X5-68
Last-modified: 2011-11-18 (金) 08:25:05 (4543d)
治めし者、旅路の者
才人は謁見後の翌日トリスタニア城下に向かっていた
日も大分高いが、彼女は起きてるだろうか?
とにかく向かってみる
魅惑の妖精亭を潜ると、やっぱり静かだった
「ちわ〜。こんな時間じゃ、やっぱり起きてねぇか」
そう言って、階段を登ってスカロンの部屋の扉を叩く
コンコン
「ふぁ、どなたぁ?」
「俺です。才人です」
「入って良いわよ」
ガチャッ
「失礼します」
才人が部屋に入るとスカロンの眠たげな目が、一気に覚醒する
流石商売人である
「あらあら才人ちゃん、どうしたの?」
「ルイズを預かってくれたお礼を言いたくて。また忙しくなるんで、今の内に」
「才人ちゃんも大変ねぇ。何で貴族のボスやってるか知らないけど、それ絡み?」
「そんな所です」
「シエスタはどうする?あの娘、ここに居れば才人ちゃんが来るからって理由だけで、働いてんのよ?忙しいみたいだから、メイド必要じゃない?」
言われてみると、確かにあちこちの家で着替えが散逸している
しかも周りは貴族ばかりで、身の回りの世話は、着飾る方がメインで無頓着だ
別に困ってはいないが、居ると確かに助かる
「う〜ん。シエスタは学園のメイドだから、連れ回すのもなぁ。この先更に、動かないとならないし」
スカロンはその話を聞き、深いため息を付いて語りかけた
「才人ちゃん、きっぱり言うわ。立場なんかどうでも良いから、連れて行きなさい。私の可愛い姪を何だと思ってるの?」
流石に自慢の姪っ子が役立たず扱いは、スカロンには憤慨モノである
そして、才人は思わずよろける
「いや、だけど周りは貴族ばっかで」
「なら、尚更世話する人間が必要でしょうが!」
確かにそうである
しかも、ヴァリエール姉妹に物怖じしないメイドはちょっと貴重だ
ルイズの不安定な部分も大分助けてくれるだろう
事実、ルイズからもシエスタの評判を聞いている
友達と一緒は嬉しいだろう
「あのね、シエスタから色々と聞いたわ。貴方、タルブの英雄なんですってね?」
「…そうなっちまいましたね」
「爺さんの遺産受け取った男が、女一人でガタガタしないで頂戴」
「はぁ」
「いずれ帰るから連れて行くのは躊躇してるんでしょ?なら、それ迄にきちんとやる事やって行きなさい。別に片親だって良いじゃない」
「…そんなもんですかね?」
「惚れた相手の子を身籠るのは、女にとって最高の幸せよ?私はシエスタにも、幸せを味あわせたいの」
「…はぁ」
思わず頭をかりかり掻いて、曖昧な表情を浮かべる才人
「そんな調子なら、ジェシカ迄付けて追い出すけど良いのね?」
「はい、シエスタ連れて行きます」
思わずしゃきっと直立して、才人は答える
「最初からそうおっしゃい」
「すいません」
思わず頭を下げる才人
「でも、シエスタは俺には良い娘過ぎて」
「その自慢の姪っ子が、あんた以外眼中無いのよ?もっと、自信持ちなさい!」
「はい」
才人の返事にスカロンは笑い、促す
「今のシエスタの部屋は、才人ちゃん達が使ってた所よ。迎えに行って上げて」
「解りました。スカロンさん、ルイズを世話してくれて、有り難うございました」
才人は深々と頭を下げてから、部屋を後にした
パタム
* * *
才人が軽くノックしても、部屋の主からは反応が無い
才人は思わず扉を開くと鍵が掛かっていなかった
「不用心だな」
思わず苦笑しながら部屋に入り、眠ってる黒髪で愛らしいそばかすを散らした少女に声を掛ける
着てるのは、いつぞやのプレゼントした下着だ
