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Last-modified: 2012-03-21 (水) 17:42:45 (4419d)

シエスタとジェシカは、タルブの村でワイン用葡萄の収穫祭に参加していた
シエスタは一旦学院に行ったのだが、今回今迄の実積を認められ、何とか休みをメイド長に許可されている
太鼓のリズムに合わせてスカートをひらひらさせながら、踊りに参加した少女達が、きゃあきゃあ言いながら葡萄を潰している
それを男達が笑顔や真剣な眼差しで見ている
笑顔の者は既婚者の余裕
真剣な顔の者は少年が多く、この後のダンスの申し込みして、良いところで告白して行っちゃうよ?決めちゃうよ?俺って状態
要は、カップル成立率が非常に高いイベントな訳だ
ちなみにシエスタは才人と非常に親しい間柄で有る事を認知された為に、今回目標にしてる少年は居ない
そんな事したら村を救ってくれた英雄に会わせる顔が無くなると、親達に厳命されている
シエスタはジェシカと同じく器量良しで乳が二人でバインバインなので、人気が高いのだ
最も、祭の前に告白をした者も居て、返事は
「才人さんに勝てるなら良いです」
シエスタも何気に強気だ
二週間前の宴の滞在中に腕試しだと、野郎共が素手武器込みで挑戦して、一人数秒で全員叩きのめされた過去が未だに新しく、最早絶対のお断りである
あの男に挑戦するのは二度とゴメンと言うのが、村の男達の総意になった
英雄が英雄たらしめるのは、きちんとした下地が有る事を確認した村人達は、正に才人を祭り上げた
そして竜の羽衣をシエスタの家族含めて子供達には乗せて、ちびっこ達のヒーローにもなってしまった
シエスタの家族はそのサービス精神の豊富さと勤勉な姿勢を大層気に入り、シエスタに同道を強く命じ、シエスタは誰彼憚る事無く才人の伴侶アピールを村人達に行い、シエスタに恋慕してた複数の少年達に涙を流させたのである
収穫祭に至る背景としてはこんな所だ
で、収穫祭の話はシエスタが村人達に仕事だからと口をつぐませた
事実、無理に無理を言って来て貰ったのを承知してるので、村長含めて仕方ないと頷いた
シエスタだけは、才人の身辺が非常に危険なのを知っており、村人に被害が出る事を懸念してた才人に完全に賛成し、上手く誘導出来た事を心の中でガッツポーズし、自分の仕事振りを自賛したのは、許されて良いだろう
そんな折、新しいアストン伯が、収穫祭の観覧に来たのである
祭で踊ってる娘達を見て、人に嫌悪をもよおす笑みを見せ、更にこう言ったのだ
「此方に、竜の羽衣を祀ってた一族が居たな?」

*  *  *
学院にシエスタが戻って来たのは、予定より二日遅く、メイド長が理由を聞くと
「ちょっと急用で長引いてしまいました。すいません」とだけ言い、ちょっと顔色が悪かった
何時も朗らかの印象が強いシエスタの豹変振りに、周りがあれこれと詮索するが、彼女が一言
「急用の件でちょっとね」
そう言って、多くを語らなかった
つまり本当に急用が出来て、それを切り上げて来たから心配なのだろうと皆が納得し、シエスタに何かれとサポートをした
何時も元気なシエスタに皆が元に戻って欲しいと、あれこれ世話をやいたのだ
その心配した中にルイズが居たのは、今迄世話になった人に対する当然の配慮だろう
何だかんだで、やっぱり優しい娘なのだ
ただ、人より大分不器用なだけである
「もう、シエスタ、元気出しなさいよ。調子狂っちゃうじゃない」
ルイズのお茶にシエスタを指名して、二人きりだ
エレオノール側には、ミミやローラ、他のメイド達がビクビクしながら行っており、エレオノールが何時ものメイドはどうしたって騒ぎ、メイド達が必死に抑えている状態だ
ビクビクされると誰でも不愉快なので、エレオノールのご機嫌がナナメになってしまうのは仕方ないだろう
才人が傍に居る時は明らかに落ち着いてるのだが、居なくなると途端にそわそわし始めてしまう
何でそんなふうになってるか他のメイドには解らないので、余計に神経に障ってしまうのだろう
シエスタという潤滑油が、皆に必要とされていた
「えぇ、ちょっと」
シエスタが気まずそうに微笑み、ルイズがそんなシエスタに同席を促す
今要るのはルイズの部屋だ
その際、きちんとドアをロックして、誰にも見られない様にする
「うんうん、ロックやアンロックはきちんとマスター出来たわ。自分の上達が眼に見えるとやる気がこう、ぶわって出るじゃない?」シエスタに話を振っても、いまいちノリが悪い
「えぇ、そうですね」
むぅ、って唸って、ルイズはどうしたもんかと腕を組んでいる
「ほら、二人きりよ。私とシエスタの仲じゃない。ここでなら幾らでも吐きなさいよ。シエスタのお陰であたしはこうしていられるのよ?たまには頼ってくれても良いんじゃない?」
その後に
「借金はお父さまに相談しないと無理だけど」と続け、何とか自虐ネタを混ぜて笑いを取ろうと試みる
「あはは、ミスヴァリエールの冗談は下手くそですね」
何とかシエスタの気分が少し上向いた
良し、偉いぞルイズと、心の中でガッツポーズをするが、後が続かない
ん〜と、こ〜と、何とか食い付きそうな話は〜?
