XX1-542
Last-modified: 2013-06-19 (水) 06:29:46 (3964d)
ツケの払い
トリステイン軍は、サウスゴータ南部の前線で戦う前線指揮と、後方から戦局を見極める総司令部に分かれ、前線での即応が必要な判断をハルデンベルグ候が指揮し、ウィンプフェン総司令が参謀と共に竜騎士の運用、火砲の運用を統括し、最前線ではギーシュ達ド・ヴィヌイーユ独立銃歩兵大隊と装甲擲弾兵連隊が数を減らしながらも展開し、一進一退の攻防を繰り広げ、上空では、ルネ達雛鳥隊とジュリオ率いる精強なアズーリが、竜鉄騎と竜騎士隊と攻防を繰り広げ、砲戦は生き残りのマリコルヌが乗艦する戦列艦群と砲亀兵が、アルビオン型長口径加農砲群と互いの位置を探りながら撃ち合う展開を見せていた
アルビオン加農砲群を動かすのは巨体のオグル鬼であり、砲撃後に移動して中々に所在を掴ませないと来ていて、只でさえ短射程なトリステイン砲亀兵群では対抗出来ず、戦列艦を向かわせると、高低差を利用しても被弾する始末で、前面に立てない事が明らかになり、完全にがっぷり4つで噛み合ってしまい、トリステイン=ゲルマニア同盟側は、主作戦目的たる果断速攻を完全に潰された
そう、トリステインが新兵器群での圧倒した電撃戦を目指したのに対し、アルビオン側は既存兵器群を強化し、亜人で運用する事で人では運用出来ない重量兵器群を用いて、拠点防御に活用して見せたのである
アルビオン側の勝利は、トリステイン=ゲルマニア同盟の補給線を切らせる事。此れに尽きる
当然ゲリラ戦にて、ロサイス、サウスゴータ間を分断する作戦に出た
その作戦に従事したのは、撤退して来たワルドと鉄騎兵連隊だ
理由は単純、市街戦では徒歩で動かざるを得ない為、他のメイジ兵と変わらないからだ
一撃離脱で補給線を分断するこの作戦行動は、トリステイン総司令部の頭を大いに悩ませた
そう、補給物資が見る見るうちに無くなり、物資が欠乏し始めたのだ
だが、この戦争で一番被害を負ったのは、勿論サウスゴータ市民達であり、彼らの願いはトリステインだろうがレコンキスタだろうが早く戦争が決着し、平穏が戻る事で、この点に於いてトリステイン=ゲルマニア同盟側も、完全に支持を失っている
そう、所詮、貴族と貴族の戦いであり、彼ら平民には、迷惑以外の何物でも無かったのだ
既に、大規模侵攻より二週間が経過していた
* * *
才人は前線から外され、一週間以上をロサイスで釘付けにされていた。ルイズも声が掛からない為、開店休業状態である
その間、何をしていたかと言うと、朝練をした後は飲んだくれは大してせずに書類仕事をずっとやり、一息つけると仕事の邪魔をしない様に大人しくしていたルイズに声を掛け、いつもよりルイズに時間を割いていた
ルイズはもう、以前みたいに才人が相手してくれるのでご機嫌で、周りが戦争の最中であるのに関わらず、今の状態を楽しんでいる。それに、以前より露骨な接触が多くなった
マント一枚で才人の膝に乗り上げ、しな垂れかかり、才人は酒を飲んで誤魔化すと言った、あからさまなお誘いだ
ただ、夜中の才人は、以前の様にはなってない。外は寒いのに関わらず、暖房にかまけて才人の服を脱がしてルイズは全裸になり、サイトとの睡眠を堪能しているが、才人は特に身動ぎもせずに寝ている様に見えてたが、ある日ルイズは気付いた
ルイズはサイレンスを使えないので物音が聞こえて来る
すると、才人は寝ていても、直ぐに目を覚まして傍らに置いていたデルフや村雨に手を伸ばし、半身を起こすのだ
ルイズは才人を使っての一人エッチの最中に気付いたのだが、才人はその件に付いては何も言わない
だが、才人の行動が少し寂しいと、ルイズは感じてしまう。味方ばかりの戦地に於いてすら、常に周りの警戒を解けない。周りを一切信用出来ないからだ。どうすれば才人が安心して暮らせるか、ルイズにはきつい課題だ
才人は有名になり過ぎた。それも悪い意味でだ。アンリエッタが気に入る程、軍人が評価する程、貴族のやっかみに晒される