毛布も暑さにはだけており、可愛い胸があらわに呼吸と共に上下し、瑞々しい生気と色気を発揮している
「シエスタ、シエスタ」
シエスタの髪を撫でながら才人は声を掛ける
「…」
「シエスタ」
うっすらと瞼を開け、ぼぅっとしながら才人を見つめ
「……才人さん?」
「そうだよ、才人だよ」
眠たげな顔はそのままに、シエスタは才人の頭に腕を回し、才人を抱き寄せてキスを交わした
チュッチュッ
キスを交わしながらも脚で才人を蟹挟み、ベッドに引きずり込む
「うっ、シエスタ」
「……他の女の匂いがする」
サクッと才人に刺さる
「私の匂いで上書きです。来てくれないと、起きてあげません」
「シエスタ……」
「すんごい寂しかったんですよ?私、才人さんのお役に立ちませんか?」
そう言って、眠たげな顔はそのまま、紐パンの紐をほどいて才人のジーンズに手を掛けずり下ろし、戦闘体制になるように、股間を当て、すりすりと腰を艶かしく動かす
「そんな事無いって」
「じゃあ、私が才人さんの女だって証、下さい」
シエスタの肌触りは絶品だ。息子に刺激を与えられ、才人は完璧にガチガチになっている
そのままシエスタが入口に合わせ、才人が腰を進めるとズヌヌと入って行く
「……ん」
「……この柔らかい感触、堪んね」
才人の息子が余りに柔らかいモノで包まれ、脈動でビクビクするモノすら受け入れられ、硬く強くなる分が、それすら包まれる
幾らでも強く強く主張する分が、それすら柔々と包み込まれ、いつの間にか高まらせられる
そう、気が付いたら余裕が無くなる
「……シエスタ」
シエスタがキスを交わしてそのまま才人を抱き締め痙攣するのと、才人の射精が重なり、鼓動も重なる
トクントクントクントクン
とても心地よい長い余韻、シエスタは抱擁を解かずに唇だけ離した
「……えへへ、やっぱり凄い気持ち良いです。このまま寝ましょうよ?私、寝ながらでも大丈夫ですよ?」
「いや、出掛けないと駄目なんだ。一緒に来るか?」
ぱちくりとその言葉にシエスタが眼を開ける
「一緒に行って……良いんですか?」
才人が入りっぱなしの腰を軽く動かし始める
大幅に打ち付けるのではなく、奥に入れた状態でそのまま打ち付ける
グチュッグチュッ
「あぁ、ちょっとあちこち滞在しなきゃならんから、どうしても不慣れでさ。シエスタ居てくれると助かるんだけど?来るか?」
「い……行きます!……絶対……絶対…あっ!イクッ!!」
シエスタが痙攣し、才人の精が再度放たれる
「あっ………才人さん、メイドの報酬は日払いでお願いしますね。私、じゃないとサボタージュしちゃいます」
「…鋭意努力します」
「返事は、ウィです」
そう言って、才人を締め付けながら奥に誘いながら、更に腰をうねらせる
一気に才人は力を取り戻し、お互い小刻みに腰を振リ、阿吽の呼吸が出来てしまっている
「ウィ」
「嬉し………ん!?」
シエスタの返事と共に、非常に短い時間で三発目が発射された
* * *
才人がシエスタを連れて来ると、メンバーは特に何も言わなかった
確かにメイドが欲しいと、ちょっと思っていたのである
「シエスタを連れて行くよ。最近身の回りが疎かだからさ」
「まっ、良いんじゃない?所長がみすぼらしいのも、威厳に関わるからね」
そう言って、エレオノールは肯定しつつ、シエスタに歩み寄る
「ふん、立場を弁えなさい、メイド。忘れなきゃ、裏で何やろうと大目に見てあげる」
才人の匂いを感知しての警告である
シエスタは黙って頭を下げた
「さてと、零戦使わず皆で竜籠で行くか?」
「いやぁよ。何で平民と一緒に乗らないといけないのよ」