「そう言えばシエスタ、ずっと前に賭けをしたじゃない?」
そう言って、ルイズが話しかけ、シエスタが思い返す
「……確か一学期……でしたっけ?」
「そうそう。あの時、確か負けたら何でもいう事一つ聞くって、やったよね?」
「そう言えば……そうでしたっけ?」
「そうよ。で、あの時の賭け。私の負けだっのよね。シエスタ、今行使しなさいよ。何でも一ついう事聞いてあげるわ」
シエスタはそのルイズの申し出に、少し考え、そしてこう答えた
「なら、才人さんを一日貸して貰えませんか?」
「才人の仕事を休めって言うの?」
「はい」
ルイズは少し考え、結局は頷いた
他でもないシエスタの頼みである
馬鹿犬の仕事が何であろうと、シエスタの復活は仕事にも好影響の筈
「ちょっと待ってて、命令して来るから」
そう結論付けて、ルイズは研究室にダッシュしたのである

*  *  *
「ちょっとルイズ、仕事中に何の用よ?」
研究室の扉を開けて開口一番、エレオノールに冷たくあしらわれるルイズ
だが、友達の為にここは退けない
「あの、シエスタの調子が悪いんです。サイトと二人きりで接すれば、元気になると思うんです!だからサイトに休みを取らせて、シエスタを元気にさせて下さい!」
エレオノールはその言葉に、暫く考える
確かに事情知りのメイドは大事だ
自分でさえかなり参ってるのだから、平民で力の無い彼女は更に参ってても可笑しくない
「ルイズ、あんた、私達がアサシンに狙われてるの、誰にも喋って無いでしょうね?」
「勿論です」
「良いわ、私から才人には伝えておく。あんたは何時も通りにしてなさい。アイツは今も、多分殺し合いしてる最中だから、近付かない様に」
「……そんなに酷いんですか?」
「えぇ、傭兵メイジも出始めたわ。巻き込まれたら、命の保障は出来ない」
ルイズはキュッと、下唇を噛んだ
「死体は?」
「銃士隊が毎日引き取ってる。組織の洗い出ししてる最中ね」
「組織なんですか?」
「正確には、組織も居るって所。背後は有り過ぎ、担うアサシンはバリエーション富み過ぎ。ちょっと異常ね」
そう言って、エレオノールは頭上を仰ぐ
「普通は、襲撃止みますよね?」
「普通はね。何を用意すればこんなに不屈の精神で攻め続ける事が出来るか、ちょっと理解を越えるわね」
まさか、ヴァリエール公の椅子と三姉妹が景品に載せられてるとは露とも知らず、ルイズ達は異常な事態に頭を悩ませる
ちなみに才人が学院から出てわざわざアサシンを相手にしてるのは、周りにアサシンがウロウロされると学生達に類が及びかねない為、自ら踊り出て標的を狙う事に集中させてるのだ
そんなこんなでガチャっと扉が開き、才人が入って来た
全身に死臭を臭わせ、反り血も少々浴びている
「よう、姉妹揃ってご苦労さん。やっとお勤め終わって来たぜい」
デルフが一際陽気に言い放ち、才人はちょっと疲れた表情だ
「今日は何人?」
「メイジが三人、非メイジが十五人。違う組織の癖に協同作戦で来やがった。厄介だぜったく」
そう言って、才人はドカッと椅子に座る
ちなみにエレオノールはドラフターの椅子だ
「日に日に激しくなって来てるわね」
「おりゃあ、冬戦争のシモヘイヘか、東部戦線のルーデルかよ?戦場設定迄、暗黙の了解出来ちまってるぜ」
そう言って、才人が溜め息をつく
「で、今日のスコアは?」
「長期戦で使い魔切れるわ、相棒キレるわで皆殺し。一人残して警告の為に逃がす積もりだったのに、オジャンになっちまったよ。戦場は土から木から、全部血の色がこびりついてんぜ」
言ってる中味だけでも、相当に凄惨だ
ルイズはつい身震いしてしまう
「サイトは怪我無いの?」
「でいじょうぶだよ。怪我したら致命傷になっちまうからな。全員毒刃基本装備。全く、受け流しや回避に磨きがかかるのなんの」
