反・胸革命!


=4=


その日の昼休み、女子生徒たちが庭の白いテーブルを囲んで話す内容はどこも似たり寄ったりだった。

「呆れたわねぇー」

キュルケがそう苦笑いを浮かべたのを見て、モンモランシーが怒りを滲ませた。

「全くよ! ギーシュったら、あそこまで節操ないとは思わなかったわ!」
「ホントに思ってなかった……?」
「あ、いや、ギーシュならやりかねないわ、とも思ってたけど……」

モンモランシーも何だかんだで粘り強いわね、とキュルケは感心する。
そして、ムスっとした顔のまま眉をぴくぴくとさせているルイズに話しかける。

「テファの一件の頃は評価右肩上がりだったのに、もったいないことしたもんねぇ」

それが彼の使い魔、平賀才人のことを指すのは自明だった。

「しばらく再起不能になるくらい鞭打ちしてやろうかとも思ったわ……」

怒りの余り、ルイズはもはや激情を表すことさえ忘れているようだった。
あらあら、とキュルケはその負のオーラに気圧され、反らすように晴天の空を見やった。
すると、周囲からは他の女子たちのそれはそれは厳しい話し声が耳に入ってくる。

「信じられませんわ! まさか地下まで穴掘って覗きにくるなんて!」
「本当は変態の集まりだったのね!」
「淑女の敵よっ!」

あはは、とキュルケは笑うしかない。
なぜこんな噂話で持ちきりなのかは彼女自身、昨日の出来事を知っているのでよく分かる。
そう、好評価著しかった水精霊騎士隊が一転、ハレンチ隊の汚名を着けられる事件が起きたのだ。
昨夜のことである。
彼らは女子入浴中の大浴場をなんと地下までトンネルを掘ってまで覗きにやってきたのだ。
それも、騎士隊全員という組織的犯行である。
バレた後、あえなく全員が捕縛され、激昂した女子から手痛い仕返しまで受けた。
キュルケにとってもなぜこんな時期に彼ら水精霊騎士隊の面々がそのような暴挙に出たのかは理解しがたい。
だが、他の女子よりも男の欲求というものを知っている彼女には、
なんとなくだが同年代の少年ばかりで構成されている彼らが何かの拍子に悪ノリしすぎたのだろうとは想像できた。
しかし

(もう……そもそも裸見たいんなら私がいるでしょうに……!)

キュルケにはそこだけが気になった。そう、他でもない、覗き事件にはサイトが加わっていたのだ。
つい先日の言葉を思い出す。

『君がいると、月が綺麗だ……』

「……そう言ってくれたじゃない……」

悲しげにポツリと呟く。

「何か、あったの?」
「え?!」

キュルケがいつの間にか憂いの表情になっていたのを、隣で本を読んでいたはずのタバサが気づいていた。

「な、何でもないわ」
「……そう?」

普通の人間が見れば無表情だが、タバサの顔には確かに心配そうな感情が交じっているのにキュルケは焦った。

(タバサになら打ち明けてもいいんでしょうけど……)

サイトとの関係については遅かれ早かれそうするつもりでいたのだが、昨夜の事件で機を逸する形になってしまった。
しかも、ルイズの折檻なり学院側からの罰則なりをしばらく受け続けるであろうサイトには、表だって会う機会も少なくなる。
なぜと問い正したい気持ちももちろんあるが、それ以上にサイトに会えないのがキュルケには寂しかった。


・・
・・・

(何してるんでしょ、私……)

夕方になってキュルケは自室とそう遠くないルイズの部屋の前に立っていた。
この中にはサイトが事実上軟禁されているはずだ。
本当ならほとぼりが冷めてからの方がいいはずだ。彼女はその辺の計算は間違えないタイプである。
だが、今はなぜか無性に彼のことが気になって仕方がなかった。
せめて一目会いたい。しかし、ルイズに不審に思われない程度の理由が思いつかなかった。
と、

「ぜぇぜぇ」

突然扉が開いた。
中からは凄まじい形相のルイズと、彼女の手に引きずられている何かの物体。
ボロ雑巾? とキュルケは一瞬ぎょっとしたが、よく見るとそれは見るも無惨な姿となったサイトだった。