そう言って、エレオノールが拒否する
「解った。タバサ、シルフィード貸してくれ。学院で零戦乗って行くわ」
タバサが頷いてシルフィードが傍に寄り、才人とシエスタがシルフィードに向かうと当然の如く、エレオノールが才人に付いて来た
「……あのな」
「…何よ?所長と一緒は秘書の勤めよ。何が問題?」
「今、平民と一緒は嫌だと言ったろう?」
すると、才人の服の裾を掴んで睨む
眼で訴える。ルイズ以上の気の強さを眼の意思に込め、言いたくて言いたくて言いたいけど、言えない台詞を言おうとして、唇を戦慄かせる
「……」
才人はため息を一つ付くと、説明を始める
「…エレオノールさん、良く聞いてくれ」
エレオノールはこくりと頷く
「零戦は、シエスタのひい爺さんから遺言で譲り受けたモノで、元来シエスタの物なんだ。俺には彼女を乗せて飛ばないといけない理由がある。シエスタに譲ってくれるね?」
「……メイド、本当なの?」
「はい、才人さんの言う通りです。私達の家族で管理してました」
すると、才人の服の裾を掴んでた手を解く
「御先祖様の成果を見るのは、子孫の義務ね。別に貴族だけの話じゃないでしょ」
「流石俺の秘書。物分かりが良い」
そう言って、才人がニヤリとすると
「ふんっ」
エレオノールはそう言って、竜籠に歩いて行く
そんな様を見て、キュルケは肩を竦め、隣のルイズにからかいがてら話かける
「彼処迄あからさまだと、逆に凄いわね。ルイズ、あんた完全に負けてるわよ?」
「ヴヴヴァリエールで挽回するもん」
「言っておくけど、ツェルプストーじゃ私達にずっと付き合って貰うから、ダーリンと一緒の時間取れないわよ?解った?」
「だだだ大丈夫よ。だって、今は一緒に居るもの。離ればなれじゃないから、ずっとずっと良いもん」
唇を噛みしめながら言うルイズに、キュルケは心底感心する
「強くなったわね、ヴァリエール。私、貴女と一緒なら、ヴァリエールとツェルプストーの争いの歴史、終わらせる事が出来そうな気がするわ」
「…どういう風に?」
「勿論、愛する男に二人して収まるの。良いでしょ?」
「…考えとく」
「仲良くしましょ?ダーリンに、余計な気苦労与えない様にね」
そう言ってキュルケが背後からルイズを抱き締め、ルイズは思わず叫んだ
「ちょちょちょっと何すんのよ?ツェルプストー!」
「私の胸気持ち良いでしょ?ウリウリウリ」
キュルケがルイズの頭に胸を押し付けてる間に、才人とシエスタは学院にシルフィードで飛び立ち、二人はタバサに纏めてレビテーションされ、竜籠に強制連行されて行く
こうして、一路ヴァリエール公爵領に向かって行ったのである
* * *
ロンディニウムでは、クロムウェルが椅子にふんぞり返りながら肘を肘掛けに置き、書類に眼を通していた
腿は開いたその間から机の下に女がおり、女は繋がった尻を艶かしく動かしている
隣にシェフィールドが立っている
「オークの数は順調に増えてるな。作戦迄に最低数は確保出来るか」
「確か、3000でしたっけ?」
シェフィールドが確認すると、クロムウェルが答える
「だがオークの連中、せっかくの女を殺し過ぎだ。2000が限度らしい。まぁ、2000なら、トロルと合わせれば充分だろう。あちらの進捗はどうなってる?」
聞かれたシェフィールドが答える
「予定通りです。この前の封鎖線突破も見事でした」
「現場の連中が良く働いてくれている。トリステインを手に入れたら、褒美をやらないと駄目だな」
そう言って、腰を進ませて固定し、クロムウェルが無造作に射精すると、女がビクビクと身体を震わせる
その様を冷たい目線で眺めつつ、更に報告を続ける
