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蒼から始まった物語 幕間:私の愛した王 バレット氏
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彼に出会えてからの事を忘れた事は1度も無い。
没落貴族の出身でドット以下の魔法の才能しか持っていなかった。
そんな自分が、この高貴な王家の人間ばかりが集うヴェルサルテイルの廊下を歩けているのも、彼が自分を見染めてくれたそのお蔭。
場違いな野暮ったい擦り切れた使い古しのローブを身に纏っているのも気にならない。彼はそんな事をちっとも気にしないと分かっているからだ。
魔法の代わりに彼女が持っていた才能。
それはマジックアイテムの作成・・・特に魔法人形に関しては、まだうら若き女性でありながら彼女の作る作品は最高級の芸術品にも等しい。
もっとも、大概の王宮や大貴族お抱えの人形技師は昔からその筋の大家しか―
―たとえ今となっては見た目だけの三流品しか作らなくなった様な所でも―
受け入れられなかった為、潰れた家の出の彼女の評判は無いに等しかった・・・・・・今までは。
だが、今は違う。
数年前、たまたま年の離れた親友ともいえる黒髪の青年と共に王宮を抜け出してきた彼と出会ってから、彼女の全ては変わった。
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扉の前に立つ。身嗜みチェック。脇には厳重に梱包済みの丹精込めて作った特注の魔法人形
金を余りかけられる生活ではないので化粧などはほとんど最低限。最近城下町で流行っているという香水だけはさりげなく振りかけてある程度か。
深呼吸3回。そしてノック。
「シェフィールドです。ジョゼフ様、お頼みになられました物をお持ちしました!」
「うむ、鍵は開いてるから入っていいぞ」
高鳴る鼓動を抑え、頭を垂れながらゆっくりと扉を開けて踏み込む。
自分と彼はあくまで元貴族の人形技師と雇い主の大国の王という身分違いにもはなはだしい立場。
それでも彼に会えるだけで可憐な恋する乙女の表情を浮かべまいと必死に努力しながら、ビジネスライクな顔を作りつつ顔を上げた。
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『ひああぁぁっ!ふあんっ、ああぁん!』
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どんがらがっしゃん
そして、いきなり聞こえた嬌声にずっこけた。
「ああすまん、やっぱり刺激が強かったか?」
「じょ、じょじょじょジョゼフ様!?ななな何でしょうかそれは!?」
「『虚無』の魔法の1つでな、効果は『遠見』の魔法と同じだが数千リーグ離れた場所でも見れる便利な魔法だ」
そして光る鏡っぽいのに映し出されているのは、見覚えのある黒髪の青年と青色の髪の少女だ。
・・・・・・このオヤジ、自分の娘と使い魔兼婿(確定)の昼間っからの情事を覗き見てやがるようです。
そしてその模様に青筋立てる事もせず、にやにや愉快そうに笑っている。
一方、シェフィールドの方はあわあわあわわわと口を魚の様にパクパクさせつつも目を離せないでいた。もちろん顔は真っ赤である。
「いやいや、やはり我が婿はお盛んなものだな。いくら今日が虚無の曜日とはいえ昼間から4人相手とは」
「あ、あうあうあうあうあうあう・・・・・・」
鏡がベッド全体を移す形になり、青年を4人のそれぞれ毛色の違う美女美少女が全裸で取り囲んでいるのが映し出される。
もはや瞬間湯沸かし沸騰。今彼女の頭にやかんを乗せたら魔法無しでも即座にお湯が沸きそうだ。
こけてから今の状態でもしっかり包みを保持して守っているのはある意味驚くべき事だろう。
「何ならお前ももっとそばで見てみないか、シェフィールドよ」
反射的に返事が出た。
「は、はい!喜んで!」
言ってから我に返るがもう遅い。数千リーグ離れた情事の覗き見よりも、むしろジョゼフのすぐそばに居られる事の方が目的ともいう。
しかしやっぱり彼女には刺激が強い。
ジョゼフはどういうつもりかいやらしいもの抜きで面白そうな表情を浮かべているが、シェフィールドは初心そのものに身を縮こませてそっと身を寄せた。
ジョゼフの顔がすぐ近くにある。ここまで傍に寄るのも彼女は初めてだった。
そこでふと、ジョゼフが驚いたように眉をあげた。
「香水をつけているのか?」
「は、はい!・・・お気に召しませんでしたでしょうか」
「ふむ。いやなに、お前から可憐な香りがしたからな。お前によく似合ういい香水だ」
ぽふん♪
(ほめられちゃったほめられちゃったほめられちゃったキャー!)