「あらら……」

昼間言ってたこと、有言実行したのね、とキュルケは悟った。
そんな彼女にルイズは目尻のつり上がった視線を送る。

「アタシの部屋の前で、何してんのよ?」
「え? ええ、たまたま通りがかったら何か凄い音が聞こえるから何事かしらって思って」

キュルケはルイズの問いに咄嗟にそう答えていた。
半分嘘で、半分本当である。これだけのことをサイトにしておいて、静かだったはずはないだろう。

「ふんっ! ほら、キュルケ、アンタの使い魔のエサにでもしていいわよ」

きゅるきゅる、とキュルケの背後に控えていたフレイムが、心なしか驚いたように見えた。
逆に、思わぬ収穫を得ることになったキュルケは、できるだけ平静を装ってルイズに確認する。

「あら、いいの?」
「知らないわっ!」

そう言い残して彼女はずんずんと歩いて行った。
おそらく、夕飯もとらずに彼をしばき倒していたのだろう。

「今更ながらよく生きてるわねぇ……」

ツンツンと肉塊寸前のサイトをつつき、キュルケはその生命力に感心する。
そして、フレイムに命じて彼を自室へと引きずっていったのだった。


・・
・・・

「う、う〜ん……」

サイトは朦朧とする意識の中、ようやく目を開けることができた。
どれくらい気を失っていただろうか、今は何時で、果たして自分は生きているのだろうか。
そんなことを考えてしまうほど、今回のルイズの仕置きは凄まじかった。どこぞの残虐時代劇漫画のレベルだ。
薄れ行く意識の中で、思い浮かべたのは……

「……キュルケ?」

そう、彼の初めての相手であり、確信はないもののおそらく恋人でもある少女の裸身。
その彼女が今目の前にいた。
ということはこれは気を失った後の夢の続きなのだろうか。

(あれえ、でも夢とはちょっと違うような……?)

夢で慈母のように微笑んでいた彼女とは違い、今の彼女の笑みはどこか酷薄で妖しい雰囲気を漂わせている。
そして、なぜかセクシーな黒いガーターベルト姿でこちらを見下ろしていた。
もう夜になっているのか、部屋は蝋燭の光で満たされている。
その中に浮かび上がるガーターベルトに身を際だたせた彼女の肢体は、たまらなく扇情的だ。

「気がついたようねぇ?」
「あ、ああ、おかげさまで」

間抜けな返事だったが、それは今自分がおかれた状況がどういったものなのか、少しずつ分かってきたからだった。
具体的には、なぜか両手両脚がベッドの支柱にロープで繋がれ、自由がきかないことなどである。

「こ、これは一体……?」
「今頃ね、モンモランシーはギーシュを水責めしてるらしいわよ?」
「は、はあ、そうなんだ?」
「でね、私はどんなお仕置きをすべきなのかしらって考えたわけ」
「え、えーと……」

サイトは嫌な予感に冷や汗をかく。

「これ以上責められたらさすがに命が危ないんですが……」

なんとかそれだけを伝えると、ベッドの柵に綺麗な脚を組んで腰掛けている彼女の片足が伸びた。

「なあに言ってるのよ、ここ、こんなにしといて?」
「あぅ!?」

ペニスの裏筋に、ストッキングの柔らかな感触が走った。
いつの間にか、彼の股間はボロボロの身体に反して固くそそり立っていた。

「そういえば知ってるかしら? 殿方の身体は命の危機に直面すると子孫を残すことだけを考えるようになるそうよ?」

クスクスと笑いながら、キュルケは足の裏で彼のペニスを弄び続ける。
疲れマラと同じ原理なのだろうか、既にクライマックス状態だった彼のものは、それだけで射精の兆候を見せた。

「あぁっ! だ、ダメだ! も、出ち……」
「誰がイッて良いって言ったかしらぁ?」

キュルケがひょいと杖を振った。
すると、頑丈そうな紐が飛んできたかと思うと、彼のペニスの根本に巻き付く。

「あぐっ!? ちょ、こ、これじゃっ!?」
「あは、出ないでしょ?」

こみ上げてきた精液が、行き場を失って根本で暴れている。
ビクンと腰を痙攣させ、サイトはまるで拷問される罪人のように懇願した。

「た、頼む! い、一回出させて!」
「だめよぉ、簡単にイカせちゃお仕置きにならないでしょう?」

そう言っている間にも、彼女の足先は彼のヒクつくペニスを刺激し続けている。

「あああぁああぁああぁ」
「煩いわねぇ」

彼女は立ち上がり、彼の眼前でパンティに手をかけた。
するり、とそのムチムチの太股を伝って下着が脱がされていく。
その間に、愛液の銀色の糸がかかっているのを、サイトははっきりと見た。
不幸なことに、本来なら快感のはずのその視覚的刺激は、せき止められた精液をより一層せり上げる力になってしまう。
再び悲鳴じみた声を上げる彼に、キュルケは脱ぎ去った下着を丸めて言った。