それでいて、本人は全く気にしておらず、火の粉が降り掛からない限りどこ吹く風で、流石に陰口に晒され捲ったルイズですら、ちょっと耐えるのは厳しいと思える程。平民の立場で功績を上げるのが、如何に自身の生死に係るか側で見て来て、自身に置き換えて考えると、まだまだ自分の魔法が使えない時代の立場の方がましと、感じてしまう
やっぱり才人には、ゲルマニアの方がずっと良いのだろうと考えてしまい、一人首を振る事が多くなった
もう人生設計には才人が組み込まれており、順調に行って卒業すれば、晴れてルイズは才人のお嫁さんの予定だ(注:ルイズの妄想内。早まるのも有り)
それには、今、アルビオンの戦場を勝ち、生きて凱旋する必要がある
つまり、既に功績は出してるから、才人と自分に任務が振られない=あたしの勝利までカウントダウン開始!てなもんだ
そりゃあ、気分が良くなるのも無理は無い。と言うか、平静になれと言うのが無理な話だ
ルイズは肩肘は張ってるが、まだまだ夢見る少女だ。自分の思う通りの展開になってしまうなら、つい口元が綻んでしまう
* * *
才人の自身への隷属化が明らかになった翌日に、ルイズは才人が居ない間にデルフを抜き、話しかけていた
「ねぇ、ボロ剣」「何だね、娘っこ」毎回カチンと来るが、ルイズはグッとこらえて話を続ける。今、相談出来る相手はデルフしか居ない
「あんた、サイトがおかしいの、知ってたの?」「相棒は最初からおかしいじゃねぇか」
デルフの言葉は全く以てその通り。ルイズはデルフの答えについどもってしまい、何とか意味を取り違えない様に言い換えてみる
「だだだから、ハルケギニアの常識からとかじゃなくて、使い魔の呪いとか、強制力みたいな、そんな感じのおかしさよ」「そりゃ知らんよ。だって、俺っちはガンド…ガンダールヴの相棒しか知らんもの」
デルフの答えに素直に頷くルイズ。確かに言う通りで、ルイズとしてはいきなり判断を保留にせざるを得ない
「じゃじゃじゃあさ、使い魔って、皆、主人が大好きよね?」「あぁ、そうだね。多分、いや、どうかね。あいつら、住んでた自然と違うせいで楽してる連中ばかりで、腐抜けてるの多いからな」「え?そうなの?」
ルイズは思わず聞き返すがデルフは相槌を打って見せる
「おうよ。使い魔の仕事は確かに面倒いがね、狩られる心配が非常に少ないから、それでも楽なんだと」「へぇ、じゃあ、サイトがご飯作らなくても良かったんじゃないの?」
ルイズの問いには、デルフは明確に否を出す
「いや、それは無いな。縄張りが変わって、いきなりは食料は集められねぇよ。嬢ちゃんは相棒の国に行って、金も無いし、知り合いの居ない所で、飯と住まいに苦労しないんだな?」「…無理です。すいません」
貴族の威信が通用しない土地で、今の様に振る舞えるはずも無く、また、何の施しも与えられない立場では、野垂れ死ぬのが関の山。まだ、エルフの住まうネフテスの方が、生きて行けるだろう
全てが全て無い々々づくしで、見知らぬ土地で住まうのは、冒険と言うには厳しすぎる
幾ら才人がルイズのお陰で知識を仕入れて来れたとしても、やはり順応性が非常に高いのだろう
そこで、話題が逸れた事に気付くルイズ。重要なのはそこではない
「ちょちょちょっと待ちなさい。今回の話題はそこじゃないのよ」「じゃ、何だね?」
「とととにかく、使い魔は、皆ご主人様が好き。とてもとても大好き。この点については異論有る?」
ルイズの問いに、デルフは暫く考え込んだみたいで暫く無反応。ルイズは以前の様に無視されたのかと思い、つい声を掛ける
「ねぇ、」「ちょっと、待ってくれや。ちょっくら、考え込んでる」「…うん」
何せ6000年の記憶を持つインテリジェンスソードである。記憶を掘り返すのも一苦労だろう。大部分を忘れているとは言っても、やはり色々な記憶の残滓を掘り返すのは、時間がかかると見える
ルイズが我慢していると、ようやくデルフから声が掛かった
「嬢ちゃんの問いだが、まぁ、あの、なんだな。好きの表現に幅を持たせれば、多分そうなんじゃね?」「…何よ?随分奥歯に物が挟まった言い方ね?」「モノには常に例外ってのが、存在するもんだ」
ルイズとしてはイマイチの返答だ。何せ、例外が服を着て戦うのが自分の使い魔と来たもんだ。虚無とは困ったものである
「もういいわよ。つまり、サイトはあたしの事が好き。とてもとても大好き。これで良いわね?ってか、良い事にするわ」「はいはい、それで本題は何かね?」