見た目は冷徹な美貌、でも中身は乙女なシェフィールドは音を立てて更に赤くなった。どれだけ赤くなれば気が済むのやら。
しかし「あ、ありがとうございます」とだけぼそぼそと返して視線をジョゼフの顔から無理矢理引っぺがす。
そんなにジロジロ見つめていられるような立場ではないのだから。
だが、その拍子に傍にあったテーブルにぶつかってしまい、衝撃で倒れたグラスに入っていたワインが豪華な絨毯にシミを作った。
即座にシェフィールドの顔色が急転直下で青くなる。
この絨毯一枚で自分の1年の稼ぎの数十倍だろうし、よりにもよって憧れの王の部屋で憧れの王の目の前でドジを踏んでしまったのだから。
立場の差を考えると、無礼討ちになっても仕方がないのだ。
「も、申し訳ありません!」
しかし拭く物も無い―――いや、あった。
咄嗟に彼女の着ているローブでワインで赤く染まる絨毯を拭った。しかしとっくにワインは染み込んでしまって綺麗に取れる気配はない。
泣きたくなってくる。あこがれのこの方の目の前で、なんて醜態。死にたくなる。
「別にそれぐらい気にしなくていいぞ。絨毯なんて汚れて当たり前だからな」
対照的に気にした様子の無いジョゼフの気楽な声も、シェフィールドには届いていない。
えぐえぐえぐ、と何気に嗚咽まで漏らし始めながらもシミを拭い続ける彼女にジョゼフは溜息をつき・・・這い這いの体勢で自分の方に突き出されたお尻が目に入った。
拭く動作に合わせて右に左にふりふりふり、ローブの下からでも形の良さがよく分かるってもんである。
元より娘達の情事をリアルタイムで覗き見ていたジョゼフ、それなりに興奮もしていたので目の前の実物に目が釘付けになった。
・・・・・・実の娘達のヤッてるのを見てムラムラ来るって親として確実にどこか間違ってる事請け合いだが、ぶっちゃけ人間そんなもんだ。
とにかく、本能にも似た衝動に突き動かされて手を伸ばす。
さわっ
「ひゃんっ!?」
尻を撫でられたシェフィールドが飛び上がる。反応が予想以上だったのでジョゼフは少し呆けた後、すぐに我に返って珍しくもバツの悪そうな表情。
「む、すまん、つい魅力的だったんでな。やはり許可も無く淑女の身体に触るのは無礼だったか」
思わずお尻を手で隠すようにしてしまったシェフィールドだったが、どことなく気落ちしてしまったようなジョゼフの言葉にフォローを入れようとし。
「いいえっ、ジョゼフ様にならむしろどのような事をされても大歓迎で・・・あ」
そして自爆。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・本当にいいのだな?」
「は、はい・・・・・・・・///」
さわさわむにむに
服の上から優しく撫でられ揉まれるだけだが、それだけでどうしようもなくシェフィールドは甘い声を漏らす。
愛人を何人も囲っていた立場なだけあって単純にジョゼフの手つきが慣れているというのもあるが、叶うとは思っていなかった恋心に昂ったシェフィールド自身のせいもある。
精神状況は容易く肉体にも反応を起こすのだ。
鏡の向こうでは4:1という可笑しな比率で絡み合う少女達と青年の艶姿。
情事を覗き見ながら憧れの相手に肢体を弄ばれているギャップに頭がおかしくなりそうになる。
「ジョゼフ様・・・もう大丈夫ですので・・・・・・」
いや、もうおかしくなっているのかもしれない。
ローブの端をたくしあげると、直接触られていないにも関わらずドロワーズはすでに滴りを漏らすほど濡れていた。
「私が入れさせて頂きますから・・・」
「無理しなくてもいい。お前は無理せず横になっておけ」
世話をかけまいとして言ったつもりだったが、むしろ反対に彼女自身がジョゼフに押し倒される格好になる。
「きついなら正直に無理せず言え」
「んんんんっ・・・・・・!」
そのまま奥深く貫かれた。
痛くは無い。ただ、目の前の男性の灼けるような熱さだけが、ただただ愛おしい。
「ジョゼフさまっ・・・!」
「ああ――――シェフィールド」
「―――――っ、はいっ!」
びくびくっ!
名前を呼ばれるだけで軽く達してしまう。
それほどまでに、幸せな悦楽の瞬間。
「んんっ、むふぅ・・・・・」
深く深く、舌を絡め合う。
それは甘い毒。理性を蝕み、夢中にさせる。
立場の差ももう関係ない。ただ愛しい男性に抱かれてる悦びだけが頭を乗っ取り、更に欲する。
もっと、もっともっと、もっとぉっ・・・・・!
「じょぜふ、さまっ、わたひに、熱いの、いっぱい、おだひくだはいぃぃ!」
「決まってる、だろうっ!」
ぐりゅぐりゅっ!と均整の取れたスタイルの割に小さな膣内、その奥底の子宮の入り口を何度も抉り。
ジョゼフの先端が突き刺さり、更に奥へと潜り込んだ瞬間、立場も生まれも関係無しに1組の男女は融け合った。
「あ、ああああああぁぁぁぁぁぁ――――っ!!」
白い溶岩が、シェフィールドの下腹部に満ちていく。
トロンと蕩けきった表情で、快楽の余り光の消えた瞳が王を見上げる。
王妃が1人娘を産んですぐに死んで以来好色な貴族も呆れる位女を抱いてきたジョゼフだが・・・目の前の女性にどうも嵌まってしまったようだ。
彼女を気に入ったの理由の1つに魔法人形作りの天才だから、というのも確かにある。
しかし王宮によく居る欲の皮ばかり突っ張ったゴマ擦り野郎どもと比べれば、彼女はどんなに従順で可憐な事か。
ジョゼフは飽きっぽい。しかしいつまで経っても飽きずに楽しみ続けている事もある。
1つは魔法人形のコレクション、1つは弟とのチェス勝負、1つは使い魔、そして今や家族の一員である異世界の青年や娘達とのじゃれあい、というか触れ合い。
そして、また1つ。
「愛い女だよ、お前は」
そっと、シェフィールドの頬を撫でる。
そして王は、今度はこぼれたワインとか汚れた服とかどう始末しようかと悩み始めるのであった。
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・・・・・・数ヵ月後、新しい母親の誕生+腹違いの妹を懐妊という話題にとっても複雑そうな顔の王女と苦笑いを浮かべる婿が居たとか居なかったとか。
それは、定かではない。