うっすらと入る光と声に気付き、目を開けるとルイズやシエスタ、さらに、ギーシュやモンモン、それにテファ達の顔が見えた。なぜかみんな泣きそうな顔で俺の顔をのぞきこんでいる。「どうしたんだよ。そんな顔して」と俺が呟くとルイズが泣きながら胸を叩いていった。「バカ!!死んだと思ったじゃないの!!プロポーズして来たかと思ったら倒れちゃって動かないんだから!!」といった。
  しかし、俺にはなんのことかわからない。「プロポーズ?いつしたんだよ。そんなことより、ドラゴンはどうなった?さっさと、教皇とデルフの仇討ちしねえと!」
するとギーシュが「もう終わったよ。ドラゴンは君とルイズが倒したから」といった。
でも俺には記憶がない。「いつだ。何日前だ?」
今度はコルベール先生がいった。「3日前だよ、サイトくん。君はなにも覚えてないんだね?」
俺は黙って頷き、「俺、デルフが壊れた後からなにも覚えてないんです。今までどこに居たのか
全く」するとそれまで黙っていたシエスタが口を開いた。
  「その後、サイトさんはガリアに帰って来てミス・ヴァリエールがサイトさんを送り返したんです。サイトさんのいるべき世界に」といった。
「でも俺はここにいるぞ」今度はテファが「サイトさんは太陽から飛び出してきたんです。
そして、ルイズさんのエクスプロージョンをリーヴスラシルの力で増幅させてドラゴンを
倒して、ルイズさんにプロポーズした後、今までずっと眠ってたんです」といった。
「そうなのか、でも全然覚えてない・・・」
「しかし、何でその周辺の記憶がないのかな?」とコルベールが呟く。
「それはリーヴスラシルのせいだよ、きっと」「ジュリオ!!ごめんな、教皇のこと」
「目が覚めたかい?サイトくん」
ルイズがジュリオに聞いた。「リーヴスラシルのせいってどういうこと?」
ジュリオは静かな口調ながらはっきりと語りだした。
「サイトくんが意識を失ったあと、ロマリアの古文書をオスマン学院長と二人で読んだら
こう書いてあったのさ。6000年前のリーヴスラシルは二人いたそうだよ、一人目が途中で
死んでしまい、二人目はガンダールヴがリーヴスラシルの力も持って世界の危機を救ったそうだよ。
その際、リーヴスラシルはとても強い力を一気に使ったから、ガンダールヴが自分の命を守ろうと
自分の記憶に使う力を生命に回して、助かったそうだよ。その後、ガンダールヴは前後数日の              記憶が抜けたそうだからね」といった。聞いていたコルベールがジュリオに聞いた。
「すると6000年前と同じことがおきたことによって、サイトくんは助かったということですかね?」
「その可能性が高いですね。そうでないとしたら、サイトくんとルイズの互いの絆が強かった
から起きた奇跡としかいえないですよ」
するとシエスタが突然、「サイトさん、ミス・ヴァリエールにちゃんとプロポーズし直しません?」
と言い出した。「え〜!!恥ずかしいよ」「シエスタ、いいアイディアね!私、返事してないもん!」
「分かったよ、ルイズ!使い魔の分際の俺だけど、世界で一番大好きだから結婚してくれ!」
「いいけど、浮気したら許さないんだから!!サイト、私のこと幸せにしてね」
翌日、胸のあたりの重さで目が覚めると、胸を枕にしてルイズが寝ていた。そして、何度も呟く
のは、俺の名前。「サイトォ、死んじゃダメェ・・・」俺はルイズの頭をそっとなでる。すると目を覚まして笑顔で「サイト、おはよう!」といった。「目が覚めたか?ルイズ」頷くルイズ。
するとドアが突然開いてシエスタが飛び込んできた。
「サ、サイトさん、ミス・ヴァリエール、大変です!!」
「どうしたんだよ、シエスタ?こんな朝早くからそんなに慌てて?」 
しかし、シエスタは俺の言葉が聞こえてないのか早口で
「ミス・ヴァリエールのお姉様がいらしたんです!!」といった。
「はぁ、ルイズの結婚相手の候補が出たから、実家にこいかな。やっぱり、世の中甘くないな・・・」するとルイズはシエスタにむかって「もしもの時はサイトと結婚してあげてね」
「ミス・ヴァリエール・・・」シエスタは複雑な心境だった。出来れば二人に幸せになってほしい。
二人の気持ちが一番分かるのは自分だから・・・でも二人の間をヴァリエール家が許すかどうかわからないこの状況では頷くしかない。「分かりましたわ、ミス・ヴァリエール」といった途端に
「ルイズ、ちびルイズ!」と口調は普段どおりだが、眠そうな声のエレオノールがはいってきた。
「エ、エレオノールお姉様!どうしたの、こんな朝早く?」顔色を変えて叫ぶルイズ。
するとエレオノールは三人にむかって予想外のことをいった。「お父様があなたたちに
話があるから迎えに行ってこいって言われたから来たのよ。いうことがわかったらさっさと
着替えなさい。聞いてるの?ちびルイズ!」エレオノールさんは俺にむかって「あんたもぼさっとしてないで、シュヴァリエのマントをつける!」「は、はい!」どたばたと準備を終えると四人は馬車に向かい、歩きだした。すると途中で会った、モンモンとテファとキュルケが「こんな朝早くから何処へ行くの?」と聞いてきたので、ルイズが「実家に行ってくるのよ」と答えた。
シエスタに見送られて動きだした馬車の中でルイズはエレオノールさんに尋ねた。
「父様、私に婿をとれっていうのかしら?」するとエレオノールさんは「父様ったら突然
名門貴族から婿を取らずにあなたのことを大事にしてくれる者を婿にすると、いいだして
ね、ルイズに一番あってるのは、使い魔兼オンディーヌ副隊長のシュヴァリエ・サイトだ!」
と、いいだして、私と母様がヴァリエール家が平貴族を婿にするなんて前代未聞よ!といった
けど、聞く耳もたずで【エレオノール、今すぐ学院に二人を迎えに行ってこいって言われたから来たのよ、お陰で寝不足だけどね」と欠伸を噛み殺しながらいった。
それは俺たちも一緒ということで、三人とも寝てしまった。
馬車は、一気に走り抜け、昼過ぎにはヴァリエール家に到着した。
馬車を降りた途端にヴァリエール公爵は、ニコニコ顔で「ルイズ、婿殿、待ってたぞ!」
といった。
思わず確認した。「本当に俺なんかでいいんですか?貴族のルールもなにも知らないのに
・・・」すると公爵は、「いや、その謙虚さと、勇気の大きさを私は気に入ったのだよ、
名門の子弟達は揃いも揃ってルイズを幸せにすることより、我がヴァリエール家と親戚になり、
この国の利権を持とうという気持ちしかないのだからなっ!!」
俺は思い出した。ギーシュが前に言っていたことを・・・
そして、夕食を終えた後、俺たちは寝室にいた。
ルイズは俺に聞いてきた。「サイト、元の世界に帰る気あるの?」
俺は一瞬で答えた。「帰る気なんかないよ。ルイズと居られるんなら・・・
それに嬉しかった。やっとみんなに認められたんだと想って」
「サイト・・・」
「ルイズ・・・」
唇を合わせる二人・・・やっとお互いの気持ちが素直になれた瞬間だった。
しかし、この頃、学院では大騒動がおきているのであった。


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