やっと本題に入ったので、ルイズは一気に核心を言う。じゃないとまた、話が転がってしまう
「使い魔の好きは、契約の呪縛なのよね?」「…どうだろうな?気にした事無いからな。嬢ちゃんも気にした事無いだろ」「だから、聞いてるんでしょ?」
「う〜ん…相棒、おかしいのか?」「昨日、聞いてたんでしょ?」「スマン、寝てた」
デルフの返答にがくんと崩れるルイズ。案外長生きの秘訣はこういう所なのかも知れない
「インテリジェンスソードが寝るだなんて初耳よ」「おりゃあ、特別製でね。最近魔法も食って無いし、精神力が貯まらない時は、寝て回復すんのさ」「変な所で、メイジと一緒なのね。って、嘘でしょ?武器屋で散々に煩さがられてたじゃない」
本当かどうかは分らないが、とにかくしらを切るので説明するルイズ。すると、デルフもふざけるのは止めて、声が真剣になり始める
「…つまり、嬢ちゃんはどうしたいんだ?契約解除なんて出来ねぇだろ?」「そこよ。あたしは、サイトが使い魔として好きでも、自分の気持ちで好きでも構わないの。だって、あたしがサイトの事……」
そこでどもってしまうルイズ。顔が真っ赤に染まっていて、デルフはカタカタ震えて、続きを素直に言えない少女に変わって言ってみた
「つまり、嬢ちゃんは、相棒にこまけぇ事はどうでも良いから、押し倒して欲しいってこったな?」「ちょっと、そんなに大声出さないでよ!サイトが帰って来た時に聞こえちゃうでしょ!」
一際声のトーンを落として注意するルイズ。そんなルイズがひたすら可笑しいのか、デルはカタカタとずっと震えている
「で、あんたはどうやれば、サイトがその…我慢出来なくなると思うか、参考にしないでもないから、試しに言ってみなさい」
デルフの震えが先程より一気に増えた。声を出せない位にウケてると見え、ルイズの頬がぷくうと膨らんでいる
「…くくくくくくくくく。いや、悪気はねえんだ、悪気は」「もう、嫌な剣ね」
ルイズが膨れっ面のままぷいっと横を向いたのに対し、デルフが自分の意見を言い出した
「まあまあ。嬢ちゃんなら、そうだな、全裸でしな垂れかかるのが良いんじゃね?」「ああああんたね、そんな露骨な真似、出来る訳無いでしょ!こう、お淑やかで、尚且つサイトにだけ伝わる、すんごいドキドキして、『もう駄目だ。ルイズが可愛過ぎて我慢が出来ない!』って、言うのを聞いてるの!」
ルイズのキラキラした目で才人の真似を見た瞬間、デルフはまたカタカタ震えている。どうにもこうにも我慢が出来ないのだろう
ルイズが我慢出来ずにとうとう杖を抜き、さっとデルフに向けるとぴたりと震えが止まる。うむ、やはりボロ剣の調教は杖に限る
「落ち着け嬢ちゃん」「あたしは冷静よ。冷静にボロ剣を溶かすと思っただけ」
ジト目で言われ、デルフは何とか、ルイズに考えを改める機会を提供するべく、声を発する
「ままて。相棒の好みで言えば……駄目だな。嬢ちゃんは胸が無い」「ももももう溶かす!ボボボボボロ剣なんか死んじゃえ〜〜!」「だぁ〜〜、最後まで聞け〜〜!」
涙目のルイズがぜえはあ言いながら唱えようとしたのを、必死に抑えるデルフ。ここからはデルフも命がけ、なんせ、ご機嫌を損ねたら虚無で吹き飛ぶ
涙目のまま顎でくいっと続きを促すルイズ。杖はデルフに向けたまま。流石にかなりヤバい
「嬢ちゃんの胸は無」「やっぱ溶かす!」「だから最後まで聞けっつうの!」
デルフも必死で説得し、ギリギリでの交渉が続く。…どうしてこうなった?
「とにかくだな」「…うん」「嬢ちゃんは胸が無い以外は、相棒の好みドストライクなんだよ」「うん?」
やっと、ご機嫌が上向いたか、ルイズは杖を下ろす。ふうと息を吐いたデルフが、続きを言い出した
「嬢ちゃんは、何か勘違いしてるな。女の魅力は胸だけじゃねえのよ。腰のくびれから、尻、そしてふとももから、つま先に至る迄のライン。嬢ちゃんはこのラインが完璧だ」「…そうなの?」
実はちょっぴり自慢だったのだが、見てる人は見てる訳だ
「よおく考えてみ?その曲線美、どうやって相棒に見せるんだ?」
言われてルイズは真剣に考える。曲線美に余計な装飾は一切邪魔になる。すると?