そう言って、デルフは愉快そうに笑っている
普通はこんなに攻められたら身が持たない
才人は、モンモランシーやヴァレリーによる、秘薬のバックアップのお陰で毎日を乗り切っている
当然、モンモランシーは大量に用意した秘薬類の消耗に頭を悩ませているのだが、シエスタの不調のお陰で材料仕入れに行けないのだ
ちなみに、エレオノールが材料仕入れにゼロ機関口座の小切手を渡してくれたので、資金問題は多少はクリア出来ている
シエスタの復調は、全員の生命線になりつつあった
「才人、メイドが不調なの。明日は休んで、元気つけて上げてくれない?」
「シエスタが?」
自分自身の事で手一杯な才人は、そこまで気が回らなかった
毎日生きるか死ぬかをやってたら仕方ないのだろう
「キュルケやモンモンは大丈夫か?」
「ツェルプストーなら、私も参戦したいってぶぅたれてるわよ。モンモランシーは買い出しに出たいけど、シエスタが一緒じゃないとって悩んでた。タバサはまだ帰って来てない」
ルイズの言い分に才人は少し考えて、直ぐに頷いた
「やっぱりシエスタが元気じゃないと駄目だな。俺で良ければ、明日一日シエスタに付き合うよ」
こうして、才人は明日シエスタに付き合う事になる

*  *  *
シエスタと才人はルイズの部屋で二人きりだ
ルイズは授業に出ており、エレオノールは研究室で盗聴をしているが、二人には内緒で、デルフも黙らせた
「良い、ボロ剣。メイドの復調は大事な事よ?だからきちんと知る必要が有るの。理解したら、二人には話さない様に」
「つまり、相棒の他の女との濡れ場が気になって気になって仕方ないって事だぁね」
デルフの発言は身も蓋も無い
事実その通りなので、エレオノールは言葉を詰まらせてしまった
「…良いから、黙ってなさい」
「そのネタ掴んでどうする気よ?中身次第だぁね。喧嘩や脅迫ならお断り。おりゃあ、今の相棒が不憫でね。せめて、どっかで吐き出してバランス取らなきゃ、やってらんねぇよ」
真っ赤になったエレオノールがぽつりと呟いた
「……お、同じ事……おねだりするのよ……これで良い?」
エレオノールがそっぽを向いて、デルフが思いっきりカタカタし始めて笑いだした
「わっはっはっは!それはおもれぇ!乗った!姉ちゃん存分におねだりしちまえや!いやぁ、相棒も罪な男だねぇ」
こうして二人は盗聴に気付かず、のんべんだらりとしている
と言っても、リラックスしてるのは才人の方だけで、シエスタは確かに元気が無い
ちなみに暗殺者が出る様になってからは、ルイズの部屋のみではなく、寝床は毎日変えている
才人の安全の為に不承不承頷いたルイズだが、そのまま自身の使い魔の愛人の肯定になってしまったのは非常に腹立たしい
ちなみにコルベールの部屋にも泊まっているが、断じてそういう事はしていない
寧ろ、対策の肝はコルベールと練ってる為に、才人的にはコルベールの部屋が一番良かったりするのだが、却下された訳だ
キュルケやモンモランシーは大変喜び
「このままずっと続かないかしら?ダーリンと一緒に寝るのって最高!」
「本当よね。お陰で肌の張り艶も良いし、自分の匂いがエロいのが解るわぁ」
「あ、解る解る。本当にエロい匂いになって来たわよね」
「女って、やっぱり愛されないと駄目ねぇ。ミスヴァリエールもそう思うでしょう?」
「……そうね」
二人共に上機嫌である
シエスタは共同部屋の為に、才人の宿には出来なかった
つまり、彼女達はその差が出たと認識したのだ
才人が隣に居るだけで、全然違うのを認識してしまってる為に、一番力の無いシエスタこそが、一番参ってしまったと皆が判断した
男が自然体で居るだけで安心する