「モードの遺児の捜査は、依然として成果無し。目立つ容姿の筈なのに、目撃情報すら皆無です。捜査範囲はアルビオン全土に広げてますが、アルビオンから他国に渡った可能性も考慮すべきかと」
「……上手く耳を隠してるのか」
「向こうも慣れてるでしょうし、ボロは期待出来ないでしょう」
「……引き続き捜査を続行しろと言いたい所だが、規模を大幅に縮小しろ。そろそろ正面戦力に回したい」
「了解」
兵力の再配置と進捗状況を確認し、来るべき決戦に備える
「親衛はどうしてる?」
「鉄騎兵は出番を望んでます。遠征部隊に配属されない事で、不満が溜まっており、陸軍司令のホーキンス将軍でも中々抑えきれない模様でして」
苦虫を噛み潰した表情をしながら、クロムウェルは呟いた
「慰問する。鉄騎兵は、余が旗揚げした時からの親衛だ。彼らは決戦時の決定的な戦力だ。やる気を削がぬ様にせねばな」
「はい」
シェフィールドが退出し、クロムウェルが立ち上がると、女を引っ張り上げた
「移動だ、服を着ろ」耳栓と目隠しを外して女に囁き、女がだらしない顔で頷く
「はいぃ、クロムウェル様、もっと、もっと下さいぃ〜〜」
クロムウェルに正面からしなだれ掛かって、更に挿入して痙攣する
「あぉっ!?」
ビクッビクッビクッ
暫くして、やっと落ち着いたのか、机の下に無造作に丸められた服を纏い、髪を慌てて撫で付けて取り繕う
そして、そのまま鉄騎兵の慰問に付き従い、表向きは淑女のなりで大人しく歩いていく
* * *
クロムウェルが彼らの詰所に着くと、思い思いにたむろしていた鉄騎兵達が全員立ち上がり、一斉に敬礼を行った
「クロムウェル陛下に敬礼!」
「流石余の親衛だ。楽にして欲しい」
クロムウェルがそう言い、全員敬礼から直る
「陛下御自ら今日はどんな御用で。我々鉄騎兵、陛下の御為とならば、最後の一兵迄死力を尽くして散って見せましょう」
部隊長が本気で言っている
クロムウェルの背後にはシェフィールドと、彼の情婦が控えている
美女を侍らす司教は背信の極みだが、誰も気にしない
「うむ、諸君の忠義に疑いは無い。最近燻っていると聞いてな、直接話を聞きに来た」
「……宜しいのですか?」
「構わない。話してみたまえ」
「では申し上げます。我々にも、陛下への忠義を証明する場を提供して欲しいのです!」
今は空戦主体、以前のトリステイン侵攻部隊にも編入されなかった
最強を自負する精鋭だからこそ、常に人より戦果が欲しいと、皆の顔が物語っている
「諸君等の勇ましい事、余も嬉しい。だが良く聞いてくれたまえ」
一度深呼吸したクロムウェルが、更に語りかける
「鉄騎兵は最強の地上戦力だ。だからこそ、無駄な損耗は避けねばならない。君達が投入される時は、必ず勝たないと駄目な局面だ。解るな?」
皆が頷く
「今は空戦主体だから出番は無いが、諸君らの出番は必ずある。その時は、その強力な魔法と打撃力で敵を蹴散らせ。今迄の不満を全てぶつけて欲しい」
「クロムウェル陛下、万歳!」
「レコンキスタに栄光あれ!」
「皇帝陛下に、敬礼!」
ババッ
一斉に敬礼をされ、クロムウェルが返礼する
その後は、一人一人の手を握る為、クロムウェルは鉄騎兵達の中に歩いて行った
そう、只の司教の時に信者にそうしてた様に
本元はどんなに歪んでも、敬虔なる信徒なのだろう
* * *
「ふわぁ、此がひいお爺ちゃんの見てた景色ですかぁ」
零戦の後部座席に座って、才人の操縦で飛んでるシエスタが、しきりに眼を輝かせてうんうん頷いている
「多分ひい爺さんは、子供達に見せたかっただろうな」