「…全裸…かな?」「だろ?」
やっとルイズは腑に落ちた。だがしかし、やっぱりとっても恥ずかしい
「そそりゃ、サイトには何度も裸見せてるし、ででもややややっぱり恥ずかしいというか、あああたしも淑女の端くれだし、常に貞淑じゃなきゃ、駄目なの」
そう言ってイジイジ真っ赤になりながら、両手の指を絡めて何とか抗弁してみる
『嬢ちゃんのこういう所は、本当に可愛いんだがねぇ』
そんな事を思いながら、デルフは何とか折衷案を考えてみる
「なら、そうだな…マント一枚なんかどうかね?」「…マント一枚?」
「そ、マント一枚。こいつなら、寝間着代わりと言えば良いし、ちらりと見える時が男心をくすぐる、非常に来る仕掛けなのよ。更に嬢ちゃんの柔肌で相棒の肌をスリスリしてみな。かなり来るんじゃね?」「…検討に値するわね」
咽を鳴らして真剣にルイズは答え、この度の作戦が決定したのである
* * *
才人は仕事では部屋に居らず、ルイズに気を使わせない様に、別の場所に移動すると、ルイズの作戦が始まる
先ずはすぽぽんと脱ぐ。そりゃもう、良家の子女の振る舞いなぞ、どこ吹く風だ。そしてマントだけを羽織り、才人の帰りを待つのだ
「おいおい嬢ちゃん、いつ帰って来るのか分らないのに、随分気が早いんじゃね?」
「るっさいわね。今すぐ帰って来るかも知れないでしょ?虚無を使い過ぎたから眠いって理由よ?文句ある?」
「いや、無いがね…」
本人の主張は決して誇張では無く、本当に寝てる時間が戦地で働き始めてから長い。才人が部屋で作業しないのも、ルイズの体調を慮って、静かにしている面もある
で、大抵はそのままウトウトとしてしまい、才人が扉を開くと、すうすう寝ているルイズに遭遇し、ルイズは目が覚めるといつの間にか時間が経ってる事に愕然としてしまう
「ちょっとちょっと、全然ダメじゃない?あんた、真面目に考えてんの?」
毎日不発でデルフに文句を言うルイズ。しかし、デルフも負けてはいない
「なあに言ってんだ?毎回嬢ちゃんが爆睡ぶっこいてんのがいけねんじゃねぇか。相棒はあれでも紳士だぜ?寝こみを襲うなんざ、薬に浸されてなきゃやんねぇよ」
「じゃあ、その…その気になる薬、用意しなさいよ」「…嬢ちゃん借金漬けになりてぇのか?」
怪訝な声に反応するルイズ。思わず聞き返してしまう
「…高いの?」「おう。市場価格は洒落にならん代物だな。なんせ、安価に出回ると、必ず女を奴隷に使う連中が後を絶たねぇ代物だかんな。子宝に恵まれる必要上、禁止にはならねぇんだが、どの国でも国策で高くしてんのよ」
「ふ〜ん」そう言ってルイズは押し黙ってしまう
才人の周りに、何故か媚薬関連が多いのは、アカデミーのヴァレリーのコネと、モンモランシーが薬品好きに他ならないからで、市場価格はちょっと厳しい代物になる
で、ルイズはモンモランシーがそんな薬を調合してる事は知らず、アカデミーのコネも無ければ、キュルケの様に実家で用意されて使い放題と云う訳にも行かない
正式にヴァリエールを継げば、お抱えのメイジに作ってもらえるだろうが、今はしがない学生の身分だ。もうチョイ、モンモランシーと新密度を深めておくべきだったのかも知れないが、今迄ゼロとして馬鹿にされ続けて来たルイズに、秘中の秘は中々明かせないのも、モンモランシーの立場では当然だろう
今は手持ちの武器で何とかするしかないのだが、如何せん経験値不足は否めない。アニエスは、誘いのテクニックについては全く授業をしていないのだ。いきなりすっ飛ばして、イイ事しちゃってしまってる訳である
それでも、ルイズは頑張った。ちょっとでも才人が起きてる時には子猫みたいにマント一枚でじゃれてみるのだ
「サ・イ・ト」
ソファーに座ってる才人に言いながらしなだれかかり、全裸で子猫の様に甘えてみるルイズ。部屋の中では才人も武装を解いてる時が多く、ルイズの全裸はかなり効く。思わず固まってる才人に身体をスリスリしながら言うのだ
「お仕事終わった?なら、ご主人様のご機嫌を、と・り・な・さ・い」
才人には何故か語尾にハートマークが見え、更に小さいさくらんぼがふたつ、ちらちらと控えめなのに強烈に自己主張し、思わずごくりと喉を鳴らしてしまう
