XX1-626
Last-modified: 2013-07-25 (木) 21:08:29 (3927d)
戦場の激化と意図的な退却はトリステイン側にも知られる事になったのだが、手を弛める訳には行かないのがトリステインの戦略だ
防ごうと思えば防げる筈なのに、何故かしない
何所かで逆撃の機会を伺っているのは簡単に予想出来たが、哨戒範囲には何も発見出来ず
素直にレコンキスタが放棄した所に、進軍するしか無かった
サウスゴータの占領地を広げる度に、補給線は伸びる一方、司令部はだんだんと手詰まりを実感して行った
* * *
一方アルビオン側はアルビオン側で対応に苦慮している
「総司令、これを」「うむ…これでは間に合わぬではないか」
シェフィールドに渡された書類を見て、クロムウェルはつい愚痴ってしまう
「タイミングを合わせなければ、包囲殲滅なぞ出来ん。ガリアの両用艦隊は遅過ぎる。一体何をしていたのだ?」
「書いてあるでしょう?テロのせいで一週間出港が遅れたと」「むぅ…」
クロムウェルは唸ってしまう。ガリアから極秘で参戦の通知が届いた時、クロムウェルは歓喜を爆発させ、その様をシェフィールドは冷ややかに見ていた
暫く小躍りしていたクロムウェルはすかさずホーキンスに指示を飛ばし、ホーキンスは中味を知った途端、命令を変更している
クロムウェルはシェフィールドの態度に特に感慨を見出せず、椅子に深く腰を沈める
「ふん。しかし、今頃になって参戦とは、ガリアの国王は何を考えておるのか?」「さあ?」
実際にシェフィールドは知らないので、率直に答えたのみで、クロムウェルは特に何も言わなかった。意味のある返答なぞ、最初から期待していなかったからだ
「さて、奴らをサウスゴータに深く侵透させることには成功したわけだが、そちらの準備を聞こうか?」「アンドリバリの指輪を渡しなさい」
ビクっと、少し揺らいだが、言われた通り渡すクロムウェル
「タイミング良くやるには、時間が必要よ」「了解した。時間稼ぎをすればいいのだな?」
「ええ、両用艦隊が到着する時間位」「ふん、降臨祭時期か。丁度良いな」
クロムウェルは決めて、命令を下した
「誰か、トリステインに使者を出す」
* * *
アルビオンからの休戦の使者にトリステイン=ゲルマニア同盟側の司令側は慌てたが、同時に安堵の溜息を吐いた
降臨祭期間中の休戦は、一息ついて体勢を整えるには絶好の機会だったからである
当然、速攻で大規模な補給の要請と共に本国に送られ、本国トリステイン閣議は紛糾する
「約束破りのアルビオンの約定なぞ信用出来るか!即刻進軍すべし」「一理有るが、現場では物資が持たぬと悲鳴を上げている。現状は無視するのか?」
「そんなものは現地徴発するべし」「我々は夜盗の群れではない!馬鹿な事を言うな!」
杖を持っていたらお互いに抜いてただろう。武装禁止が功を奏し、互いに掴みかかるだけで済んだ
「止めんか!いい大人がみっともない」一喝したのはマザリーニであり、掴み合いを演じたのはデムリ財務卿と、新しく法務卿に地位に就いたジョゼフ=ギヨタンだ
新米のギヨタンが積極交戦を主張し、デムリが反対の姿勢を取り、掴み合いに発展してしまった
お互いに恥じ入ってたが、相手に対して謝罪は無い
マザリーニは溜め息を吐きながら、ゼッザールに話を向ける
「軍としての意見は?」「では、一つだけ。軍隊は胃袋で前進します」簡潔に要点だけ述べ、マザリーニは頷いた
「聞いての通りだ。補給が無ければ動かん。度重なる補給線の攻撃で、前線の疲弊は我々の想像を超えている。補給を整える良い機会だと思われる」
流石に礼拝ばかりの日々だったが、今回はアンリエッタも出ての御前会議で、皆が陛下の顔色を窺っては居たが、言う事は言って、中々に白熱している
一通り意見が出た所で、マザリーニが纏めて見せた
「一通り出揃ったな。先にゲルマニアからの返答だが、矢面に立っているトリステインの方針に従うとの事だ。休戦反対はアルビオンの条約破りが休戦なぞ守る訳が無いと。まぁ、納得できる意見だ」