そんな男になりたいものである

シエスタがどうしたいか解らない為に、才人はシエスタに緑茶を差し出した
シエスタは黙って両手で飲んでいる
仕草も何時もと違う。相当参ってるのだろう
才人はどうしたもんかとガリガリ頭を掻いて、ドカッと椅子に座ったのである
「悩みが有るのか?収穫祭から帰って来て、元気無いみたいだけど」
「えぇ、ちょっと」
やっぱり、元気が無い
「俺は……力になれないか?」
「そんな事無いです。寧ろ、才人さんじゃないと……駄目です」
そう言って、シエスタは再び黙る
「う〜ん。俺じゃないと駄目だけど、中々話せないって、何だ?」
カチッとデルフが出てきた
「そりゃおめえ、メイドの嬢ちゃんの年齢なら結婚だろ?結婚。領主様に見初められちゃったの!あんな男と結婚なんてしたくない!才人、私を拐ってってなもんだ」
こう言ってデルフはカタカタ笑い、シエスタがビクッと反応してしまう
「ありゃ?図星か?」
「はい、ここで相棒の取る選択はやっぱりメイドの嬢ちゃんを綺麗さっぱり領主の元から略奪が、やっぱり面白」
ガチッ
才人が立て掛けてたデルフに立ち寄り、無理矢理デルフを収めて言い放つ
「お前は面白いか面白くないかだけで判断してんじゃねぇ!」
才人が席に戻るとガチッとまた出てきた
「だってよぅ、俺っち剣だもんよ。面白い面白くない以外に、何を基準にすりゃ良いんだよ?」
「……それもそうだな。気楽な奴め」
才人はそう言って、更にデルフに追加の言葉を投げ掛けた
「助かったけど、話の腰はもう折るなよ?」
「へぇへぇ。ま、せいぜいメイドの嬢ちゃんを元気つけてやれや」
そう言って、デルフは引っ込み、辺りに香が漂って来た
モンモランシー製の、あの香の匂いである
「マジ?」
流石に才人が汗を垂らした
更にシエスタがキスをしてきて、何かを飲まされる
そのまま才人に寄り掛かったシエスタが、涙を浮かべながら、呟いた
「ミスモンモランシと、ミスヴァリエールに頂きました。沢山愛されて、すっきりしなさいって」
「…あぁ」
「お願い、何も聞かずに」
「…解った」
才人はそう言って、シエスタをベッドに抱え上げて横たえた

*  *  *
エレオノールはその頃、書類を書き書きしてたのだが、完全に上の空である
「えぇ!?あっ、ちょっと」
書類の上でペンがあらぬ方向に走り、書類が駄目になる
「胸ぇ!?胸かぁ!!うわっ、酷い!私は出来ないじゃないの!むきぃぃぃ!」
握ってたペンがギリギリと軋み、バキッと折れる
「え?やだ!?あれ、喰わえるの!?やだやだ、そんなの出来ない!」
二人きりの空気なので、エレオノールが盗聴してる事に気付いて無いので、やり放題である
「えぇ!?両脚が頭迄!?丸見えじゃないの!私まだしたことなぁい!!」
コルベールが授業終わって来る事を、すっかり忘れている模様だ
そして、コルベールは騒いでたので、そっと開けて直ぐに閉め、教員室に向かったのである
「…見なかった事にしますか」
やはり、コルベールは色々と経験を積んでると見える

*  *  *
才人にあられもない姿を晒したシエスタは、まんぐり返しの姿勢で貫かれていた
「才人さん。あ、すご、出ちゃう!私の中に出しちゃう!」
シエスタが才人の射精に合わせて、強烈に吸い込み、しかもシエスタ自身も射精の快感に酔っている
「もっと出したい。才人さん、私の中、凄く良いんだぁ」
才人の快楽が全て判るので、身体をくねらせ、離された脚をがしりと才人を挟み、更に才人が大好きな胸に才人の上半身を抱き締め、才人の快楽が伝わり、離れる事が出来ずにその場で腰をグリグリ押し付け、膣のうねりと共に射精を促す
「才人さんの感覚、凄い。私の中は柔々で、いつの間にか出したくなって……あ、駄目、来ちゃう!?」