ゴーグルをした才人が、軽く振り返りながら答えると、シエスタが機嫌良く答えた
「大丈夫です!才人さんが叶えてくれました!!私、とっても感激してます!!」
「そっか」
「はい!!」
終始シエスタはニコニコだ
才人も機嫌が良くなる
その隣をシルフィードが才人の機動に合わせて、零戦と一緒に踊る
シエスタも感激しきりだ
同じタイミングで宙返りをし、零戦が右旋回すると隣のシルフィードが左旋回、そしてそのまま逆に舵を切り、交差
そのままシザースを一機と一騎で連続して決め、比較的ゆったりとした中、シエスタの感激は止まない
「わぁわぁわぁ、凄い凄い凄い!才人さんとシルフィードさんの遊覧飛行だぁ!!」
バレルロールやアーリーロール、木の葉落とし等、余り急な機動は行っていないが、シエスタにはそんなの関係無しで、ひたすらはしゃいでいる
「シルフィードさぁん!!」
流石に聞こえないので、シエスタが手をブンブン振ると、シルフィードが応え、愉しそうに鳴く
「きゅいっきゅいっきゅいっ」
飛行での移動は非常に速い、特に小国トリステインでは顕著だ
空船や馬車では非常に時間が掛かる工程でも、一時間もあれば着いてしまう
出遅れたにも関わらず、竜籠に追い付き、竜籠に合わせて飛行する
暫くすると、下に城が見えて来て、竜籠が着陸体制に入るのを見て、才人も高度を下げていく
先にシルフィードが低空に入って露払いを買って出、才人は固くなってる馬車道を着陸滑走路にし、風防を開けて、地面を確認しながら着陸する
キュッキュッキュウゥゥゥゥゥ
タイヤが地面を何度か跳ねながら擦り、ブレーキにより浮力が喪失し、道路からそれて、堀の前の草原に零戦を移動させ、才人はエンジンを切った
ブロォォォ、ブスブスブスッ
そのまま村雨とデルフを握りながら降り、シエスタの降車を助けてると、衛兵が飛んで来た
当然である
「め、面妖な!?何者だ!」
「今竜籠来たでしょ?俺はその連れだよ」
「な、エレオノール様縁の者と申すか?」
「うん、そだね」
シエスタを抱え上げて地面に降ろしてから振り返り、余りの変な代物で乗り付けた才人に、槍を向けて警戒する衛兵達
流石に才人が溜め息を付き、そんな才人の背中に隠れてシエスタは様子を見ている
「面倒だな、やっちまうか?デルフ」
カチッ
「お、何でぇ。珍しく短気じゃねぇか?相棒なら、30人程度なんざどって事無いけど、嬢ちゃんや姉ちゃんに怒られんじゃねぇの?」「だよなぁ」
ガリガリ頭を掻いて、衛兵を見る
「き、貴様。ヴァリエールに戦争を挑む積もりか?」
隊長はヴァリエールお抱えの下級貴族らしく、杖を手にわなわな震えている
こんなふてぶてしい平民なぞ、初めてである
「戦争?悪いが趣味じゃないや。エレオノールさんかルイズ呼んでよ。話通じるから」
「お嬢様達を名前で呼ぶだと?平民風情が、万死に値する」
隊長の物言いに才人がカチンとする
そこもかしこも平民風情平民風情
馴れたとはいえ、何度言われても不快でしかない
「決めた、死なない程度に叩きのめす」
「あっはっはっは、コイツはおもれぇ。相棒が珍しく短気だぜ。良いぜ、精々派手にやっちまえや!メイドの嬢ちゃん下がんな。相棒が珍しく怒ってらぁ」
「は、はいっ!」
シエスタが下がると、それを合図に隊長が指揮を下した
平民とはいえ、女を巻き込むのは不本意なのだ
「やれ」
一斉に槍を持った平民衛兵が密集体型のまま突撃を始め
「ファランクスなんざ、初めて見たぜ」
「良いから抜けよ、相棒」
村雨を左腰に差して、左手にデルフの鞘を持つと、槍並の攻撃範囲を持つデルフリンガーを、間合いに入った瞬間に抜きさった
ギギギィン!