「…どの様なご機嫌取りが宜しいでしょうか、マイロード」こう言うので精一杯な才人。だが、ルイズの攻撃は止まらない
「んとね〜、姉さまやちい姉さまにどんな事してるか知りたいから、実践して見せて」
冷や汗だらだらな才人。思わず寝酒に用意してた酒瓶に手を出し、一気に飲み始める
才人の行為にムッとするルイズだが、ここは我慢の子。良い?ルイズ。相手は強敵よ。短気では決して撃墜されないから、辛抱強く戦うのよ
小さな、だが申し訳程度に膨らんでる事自体が魅惑的な事に、全く気付いていない膨らみに決意を秘め、更なる攻勢に出る。才人のジーンズのファスナーを降ろしボタンを外し、更に蛇の様に才人の身体を這いつつ、首筋を舌先でつつうと舐める。更に股間の硬くなってる分身は、ルイズの股がきちっと捕獲し切ない刺激を才人に与え続け、才人は何も言えない
「ど・う・し・た・の・か・な・?」
挑発的にちろちろ舐めながら股間を自身のおつゆでヌルヌルにしていくルイズ。こんな事までアニエスと会得していたとは。アニエスの性教師役は凄まじい
「ルイズ…」「使い魔の世話は、主人の仕事だもん。問題ないもん」
ルイズがそう言いながら刺激を止めずにいるとあっさり才人に限界が訪れた
ぴゅっと精が迸り、ルイズのおなかをヌルヌルにして行き、才人はびくびくしている
「あぁ、ホントに駄犬なんだからぁ。もう、だらしない犬ねぇ」
才人の荒い呼吸を耳に心地良く聞きながら、少女は身体をずらして迸った精を指で掬って舐め取り、まだびくびくしている才人の息子にカプリと咥え込み、綺麗に舐め取り始める
アニエスに『いいか、自身の男の精は一滴も粗末にするなよ?お前のライバルは、全員粗末になんかしないからな?子種を粗末にする女に、子宝は無いと思え』アニエスの言葉は、ルイズに強烈に沁み込んでいる。母に手紙で聞いた事にも、似た様な事が書いていたからだ
『私は出来にくい性質で、貴女を授かるのに、それはそれはお父様に大変なおねだりをしたのですよ?旦那様の分身は、自分を幸せにしてくれる素晴らしい物なんです。大切になさい』
子供を授かるのに苦労した母。苦難を得て今の地位にいるアニエス。人生の先輩の言葉は、非常に重い。ルイズは教えに忠実に、才人の子種を綺麗に舐め、吸い、せめて自身の栄養にするべく、全てを舐め取っていく
「ん、塩味」ルイズの言葉に才人は苦笑する。そのまま、ルイズを持ち上げて、ベッドに運び込むと軽く放り投げ、自身も横になる
「きゃん、サイト、もう少し優しくしなさぁい」
そう言って、横になった才人の身体にすっぽりと収まり、可愛いおしりがマントのめくれて見えると思ったら、ルイズの手が伸びて来て、才人の分身が捕まれ、お尻の割れ目に挟まる
「ちょ、ルイズ、止め。敏感なんだって」「なら良いじゃない。発情犬は、ご主人様がい・ち・ば・ん・な・の」
そう言いつつ、主人相手は痛み以外に快楽も跳ね上がるのねと分析もするが、ルイズにとってはご褒美以外の何物でも無い
「だ・け・ん、だ・け・ん、ハツジョウケン。犬が交尾したいのはだあれかな?」
ルイズは歌いながら腰を動かして、一気に才人を追い詰めると、お互いあっという間に来た。ルイズの小さな手が、股間に挟まれてるモノがお豆に当たるように補助しつつ腰をくねらせるつと、びくびくと震えたかと思ったら、自身の絶頂と一緒に才人も吐き出した
「もう、ばかぁ」そう言って、迸る精を全て手で受け止めて舐め取り、身体を入れ替えてプリッとしたお尻を才人に見せつつ、自身は才人の分身に噛み付いた
「んん…もう、世話焼かせない」言いながら、ルイズの口撃は全く止まない
萎えたと思った分身がまたガチガチになり、ルイズは正直な息子に話しかける
「あたし相手は無尽蔵なのね、えらいえらい。主人と違って、貴方は良い子ね。犬も貴方並に良い子になれば良いのに」
そう言ってたら、反撃が来た。股間をべろりとひと舐めされたのだ
「ひゃん!?」そのまま才人の舌がルイズのお豆を中心に尻の穴まで舐められ、感じた事の無いレベルで身体の制御が利かなくなり、ビクンビクンと痙攣し出す