続けて、皆を見回して更に繋ぐ
「休戦賛成は、昔からの慣習である、降臨祭前後は戦わず、敵味方に分かれた現在でも、始祖ブリミルの子たる我らが降臨を祝うのはブリミル教徒としての義務であり、権利である…と。更に言うなら、この機を利用して補給線を盤石にし、サウスゴータ以南の支配権の確立…と言った所だな。ここ100年で領土拡張は一度もなっておらず、正に快挙と言えるだろう。だが、当然支出は増えるし、内政が好転したと言っても、この支出は膨大な物になるのは疑いない。領土が増えれば、収入が増えても支出も増える。痛し痒しと言った所だ」
マザリーニの言葉に、閣僚は思わずごくりと生唾を飲み込んでしまった
「さて、決を採ろう。休戦に賛成の者、起立を願う」
がたたっと椅子が音を立てて立ち上がるが、真っ二つになった
「これは…」
今回軍人のゼッザールが決に参加している為、奇数で取れてたのが取れなくなったのだ
「陛下、ご裁可を」
マザリーニの促しに、上座から議論を聞いていたアンリエッタは、眼を閉じてから見開き、命令を下したのだ
「これ以上前線に負担を強いる訳には参りません。アルビオンが信用ならないのも事実ですが、兵を休ませなければ、満足な結果も出ないでしょう。当然、現時点での撤退は、全てが無駄になる行為になりますので、考慮から除外するのも当然だと思います。ですから、休戦して、一度兵を休ませた方が宜しいかと」
全てに配慮した物言いに、マザリーニは感極まったのだが、唇を引き結んで命令したのである
「王者の決は下された。我らの陛下は、全てを慈しむ慈愛の女王である。陛下の命に従う名誉は、末代までの全ての我らの誇りとなろう」
マザリーニの宣言に全員立ち上がって、敬礼したのだ「「「ウィ」」」
* * *
お互いを信用せぬまま、とにかくも休戦協定は結ばれ、現時点での占領範囲は、降臨祭終了迄は、占領地域軍の管轄下に置かれる事に合意を得たのである
アルビオンから一時的でも領土を奪えたトリステイン側は、サウスゴータ並びにロサイスの住民にトリステインに帰属した方が得だと言うのを理解させる為に腐心した
軍隊が胃袋で前進するなら、市民の支持は金で買える。つまり、彼らから、物資を買い取る事にした
丁度貨幣が不足していた住民達は、小さいトリステインエキュー金貨でも文句は言わずに売ってくれる様になった
更に追い打ちが出た。トリステインのトリスタニア市民の内、無事で営業可能なサービス店舗の店を中心に、サウスゴータに送り込んだのである
休戦協定で攻撃が無くなった為、ゼロ級と輸送船団が一気に動いて、物資と人員を三日で大量に送り届けて見せたのだ
元々ロサイスに積んでいたのは輸送船団に、トリスタニアの店の従業員と手持ちの物資を、ゼロ級で昼夜ぶっ通しのピストン輸送だ
当然輸送量が足りず、ゼロ機関のオストラント迄駆り出され、更に仕事が遅れる原因になってしまった
* * *
「はあっ、はあっ」
店はサウスゴータ便に向かい、店の仲間とは経由地のロサイスでゼロ級から降りた少女は一人、巨大な港湾を走っていた
風に棚引く長い髪の色は黒、胸の大きさに歩く男達の視線が集まる位の大きさだ。普段は愛嬌のある顔を、今は真剣さが滲み出ている
「あの、すいません、レドゥタブールは?」「あっちのドックだよ」
通りすがりの兵士に聞いて、お礼もそこそこで、黒髪の少女は指し示された場所にまた走って行く
息が弾み、白い呼気が風に流れて行き、休戦からの風物になっていた
「今、そっちに男を追いかけて来た姉ちゃん行ったぞ。あんまからかうんじゃねえぞ」<野郎はからかっても構わねえだろ?>「丁重に祝福してやれ」<了解>
遠話で同僚に伝えた兵は、何人目か数えてみた
「ひい、ふう、みい、…これで十人目か?」そこまで考えて、首を振る「想い人、生きてると良いけどな…」
遺品を持って泣きじゃくる娘達の姿もまた、風物詩になっていたのだ
* * *
