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X00-42-8のつづきです。
叙勲式
御前試合の興奮が冷めやらぬなか、才人達の叙勲が始まった。
最初に才人、次レイナール、アニエス、水精霊騎士隊、魔法学院生の順で行われた。
才人達が叙勲される度に、大歓声が上がり、中庭は興奮の坩堝と化していた。
そして叙勲式が滞りなく終わり、馬屋の方へ行こうとした時、アニエスに呼び止められた。
「サイト、お前を先頭に市中パレードを行う」
「へ?」聞いてませんが…
「衛兵から城門の外に中に入り切れ無かった市民が大勢いてな、叙勲式を観閲出来なかったため、このままでは暴動が発生する危険が大きいと報告が有ってな、急遽決まった」
「やらなくっちゃいけないんですよね?やっぱり」
「当然だ。本音を言えば私だって晒し者にされるみたいで、嫌なのだ。しかし暴動を発生させる訳にはいかん。諦めろ」
「サイト、君が羨ましいよ。大観衆の中を先頭で行けるんだから」
(俺はお前の性格が羨ましい)
「いい、サイト。あんたは大公で大元帥なんだから絶対へらへら笑っちゃ駄目だかんね。だからといって、しかめっ面も駄目。威風堂々、凛とした表情でいなさい」
「それってどういう顔?」
「全く、あんたってば。じゃあアニエス見せてあげて」
「私がか?」
「ええ。貴女が一番理想に近い表情だから」
「期待に添えられるか分からぬが」
アニエスは、そう言って表情を作った。
「サイト、この表情よ、この表情」
「俺にずっとこの表情でいろと?はっきり言うが無理だ」
「なら、出来る限り努力しなさい」
「出来る限りね」
そして才人を先頭に市中パレードが行われた。沿道は、市民で埋め尽くされ、建物の上からは、紙吹雪が舞い、歓声と万歳三唱が響き渡った。
パレードには、およそ2時間ほど掛かった。
才人は、身も心もくたくたになった。やり慣れないものは、疲労感が何倍も大きい。
才人は、早く帰って飯食って寝たいと心から思った。
そんな才人にアニエスは、更に大きな追い打ちをかけた。
才人を人気のない所に連れて行き
「今、王宮内である計画が進行中だ」
「どんな計画です?」
「女王陛下と貴様の結婚だ」
「なんですとー?!」
「それだけでは無く、ミス・ヴァリエール・ティファニア嬢・シャルロット姫殿下を貴様の妾として、トリステイン・アルビオン・ガリアを結びつける計画だ」
「とんでもなく無茶苦茶な計画じゃないすか。とても成功するとは思えませんが」
「いや、この計画は、もう終盤に差し掛かっている。有力貴族で説得が必要なのは、既にヴァリエール公爵のみらしい。ちなみに黒幕は、枢機卿とマリアンヌ皇太后陛下だ」
「でもルイズ達が承諾する筈有りませんよ」
「では聞いてみるとするか。君達はどう思う?」
「へ?!」
「アニエス、後はもう私達の気持ち次第って言う事?」
「ああ、そう思って間違いない」
「でも姫様こんなの承諾するとは思えないんですけど」
「相手が他の男ならな。だが貴様は例外だ。陛下の気持ちが分からぬほど私は朴念仁では無い」
「でも『もう女王の顔しか見せませぬ』って言われましたけど」
「陛下がこの計画をお聞きになったら、無理やり押さえつけてた反動が出ると思うぞ。そうなる様にミス・ヴァリエールが入っているのだ」
「じゃあ枢機卿や皇太后陛下は、姫様の気持ち気付いてたんすか?」
「ああ、でなければこんな無茶な計画はせん」
「でもこれってハルケギニア中から非難されませんか?」
「そんなの百も承知だろう」
「テファ、あんたはどう思う?」
「難しい事は分からないけど、つまり母と同じということよね」
「そうなるわね」
「私は、それで構わない」
「タバサ」
「私は、貴方とは結婚できないと思っていた。でもこれなら結ばれることは出来る」
「ちょっ、何言ってんの。あんた」
「ティファニアに聞きたい。貴女断りたい?」
「ルイズ、怒らないでね。私は…お受けしたい」
「ちょっ、テファあんたまで」
「これでミス・ヴァリエール君だけだ」
「私は、嫌よ!サイトは、私だけの使い魔なんだから」
「メイジは、使い魔の繁殖、この場合結婚等には、反対する権利は無い」
「嫌よ、嫌。絶対嫌」
「貴女は既に理解している。この計画の意味を。どうすればいいのかも」
「でも、でもでも」
「政治とはそう言う物。本来個人の自由になるものでは無い」
「でも結婚とかって個人の自由じゃないのか」
「貴方も含め私達全員自由に結婚出来る立場では無い」
「え?!俺も?」
「そう。貴方は既に一個人の枠を大きくはみ出している」
「いや、そうかもしんねけど、これはちょっと」
「貴方は、私達の事嫌い?」
「そんな筈ねぇじゃねえか」
「それなら問題ない」
「でも俺は、ルイズが受けなければ、受ける訳にはいかない」
「ルイズ、どうするの?」
「………受けるわ」
「正気か?」
「タバサの言う通りよ。だから受けるのよ」
「君達の意思は聞き届けた。それでは失礼する」
「後悔しないか?」
「しない」3人同時に返答した。
やれやれ先が思いやられるな。
ガリア王宮
「ジョゼフ様、トリステイン王宮で3週間後、件のドラゴン達のオークションが開かれるそうです」
「フム、では、トリステインに金を恵んでやるとするか。このままでは、戦いに成らなくてつまらんからな」
「ゲームの下準備ですね」
「その通りだ」
ジョゼフは、呼び鈴を鳴らした。
「大臣、勅旨である。3週間後、トリステインで行われるドラゴンのオークションで出来る限り落札してまいれ」
「畏まりました」
「ミューズ」
「はい」
「オークション会場で遊んで来い。ヨルムンガント3体使ってな。但し、駒は壊すなよ」
「畏まりました」
ロマリア法王庁
「聖下、密偵より連絡が入りました」
「話して下さい」
「先ず、トリステインの方からです。3週間後にドラゴンのオークション。それと水面下で女王陛下とサイトとの結婚話が進行中のみならず二人の担い手とシャルロット姫殿下を妾にする計画だそうです。次にガリアですが、ジョゼフ王は、オークション会場を襲撃する模様です。例のヨルムンガントを3体使用との事です」
「聖戦の為には、そして始祖の遺言のためには、その計画修正しなければいけませんね。その為にジョゼフ王の襲撃計画を利用しましょう」
「如何なさいます?」
「先ず、聖戦する金が無いと言わせない為に、オークションで高額落札しましょう」
「はい」
「そして私自ら会場に赴き、襲われます。そこをガンダールヴに救出して貰い、重婚許可を与えて、正式に全員と結婚して貰います。式はアクイレイアで挙げて貰いましょう。後は、私の計画通り、事を進めて行きましょう」
「畏まりました」