「〜〜!!」声にならない声を上げて、洒落にならない絶頂を繰り返し、頭が真っ白になる
真っ白になりながらも、才人の分身を離す事はせず、口の中に頻繁にちょっと塩味な物が注がれ、無意識にんくんく飲み込みつつ、股間を這う刺激に身体の制御を手放した
『主人も、使い魔が一番感じる…の…かも…こんなの…本番やったら…耐えられない…。始祖ブリミルよ、歓喜ありすぎ、耐えられない』
そう思いつつ、歓喜の中で意識を手放した
そんな中、ついに命令を下された。命令書にはこう書かれていた
ミスゼロ、陸戦隊の増援としてサウスゴータに赴き、現地で制圧任務に従事せよ
「ありゃりゃ、時間切れだぁね」「もうちょいなのに…何で、こうなるのよ〜〜〜〜!」
命令書を両手で持ってわなわなするルイズは、つい絶叫してしまう
…そりゃ、戦争しに来てんだからしょうがないだろ
* * *
アルビオンの首都ロンデニウムでは、レコンキスタ総司令たるオリヴァー=クロムウェルと議会議員、それに陸戦司令のホーキンス将軍(将官級は、陸軍は将軍、艦隊は提督と呼称)の報告を聞きながら、護国会議が開かれていた
議会招集が叶った背景は、勿論戦線の膠着化に成功したからである
「では、現在の戦況説明から、問題点を指摘します」
ホーキンスの大軍を叱咤する声は議場に行き渡り、寝ぼけ眼の議員ですら、思わず背筋を伸ばしたくなる
「最初は弾薬の不足。現在マスケット銃や擲弾に回せる火薬が尽きました。全てを火砲に回しており、予断は許さない状況です。現在、対抗手段として、トリステイン補給隊の弾薬を鉄騎兵にて私掠してますが、砲に回すので精一杯。雨あられと撃てはしません」
ホーキンスの言葉に議員の一人が挙手をして噛み付いた
「馬鹿な事を。一般兵はどうなる?」
「対策としては、ロングボウのアーチャー大隊とクロスボウの一般兵に武装を切り替えております。これはレコンキスタ蜂起の時代から続いた弾薬不足の状況を鑑みて、クロスボウの配備を解かなかった事が巧を奏しました。元々ロングボウは、マスケット銃より高威力長射程で連射が利きますが、アーチャーの育成は時間がかかる為、温存していたのです。が、今回投入した事により、確実に戦線の押し戻しに成功しました」
元々、アルビオンのロングボウは評価が高く、鎧兜を物ともせずに貫通する弓兵の脅威は広く知られている。メイジでなければ対抗は難しく、アルビオンの国情に沿った武装の変更と言える
「次に資金。こればかりは、我々軍では如何とも出来ません。給料や物資代金が払えなければ早晩瓦解します。現在の膠着状態は戦略目的に完全に合致しており、敵遠征軍の補給路に莫大な負担を強いており、敵軍の撤退並びに我が軍の勝利は目前であると言えるでしょう。ですから議会の皆様、追加資金の法案に賛成して頂けないでしょうか?」
こう言って、ホーキンスは状況報告を締め、議員達の反応を待った
議員の一人が、クロムウェルに向けてきた
「総司令たる護国卿のお考えは?」
「そうだな…。既に国家予算の2/3を戦費で支出しているから二の足になるのも無理は無い。現時点でも勝利は確実かと余も思うが、まだ、これでは踏ん切りがつかぬ者も多かろうに思う」
そう言って、わざとらしく顎に手を持って行くクロムウェル
「まだ明かせぬが、魔法を用いた作戦案に、もう一つ腹案が有る」
おおっと、どよめきが起きる。喧騒が静まる頃を見計らって、更に止めを刺す発言を出したのだ
「ガリア」
クロムウェルはそう言っただけだった。だが、ホーキンスはその言葉だけで事態を把握し、議員の大半もガリアの言葉だけで、湧き上がった。ガリアの参戦、ガリアの参戦だ
「待て、者ども落ち着け!護国卿は、ガリアがアルビオン側で参戦するとは言ってない!クロムウェル卿、確約を得ているのですか?」
その言葉に、クロムウェルはさもつまらない様に答えたのだ
「あぁ、そんなのは単純だ。我々を勝たせなければ、ガリアの貿易代金を踏み倒してしまうからな」
そう言って肩を竦めてみせると、盛大に笑い声が起き、追加資金の法案が賛成多数で可決され、ホーキンスは、安堵の息を心の中で吐いた
反対に回った者達はこう思ったのも事実だ。別に請求相手がクロムウェルでなければならない理由など、何処にも無いではないか、と
