212 名前: ホワイト・クリスマス ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日: 2007/12/24(月) 21:47:52 ID:5OEhdsxl
どかぁん! 

冬の大気を劈いて、爆発音が平和なトリステイン魔法学院に響く。 
なんだ、またルイズが使い魔にお仕置きしてんのか、と生徒たちは思った。 
しかし、それは正解ではなかった。 
爆発の中心にいたのは確かにルイズだったが、そこには件の黒髪の少年はいない。 
桃色の髪の少女はいましがた爆発音とともに吹き飛んだオーブンの鉄の扉を、呆然と見つめた。 
そして言った。 

「そうよ、おかしいのはオーブンのほうよ!」 
「おかしいのはアナタのアタマですミス・ヴァリエールっっ!」 

シエスタの容赦ないツッコミが、荒れ果てた厨房に響き渡った。 

事の発端は才人の話。 
調子っぱずれのジングル・ベルを鼻歌に、ゼロ戦を磨いていた才人に、ルイズがその曲ナニ、と尋ねたのだ。 
才人はクリスマスに歌われる曲で、ってかクリスマスってのは俺の世界の降誕祭みたいなもんで、と返す。 
ルイズはへえ、面白そうなイベントね?どんなのか教えてちょうだい、と質問した。 
才人はえっと、サンタがな、プレゼントがな、恋人達がな、食事がな、ケーキがな、といくつかかいつまんで説明した。 
ルイズはその回答から、『くりすます』は恋人達が一緒に食事を楽しんだ後、贈り物をしあうイベントなんだと理解して。 
そういえばこの間見せてもらった夢もそういうのだったわね、などとあの夜を思い出し。 
そして、とんでもない事を思いつく。 
こっちでも『くりすます』やったら、サイト大喜びなんじゃないか、と。 
そんでもってそんでもって、私の手作り料理とケーキを振舞われたりなんかしちゃったりして、贈り物なんかされたりしちゃった日には。 
もうメロメロのヨロヨロなんじゃないの? 
そして、ルイズは行動に出る。 
いーい、夜になったら大人しく部屋で待ってなさい!約束だかんね!絶対だかんね!と言い放って、厨房に走った。 

そしてこの有様である。 

「どーして鳥の丸焼きでオーブンが吹っ飛ぶんですかっ!」 
「し、知らないわよ!このオーブンが脆弱すぎるのよ!ちょっと火薬で火力上げたくらいで!」 
「…今、なんと?」 
「だから火薬よ!表面をパリっと仕上げるには火力がいるでしょ!そこで私はこの黒色火薬で」 

こぉん! 

「いったぁ!ちょっとシエスタ、おぼんでチョップはないんじゃないの!」 
「どこの世界の魔王ですかアナタは!鳥を焼くのに火薬なんか入れたら爆発して当然です!」 
「ちょ、ちょっと待ってよ、『料理は火力が命』が基本じゃないの?だから私は火力の増強に」 

すっこぉん! 

「いったぁぁぁぁぁ!二度もぶったぁぁぁぁぁぁぁ!」 
「火力の意味が違いますっ!だいたいそれは仕上げの話です!最初は弱火でするのがですねえ」 
「私の辞書に弱火の文字は」 

かっこぉん! 

その寸劇は、マルトー親父が見かねて止めるまで、えんえん続いたのだった。 
213 名前: ホワイト・クリスマス ◆mQKcT9WQPM [sage ] 投稿日: 2007/12/24(月) 21:48:18 ID:5OEhdsxl
そして夜。 
結局ルイズは料理もケーキも準備できず。 
手元に残ったのは、クリームの壷だけ。 
厨房の出入り禁止を食らったルイズは、いろいろ試行錯誤はしてみたものの、結局上手くいかなかった。 
オーブンなしではスポンジも作れない。 
厨房が使えなくては果物も切れない。そもそも料理が出来ない。 

「…きっと、見えざる神の手か何かが働いて、私を邪魔しているのだわ」 

才人の待つ部屋の前でそんなふうに独白しながら、ルイズはため息をつく。 
クリームの壷だけをかかえて、どうしようかしら、と考え込む。 
そして閃いた。閃いてしまった。 
ルイズはきょろきょろと廊下の左右を確認する。 
よし誰もいない。 
ルイズは手早く服を脱ぎ去る。下着も脱ぐ。 
黒いオーバーニーだけ残して全裸になると。 
身体の各所に、クリームを塗りこめはじめた。 
そう、このテだ。 
作戦名、『私がクリスマスプレゼント♪食べて食べて私を食べて♪』作戦である。 
そう、あの絶倫使い魔のコトだ、マントをはだけて『私をた・べ・て』なんて言った日には、問答無用で襲い掛かってくるに違いない。 
でもって、『これが私からのクリスマスプレゼント♪』なんて言った日には。 
もうメロメロのヨロヨロのボロボロなんじゃないの!? 
ルイズはなるたけ扇情的に見えるようクリームを塗り終えると、マントを羽織り。 
愛しい使い魔の待つ部屋のドアを、開けたのだった。 

「…あ、あの、シャルロットさん?」 
「…たべて」 
「はい?」 
「…わたしを、たべて」 

開けた先では、タバサが才人に向かってマントを広げて前を晒していた。 
その白い肌には、黒いチョコレートソースでできた奇妙な文様が、わざと女の子の特徴を際立たせるように、塗られていた。 
おなかの部分には、臍を避けるような楕円の位置に、スライスされたイチゴが並べられていた。 
これぞ料理名『シャルロットのチョコレート風味・イチゴ添え』である。 

「くぉらチビっこなにやってんのよぉぉぉぉぉぉ!」 

ルイズの問答無用のラリアットがタバサをベッドに沈める。 
一瞬で敵を判別したタバサが、関節を極めようとルイズに絡みつく。 
させるものか、とマウントを取りにかかるルイズ。 
期せずして始まったクリームとチョコまみれのキャット・ファイトに、才人は興奮を隠せない。 
ヨダレを垂らして魅入っていた才人ははっと気付く。 

「ちょ、お前らやめろって」 

しかし、近寄ろうとした才人を、ちょうど両者が伸ばした足が蹴っ飛ばす。 
イイカンジに顎に入った両足で、才人は一撃でダウンする。 
しかし二人は気付かず、そして戦いは魔法合戦にまで発展する。 
その戦いは傍らで気絶する才人を当然の如く巻き込み。 
才人は一週間ほど、絶対安静を言い渡されたのである。 
それ以降、彼が『クリスマス』について詳しく語ることは、ついぞなかった言う。〜fin

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