必死に走って来た少女がお目当ての船に辿り着き、余りに乱れた呼吸を整えてから、タラップを歩いて渡り、受付の兵士に話しかけた
「あの…レドゥタブールにジュリアンって兵、乗ってませんか?」
必死の形相で受け付けの兵士を睨みつけ、落ち着かせるために両手を胸の前に掲げて抑える動作をして見せる
「マドモアゼル、落ち着いて。ジュリアンなんて名前は腐るほど有る」
はっと気づいて、すかさず特徴をつらつらと述べ始める
「えっと、郷里はアストンのタルブで、私と同じ黒髪の少年兵で、今回志願したばっかりの子で、ちょっと抜けてるけど憎めなくて、いざという時ほど頼りになる…」一気にまくしたてる少女に、また同じ仕草をして見せた
「どうどう、落ち付いて。判った判った。ボーイの黒髪のジュリアンだね?まず、先に言って置く事が有る。レドゥタブールは激戦を潜り抜けたせいで、戦死者を相当数出している。ジュリアンが戦死していた場合、君には事実を伝えて、最後に遺品を渡す事になるかも知れない。それでも構わないかね?」
ひっと顔を歪めた少女は、真剣にこくりと頷いた
「…お願いします」「分かった。係りの者に伝えるから、ちょっと待っててくれ」
少女には、正に悪夢のような時間が起き、中々時計の針は動かず、両手を握り締めて必死に祈っている
「神様…どうか…」
そんな中、呼ばれて来た黒髪の少年兵が、アッパーデッキの受付にやって来た
「空尉。どの様な用でしょうか?とにかく行けって言われて…ジェシカ姉さん?」
少女を見た瞬間に固まり、きょとんと眼を丸くしている少年に、少女は涙をそのままに少年に抱き付いた
「うわぁぁぁぁぁ!ジュリアン生きてた!生きてたよう!うわぁぁぁぁ!!」
ビックリしたジュリアンは、抱き付かれたまま硬直していて、ジェシカの為すがままだ
ジェシカが落ちついた頃を見計らって、空尉が二人に声を掛ける
「マドモアゼル、ちょっと離れて貰えませんか?」ぶんぶん首を振るジェシカに諭す
「まだ、軍務中なんですよ?マドモアゼル」「……あ!?」
やっと気付いたジェシカが、恥ずかしそうに離れたのを見計らい、空尉はジュリアンに向けて、いかつい声を出す
「きをつけい!」命令に直立不動になるジュリアン「ウィ!」
「きさまぁ!マドモアゼルを泣かせるとは、トリステイン軍人の面汚しめ!気合を入れる!歯を食いしばれ!」「ウィ!」
直利不動のまま、がちっと歯を食いしばるジュリアンに鉄拳が飛び、鈍い音と共に派手にすっ転んだ
「直ぐに立て、バカもん!」「…ウィ!」言われて立ち上がるジュリアン
ジェシカはやり取りをぽかんと見ていて、何でこんな事になってるのか解らずに固まっている
「そんな貴様に命令だ!マドモアゼルを二日二晩48時間連続で喜ばせて来い。良いな?」
直立不動で敬礼し、返礼して見せる
「ウィ!彼女を二日二晩かけて喜ばせる任務、謹んで拝命しました!」「良し、行け!命令違反は軍法会議だ!」「ウィ!」
言いながら、ジュリアンを蹴り出して追い払い、ジェシカにはウィンクして見せたのだ
「ジェシカ姉さん急いで!僕は任務なんだ!行くよ!」「え!?えぇえ!?」
ちょっと混乱気味のジェシカの手を引きながら、ジュリアンは軽やかにタラップを降りて行った
* * *
「もう、あの上官、何なのよ!ふざけてんじゃないわよ」「ジェシカ姉さん落ち着いてよ」
歩きながら、ぷりぷりしているジェシカを宥めてるのはジュリアンだ
「僕は軍人で任務中だから、命令が無いと出かけられないんだって」「…そうなの?勤務時間外でも?」
「うん、直ぐに集まれる場所に居なきゃ駄目なんだ」「へぇ」
「でも、命令してくれたから、堂々とデート出来るよ」「そうなんだ。あれ?って、事は?」
ジェシカの手に、自分の手を繋いで、ジュリアンは言って見せた
「うん、空尉のお節介だね。他にも来た女のコ来たらしいんだけど、戦死した人が多くてね…」「そうなんだ…」自分が運の良い方だった事にジェシカは感謝し、繋いだ手を自分の胸の谷間に抱える様にして、肩をジュリアンに預ける