* * *
ロマリアの大聖堂では、聖エイジス32世がアルビオンの戦況報告を受け取り、難しい顔をしていた
現在、ジュリオは作戦行動中で連絡が制限されていて、各地に散っている情報員からの報告のみだ。才人はゼロ機関所長である為、連絡の制限はされていない
「‥上手くありませんね。やはり、地の利は如何ともし難いですか‥」
虚無とて連射は利かないし、魔法だけで戦争は遂行なぞ出来ないし、軍は糧食を大量に消費する。何もしなくても維持費として飯代が飛んでいくのだ
トリステインが常備軍を殆んど抱えられない理由は、やはり重い枷となって圧し掛かっているのを、ヴィットーリオは遠いロマリアの地からも把握出来た
一息つくと椅子に腰かけ、神の恵みたる命の水(葡萄酒)を飲み、神に感謝を捧げるが、生産してる者には思いを馳せない。作ってるのは神ではなく、農民だ。得てして宗教者には、作った人達の恩恵では無く、神の御業と思い込む節が非常に多い。若しくは、神の恩恵にしておきたいと、言った所だろうか
そんな事を思いつつ、ヴィットーリオは呼び鈴を鳴らすと、世話役の侍女達が4人入って来た。教皇には、敬遠な信徒から世話役が4人任ぜられ、普段からの世話を全て賄われている
敬虔な信徒の女性にとって、教皇の世話役を仰せつかる事は最大の慶事であり、仮に選ばれようモノなら、一族含めてのどんちゃん騒ぎになる程だ
教皇の世話役になる者は、次代のマリアになる事が約束されていて、信徒の親はマリアになった娘を一族の誇りにする
宗教者は婚姻不可である。教皇が戒律を破る事は有り得ない。つまりは、一番神に近い神の代弁者の側で世話役をしていた少女が処女懐妊するのは、神の奇跡に他ならない、と言う理屈だ。例え実態が下世話な人間共の想像通りだとしても、建て前的にはそんなものである
母がマリアになった場合、子供は宗教者の道が勝手に用意され、他の道に進む事は基本有り得ない。マリアの子が、神に殉じるのは当たり前って事だ
だが実態はそうではない。マリアの子の縁戚であれば、宗教界に発言力と影響力を維持できるからであり、教皇の世話役選定は文字通り、血で血を洗う凄惨な暗闘が繰り広げられる事も珍しくない、危険な代物なのだ
そこで、聖エイジス32世は一計を案じた。貴族達のごり押しにめげず、孤児になった貴族の少女を世話役に選定し、縁戚の影響力を一切排除する手段に出たのである
就任当時、若い世間知らずの教皇の背後で隠然と権力を行使する未来を見ていた老獪な貴族信徒は、出鼻を挫かれた
この一件から、旧来に拘らない新教徒教皇と揶揄される様になったのである
本来は平民でも良かったのだが、自身の出自のせいで、ヴィットーリオは平民出身の世話役は断念せざるを得なかった。老獪な枢機卿の集まるコンクラーベで選出された理由でもある、虚無の血統である。コンクラーベに欠席したマザリーニを除いた枢機卿達だけは、ヴィットーリオとジュリオが虚無の系統と使い魔であることを知っている為、多少のご乱行は必要なので目を瞑っている
虚無を次代に継ぐ必要上、自身の心情はどうあれ、ヴィットーリオは子を成さねばならない。虚無の発現者の子孫が、高い確率で次代の虚無を継ぐ。ブリミル教徒のヴィットーリオには、戒律より、虚無の血を次代に残す事が優先されたのだ。背景としてはこんな所だ
世話役の少女達が、尼僧服のまま、ヴィットーリオを取り巻いた
「聖下、お呼びで」「‥うん」
世話役の少女達には、若い教皇がかなり変なのを知っていた
身体に触れられたがらないし見せたがらない。風呂もトイレも就寝も世話役が付きっ切りが本来の筈なのに、絶対にしない
聞いたら「子供の時に火傷を負いまして、とても見せられない位の酷い火傷が有るんです。あんまり触られると痛いんですよ」
そう云う理由なら致し方ないと頷いている。魔法が万能では無いのは、メイジたる自分自身が良く知っている事だ
そして、メイジが本気なら、見たら怖気を放つ火傷位、簡単に作れるのも事実だ
ヴィットーリオ自身の人生も決して安楽な人生ではない事を知った世話役の少女は涙を流しながら言ったのだ