槍がデルフの一閃で間合いに入った穂先を叩き斬り、鞘を捨てながらそのまま跳躍しながら、擲弾をばら蒔きつつ衛兵の肩を踏んで更に跳躍、一気に隊長に詰め寄る
「な、兵を踏み台に!?」
唐突に目の前に現れた才人に詠唱しながら軍杖で攻撃すると、一合で軍杖が叩き落とされ、そのまま峰打ちで頭頂部をしこたま叩かれた
ガン
一撃で隊長が伸び、部下達は煙幕弾の中で、身動きが取れなくなっている
「げほっげほっ」
「煙幕とは、げほっ、卑怯な」
「人の話も聞かねぇで、30対1で襲う方が余程汚ぇわ、阿呆」
才人の言い分の方が余程理が有る
エレオノールとルイズが来た時には、全てが終わっていた
全員気絶していたのである
余りの事態にぽかんと二人は突っ立ち、やっとエレオノールが口を開く
「ちょっと平民、一体なんなのよ?何であんたとうちの衛兵が衝突してんのよ?」
「エレオノールさん達に繋いでくれって言ったのに、名前を呼ぶとは万死に値するって襲われた」
そう言って、才人は肩を竦める
「本当です、ミスヴァリエール。私も聞きました」
シエスタもそう言って、才人の言動を保証する
エレオノールは才人に近寄る前に、杖を抜いて隊長を念力で起こし、更に水をぶっかけた
隊長がぱちくりと眼を醒まし、エレオノールの姿を見ると恥じ入り、更にその姿を見せた才人に殺意を燃やす
「お、お嬢様!おのれ平民風情が、殺してくれる」
スパァン!
思い切り平手で隊長の顔を殴り、エレオノールは捲し立てた
「あんたね、平民が私に繋げって話、無視したでしょ?」
「え、ですが、何処の馬の骨と解らぬ平民が、ヴァリエールに繋げる事なぞ有り得ません。詐欺師か何かの類で有りましょう?」
「…全員起こしなさい」
「ウィ」
隊長が水を喚んで全員を起こし、立ち上がらせると、エレオノールが才人を指して宣言をする
「良い?覚えておきなさい。コイツは別格。私のボスで、陛下のお気に入りで、最近発足した陛下直属のゼロ機関の所長。そして近衛隊長ゼッザールに勝てる力量の持ち主。あんた達なんか、束になっても皆殺しにならなかっただけましよ!二度と同じ事しない様に!」
「し、失礼しましたぁ!!」
思わず敬礼して応える衛兵
「そして、あたしの使い魔だから。二度としないでよ?」
「ルイズお嬢様の使い魔であらせられますか?」
コクリと頷いて、ルイズが才人に近寄り腕を取る
「行こ、サイト。あたしの家、案内してあげる」
「平民が乗って来た玩具、傷を付けたりしない様にしっかり見張っておきなさい。壊したら晒し首ね」
そう言って、エレオノールも才人の前に進んで行く前に、才人に声を掛ける
「ちょっと平民、エスコートしなさいよ」
「姉さま。ここは、あたしの使い魔のが先だもん」
べーっと舌を出して、ネックレスをこれ見よがしに晒して、才人の腕にぶら下がりながら、先にてとてと才人を引っ張って行く
「ちょっと、長女の仕事の方が先に決まってるでしょ?待ちなさい!ちびルイズ!」
「待たなぁい。姉さまが怒った!サイト、逃げよ!」
「おいおい」
才人がルイズに引っ張られる形で小走りに近い形で歩いて行き、エレオノールがそれを追いかけ、シエスタが静々と歩いて行く
その様をぽかんと見送った衛兵達は、我に返ると隊長が指示を下した
「エレオノールお嬢様の指示を実行しろ。二人組三交代で、あの乗り物を警備する。忘れるな、ヴァリエールは有言実行だ。傷を付けたら、我々全員晒し首だ!」
「「ウィ!」」
急いで班を編成し、松明を持って来る連中と槍を折られなかった者から槍を受け取って歩哨に立つ者に分かれ、残りは警備に散っていった
* * *