才人の抱擁を思いっきり抱き締め、同調した射精感覚に完全に酔う
「はあぁぁ。いつも、こんな感じ?」
「…あぁ」
「才人さんの気持ち良いの全部気持ち良いだなんて、素敵なお薬です」
才人が身体を起こすとシエスタがガッチリと離さず、そのまま体位を入れ替え、シエスタが上の騎乗位になる
シエスタが身体を立てると、体重で沈み込み、奥の奥迄繋がり、入口をごりごり擦っている
「あ……堪らない」
本能で腰を前後に艶かしく動かし、ほんの三擦りでシエスタはビクビクと痙攣する
「はひ………はひ…」涙を流し、静かに喘ぐ

香と薬は、余り長い時間を効かせない様に、控え目だった

*  *  *
「ひっく、ひっく」
シエスタが正気に戻ると泣いている
才人は、ベッドの上で肩を抱く事しか出来ない
「シエスタ」
「…いつまでも、泣いてちゃ駄目ですよね」シエスタはそう言ってすっくと立ち上がって、てきぱきと身繕いをし、才人に緑茶を差し出した
「喉、渇きましたよね?」
「あぁ、有り難う」
才人がそのまま口を付け、飲んだ時には、こう言ったのだ
「才人さん、私の最後のお茶です。誰よりも愛してます」
才人が飲み込んだ時にはそのまま硬直し、ベッドからどさりと落ちた
「…大丈夫ですよ。私も逝きますから」
そう言って、シエスタは扉を開けて駆け出し、デルフが大声を上げた
「姉ちゃん今すぐ来い!緊急事態だ!よりによって、メイドの嬢ちゃんに盛られちまった!急げぇぇぇ!」
デルフが怒鳴り、エレオノールががたりと跳ねて扉を開け、フライでルイズの部屋に飛び、窓ガラスを割って飛び込み、ベッドから落ちて泡を吹いてる才人を見付ける迄30秒
才人のパーカーから解毒薬を抜き出し、無理矢理飲ませるのに、更に10秒
そこから、全精神力と魔力を投入し、一気に浄化を行うのに10秒
「ぐうぅぅぅ、間に合えぇぇぇ!」
気合いの言葉は、そのまま精神力と魔力の下支えになる
「良し、顔色良くなって来やがった。もうちっと気張れや姉ちゃん」
「言われんでも分かってるわよ!ボロ剣!誰か来なさぁい!」
だが、叫んだ所で授業中だ
「良し、落ち着いたみてぇだ」
「ぜぇっぜぇっ」
一気に消耗したエレオノールが肩で息をしてるが、ゆらりと立ち上がって外に出ていく
「姉ちゃん、相棒放っておいて、何処に向かう気だ?」
「決まってるじゃない。あのメイドを殺すの」
「待てこら。相棒が目を覚ました時に、なんて言う積もりだ?」
「知らないわよ。私の男の命に手を出したんだから、覚悟位してるでしょう?ヴァリエール舐めないで頂戴」
そう言って、ふらりとフライをまた唱えたエレオノールは、ルイズ達の教室に窓を破って侵入する
ガシャアン
派手に音が鳴り響き、女生徒だけの教室が驚きの目でエレオノールを見ている
先程あれだけの魔力を放出したのに、魔力が跳ね上がって、髪をゆらゆらと逆立てている
「ミスヴァリエール!教室を壊さないで下さい!」
そう言ってミセスシュヴルーズがたしなめるが、一切無視だ
「ちょっとヴァリエール、何事?」
キュルケが思わず立ち上がって詰問するが、真っ直ぐにモンモランシーに向かうエレオノール
「才人が毒を盛られた。今すぐルイズの部屋に行きなさい。私じゃ、応急処置がせいぜいよ」
一気にざわめき立つ教室
ルイズは真っ青で、モンモランシーはそんなのお構い無しでフライで飛び立った
「だ、誰がサイトに?」
「黒髪のメイドよ。今すぐに探しなさい。アンタ達、学院内で殺人未遂よ。さっさと探して私に引き渡しなさい。八つ裂きにしてあげるわ」
その言には一片の迷いも気負いもなく、やると決めた事を淡々と伝えている
「ちょっと待って下さい!姉さま!シエスタがそんな事…」
パァン!