「なんてお可哀想な聖下。私達は聖下に殉じる覚悟でございます」「ありがとう」
今日も聖下の神聖な御口に、少女の口が重ねられ、別の少女がなるべく身体に触れない様に股間の部分だけ刺激する
そうしていると、彼の股間が盛り上がってきて、少女はシスターの服を捲り上げると尻を向けて四つん這いになり、別の少女が法衣の直垂から手を分け入れようとし、ヴィットーリオの手に阻まれ、自らイチモツを取り出した
少々小さく、確かに彼の言う通り、男根にも火傷の痕が有る
男だけ飛び出した状態で、少女の尻に当てて一気に飲み込ませる
「ん、ん」少女の方から腰を振り、ヴィットーリオが我慢出来ずに射精すると、少女が入れ替わり、同じ事が繰り返され、淡白に終わる
少女達はマリアになる為、ヴィットーリオは楽しんで無い事だけは明白だ
そのまま、彼女達の世話を受けつつ、表情を消している
内心はジュリオにすら判らないものがあった
* * *
ガリアの首都リュティスの王宮では、無能王が珍しく不機嫌の様を見せていて、モリエール夫人が何とかご機嫌を取ろうと話しかけるが、ブスッとしたままである
「あの、陛下、気を取り直して下さいまし」
そう言っても、無能王たるジョゼフは、ブスッとしたままだ。何か上手くいってない案件が有るのは窺い知れたが、モリエール夫人に話さない所を見ると、政治案件の何かであろう
ジョゼフは、なんだかんだで話す者と時をきちんと区別しているのが、モリエール夫人にも何となく分かって来た。何せ、本当の政治の機密になると、追い出される事もしばしばで、何故無能王と呼ばれるか、側で見てると全く理解出来ない
その時、侍従が現れてジョゼフの耳に囁くと、モリエール夫人を退出させ、代わりに自分の娘たる北花壇騎士団長イザベラが現れ、臣下の礼をする
この様な、正に自分みたいな仕草がジョゼフにはイラつく原因だが、人生が違っていたら恐らく絶賛したんだろうなと、ジョゼフは胸中を口の中だけに留める
「報告は?」「はっ。両用艦隊爆発事故の件は、雪風を表に出し、地下水で内偵した所、怨恨でギアスを用いていた者を雪風が捕縛、官憲に受け渡し後、地下水で処分しました。ロマリア側の資金輸送に関しては、引き続き元素の兄妹で封鎖中。他の花壇騎士で、現在人身売買ルートを調査並びに摘発中。これに付いては、ゲルマニア憲兵隊とトリステイン銃士隊から非公式に協力が得られておりますが、ロマリア側は相変わらず協力を拒否しており、状況証拠はだんだん積もっております」「ご苦労、下がれ」「はっ」
更に国務大臣を呼び、出頭すると、手短に伝える
「両用艦隊に出撃命令。仔細は追って指示する。アルビオンに外海経由で向かえ。哨戒に引っかかる下手は打つなと厳命しろ」「御意」
一礼をして退出させると、すかさず次の指示を飛ばした
「通商大臣を呼べ」命令に速攻で通商大臣が現れ、臣下の礼をすると、ジョゼフに促されたので語り出した
「アルビオンの件で呼ばれたと存じます」「察しが良いな。話せ」
「はっ。現在までの対アルビオン貿易収支は大幅な黒字になっており、資金貸し付けの利子と合わせて莫大な利益になっております。陛下がトリステインの封鎖作戦を利用して、高値で売り払う手段が功を奏しました。仮に貸し付けが倒れても、既に十二分に資金回収は成っております」「なら、問題は有るまいな?」「御意」「下がれ」
そこまで命令をすると、ジョゼフは箱庭を用意させ、気分良く遊び始めた
人払いが解かれるとモリエール夫人がすかさず入って来て、先程とは段違いに機嫌が良くなっているジョゼフに語りかけ
「あら陛下。ご機嫌になられまして?」「おお、そうだな、夫人。余はいつも明朗な悩みと無縁の無能王だ。不機嫌になるなど有り得ぬのではないかね?」
そう言ってつかつかとモリエール夫人に歩み寄り、逞しい腕で無理やり引き寄せる
「あら、まだ明るいですわ」「何を言う?美しい物を愛でるのに、時間は関係無いだろう?」
その場で襲い掛かられるモリエール夫人を助ける者は皆無で、辺りに嬌声が響いた
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