-modified: 2011-09-27 (火) 17:00:05 (4595d)

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