近寄ったルイズに裏拳が入り、ルイズは姉が全く意見を受け入れない事を瞬時に理解する
ヴァリエールの怒りに触れて、無事な相手は居ないのだ
「良いから捜しなさい。自殺する気なのよ。自殺なんか絶対にさせない。私がこの手で殺す」
自殺と聞いて、キュルケは捜索の必要性が生じたのを理解し、ルイズの肩を後ろから引寄せた
「皆、捜索するわよ。確かに死なれて背景が解らなくなったら困るわ。ほら、メイドや他クラスにも手伝って貰って、家捜しだ」
キュルケがパンパンと手を叩いて、自殺を止めるには確かに捜索が必要と気付いた生徒達が立ち上がる
「良いですね?先生」
「はい、緊急事態です。授業は中断。全員黒髪のメイド……ミスシエスタでしたっけ?を、探しましょう。一刻を争うので、手分けして連絡役と捜索役に分かれます」
シュヴルーズがてきぱきと指示を下す間に、ルイズにはキュルケはこう囁いた
「シエスタがダーリンに毒を盛った。あり得る?」
「あり得ない」
「あんたの姉さんは、嘘であんな怒り撒き散らす人?」
「絶対無い。姉さまは、誰よりも貴族の誇りを重んじてる。だから、一部始終を目撃したんだと思う」
「有り得ない事が二つも起きた。なら、必ず理由は有る。私達でシエスタを見付けて、保護するわよ」
「解った」
「一つ聞くわ、ルイズ。シエスタは貴女の何?」
「友達よ」
簡潔に答えたルイズに、キュルケは大きく頷いた
「良い答えだ。さてと、私達の友達が困ってる。助けるわよ、ルイズ」
「えぇ。姉さまなんかに渡さない。私は友達を助ける」
そう言って、腫れた頬をそのままに、ルイズはキュルケと共に走り出した
友達が困ってる
だったら今は……走る!

*  *  *
シエスタは最後のノートに記入を終えると、日記帳をそっと抱き締めた
「今迄有り難う。じゃあ、才人さんが待ってるから、私も地獄に行かなくちゃ」
既に首吊り縄は用意してあり、台の上で輪に首を通して、台座を思い切って蹴飛ばした
一気に首が締まり、頸骨に体重が一気にかかりショックで折れる
「ひぅっ」
遠くなる意識の中で周りが騒ぐ音が聴こえていた

*  *  *
「シエスタ〜!返事してぇ〜!シエスタ〜!何処に居るの〜?」
ミミが火の塔の階段の影で首吊りを見付けたのは幸運だったのかも知れない
「きゃあぁぁぁぁ!シエスタ〜〜〜〜!」
ミミの悲鳴に気付いたメイジ達がフライで一斉に駆け付け、首吊りの縄が切られて下ろされた
「どう?」
「わからないわよ!早く水使い来てくれないと。とにかく治癒を」「そうね」
一気にメイジ達が集まって、口々に治癒を唱えていく
ミミはそんなメイジ達の邪魔にならない様に離れて、あるモノを見付けた
そう、シエスタの日記帳だ
ぱらりと捲っていき、最後の書き込みを見て、はたと止まり、涙を流し始めた
「シエスタ、シエスタ〜!お願いします、貴族様。シエスタを助けて下さい!お願いします!」
「五月蝿いわね!やってるから黙ってなさい!気が散る!」
「は、はいぃ」
シエスタに対し、学院の生徒達が懸命に治癒を詠唱していくと、水使いが他のメイジに抱えられて飛んで来た
「ちょっと道開けて」
どうやら三年の様だ。すかさず診察を始める
「治癒を始めてどれ位?」
「5分って所かしら?」
「頸骨は折れてるけど、発見が早かったせいで、鬱血は出てるけど、窒息症状は出てない。ギリギリだけど、何とかするわ。イル・ウォータル・デル」
一気に連続詠唱に移行し、精神力を促す為に敢えて目を瞑って精神統一に力を入れる
学院お抱えの治癒術士は志願してしまった為に、今は学生しか居ないのだ
次々に水使い達が魔力を温存する為に抱えられて到着し、一気に詠唱を始めた
そんな中、キュルケがルイズを抱えて飛んで来た
「シエスタ!」
「治癒の邪魔よ。近寄らないで」