「ジュリアン…ね?」「…うん」通りすがりの兵が見ているにも関わらず、ジェシカは自分の胸にジュリアンの手を入れてニコリとする
そう、騎士が自身の女性にやる往来での仕草。思わず、生唾を飲み込んでしまうジュリアン
「立派な騎士になって、こういう事したかったんじゃない?」「そりゃ、したかったけど」「けど?」にまにましながら顔を覗き込まれて、ポリポリ頬を掻きながら、ぼそりと「したかったの、ジェシカ姉さんだし…ね」
ジェシカはジュリアンの答えに満面の笑みを湛えて、触らせてる手を上からもみもみさせる
「どうだどうだぁ?憧れのジェシカ姉さんのちちを往来で揉んでるぞ~?もう、ジュリアンってば、立派な騎士様だね〜〜」
正直言って、ジェシカは人懐っこさと、愛嬌の良さで、かなり周りの男を振り返させる器量の持ち主だ
それがもう、年下の少年兵がちち揉んで往来を歩くなると、ウルフホイッスルが鳴りまくる
「ピュー!まだガキなのにやるじゃねえか兄ちゃん!」「国から女が追っかけて来るたぁ、隅に置けないねぇ、ピィーピィー!」「ちょっと待てよ!姉ちゃん、魅惑の妖精亭のジェシカちゃんじゃないか!」「あ、ゴメンね。この人あたしの旦那なんだ。戦争終わったら結婚するの」「ちっきしょう!爆発しろ兄ちゃん!」
ジュリアン位の歳だと、もう強烈に恥ずかしい。ジェシカはそんな事気にせず、お客に手を振っている
「あ、あのさ…」「ん?なに?」自分達を見せびらかすのが楽しいジェシカは、気分良くジュリアンの顔を覗き込む
「離れてくれると助かるんだけど…」「い〜や〜よ〜。何で、旦那様と腕組んでいちゃいちゃするのがいけないの?」
さも当然といった風にジェシカが言い、そこではたと気が付いたように大声を上げたのだ
「ああ!ゴメンね。子作りしなきゃならないの忘れてた!ごめんなさぁい、旦那様。今直ぐ作ろっ!!さあ行こう!」
「「「さっさと宿に引っこめ、バカップル!!」」」
盛大な突っ込みに送られて、ジュリアンはジェシカにぐいぐい引っ張られて行った
「あの…僕の意見は?」すこぶる若くて可愛い巨乳な姉さん女房貰う事になったんだから、諦めろ、糞ガキ
* * *
ジュリアンは最下位の少年兵の為、個室などは無く、艦隊勤務の為、地上施設すら用意されずに船で寝泊まりしている。ドックで修繕中も、半舷上陸で人員が降ろされた際も、居残り喰らった組である
「ねえ、ジュリアン。泊まる部屋有るの?」「無いよ。僕は個室も無いからね。ハンモックで寝泊まりだよ」
「へ〜大変だ。じゃあ、今は楽しよっ」「うん」
もうずっとべったりで、時たま顔をぐりぐりされちゃったら、いくら年上だと言っても、非常に可愛い
それが、幼い頃からの憧れの女性がやるのは、未だにジュリアンには信じがたい事実だ
幾つか宿を物色して、丁度良い宿を見つけた二人は、中に入って暖炉に火を付け火が立ち昇るのを見ながら、身体を寄せている
「ねえ、ジェシカ姉さん」「…何?」「僕で良いの?」「ジュリアンが良い…それとも…」
そう言って身体を離すと、一気に涙を溜める
「汚れちゃったから駄目なの?もうあたしの事、興味無くなっちゃった?」
地雷を踏んだ事に気付いたジュリアンは慌てて否定する
「ち、違うよ。ジェシカ姉さんは、すんごいモテるし、僕なんかで良いのかなって…」
そう言って、しどろもどろになるジュリアンに、ジェシカはほっと溜息をつく
「良かったぁ。あたし、ジュリアンに嫌われてたらどうしようかと、本気で怖かったから…」
ジュリアンも遅ればせながら気付いた。彼女のはしゃぎっぷりは、怖さを押し隠していただけだと
「あたしさ…才人さんに助けられたけど…あたしを本当に救ってくれたのは、ジュリアンなんだよ」「…え?」
ジュリアンの眼を覗いて、潤ませるジェシカ
「ジュリアンの手紙でね、お父さんに出したの有るでしょ?」「…うん」
「あれはあたしの宝物なんだ」ジェシカの言葉に、照れながらそっぽを向くジュリアン