「これでも噛んでなさい」
「うぐぐ!?」

そのまま口の中へと押し込み、猿ぐつわ代わりにしてしまう。
この世界では珍しいブラジャーも外してしまい、彼女はガーターベルトだけを身につけた状態になる。
彼の上に乗ったキュルケは、自分の尻に押し当てられている固い存在に嗜虐的な笑みを浮かべた。

「あらあら、そんなに私に射精したいのかしら?」
「うーっ! ううーっ!」
「ホント、ルイズが言ってた通りあなた最低よ。節操なく発情する犬みたいだわ」

ギーシュがモンモランシーに水責めされているのなら、キュルケの場合はさしずめ言葉責めといったところだろうか。

「あらら、サイト、あなた私に罵られて感じちゃってるのかしら?」
「うう……」
「節操ないだけじゃないわ、あなた変態よ」

冷めた目でサイトを見下し、彼女は続けた。

「変態相手に本番許したんじゃゲルマニア貴族として名誉にかかわるわ。ここまでにして後はルイズにでも代わってもらおうかしら……?」
「っ!?」

この世の終わりのような表情を浮かべるサイトに、キュルケは言いようのない快感を覚えていた。
今、サイトの全てを支配し、かつ最高の快楽を与えることができるのは自分しかいないのだ。
しかし、いじめ倒したい一方で、自身も彼のそそり立つものを堪能したくもあった。
彼に救いの手をさしのべるように、そっと耳打ちする。

「どうしようかしら、一回だけイカせてあげてもいいけど、イキたい?」
「ううっ!」

コクコクと首を縦に振る。
それを見た彼女は、ニヤリと意味深な笑みを浮かべた。

「た・だ・し……」

彼女の手がペニスを捉え、自らの膣口に先端の照準を合わせる。
クチョリと彼女の愛液が先端をぬらす。

「私がイクまで我慢するのよっ!」

その瞬間、彼女が腰を落とした。

「あうぅーっ!」
「うぐぉっ!?」

獣のような声で二人が結合する。
熱いキュルケの膣内は、石のように固くなったサイトのものをすんなりと受け入れていた。
同時に、二人ともその爆発的な行為に普段では感じられない興奮を得ている。
しかし、サイトにとってはキュルケのワンサイドゲームであり、いかにして射精感を抑えるかが問題だった。
とはいっても、自由のきかない彼にできることなど限られている。

「あんっ! あんっ! 凄いわっ! こんな固いの初めてよっ!」

キュルケが腰を激しく振る度に、サイトはじりじりと追い詰められていき、やがて絶頂を迎えてしまう。

「ぐううぅぅーーっ!」
「ああん! 中でビクビクいってるわ!」

だが、その絶頂に射精は伴わない。
彼女の膣内で、空しく肉棒を震わせるしかないのだ。
サイトはその破滅的な絶頂感に、今にも気を失いそうになる。

「ダメよ! まだ私はイッてないんだから」

キュルケは馬に拍車をかけるように膣壁を締めて彼の意識を取り戻した。
そして再び激しい律動を始め、彼を責めたてた。
彼女の絶頂が近くなる頃には、サイトはもう意識を保っているのがやっとという状態になっていた。
腹上死という、冗談のような死因が頭をチラつく。
だが、キュルケとセックスして死ねるならそれはそれで幸せかもしれない、とぼんやりと思う。

(キュルケは結局俺のことを好きでいてくれてるのかな……?)

ギーシュたちが覗きをやろうと企画したのも、実は彼女との関係に悩み、
ため息ばかりついていたのを騎士隊の連中が見かねたからだった。
そういえば、そのことについてもまだキュルケには説明していない。

「あっ! イク、イクわっ! 私も……私もイクぅーっ!」

彼女の中が激しく収縮し、もう感覚がなくなりかけたペニスも最後の刺激に反応した。

「あはぁっ! 偉いわ、最後までがんばったわね!」
「うう……」
「ご褒美よ!」

彼女はさっと腰を浮かせて膣内から男性器を引き抜くと、紐をほどいてから内股と花弁の合間に挟み込んだ。
いわゆるスマタの形だが、縛めを解かれたサイトのものは、最後の力を振り絞ってせき止められていた数回分の精液を発射した。

ドックンッ!!