水使い達にそう言われて、ルイズは頷いた
そして最強最悪の敵が到着する事に、キュルケと同じく構える
彼女は歩いてやって来た
魔力が溜まりに溜まって髪が逆立ち、周りに圧倒的な魔力を洩らしている
「捜索ご苦労。引き渡しなさい。虫の息だろうと、生きてれば構やしないわよ」
そう言って、手を差し出すエレオノール
その様は、正に金の女帝
余りの魔力に誰もがビビり、治癒に参加してない者達がサァッと引けた
あっという間に、キュルケとルイズだけになる
「ちっ、ヴァリエール舐めてた。何なのあの魔力。私の炎届くかな?」
キュルケはそう言って汗を垂らし、決然とルイズが宣った
「対抗しないと、シエスタが殺されちゃう。やるわよ、ツェルプストー」
「全く、ダーリンと一緒だと、本当に退屈しないわ」
その時、上からふわりと一陣の雪風が舞い降りた
そして、一気にエレオノールが雪風に包まれる
ビュオオォ!
「アイスストーム!」キュルケが喚声を上げ、助かった反動でついついルイズが文句を言ってしまう
「タバサ、遅いわよ!」
スタンとルイズ達の前に降り立ったタバサが、杖を真横に構えて戦闘態勢を解かない
「…説明」
「今は後!あの女帝を止めるの手伝いなさい!」
コクンと頷いたタバサが正面を見据えると、土の壁が出来ていた
キュルケが圧倒的なヤバさに詠唱を始める
「あれは……不味い、ルイズ、二発目!」
「えぇ、エオルー…」
そして、キュルケは爆炎を詠唱し、来るタイミングを計り、タバサはアイスストームの維持を力ずくで撃ち破られた
四方八方に壁が散弾として飛び散り、アイスストームを撃破しつつルイズたちにも向かい、キュルケが杖を振って爆炎を発動させる
一気に目前に輝く炎球が出来て散弾を燃やし尽くそうとするが、貫通してきたのである
思わず目を瞑ったキュルケの前に散弾は届かなかった
タバサが杖を立てて、エアシールドをかけてたのである
だが、その顔に余裕は無い
「タバサ、助かった」
「…追撃」
タバサも一杯一杯を主張し、キュルケは一気に後続を詠唱し始めた
「…カノ・オシェラ」
ルイズのエクスプロージョンが杖と共に振り下ろされ、エレオノールは杖を一振りして呟いた
「イル・アース・デル」
光を非常に強固な石の結晶たる水晶が上方を開けて覆い被さり、ドゴンと表面にひびを入れ、上方に全ての衝撃を逃がす様に砕いただけで終わったのである
「嘘っ!?虚無を」
ルイズの愕然とした表情に、女帝は一歩踏み出し、吐き捨てた
「随分安っぽい伝説ね。銃砲となんら変わらないじゃないの」
正に、女帝。使い方なんか、まだまだ手探りのルイズとは違い、魔法の扱いは圧倒的に年季が違う
「退きなさい。地面に立ってる時点で、アンタ達なんか何時でも殺せる」
「まだ終わりじゃない!止まりなさい、ヴァリエール!」
フレイムアローを複数呼び出し、数で攻める事にしたキュルケ
更にタバサも同調し、ウィンディアイシクルも形成され、一気に襲いかかる
「馬鹿ね、数とはこうやるのよ」
そう言ったエレオノールは杖を一振りすると、一気に桁が一つ上の数百以上の石の矢が全弾迎撃し、更に余剰分が三人を襲ったのである
「「「きゃああぁぁぁぁ!!」」」
一気にズタボロになる三人
しかも、きちんと全員急所を外され、打撲で済んでいる
ジャリッジャリッ
エレオノールの歩みを止められず、既に立てなくなった三人
だが、それでもルイズは傍を通過するエレオノールの脚を掴んだ
「お願い、シエスタを殺さないで!」
ルイズの嘆願に対し、エレオノールの声は非常に冷たい
「……何を言ってるの?アンタの使い魔の命が狙われたのよ?ヴァリエールのモノが狙われたのよ?死を以てあがなうのが狙った者達の末路よ。例外なんか、許さない。ヴァリエールなら、自分達を狙った相手は、敬意を以て、全力で殺しなさい」