「あたしね…お父さんからジュリアンの手紙読ませて貰って、その場で大泣きしちゃった」
ジュリアンは黙って聞いていて、ジェシカは普段はおちゃらけているのを全て脱ぎ捨て、ジュリアンに真剣に語る
「『どんな事になってようと、どんな姿になってようと、僕はジェシカ姉さんが好きだって言える』って。あたしね、あの瞬間に気付いちゃった。何で、ジュリアンをいっつもからかってたのか。何で、良い男が結構お店に来てくれて、求婚されてるのに、ちっともピンと来なかったのか…」
ジュリアンを見る眼には、何時もの年下の弟を見る雰囲気は無い。あくまで、男を見つめる女の眼だ
「ジュリアンに早く一人前になって貰って、頼り甲斐のある男に、なって欲しかったんだって。ねえ、ジュリアン。あたしを「待って!それ以上言わないで」
ジュリアンの短い制止に、また涙を浮かべるジェシカ
「何で?やっぱり」「良いから聞いて!」
そう言って、両手を肩に乗せて自分に向かせて、真剣にジェシカを見つめるジュリアン
「やっぱり、僕から言わないと。ジェシカ姉さん」「はい」
「僕はまだまだ未熟だし、何にも出来ないし、才人兄さんみたいに強くないし、農作業しか出来ないし…」「はい」
「給料なんか雀の涙だし、気の利いた買い物なんか出来ないし」「はい」
少し置いて、逡巡したがやっぱり言い直す
「ジェシカ」「…はい」
ジュリアンの真剣な目を見て、ジェシカは感極まって泣きそうなのを堪え、眼を精一杯潤ませる
「け…け…結婚…」「…はい」「し…して下さい!!!」
なんてこった、ジェシカはフライングしてしまった。ジュリアンが言い切る前に、返事をしてしまったのだ
「「…あっ」」二人してハモり、期せずしてぷっと吹き出し、二人して笑い出す
「あははははははははは!!」「ははははははは!何でびしっと決まらないかなぁ」
ひとしきり二人して笑った後、改めてジュリアンは言い直した
「ジェシカ、僕の嫁になってくれる?」「はい、喜んでお受けします」
ジェシカが目を瞑ると、ジュリアンがジェシカの唇に、唇を合わせる
「ん…好き…好き……」
キスの合間に息を吐く度に、ジュリアンに告白するジェシカ
そのままソファーに倒れて誘導しようとした所、何とジュリアンがジェシカをお姫様抱っこで持ち上げたのだ
「えええ!?ジュリアン出来るの?」「うん、まあ。農作業と訓練のお陰かな?」
ちょっと言えないが、ジェシカは巨乳と夜中の業務の不摂生のお陰で、すこ〜し、うん、まぁ、ね
「ん〜?シエスタ姉さんより、おもイダダダダダダ!」「胸の重量よ?良い?全部胸なんだからね?」「…あい」
背格好が同じ従姉妹と比較され、思いっきりほっぺをつねる
「んっふっふっふっふ。あたしの旦那は、こんなに若いのに力持ち〜」
嬉しそうに首根っこに手を回すジェシカをそのままに、ジュリアンはベッドまで運んで、自分事どさりと投げ出す
「きゃあ!?嫁は大事にしなさい!」「ゴメン、力尽きた」「情けない旦那は嫌よ」「精進するよ」
言いながら、ジェシカのズロースに手を掛けてずり降ろし、ジェシカがジュリアンのズボンを脱がすと、ピンと跳ね返り、元気な息子がパンツの割れ目から飛び出した
服も脱がずにジェシカは股を開き、スカートを捲って自身の女を開いてジュリアンを誘う
「だ・ん・な・さ・ま。今からは、あたしは全部ジュリアンのモノなんだから、絶対我慢しちゃ駄目よ?」「うん」
興奮を抑えられないジュリアンとジェシカは、服を着たままで繋がり、入れたと思ったらジュリアンがビクビク震える
「あんもう。出しちゃった?」「…ゴメン」「良いの良いの。まずは落ち着くまで出して、二人でゆっくりやるのは後にしよ」
ジュリアンの背中に腕を回して絡め取り、ジュリアンは呼吸も荒く胸に顔を埋め、ジェシカは満足そうに抱き締めた
「時間はたっぷりだけど、会える時間が少ないからね。全部使おう」「うん」
お互いに会えない時間を全て使う様に、ジェシカが両手をジュリアンの頬に慈しむ様に添え、何度目か解らないキスをした
* * *