「きゃあっ!?」

噴水のように吹き出した精液は、キュルケの顔まで一直線に飛びかかった。
そして、断続的に射精を続け、あっという間に彼女の身体全身を白に染めていく。

「あふ……凄いわ、こんなに出されたの初めて……」

彼女は顔にかかった黄ばんだ精液を指先ですくい、その量と強烈な臭いに酔う。
それはとてもではないが一人の男性が一度に出す量ではない。
サイトは意識が朦朧としてくるのを感じていた。

「あら、そういえば口に下着入れたままだったわね」

キュルケはひょいと彼の口から自分で入れた下着を取り出した。

「あ……ふぁ……」
「サイト?」
「きゅる……け」

彼の目の焦点が合っていないことに、彼女も気づく。

「ちょ、大丈夫!? サイト!」

彼女の声が遠のいていく。

「ダーリンしっかり!」

ああ、良かった。
俺のこと、まだ『ダーリン』って呼んでくれるのか……

彼は安堵の表情を浮かべると、そのまま暗い意識の果てへと旅だった。


・・
・・・

ルイズが腰に手を当てて叫んだ。

「どーして一回飯抜いたくらいで倒れるのかしらね!」
「だから、あんだけ痛めつけられたら普通そうなるってば!」

サイトは包帯だらけのミイラのような姿で反論した。
彼はまた医務室の常連と化していたのだ。
むろん、今は他の水精霊騎士隊の面々と同様、見舞いにくる女の子などいない。
ルイズはひとしきり憤慨すると、彼の粗末なベッドに一発蹴りを入れて出て行った。

「同情するよぅ」

マリコルヌが隣で言った。

「ありがとさん」

サイトは薄い毛布をひっかぶって久方ぶりの睡眠につくことにした。
彼にはキュルケのベッドで気を失ってからの記憶がすっぱりなくなっていた。
気がつけば包帯を巻かれてここに寝かされていた。
日付を聞くと、キュルケの部屋から一晩たっていたそうだ。
マリコルヌによると、夜遅くにここへ担ぎ込んだのは一匹のサラマンダー……おそらくフレイム……だということだ。
周囲では行き倒れているところを使い魔仲間のよしみでフレイムが助けたのだろう、という話になっている。

「はあ、キュルケにはなんて説明しよ……」

なんだか、まだ何も解決していないような気がする。

「あれえ、フレイムじゃないか」

同じく隣で水責めの怪我により入院中のギーシュが声を上げた。

「きゅるきゅる」

身を起こすと、確かにそこにはゆらゆらと炎を灯した尻尾を持ったサラマンダーがいた。
学院探してもサラマンダーの使い魔をもっているのは一人しかいない。

「良かったなサイト、使い魔仲間の見舞いがあって」

そう自嘲的な笑い声を上げて、部屋の同僚たちはフレイムから興味を失った。
フレイムはサイトの側へ寄ると、ずいと首を突っ込んできた。

「何だ?」

ただの見舞いかと思いきや、よく見るとフレイムの首輪に何かが提げられている。

(手紙?)

サイトはそれを引っこ抜いて開いてみた。
それを確認したのか、フレイムはさっさと部屋を去っていってしまう。

(なんだったんだ?)

ベッドの中でこっそりと蝋で封じられた手紙を開けてみる。

(こ、これって!?)

タバサに教えてもらって、なんとか読める程度だが、その手紙にはこう書かれていた。

ハァイ 怪我の具合はどうかしら?
こないだの騒ぎでもう懲りたでしょ。
だから、女の子の裸がみたいなら私にまず頼みなさい!
私との約束。

追伸
あの夜はちょっと私もやりすぎちゃったかも、ごめんなさいね。でもダーリンが悪いんだから!
身体、早く良くなるといいわね。

あなたの『恋人』 キュルケより

手紙の最後には口紅の跡が付けられ、紙からはほのかにキュルケの香水の香りがした。

「……恋人、か」

(なんだ、最初から全部解決してるんじゃないか)

ぎゅ、と胸にその手紙を忍ばせる。
キュルケの微熱で、心なしか温かくなったような気がした。


<続く?>

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