そう言って振り切り、更に歩みを進めた先に、輝かしい頭が現れたのである
「其処までだ、ミスヴァリエール。この件は副所長として、私が預かる」
「退いて下さらない?私、今はミスタと言えども、手加減出来ませんの」
大人同士のけれん味で、その底に通じる相手の反応を伺う
「ヴァリエールは敵を滅殺が掟なのかね?」
「えぇ、例外はございません。はね除けられない者は、等しく磨り潰すのがヴァリエールですの」
大貴族として、必要な無慈悲
正に今、エレオノールは全力で出している
「私でも止められるか、怪しいな」
「邪魔だて致しますの?残念ですわ、ミスタ」
そう言って二人は杖を構えた所に、メイドが一人、乱入したのである
「おおおお待ちを〜〜!ミスヴァリエール!シエスタに是非とも御慈悲を〜〜!」
そう言って、ひれ伏したのはミミだった
「……メイド。邪魔しないように」
冷淡な瞳で撥ね付けるエレオノール
「おおおお聞き下さい!ヴァリエールの敵は、シエスタでは有りません!」
そこで、初めてエレオノールが止まり、ミミに視線を向ける
「戯言なら、あんたも殺すわよ?」
とにかくエレオノールが止まった
ミミはすかさず日記帳を出したのである
「ここここの日記帳を御覧下さい。シエスタは、人質を取られてたのです!」
エレオノールは日記帳を読み進め、最後の方で更に髪を逆立てる
「ミスタはこの日記帳、ご存知?」
「いや、知らない」
「……証拠不十分ね」エレオノールはそう言って、パタンと閉じる
そこに、タバサが何とかよろよろと歩き出して手を出した
「…見せて」
エレオノールは黙って渡し、タバサが読んで行く
「過去の件に付いては本当。私が保障する」
「肝心の件は?」
「本当。ガリアにも暗殺依頼が来ている。今回、私も請けて来た」
その瞬間、エレオノールの目がギョロリとタバサを睨んだ
「じゃあ、アンタも死になさい」
「続き」
まだ続きが有る事を示唆され、エレオノールが促す
そしてタバサは、サイレンスを周囲にかけた
「ガリアは、トリステイン貴族に金を吐き出させる事が目的。暗殺の成否はどうでも良い」
「…それで?」
「依頼貴族の中に、アストン伯があった。つまり、彼女はナイフ。敵じゃない」
「ほぅ、まさかガリアに迄……か」
コルベールが思わず唸る
「で、ミスタバサは才人君を暗殺するのかね?」
すると、タバサは首を振る
「内の騎士団の最強の四人が、成功率が四人がかりでも低いと嫌がった。花壇騎士を余計な争いで損耗させる訳にいかない団長は、この件は失敗で処理すると決めた。つまり、私は衝突して負ければ任務達成」
「成る程ね」
コルベールが頷き、エレオノールは考えている
「貴女、花壇騎士なの?」
タバサがこくりと頷く
「ミスタはご存知?」
「実は初耳だ」
そこで見回すと、キュルケとルイズも立ち上がっていた
「タバサが花壇騎士なのは本当よ。私も一緒に任務をした事あるもの」
「あたしは、タバサの任務で衝突した事有ります」
キュルケとルイズの主張に、エレオノールはやっと杖を収めたのである
「ふうん、一応証人は有りと。良いでしょう、一旦杖は収めます。但し、間違ってた時は、全員覚悟しなさい」
「「「はい」」」
エレオノールの本当の恐ろしさは身に沁みた
何で彼女を才人だけは御する事が出来るのか皆が疑問に思い、だからこそ、エレオノールには彼しかいないという事が全員に解ったのである

*  *  *


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Last-modified: 2012-03-21 (水) 17:42:45 (4419d)

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